説明

工具交換方法及びマシニングセンター

【課題】 ツールホルダーの交換を効率良く安定して行う。
【解決手段】 主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換する工具交換方法において、ツールホルダーと主軸の両方を同期回転させながら、ツールホルダーを主軸に装着する。主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換するマシニングセンターにおいて、ツールホルダーと主軸の両方を同期回転させながら、ツールホルダーを主軸に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換する工具交換方法及びマシニングセンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マシニングセンターにおいて主軸と自動工具交換装置(ATC装置)の間でツールホルダーを交換する際、主軸と主軸に装着されたツールホルダーをともに停止させて交換を行っていた。
【0003】
特許文献1には、ツールホルダーを強力に把持する構成の工具交換装置が示されている。
【特許文献1】特開2006−116618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ツールホルダーを交換する際に主軸を停止させると、主軸の停止及び起動に伴うエネルギーロスが発生する。また、主軸の停止及び起動が軸受の負荷変動等を引き起こし、その結果として発生した温度変化により精度が不安定になる場合がある。
【0005】
そこで本発明は、ツールホルダーの交換を効率良く安定して行うことができる工具交換方法及びマシニングセンターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決手段を例示すると、以下のとおりである。
【0007】
(1) 主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換する工具交換方法において、ツールホルダーと主軸を同期回転させながら、ツールホルダーを主軸に装着することを特徴とする方法。
【0008】
(2) ツールホルダーを回転させるための回転部分が自動工具交換装置に設けられていて、ツールホルダーと回転部分の両方を回転させながら、ツールホルダーを回転部分に係合することを特徴とする先述の方法。
【0009】
(3) 主軸とツールホルダーと回転部分の全てを同期回転させながら工具交換することを特徴とする先述の方法。
【0010】
(4) 工具交換の際に、主軸の回転速度を所定値以上に制御して、主軸の温度変化が所定の範囲内に維持されるようにすることを特徴とする先述の方法。
【0011】
(5) 主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換するマシニングセンターにおいて、ツールホルダーと主軸の両方を同期回転させながら、ツールホルダーを主軸に装着可能にしたことを特徴とするマシニングセンター。
【0012】
(6) 主軸に内歯歯車を設け、ツールホルダーにこの内歯歯車と係合する外歯歯車を設けたことを特徴とする先述のマシニングセンター。
【0013】
(7) ツールホルダーにプルスタッドを設け、プルスタッドがその回転軸心に垂直な多角形断面を有し、主軸にこのプルスタッドと係合するコレットを設けたことを特徴とする先述のマシニングセンター。
【0014】
(8) 主軸に回転軸心に沿って突出するキーを設け、ツールホルダーにこのキーと係合するキー溝を設けたことを特徴とする先述のマシニングセンター。
【0015】
(9) 自動工具交換装置が、ツールホルダーを回転させるためのツールホルダー回転用モーターと、ツールホルダー回転用モーターに固定された第1歯車と、第1歯車に係合する第2歯車を有し、ツールホルダーにツールホルダー回転用歯車が設けられていて、第2歯車とツールホルダー回転用歯車が係合可能であり、ツールホルダー回転用モーターが、第1歯車及び第2歯車を介してツールホルダー回転用歯車を回転させることにより、ツールホルダーを回転させることを特徴とする先述のマシニングセンター。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ツールホルダーを効率良く安定して主軸に装着できる。たとえば、ツールホルダーと主軸を同期回転させながらツールホルダーを主軸に装着するため、とくに、工具交換の際に、従来のように主軸を停止させず、所定の回転速度以上に維持すると、例えば主軸の停止及び起動に伴うエネルギーロスが発生しない。
【0017】
