差動位相変調信号の光受信機
【課題】波長分散やフィルタ狭窄化によって劣化した差動位相変調信号を良好に復調できる光受信機を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による受信機は、多値の差動位相変調された光信号を分岐する光スプリッタと、分岐された光信号間に第1の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第1の遅延部と、第1の遅延量の遅延が付与された光信号を結合する、分岐比可変の可変カプラと、可変カプラから出力される光信号間に第2の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第2の遅延部と、第2の遅延量の遅延が付与された光信号を干渉させる干渉カプラとを備える。このような回路構成により、伝送路の波長分散量やフィルタによる信号狭窄化量に応じて、帯域可変の干渉回路を実現し、良好な復調特性を得ることができる。
【解決手段】本発明の一実施形態による受信機は、多値の差動位相変調された光信号を分岐する光スプリッタと、分岐された光信号間に第1の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第1の遅延部と、第1の遅延量の遅延が付与された光信号を結合する、分岐比可変の可変カプラと、可変カプラから出力される光信号間に第2の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第2の遅延部と、第2の遅延量の遅延が付与された光信号を干渉させる干渉カプラとを備える。このような回路構成により、伝送路の波長分散量やフィルタによる信号狭窄化量に応じて、帯域可変の干渉回路を実現し、良好な復調特性を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動位相変調された光信号を受信する光受信機に関する。より詳細には、劣化信号に対しても高い復調性能を実現可能な回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の進展に伴い、光信号を直接信号処理する光部品の開発が益々重要となっている。とりわけ、平面基板上に集積された平面光波回路(PLC:Planar Light Circuit)を用い、光の干渉を利用した導波路型光干渉回路は、量産性、低コスト性および高信頼性の面から優れた特徴をもち、多くの研究開発がなされている。導波路型光干渉回路には、例えば、アレイ導波路回折格子、マッハツェンダ干渉計、ラティス回路等がある。
【0003】
このような導波路型光干渉回路は、標準的なフォトグラフィー法およびエッチング技術ならびにFHD(Flame Hydrolysis Deposition)等のガラス堆積技術によって作製される。具体的にプロセスを概観すれば、最初に、基板上にアンダークラッド層ならびに周辺部より高い屈折率を持つコア層を堆積させる。その後、コア層に導波路パターンを形成し、最後にオーバークラッド層によってコア層で形成された導波路を埋め込むプロセスにより、導波路が作製される。信号光は、上述のようなプロセスを経て作製された導波路内に閉じ込められ、伝搬する。
【0004】
光伝送システムにおける変復調処理技術に目を転ずると、位相変調方式を用いた信号伝送が広く実用化されている。差動位相シフトキーイング(DPSK)は、伝送路の持つ波長分散や偏波モード分散に起因する信号劣化に対する耐性が強いことから、特に注目されている。さらに、位相変調における信号位相点を増やす変調の多値化も同時に行われている。2つの位相点を持つ2値のDBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying)に加え、4つの位相点を持つ4値のDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)等も研究されている。
【0005】
このようなDBPSK信号や、DQPSK信号を復調するにあたっては、相前後する変調シンボルに対応する光信号を干渉させて検波する光遅延干渉計(光遅延干渉回路)が必要となる。すなわち、光信号を分岐して、一方の光信号に1シンボル分の遅延を与え、他方の光信号と干渉させることで、前後する変調シンボルの信号の位相差を検波することができる。光遅延干渉回路を構成および製作のために前述のPLC技術を適用し、回路性能を長期安定化することおよび回路の小サイズ化することなどが期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Partial DPSK with excellent filter tolerance and OSNR sensitivity ”Mikkelsen, B.; Rasmussen, C.; Mamyshev, P.; Liu, F.; Electronics Letters Volume: 42, Issue: 23, Publication Year: 2006, Page(s): 1363 - 1364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DPSK信号は、光ファイバの波長分散や、伝送路中の波長フィルタによる信号帯域狭窄化により、伝送信号が劣化するという問題がある。また、伝送信号が伝搬する実際の光伝送網は、環境変動による光ファイバの状態変化や、伝送経路の変更等により、その波長分散量やフィルタによる信号の狭窄化量は刻々と変化するという問題がある。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、波長分散やフィルタ狭窄化によって劣化した差動位相変調信号を良好に受信できる光受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、多値の差動位相変調された光信号を復調する受信機であって、前記光信号を分岐する光スプリッタと、前記光スプリッタによって分岐された光信号間に第1の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第1の遅延部と、前記第1の遅延部によって第1の遅延量の遅延が付与された光信号を結合する、分岐比可変の第1のカプラと、前記第1のカプラから出力される光信号間に前記第1の遅延量とは異なる第2の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第2の遅延部と、前記第2の遅延部によって第2の遅延量の遅延が付与された光信号を干渉させる第2のカプラとを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の受信機であって、前記第1の遅延量と前記第2の遅延量との和は、前記光信号の信号間隔に略等しくなるように設定されたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の受信機であって、前記第1および第2の遅延部の各々は、一方の導波路に位相シフタが配置されたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の受信機であって、前記第2のカプラは、2つの出力を有し、各出力に受光素子が接続されたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の受信機であって、前記第1のカプラは、各アーム導波路に位相シフタを備えた等長マッハツェンダ干渉回路から構成され各アーム導波路に位相シフタを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の受信機であって、前記第1および第2の遅延部の少なくともいずれか一方は、前記長さの異なる導波路を横断する45度半波長板を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の受信機であって、前記光信号は、DBPSKまたはDQPSK信号であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】DBPSK信号を受信する回路の構成例を示す図である。
