説明

差圧式流量測定装置

【課題】一の装置でありながら、計測対象である流体の清浄度に影響を与えることなく、簡便に複数の計測レンジの異なる流体流量を測定することができる流量測定装置を提供する。
【解決手段】被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部20と第2圧力検知部25とが圧力損失部30を介して配置された差圧式流量測定装置10Aにおいて、前記第1圧力検知部20と前記第2圧力検知部25との間を単一の流路で接続する接続流路部40と、前記接続流路部40に配置され貫通孔66が形成されたポペット弁体65Aを有する開閉弁部60Aと、前記開閉弁部60Aの開閉動作を制御する演算部80とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量を測定する流量センサーとして、回転式流量センサー、浮子式流量センサー、超音波流量センサー、カルマン渦流量センサー等の種々の流量センサーがある。回転式流量センサーや浮子式流量センサーでは羽根車や浮子が流路内で可動することにより流路にパーティクル(微細なゴミ)が発生してしまう等の問題がある。超音波流量センサーやカルマン渦流量センサーは流体(液体)の流通時に発生する気泡に弱く流体の乱れによって精度にばらつきが生じる等の問題がある。特に、半導体製造や医療現場等のように高清浄度が求められる環境や発泡性流体が用いられる現場での使用には難しい面があった。
【0003】
上記の問題点を解決した流量センサーとして、差圧式流量センサーが知られている。従来の差圧式流量センサーは、流体流路内に圧力損失部(オリフィス)を挟んで2つの圧力検知部(圧力センサー)を配置し、オリフィスの前後に差圧を発生させて2つの圧力センサーによってそれぞれ検知された流体圧力の圧力差に基づいて流量の測定が行われる(例えば、特許文献1,2,3等参照。)。
【0004】
現状、上記差圧式流量センサーを用いて流量測定を行う場合、想定される流量測定範囲に対応した差圧式流量センサーが流通ラインに配置される。そして、現在使用中の流量センサーの流量測定範囲外に測定流量を変化させる際には、想定外の圧力変動が発生するため、流量センサーの流量測定範囲をその変動圧力に対応させて変更しなければならい。流量測定範囲を変更する場合には、単一のオリフィスによって測定可能な測定範囲が限定されることから、流路内に配置されたオリフィスを他の測定範囲に対応したオリフィスに交換したり、差圧式流量センサー自体を他の測定範囲が設定された流量センサーに交換する必要があった。
【0005】
しかし、オリフィスや流量センサー自体の交換をする際には、流体の流通を一時的に停止させてオリフィスや流量センサーの取り外しや取り付け作業を行わなければならない。このような交換作業は手間であり、常時、複数の流量センサーを配置しなければならないことから、設備のコストもかさむ。また特に、オリフィスの交換を行う場合には、交換作業の際にゴミ等が流路内に混入する等の汚染の可能性があり、流通させる流体や使用環境の清浄度に悪影響を与えることが懸念される。このことから、各種の流量領域に対応して最適な測定精度を維持することができるようなレンジアビリティの大きい差圧式流量センサーが求められている。
【0006】
そこで、一の装置において、被計測流体の清浄度に影響を与えることなく、簡便に複数の測定範囲(計測レンジ)の異なる流体流量の測定に対応した差圧式流量測定装置が求められるに至った。
【特許文献1】特開2007−78383号公報
【特許文献2】特開2006−153677号公報
【特許文献3】特開2006−250955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、一の装置でありながら、計測対象である流体の清浄度に影響を与えることなく、簡便に複数の計測レンジの異なる流体流量を測定することができる差圧式流量測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を単一の流路で接続する接続流路部と、前記接続流路部に配置され貫通孔が形成されたポペット弁体を有する開閉弁部と、前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部とを備えたことを特徴とする差圧式流量測定装置に係る。
【0009】
請求項2の発明は、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を単一の流路で接続する接続流路部と、前記接続流路部に配置されニードル弁体を有する開閉弁部と、前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部とを備えたことを特徴とする差圧式流量測定装置に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記ニードル弁体が多段形状に形成されている請求項2に記載の差圧式流量測定装置に係る。
【0011】