さらに、自動工具交換装置がツールホルダーを回転させるための回転部分を有していて、ツールホルダーと回転部分の両方を回転させながら、ツールホルダーを回転部分に係合すれば、主軸を停止させることなくツールホルダーを回転部分に係合できる。
【0018】
とくに、主軸とツールホルダーと回転部分の全てを工具交換時に同期回転させると、効果が顕著となる。とくにツールホルダーを回転部分により容易に係合できる。
【0019】
例えば、主軸の回転速度をつねに所定値以上に維持して、主軸の温度変化を所定の範囲内に維持すると、主軸の負荷変動等により精度が不安定になることがない。
【0020】
さらに、主軸に内歯歯車を設け、ツールホルダーにこの内歯歯車と係合する外歯歯車を設ければ、主軸とツールホルダーが同じ回転数で回転していれば完全に同期していなくても、主軸とツールホルダー間の相対的な回転が防止され得る。この場合、内歯歯車と外歯歯車が主軸とツールホルダー間の相対的な回転の防止に役立ち得る。例えば、主軸の内歯歯車とツールホルダーの外歯歯車が同じ回転数で多少異なる位相で回転していても、主軸とツールホルダーが回転方向に容易かつ強固に固定され得る。
【0021】
とくに、ツールホルダーにプルスタッドを設け、プルスタッドがその回転軸心に垂直な多角形断面を有し、主軸にこのプルスタッドと係合するコレットを設ければ、主軸とツールホルダー間の相対的な回転がとくに容易に防止され得る。この場合、コレットとプルスタッドが主軸とツールホルダー間の相対的な回転の防止に役立ち得る。例えば、コレットがプルスタッドを緩く挟持した後で適所に固定可能なため、主軸とツールホルダーが回転方向にとくに容易に固定され得る。
【0022】
とくに、主軸に回転軸心に沿って突出するキーを設け、ツールホルダーにこのキーと係合するキー溝を設ければ、主軸とツールホルダーの回転が好適には完全に同期していることが必要とされるものの、主軸とツールホルダー間の相対的な回転が確実に防止され得る。この場合、主軸とツールホルダーが回転方向にとくに強固に固定され得る。
【0023】
とくに、自動工具交換装置が、ツールホルダーを回転させるためのツールホルダー回転用モーターと、ツールホルダー回転用モーターに固定された第1歯車と、第1歯車に係合する第2歯車を有し、ツールホルダーがツールホルダー回転用歯車を有し、第2歯車とツールホルダー回転用歯車が係合可能であり、ツールホルダー回転用モーターが、第1歯車及び第2歯車を介してツールホルダー回転用歯車を回転させることにより、ツールホルダーを回転させると、自動工具交換装置がツールホルダー回転用モーターを有することでマシニングセンターのスペースが節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の最良の形態は、主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換する工具交換方法及びマシニングセンターであって、ツールホルダーと主軸の両方を同期回転させながら、ツールホルダーを主軸に装着することを特徴とするものである。
【0025】
ツールホルダーと主軸の両方を同期回転させる場合、ツールホルダーと主軸の両方を完全に同期させて回転させるのが好ましい。なお、ツールホルダーと主軸の回転の位相は多少ずれていても同一の回転数で回転させることもできる。ツールホルダーと主軸の回転周期を相互に時間的に同時にするのが好ましいが、相互に一定の関係にしてもよい。
【0026】
好ましくは、ツールホルダーを回転させるための回転部分が自動工具交換装置に設けられていて、ツールホルダーと回転部分の両方を回転させながら、ツールホルダーを回転部分に係合する。
【0027】
ツールホルダーと回転部分の両方を回転させる場合、好ましくは、ツールホルダーと回転部分の両方を同期回転させる。もっとも、本発明は、同期回転でなくても、ツールホルダーを回転部分に安定して係合できる程度に回転部分を回転させ、又は回転部分に係合されたツールホルダーが安定する程度に回転部分を回転させる構成を含む。
【0028】
なお、回転部分は好適には歯車であり、この場合自動工具交換装置に歯車を駆動するためのモーターを設け、ツールホルダーにツールホルダー回転用歯車を設けるのが好ましい。この場合、ツールホルダーを回転部分に容易に係合できる。なお、回転部分として、ツールホルダーと共に回転しながらツールホルダーをクランプ及びアンクランプする手段を採用することもできる。
【0029】
好ましくは、主軸の温度変化を所定の範囲内に維持する。主軸の温度変化は、主軸の構成により異なるため、温度変化の範囲は主軸の構成に応じて適宜設定され得る。
【0030】
