説明

工具ホルダユニット及び工具マガジン

【課題】合成樹脂製のホルダ本体に対して硬質金属製の球留め用のリングを取り付ける工具ホルダユニットにおいて、ホルダ本体に形成される貫通孔と球留め用のリングに形成される貫通孔との位置合わせを容易に行うことができる工具ホルダユニット、及びそれを備えた工具マガジンを得る。さらに、球留め用のリングをホルダ本体に対して強固に固定することができる工具ホルダユニット、及びそれを備えた工具マガジンを得る。
【解決手段】合成樹脂製のホルダ本体20に対して硬質金属製の球留めリング40を挿入する構成において、ホルダ本体20のリング収容孔24の内壁にキー27を設け、球留めリング40の外壁にキー溝42を設けた。そして、キー27とキー溝42とを嵌合させることで、各第1,第2貫通孔26,41が連通するようにした。また、球留めリング40の取り外し方向の移動を規制するように、断面略L字状のリング保持金具50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダユニット及び工具マガジンに関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等の工作機械においては、複数の工具ツールを待機させるための工具マガジンが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。詳細には、工具マガジンには複数の工具ホルダユニットが設けられており、各工具ホルダユニットに工具ツールを保持させることで複数の工具ツールが待機されている。工具ホルダユニットに保持された工具ツールは、自動工具交換装置により工作機械の主軸に装着される。これにより、主軸に所望の工具ツールを装着してワークを順次加工することが可能となっている。
【0003】
ここで、工具ホルダユニットの従来の構成について図7を用いて説明する。工具ホルダユニット100は、筒状のホルダ本体101を有しており、その内部にはシャンク収容孔102と、プルスタッド収容孔103とが連続的に設けられている。シャンク収容孔102はプルスタッド収容孔103に向かうほど孔径が小さくなるのに対して、プルスタッド収容孔103の孔径はほぼ同一となっている。工具ツール110の着脱は、シャンク収容孔102の先端開口から行われる。また、ホルダ本体101におけるプルスタッド収容孔103の周囲の壁部には、ホルダ本体101の軸線に対して略直交する方向に延び内外に貫通した複数の貫通孔104が設けられており、各貫通孔104には係合部材としてのボール105が挿入されている(図7においては、そのうちの1つを示す)。ボール105は、圧縮バネ106によりプルスタッド収容孔103に向けて付勢されている。そして、工具ホルダユニット100内に工具ツール110が挿入されると、工具ツール110に形成された係合溝111にボール105が係合されることにより、工具ホルダユニット100内に工具ツール110が保持される。この保持された工具ツール110は、所定の力で引き抜くことで、ボール105の係合溝111との係合が外れ、工具ホルダユニット100から取り外すことができる。
【特許文献1】特開2005−103687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の構成の工具ホルダユニットにおいて、その成型を容易なものとすべく、ホルダ本体を金属により成型するのではなく、合成樹脂により成型する構成が考えられる。しかしながら、合成樹脂は、金属に比べて強度が低くいため、工具ツールの着脱に際してのボールの変位に応じて受ける力によりボール周辺において割れなどが発生するおそれがある。
【0005】
上記の問題に対処するには、ボールの周辺を硬質金属製とし、その他の部分を合成樹脂製とする構成が考えられる。本構成としては、例えば、ホルダ本体を成型するための金型に予め硬質金属をインサートしそこに合成樹脂を流し込む、所謂、インサート成型を行う構成が想定される。しかしながら、かかる構成では、金型の構造が複雑化してしまい、さらに成型後にボールが挿入される貫通孔を形成する必要が生じることで貫通孔の形成作業が複雑化してしまい、結果的に製造コストが高くなってしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明者は、貫通孔が形成された合成樹脂製のホルダ本体に対して、同じく貫通孔が形成された硬質金属製の球留め用のリングを取り付けて固定する構成を考え出した。これにより、金型の構造及び貫通孔の形成作業を複雑化させることなく、ホルダ本体を合成樹脂製とした構成においてボール周辺における割れなどの発生を抑制することができる。しかしながら、本構成では、両者の貫通孔の形成が別々に行われるため、ホルダ本体に球留め用のリングを取り付ける際の、両者の貫通孔の位置合わせが困難なものとなるおそれがある。さらに、上記のとおり、工具ツールの着脱に際しては所定の力が加えられるため、着脱に際して球留め用のリングが外れないように球留め用のリングをホルダ本体に対して強固に固定する必要が生じる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、合成樹脂製のホルダ本体に対して硬質金属製の球留め用のリングを取り付けることで製造コストを抑えつつ工具ツールを係合するための係合部材周辺の強度を向上させ、さらにはホルダ本体に形成される貫通孔と球留め用のリングに形成される貫通孔との位置合わせを容易に行うことができる工具ホルダユニット、及びそれを備えた工具マガジンの提供を第1の目的とするものである。
【0008】
また、当該工具ホルダユニットにおいて、ホルダ本体に対する球留め用のリングの固定を強固に行うことができる工具ホルダユニット、及びそれを備えた工具マガジンの提供を第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果、より踏み込んだ具体的手段等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0010】
手段1.筒状をなし、先端に工具が取り付けられた工具ツール(工具ツール70)の基端側を収容するホルダを備え、