請求項4の発明は、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を独立した複数の流路で接続すると共に前記各流路ごとに少なくとも一の前記圧力損失部を有してなる接続流路部と、前記複数の接続流路部のうち少なくとも一以上の接続流路部に配置された開閉弁部と、前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部とを備えたことを特徴とする差圧式流量測定装置に係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記開閉弁部がポペット弁体を備えている請求項4に記載の差圧式流量測定装置に係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記ポペット弁体に貫通孔が形成されている請求項5に記載の差圧式流量測定装置に係る。
【0014】
請求項7の発明は、前記開閉弁部がニードル弁体を備えている請求項4に記載の差圧式流量測定装置に係る。
【0015】
請求項8の発明は、前記ニードル弁体が多段形状に形成されている請求項7に記載の差圧式流量測定装置に係る。
【0016】
請求項9の発明は、前記第1圧力検知部と、前記第2圧力検知部と、前記接続流路部と、前記開閉弁部のいずれもが単一の本体ブロック内に配置されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載の差圧式流量測定装置に係る。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に係る差圧式流量測定装置は、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を単一の流路で接続する接続流路部と、前記接続流路部に配置され貫通孔が形成されたポペット弁体を有する開閉弁部と、前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部とを備えたため、一の装置でありながら被計測流体の清浄度に影響を与えることなく、簡便に複数の測定範囲の異なる流体流量を測定することができる。
【0018】
請求項2の発明に係る差圧式流量測定装置は、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を単一の流路で接続する接続流路部と、前記接続流路部に配置されニードル弁体を有する開閉弁部と、前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部とを備えたため、一の装置でありながら被計測流体の清浄度に影響を与えることなく、簡便に複数の測定範囲の異なる流体流量を測定することができる。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2において、前記ニードル弁体が多段形状に形成されているため、弁体部分が熱変形の影響を受けにくくなる。
【0020】
請求項4の発明に係る差圧式流量測定装置は、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を独立した複数の流路で接続すると共に前記各流路ごとに少なくとも一の前記圧力損失部を有してなる接続流路部と、前記複数の接続流路部のうち少なくとも一以上の接続流路部に配置された開閉弁部と、前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部とを備えたため、一の装置でありながら被計測流体の清浄度に影響を与えることなく、簡便に複数の測定範囲の異なる流体流量を測定することができる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項4において、前記開閉弁部がポペット弁体を備えているため、流体の圧力損失を抑制し、置換特性にも優れた開閉弁部とすることができる。
【0022】
請求項6の発明は、請求項5において、前記ポペット弁体に貫通孔が形成されているため、開閉弁部に圧力損失部を兼用させて当該流量測定装置の構成の簡素化を図ることができる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項4において、前記開閉弁部がニードル弁体を備えているため、開閉弁部に圧力損失部を兼用させて当該流量測定装置の構成の簡素化を図ることができる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項7において、前記ニードル弁体が多段形状に形成されているため、弁体部分が熱変形の影響を受けにくくなる。
【0025】
請求項9の発明は、請求項1ないし8において、前記第1圧力検知部と、前記第2圧力検知部と、前記接続流路部と、前記開閉弁部のいずれもが単一の本体ブロック内に配置されているため、部品点数等を減らして装置の簡略化及び小型化を実現できるとともに、メンテナンス等の管理も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例に係る差圧式流量測定装置の縦断面図、図2はポペット弁体を有する開閉弁部の縦断面図、図3は第2実施例に係る差圧式流量測定装置の縦断面図、図4はニードル弁体を有する開閉弁部の縦断面図、図5は多段形状に形成されたニードル弁体の要部断面図、図6は第3実施例に係る差圧式流量測定装置の横断面図である。