【図2】DQPSK信号を受信する回路の構成例を示す図である。
【図3】PDPSK技術を説明するための模式図である。
【図4】図3の構成における波長分散に対する所要OSNRを示す図である。
【図5】PDPSK技術による光遅延干渉回路と本願発明による光遅延干渉回路の対比を示す図である。
【図6】本発明による光遅延干渉回路の構成例を示す図である。
【図7】図6の構成における波長分散に対する所要OSNRを示す図である。
【図8】本発明による受信回路の構成例を示す図であり、(a)は、DBPSK信号を受信する回路の構成例を示し、(b)は、DQPSK信号を受信する回路の構成例を示している。
【図9】本発明の実施例1による光遅延干渉回路の構成を示す図である。
【図10】図9の構成における波長分散に対する所要OSNRを示す図である。
【図11】図9の構成におけるフィルタの透過帯域に対する所要OSNRを示す図である。
【図12】本発明の実施例2による光遅延干渉回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。まず従来のDPSK受信機の構成について説明し、その後に本発明によるDPSK受信機の構成について説明する。
【0018】
図1は、DBPSK受信回路を構成する光遅延干渉回路の基本的構成を示す図である。まず、2値の信号点を持つDBPSKを例として、光遅延干渉回路の動作を説明する。光遅延干渉回路1は、非対称マッハツェンダ干渉計により構成される。すなわち、光遅延干渉回路1は、入力導波路2と、入力導波路2に接続された光スプリッタ3と、出力導波路6および7と、各出力導波路に接続された光結合器10とを備える。光スプリッタ3および光結合器10は、長さの異なる2本の導波路、すなわち長尺アーム導波路4および短尺アーム導波路5により接続されている。出力導波路6および7の出力端には差動受光部を構成するフォトダイオード(以下PDという)対8a、8bが配置されている。
【0019】
光遅延干渉回路1には、入力導波路2へDBPSK信号が入力される。DBPSK信号は、光スプリッタ3によって、長尺アーム導波路4および短尺アーム導波路5の2つへ分岐される。長尺アーム導波路4および短尺アーム導波路5は、これらの導波路長さの差により光遅延部9を構成する。この光遅延部9による遅延時間量は、DBPSK信号の1シンボル分に相当する時間である。例えば、シンボルレートが20Gビット/sの場合、その逆数である50psの遅延が1シンボル分の遅延時間量となる。
【0020】
光遅延部9においてこの遅延を与えることにより、DBPSK信号の相前後するシンボル間において干渉が発生する。干渉を与えられたDBPSK信号は、差動受光部のPD対8a、8bにより受光され、2本の出力導波路6、7からの光信号の光強度について差分検波される。この結果、相前後するシンボル間で、信号の位相差に対応した差分出力変化が発生する。すなわち、PD対8a、8bからなる差動受光部から復調出力が得られる。例えば、位相差0の場合、差分出力信号が正となり、位相差πの場合、差分出力信号が負となる。
【0021】
位相変調が2値以上に多値化された場合は、1つの遅延干渉計のみでは位相変化量を検波できない。例えば、4値化されたDQPSK受信回路では、変調信号を復調するために2つの遅延干渉回路要素を用いる。
【0022】
図2は、DQPSK用光遅延干渉回路を示す構成図である。基本的な構成では、DQPSK信号を光スプリッタにより分岐し、それぞれを異なる2つの光遅延干渉回路に入力する。具体的には、光スプリッタ23によって分岐されたDQPSK信号の一方は、光スプリッタ3aからアーム導波路4a、5aおよび出力導波路6a、7aを経てPD対8a、8bに至る第1の光遅延干渉回路へ入力される。DQPSK信号の他方は、光スプリッタ3bからアーム導波路4b、5bおよび出力導波路6b、7bを経てPD対8c、8dに至る第2の光遅延干渉回路へ入力される。2つの遅延干渉回路にはそれぞれ光遅延部9a、9bが含まれ、それぞれが1シンボル分の遅延を有する。さらに、一方の光遅延干渉回路にはπ/2位相推移部12が備えられている(図2の場合、光遅延部9aを有する干渉回路)。
【0023】
光遅延部9a、9bおよび位相推移部12は、微調整機能部(図示せず)を備え、遅延時間または位相推移量の微調整を行うことができる。例えば、微調整機能部をヒータによって構成する場合、導波路上部に配置されたヒータを加熱することで、屈折率変化による光路長の変化を発生させることができる。したがって、ヒータ加熱量に応じて、与えるべき遅延時間または位相推移量を微調整することができる。上述の構成によれば、各光遅延干渉回路において別々の直交する2値信号(I信号およびQ信号)を受信することができ、全体として4値のDQPSK信号の復調が可能となる。
【0024】
以上で、DPSK信号を受信する基本的な受信回路を説明した。もう一度、ここで簡単に整理する。DPSK受信回路は、光遅延干渉回路と受光用PD対により構成されている。DBPSK受信回路の場合は、1つの光遅延干渉回路と、1つの受光用PD対により構成される(図1)。DQPSK受信回路の場合は、2つの光遅延干渉回路と、2つの受光用PD対により構成される(図2)。
【0025】
一方、このような差動位相変調信号は大容量の信号を伝送できるために有効であるが、ファイバの波長分散や、伝送路中の波長フィルタによる信号帯域狭窄化により、伝送信号が劣化するという問題がある。これらを以下に詳細に説明する。
【0026】
ファイバの波長分散とは、ファイバを伝搬する光の伝搬速度が、波長により異なる量を示し、ps/nm等の単位で表現される。例えば1ps/nmとは、1nm波長が異なる光の間で伝搬速度が異なり、1psの遅延差が発生することを意味する。伝送される光信号は、複数の波長成分から構成される。従って、伝送信号を構成する異なる波長の光は、異なる速度で伝搬するため、伝搬後に伝送信号の波形劣化が発生する。
【0027】
次に、波長フィルタによる信号帯域狭窄化による伝送信号の劣化を説明する。光ファイバ伝送システムにおいては、ROADM(Reconfigurable optical add-drop multiplexing)システムに代表されるように、伝送中に多くのノードを通過する。各ノードには、波長フィルタが設置されており、伝送路中に光を加えたり、取り出したりする。信号を通過させる際、波長フィルタは、信号の波長帯域を全て透過できるような帯域の広い矩形のバンドパスフィルタであることが理想的である。しかしながら、実際に使われているフィルタは、完全な矩形性と、光信号全てを透過できる帯域を持っていない。従って、透過するフィルタの数が多くなれば、伝搬する光信号の波長帯域は狭窄化され、伝送信号の劣化が発生する。
【0028】
このように、フィルタによる帯域狭窄化や、ファイバの波長分散は伝送信号を劣化させる。伝送信号が劣化した場合、伝送信号を復調回路により復調して得られる復調信号も、同様に劣化する。復調信号の劣化が激しいと、通信が不可能となる。このような伝送信号の劣化が発生しても、復調可能な方法が提案されている。(ここで、“伝送信号”と“復調信号”を特に区別する。“伝送信号”とは、光ファイバ中を伝送している光信号であり、DPSK受信回路に入力する信号である。“復調信号”とは、受信回路内の復調回路により復調された後の光信号を、PD対により受光した電気信号である。)
【0029】
非特許文献1に、パーシャルDPSK(PDPSK:Partial DPSK)という技術が提案されている。フィルタによる帯域狭窄化やファイバの波長分散により劣化した伝送信号を復調する際、復調回路を構成する光遅延干渉回路の遅延量を減少させると、復調信号の劣化を低減できるというものである。
【0030】
