説明

工具交換装置

【課題】汎用性に優れ、大重量の工具を人的作業により迅速、容易に工作機械の主軸から交換できる工具交換装置を提供する。
【解決手段】工具パレット10に保持される工具の中心軸を主軸50の軸芯と同軸化可能に工具パレット10を案内可能な案内手段を備え、工具パレット10が進退自在とされる工具パレット案内テーブルと工具パレット10の転倒を防止する転倒防止手段と、工具パレット案内テーブルに隣接され該工具パレット案内テーブル上の工具パレット10が往来自在とされて工具パレットの転倒防止手段が備えられた工具パレット待機テーブルと工具パレットを2台載置可能とされ工具パレット転倒防止手段とを備え、工具パレット案内テーブルに接続して工具パレット10を工具パレット案内テーブルに移載可能とされる工具パレット運搬台車1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削や研削する工作機械の主軸への工具交換を人的作業により容易に行うことができる工具交換方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の工作機械は主として次の理由により刃物が取付けられる主軸と被加工物が取付けられるテーブルを保護カバーで覆い、保護カバーに設けられた開口部を開閉自在な扉を開けて刃物交換や被加工物の交換がされるようになっている。
1)人体が不用意に加工中の刃物に触れる事を防ぐ安全策
2)加工に伴い生じる切削(研削)屑や加工物及び刃物を冷却する切削(研削)油の飛散防止策
【0003】
このような工作機械において、水平とされる主軸に刃物である研削砥石を交換する研削盤では、従来、砥石が吊具を介してホイストクレーン等で吊下げられて砥石の重量を支持した状態で砥石の主軸への装着・抜脱が人的作業により行われていた。
この作業は、吊下げられた砥石の中心軸を主軸の中心軸に整合させる作業に時間を要するため砥石交換作業が長くなり研削盤の稼動停止時間が長くなるので生産性が低下する。 また、吊下げられた砥石を移動中に周辺の構築物に衝突させて砥石を損傷させる場合がある等の問題があった。
【0004】
一方、主軸が垂直とされ軸が軸方向に進退自在とされると共に主軸の軸線と直交する面に被加工物を取付けることができるテーブルを備え該テーブルが主軸の軸線と直交する方向に進退自在とされる工作機械では、主軸に対する大重量の工具を把持した工具ホルダの交換作業を容易に行うことができる技術が特開2009−6455号公報に開示されている。ここでは、保護カバー31の内側面に工具交換装置32を装着する。工具交換装置32を構成するシリンダ33によって、工具パレット36を上方の退避位置から下方に移動し、工具パレット36の下面に設けた第1及び第2係合凹部47,48を前記テーブル25の上面に設けた第1及び第2取付台座45,46に嵌合する。工具パレット36をテーブル25の上面の使用位置に受け渡した後、テーブル25を工具パレット36とともに前記主軸装置16側に移動して、空の第2ホルダ把持具39により使用済み工具ホルダ18Aを受け取り、第1ホルダ把持具38に装着された新工具ホルダ18Bを主軸17に装着する。なお、工具パレット36への工具ホルダの着脱は人的作業によって行うように構成されている。
【0005】
この技術は、工作機械の主軸と工具パレットとの間で行われる工具が装着された大重量の工具ホルダの交換が機械的に行われるので作業者の筋肉負担が皆無になるという利点がある。
しかしながら、次のような欠点がある。
1、 工具パレットへの工具ホルダの着脱は人的作業なので重筋作業となり、腰痛等の職業疾病が生じる場合がある
2、 工具パレットが保護カバー31の内側面に装着された工具交換装置によってX−Y方向に進退動可能なテーブルから着脱される構成なので、当該工作機械専用の工具交換装置となる。この為、汎用性がなくなり設備価格も高価になる
3、 スペース上の制約によりX−Y方向に進退動可能なテーブル上に工具パレットを載置できない場合は利用できないので利用範囲が限定される
【特許文献1】 特開2009−6455号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような背景のもとになされたもので、主軸及び被加工物取付用テーブルを覆う保護カバーに設けられた開口部を介して位置決めされて着脱自在に配設され、汎用性に優れ、大重量の工具を人的作業により迅速、容易に工作機械の主軸から交換できる工具交換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1に示す工具交換装置は、開口部を有し該開口部を開閉可能な扉を備える保護カバーによって工具が取付けられる主軸と被加工物が取付けられるテーブルが覆われる工作機械において、前記主軸に取付けられる工具を所定位置に所定の姿勢で保持可能な工具支持手段と自在な方向に転動可能な車輪とを備えた工具パレットと
