説明

工具ポット

【課題】工具ポットにおける工具ユニットの保持を良好に行うことができるようにする。
【解決手段】工具ポット30は、先端に工具22を具備してなる工具ユニット20のシャンク本体24を挿入可能に形成されたポット本体31を備えている。ポット本体31は工具ユニット20を挿入可能な先端開口34を有しており、この先端開口34には工具ユニット20のクランプ部25に対して当該工具ユニット20の挿入方向における先側から対向する開口フランジ部37が形成されている。開口フランジ部37には磁石51が固定されており、当該磁石51の磁力によってクランプ部25が吸着されることにより、当該工具ユニット20が工具ポット30によって着脱可能に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等の工作機械においては、工具マガジンが設けられたものが知られている。工具マガジンには複数の工具ポットが設けられており、工具ホルダに一体化された工具(以下、この一体物を工具ユニットともいう)を工具ポットに保持させることで複数の工具が待機されている。工具ポットに保持された工具ユニットは、工具交換装置により工作機械の主軸に装着される。
【0003】
当該工作機械として例えば特許文献1には、工具ユニットを工具ポットが一体化された状態で工具マガジンから取り出し工具交換位置に搬送する搬送用アームと、工具交換位置に搬送された工具ユニットを工具ポットから抜き取り主軸に既に装着されている工具ユニットと交換する交換用アームと、を備えた構成が開示されている。当該方式においては、交換用アームにより主軸から抜き取られた工具ユニットは工具ポットに再度装着されて、搬送用アームによる搬送を介して工具マガジンに戻される。
【0004】
また、上記特許文献1には、工具ポットとして、バネなどの付勢力を利用して工具ユニットを保持する保持用の剛球を備えた構成が開示されている。工具マガジンに工具ユニットが待機されている状態や搬送用アームにより工具ユニットが搬送されている状況においては、剛球との係合により工具ユニットが工具ポットに保持されて、当該工具ポットからの工具ユニットの脱落が阻止される。また、主軸への交換に際しては、上記付勢力に抗する力により工具ユニットが工具ポットから引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−32238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く剛球及びバネの組み合わせによって工具ユニットの全重量を受ける構成においては、例えば、工具ユニット装着時の負荷が大きくなることで工具ポットの保護や耐久性確保が難しくなる。また、剛球等の係合部材やそれに関連する構成に求められる強度が高くなることで、製造が難しくなったり、構成が大掛かりなものとなったりする。
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一方を解決することにより、工具ユニットの保持に関する構成をより好適なものとすることができる工具ポットの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0009】
手段1.先端に工具を具備してなる工具ユニット(工具ユニット20等)の少なくとも基端側を挿入可能に形成されたベース体(工具ポット30等)を備え、
前記ベース体において前記工具ユニットと対峙している部分には、磁力によって前記工具ユニットを保持する保持部(磁石51,71や磁石ユニット60)が設けられていることを特徴とする工具ポット。
【0010】
手段1によれば、工具ユニットはベース体に設けられた保持部の磁力によって保持される。かかる構成を採用することにより、工具ユニットを装着する際に必要となる操作力(例えばベース体に工具ユニットを押し込む力)を低減し、工具ユニット装着時に生じる負荷が大きくなることを抑えることができる。また、保持力の増大を図ったとしても、それに起因して構成が大掛かりなものとなったり保持に関する構成が複雑化したりすることを抑制することができる。
【0011】
手段2.前記ベース体は、前記工具ユニットの外周部に対して対向するとともに同工具ユニットの挿入方向に対して垂直となる対向部(開口フランジ部37や底部44等)を有し、
前記保持部は、前記対向部に配設されていることを特徴とする手段1に記載の工具ポット。
【0012】
手段2によれば、挿入方向と垂直となる対向部に保持部を配設することにより、所望とする吸着方向と挿入方向とを揃えることができ、保持部の磁力を保持力として好適に活用することができる。
【0013】
手段3.前記対向部は、前記工具ユニットに対して同工具ユニットの装着方向における先側から当接するようにして形成されていることを特徴とする手段2に記載の工具ポット。
【0014】
手段3によれば、保持部以外の部位を工具ユニットに対して装着方向先側から当接させることにより、工具ユニットと保持部との干渉を抑えて同保持部を保護することが可能となり、保持機能の担保に貢献することができる。
【0015】
手段4.前記対向部には、前記工具ユニットの装着方向における先側に凹み、前記保持部を収容可能に形成された設置部(凹部38,45,98)が形成されており、
前記対向部は、当該対向部において少なくとも前記設置部を挟んだ両側となる部位が前記工具ユニットに対して同工具ユニットの挿入方向における先側から当接するようにして形成されていることを特徴とする手段2に記載の工具ポット。
【0016】
手段4によれば、工具ユニットと保持部との干渉を抑えて同保持部を保護することが可能となり、保持機能の担保に貢献することができる。特に、対向部において少なくとも設置部を挟んだ両側となる部位に対して当接する機能を付与することにより、上記干渉抑制機能を一層好適に発揮させるとともに工具ユニットの保持姿勢のばらつきを好適に抑えることが可能となる。
【0017】
手段5.前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分(例えばシャンク本体24,84)が挿入される挿入部(シャンク収容孔33,93やプルスタッド収容部42)が形成されており、