図3にPDPSK技術を説明する模式図を示す。DPSK信号は、光の位相が情報を持つ。従って、強度は常に一定の信号である。位相が切り替わる際に強度が一度変化するが、信号点(信号を読み取る時間)においては、常に1である。一方、位相により情報を伝送するため、伝送信号の光の位相は、刻々と変化する。図3では、DBPSK信号を伝送した場合を示す。位相は、0とπの間で変化し、送信機から伝送信号が送出される。
【0031】
しかしながら、伝送路中のフィルタによる信号帯域狭窄や波長分散によって、受信機に到達する伝送信号は劣化する。この信号劣化は、図3の受信機直前の送信信号に示すように、強度変動として現れる。強度変動のない伝送信号を従来の1ビットの遅延量を持つDPSK受信回路により復調した場合、前後の信号の位相差に応じて、0か1の信号へ復調される。しかしながら、伝送信号の強度が変動した場合、強度変動に応じて復調信号が変化する。このため、伝送信号の位相差と、強度変動の両方に対し復調信号が変化してしまい、復調信号の劣化が発生する。
【0032】
そこで、図3に示すように、復調回路内の光遅延干渉計の遅延量を適切に調整すると、復調信号の劣化を防ぐことができる。遅延量を減少させることで、伝送信号の強度変動により変動しない復調信号が得られる。
【0033】
図4に、伝送路中の波長分散に対する所要OSNRを示している。OSNRとは、光信号雑音比(Optical signal-noise ratio)のことであり、伝送信号の品質をあらわすパラメータである。OSNRが大きいほど、品質の高い信号であることを示す。また、所要OSNRとは、伝送システムにおいてある誤り率を達成するために必要なOSNRである。“所要OSNRが高い”と、ある誤り率を達成するためには、品質の良い伝送信号を伝送しなければならないことを示す。従って、所要OSNRが低いほど、よい伝送状態であることを示す。
【0034】
図4に示すように、伝送路中の波長分散量が増加すると、復調信号が劣化し、所要OSNRが高くなる。但し、その劣化量が、受信回路の光遅延干渉回路の遅延量により異なることがわかる。従来の復調方法である1ビット遅延の復調器Aでは、分散量が小さい場合は所要OSNRが低く、良好な伝送が可能である。しかし、分散量が多くなると、急激に所要OSNRが劣化する。
【0035】
一方、PDPSK技術、つまり、遅延量を0.6ビット程度まで低減させた復調器Cを用いると、分散量が大きい伝送路でも、所要OSNR量の劣化量が少ない。従って、分散量が少ない場合、Aが最適な復調器であり、分散量が多い伝送路においては、Cがもっとも良好な伝送を可能とする復調器となる。同様に、伝送路中に配置されたフィルタによる信号の狭窄化に対しても、遅延量を低減させることで良好な伝送が可能となる。
【0036】
以上に説明したように、伝送路の状態、特に波長分散量やフィルタによる信号帯域狭窄化量に応じて、光遅延干渉回路の遅延量を最適化することにより、良好な伝送が実現できる。
【0037】
しかしながら、伝送信号が伝搬する実際の光伝送網は、環境変動による光ファイバの状態変化や、伝送経路の変更等により、その波長分散量やフィルタによる信号の狭窄化量は刻々と変化する。したがって、これらによる伝送信号の劣化量も変化するため、良好に復調するには遅延量が調整可能な復調器が必要である。そこで、本発明では、伝送路の状態(波長分散量やフィルタ狭窄化量)に応じて、良好な復調状態を実現できる導波路型可変帯域干渉回路の構成を提案する。
【0038】
非特許文献1に記載の復調方法は、伝送路の波長分散量やフィルタ狭窄化量に応じて、遅延量を可変することである。この場合、仮に導波路型の可変遅延干渉回路が実現できたとすると、図5(a−1)に示すような遅延干渉計となる。この遅延干渉計の透過スペクトルは、図5(a−2)に示すように、sin関数状のスペクトルとなり、遅延量を変化させると、その周期が変化する。その遅延量は可変遅延部52により決定される。たとえば、40Gビット/sのDBPSK信号の伝送の場合、1ビットはおよそ25psであるため、1ビット遅延は25psである。従って、sin関数の周期は40GHzとなる。
【0039】
図5(a−2)は、遅延量を可変遅延部52により1ビット、(1−x)ビット、(1−2x)ビットの3段階に変化させた場合のスペクトルであり、中心のf0は遅延干渉計の使用周波数である。この透過スペクトルは図5(a−1)の片側の出力端の透過スペクトルであるが、他方の出力端の透過スペクトルは、これを反転したものである。反転とは、図5(a−1)の透過スペクトルを周波数fの関数F(f)とすると、G(f)=1−F(f)とすることである。つまり、他方の出力端の透過スペクトルはG(f)となる。2つある出力端のどちらがF(f)となるかは、復調器機能としては同等であり、どちらでも構わない。
【0040】
先にも述べたように、上記のような可変遅延干渉回路は実現が難しい。なぜなら、導波路の長さを自由に変更することは、簡便にはできないためである。そこで、本発明においては、簡易的に同様な機能を実現できる回路構成を提案する。具体的には、図5(b−1)に示すように、遅延量が異なる2種類の遅延部を持ち、これらが分岐比可変カプラ54により直列に接続されている回路構成である。分岐比の可変カプラ54は、導波路により簡便に実現できるため、このような復調回路の実現は容易である。2箇所の遅延部は異なる遅延量を持つ。これらの遅延量の決定方法を次に説明する。
【0041】
図5(a−1)に示したように、遅延量をXビット、(X−dx)ビット、(X−2*dx)ビットで変化させたい場合を考える。Xは最大の遅延量、dxは変化させるステップである。但し、X−2*dxは0より大きな値である。この場合、図5(b−1)における遅延部の遅延量Y1、Y2は、
Y1=(X−2*dx)/2 (式1)
Y2=(X+2*dx)/2 (式2)
で与えられる。
【0042】
式1、式2で与えられるY1、Y2に遅延量を設定した場合の復調回路の透過スペクトルを図5(b−2)に示す。これは、2つある出力端の片方の透過スペクトルであり、他方の出力端はこれを反転したものである。図5(a−2)のスペクトルと比較すると、異なる透過スペクトルとなる。復調器の構成が異なるため、透過スペクトルも異なる。但し、f0付近の周波数のみに注目すると、図5(a−1)と図5(b−1)は、同等のスペクトルを実現できている。
【0043】
ここで注意すべきは、伝送信号の光スペクトル帯域である。伝送信号の光スペクトルは、f0を中心とした限られた帯域のみに存在する。具体的には、信号スペクトル強度の8割以上の光は、1ビット遅延時の遅延干渉回路の周期できまる帯域内に存在し、その領域を伝送信号スペクトル帯域として図5(a−2)および図5(b−2)に示す。復調回路として重要なのは、この伝送信号スペクトル帯域内における復調回路の透過スペクトルとなる。従って、伝送信号スペクトル帯域内で比較すると、理想的な図5(a−1)の可変遅延干渉回路と、本発明で提案する図5(b−1)の可変帯域干渉回路は同等の機能および性能を実現することができる。
【0044】
このように、本発明によれば、伝送路の分散やフィルタによる信号狭窄化により劣化した伝送信号を、分岐比可変カプラの分岐比を調整することで、良好な復調状態を得ることができる。更に、本発明の構成を用いることで、実現可能で簡易な復調回路を実現することができる。より具体的な使用方法としては、図6に示すように、2つの遅延部に位相シフタ62および64を搭載することで、伝送信号の中心周波数にあわせて復調回路の中心周波数f0を調整することができる。
【0045】
また、図7に示すように、伝送路の分散量が多い場合や、フィルタによる狭窄化が多い場合には、分岐比可変カプラの分岐比を100%に設定することで、劣化した伝送信号でも、良好な復調信号に変換することが可能となる。また、伝送路の状態が良好な場合は、分岐比を0%にすることで良好な復調が可能となる。伝送路の分散量や狭窄化に応じて、分岐比を変更することで、良好な復調が実現することができる。
【0046】