このホルダは、その基端側に軸線方向に対して直交する方向に延び内外に貫通する貫通孔を複数有すると共に、これら各貫通孔内に、付勢部材(圧縮バネ47)と、同付勢部材により付勢されて前記ホルダの内周側に一部が突出し前記工具ツールに形成された係合溝(係合溝74b)に係合される硬質金属製の係合部材(剛球46、プランジャ95)とを有し、
これら各係合部材の係合により前記工具ツールを着脱可能に保持する工具ホルダユニットにおいて、
前記ホルダは、合成樹脂製のホルダ本体(ホルダ本体20)と、このホルダ本体の基端側から挿入されて前記各貫通孔が形成された位置にて収容され、この収容された位置にて前記ホルダの内周側を構成する硬質金属製のリング(球留めリング40)と、このリングの反挿入方向側端面に当接するようにして前記ホルダ本体に固定される移動規制金具(リング保持金具50)とを備え、
前記ホルダ本体に本体側貫通孔(第1貫通孔26)を形成すると共に、前記リングにリング側貫通孔(第2貫通孔41)を形成し、
前記ホルダ本体と前記リングとの回転位置決め構造(キー27、キー溝42)を設け、その位置決めにより前記本体側貫通孔及び前記リング側貫通孔とが連通されて前記貫通孔が形成されることを特徴とする工具ホルダユニット。
【0011】
手段1によれば、ホルダに形成された各貫通孔内には、工具ホルダユニットに工具ツールを保持するための係合部材と付勢部材とが設けられている。かかる場合に、合成樹脂製のホルダ本体には硬質金属製のリングが収容されており、さらにリングの反挿入方向側端面に当接するようにして移動規制金具がホルダ本体に固定されている。これにより、ホルダ本体にリングが取り付けられている。そして、各係合部材はリングに形成されたリング側貫通孔から突出する。よって、工具ツールを着脱する際における係合部材の変位は硬質金属製のリングにより受けられ、ホルダ本体を合成樹脂製とした構成において工具ツールを着脱する際に係合部材の変位によって工具ホルダユニットが破損してしまうことが抑制されている。
【0012】
本構成において、ホルダ本体とリングとの回転位置決め構造が設けられていることにより、ホルダ本体にリングを収容すると、自ずと各本体側貫通孔と各リング側貫通孔とが連通した状態となり、貫通孔の位置合わせを容易に行うことができる。以上より、本体側貫通孔が形成された合成樹脂製のホルダ本体に対してリング側貫通孔が形成された硬質金属製のリングを取り付けることで製造コストを抑えつつ係合部材周辺の強度を向上させた構成において、両者の貫通孔の位置合わせを容易に行うことができる。そして、貫通孔の位置合わせの容易化が実現されることで、工具ホルダユニットの製造効率が高められ製造コストの低減を図ることができる。また、本構成によれば、工具ツールを着脱する場合におけるリングの回転を抑制することができる。
【0013】
手段2.前記リングを円環状に形成し、
前記回転位置決め構造を、前記ホルダ本体及び前記リングの一方に形成されたキー(キー27)と、他方に形成されたキー溝(キー溝42)とにより構成したことを特徴とする手段1に記載の工具ホルダユニット。
【0014】
手段2によれば、キーとキー溝とを嵌合させるようにしてホルダ本体にリングを収容すると、自ずと各本体側貫通孔と各リング側貫通孔とが連通した状態となる。本構成によれば、リングを円環状に形成した構成において、簡単な構成により貫通孔の位置合わせを容易化させることができる。
【0015】
手段3.前記ホルダ本体を熱可塑性樹脂により形成したことを特徴とする手段1又は手段2に記載の工具ホルダユニット。
【0016】
手段3によれば、出荷時などのように工具ホルダユニットを搬送する際において工具ホルダユニットが落下した場合であっても、落下時の衝撃によりホルダ本体に割れ等が生じることを抑制することができる。つまり、合成樹脂には熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とがあるが、熱可塑性樹脂の方が弾性が高く衝撃を吸収し易いからである。また、工具ツールの着脱時における応力が吸収され易くなる。
【0017】
手段4.前記移動規制金具は、鋼板からなり、同鋼板を折り曲げ形成することで、前記リングの反挿入方向側端面に当接するようにして前記ホルダ本体に固定される第1壁部(第1固定板51)と、同第1壁部に対して略直交する方向に延びる第2壁部(第2固定板52)とを備え、同第2壁部を前記ホルダ本体の側壁(固定壁部31)に固定したことを特徴とする手段1乃至手段3のいずれかに記載の工具ホルダユニット。
【0018】
手段4によれば、移動規制金具は鋼板からなるので、工具ツールの取り付け時においてリングの移動を規制する際に割れ等の破損が生じることを抑制することができる。また、第1壁部に対して略直交する方向に延びる第2壁部がホルダ本体の側壁に固定されている。つまり、移動規制金具のホルダ本体に対する固定方向が、工具ツールの取り付け方向に対して直交する方向に存在することとなる。よって、工具ツールの取り付け時にリングに対してその取り外し方向に大きな負荷が加えられたとしても、リングが抜け出てしまうことを確実に抑制することができる。
【0019】
手段5.本工具ホルダユニットが複数設置される工具マガジンに対する連結手段(ローラカム57)を前記移動規制金具に設けたことを特徴とする手段1乃至手段4のいずれかに記載の工具ホルダユニット。
【0020】
手段5によれば、工具ホルダユニットは移動規制金具に設けられた連結手段を介して工具マガジンに設置されている。よって、工具ツールの取り付け時にリングに掛かる負荷は、移動規制金具及び連結手段を介して工具マガジンの連結箇所により受けられる。工具ホルダユニットは通常、工具ツールが取り付けられており、工具ツールが取り付けられた工具ホルダユニットを安定した状態で支持するために上記連結箇所は強固に形成されている。従って、この連結箇所により上記負荷を受ける構成とすることで、工具ツールの取り付け時にリングに対してその取り外し方向に大きな負荷が加えられたとしても、リングが抜け出てしまうことを確実に抑制することができる。
【0021】