好ましくは、主軸に内歯歯車を設け、ツールホルダーにこの内歯歯車と係合(又は契合)する外歯歯車を設ける。
【0031】
外歯歯車と内歯歯車は、それぞれ対応するセレーションとすることもできる。この場合、より強固な係合が可能である。
【0032】
好ましくは、ツールホルダーにプルスタッド(クランプ用突出部)を設け、プルスタッドがその回転軸心に垂直な多角形断面を有し、主軸にこのプルスタッドと係合(又は契合)するコレットを設ける。
【0033】
多角形は、最も広義に解釈するものとし、数学的な意味で厳密な多角形の他、多角形の頂点が丸みを帯びた形状や多角形の各辺が丸みを帯びた形状等の実質的な多角形を含む。多角形は、実施例に示された四角形の他、六角形や八角形等種々の多角形を含む。
【0034】
好ましくは、主軸に回転軸心に沿って突出するキーを設け、ツールホルダーにこのキーと係合(又は契合)するキー溝を設ける。
【0035】
好ましくは、自動工具交換装置が、ツールホルダーを回転させるためのツールホルダー回転用モーターと、ツールホルダー回転用モーターに固定された第1歯車と、第1歯車に係合する第2歯車を有し、ツールホルダーがツールホルダー回転用歯車を有し、第2歯車とツールホルダー回転用歯車が係合可能であり、ツールホルダー回転用モーターが、第1歯車及び第2歯車を介してツールホルダー回転用歯車を回転させることにより、ツールホルダーを回転させる。
【0036】
こうして、本発明によれば、ツールホルダー(工具)の交換の際に、主軸を停止させず、回転させたまま工具交換を行う事が出来るのである。
【実施例1】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
【0038】
図1は、本発明の工具交換方法及びマシニングセンターの一例を示す概略部分断面図である。
【0039】
マシニングセンター10は、主軸12と、自動工具交換装置としてのATC装置14と、ツールホルダー16を有する。マシニングセンター10は、主軸12とATC装置14との間でツールホルダー16を自動交換するようになっている。
【0040】
主軸12は、図示省略された工作機械の一部として構成されている。主軸12は、その下端においてツールホルダー16を保持する。主軸12は、その回転軸心X2の周りでツールホルダー16を回転可能である。
【0041】
主軸12は、その内部にクランプ機構18を有している。クランプ機構18は、主軸12と共に回転しながらツールホルダー16をクランプ及びアンクランプできる機構である。
【0042】
ATC装置14は、主軸12に対してツールホルダー16を自動交換する。なお、図1にはツールホルダー16を回転させるための回転部分21がATC装置14の一部として示されている。
【0043】
回転部分21は、ツールホルダー16を保持して回転軸心X3を中心に回転させる。なお、回転部分21は、好ましくは図示省略した歯車を用いてツールホルダー16を回転させる。この場合、ツールホルダー16にツールホルダー回転用の歯車を設けるのが好ましい。なお、ツールホルダー16の側方又は下方をクランプして回転させる部分を回転部分21とすることもできる。
【0044】
以下、ツールホルダーを主軸に装着する工程の一例を説明する。
【0045】
ツールホルダー16の無い状態で回転する主軸12を工具交換位置Bの上方に位置付ける。ツールホルダー16と主軸12を同期回転させる。主軸12を下方に移動させて、回転するツールホルダー16を主軸12内に挿入する。この状態で、クランプ機構18を用いてツールホルダー16を主軸12にクランプする。こうして回転するツールホルダー16を主軸12に装着する。主軸12とツールホルダー16は同期回転しているので、主軸12とツールホルダー16は相対的に停止した状態でクランプされることになる。
【0046】
以下、ツールホルダーを回転部分に係合する工程の一例を説明する。
【0047】
ツールホルダー16の無い状態で回転する回転部分21を工具交換位置Bに位置付ける。ツールホルダー16を装着して回転する主軸12を工具交換位置Bの上方に位置付ける。ツールホルダー16と回転部分21を同期回転させる。主軸12を下方に移動させて、回転するツールホルダー16を回転部分21内に挿入する。この状態で、クランプ機構18を用いてツールホルダー16を回転部分21からアンクランプする。こうして回転するツールホルダー16を回転部分21に係合する。ツールホルダー16と回転部分は両方とも回転しているので、ツールホルダー16と回転部分21は相対的に停止した状態でアンクランプされることになる。
【0048】
この様にして主軸12を回転させたままツールホルダー16を交換する事により、ツールホルダー16の交換を効率良く安定して行うことができるのである。