ここで最大の遅延量Xに関して、より詳細に述べる。遅延量は、多値差動位相変調光信号の信号間隔とおよそ一致させればよく、必ずしも厳密に一致させる必要はない。なぜならば、多値差動位相変調光信号は有限な時間幅の信号であるため、遅延量が厳密に信号間隔と一致しなくても、復調回路内で前後の信号が干渉できるため、復調動作が可能となる。従って、原理的には、信号間隔Tdに対し、信号幅Twのズレがあってもよい。ここで、信号間隔Tdは、信号の繰り返し周期に相当する時間幅であり、信号幅Twは、信号の強度が0でない時間幅である。従って、最大遅延量Xは、Td−Tw/2<X<Td+Tw/2で設定すればよい。
【0047】
ここまでは、可変帯域干渉回路について説明したが、これを実際に復調回路として使用する場合の構成例を図8に示す。図8(a)は、DBPSK復調回路であり、図8(b)は、DQPSK復調回路である。
【実施例1】
【0048】
実際に作製した回路の模式図を図9に示す。平面型光波回路としては、Si基板上に堆積した石英系ガラス導波路を用いた。火炎堆積法により、Si基板上に下部クラッド層およびコア層を堆積し、コア層をフォトリソグラフィーおよびエッチングにより形成し、再び火炎堆積法により上部クラッド層を作製した。コア層には、クラッド層と異なり、ゲルマニウムをドープすることで屈折率を高め、導波路を形成した。
【0049】
伝送信号は21.9Gビット/sのDBPSK信号を用いた。遅延量として、1ビット遅延に相当する45psと、37ps、29psの3段階の遅延量を想定して、この遅延量と同等のフィルタ特性を実現するために、式(1)、(2)により遅延量を決定した。この場合、X=45ps、dx=8psとなるため、Y1、Y2はそれぞれ、8ps、37psとなった。
【0050】
実験では、分岐比可変カプラとして、位相シフタ91aおよび91bが配置された等長マッハツェンダ干渉回路を用いた。位相シフタ91a、91bを駆動することで、分岐比を0〜100%に可変できる。固定分岐比50%のカプラ92、94、96および98としては、マルチモード干渉カプラ(MMIカプラ)を使用した。
【0051】
この可変帯域干渉回路を用いて、DBPSK信号の復調実験を行った。波長分散により伝送信号を劣化させながら、所要OSNRを測定した。所要OSNRは、ビットエラーレート(BER)が10-3となる際のOSNRである。比較のため、従来の遅延干渉回路(1ビット遅延)による復調特性も測定した。本実施例で作製した可変帯域干渉回路は、位相シフタ91a、91bにより分岐比可変カプラの分岐比を調整して、最良の復調特性が得られるように調整した。
【0052】
結果を図10に示す。波長分散を増加させると、伝送信号の劣化に伴い、復調信号が劣化する。したがって、所要OSNR量が増加する。しかしながら、従来の遅延干渉回路に比べ、本発明の回路では、劣化量が格段に抑制されていることが分かる。
【0053】
次に、伝送路のフィルタ特性により伝送信号の帯域狭窄化に対する耐性を調べた。復調器に入力するDBPSK信号の帯域を狭窄化するために、バンドパスフィルタを用いた。バンドパスフィルタの透過帯域幅(3dB帯域)を変化させ、復調特性を調べた。
【0054】
結果を図11に示す。バンドパスフィルタの帯域を狭くして、信号狭窄化を強くすると、伝送信号の劣化に伴い、復調信号も劣化する。そのため、所要OSNR量が大きくなる。しかしながら、その劣化量を従来の復調器と比較すると、劣化具合が抑制されていることが分かる。
【0055】
ここでは、分岐比可変カプラとして等長マッハツェンダ干渉回路を使用したが、これに限定されるものではなく、分岐比が可変なカプラならばよい。また、固定分岐比カプラとして、MMIカプラを用いたが、これに限定されるものではなく、方向性結合器やXカプラ等でもかまわない。
【0056】
このように、本発明の回路構成により、伝送路の波長分散量やフィルタによる信号狭窄化量に応じて、帯域可変干渉回路を用いることで、良好な復調特性が得られる復調器を簡便に実現できた。
【実施例2】
【0057】
DBPSKもしくはDQPSK信号の復調器として、非常に低い偏波依存性が要求される場合がある。偏波依存性とは、伝送信号の入射偏波により復調器の遅延量が僅かに変化することである。石英系ガラス導波路は、その屈折率が入射偏波に依存するため、導波路の光路長が入射偏波により変化する。この屈折率の入射偏波依存性は、Si基板に平行な電界成分を持つ光(水平偏波)と垂直な電界成分を持つ光(垂直偏波)との間で発生し、それぞれの光が感じる屈折率の差を、複屈折と呼ぶ。遅延量を正確に制御するためには、複屈折に起因した偏波依存性を解消することが求められる。
【0058】
そこで、導波路の複屈折を解消するために、45度半波長板を用いた構成例を図12に示す。図において、45度半波長板122、124は、水平偏波と垂直偏波とを入れ替える動作をする。従って、ある区間の導波路の中央に配置すると、中間点で偏波が入れ替わるため、区間の平均的な屈折率を光は感じることとなる。従って、複屈折の解消が可能となる。
【0059】
実際に実施例1と同様の方法、および、同様の設計により、可変帯域干渉回路を作製し、図12のように2箇所の遅延部の中央に、45度半波長板を配置した。但し、各遅延部に配置した位相シフタは、2分割して、45度半波長板の前後に配置した。なぜなら、位相シフタを配置することで発生する余計な複屈折を解消するためである。これにより、第1の遅延部および第2の遅延部における、遅延量の偏波依存性は解消される。
【0060】
以上、本発明について、具体的にいくつかの実施形態について説明したが、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。ここに例示した実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなくその構成と詳細を変更することができる。さらに、説明のための構成要素および手順は、本発明の趣旨から逸脱することなく変更、補足、またはその順序を変えてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 光遅延干渉回路
2 入力導波路
3 光スプリッタ
4 長尺アーム導波路
5 短尺アーム導波路
6、7 出力導波路
8 フォトダイオード対
9 光遅延部
10 光結合器
12 π/2位相推移部
23 光スプリッタ
52 可変遅延部
54 分岐比可変カプラ
62、64 位相シフタ
91 位相シフタ
92、94、96、98 固定分岐比のカプラ
122、124 45度半波長板
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動位相変調された光信号を受信する光受信機に関する。より詳細には、劣化信号に対しても高い復調性能を実現可能な回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の進展に伴い、光信号を直接信号処理する光部品の開発が益々重要となっている。とりわけ、平面基板上に集積された平面光波回路(PLC:Planar Light Circuit)を用い、光の干渉を利用した導波路型光干渉回路は、量産性、低コスト性および高信頼性の面から優れた特徴をもち、多くの研究開発がなされている。導波路型光干渉回路には、例えば、アレイ導波路回折格子、マッハツェンダ干渉計、ラティス回路等がある。
【0003】
このような導波路型光干渉回路は、標準的なフォトグラフィー法およびエッチング技術ならびにFHD(Flame Hydrolysis Deposition)等のガラス堆積技術によって作製される。具体的にプロセスを概観すれば、最初に、基板上にアンダークラッド層ならびに周辺部より高い屈折率を持つコア層を堆積させる。その後、コア層に導波路パターンを形成し、最後にオーバークラッド層によってコア層で形成された導波路を埋め込むプロセスにより、導波路が作製される。信号光は、上述のようなプロセスを経て作製された導波路内に閉じ込められ、伝搬する。
【0004】