前記主軸近傍の保護カバーを含む工作機械構成固定物に位置決めされて着脱自在とされ前記工具パレットに保持される工具の中心軸を前記主軸の軸芯と工具交換可能に同軸化可能に前記工具パレットを案内可能な案内手段を備え該案内手段に沿って前記工具パレットが
進退自在とされる工具パレット案内テーブルと
前記工具パレット案内テーブルに設けられ前記工具パレット案内テーブルを進退する前記工具パレットの転倒を防止する転倒防止手段と
前記工具パレット案内テーブルに隣接され前記工具パレット案内テーブル上の前記工具パレットが往来自在とされて前記工具パレットを収容可能とされると共に前記工具パレットの転倒防止手段が備えられた工具パレット待機テーブルと
前記工具パレットを少なくとも2台載置可能な天板と前記工具パレット転倒防止手段と床面を走行可能な車輪とを備え前記工具パレット案内テーブルに前記天板を接続して前記工具パレットが前記工具パレット案内テーブルと前記天板との間を往来可能とされる工具パレット運搬台車とを備えたものである。
【0009】
請求項2に示す工具交換装置は、請求項1の工具交換装置において、前記工具パレット運搬台車に前記工具パレットを載置可能な天板を上下動させる上下動調整手段が備えられたものである。
【0010】
請求項3に示す工具交換装置は、請求項1の工具交換装置において、前記主軸の工具支持軸と前記工具パレットの工具支持手段との間に着脱自在に連結される延長軸を備え該延長軸を介して工具が交換されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
1、工具パレットが案内ユニットに案内されて工具パレットに保持される工具の軸芯と主軸の軸芯が整合されるので迅速、容易に工具交換ができる。
2、工具パレットに備えられた工具支持部材により大重量の工具の重量を支持した状態で工具交換できるようにしたので筋力負担を格段に軽減できる。
3、時間当たり切(研)削量が多くなるよう設計された大径工具の工具重量に比べて人的作業により工作機械に着脱する案内ユニットは軽量化できるので着脱時の筋力負担を大きく軽減できる。
4、工具パレット運搬台車の工具パレット載置面は上下動自在とされて高さ調整可能とされているので取付けた案内ユニットの高さ位置が機種によって異なっても対応可能となり汎用性がある。
5、工具が保持される工具パレットには減摩手段として車輪が設けられているので工具が保持された工具パレットでも軽い力で主軸に近接離反させることができる。
6、工具パレットの転倒防止手段を設けたので工具パレットの何処の位置を持って操作しても工具パレットが転倒しないので人的作業による工具パレットの移動を迅速化できる。また、工具パレットを小型化(投影面積を小さくできる)できる。
7、待機エリアに2台乃至3台の工具パレットを待機できるようにしたので工具パレット運搬台車を工作機械から離反させても工具交換が迅速、容易にできる。これにより、工具パレット運搬台車の空いたスペースを工具交換作業スペースとして利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
【実施例1】
【0014】
図1、2を用いて本発明に係る工具交換装置について説明する。
本発明の特徴とするところは、従来の工具交換装置が保護カバーの内側面に装着されて個々の工作機械に専用化されていると共に工具パレットが被加工物取付用テーブルに着脱自在に取付けられ、工作機械の主軸と工具パレットに装着された大重量の工具ホルダの交換が機械的に行われるのに対して、工具交換装置が被加工物取付用テーブルを利用することなく工作機械に着脱自在とされると共に複数の工作機械に利用できるよう汎用化されており、工作機械の主軸に装着される大重量の工具の交換が工具パレットを介して人的作業により行われるようにした点にある。
【0015】
図1において、52は回転自在とされる段付き軸の先端におねじ部が形成される主軸50の前記おねじ部にナット51によって砥石T1が挟持される研削盤。