なお、連結手段は、工具ホルダユニットの重量負荷を工具マガジンに受けさせるためのものであればよい。例えば、工具マガジンが搬送機構及びカム溝を備え、搬送機構の動作に伴って各工具ホルダユニットがカム溝の形状に沿って移動する構成においては、カム溝に噛み合わされるローラカムが連結手段を構成する。この場合、工具ツールの取り付け時にリングに掛かる負荷は、移動規制金具及びローラカムを介してカム溝により受けられる。そして、カム溝は、搬送機構と共に工具ホルダユニットを支持する必要があり強固に形成されているため、上記負荷の受けが効果的なものとなる。なお、本構成においては、搬送機構に対して工具ホルダユニットを固定する必要があるため、工具ホルダユニットはホルダを回動可能に支持するホルダ支持部材を備える。ちなみに、本構成の技術的思想は、「前記ホルダを回動可能に支持し、搬送機構に対して固定されるホルダ支持部材(固定金具60)を備え、前記移動規制金具は、前記リングの反挿入方向側端面に当接するようにして前記ホルダ本体に固定される第1壁部(第1固定板51)と、同第1壁部から連続して延びる第2壁部(第2固定板52)とを備え、さらに、前記搬送機構に延設されたカム溝に対して噛み合わされるローラカム(ローラカム57)を前記第2壁部に取り付けたことを特徴とする工具ホルダユニット。」である。
【0022】
また、工具マガジンが上記のようにカム溝を備えない構成などにおいては、工具マガジンに対して連結手段を用いて工具ホルダユニットを固定する。この場合に、工具マガジンに対して工具ホルダユニットをボルトやネジなどの固定具により固定する構成では、かかる固定具や固定具を通すための貫通孔が連結手段を構成する。本構成では、工具ツールの取り付け時にリングに掛かる負荷は、移動規制金具及び固定具を介して工具マガジンの工具ホルダユニットに対する固定部位により受けられる。そして、固定部位は工具ホルダユニットを支持する必要があり強固に形成されているため、上記負荷の受けが効果的なものとなる。
【0023】
手段6.前記ホルダ本体の内周側には、前記リングの内径位置から所定範囲を除いた前記リングの挿入側端面に当接される規制部(段差部22)を設け、同規制部と前記移動規制金具とにより前記リングを挟持することを特徴とする手段1乃至手段5のいずれかに記載の工具ホルダユニット。
【0024】
手段6によれば、規制部によりリングの挿入方向の移動が規制される。本構成において、規制部はリングの内径位置から所定範囲を除いたリングの挿入側端面に当接されている。よって、工具ツールの取り付け時に係合位置を越えて押し込まれたとしても、リングによりそれ以上の工具ツールの取り付け方向への移動を規制することが可能となる。工具ホルダユニットへの工具ツールの取り付け時には、当該取り付けを確実に行うべく大きな負荷が掛けられるのが一般的である。この場合に、合成樹脂製のホルダ本体ではなく硬質金属製のリングに当たることで工具ツールの取り付け方向への移動が規制されるため、工具ツールを取り付ける際に工具ホルダユニットが破損することを抑制することができる。また、上記手段4又は手段5を備えた構成においては、リングに対してその取り外し方向に大きな負荷が加えられたとしても、リングが抜け出てしまうことを確実に抑制することができる。
【0025】
手段7.複数の工具ホルダユニット(工具ホルダユニット10)を備え、これら各工具ホルダユニットに工具ツール(工具ツール70)を保持させることにより工作機械の主軸に取り付ける工具ツールを待機させる工具マガジンであって、
前記各工具ホルダユニットを、手段1乃至手段6のいずれかに記載の工具ホルダユニットとしたことを特徴とする工具マガジン。
【0026】
手段7によれば、工具マガジンに設けられたすべての工具ホルダユニットに関して、製造コストを抑えつつ係合部材周辺の強度を向上させることができ、さらに貫通孔の位置合わせの容易化が実現されることで製造コストの低減を図ることができる。そして、これに伴って、複数の工具ホルダユニットを備える工具マガジンの製造コストの低減を図ることができる。また、工具マガジンに設けられたすべての工具ホルダユニットに関して、リングの固定を強固に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、発明を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
先ず、工具ホルダユニット10について、図1〜図4を用いて説明する。図1は工具ホルダユニット10の分解斜視図、図2は工具ホルダユニット10の平面図、図3は図2のA―A線断面図、図4は図3のB−B線断面図である。
【0029】
工具ホルダユニット10は、工具ツール70を着脱可能に保持するためのものである。工具ツール70は、図3に示すように、基端側にシャンク部71を備えており、シャンク部71にスライスカッタやドリル等の工具が固定されている。シャンク部71は、略円柱状をなし、基端に向けて先細り形状をしている。また、シャンク部71は、工具ツール70を工具ホルダユニット10に着脱する際に使用される把持部72と、当該把持部72よりも基端側にありテーパ状をなすテーパ部73と、シャンク部71の最基端部を形成するプルスタッド74とを備えている。
【0030】
工具ホルダユニット10は、ホルダ本体20と、球留めリング40と、リング保持金具50と、固定金具60とを主要構成部品として備えている。ホルダ本体20は、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂により形成されており、球留めリング40は鉄や銅等の硬質金属により形成されている。また、リング保持金具50及び固定金具60は、鋼板を折り曲げることにより形成されている。なお、ホルダ本体20を構成する樹脂に対して、ガラス繊維や炭素繊維等の強化基材を含有させてもよい。
【0031】
ホルダ本体20は、略円筒状をなし工具ツール70のテーパ部73を収容する筒状収容部21と、当該筒状収容部21の基端から軸線方向に延出し固定金具60が取り付けられている固定壁部31とから構成されている。
【0032】
筒状収容部21の内壁には、図3に示すように、内周側に突出した環状の段差部22が一体形成されており、当該段差部22を挟んで筒状収容部21の内部にはテーパ収容孔23とリング収容孔24とが設けられている。テーパ収容孔23は、段差部22に向けて孔径が小さくなり、概ねテーパ状をしている。このテーパ収容孔23の先端開口23aからシャンク部71が挿入される。工具ホルダユニット10に工具ツール70が保持された状態では、テーパ部73における把持部72側がテーパ収容孔23に当接し、プルスタッド74側はテーパ収容孔23に当接せずテーパ収容孔23との間に若干の隙間が形成される。このように隙間を形成することで、工具ツール70を着脱する際の応力を吸収することができる。