光伝送システムにおける変復調処理技術に目を転ずると、位相変調方式を用いた信号伝送が広く実用化されている。差動位相シフトキーイング(DPSK)は、伝送路の持つ波長分散や偏波モード分散に起因する信号劣化に対する耐性が強いことから、特に注目されている。さらに、位相変調における信号位相点を増やす変調の多値化も同時に行われている。2つの位相点を持つ2値のDBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying)に加え、4つの位相点を持つ4値のDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)等も研究されている。
【0005】
このようなDBPSK信号や、DQPSK信号を復調するにあたっては、相前後する変調シンボルに対応する光信号を干渉させて検波する光遅延干渉計(光遅延干渉回路)が必要となる。すなわち、光信号を分岐して、一方の光信号に1シンボル分の遅延を与え、他方の光信号と干渉させることで、前後する変調シンボルの信号の位相差を検波することができる。光遅延干渉回路を構成および製作のために前述のPLC技術を適用し、回路性能を長期安定化することおよび回路の小サイズ化することなどが期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Partial DPSK with excellent filter tolerance and OSNR sensitivity ”Mikkelsen, B.; Rasmussen, C.; Mamyshev, P.; Liu, F.; Electronics Letters Volume: 42, Issue: 23, Publication Year: 2006, Page(s): 1363 - 1364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DPSK信号は、光ファイバの波長分散や、伝送路中の波長フィルタによる信号帯域狭窄化により、伝送信号が劣化するという問題がある。また、伝送信号が伝搬する実際の光伝送網は、環境変動による光ファイバの状態変化や、伝送経路の変更等により、その波長分散量やフィルタによる信号の狭窄化量は刻々と変化するという問題がある。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、波長分散やフィルタ狭窄化によって劣化した差動位相変調信号を良好に受信できる光受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、多値の差動位相変調された光信号を復調する受信機であって、前記光信号を分岐する光スプリッタと、前記光スプリッタによって分岐された光信号間に第1の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第1の遅延部と、前記第1の遅延部によって第1の遅延量の遅延が付与された光信号を結合する、分岐比可変の第1のカプラと、前記第1のカプラから出力される光信号間に前記第1の遅延量とは異なる第2の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第2の遅延部と、前記第2の遅延部によって第2の遅延量の遅延が付与された光信号を干渉させる第2のカプラとを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の受信機であって、前記第1の遅延量と前記第2の遅延量との和は、前記光信号の信号間隔に略等しくなるように設定されたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の受信機であって、前記第1および第2の遅延部の各々は、一方の導波路に位相シフタが配置されたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の受信機であって、前記第2のカプラは、2つの出力を有し、各出力に受光素子が接続されたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の受信機であって、前記第1のカプラは、各アーム導波路に位相シフタを備えた等長マッハツェンダ干渉回路から構成され各アーム導波路に位相シフタを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の受信機であって、前記第1および第2の遅延部の少なくともいずれか一方は、前記長さの異なる導波路を横断する45度半波長板を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の受信機であって、前記光信号は、DBPSKまたはDQPSK信号であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】DBPSK信号を受信する回路の構成例を示す図である。
【図2】DQPSK信号を受信する回路の構成例を示す図である。
【図3】PDPSK技術を説明するための模式図である。
【図4】図3の構成における波長分散に対する所要OSNRを示す図である。
【図5】PDPSK技術による光遅延干渉回路と本願発明による光遅延干渉回路の対比を示す図である。
【図6】本発明による光遅延干渉回路の構成例を示す図である。
【図7】図6の構成における波長分散に対する所要OSNRを示す図である。
【図8】本発明による受信回路の構成例を示す図であり、(a)は、DBPSK信号を受信する回路の構成例を示し、(b)は、DQPSK信号を受信する回路の構成例を示している。
【図9】本発明の実施例1による光遅延干渉回路の構成を示す図である。
【図10】図9の構成における波長分散に対する所要OSNRを示す図である。
【図11】図9の構成におけるフィルタの透過帯域に対する所要OSNRを示す図である。
【図12】本発明の実施例2による光遅延干渉回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。まず従来のDPSK受信機の構成について説明し、その後に本発明によるDPSK受信機の構成について説明する。
【0018】
図1は、DBPSK受信回路を構成する光遅延干渉回路の基本的構成を示す図である。まず、2値の信号点を持つDBPSKを例として、光遅延干渉回路の動作を説明する。光遅延干渉回路1は、非対称マッハツェンダ干渉計により構成される。すなわち、光遅延干渉回路1は、入力導波路2と、入力導波路2に接続された光スプリッタ3と、出力導波路6および7と、各出力導波路に接続された光結合器10とを備える。光スプリッタ3および光結合器10は、長さの異なる2本の導波路、すなわち長尺アーム導波路4および短尺アーム導波路5により接続されている。出力導波路6および7の出力端には差動受光部を構成するフォトダイオード(以下PDという)対8a、8bが配置されている。
【0019】
光遅延干渉回路1には、入力導波路2へDBPSK信号が入力される。DBPSK信号は、光スプリッタ3によって、長尺アーム導波路4および短尺アーム導波路5の2つへ分岐される。長尺アーム導波路4および短尺アーム導波路5は、これらの導波路長さの差により光遅延部9を構成する。この光遅延部9による遅延時間量は、DBPSK信号の1シンボル分に相当する時間である。例えば、シンボルレートが20Gビット/sの場合、その逆数である50psの遅延が1シンボル分の遅延時間量となる。
【0020】
光遅延部9においてこの遅延を与えることにより、DBPSK信号の相前後するシンボル間において干渉が発生する。干渉を与えられたDBPSK信号は、差動受光部のPD対8a、8bにより受光され、2本の出力導波路6、7からの光信号の光強度について差分検波される。この結果、相前後するシンボル間で、信号の位相差に対応した差分出力変化が発生する。すなわち、PD対8a、8bからなる差動受光部から復調出力が得られる。例えば、位相差0の場合、差分出力信号が正となり、位相差πの場合、差分出力信号が負となる。
【0021】
位相変調が2値以上に多値化された場合は、1つの遅延干渉計のみでは位相変化量を検波できない。例えば、4値化されたDQPSK受信回路では、変調信号を復調するために2つの遅延干渉回路要素を用いる。
【0022】