前記保持部は、前記挿入部の入口部分(先端開口34)を囲むようにして複数配されている又は前記入口部分を囲む環状をなすようにして形成されていることを特徴とする手段2乃至手段4のいずれか1つに記載の工具ポット。
【0018】
手段5によれば、保持部を挿入部の入口部分を囲むようにして複数配する又は同入口部分を囲む環状をなすようにして形成することにより、磁力によって工具ユニットを挿入する際の挿入軌道がずれることを好適に抑えることができる。これにより、ベース体に対する工具ユニットの装着が難しくなることを抑制しつつ、保持機能を強化することができる。
【0019】
手段6.前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分が挿入される挿入部(シャンク収容孔33やプルスタッド収容部42)が形成されており、
前記対向部は、前記ベース体における前記挿入部の入口部分側の端部に配されており、
前記対向部には、前記保持部が設置される設置部(凹部38,45,98)が形成されており、
前記ベース体は、前記設置部に設置された前記保持部の前記挿入部内への露出を回避するようにして形成されていることを特徴とする手段2乃至手段5のいずれか1つに記載の工具ポット。
【0020】
手段6によれば、挿入部内への保持部の露出を回避することにより、工具ユニットの装着作業時に同工具ユニットが保持部に対して干渉することを回避できる。また、挿入部と保持部との間にベース体の一部を介在させることにより、工具ユニットが磁力によって挿入部の中心部から内周面側へと引き寄せられることを抑制することができる。
【0021】
手段7.前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分が挿入される挿入部(シャンク収容孔33やプルスタッド収容部42)が形成されており、
前記保持部は、前記挿入部の入口部分(先端開口34)の周辺に設けられており、
前記保持部は、磁石(磁石51)を有してなり、
少なくとも前記挿入部の入口部分と前記磁石との間には、当該磁石から同入口部分側へ向けて拡がる磁気の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部(対向板部66)が配されていることを特徴とする手段1乃至手段6のいずれか1つに記載の工具ポット。
【0022】
手段7に示すように、入口部分の周辺に保持部を配する構成とすれば、同保持部へのアクセスが容易となり、当該保持部にかかるメンテナンス作業等の容易化に貢献できる。しかしながら、入口部分の周辺に保持部(磁石)を配すると、工具ユニットをベース体に対して装着する際に同工具ユニットの基端部分が保持部に引き寄せられやすくなり、装着作業が難しくなると想定される。
【0023】
そこで本特徴に示すように、遮蔽部によって入口部分側への磁気の拡がりを抑える構成とすれば、工具ユニットを装着する際に同工具ユニットの基端部分が保持部に引き寄せられることを抑制し、作業性の低下を抑制することができる。
【0024】
手段8.前記保持部は、
磁石(磁石51)と、
前記磁石とは別体で設けられているとともに同磁石よりも高強度に形成され、前記磁石による磁力を伝える磁性体(ホルダ65)と
を有してなり、
前記磁性体は、前記磁石よりも前記工具ユニットの装着方向における手前側に突出するようにして形成されており、
前記磁性体に対して前記工具ユニットが当接することを特徴とする手段1乃至手段7のいずれか1つに記載の工具ポット。
【0025】
手段8によれば、磁石の磁力が当該磁石よりも高強度の磁性体を介して工具ユニットに伝わることにより、磁石を保護しつつ磁力による保持機能を好適に発揮させることができる。
【0026】
手段9.前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分が挿入される挿入部(シャンク収容孔33やプルスタッド収容部42)が形成されており、
前記保持部は、前記挿入部の入口部分(先端開口34)の周辺に設けられており、
さらに、前記保持部は、
磁石(磁石61)と、
前記磁石を挟んで相対向するようにして配され、磁性体によって構成された1組の対向壁部(対向板部66,67)と
を有し、
前記対向壁部は、前記磁石よりも前記工具ユニットの挿入方向における手前側へ延設されており、前記挿入方向における先側から前記工具ユニットに対して当接するように形成されていることを特徴とする手段1乃至手段8のいずれか1つに記載の工具ポット。
【0027】
手段9によれば、磁性体によって構成された1組の対向壁部を磁石よりも工具ユニットの装着方向における手前側へ延設することにより、対向壁部によって磁石を保護するとともに磁力を保持力として好適に利用することが可能となる。
【0028】
特に、両対向壁部が工具ユニットに当接する構成を採用することにより、工具ユニットを保持する際の保持力の担保と磁石の保護機能の向上とを実現しつつ、保持姿勢の安定化を図ることができる。
【0029】
手段10.前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分が挿入される挿入部(シャンク収容孔33やプルスタッド収容部42)が形成されており、
前記保持部は少なくとも、前記挿入部の奥側であって前記工具ユニットにおける基端側の端部に対して同工具ユニットの挿入方向における先側となる位置に配されており、
当該保持部によって、前記基端側の端部が吸着されるように構成されていることを特徴とする手段1乃至手段9のいずれか1つに記載の工具ポット。
【0030】
ベース体に対して工具ユニットを装着する際には、工具ユニットの基端側の端部が保持部の磁力によって引き寄せられることとなる。これにより、工具ユニットが装着完了位置へと導くことができ、上記装着作業の容易化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施形態における工具ポットを示す部分破断図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】第2の実施の形態における工具ポットの特徴部分を示す概略図である。