【0033】
なお、筒状収容部21には、その外壁にリブ25が一体形成されている。詳細には、筒状収容部21の周方向に沿った環状リブ25aが所定間隔を置いて複数形成されており、さらにこれら環状リブ25aを連結するように筒状収容部21の軸方向に延びる板状リブ25bが複数形成されている。従って、リブ25は、全体として格子状をしている。リブ25により筒状収容部21の強度の向上が図られている。
【0034】
リング収容孔24は、軸線方向全体に亘って孔径L1が同一であり、その孔径L1は球留めリング40の外径L1と同一となっている。リング収容孔24の孔長は、球留めリング40の高さ寸法と同一となっている。また、段差部22は、上記のとおり、筒状収容部21の内周側に突出しており、内径L2は球留めリング40の外径L1よりも小さくなっている。但し、段差部22の内径L2は、球留めリング40の内径L3よりも大きくなっている。そして、リング収容孔24の先端開口24aから球留めリング40が挿入され、段差部22に支持されることでリング収容孔24内に球留めリング40が収容されている。この場合に、リング収容孔24の軸線と球留めリング40の軸線とが同一直線上にある。なお、リング収容孔24の内径L3は、プルスタッド74の最大径L4よりも若干大きくなっている。球留めリング40は、略円筒状をなし、外径L1及び内径L3はそれぞれ軸線方向全体に亘って同一の大きさとなっている。また、両端面は、平坦面となっている。
【0035】
リング収容孔24には、図4に示すように、筒状収容部21の軸線に対して直交する方向に延び、内外に貫通する第1貫通孔26が周方向に等間隔(120°間隔)で3つ形成されている。これに対応して、球留めリング40にも、当該球留めリング40の軸線に対して直交する方向に延び、内外に貫通する第2貫通孔41が周方向に等間隔(120°間隔)で3つ形成されている。なお、各第2貫通孔41は、球留めリング40における段差部22側端部に偏倚した位置にある。
【0036】
ここで、本実施の形態では、リング収容孔24の内壁に、軸線方向に延びるキー27が形成されており、これに対応して球留めリング40の外壁には軸線方向に延び両端が開放されたキー溝42が形成されている。これらキー27及びキー溝42は、リング収容孔24及び球留めリング40の軸線方向全体に亘って形成されている。また、キー27及びキー溝42は、各第1貫通孔26及び各第2貫通孔41の対称軸線SL上に配置されている。キー27がキー溝42に嵌合されていることにより、リング収容孔24内における球留めリング40のその軸線方向を中心とした回転方向位置が決定されている。そして、この決定された位置では、各第1貫通孔26と各第2貫通孔41とが連通している。
【0037】
各第2貫通孔41内には、剛球46が設けられている。また、各第1,第2貫通孔26,41内には、剛球46を球留めリング40の内周側に向けて付勢する圧縮バネ47が設けられており、さらに当該圧縮バネ47を所定位置に保持するための六角穴付きの止めネジ48がねじ込まれている。各剛球46は、各圧縮バネ47に付勢されることで、一部が球留めリング40の内周側に突出している。この場合に、第2貫通孔41の内側開口が剛球46の直径よりも若干小さくなっており、剛球46が第2貫通孔41から抜け出るのが防止されている。また、球留めリング40の厚み寸法は剛球46の直径よりも大きくなっており、剛球46は第1貫通孔26内には位置していない。剛球46が突出した位置では、球留めリング40の実質的な内径L5がプルスタッド74の最大径L4よりも小さくなっている。
【0038】
球留めリング40は、リング保持金具50により取り外し方向の移動が規制されている。かかる構成について以下に説明する。リング保持金具50は、図1に示すように、断面L字状をしており、第1固定板51と、第2固定板52とからなる。リング保持金具50は、図2に示すように、第1固定板51が3個のボルト53により筒状収容部21のリング収容孔24側端部に当接した状態で固定されており、第2固定板52が六角穴付きボルト54とナット55により固定壁部31に当接した状態で固定されている。なお、図3においては、便宜上、1のボルト53を省略して示す。この場合に、固定壁部31には、内外に貫通する方形状の貫通孔32が形成されており、第1固定板51は当該貫通孔32を貫通している。そして、第2固定板52は、固定壁部31の外面に当接した状態で固定されている。なお、第2固定板52が固定される固定壁部31の壁部33は、第2固定板52の厚み分内側に後退している。これにより、第2固定板52がホルダ本体20の外方へ突出しない構成となっている。
【0039】
第1固定板51には、球留めリング40の内径とほぼ同一の孔径を有し軸線が球留めリング40の軸線の延長線上に位置する貫通孔56が形成されている。かかる第1固定板51には、球留めリング40の取り外し側端面の全体が当接している。これにより、球留めリング40の取り外し方向の移動が規制されている。また、リング保持金具50は、第1固定板51及び第2固定板52の両方にてホルダ本体20に固定されているので、球留めリング40の取り外し方向の移動を強固に規制することができる。なお、貫通孔56内には、プルスタッド74の先端部が収容される。
【0040】
リング保持金具50の第2固定板52には、ローラカム57が取り付けられている。詳細には、第2固定板52を固定壁部31に固定する六角穴付きボルト54は、その基端部が第2固定板52の表面から外方に突出しており、この突出部分にローラカム57が回転可能に設けられている。
【0041】
固定壁部31には、固定金具60が取り付けられている。詳細には、固定壁部31には、リング保持金具50の第2固定板52が固定されている壁部33を挟んで対向する壁部34に、軸線が同一直線上に位置するように貫通孔35が形成されている。これら各貫通孔35には、それぞれ支軸59が圧入されている。一方、固定金具60は、折り曲げ形成されることで、固定板61と、一対の固定アーム62とからなる。そして、一対の固定アーム62がそれぞれ支軸59に軸支されている。これにより、固定金具60は、支軸59を中心として回動可能な状態で固定壁部31に取り付けられている。