図2は、DQPSK用光遅延干渉回路を示す構成図である。基本的な構成では、DQPSK信号を光スプリッタにより分岐し、それぞれを異なる2つの光遅延干渉回路に入力する。具体的には、光スプリッタ23によって分岐されたDQPSK信号の一方は、光スプリッタ3aからアーム導波路4a、5aおよび出力導波路6a、7aを経てPD対8a、8bに至る第1の光遅延干渉回路へ入力される。DQPSK信号の他方は、光スプリッタ3bからアーム導波路4b、5bおよび出力導波路6b、7bを経てPD対8c、8dに至る第2の光遅延干渉回路へ入力される。2つの遅延干渉回路にはそれぞれ光遅延部9a、9bが含まれ、それぞれが1シンボル分の遅延を有する。さらに、一方の光遅延干渉回路にはπ/2位相推移部12が備えられている(図2の場合、光遅延部9aを有する干渉回路)。
【0023】
光遅延部9a、9bおよび位相推移部12は、微調整機能部(図示せず)を備え、遅延時間または位相推移量の微調整を行うことができる。例えば、微調整機能部をヒータによって構成する場合、導波路上部に配置されたヒータを加熱することで、屈折率変化による光路長の変化を発生させることができる。したがって、ヒータ加熱量に応じて、与えるべき遅延時間または位相推移量を微調整することができる。上述の構成によれば、各光遅延干渉回路において別々の直交する2値信号(I信号およびQ信号)を受信することができ、全体として4値のDQPSK信号の復調が可能となる。
【0024】
以上で、DPSK信号を受信する基本的な受信回路を説明した。もう一度、ここで簡単に整理する。DPSK受信回路は、光遅延干渉回路と受光用PD対により構成されている。DBPSK受信回路の場合は、1つの光遅延干渉回路と、1つの受光用PD対により構成される(図1)。DQPSK受信回路の場合は、2つの光遅延干渉回路と、2つの受光用PD対により構成される(図2)。
【0025】
一方、このような差動位相変調信号は大容量の信号を伝送できるために有効であるが、ファイバの波長分散や、伝送路中の波長フィルタによる信号帯域狭窄化により、伝送信号が劣化するという問題がある。これらを以下に詳細に説明する。
【0026】
ファイバの波長分散とは、ファイバを伝搬する光の伝搬速度が、波長により異なる量を示し、ps/nm等の単位で表現される。例えば1ps/nmとは、1nm波長が異なる光の間で伝搬速度が異なり、1psの遅延差が発生することを意味する。伝送される光信号は、複数の波長成分から構成される。従って、伝送信号を構成する異なる波長の光は、異なる速度で伝搬するため、伝搬後に伝送信号の波形劣化が発生する。
【0027】
次に、波長フィルタによる信号帯域狭窄化による伝送信号の劣化を説明する。光ファイバ伝送システムにおいては、ROADM(Reconfigurable optical add-drop multiplexing)システムに代表されるように、伝送中に多くのノードを通過する。各ノードには、波長フィルタが設置されており、伝送路中に光を加えたり、取り出したりする。信号を通過させる際、波長フィルタは、信号の波長帯域を全て透過できるような帯域の広い矩形のバンドパスフィルタであることが理想的である。しかしながら、実際に使われているフィルタは、完全な矩形性と、光信号全てを透過できる帯域を持っていない。従って、透過するフィルタの数が多くなれば、伝搬する光信号の波長帯域は狭窄化され、伝送信号の劣化が発生する。
【0028】
このように、フィルタによる帯域狭窄化や、ファイバの波長分散は伝送信号を劣化させる。伝送信号が劣化した場合、伝送信号を復調回路により復調して得られる復調信号も、同様に劣化する。復調信号の劣化が激しいと、通信が不可能となる。このような伝送信号の劣化が発生しても、復調可能な方法が提案されている。(ここで、“伝送信号”と“復調信号”を特に区別する。“伝送信号”とは、光ファイバ中を伝送している光信号であり、DPSK受信回路に入力する信号である。“復調信号”とは、受信回路内の復調回路により復調された後の光信号を、PD対により受光した電気信号である。)
【0029】
非特許文献1に、パーシャルDPSK(PDPSK:Partial DPSK)という技術が提案されている。フィルタによる帯域狭窄化やファイバの波長分散により劣化した伝送信号を復調する際、復調回路を構成する光遅延干渉回路の遅延量を減少させると、復調信号の劣化を低減できるというものである。
【0030】
図3にPDPSK技術を説明する模式図を示す。DPSK信号は、光の位相が情報を持つ。従って、強度は常に一定の信号である。位相が切り替わる際に強度が一度変化するが、信号点(信号を読み取る時間)においては、常に1である。一方、位相により情報を伝送するため、伝送信号の光の位相は、刻々と変化する。図3では、DBPSK信号を伝送した場合を示す。位相は、0とπの間で変化し、送信機から伝送信号が送出される。
【0031】
しかしながら、伝送路中のフィルタによる信号帯域狭窄や波長分散によって、受信機に到達する伝送信号は劣化する。この信号劣化は、図3の受信機直前の送信信号に示すように、強度変動として現れる。強度変動のない伝送信号を従来の1ビットの遅延量を持つDPSK受信回路により復調した場合、前後の信号の位相差に応じて、0か1の信号へ復調される。しかしながら、伝送信号の強度が変動した場合、強度変動に応じて復調信号が変化する。このため、伝送信号の位相差と、強度変動の両方に対し復調信号が変化してしまい、復調信号の劣化が発生する。
【0032】
そこで、図3に示すように、復調回路内の光遅延干渉計の遅延量を適切に調整すると、復調信号の劣化を防ぐことができる。遅延量を減少させることで、伝送信号の強度変動により変動しない復調信号が得られる。
【0033】
図4に、伝送路中の波長分散に対する所要OSNRを示している。OSNRとは、光信号雑音比(Optical signal-noise ratio)のことであり、伝送信号の品質をあらわすパラメータである。OSNRが大きいほど、品質の高い信号であることを示す。また、所要OSNRとは、伝送システムにおいてある誤り率を達成するために必要なOSNRである。“所要OSNRが高い”と、ある誤り率を達成するためには、品質の良い伝送信号を伝送しなければならないことを示す。従って、所要OSNRが低いほど、よい伝送状態であることを示す。
【0034】
図4に示すように、伝送路中の波長分散量が増加すると、復調信号が劣化し、所要OSNRが高くなる。但し、その劣化量が、受信回路の光遅延干渉回路の遅延量により異なることがわかる。従来の復調方法である1ビット遅延の復調器Aでは、分散量が小さい場合は所要OSNRが低く、良好な伝送が可能である。しかし、分散量が多くなると、急激に所要OSNRが劣化する。
【0035】
一方、PDPSK技術、つまり、遅延量を0.6ビット程度まで低減させた復調器Cを用いると、分散量が大きい伝送路でも、所要OSNR量の劣化量が少ない。従って、分散量が少ない場合、Aが最適な復調器であり、分散量が多い伝送路においては、Cがもっとも良好な伝送を可能とする復調器となる。同様に、伝送路中に配置されたフィルタによる信号の狭窄化に対しても、遅延量を低減させることで良好な伝送が可能となる。
【0036】
以上に説明したように、伝送路の状態、特に波長分散量やフィルタによる信号帯域狭窄化量に応じて、光遅延干渉回路の遅延量を最適化することにより、良好な伝送が実現できる。
【0037】
しかしながら、伝送信号が伝搬する実際の光伝送網は、環境変動による光ファイバの状態変化や、伝送経路の変更等により、その波長分散量やフィルタによる信号の狭窄化量は刻々と変化する。したがって、これらによる伝送信号の劣化量も変化するため、良好に復調するには遅延量が調整可能な復調器が必要である。そこで、本発明では、伝送路の状態(波長分散量やフィルタ狭窄化量)に応じて、良好な復調状態を実現できる導波路型可変帯域干渉回路の構成を提案する。
【0038】