【図4】第3の実施の形態における工具ポットの特徴部分を示す概略図である。
【図5】第4の実施の形態における工具ポットの特徴部分を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施の形態>
以下、発明を具体化した第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。図1は工具ポットを示す部分破断図である。なお、図1においては便宜上、工具ポットに装着された工具ユニットを2点鎖線によって表示している。
【0033】
先ず、工具ユニット20について説明する。工具ユニット20は、全体として略円柱状をなす工具ホルダ21を備えており、この工具ホルダ21の先端に工具(例えばスライスカッタやドリル等のツール)22が装着されてなる。工具ホルダ21は、工具22の装着部分とは反対側に延びるシャンク部23を備えている。シャンク部23は、工具ホルダ21の基端(すなわち工具22とは反対側)に向けて先細り形状をなすシャンク本体24と、工具ホルダ21を工具ポット30に着脱する際に交換用のアーム等により把持されるクランプ部25とを有している。シャンク部23においては、クランプ部25の外径がシャンク本体24の外径よりも大きく設定されており、それらシャンク本体24及びクランプ部25の間に段差が生じている。クランプ部25においてシャンク本体24の基端側を向いている面(以下、環状平面25aと称する)は、シャンク本体24を囲む環状をなすとともに同シャンク本体24の中心軸線方向に対して垂直となる平面状をなしている。
【0034】
シャンク本体24の先端部分には、シャンク部23の最基端部を形成するプルスタッド26が形成されている。このプルスタッド26が工作機械の主軸によって把持されることにより、工具ユニット20が同工作機械に一体化される。
【0035】
工具ポット30は、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いて略円筒状に形成さたポット本体31を主要構成部品として備えている。なお、ポット本体31には、その外壁に多数のリブ32が一体形成されており、同ポット本体31の強度の向上が図られている。
【0036】
ポット本体31には、工具ユニット20のシャンク部23の大半(詳しくはシャンク本体24)が収容されるシャンク収容孔33が形成されている。シャンク収容孔33には、その先端開口34から工具ユニット20のシャンク部23が挿入される。
【0037】
シャンク収容孔33の基端部分、すなわち上記プルスタッド26が収容される部分には、基端側に向けて除々に孔径が小さくなるテーパ部33aが形成されている。工具ポット30への工具ユニット20の装着に際しては、先端開口34から基端開口36に向けて工具ユニット20が差し込まれることとなる。仮に、工具ユニット20の装着軌道が上記軸線からずれた場合であっても、プルスタッド26の基端部がテーパ部33aに当たり、上記装着軌道のずれが抑えられることとなる。これにより、工具ユニット20が所定の装着完了位置へと誘導される。
【0038】
ここで、図1及び図2を参照し、工具ポット30に装着された工具ユニット20を着脱可能な状態で保持する保持部について説明する。図2は図1のA矢視図であり、当該図2においても図1と同様に工具ユニット20を2点鎖線によって表示している。
【0039】
図1に示すように、ポット本体31の先端開口34には、放射方向に凸となる開口フランジ部37が一体形成されている。開口フランジ部37は、先端開口34の開口縁に沿って延びる環状をなしており、工具ユニット20のクランプ部25に対して同工具ユニット20の装着方向における先側から対向している。開口フランジ部37におけるその対向部分には、上記保持部を構成する磁石51が取り付けられている。
【0040】
具体的には、開口フランジ部37にはクランプ部25とは反対側に凹む凹部38が形成されており、同凹部38に対して磁石51(詳しくはネオジウム磁石等の永久磁石)が収容された状態で固定されている。より詳しくは、磁石51に形成された貫通孔に対して挿入されたネジ55が開口フランジ部37に形成されたネジ孔に対して螺着されることで、磁石51がポット本体31に対して一体化されている。なお、磁石51の脱落を防止できるのあれば、接着剤等の他の固定手段を用いてポット本体31及び磁石51を一体化してもよい。
【0041】
凹部38は、先端開口34の開口縁から離れた位置に形成されており、当該凹部38に収容された磁石51と先端開口34(シャンク収容孔33)との間には、ポット本体31の肉部が介在する構成となっている。このように、先端開口34側への露出を抑えるようにして磁石51を配置することにより、磁力によって工具ユニット20が工具ポット30に対する挿入方向と交差する方向へ引き寄せられることを抑制している。
【0042】
凹部38は当該凹部38からの磁石51の突出が回避されるように形成されている。より詳しくは、開口フランジ部37においてクランプ部25(詳しくは環状平面25a)と対向している面(以下、対向面37aと称する)は環状平面25aと平行となるように形成されており、この対向面37aと同一平面上に磁石51の表面が位置するように形成されている。
【0043】
工具ポット30に対して工具ユニット20が装着完了位置に配された状態では、同工具ユニット20のクランプ部25が上記対向面37aに対して当接し、当該クランプ部25が磁石51の磁力によって吸着されることで工具ユニット20が保持されている。
【0044】
ここで、磁石51及びネジ55関係について補足説明する。磁石51には、ネジ55の頭部を収容する収容凹部が形成されており、同ネジ55の環状平面25a側への突出が回避されている。これにより、上述の如く環状平面25aと対向面37aとが当接している状態では、同環状平面25aに対して磁石51の表面が当接することとなる。つまり、環状平面25aは対向面37aにおいて少なくとも凹部38を囲っている範囲を含む部位と、磁石51との両者に対して当接している。このように磁石51以外にも装着方向先側から当接する部位を設けることで、当該磁石51に生じる負荷を分散させている。