【0027】
図1に示す本発明の第1実施例に係る差圧式流量測定装置10Aは、被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部20と第2圧力検知部25とが圧力損失部30を介して配置され、第1圧力検知部20と第2圧力検知部25との間を単一の流路で接続する接続流路部40と、接続流路部40に配置された開閉弁部50と、開閉弁部50の開閉動作を制御する演算部80とを備える。図1において、符号12は被計測流体の流入流路、13は被計測流体の流出流路、15は電空レギュレータ、41は接続流路部40の流入側流路、42は接続流路部40の流出側流路を表す。
【0028】
この差圧式流量測定装置10Aでは、図示のように、第1圧力検知部20と、第2圧力検知部25と、接続流路部40と、開閉弁部50のいずれもが単一の本体ブロック11内に配置されるように構成されている。単一の本体ブロック11は、第1ブロック11aと第2ブロック11bとからなり、図示しないボルト等によって一体に形成される。
【0029】
また、本体ブロック11、各圧力検知部20,25、圧力損失部30、接続流路部40,開閉弁部50等における被計測流体が接触する部材は、耐食性、耐薬品性に優れたフッ素樹脂から形成されている。部材の材料となるフッ素樹脂は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等である。これらのフッ素樹脂は、流通する流体の性質、加工のしやすさ等を考慮して選択される。これにより、被計測流体の計測時にその清浄度に影響を与えることが抑制される。
【0030】
第1及び第2圧力検知部20,25は、被計測流体に対してダイヤフラム等の保護膜(図示せず)を介して配置され、被計測流体の圧力によって押圧された前記保護膜からの荷重を検知する公知の圧力センサーが用いられる。図1に示すように、第1圧力検知部20は本体ブロック11の流入流路12側(上流となる一次側)に配置され、第2圧力検知部25は本体ブロック11の流出流路13側(下流となる二次側)に配置される。この図において、符号21は第1圧力検知部20が検知した圧力信号を後述する演算部80に送信するための信号線、26は第2圧力検知部25が検知した圧力信号を演算部80に送信するための信号線である。
【0031】
圧力損失部30は、流路面積を絞ることによって、第1圧力検知部20が検知する流体圧力と第2圧力検知部25が検知する流体圧力とに所定の差圧を発生させるように構成される。実施例の圧力損失部30は、着脱可能な公知のオリフィス部31として構成されている。
【0032】
開閉弁部50は、図1,2に示すように、貫通孔66が形成されたポペット弁体65Aを有するポペット弁装置60Aとして構成される。図1,2において、符号62は接続流路部40に形成された弁室、63は被計測流体が流入側流路41から弁室62内に流入する流入口、64は被計測流体が弁室62内から流出側流路42に流出する流出口、67はポペット弁体65Aと一体に形成されたダイヤフラム部、70はポペット弁体65Aの作動機構(シリンダ装置)、71はそのシリンダ室、72はシリンダ室71と弁室62とを区画する区画ブロック、73はポペット弁体65Aと連結されたピストン部材、74,75はピストン部材73を進退させる作動流体の流出入部、76はエア抜き部、77はポペット弁体65Aの取付部材、78はポペット弁体65Aを前進方向に付勢するバネからなる弾性部材である。
【0033】
このポペット弁装置60Aでは、流出口64にオリフィス部31が配置され、ポペット弁体65Aが弁室62内で流出口64に対して進退して開閉制御される。実施例では、電空レギュレータ15が後述の演算部80からの信号に基づいてポペット弁体65Aのを進退させるエアー(作動流体)の供給,停止を行う。これにより、流出口64から流出する流体の流通が制御される。
【0034】
また、ポペット弁体65Aに貫通孔66を形成したことにより、流出口64の閉鎖時には、貫通孔66を介して流入側流路41と流出側流路42とが連通される。そして、被計測流体が流通する際には、貫通孔66により流路面積が絞られていることにより、流入側流路41と流出側流路42との間に差圧を生じる。従って、貫通孔66は、流出口64に配置したオリフィス部31とは異なる圧力損失部30として作用する。
【0035】
演算部80は、PLC等の公知の演算手段からなる。この演算部80には、オリフィス部31の流路面積に対応する差圧の値と、該差圧に基づいて決定される流量値又はそれらの折れ線近似と、貫通孔66の流路面積に対応する差圧の値と、該差圧に基づいて決定される流量値又はそれらの折れ線近似があらかじめ記憶され、測定誤差等を考慮して記憶されたそれぞれの流量値に最適な流量測定範囲が設定される。実施例の演算部80では、第1圧力検知部20が検知した圧力値と第2圧力検知部25が検知した圧力値に基づいて差圧を演算し、あらかじめ記憶されている差圧と流量値の関係の折れ線近似から流量測定が行われる。