【0042】
固定金具60の固定板61には、4隅にそれぞれ1つずつ貫通孔63が形成されている。各貫通孔63は、多数の工具ツール70を待機させるための工具マガジンに固定金具60を固定する際の固定用ボルトを通すために使用される。なお、固定板61には、工具マガジンに固定板61を固定する際の位置決め用に位置決めピン64が圧入されている。
【0043】
以上説明した工具ホルダユニット10を組み立てる際には、先ずホルダ本体20のリング収容孔24に球留めリング40を挿入する。この際、キー27とキー溝42とを嵌合させることで、ホルダ本体20の各第1貫通孔26と球留めリング40の各第2貫通孔41とが自ずと連通した状態となる。その後、第1固定板51が貫通孔32を貫通するようにリング保持金具50を固定壁部31に対してスライドさせて挿入することで、第1固定板51を筒状収容部21のリング収容孔24側端部に当接させ、第2固定板52を固定壁部31の外面に当接させた状態とする。そして、ボルト53により第1固定板51をホルダ本体20に固定する。また、ローラカム57を挿通させた六角穴付きボルト54を第2固定板52及び固定壁部31に対して貫通させナット55により固定することで、ホルダ本体20に対する第2固定板52の固定と、ホルダ本体20に対するローラカム57の取り付けとが同時に行われる。そして、最後に、固定金具60の各固定アーム62を貫通した状態で各支軸59を固定壁部31の各貫通孔35に圧入することで、固定金具60のホルダ本体20に対する取り付けが行われ、工具ホルダユニット10の組み立てが終了する。
【0044】
次に、工具ホルダユニット10に対する工具ツール70の着脱について説明する。工具ホルダユニット10に工具ツール70を挿入すると、プルスタッド74の先端が各剛球46の突出部分に接触する。そして、所定の力で工具ツール70を押し込むことで、プルスタッド74の先端側傾斜部74aによって剛球46が押され、プルスタッド74の環状の係合溝74bに剛球46が係合された状態となる。これにより、工具ホルダユニット10に工具ツール70が保持される。かかる場合に、上述したとおり、段差部22の内径L2は、球留めリング40の内径L3よりも大きくなっている。また、段差部22の内径L2はプルスタッド74の基端部74cの外径L6よりも大きく、球留めリング40の内径L3は基端部74cの外径L6よりも小さくなっている。さらに、段差部22の軸線方向の長さ寸法は、基端部74cの軸線方向の長さ寸法よりも小さくなっている。従って、工具ホルダユニット10に工具ツール70を勢いよく差し込んだとしても、プルスタッド74の基端部74cが球留めリング40の端面に当たり、それ以上の挿し込み方向の移動が規制される。また、球留めリング40は、上述したとおり、硬質金属製であるので、基端部74cが当たっても破損しにくい。さらに、上述したとおり、球留めリング40の取り外し方向の移動がリング保持金具50により強固に規制されているので、基端部74cが当たっても球留めリング40が外れることはない。
【0045】
一方、工具ホルダユニット10から工具ツール70を取り外す場合には、所定の力で工具ツール70を引き抜くことで、プルスタッド74の基端側傾斜部74dによって剛球46が押され、係合が外れる。これにより、工具ツール70を取り外すことができる。
【0046】
次に、以上説明した工具ホルダユニット10が複数設けられ、複数の工具ツールを待機させるための工具マガジンについて説明する。
【0047】
工具マガジンは、主軸に取り付けられたスライスカッタ、ドリル等の各種工具を用いてワークを加工する工作機械に設けられており、待機されている工具ツール70は自動工具交換装置により主軸との間で自動交換される。工具マガジンは、マガジン本体と、マガジン本体上に支持された回転ドラムとを備えている。回転ドラムは円盤状をなし、マガジン本体上においてその中心を軸心として回転可能となっている。また、マガジン本体には、その外周に一連のカム溝が設けられている。当該構成において、工具マガジンには、複数の工具ホルダユニット10が外周に沿って等間隔で配設されている。各工具ホルダユニット10は、固定金具60が回転ドラムに固定されており、ローラカム57がカム溝に噛み合わされている。よって、回転ドラムが所定方向に回転することで、各工具ホルダユニット10がカム溝の形状に沿って移動する。
【0048】
この場合に、カム溝には工具交換位置に捩れが形成されており、当該工具交換位置とそれ以外の位置とでは工具ホルダユニット10の回動位置が換わる。これにより、工具ツール70の自動交換に際しては交換作業を円滑に行える向きに工具ホルダユニット10の回動位置を設定することができ、工具ツール70を待機させる際にはスペース上都合の良い向きに工具ホルダユニット10の回動位置を設定することができる。
【0049】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、以下の優れた効果を有する。
【0050】
合成樹脂製のホルダ本体20に対して、硬質金属製の球留めリング40を取り付け、第2貫通孔41から球留めリング40の内周側に突出するように工具ツール70を係合するための剛球46を設けた。これにより、工具ツール70の着脱に際して剛球46の変位に伴う力は硬質金属製の球留めリング40に直接掛かり、合成樹脂製のホルダ本体20には直接掛からない。よって、工具ツール70の着脱に際して、工具ホルダユニット10に割れ等の破損が発生することを抑制することができる。特に、ホルダ本体20が熱可塑性樹脂により形成されているため、剛球46の変位に伴う力がホルダ本体20に直接掛かると破損が発生し易くなるが、かかる破損の発生を抑制することができる。
【0051】
ちなみに、ホルダ本体20を熱可塑性樹脂により形成することで、出荷時などのように工具ホルダユニット10を搬送する際において工具ホルダユニット10が落下した場合であっても、落下時の衝撃によりホルダ本体20に割れ等が生じることを抑制することができる。つまり、合成樹脂には熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とがあるが、熱可塑性樹脂の方が弾性が高く衝撃を吸収し易いからである。また、工具ツールの着脱時における応力が吸収され易くなる。
【0052】