【0045】
特に、クランプ部25は対向面37aにおいて少なくとも凹部38を挟んだ両側となる部位(より詳しくは凹部38を囲っている範囲を含む部位)と当接している。これにより、保持バランスの向上を図っている。
【0046】
なお、磁石51を凹部38内に完全に埋没させることにより、磁石51とクランプ部25との当接を回避する構成を採用することも可能である。かかる構成によれば、磁石51がクランプ部25に対して触れないため、当該磁石51が磨耗したり変形したりするといった不都合を好適に回避することができる。
【0047】
また、本実施の形態においては磁石51が複数(詳しくは4つ)採用されており、それら磁石51は、図2に示すように、先端開口34を囲むようにして環状に配置されている。より詳しくは、それら磁石51は、先端開口34の中心からの距離が同等となるようにして、且つ隣り合う2つの磁石51の距離が同等となるようにして配列されている。これにより、工具ユニット20の保持機能の安定化が図られている。
【0048】
なお、工具ユニットはその用途等に応じて大きさが異なっている。このため、それら各種工具ユニットに対応する保持力についても、例えば大型の工具ユニットに対応するものでは50kgf〜70kgf、小型の工具ユニットの対応するものでは10kgf〜15kgfとなるように設定されている。因みに、大型の工具ユニットについては小型の工具ユニットと比較してシャンク本体やクランプ部等の外径が大きくなり、大型の工具ユニットに対応する工具ポットにおいては先端開口や開口フランジ部の径が大きくなる。そこで、大型の工具ユニットに対応する工具ポットにおいては環状に配列された磁石51の数を増やすことで上記保持力を確保するとよい。
【0049】
以上詳述した工具ポット30は、工作機械等に設けられた工具マガジンに配設されている。具体的には、工具ポット30(ポット本体31)の基端部分に工具マガジンに対する固定部が設けらており、当該固定部を介して工具ポット30が工具マガジンに装着されることで同工具マガジンに工具ユニット20が待機された状態となっている。このように、固定部を基端側に配することにより、工具ポット30を傾ける等して工具ユニット20ごと姿勢変更を可能としている。
【0050】
工具マガジンは複数の工具ポット30が装着可能となっており、各工具ポット30がスライスカッタやドリル等の各種工具(工具ユニット20)を具備することにより、多数の工具が待機された状態となっている。そして、これら待機された工具ユニットは自動工具交換装置により工作機械の主軸との間で自動交換される。
【0051】
以上詳述した第1の実施の形態によれば、以下の優れた効果を有する。
【0052】
筒状の工具ポット30(ポット本体31)に対して工具ユニット20の基端側を挿入した状態で保持し、ポット本体31に形成されたシャンク収容孔33によって上記挿入方向と交差する方向への工具ユニット20の変位を規制する構成を採用することにより、工具ユニット20の姿勢を安定化させる機能がポット本体31に付与されている。保持部(磁石51)は取外方向への工具ユニット20の変位を規制すれば足りるため、工具ユニット20の姿勢の安定化機能を保持部に相当する構成に全て委ねる構成と比較して保持部の構成の簡素化を実現可能となっている。
【0053】
工具ユニット20は工具ポット30に設けられた磁石51の磁力によって保持され、当該工具ポット30からの脱落が規制される。かかる構成を採用することにより、工具ユニット20装着時の荷重を低減することができる。また、工具ユニット20を保持するための構成を簡素化でき、保持機能を担保しつつ工具ポットの製造の容易化や製造コストの低減に貢献することが可能となる。
【0054】
また、磁石による磁力によって工具ユニット20が装着完了位置へと引き寄せられることで、当該装着完了位置への配置が容易となる。
【0055】
工具ポット30において工具ユニット20の挿入方向と垂直となる部分(開口フランジ部37)に磁石51を配設することにより、磁力による吸着方向と挿入方向とを揃えることが可能となる。これにより、磁石51の磁力を保持力として好適に作用させることができる。
【0056】
開口フランジ部37に形成された凹部38に磁石51を収容して、同磁石51の露出を抑えることにより、磁石51の保護を図っている。特に、開口フランジ部37(詳しくは対向面37a)において凹部38を囲む部位と工具ユニット20のクランプ部25とが当接する構成が採用されており、工具ユニット20と磁石51との干渉が抑えられている。これにより、磁石51が削れたり変形したりするといった不都合を生じにくくしている。また、工具ユニット20との接触面積を稼ぐことで当該工具ユニット20の保持姿勢の安定化を実現している。
【0057】
工具ポット30の先端開口34付近に磁石51を配する場合には、工具ユニット20のシャンク本体24を先端開口34を通じて挿入する際に、同シャンク本体24が磁石51の磁力によって引っ張られ、挿入軌道がずれるといった不都合が生じやすくなる。このような不都合は、保持力の強化を狙って磁石51の磁力を強力なものとすることで顕著になり得る。
【0058】
この点、上記実施の形態に示すように、磁石51を先端開口34の中心部分から距離が同一となるように且つ隣り合う他の磁石との間隔が同一となるように配設すれば、保持力の偏りを抑え、保持機能をバランスよく発揮させることができるだけでなく上述したような磁力の影響による挿入軌道のずれを好適に抑えることができる。特に、上述の如く筒状の工具ポット30の基端部分に固定部を配する構成においては、工具ユニット20を同工具ポット30に対して装着する際に同工具ユニット20を工具ポット30内に挿入する必要があるが、挿入方向のばらつきを抑制することにより工具ユニット20の着脱を好適に行うことができる。
【0059】