【0036】
この差圧式流量測定装置10Aでは、ポペット弁装置60Aが開放状態である場合、被計測流体は、単一の接続流路部40内を流入側流路41からオリフィス部31を経て流出側流路42に流通する。従って、ポペット弁装置60Aの開放時には、オリフィス部31によって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0037】
また、ポペット弁装置60Aが閉鎖状態である場合、被計測流体は、単一の接続流路部40内を流入側流路41からポペット弁体65Aの貫通孔66を経て流出側流路42に流通する。従って、ポペット弁装置60Aの閉鎖時には、貫通孔66によって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0038】
そこで、差圧式流量測定装置10Aの作用について、仮に、オリフィス部31により測定可能な流量を20〜100mL/min、貫通孔66により測定可能な流量を5〜20mL/minとして説明する。
【0039】
まず、100mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいてポペット弁装置60Aのポペット弁体65Aが開放状態に作動される。その際、オリフィス部31に基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0040】
また、20mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいてポペット弁装置60Aのポペット弁体65Aが閉鎖状態に作動される。その際、貫通孔66に基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0041】
よって、本発明の差圧式流量測定装置10Aでは、異なる流量の被計測流体を切替選択して流通させる場合であっても、単一の装置でありながら目的とする各流量に対応した測定範囲を容易に設定することができる。
【0042】
図3に示す本発明の第2実施例に係る差圧式流量測定装置10Bは、開閉弁部50としてニードル弁体65Bを有するニードル弁装置60Bを用いた例である。なお、以下の実施例において、第1実施例と同一符号は同一の構成を表すものとして、その説明を省略する。
【0043】
ニードル弁装置60Bは、図3,4に示すように、ニードル弁体65Bが弁室62内で流出口64に対して進退して開閉制御される。実施例では、電空レギュレータ15が後述の演算部80からの信号に基づいてニードル弁体65Bのを進退させるエアー(作動流体)の供給,停止を行う。これにより、流出口64から流出する流体の流通が制御される。その際、流出口64の開口量が、ニードル弁体65Bの進退位置に応じて微調整されるため、流出口64は、流入側流路41と流出側流路42との間に差圧を生じさせる可変オリフィス部32からなる圧力損失部30として作用する。
【0044】
差圧式流量測定装置10Bの演算部80には、可変オリフィス部32の流路面積に対応する差圧の値と、該差圧に基づいて決定される流量値又はそれらの折れ線近似があらかじめ記憶され、測定誤差等を考慮して記憶されたそれぞれの流量値に最適な流量測定範囲が設定されている。実施例の演算部80では、第1圧力検知部20が検知した圧力値と第2圧力検知部25が検知した圧力値に基づいて差圧を演算し、あらかじめ記憶されている差圧と流量値の関係の折れ線近似から流量測定が行われる。なお、可変オリフィス部32の流路面積は、閉鎖時から開放(全開)時の範囲内で任意の値が段階的に設定される。
【0045】
そこで、差圧式流量測定装置10Bの作用について、仮に、可変オリフィス部32により測定可能な流量を、開放(全開)状態から閉鎖状態までの範囲で、開放状態(ニードル弁体65Bは後退位置)の50〜100mL/min、中間状態(ニードル弁体65Bは中間位置)の20〜50mL/min、最小状態(ニードル弁体65Bは前進位置)の5〜20mL/minの3段階に設定したとして説明する。
【0046】
まず、100mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいてニードル弁装置60Bのニードル弁体65Bが開放(全開)位置に作動される。その際、可変オリフィス部32の開放状態に基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0047】
また、50mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいてニードル弁装置60Bのニードル弁体65Bが中間位置に作動される。その際、可変オリフィス部32の中間状態に基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0048】