20は研削盤52の主軸近傍の構築物と保護カバー52aの開口縁部との間の所定位置に位置決めされて着脱自在に取付けられる工具パレット案内テーブルと工具パレット待機テーブルとが一体化された案内ユニット。1は車輪が備えられて研削盤52に近接離反自在とされ位置決め機構によって研削盤52の所定位置に位置決めされて装着された案内ユニット20の一側端面所定位置に接続可能とされる工具パレット運搬台車である。工具パレット運搬台車1に設けられた天板3上には車輪が取付けられた工具パレット10が一対の転倒防止庇2、2に案内されて進退自在に載置されている。
【0016】
前記案内ユニット20には工具パレット10が走行可能な平坦な上面22を有す案内テーブル右端部(図2)にガイドレール21が突設されると共に転倒防止庇23が水平に延出される。この転倒防止庇23と対向され工具パレット10が通過可能に離間されて転倒防止庇24がコ字状に配設されている。さらに、上面22から支柱25が突設され該支柱25と転倒防止庇23との間を工具パレット10が通過可能とされると共に支柱25と転倒防止庇24との間を工具パレット10が通過可能とされている。そして、支柱25の上端に転倒防止庇26が取付けられて工具パレット10に形成されるフランジ12の1辺が転倒防止庇23又は転倒防止庇24に覆われた状態で工具パレット10が転倒防止庇23又は転倒防止庇24に沿って移動する際、転倒防止庇23又は転倒防止庇24に覆われたフランジと対向する側のフランジの一部を覆うことができるようにされている。
【0017】
ここでは、主軸50と保護カバー52aとの間に十分なスペースが存したので案内テーブルの上面22と転倒防止庇23、転倒防止庇24右端部、転倒防止庇26の右部(図3−(a))とで形成される工具パレット案内テーブルと案内テーブルの上面22と転倒防止庇24、転倒防止庇26の左部(図3−(a))とで形成される工具パレット待機テーブルとが一体化されている。
また、上面22の工具パレット運搬台車1と対向される端面に位置決め凹部27が刻設されている。一方、上面22の下面には断面矩形の位置決めブロック22a,22bが凸設されている。
【0018】
工具パレット運搬台車1は回動自在な車輪を備えた基台の上面に天板3が上下動自在に取付けられ、平坦な天板3の上面左右端部に断面が倒立したL字状とされる転倒防止庇2,2が対向して離間されて突設されている。該転倒防止庇2,2と天板3とで形成される中空部を工具パレット10がフランジ12を転倒防止庇2,2に覆われて転倒防止庇2,2に案内されて天板3上を進退できるようにされている。本例では天板3上に2台の工具パレット10a,10bが直列に載置されている。
そして、一方の転倒防止庇2の先端部と手前側に貫通された穴に大径部と小径部とで形成される後部ストッパ4a、前部ストッパ4bの小径部が進退自在に挿通されて先端部が転倒防止庇2,2と天板3とで形成される中空部に突出され工具パレット10の端面に当接可能とされて工具パレット10の進行を防止できるようにされている。
【0019】
また、天板3の下面から下方に向かっておねじ部材6が延出されて基台に取付けられる支持部材6bの上面にスラスト自在に載置されるハンドル部材6aに刻設される雌ねじに螺着されている。また、前記おねじ部材6から適宜離間してガイドピン7が下方に向かって延出されて基台に取付けられるガイドピン案内部材7aに貫通される案内穴に挿通されている。さらにまた、略L字状とされる指示針部材8が下方に向かって延出されて尖端が基台に取付けられる機種対応目盛板9に対向されている。また、図2から分かるように天板3の案内ユニット20と対向する端面から位置決め凸部5が突出されている。
【0020】
工具パレット10はフランジ12が形成される段付きのベース11の下面に4個の球状車輪(例えば商品名「フリーベア」等)17が取付けられて平板上を自在な方向に移動可能とされている。
一方、ベース11の上面には支柱13が上方に向かって延出され先端部から断面円形とされ外径が研削盤52に備えられた主軸50の砥石T1に挿通される工具支持軸外径と同径とされる工具支持部材14が水平に延出されている。該工具支持部材14の先端には研削盤52に備えられた主軸50の先端から突出されナット51が螺着されるおねじ部外径に対応する内径の穴を有すセンタリング穴14aが刻設されている。そして、砥石T2の貫通孔に工具支持部材14が挿通されて該工具支持部材14上を砥石T2が進退自在とされている。