磁石51が凹部38に収容されている状態では、ポット本体31の一部が当該磁石51とシャンク収容孔33との間に介在し、同磁石51のシャンク収容孔33内への露出が回避される構成となっている。シャンク収容孔33へ工具ユニット20を挿入する際に、プルスタッド26等が磁石51に引っ掛かることを回避することができる。これにより、磁石51を好適に保護することができる。更には、磁力がシャンク本体24をシャンク収容孔33の内周面側に引き寄せるようにして作用することを抑制し、上述した挿入軌道のずれを好適に抑えることができる。
【0060】
<第2の実施の形態>
本実施の形態の工具ポット30Xにおいては、磁石61及び当該磁石61を保持する磁石ホルダ65によって磁石ユニット60を構成し、当該磁石ユニット60を保持部として利用している。以下、図3を参照して磁石ユニット60について説明する。図3は磁石ユニット60の構成を示す概略図であり、図1を援用したものである。なお、工具ポット30Xのポット本体31X及び磁石61については、上記第1の実施の形態におけるポット本体31及び磁石51と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
磁石ホルダ65は、磁石61を挟んで相対向する1組の対向板部66,67とそれら対向板部66,67を連結する連結板部68とを有してなり、磁性体(詳しくは鉄製の板材)を略コ字状に折り曲げて形成されている。磁石61は、対向板部66,67の間に配置された状態で、自身の磁力によって同磁石ホルダ65と一体化されている。
【0062】
磁石ユニット60は、固定手段としてのネジ69を用いてポット本体31Xに固定されている。具体的には、連結板部68には磁石61の上記貫通孔に連通する連通孔が形成されており、これら両孔に沿って挿通されたネジ69が開口フランジ部37に形成されたネジ孔に螺着されることで、ポット本体31Xに対して一体化されている。
【0063】
磁石ユニット60が凹部38に固定された状態では、その大部分が同凹部38内に嵌まった状態となっており、対向板部66,67の先端部分のみが凹部38から突出している。このようして凹部38から突出している部分に対して工具ユニット20のクランプ部25(環状平面25a)が上記工具ユニット20の装着方向における手前側から当接している。つまり、上記第1の実施の形態においてはクランプ部25の当接対象が開口フランジ部37(詳しくは対向面37a)及び磁石51となっていたのに対して、本実施の形態においては当該当接対象が対向板部66,67となっている。
【0064】
このように、対向板部66,67を磁石61よりも工具ユニット20のクランプ部25側に延設することにより、磁石61とクランプ部25との干渉を回避している。かかる構成によれば、磁石61とクランプ部25との間に隙間が生じさせたとしても、対向板部66,67によって磁力を好適に利用することができ、保持力を担保することが可能となる。特に、磁石61を挟むようにして形成された対向板部66,67の両者がクランプ部25の環状平面25aに対して当接することにより、保持姿勢の安定化を実現するとともに上記干渉回避機能を一層好適なものとしている。
【0065】
また、上記対向板部66,67はシャンク収容孔33の中心軸線に対して放射方向に並んだ状態となっている。つまり、一方の対向板部66が磁石61よりも先端開口34に近い側に位置し、他方の対向板部67が磁石61よりも先端開口34から遠い側に位置するように構成されている。このように磁石61に対して先端開口34側となる位置に対向板部66を配することにより、磁石61の磁気が先端開口34側へ拡がることを抑制している。つまり、先端開口34側の対向板部66には、先端開口34側へ拡がる磁気の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽機能が付与されている。これにより、工具ユニット20を挿入する際にシャンク本体24が磁石61に引き寄せられることを抑制し、挿入軌道のズレを生じにくくしている。
【0066】
<第3の実施の形態>
本実施の形態においては、保持部を工具ポット30Yの基端開口36Y側に配置している。以下、図4を参照して、保持部の配置について説明する。図4は保持部の配置を示す概略図であり、図1を援用したものとなっている。なお、磁石71については上記第1の実施の形態におけ磁石51と同様であり、工具ポット30Yのポット本体31Yについては上記第1の実施の形態におけるポット本体31と類似であるため、当該類似部分についての詳細な説明は省略する。
【0067】
工具ポット30Yは、ポット本体31Yとリング41とを主要構成部品として備えている。ポット本体31Yには、工具ユニット20のシャンク部23の大半(詳しくはシャンク本体24)が収容されるシャンク収容孔33Yが形成されている。シャンク収容孔33Yの基端側にはリング収容孔35Yが形成されている。リング収容孔35Yはシャンク収容孔33Yに対して連通されているとともに同シャンク収容孔33Yに対して拡径されており、基端側に開放されている。リング収容孔35Yには基端開口36Yから挿入されてリング41が収容されており、同リング41は、ボルト等の固定手段を用いてポット本体31Yに一体化されている。
【0068】
リング41は銅などの硬質金属を用いて略円筒状に形成されている。リング41には、工具ユニット20の挿入方向先側へ凹むプルスタッド収容部42がシャンク収容孔33Yに対して同一軸線上となるようにして形成されている。プルスタッド収容部42には工具ユニット20のプルスタッド26が収容される。なお、当該リング41とポット本体31Yとによって工具ポット30Yのベース体30aYが構成されている。
【0069】
プルスタッド収容部42の内周面には軸線方向の途中位置からシャンク収容孔33Y側の端部に向けて除々に孔径が大きくなるテーパ部43が形成されている。テーパ部43はプルスタッド収容部42がシャンク収容孔33Yに連通する位置まで延びている。工具ポット30Yへの工具ユニット20の装着に際しては、先端開口34から基端開口36Yに向けて工具ユニット20が差し込まれることとなる。仮に、工具ユニット20の装着軌道が上記軸線からずれた場合であっても、プルスタッド26の基端部がリング41のテーパ部43に当たり、上記装着軌道のずれが抑えられることとなる。これにより、工具ユニット20が所定の装着完了位置へと誘導される。