また、20mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいてニードル弁装置60Bのニードル弁体65Bが前進位置に作動される。その際、可変オリフィス部32の最小状態に基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0049】
よって、本発明の差圧式流量測定装置10Bでは、異なる流量の被計測流体を切替選択して流通させる場合であっても、単一の装置でありながら目的とする各流量に対応した測定範囲を容易に設定することができる。
【0050】
なお、差圧式流量測定装置10Bでは、ニードル弁装置60Bにおいて、図5に示す多段形状に形成されたニードル弁体65Cを用いることができる。このニードル弁体65Cは、多段形状としたことにより、弁体65C部分が熱変形の影響を受けにくくなるという利点がある。
【0051】
実施例のニードル弁体65Cは、流出口64のより小径の円筒状に形成された第1弁本体68aと、第1弁本体68aの前進側に設けられたさらに小径の円筒状に形成された第2弁本体68bとによって多段形状に構成されている。このニードル弁体65Cでは、流出口64に対する弁本体68a,68bの挿入状態に応じて、流出口64の開口量を容易に可変させることができる。すなわち、流出口64にニードル弁体65Cが挿入されていない状態(図示せず)では、流出口64の開口量が全開(開放)状態となる。図5(a)に示すように、第2弁本体68bが挿入された状態では、流出口64の開口量が全開状態よりも小さい状態(中間状態)となる。図5(b)に示すように、第1弁体68aが挿入された状態では、流出口64の開口量が第2弁本体68bを挿入した状態よりも小さい状態(最小状態)となる。
【0052】
図6に示す本発明の第3実施例に係る差圧式流量測定装置10Cは、第1圧力検知部20と第2圧力検知部25との間を独立した複数(図示の例では3つ)の接続流路部40A,40B,40Cで接続した例である。この差圧式流量測定装置10Cでは、複数の接続流路部40A,40B,40Cのうち少なくとも一以上の接続流路部40A,40B,40Cに開閉弁部50が配置される。
【0053】
複数の接続流路部40A,40B,40Cは、それぞれ少なくとも一の圧力損失部30A,30B,30Cを有する。各圧力損失部30A,30B,30Cは、それぞれ異なる流量範囲が測定可能となるような差圧が設定されている。なお、実施例の各接続流路部40A,40B,40Cの流路径は、それぞれ各圧力損失部30A,30B,30Cの測定可能な流量範囲に対応した流路径に形成されている。
【0054】
差圧式流量測定装置10Cの開閉弁部50としては、適宜の流路の開閉が可能であればどのような構成であってもよい。例えば、前述の貫通孔66が形成されたポペット弁体65Aを有するポペット弁装置60Aや、ニードル弁体65B(65C)を有するニードル弁装置60B等を用いることができる。このように開閉弁部50としてポペット弁装置60Aやニードル弁装置60Bを用いた場合、開閉弁部50に圧力損失部50を兼用させることが可能となり、オリフィス部等を配置する必要がなくなって、当該流量測定装置10Cの構成の簡素化を図ることができる。なお、実施例では、各接続流路部40A,40B,40Cに対して、それぞれ一の開閉弁部50A,50B,50Cが配置されている。
【0055】
差圧式流量測定装置10Cの演算部80には、圧力損失部30Aの流路面積に対応する差圧の値と該差圧に基づいて決定される流量値又はそれらの折れ線近似、圧力損失部30Bの流路面積に対応する差圧の値と該差圧に基づいて決定される流量値又はそれらの折れ線近似、圧力損失部30Cの流路面積に対応する差圧の値と該差圧に基づいて決定される流量値又はそれらの折れ線近似と、圧力損失部30A,30B、圧力損失部30A,30C、圧力損失部30B,30C、圧力損失部30A,30B,30Cの組合せによる流路面積に対応する差圧の値と該差圧に基づいて決定される流量値又はそれらの折れ線近似がぞれぞれあらかじめ記憶され、測定誤差等を考慮して記憶されたそれぞれの流量値に最適な流量測定範囲が設定されている。実施例の演算部80では、第1圧力検知部20が検知した圧力値と第2圧力検知部25が検知した圧力値に基づいて差圧を演算し、あらかじめ記憶されている差圧と流量値の関係の折れ線近似から流量測定が行われる。
【0056】
次に、差圧式流量測定装置10Cの作動について説明する。以下の実施例において、各開閉弁部50A,50B,50Cは、便宜上、各接続流路部40A,40B,40Cの流路を開閉する機能のみを備えた構成とする。
【0057】
開閉弁部50Aが開放状態かつ開閉弁部50B,50Cが閉鎖状態である場合、被計測流体は、接続流路部40A内を流入側流路41Aから圧力損失部30Aを経て流出側流路42Aに流通する。従って、開閉弁部50Aのみの開放時には、圧力損失部30Aによって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0058】