また、各第1貫通孔26が形成されたホルダ本体20に各第2貫通孔41が形成された球留めリング40が取り付けられているので、ホルダ本体20を成型するための金型の構造が複雑化することを抑制することができる。例えば、所謂、インサート成型を行う構成では、ホルダ本体20を成型するための金型の構造が複雑化してしまうからである。従って、合成樹脂製のホルダ本体20に対して硬質金属製の球留めリング40を取り付ける構成において、製造コストを抑えることができる。
【0053】
また、第1,第2貫通孔26,41の形成作業が複雑化してしまうことを抑制することができる。すなわち、本構成によれば、比較的体格の大きいホルダ本体20に対する第1貫通孔26の形成を、ホルダ本体20の金型による成型時に行うことができるからである。従って、合成樹脂製のホルダ本体20に対して硬質金属製の球留めリング40を取り付ける構成において、製造コストを抑えることができる。
【0054】
以上の構成において、リング収容孔24の内壁にキー27を設け、球留めリング40の外壁にキー溝42を設けた。これにより、リング収容孔24に球留めリング40を収容すると、自ずと各第1貫通孔26と各第2貫通孔41とが連通した状態となる。従って、ホルダ本体20の各第1貫通孔26の形成と、球留めリング40の各第2貫通孔41の形成とを別々に行ったとしても両者の位置合わせを容易に行うことができる。そして、各第1,第2貫通孔26,41の位置合わせの容易化が実現されることで、工具ホルダユニット10の製造効率が高められ製造コストの低減を図ることができる。
【0055】
また、工具マガジンに設けられる工具ホルダユニットをすべて上記工具ホルダユニット10とすることで、各工具ホルダユニット10の製造コストが低減されるのに伴って工具マガジンの製造コストの低減を図ることができる。
【0056】
リング収容孔24の内壁にキー27を設け、球留めリング40の外壁にキー溝42を設けるだけでよいので、簡単な構成により両者の位置合わせの容易化を実現することができる。特に、本実施の形態では、球留めリング40が略円筒状であるため、各第1,第2貫通孔26,41の位置合わせの容易化を実現するためには、本構成が必要不可欠なものといえる。
【0057】
断面L字状をなすリング保持金具50により球留めリング40の取り外し方向の移動が規制される構成において、リング保持金具50の第1固定板51を3個のボルト53により筒状収容部21のリング収容孔24側端部に当接させた状態で固定し、さらに第2固定板52を六角穴付きボルト54により固定壁部31に当接させた状態で固定した。この第2固定板52の固定により、リング保持金具50のホルダ本体20に対する固定方向が、工具ツール70の取り付け方向に対して直交する方向に存在することとなる。また、六角穴付きボルト54にはローラカム57が取り付けられており、当該ローラカム57は工具マガジンのカム溝に噛み合わされている。工具ホルダユニット10への工具ツール70の取り付け時には、取り付けを確実に行うべく大きな負荷が掛けられるのが一般的である。当該事情において、上記構成とすることで、工具ツール70の取り付け時に球留めリング40に掛かる負荷は、第1固定板51の固定箇所(3個のボルト53)、第2固定板52の固定箇所(六角穴付きボルト54)、及びローラカム57とカム溝との噛み合わせ箇所により受けられる。特に、カム溝は回転部と共に工具ホルダユニット10を支持する必要があり強固に形成されているため、当該箇所における負荷の受けは効果的なものとなる。よって、工具ツール70の取り付け時に球留めリング40に対してその取り外し方向に大きな負荷が加えられたとしても、球留めリング40が抜け出てしまうことを確実に抑制することができる。
【0058】
球留めリング40の内径L3を段差部22の内径L2及び工具ホルダユニット10に取り付けられる工具ツール70におけるプルスタッド74の基端部74cの外径L6よりも小さくし、段差部22の内径L2を基端部74cの外径L6よりも大きくし、さらに段差部22の軸線方向の長さ寸法を、基端部74cの軸線方向の長さ寸法よりも小さくした。これにより、工具ホルダユニット10に工具ツール70を勢いよく差し込んだとしても、プルスタッド74の基端部74cが球留めリング40の端面に当たり、それ以上の挿し込み方向の移動が規制される。この場合に、球留めリング40は硬質金属製であるので、基端部74cが当たっても破損しにくい。さらに、上述したとおり、球留めリング40の取り外し方向の移動がリング保持金具50により強固に規制されているので、基端部74cが当たっても球留めリング40が抜け出ることはない。
【0059】
工具マガジンのカム溝に沿って移動するためのローラカム57を、第2固定板52を固定壁部31に固定するための六角穴付きボルト54に対して取り付ける構成とした。これにより、ローラカム57を取り付けるための固定具を別途設ける必要はなく、さらに第2固定板52をホルダ本体20に固定するのに合わせてローラカム57が取り付けられる。よって、部品点数の削減、及び工具ホルダユニット10の製造工程数の削減を図ることができる。
【0060】
なお、実施の形態は上記した内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0061】
上記実施の形態では、リング収容孔24にキー27を設け、球留めリング40にキー溝42を設けることで、各第1,第2貫通孔26,41の位置合わせを行ったが、かかる位置合わせを行うための構成を図5のように変更してもよい。本構成では、リング収容孔24の断面形状、及び球留めリング40の断面形状は、全体が円形状をしているのではなく、一部が角形状となっている。すなわち、リング収容孔24には角状壁部91が形成されており、球留めリング40にはリング収容孔24の角状壁部91に対応させて角状部92が形成されている。これにより、これら角状壁部91及び角状部92を合わせるようにして球留めリング40を収容することで、自ずと各第1,第2貫通孔26,41が連通した状態となり、各第1,第2貫通孔26,41の位置合わせを容易に行うことができる。また、本構成以外にも、例えば、リング収容孔24の断面形状、及び球留めリング40の断面形状を、その全体が角形状となるようにする構成や、楕円形状となるようにする構成も考えられる。これらの構成であっても、同様に各第1,第2貫通孔26,41の位置合わせを容易に行うことができる。