また、ベース11の上面には軸が平行な枢軸を2軸有する蝶番15を介して膨出端部がゴムライニングされたロック部材16が取付けられる断面L字状の金具16aが枢動自在に取付けられている。
【0021】
以上の構成においてその作用を説明する。
まず、保護カバー開口部の扉を開けて開口部を開放させて砥石T1を主軸から外せる環境作りのためナット51を外す等の準備作業をする。
次いで、人的作業により案内ユニット20に形成された位置決めブロック22aを主軸50の近傍の研削盤構成固定物52bの上面に刻設された位置決め溝に係合させると共に位置決めブロック22bを研削盤構成固定物52bの上面に当接させ、さらに、保護カバー52aの開口部上縁部に設けられた図示しない位置決め手段と案内ユニット20を係合させて案内ユニット20を研削盤52の所定位置に着脱自在に取付ける。
これにより、案内ユニット20の上面22が主軸50の軸線と平行とされると共に図3−(a)に示すように、転倒防止庇23の先端23aと転倒防止庇24の先端24a及び転倒防止庇26の右側先端26aとに案内されて進退動する工具パレット10に設けられた工具支持部材14の軸線が主軸50の軸線50aと砥石交換可能に同軸化される。
【0022】
次いで、該案内ユニット20に工具パレット運搬台車1(天板3の上面は上面22の上面と同じ高さに調整されている)を近接させて図3−(b)のように、位置決め凸部5を案内ユニット20に形成される位置決め凹部27に嵌合させる。
続いて、前部ストッパ4bを転倒防止庇2から抜脱すると通路が解放されて工具パレット10が工具パレット運搬台車1から案内ユニット20に移動可能になるので工具パレット10a,10bを人力で押して工具パレット運搬台車1から案内ユニット20に移動させる。この際、工具パレット10のベース11の側面が転倒防止庇23の先端に摺接・案内されると共に工具パレット10が上面22上にあることにより工具パレット10に保持される工具の軸芯と主軸52の軸芯とが同軸化される。
【0023】
続いて、工具パレット運搬台車1を案内ユニット20から離反させて図3−(c)に示すように、工具パレット10bを待機エリア(矢印方向)に移動させて待機させる。これにより、工具パレット10aと作業者との間に介在する物がなくなるので工具パレット10aに対する作業が容易になる。
【0024】
具体的作業は、まず、図4に示すように、工具パレット10を主軸50に接近させて工具支持部材14の先端に刻設されるセンタリング穴14aに予めナット51が外されて主軸50の先端から露出されるおねじ部を勘合させて工具支持部材14の先端を主軸50の工具支持軸先端に当接させる。
続いて、金具16aをガイドレール21側に枢動させてロック部材16をガイドレール21の側面に押圧させる。これにより、ブレーキが利きロック部材16がガイドレール21の側面に当接している間は工具パレット10は容易には進退できなくなる。
【0025】
続いて、主軸50に支持される砥石T1を人力により移動させて工具支持部材14上(2点鎖線部)に移載させる。この際、砥石T1が工具支持部材14上を移動するに伴い生じる摩擦力が工具パレット10を後退させ主軸50の先端から工具支持部材14の先端を離反させる方向に作用するがロック部材16によってブレーキが利いているので工具パレット10が後退せず砥石T1は速やかに工具支持部材14に移載される。
また、砥石T1の移動に伴い砥石T1を支持する軸の先端が撓み工具支持部材14の先端との間に段差を生じさせる荷重が作用するが、主軸50の先端から露出されるおねじ部を工具支持部材14の先端に刻設されるセンタリング穴14aに勘合させているので段差が生じずスムースに移載できる。
【0026】
次に、金具16aを支柱13側に枢動させてロック部材16をガイドレール21の側面から離反させる。これにより、ブレーキが解除され工具パレット10は容易に進退可能になる。
続いて、工具パレット10aを主軸50から離反させて工具支持部材14をおねじ部から離反させた後、図3−(d)に示すように、工具パレット10aを待機エリア(矢印方向)に移動させて待機させる。
【0027】
続いて、図3−(e)に示すように、工具パレット10bを矢印方向に移動させて、前述同様に工具支持部材14の先端に刻設されるセンタリング穴14aに予めナット51が外されて主軸50の先端から露出されるおねじ部を勘合させて工具支持部材14の先端を主軸50の工具支持軸先端に当接させ、次いで、金具16aをガイドレール21側に枢動させてロック部材16をガイドレール21の側面に押圧させる。