非特許文献1に記載の復調方法は、伝送路の波長分散量やフィルタ狭窄化量に応じて、遅延量を可変することである。この場合、仮に導波路型の可変遅延干渉回路が実現できたとすると、図5(a−1)に示すような遅延干渉計となる。この遅延干渉計の透過スペクトルは、図5(a−2)に示すように、sin関数状のスペクトルとなり、遅延量を変化させると、その周期が変化する。その遅延量は可変遅延部52により決定される。たとえば、40Gビット/sのDBPSK信号の伝送の場合、1ビットはおよそ25psであるため、1ビット遅延は25psである。従って、sin関数の周期は40GHzとなる。
【0039】
図5(a−2)は、遅延量を可変遅延部52により1ビット、(1−x)ビット、(1−2x)ビットの3段階に変化させた場合のスペクトルであり、中心のf0は遅延干渉計の使用周波数である。この透過スペクトルは図5(a−1)の片側の出力端の透過スペクトルであるが、他方の出力端の透過スペクトルは、これを反転したものである。反転とは、図5(a−1)の透過スペクトルを周波数fの関数F(f)とすると、G(f)=1−F(f)とすることである。つまり、他方の出力端の透過スペクトルはG(f)となる。2つある出力端のどちらがF(f)となるかは、復調器機能としては同等であり、どちらでも構わない。
【0040】
先にも述べたように、上記のような可変遅延干渉回路は実現が難しい。なぜなら、導波路の長さを自由に変更することは、簡便にはできないためである。そこで、本発明においては、簡易的に同様な機能を実現できる回路構成を提案する。具体的には、図5(b−1)に示すように、遅延量が異なる2種類の遅延部を持ち、これらが分岐比可変カプラ54により直列に接続されている回路構成である。分岐比の可変カプラ54は、導波路により簡便に実現できるため、このような復調回路の実現は容易である。2箇所の遅延部は異なる遅延量を持つ。これらの遅延量の決定方法を次に説明する。
【0041】
図5(a−1)に示したように、遅延量をXビット、(X−dx)ビット、(X−2*dx)ビットで変化させたい場合を考える。Xは最大の遅延量、dxは変化させるステップである。但し、X−2*dxは0より大きな値である。この場合、図5(b−1)における遅延部の遅延量Y1、Y2は、
Y1=(X−2*dx)/2 (式1)
Y2=(X+2*dx)/2 (式2)
で与えられる。
【0042】
式1、式2で与えられるY1、Y2に遅延量を設定した場合の復調回路の透過スペクトルを図5(b−2)に示す。これは、2つある出力端の片方の透過スペクトルであり、他方の出力端はこれを反転したものである。図5(a−2)のスペクトルと比較すると、異なる透過スペクトルとなる。復調器の構成が異なるため、透過スペクトルも異なる。但し、f0付近の周波数のみに注目すると、図5(a−1)と図5(b−1)は、同等のスペクトルを実現できている。
【0043】
ここで注意すべきは、伝送信号の光スペクトル帯域である。伝送信号の光スペクトルは、f0を中心とした限られた帯域のみに存在する。具体的には、信号スペクトル強度の8割以上の光は、1ビット遅延時の遅延干渉回路の周期できまる帯域内に存在し、その領域を伝送信号スペクトル帯域として図5(a−2)および図5(b−2)に示す。復調回路として重要なのは、この伝送信号スペクトル帯域内における復調回路の透過スペクトルとなる。従って、伝送信号スペクトル帯域内で比較すると、理想的な図5(a−1)の可変遅延干渉回路と、本発明で提案する図5(b−1)の可変帯域干渉回路は同等の機能および性能を実現することができる。
【0044】
このように、本発明によれば、伝送路の分散やフィルタによる信号狭窄化により劣化した伝送信号を、分岐比可変カプラの分岐比を調整することで、良好な復調状態を得ることができる。更に、本発明の構成を用いることで、実現可能で簡易な復調回路を実現することができる。より具体的な使用方法としては、図6に示すように、2つの遅延部に位相シフタ62および64を搭載することで、伝送信号の中心周波数にあわせて復調回路の中心周波数f0を調整することができる。
【0045】
また、図7に示すように、伝送路の分散量が多い場合や、フィルタによる狭窄化が多い場合には、分岐比可変カプラの分岐比を100%に設定することで、劣化した伝送信号でも、良好な復調信号に変換することが可能となる。また、伝送路の状態が良好な場合は、分岐比を0%にすることで良好な復調が可能となる。伝送路の分散量や狭窄化に応じて、分岐比を変更することで、良好な復調が実現することができる。
【0046】
ここで最大の遅延量Xに関して、より詳細に述べる。遅延量は、多値差動位相変調光信号の信号間隔とおよそ一致させればよく、必ずしも厳密に一致させる必要はない。なぜならば、多値差動位相変調光信号は有限な時間幅の信号であるため、遅延量が厳密に信号間隔と一致しなくても、復調回路内で前後の信号が干渉できるため、復調動作が可能となる。従って、原理的には、信号間隔Tdに対し、信号幅Twのズレがあってもよい。ここで、信号間隔Tdは、信号の繰り返し周期に相当する時間幅であり、信号幅Twは、信号の強度が0でない時間幅である。従って、最大遅延量Xは、Td−Tw/2<X<Td+Tw/2で設定すればよい。
【0047】
ここまでは、可変帯域干渉回路について説明したが、これを実際に復調回路として使用する場合の構成例を図8に示す。図8(a)は、DBPSK復調回路であり、図8(b)は、DQPSK復調回路である。
【実施例1】
【0048】
実際に作製した回路の模式図を図9に示す。平面型光波回路としては、Si基板上に堆積した石英系ガラス導波路を用いた。火炎堆積法により、Si基板上に下部クラッド層およびコア層を堆積し、コア層をフォトリソグラフィーおよびエッチングにより形成し、再び火炎堆積法により上部クラッド層を作製した。コア層には、クラッド層と異なり、ゲルマニウムをドープすることで屈折率を高め、導波路を形成した。
【0049】
伝送信号は21.9Gビット/sのDBPSK信号を用いた。遅延量として、1ビット遅延に相当する45psと、37ps、29psの3段階の遅延量を想定して、この遅延量と同等のフィルタ特性を実現するために、式(1)、(2)により遅延量を決定した。この場合、X=45ps、dx=8psとなるため、Y1、Y2はそれぞれ、8ps、37psとなった。
【0050】
実験では、分岐比可変カプラとして、位相シフタ91aおよび91bが配置された等長マッハツェンダ干渉回路を用いた。位相シフタ91a、91bを駆動することで、分岐比を0〜100%に可変できる。固定分岐比50%のカプラ92、94、96および98としては、マルチモード干渉カプラ(MMIカプラ)を使用した。
【0051】
この可変帯域干渉回路を用いて、DBPSK信号の復調実験を行った。波長分散により伝送信号を劣化させながら、所要OSNRを測定した。所要OSNRは、ビットエラーレート(BER)が10-3となる際のOSNRである。比較のため、従来の遅延干渉回路(1ビット遅延)による復調特性も測定した。本実施例で作製した可変帯域干渉回路は、位相シフタ91a、91bにより分岐比可変カプラの分岐比を調整して、最良の復調特性が得られるように調整した。
【0052】
結果を図10に示す。波長分散を増加させると、伝送信号の劣化に伴い、復調信号が劣化する。したがって、所要OSNR量が増加する。しかしながら、従来の遅延干渉回路に比べ、本発明の回路では、劣化量が格段に抑制されていることが分かる。
【0053】
次に、伝送路のフィルタ特性により伝送信号の帯域狭窄化に対する耐性を調べた。復調器に入力するDBPSK信号の帯域を狭窄化するために、バンドパスフィルタを用いた。バンドパスフィルタの透過帯域幅(3dB帯域)を変化させ、復調特性を調べた。
【0054】
結果を図11に示す。バンドパスフィルタの帯域を狭くして、信号狭窄化を強くすると、伝送信号の劣化に伴い、復調信号も劣化する。そのため、所要OSNR量が大きくなる。しかしながら、その劣化量を従来の復調器と比較すると、劣化具合が抑制されていることが分かる。
【0055】
ここでは、分岐比可変カプラとして等長マッハツェンダ干渉回路を使用したが、これに限定されるものではなく、分岐比が可変なカプラならばよい。また、固定分岐比カプラとして、MMIカプラを用いたが、これに限定されるものではなく、方向性結合器やXカプラ等でもかまわない。