開閉弁部50Bが開放状態かつ開閉弁部50A,50Cが閉鎖状態である場合、被計測流体は、接続流路部40B内を流入側流路41Bから圧力損失部30Bを経て流出側流路42Bに流通する。従って、開閉弁部50Bのみの開放時には、圧力損失部30Bによって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0059】
開閉弁部50Cが開放状態かつ開閉弁部50A,50Bが閉鎖状態である場合、被計測流体は、接続流路部40C内を流入側流路41Cから圧力損失部30Cを経て流出側流路42Cに流通する。従って、開閉弁部50Cのみの開放時には、圧力損失部30Cによって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0060】
開閉弁部50A,50Bが開放状態かつ開閉弁部50Cが閉鎖状態である場合、被計測流体は、被計測流体は、接続流路部40A内を流入側流路41Aから圧力損失部30Aを経て流出側流路42Aに流通するとともに、接続流路部40B内を流入側流路41Bから圧力損失部30Bを経て流出側流路42Bに流通する。従って、開閉弁部50A,50Bの開放時には、圧力損失部30A,30Bによって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0061】
開閉弁部50A,50Cが開放状態かつ開閉弁部50Bが閉鎖状態である場合、被計測流体は、被計測流体は、接続流路部40A内を流入側流路41Aから圧力損失部30Aを経て流出側流路42Aに流通するとともに、接続流路部40C内を流入側流路41Cから圧力損失部30Cを経て流出側流路42Cに流通する。従って、開閉弁部50A,50Cの開放時には、圧力損失部30A,30Cによって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0062】
開閉弁部50B,50Cが開放状態かつ開閉弁部50Aが閉鎖状態である場合、被計測流体は、被計測流体は、接続流路部40B内を流入側流路41Bから圧力損失部30Bを経て流出側流路42Bに流通するとともに、接続流路部40C内を流入側流路41Cから圧力損失部30Cを経て流出側流路42Cに流通する。従って、開閉弁部50B,50Cの開放時には、圧力損失部30B,30Cによって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0063】
全ての開閉弁部50A,50B,50Cが開放状態である場合、被計測流体は、被計測流体は、各接続流路部40A,40B,40Cにおいてそれぞれ各圧力損失部30A,30B,30Cをへて流通する。従って、全ての開閉弁部50A,50B,50Cの開放時には、圧力損失部30A,30B,30Cによって発生される差圧に基づいて流量の測定が行われる。
【0064】
そこで、差圧式流量測定装置10Cの作用について、仮に、圧力損失部30Aにより測定可能な流量を50〜100mL/min、圧力損失部30Bにより測定可能な流量を100〜300mL/min、圧力損失部30Cにより測定可能な流量を300〜1000mL/min、圧力損失部30A,30Bにより測定可能な流量を150〜400mL/min、圧力損失部30A,30Cにより測定可能な流量を350〜1100mL/min、圧力損失部30B,30Cにより測定可能な流量を400〜1300mL/min、圧力損失部30A,30B,30Cにより測定可能な流量を450〜1400mL/minとして説明する。なお、以下の説明では、流通させる被計測流体の流量に対応する各開閉弁部50A,50B,50Cの開閉状態の一例を示す。
【0065】
100mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいて、例えば、開閉弁部50Aが開放状態かつ開閉弁部50B,50Cが閉鎖状態に作動される。その際、圧力損失部30Aに基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0066】
300mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいて、例えば、開閉弁部50Bが開放状態かつ開閉弁部50A,50Cが閉鎖状態に作動される。その際、圧力損失部30Bに基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0067】
1000mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいて、例えば、開閉弁部50Cが開放状態かつ開閉弁部50A,50Bが閉鎖状態に作動される。その際、圧力損失部30Cに基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0068】
400mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいて、例えば、開閉弁部50A,50Bが開放状態かつ開閉弁部50Cが閉鎖状態に作動される。その際、圧力損失部30A,30Bに基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0069】