続いて、工具支持部材14に支持される砥石T2を人力により移動させて主軸50の工具支持軸上に移載させる。この際も前述同様にスムースに移載できる。
【0028】
次いで、前述同様にブレーキを解除した後、工具パレット10bを主軸50から離反させて工具支持部材14をおねじ部から離反させる。
続いて、図3−(f)に示すように、工具パレット10aを待機エリアから矢印のように移動させる。
【0029】
この後、再び工具パレット運搬台車1を前述同様に位置決めして案内ユニット20に接続させて、工具パレット10a、工具パレット10bの順に工具パレット運搬台車1に移動させる。
次いで、前部ストッパ4bを転倒防止庇2に貫通される孔に挿通して通路の一部を遮断して工具パレット10a、工具パレット10bが工具パレット運搬台車1から離脱しないよう処置して工具パレット運搬台車1を案内ユニット20から離反させて所定の場所に移動させて所定の道具を使って工具パレット10aが保持する研削盤52から外した砥石T1を外して新しい砥石に交換して次回の砥石交換作業に備える。
【0030】
続いて、案内ユニット20を人力により研削盤52から離反させて所定の場所に保管して次回の砥石交換作業に備える。
【0031】
なお、本実施例では工具パレット10の移動時における減摩手段として球状車輪17を用いたが、本例に限定されるものではない。
すなわち、自在車輪を利用することはもちろん、ハンドル操作により進行希望方向に転動可能とされる車輪を備えた構成でもよいことは言うまでもない。
【0032】
また、本実施例では案内ユニット20の上面22を有す走行板に重量軽減孔を刻設していないが、案内ユニット20のさらなる軽量化のために球状車輪17の移動軌跡に対応する接地面を除いて走行板に貫通孔や穴を刻設して重量軽減させてもよいことは言うまでもない。
【0033】
また、本実施例では工具パレット10の転倒防止のためにフランジ12を転倒防止庇2、23、24、26で覆う構成としたが、本例に限定されるものではない。すなわち、図5に示すように、工具パレット100が走行可能とされる走行板103(又は天板3)に工具パレット100の移動経路に沿った孔104を貫設し、該孔104の幅より広い頭部102から突出される軸部を前記孔104に挿通させて工具パレット100の下面に接続する構成にしてもよい。これにより、実施例同様に砥石が支持された工具パレット10が転倒することはない。
【0034】
また、他機種への対応のため、例えば、主軸の工具支持軸の外径が異なる場合は異なる工具支持軸外径に対応する外径の工具支持部材に交換することができる。
さらにまた、砥石(工具)外径が異なる場合は工具支持部材とベースとの隙間に砥石(工具)の半径が収容可能な支柱に交換することができる。
【0035】
また、本実施例の案内ユニット20は工具パレット案内テーブルと工具パレット待機テーブルが一体化されて、その大部分を保護カバーの内側に配置する構成となっているがこれに限定されるものではない。
例えば、保護カバー52aの内側に工具パレット収容スペースが少ない場合は図6乃至図8(転倒防止手段の図示は省略)に示されるように工具パレット待機テーブルを保護カバー52aの外側に配置し工具パレット案内テーブル210と一体式又は分離可能式としてもよい。
要するに、工具パレットが工具パレット待機テーブルと工具パレット案内テーブルとの間を渋滞なく往来できるようなレイアウトにした上で、人的作業によって持ち運びに許容される重量以内であれば工具パレット案内テーブルと工具パレット待機テーブルを一体化してもよいし、そうでなければ工具パレット案内テーブルと工具パレット待機テーブルを分解・組立可能にすればよいのである。
【0036】
図6は、工具パレット案内テーブル210が保護カバー52aの開口縁部に位置決めされて着脱自在に取付けられ該案内テーブル210に案内される工具パレット10に保持される工具の軸芯は前記実施例同様に主軸50の軸芯50aと工具交換可能に同軸化される。
工具パレット案内テーブル210の基端は保護カバー52aの外側に配置される一方、対向する先端は工具交換可能に工具パレット10が主軸50に接近できるよう機内に臨まされている。そして、工具パレット案内テーブル210の基端側左右に工具パレット10が1台ずつ載置可能に工具パレット待機テーブル211が配設され、保護カバー52aの外側で工具パレットが工具パレット案内テーブル210と工具パレット待機テーブル211との間を往来可能とされている。
【0037】