【0056】
このように、本発明の回路構成により、伝送路の波長分散量やフィルタによる信号狭窄化量に応じて、帯域可変干渉回路を用いることで、良好な復調特性が得られる復調器を簡便に実現できた。
【実施例2】
【0057】
DBPSKもしくはDQPSK信号の復調器として、非常に低い偏波依存性が要求される場合がある。偏波依存性とは、伝送信号の入射偏波により復調器の遅延量が僅かに変化することである。石英系ガラス導波路は、その屈折率が入射偏波に依存するため、導波路の光路長が入射偏波により変化する。この屈折率の入射偏波依存性は、Si基板に平行な電界成分を持つ光(水平偏波)と垂直な電界成分を持つ光(垂直偏波)との間で発生し、それぞれの光が感じる屈折率の差を、複屈折と呼ぶ。遅延量を正確に制御するためには、複屈折に起因した偏波依存性を解消することが求められる。
【0058】
そこで、導波路の複屈折を解消するために、45度半波長板を用いた構成例を図12に示す。図において、45度半波長板122、124は、水平偏波と垂直偏波とを入れ替える動作をする。従って、ある区間の導波路の中央に配置すると、中間点で偏波が入れ替わるため、区間の平均的な屈折率を光は感じることとなる。従って、複屈折の解消が可能となる。
【0059】
実際に実施例1と同様の方法、および、同様の設計により、可変帯域干渉回路を作製し、図12のように2箇所の遅延部の中央に、45度半波長板を配置した。但し、各遅延部に配置した位相シフタは、2分割して、45度半波長板の前後に配置した。なぜなら、位相シフタを配置することで発生する余計な複屈折を解消するためである。これにより、第1の遅延部および第2の遅延部における、遅延量の偏波依存性は解消される。
【0060】
以上、本発明について、具体的にいくつかの実施形態について説明したが、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。ここに例示した実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなくその構成と詳細を変更することができる。さらに、説明のための構成要素および手順は、本発明の趣旨から逸脱することなく変更、補足、またはその順序を変えてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 光遅延干渉回路
2 入力導波路
3 光スプリッタ
4 長尺アーム導波路
5 短尺アーム導波路
6、7 出力導波路
8 フォトダイオード対
9 光遅延部
10 光結合器
12 π/2位相推移部
23 光スプリッタ
52 可変遅延部
54 分岐比可変カプラ
62、64 位相シフタ
91 位相シフタ
92、94、96、98 固定分岐比のカプラ
122、124 45度半波長板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値の差動位相変調された光信号を復調する受信機であって、
前記光信号を分岐する光スプリッタと、
前記光スプリッタによって分岐された光信号間に第1の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第1の遅延部と、
前記第1の遅延部によって第1の遅延量の遅延が付与された光信号を結合する、分岐比可変の第1のカプラと、
前記第1のカプラから出力される光信号間に前記第1の遅延量とは異なる第2の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第2の遅延部と、
前記第2の遅延部によって第2の遅延量の遅延が付与された光信号を干渉させる第2のカプラと
を備えたことを特徴とする受信機。
【請求項2】
請求項1に記載の受信機であって、
前記第1の遅延量と前記第2の遅延量との和は、前記光信号の信号間隔に略等しくなるように設定されたことを特徴とする受信機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の受信機であって、
前記第1および第2の遅延部の各々は、一方の導波路に位相シフタが配置されたことを特徴とする受信機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の受信機であって、
前記第2のカプラは、2つの出力を有し、各出力に受光素子が接続されたことを特徴とする受信機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の受信機であって、
前記第1のカプラは、各アーム導波路に位相シフタを備えた等長マッハツェンダ干渉回路から構成され各アーム導波路に位相シフタを備えたことを特徴とする受信機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の受信機であって、
前記第1および第2の遅延部の少なくともいずれか一方は、前記長さの異なる導波路を横断する45度半波長板を備えたことを特徴とする受信機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の受信機であって、
前記光信号は、DBPSKまたはDQPSK信号であることを特徴とする受信機。
【請求項1】
多値の差動位相変調された光信号を復調する受信機であって、
前記光信号を分岐する光スプリッタと、
前記光スプリッタによって分岐された光信号間に第1の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第1の遅延部と、
前記第1の遅延部によって第1の遅延量の遅延が付与された光信号を結合する、分岐比可変の第1のカプラと、
前記第1のカプラから出力される光信号間に前記第1の遅延量とは異なる第2の遅延量の遅延を付与する、長さの異なる導波路から構成された第2の遅延部と、
前記第2の遅延部によって第2の遅延量の遅延が付与された光信号を干渉させる第2のカプラと
を備えたことを特徴とする受信機。
【請求項2】
請求項1に記載の受信機であって、
前記第1の遅延量と前記第2の遅延量との和は、前記光信号の信号間隔に略等しくなるように設定されたことを特徴とする受信機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の受信機であって、
前記第1および第2の遅延部の各々は、一方の導波路に位相シフタが配置されたことを特徴とする受信機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の受信機であって、
前記第2のカプラは、2つの出力を有し、各出力に受光素子が接続されたことを特徴とする受信機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の受信機であって、
前記第1のカプラは、各アーム導波路に位相シフタを備えた等長マッハツェンダ干渉回路から構成され各アーム導波路に位相シフタを備えたことを特徴とする受信機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の受信機であって、
前記第1および第2の遅延部の少なくともいずれか一方は、前記長さの異なる導波路を横断する45度半波長板を備えたことを特徴とする受信機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の受信機であって、
前記光信号は、DBPSKまたはDQPSK信号であることを特徴とする受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−259022(P2011−259022A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129167(P2010−129167)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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