【実施例2】
【0049】
以下、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。
【0050】
図2は、本発明の工具交換方法及びマシニングセンターの要部の一例を示す概略部分断面図である。
【0051】
マシニングセンター10は、主軸12と、自動工具交換装置としてのATC装置14と、ツールホルダー16を有する。マシニングセンター10は、主軸12とATC装置14との間でツールホルダー16を自動交換するようになっている。
【0052】
主軸12は、図示省略された工作機械の一部として構成されている。主軸12は、その下端においてツールホルダー16を保持する。主軸12は、その回転軸心X2の周りでツールホルダー16を回転可能である。
【0053】
主軸12は、その内部にクランプ機構18を有している。クランプ機構18は、主軸12と共に回転しながらツールホルダー16をクランプ及びアンクランプできる機構である。クランプ機構18は、クランプ爪ともいうコレット18aを有している。コレット18aは、後述するツールホルダー16のプルスタッド(クランプ用突出部)16aと係合可能である。なおコレット18aの一部は見やすくするため図示省略されている。
【0054】
ATC装置14は、主軸12に対して自動でツールホルダー16を交換する。ATC装置14は、マガジンインデックスモーター20、ATCマガジン22、ベアリング24、ツールホルダー回転用モーターとしてのツール同期回転用モーター26、第1歯車28、第2歯車30、フレーム32等を有する。
【0055】
マガジンインデックスモーター20は、フレーム32に固定されていて、図示省略された制御装置により制御される。マガジンインデックスモーター20は、回転軸心X1を中心にATCマガジン22を回転可能である。
【0056】
図3は、図2のA−A断面を示す。なお、図3においてツールホルダーやフレームは見やすくするため図示省略されている。
【0057】
ATCマガジン22は、矢印Rで示された回転方向に回転され得る。ATCマガジン22は、複数(図3において12個)の穴22aを有している。各穴22aはツールホルダー16を収容可能である。各穴22aにはベアリング24が設けられている。ベアリング24は、ベアリング24の回転軸心X3を中心にツールホルダー16を回転可能に支持する。
【0058】
ツール同期回転用モーター26は、フレーム32に固定されていて、制御装置により制御される。ツール同期回転用モーター26のモーターシャフト(図示省略)には、第1歯車28が固定されている。第1歯車28に第2歯車30が噛み合っている。第2歯車30は、フレーム32に回転軸心X4の周りで回転自在に支持されている。第1歯車28と第2歯車30が回転部分を構成している。なお、1つの歯車で回転部分を構成しても良い。
【0059】
ツールホルダー16は、その上部にプルスタッド16aを有している。プルスタッド16aは、クランプ機構18のコレット18aと係合可能である。
【0060】
ツールホルダー16の側方部分(すなわちフランジ部分)には、ツールホルダー回転用歯車としてのツール回転駆動ギヤ16bが設けられている。ツール回転駆動ギヤ16bは、第2歯車30と係合可能である。
【0061】
ツール同期回転用モーター26は、第1歯車28と第2歯車30を介して、矢印Bで示された工具交換位置にあるツールホルダー16を回転させることが出来る。このとき、ツール同期回転用モーター26は、主軸12と同じ回転数及び位相に同期させてツールホルダー16を回転可能である。図面に示された実施例においては、回転駆動部25は、ツール同期回転用モーター26、第1歯車28、第2歯車30を有している。
【0062】
以下、ツールホルダーを交換する手順の一例を説明する。
【0063】
まず、主軸12に装着されたツールホルダー16をATCマガジン22に載置する手順の一例を説明する。
【0064】
回転したツールホルダー16を把持した主軸12を工具交換位置Bの上方に位置付ける。ツール同期回転用モーター26を用いて、主軸12の回転に同期させて、第1歯車28を介して第2歯車30を回転させる。ツールホルダー16の無いATCマガジン22の穴22aを工具交換位置Bに位置付ける。こうして、主軸12の回転軸心X2とベアリング24の回転軸心X3を一致させる。主軸12を下方に移動させて、回転するツールホルダー16をATCマガジン22の穴22aに挿入する。こうしてツールホルダー16のツール回転駆動ギヤ16bと第2歯車30を係合させる。ツールホルダー16は、主軸12と第2歯車30によって回転される状態になる。