【0062】
工具ホルダユニット10における工具ツール70の保持に関わる構成を図6のように変更してもよい。本構成では、第1貫通孔26及び第2貫通孔41がそれぞれ4個ずつ形成されており、さらに各第2貫通孔41には係合部材として剛球46の代わりにプランジャ95が設けられている。そして、連通する各第1,第2貫通孔26,41に設けられた圧縮バネ47により付勢されることで、各プランジャ95の先端が球留めリング40の内周側に突出している。この場合に、各プランジャ95は全体として略円柱状をなしているが、基端部95aが大径となっており段差を備えている。これに対応して、各第2貫通孔41は内側開口側の孔径が小さくなっており段差壁部41aを備えている。そして、各プランジャ95の基端部95aが各第2貫通孔41の段差壁部41aに当接していることにより、各プランジャ95が各第2貫通孔41から抜け出るのが防止されている。また、球留めリング40の厚み寸法はプランジャ95の長さ寸法よりも大きくなっており、プランジャ95は第1貫通孔26内には位置していない。以上の構成の工具ホルダユニット10に工具ツール70を挿入すると、プルスタッド74の先端が各プランジャ95の先端に接触する。そして、所定の力で工具ツール70を押し込むことで、プルスタッド74の先端側傾斜部74aによってプランジャ95が押され、プルスタッド74の環状の係合溝74bにプランジャ95が係合された状態となる。この場合に、本構成によれば、係合溝74bに4つのプランジャ95が係合されるため上記実施の形態よりも係合箇所が増え、より強固に工具ツール70を保持することができる。
【0063】
なお、第1貫通孔26及び第2貫通孔41のそれぞれの数は、3個又は4個に限定されることはなく、2個又は5個であってもよい。また、第1,第2貫通孔26,41の数と第2貫通孔41に設けられる係合部材の種類との組合せは任意であり、第1貫通孔26及び第2貫通孔41をそれぞれ4個ずつ形成し各第2貫通孔41に係合部材として剛球46を設ける構成としてもよい。
【0064】
上記実施の形態では、キー27及びキー溝42をリング収容孔24及び球留めリング40の軸線方向全体に亘って形成したが、これを変更してもよい。例えば、キー27をリング収容孔24における段差部22側の端部から軸線方向の中途位置まで形成し、一方、キー溝42を球留めリング40の一端部からキー27の長さに対応させて形成する。本構成とすることにより、リング収容孔24に収容する際における球留めリング40の表裏の向きが一義的に決まるので、球留めリング40の収容作業の容易化が図られる。
【0065】
上記実施の形態では、キー27をリング収容孔24に設け、キー溝42を球留めリング40に設けたが、キーを球留めリング40に設け、キー溝をリング収容孔24に設けてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、ホルダ本体20を熱可塑性樹脂により形成したが、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂により形成してもよい。
【0067】
上記実施の形態では、各第2貫通孔41を球留めリング40における段差部22側端部に偏倚した位置に形成したが、各第2貫通孔41を球留めリング40における高さ方向の中央位置に形成してもよい。そして、上記実施の形態と同様に、キー27及びキー溝42を各第1,第2貫通孔26,41の対称軸線SL上に設ける。本構成とすることで、球留めリング40の両端面のいずれを段差部22に向けてリング収容孔24に収容したとしても、各第1,第2貫通孔26,41は連通した状態となる。よって、球留めリング40の収容作業の容易化を図ることができる。
【0068】
上記実施の形態では、断面L字状をなすリング保持金具50により球留めリング40の取り外し方向の移動を規制したが、これを変更してよい。例えば、平板状の移動規制金具を設けることで、球留めリング40の取り外し方向の移動を規制してもよい。また、球留めリング40の一端部にフランジを形成し、該フランジを筒状収容部21のリング収容孔24側端部に固定してもよい。
【0069】
上記実施の形態では、ローラカム57が取り付けられる第2固定板52が第1固定板51に対して略直交する方向に延びる構成としたが、第2固定板52が第1固定板51に対して真直ぐ延びる構成としてもよい。
【0070】
上記実施の形態では、リング保持金具50が鋼板により形成されていたが、銅等の他の種類の硬質金属によりリング保持金具50を形成してもよい。
【0071】
工具ホルダユニット10が複数配設される工具マガジンの構成は上記実施の形態における構成に限定されることはなく任意である。例えば、回転ドラムでなくチェーンやベルト等の環状の搬送部材を備え、当該搬送部材に複数の工具ホルダユニット10が配設された構成の工具マガジンであってもよい。より詳細には、当該工具マガジンには駆動ローラと従動ローラとが回転可能に軸支されており、これら駆動ローラ及び従動ローラに対して搬送部材が掛け渡されている。本構成では、駆動ローラの駆動に伴って搬送部材が回転することで各工具ホルダユニット10が移動する。
【0072】
また、各工具ホルダユニット10にローラカム57が設けられておらず、各工具ホルダユニット10が回動不能な構成の工具マガジンであってもよい。また、各工具ホルダユニット10が所定位置にて移動不能に固定されている構成の工具マガジンであってもよい。かかる非移動式の構成においては、工具ツール70の自動交換に際して自動工具交換装置は所望の工具ツール70が保持された工具ホルダユニット10の位置に移動する。以上の構成において、リング保持金具50の形態を上記実施の形態におけるものとは変更し、そのリング保持金具を介して各工具ホルダユニット10を工具マガジンに取り付ける構成としてもよい。かかる場合、工具ツール70の取り付け時に球留めリング40に掛かる負荷はリング保持金具を介して工具マガジンにて受けられるため、球留めリング40の抜けを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】工具ホルダユニットの分解斜視図。
【図2】工具ホルダユニットの平面図。