上記構成の工具交換作業を説明すれば、工具パレット案内テーブル210の基端側から工具パレット運搬台車により移載される工具パレットは工具パレット待機テーブル211の左右端側に1台ずつ移載された後、工具パレット運搬台車を工具パレット案内テーブル210から離反させて工具パレット案内テーブル210の基端側作業スペースを確保する。
次いで、例えば、工具パレット待機テーブル211の右側(又は左側)に移載された空の工具パレット10aを実線矢印のように動かして主軸に装着されている砥石(工具)を外す。
次いで、工具パレット待機テーブル211の左側(又は右側)に移載された交換用砥石(工具)が保持された工具パレット10bを点線矢印のように動かして主軸に砥石(工具)を装着した後、工具パレット案内テーブル210上に待機させて工具パレット運搬台車に戻す準備に備える。
【0038】
図7においても、工具パレット案内テーブル210が図6と同様に保護カバー52aの開口縁部に位置決めされて着脱自在に取付けられている。
そして、工具パレット案内テーブル210の基端側左側に工具パレット10が3台載置可能なL字状の工具パレット待機テーブル212が配設され、保護カバー52aの外側で工具パレットが工具パレット案内テーブル210と工具パレット待機テーブル212との間を往来可能とされている。
【0039】
上記構成の工具交換作業を説明すれば、工具パレット案内テーブル210の基端側から工具パレット運搬台車により移載される工具パレットは図に示されるように工具パレット待機テーブル212の両端側に1台ずつ移載された後、工具パレット運搬台車を工具パレット案内テーブル210から離反させて工具パレット案内テーブル210の基端側作業スペースを確保する。
次いで、例えば、工具パレット待機テーブル212の手前側(又は奥側)に移載された空の工具パレット10aを実線矢印のように動かして主軸に装着されている砥石(工具)を外す。
次いで、工具パレット待機テーブル212の奥側(又は手前側)に移載された交換用砥石(工具)が保持された工具パレット10bを点線矢印のように動かして主軸に砥石(工具)を装着した後、工具パレット案内テーブル210上に待機させて工具パレット運搬台車に戻す準備に備える。
【0040】
図8は、工具パレット運搬台車を工具パレット案内テーブル210の基端に接続状態で工具パレット案内テーブル210の側方から工具交換が可能な場合の例を示すもので、工具パレット案内テーブル210が図6と同様に保護カバー52aの開口縁部に位置決めされて着脱自在に取付けられている。
そして、工具パレット案内テーブル210の基端側左側(又は右側)に工具パレット10が1台載置可能な工具パレット待機テーブル213が配設され、保護カバー52aの外側で工具パレットが工具パレット案内テーブル210と工具パレット待機テーブル213との間を往来可能とされている。
【0041】
上記構成の工具交換作業を説明すれば、工具パレット案内テーブル210の基端に工具パレット運搬台車を接続させて、工具パレット案内テーブル210の側方に立つ作業者が空の工具パレット10aを実線矢印のように動かして主軸に装着されている砥石(工具)を工具パレット10aに移載させた後に工具パレット待機テーブル213に移動させる。
次いで、工具パレット運搬台車上の交換用砥石(工具)が保持された工具パレット10bを点線矢印のように動かして主軸に砥石(工具)を装着した後、工具パレット運搬台車上に戻し、次いで、工具パレット10aを工具パレット運搬台車に戻す。
【0042】
なお、保護カバー52aの内側に工具パレット収容スペースが少ないうえに保護カバー52aから主軸先端までの距離が長い場合は図9に示すように、主軸の工具支持軸と工具支持部材とを延長軸で着脱可能に連結して砥石を主軸の工具支持軸に着脱させると良い。
【0043】
すなわち、断面円形とされ外径が主軸50の砥石T1に挿通される工具支持軸外径と同径とされる延長軸19の一側端面に刻設され主軸50の先端から突出される雄ねじ部のねじ径に対応する雌ねじ部と前記雄ねじ部を螺合させて延長軸19を主軸の工具支持軸に着脱自在に取付けた後、工具パレット10を延長軸19に接近させて支柱13から延出される延長軸19と同一外径の工具支持部材18の先端から突出する断面円形のインロー部を前記延長軸19の前記雌ねじが刻設された端面と対向する他側端面に刻設される穴に嵌合させる。