【0065】
この状態で、クランプ機構18を用いてツールホルダー16を主軸12からアンクランプする。ツールホルダー16と主軸12を引き離す。この時、主軸12とツールホルダー16は同期して回転しているので、主軸12とツールホルダー16は相対的に停止した状態で引き離されることになる。
【0066】
なお、例えばATCマガジン22の回転方向Rにおいて工具交換位置Bよりも前の位置で、回転したツールホルダー16を穴22aに挿入し、ATCマガジン22を回転方向Rへ回転させるとともに主軸12を移動させて、ツール回転駆動ギヤ16bと第2歯車30をそれらの側面で係合させることもできる。
【0067】
次に、ATCマガジン22に載置されたツールホルダー16を主軸12に装着する手順の一例を説明する。
【0068】
ツールホルダー16の無い状態で回転する主軸12を工具交換位置Bの上方に位置付ける。ツール同期回転用モーター26を用いて、ツールホルダー16を主軸12と同じ回転数及び同じ位相で回転させる。ATCマガジン22に載置されたツールホルダー16を工具交換位置Bへ割り出す。主軸12を下方に移動させて、回転するツールホルダー16を主軸12に装着する。
【0069】
この状態で、クランプ機構18を用いてツールホルダー16を主軸12にクランプする。この時、主軸12とツールホルダー16は同期して回転しているので、主軸12とツールホルダー16は相対的に停止した状態でクランプされることになる。
【0070】
この様にして主軸12を回転させたままツールホルダー16を交換する事により、ツールホルダー16の交換を効率良く安定して行うことができるのである。
【0071】
図4は、主軸とツールホルダーの間の回転を防止する手段の一例を示す。なお、図2と同一の部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
マシニングセンター40は、主軸42、ツールホルダー46等を有する。
【0073】
主軸42は、その下端においてツールホルダー46を保持する。
【0074】
主軸42の下端の口元部には、内歯歯車42aが設けられている。
【0075】
ツールホルダー46は、内歯歯車42aと係合する外歯歯車46cを有している。
【0076】
この場合、主軸42の内歯歯車42aとツールホルダー46の外歯歯車46cが同じ回転数で回転していれば、主軸とツールホルダーが完全に同期していなくても係合が可能である。例えば、内歯歯車42aと外歯歯車46cの歯が互いに噛み合う位置にあれば、内歯歯車42aと外歯歯車46cの位相が完全に一致していなくても係合が可能である。こうして、主軸42とツールホルダー46の相対的な回転が防止され得る。
【0077】
図5は、主軸とツールホルダーの間の回転を防止する手段の別の例を示す。なお、図2と同一の部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
マシニングセンター50は、主軸52、ツールホルダー56等を有する。
【0079】
主軸52は、その下端においてツールホルダー56を保持する。
【0080】
主軸52は、その内部にクランプ機構58を有している。クランプ機構58は、主軸52と共に回転しながらツールホルダー56をクランプ及びアンクランプできる機構である。クランプ機構58は、クランプ爪ともいうコレット58aを有している。コレット58aは、後述するツールホルダー56のプルスタッド56aと係合可能である。なおコレット58aの一部は見やすくするため図示省略されている。
【0081】
図6は、図5のC−C断面の一例を示す。
【0082】
図6に示されるように、プルスタッド56aは、ツールホルダー56の回転軸心に垂直な四角形断面を有している。また、コレット52aも、主軸52の回転軸心X2に垂直な四角形断面をその内部に有している。このため、主軸52とツールホルダー56の相対的な回転が容易に防止され得るようになっている。
【0083】
図7は、主軸とツールホルダーの間の回転を防止する手段の更に別の例を示す。なお、図2と同一の部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
マシニングセンター60は、主軸62、ツールホルダー66等を有する。
【0085】
主軸62は、その下端においてツールホルダー66を保持する。
【0086】
主軸62の下端の口元部には、主軸62の回転軸心X2に沿って突出するドライブキー62aが設けられている。
【0087】
ツールホルダー66には、ドライブキー62aと係合するキー溝66cが設けられている。
【0088】