【図3】図2のA―A線断面図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】工具ホルダユニットの別例を示す横断面図。
【図6】工具ホルダユニットの別例を示す横断面図。
【図7】課題を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0074】
10…工具ホルダユニット、20…ホルダ本体、21…筒状収容部、22…底部としての段差部、23…シャンク収容孔、24…リング収容孔、24a…先端開口、26…第1貫通孔、27…回転位置決め構造を構成するキー、31…固定壁部、40…球留めリング、41…第2貫通孔、42…回転位置決め構造を構成するキー溝、46…係合部材としての剛球、47…付勢部材としての圧縮バネ、50…移動規制金具としてのリング保持金具、51…第1壁部としての第1固定板、52…第2壁部としての第2固定板、54…支軸としての六角穴付きボルト、57…ローラカム、60…ホルダ支持部材としての固定金具、61…固定部、70…工具ツール、71…シャンク部、72…把持部、73…テーパ部、74…プルスタッド、74b…係合溝、95…係合部材としてのプランジャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなし、先端に工具が取り付けられた工具ツールの基端側を収容するホルダを備え、
このホルダは、その基端側に軸線方向に対して直交する方向に延び内外に貫通する貫通孔を複数有するとともに、これら各貫通孔内に、付勢部材と、当該付勢部材により付勢されて前記ホルダの内周側に一部が突出し前記工具ツールに形成された係合溝に係合される硬質金属製の係合部材とを有し、
これら各係合部材の係合により前記工具ツールを着脱可能に保持する工具ホルダユニットにおいて、
前記ホルダは、合成樹脂製のホルダ本体と、前記各貫通孔が形成された位置にて収容され、この収容された位置にて前記ホルダの内周側を構成する硬質金属製のリングと、このリングの反挿入方向側端面に当接するようにして前記ホルダ本体に固定される移動規制金具とを備え、
前記リングはリング側貫通孔を有しており、そのリング側貫通孔が形成されたリングは、本体側貫通孔が形成されたホルダ本体に対して当該ホルダ本体の基端側から挿入されているとともに、その状態で前記移動規制金具によって反挿入方向への移動が規制されており、
さらに、前記ホルダ本体と前記リングとの回転位置決め構造を備え、当該回転位置決め構造により位置決めされた状態で前記ホルダ本体に前記リングが挿入されていることで、前記本体側貫通孔及び前記リング側貫通孔が連通されて前記貫通孔が形成されていることを特徴とする工具ホルダユニット。
【請求項2】
筒状をなし、先端に工具が取り付けられた工具ツールの基端側を収容するホルダを備え、
このホルダは、その基端側に軸線方向に対して直交する方向に延び内外に貫通する貫通孔を複数有するとともに、これら各貫通孔内に、付勢部材と、同付勢部材により付勢されて前記ホルダの内周側に一部が突出し前記工具ツールに形成された係合溝に係合される硬質金属製の係合部材とを有し、
これら各係合部材の係合により前記工具ツールを着脱可能に保持する工具ホルダユニットにおいて、
前記ホルダは、合成樹脂製のホルダ本体と、このホルダ本体の基端側から挿入されて前記各貫通孔が形成された位置にて収容され、この収容された位置にて前記ホルダの内周側を構成する硬質金属製のリングと、このリングの反挿入方向側端面に当接するようにして前記ホルダ本体に固定される移動規制金具とを備え、
前記ホルダ本体に本体側貫通孔を形成するとともに、前記リングにリング側貫通孔を形成し、
前記ホルダ本体と前記リングとの回転位置決め構造を設け、その位置決めにより前記本体側貫通孔及び前記リング側貫通孔とが連通されて前記貫通孔が形成され、
さらに、前記ホルダ本体の内周側には、前記リングの挿入側端面に当接される規制部を設け、当該規制部と前記移動規制金具とにより前記リングを挟持する構成とし、
前記リングの前記挿入側端面における当該リングの内径位置から外周側に向けた所定範囲の領域が、前記ホルダ本体において前記工具ツールの挿入口が形成された先端側に向けて臨むように、前記規制部は前記リングの内径位置から前記所定範囲を除いた前記リングの挿入側端面に当接しており、
前記工具ツールの取り付け時において当該工具ツールが係合位置を越えて押し込まれた場合、当該工具ツールの挿入先側の部位が前記リングの前記挿入側端面における前記所定範囲の領域に当接することで、当該工具ツールのそれ以上の取り付け方向への移動が規制されることを特徴とする工具ホルダユニット。
【請求項3】
前記リングを円環状に形成し、
前記回転位置決め構造を、前記ホルダ本体において前記リングを収容するリング収容部及び前記リングのうち一方に形成されたキーと、他方に形成されたキー溝とにより構成し、
前記キー及び前記キー溝を、前記ホルダの軸線方向に延びるように形成するとともに、前記リング収容部及び前記リングにおける前記軸線方向の全体に亘って位置するように形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の工具ホルダユニット。
【請求項4】
複数の工具ホルダユニットを備え、これら各工具ホルダユニットに工具ツールを保持させることにより工作機械の主軸に取り付ける工具ツールを待機させる工具マガジンであって、
前記各工具ホルダユニットを、請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の工具ホルダユニットとしたことを特徴とする工具マガジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−221462(P2008−221462A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166751(P2008−166751)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【分割の表示】特願2005−257278(P2005−257278)の分割
【原出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(591140813)株式会社カテックス (11)
【Fターム(参考)】