【0070】
ポット本体31Yの基端開口36Yに配されたリング41において工具ユニット20の装着方向における先側の端部には、具体的にはプルスタッド収容部42の底部44は、プルスタッド26の先端面26aに対して対向する対向面44aを有している。対向面44aは、シャンク収容孔33Yの中心軸線(工具ユニット20の挿入方向)に対して垂直となる平面状をなしている。
【0071】
底部44(対向面44a)には上記装着方向における先側に向けて凹む凹部45が複数形成されている。これら凹部45は底部44に形成されたプルスタッド26用の貫通孔46を囲むようにして配設されている。各凹部45には、それぞれ磁石71が収容されており、それら磁石71がリング41に対して固定されている。なお、凹部45及び磁石71の関係や磁石71の固定方法については、上記第1の実施の形態における凹部38及び磁石51の関係と同様であるため説明を省略する。
【0072】
磁石71及び対向面44aは、プルスタッド26の先端面26aに当接しており、かかる当接状態では磁石71によってプルスタッド26が吸着され、工具ポット30Yによって工具ユニット20が保持されている。これにより、工具ポット30Yからの工具ユニット20の脱落が阻止されている。
【0073】
以上詳述したように、保持部を構成する磁石71を工具ポット30Yの基端開口36Y側に配することにより、工具ユニット20を装着する際に磁力によって挿入方向がずれるといった不都合を生じにくくすることができる。
【0074】
上記第1の実施の形態や本実施の形態に示すように磁力を用いて工具ユニット20を保持する構成においては、工具ユニット20を工具ポット30Yに対して装着する際の抵抗が生じにくいため、鋼球やバネを使用した従来の工具ポットと比較して、装着時に必要となる操作力が大きくなりにくい。これにより、例えば、手作業による工具ユニット20の装着が許容されることとなる。工具ユニット20を工具ポット30Yに装着する際には、先端開口34→シャンク収容孔33Yを通じてプルスタッド収容部42に到達したプルスタッド26が磁石71の磁力によって装着完了位置(磁石71及び対向面44aに当接する位置)へと引き寄せられる(誘導される)こととなる。これにより、工具ユニット20の装着作業の容易化に貢献することができる。また、上述の如く磁力に起因した装着軌道のずれを抑えることができるため、装着作業の更なる容易化が期待できる。
【0075】
<第4の実施の形態>
上記第1の実施形態では所謂MASタイプの工具ポット30に対して磁石を用いた保持部を適用したが、本実施形態では所謂HSKタイプの工具ポット90に対して同保持部を適用している。以下、当該構成を、図5を参照しながら説明する。図5は、工具ポット90の縦断面図である。なお、図5においては便宜上、工具ポット90に装着された工具ユニット80を2点鎖線によって表示している。
【0076】
工具ポット90の説明に先立ち、工具ユニット80について説明すると、当該工具ユニット80は工具ホルダ81の先端に工具82が装着されてなる。工具ホルダ81は、工具82の装着部分とは反対側に延びるシャンク部83を備えている。シャンク部83は、工具ポット90に嵌る略円筒状のシャンク本体84と、工具ホルダ81を工具ポット90に着脱する際に交換用により把持されるクランプ部85とを有してなり、クランプ部85の外径がシャンク本体84の外径よりも大きく設定されることで、それらシャンク本体84及びクランプ部85の間に段差が生じている。
【0077】
シャンク本体84の先端部分には、シャンク本体84の内周面から内方に突出するようにして環状凸部86が一体形成されている。この環状凸部86は、工作機械の主軸に対して工具ユニット20を一体化するための機能が付与されている。
【0078】
工具ポット90は、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂により略筒状に形成されたポット本体91を備えている。ポット本体91には、シャンク部83のほぼ全域(詳しくはシャンク本体84)が収容されるシャンク収容孔93が形成されている。シャンク収容孔93には、その先端開口94から工具ユニット80のシャンク本体84が挿入される。
【0079】
シャンク収容孔93の基端側には連通孔95が形成されている。連通孔95は、シャンク収容孔93に対して同一軸線上で連なっているとともに、その内径がシャンク収容孔93の内径よりも小さく設定されている。このため、シャンク本体24の内周面は段差状をなしている。
【0080】
連通孔95はポット本体91の基端側に開放されている。連通孔95には筒状部材101が基端開口96側から挿入されており、当該筒状部材101が連通孔95及びシャンク収容孔93内に収容された状態となっている。筒状部材101はポット本体91に対してボルトを用いて一体化されおり、これら筒状部材101及びポット本体91によって本工具ポット90のベース体90aが構成されている。
【0081】
筒状部材101はその外周面が、シャンク収容孔93の内周面に対して隙間をへだてて対向しており、これら両周面の間に上記シャンク本体84が収容されている。シャンク本体84は、その外周面がシャンク収容孔93の内周面に対して当接しているとともに上記環状凸部86が筒状部材101の外周面に対して当接しており、ポット本体91と筒状部材101によって挟まれた状態となっている。
【0082】
本実施の形態におけるポット本体91についても、先端開口94に工具ユニット80のクランプ部85に装着方向における先側から対向するようにして開口フランジ部97が形成されている。そして、開口フランジ部97に形成された凹部98に磁石111が配設されている。これら開口フランジ部97(凹部98)及び磁石111にかかる構成については、上記第1の実施の形態に示した開口フランジ部37(凹部38)及び磁石51と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0083】