この場合、主軸62とツールホルダー66の回転は好適には完全に同期している事が必要とされるものの、主軸62とツールホルダー66の相対的な回転が確実に防止され得る。
【0089】
なお、本発明は実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の工具交換方法及びマシニングセンターの要部の一例を示す概略部分断面図である。
【図2】本発明の工具交換方法及びマシニングセンターの要部の別の例を示す概略部分断面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す。
【図4】主軸とツールホルダー間の回転を防止する手段の一例を示す。
【図5】主軸とツールホルダー間の回転を防止する手段の別の例を示す。
【図6】図5のC−C断面の一例を示す。
【図7】主軸とツールホルダー間の回転を防止する手段の更に別の例を示す。
【符号の説明】
【0091】
10、40、50、60 マシニングセンター
12、42、52、62 主軸
14 ATC装置(自動工具交換装置)
16、46、56、66 ツールホルダー
16a、46a、56a、66a プルスタッド
18、58 クランプ機構
18a、58a コレット
18b、46b、56b、66b ツール回転駆動ギヤ(ツールホルダー回転用歯車)
20 マガジンインデックスモーター
21 保持部
22 ATCマガジン
22a 穴
24 ベアリング
26 ツール同期回転用モーター(ツールホルダー回転用モーター)
28 第1歯車
30 第2歯車
32 フレーム
42a 内歯歯車
46c 外歯歯車
62a ドライブキー(キー)
66c キー溝
B 工具交換位置
R 回転方向
X1、X2、X3、X4 回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換する工具交換方法において、ツールホルダーと主軸を同期回転させながら、ツールホルダーを主軸に装着することを特徴とする方法。
【請求項2】
ツールホルダーを回転させるための回転部分が自動工具交換装置に設けられていて、ツールホルダーと回転部分の両方を回転させながら、ツールホルダーを回転部分に係合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
主軸とツールホルダーと回転部分の全てを同期回転させながら工具交換することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工具交換の際に、主軸の回転速度を所定値以上に制御して、主軸の温度変化が所定の範囲内に維持されるようにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
主軸と自動工具交換装置との間でツールホルダーを自動交換するマシニングセンターにおいて、ツールホルダーと主軸の両方を同期回転させながら、ツールホルダーを主軸に装着可能にしたことを特徴とするマシニングセンター。
【請求項6】
主軸に内歯歯車を設け、ツールホルダーにこの内歯歯車と係合する外歯歯車を設けたことを特徴とする請求項5に記載のマシニングセンター。
【請求項7】
ツールホルダーにプルスタッドを設け、プルスタッドがその回転軸心に垂直な多角形断面を有し、主軸にこのプルスタッドと係合するコレットを設けたことを特徴とする請求項5に記載のマシニングセンター。
【請求項8】
主軸に回転軸心に沿って突出するキーを設け、ツールホルダーにこのキーと係合するキー溝を設けたことを特徴とする請求項5に記載のマシニングセンター。
【請求項9】
自動工具交換装置が、ツールホルダーを回転させるためのツールホルダー回転用モーターと、ツールホルダー回転用モーターに固定された第1歯車と、第1歯車に係合する第2歯車を有し、ツールホルダーにツールホルダー回転用歯車が設けられていて、第2歯車とツールホルダー回転用歯車が係合可能であり、ツールホルダー回転用モーターが、第1歯車及び第2歯車を介してツールホルダー回転用歯車を回転させることにより、ツールホルダーを回転させることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のマシニングセンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−155343(P2008−155343A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349350(P2006−349350)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000104537)キタムラ機械株式会社 (19)
【Fターム(参考)】