これにより、主軸50の工具支持軸と延長軸19と工具支持部材18とが着脱可能に連結されて延長軸19を介して砥石が主軸50と工具支持部材18を備えた工具パレット10との間を移載自在となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
大重量の正面フライスや研削砥石が使用される工作機械や研削盤等の工具交換に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】 本発明の実施例を示す要部側面図である。
【0046】
【図2】 図3−(b)のA−A断面図である。
【0047】
【図3】 本発明の工具交換装置の作用を示す説明図である。
【0048】
【図4】 本発明の工具交換装置の作用を示す要部断面図である。
【0049】
【図5】 本発明の工具パレット転倒防止構造を示す他の実施例図である。
【0050】
【図6】 本発明の工具パレット待機テーブルの配置を示す別の実施例図である。
【0051】
【図7】 本発明の工具パレット待機テーブルの配置を示す別の実施例図である。
【0052】
【図8】 本発明の工具パレット待機テーブルの配置を示す別の実施例図である。
【0053】
【図9】 本発明の工具交換装置の作用を示す別の要部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 工具パレット運搬台車
2 転倒防止用庇
3 天板
4a 後部ストッパ
4b 前部ストッパ
5 位置決め凸部
6 おねじ部材
6a ハンドル部材
6b 支持部材
7 ガイドピン
7a ガイドピン案内部材
8 指示針部材
9 機種対応目盛板
10 工具パレット
11 ベース
12 フランジ
13 支柱
14 工具支持部材
14a センタリング穴
15 蝶番
16 ロック部材
17 球状車輪
18 工具支持部材
19 延長軸
20 案内ユニット
21 ガイドレール
22 上面(走行板の)
23、24、25、26 転倒防止用庇
27 位置決め凹部
210 工具パレット案内テーブル
211 工具パレット待機テーブル
212 工具パレット待機テーブル
213 工具パレット待機テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し該開口部を開閉可能な扉を備える保護カバーによって工具が取付けられる主軸と被加工物が取付けられるテーブルが覆われる工作機械において、
前記主軸に取付けられる工具を所定位置に所定の姿勢で保持可能な工具支持手段と自在な方向に転動可能な車輪とを備えた工具パレットと
前記主軸近傍の保護カバーを含む工作機械構成固定物に位置決めされて着脱自在とされ前記工具パレットに保持される工具の中心軸を前記主軸の軸芯と工具交換可能に同軸化可能に前記工具パレットを案内可能な案内手段を備え該案内手段に沿って前記工具パレットが
進退自在とされる工具パレット案内テーブルと
前記工具パレット案内テーブルに設けられ前記工具パレット案内テーブルを進退する前記工具パレットの転倒を防止する転倒防止手段と
前記工具パレット案内テーブルに隣接され前記工具パレット案内テーブル上の前記工具パレットが往来自在とされて前記工具パレットを収容可能とされると共に前記工具パレットの転倒防止手段が備えられた工具パレット待機テーブルと
前記工具パレットを少なくとも2台載置可能な天板と前記工具パレット転倒防止手段と床面を走行可能な車輪とを備え前記工具パレット案内テーブルに前記天板を接続して前記工具パレットが前記工具パレット案内テーブルと前記天板との間を往来可能とされる工具パレット運搬台車と
を備えたことを特徴とする工具交換装置
【請求項2】
請求項1の工具交換装置において、前記工具パレット運搬台車に前記工具パレットを載置可能な天板を上下動させる上下動調整手段が備えらたことを特徴とする工具交換装置
【請求項3】
請求項1の工具交換装置において、前記主軸の工具支持軸と前記工具パレットの工具支持手段との間に着脱自在に連結される延長軸を備え該延長軸を介して工具が交換されることを特徴とする工具交換装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−183629(P2012−183629A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64946(P2011−64946)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(597008120)ワシノ機工株式會社 (7)
【Fターム(参考)】