工具ユニット80が工具ポット90に対して装着された状態では、磁石111の磁力によって工具ユニット80が保持され、先端開口94からの工具ユニット80の脱落が阻止されることとなる。
【0084】
<他の実施形態>
本発明は上記各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施しても良い。
【0085】
(1)上記各実施形態においては、装着方向に対して垂直となる部分に「保持部」としての磁石51等を配置したが、これに限定されるものではない。磁石51等は少なくとも工具ユニット20と対峙する部分に配されていればよく、例えばシャンク収容孔33の内周面に代表されるように工具ユニット20の装着経路に沿うようにして延びている部分に磁石51等を配することも可能である。
【0086】
(2)上記各実施の形態においては、「保持部」としての磁石51,111等を複数採用し、それら磁石51,111を先端開口34,94の中心部を挟むようにして配置したが、必ずしも当該中心部を挟むようにして磁石51,111を配置する必要はない。少なくとも、磁力の偏りが抑えられ先端開口34,94の中心に向けてシャンク本体24,84が挿入された際に同シャンク本体24を挿入方向とは異なる特定の方向へと引き寄せる力が生じない又は生じにくいように設定されるのであれば、各磁石51,111等の配置は任意である。例えば、複数かつ奇数(3,5,7・・・)の磁石51,111を先端開口34,94を囲むようにして配する場合には、それら磁石51を等間隔となるように配置するとよい。
【0087】
また、複数の磁石51,111等を環状に並べて配置したが、これに限定されるものではない。「保持部」として1の磁石を採用するとともに、当該磁石を環状に形成することも可能である。例えば、第1の実施の形態においては、磁石51を先端開口34を囲むリング状に形成することも可能である。
【0088】
(3)上記各実施形態においては、「設置部」としての凹部38,45,98から「保持部」としての磁石51,71,111が突出しない構成としたが、磁石51,71,111を突出させる構成としてもよい。
【0089】
(4)上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態に示した技術的思想と上記第3の実施の形態に示した技術的思想を組み合せることも可能である。例えば第3の実施の形態に示した工具ポット30Yにおいて、開口フランジ部37に磁石51及び磁石ユニット60の少なくとも何れかを配する構成とすることも可能である。これにより、工具ポット30からの工具ユニット20の脱落を一層好適に抑制することができ、さらには、工具ユニット20の姿勢を好適に安定化させることができる。
【0090】
また、上記第4の実施の形態に対して上記第3の実施の形態に示した技術的思想を適用することも可能である。すなわち、シャンク収容孔93においてシャンク部83の端部に対して工具ユニット80の装着方向における先側から対峙する壁部に磁石51を移設することも可能である。さらには、当該壁部及び開口フランジ部37の両者に磁石を配設し、シャンク部83及びクランプ部85の両者を吸着する構成とすることも可能である。
【0091】
(5)上記第2の実施の形態においては、磁石ホルダ65を略コ字状に形成したが、これに限定されるものではない。少なくとも、先端開口34と磁石61との間に存在している対向板部66に相当する構成を有していればよく、磁石ホルダ65の形状については任意である。例えば装着方向における手前側に開放された箱状とすることも可能である。
【0092】
(6)上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態に示した工具ポット30と、第4の実施の形態に示した工具ポット90とを共通化し、第1の実施の形態〜第3の実施の形態に示した工具ユニット20と第4の実施の形態に示した工具ユニット80とを同じ工具ポットを適用することも可能である。例えば、工具ユニット20,80についてはともにクランプ部25を有しており、工具ポット30,90の開口フランジ部97に配された磁石51,111によって同クランプ部25を吸着する構成となっている。そこで、両工具ポット30,90において共通となるポット本体31,91の先端側を除き基端側となる部分等を省略するとよい。例えば、第1の実施の形態に示す工具ポット30の基端側の凡そ半分(詳しくはシャンク本体24の周面と当接していない部分)を省略したり、第4の実施の形態に示す工具ポット90の基端側の凡そ半分(詳しくはシャンク本体24の周面と当接していない部分)及び筒状部材101を省略したりするとよい。
【0093】
(7)上記各実施の形態においては、永久磁石を用いて保持部を構成したが、これに代えて電磁石を用いて保持部を構成することも可能である。
【0094】
(8)上記各実施の形態では、「対向部」としての開口フランジ部37や底部44に凹部38,45を形成して同凹部38,45,98に「保持部」としての磁石51,71,111や磁石ユニット60等を配置したが、これに限定されるものではない。開口フランジ部37の対向面37aや底部44の対向面44aに対してそれら磁石51等を外付けし、それら対向面37a,44a等から保持部全体が突出する構成としてもよい。
【0095】
(9)上記各実施の形態においては、工具ユニット20,80の基端側の全域が工具ポット30,90によって覆われる構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、工具ユニット20,80の基端側の一部が覆われない構成とすることも可能である。
【0096】
例えば、工具ユニット20,80のプルスタッド26や環状凸部86等が工具ポット30,90の基端開口36,96から工具ポット30,90の外部に突出する構成としてもよい。
【0097】
(10)工具ユニット20,80を保持する構成として、従来の工具ポットに採用されているような係合部材(例えば鋼球)及び係合部材用の付勢部材(例えばバネ)を用いた保持機構を併用してもよい。例えば、各工具ユニット20,80の基端側となる部分(プルスタッド26や環状突部86)と係合部材とが係合する構成とすればよい。
【0098】
第1の実施の形態に示すように工具ユニット20がプルスタッド26を有する構成においては、シャンク収容孔33の中心軸線に対する放射方向へ変位可能となるようにして上記係合部材を工具ホルダ21に配設し、当該係合部材をシャンク収容孔33からシャンク部23の収容領域に突出する側へ付勢する。そして、シャンク収容孔33内へ突出した係合部材がプルスタッド26と係合する構成とすればよい。
【0099】
また、第4の実施の形態に示すように工具ポット90が筒状部材101を有する構成においては、シャンク収容孔93の中心軸線に対する放射方向へ変位可能となるようにして上記係合部材を筒状部材101に配設し、当該係合部材を筒状部材101からシャンク部83の収容領域に突出する側へ付勢する。そして、筒状部材101から突出した係合部材が環状凸部86と係合する構成とすればよい。
【0100】
少なくとも磁石による保持機能が付与されていることで、工具ユニット20,80を装着する際の負荷(上記係合部材と工具ユニット20,80を係合させる際の負荷)を抑えることができる。
【符号の説明】
【0101】
20…工具ユニット、21…工具ホルダ、22…工具、23…シャンク部、25…クランプ部、30,30X,30Y…工具ポット、30a,30aY…ベース体、33…挿入部を構成するシャンク収容孔、34…入口部分としての先端開口、37…対向部としての開口フランジ部、37a…対向面、38…設置部としての凹部、41…リング、42…挿入部を構成するプルスタッド収容部、44…対向部としての底部、45…設置部としての凹部、51…保持部としての磁石、60…保持部としての磁石ユニット、61…保持部を構成する磁石、65…保持部を構成するホルダ、66…遮蔽部又は対向壁部としての対向板部、67…対向壁部としての対向板部、71…保持部としての磁石、80…工具ユニット、85…クランプ部、90…工具ポット、97…対向部としての開口フランジ部、98…設置部としての凹部、111…保持部としての磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に工具を具備してなる工具ユニットの少なくとも基端側を挿入可能に形成されたベース体を備え、
前記ベース体において前記工具ユニットと対峙している部分には、磁力によって前記工具ユニットを保持する保持部が設けられていることを特徴とする工具ポット。
【請求項2】
前記ベース体は、前記工具ユニットの外周部に対して対向するとともに同工具ユニットの挿入方向に対して垂直となる対向部を有し、
前記保持部は、前記対向部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の工具ポット。
【請求項3】
前記対向部は、前記工具ユニットに対して同工具ユニットの装着方向における先側から当接するようにして形成されていることを特徴とする請求項2に記載の工具ポット。
【請求項4】
前記対向部には、前記工具ユニットの装着方向における先側に凹み、前記保持部を収容可能に形成された設置部が形成されており、
前記対向部は、当該対向部において少なくとも前記設置部を挟んだ両側となる部位が前記工具ユニットに対して同工具ユニットの挿入方向における先側から当接するようにして形成されていることを特徴とする請求項2に記載の工具ポット。
【請求項5】
前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分が挿入される挿入部が形成されており、
前記保持部は、前記挿入部の入口部分を囲むようにして複数配されている又は前記入口部分を囲む環状をなすようにして形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載の工具ポット。
【請求項6】
前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分が挿入される挿入部が形成されており、
前記対向部は、前記ベース体における前記挿入部の入口部分側の端部に配されており、
前記対向部には、前記保持部が設置される設置部が形成されており、
前記ベース体は、前記設置部に設置された前記保持部の前記挿入部内への露出を回避するようにして形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1つに記載の工具ポット。
【請求項7】
前記ベース体には、前記工具ユニットの基端部分が挿入される挿入部が形成されており、
前記保持部は、前記挿入部の入口部分の周辺に設けられており、
前記保持部は、磁石を有してなり、
少なくとも前記挿入部の入口部分と前記磁石との間には、当該磁石から同入口部分側へ向けて拡がる磁気の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部が配されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の工具ポット。
【請求項8】
前記保持部は、
磁石と、
前記磁石とは別体で設けられているとともに同磁石よりも高強度に形成され、前記磁石による磁力を伝える磁性体と
を有してなり、
前記磁性体は、前記磁石よりも前記工具ユニットの装着方向における手前側に突出するようにして形成されており、
前記磁性体に対して前記工具ユニットが当接することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の工具ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96345(P2012−96345A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248771(P2010−248771)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(591140813)株式会社カテックス (11)
【Fターム(参考)】