1100mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいて、例えば、開閉弁部50A,50Cが開放状態かつ開閉弁部50Bが閉鎖状態に作動される。その際、圧力損失部30A,30Cに基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0070】
1300mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいて、例えば、開閉弁部50B,50Cが開放状態かつ開閉弁部50Aが閉鎖状態に作動される。その際、圧力損失部30B,30Cに基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0071】
1400mL/minの被計測流体を流通させる場合、演算部80の操作に基づいて、例えば、全ての開閉弁部50A,50B,50Cが開放状態に作動される。その際、圧力損失部30A,30B,30Cに基づく差圧の値と流量値の折れ線近似が選択され、対応する流量測定範囲が設定される。
【0072】
よって、本発明の差圧式流量測定装置10Cでは、異なる流量の被計測流体を切替選択して流通させる場合であっても、単一の装置でありながら目的とする各流量に対応した測定範囲を容易に設定することができる。
【0073】
以上図示し説明したように、本発明の差圧式流量測定装置10A,10B,10Cでは、いずれも一つの装置でありながら被計測流体の清浄度に影響を与えることなく、簡便に複数の測定範囲の異なる流体流量を測定することができる。そのため、例えば、半導体製造分野において、必要とされる個々の処理毎に異なる測定範囲の流量測定装置を使い分ける必要がなくなり、設備負担を軽減できる。
【0074】
また、医療機器において、人工透析機等に当該差圧式流量測定装置を内蔵すれば、透析を受ける患者が乳幼児、子供、大人等の体格差によって透析機内を透過させる血液量が異なる場合であっても、各患者毎に透析機を使い分ける必要がなくなり、作業効率や設備負担等を大幅に改善することができる。
【0075】
さらに、演算部により開閉弁部の開閉動作を制御することにより、圧力損失部の切り替え操作を自動的に行うことができ、測定する流量に対応した流量測定範囲の設定を簡便かつ効率的に行うことができる。
【0076】
なお、本発明の差圧式流量測定装置は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、圧力損失部として着脱可能なオリフィス部を用いたが、圧力損失部としては、流路面積を絞って差圧を生じさせることが可能なものであればどのような構成であってもよく、例えば、流路を公知のベンチュリ管構造とする等、適宜の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施例に係る差圧式流量測定装置の縦断面図である。
【図2】ポペット弁体を有する開閉弁部の縦断面図である。
【図3】第2実施例に係る差圧式流量測定装置の縦断面図である。
【図4】ニードル弁体を有する開閉弁部の縦断面図である。
【図5】多段形状に形成されたニードル弁体の要部断面図である。
【図6】第3実施例に係る差圧式流量測定装置の横断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10A,10B,10C 差圧式流量測定装置
20 第1圧力検知部
25 第2圧力検知部
30 圧力損失部
40 接続流路部
50 開閉弁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、
前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を単一の流路で接続する接続流路部と、
前記接続流路部に配置され貫通孔が形成されたポペット弁体を有する開閉弁部と、
前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部と
を備えたことを特徴とする差圧式流量測定装置。
【請求項2】
被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、
前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を単一の流路で接続する接続流路部と、
前記接続流路部に配置されニードル弁体を有する開閉弁部と、
前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部と
を備えたことを特徴とする差圧式流量測定装置。
【請求項3】
前記ニードル弁体が多段形状に形成されている請求項2に記載の差圧式流量測定装置。
【請求項4】
被計測流体の流体圧力を検知する第1圧力検知部と第2圧力検知部とが圧力損失部を介して配置された差圧式流量測定装置において、
前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間を独立した複数の流路で接続すると共に前記各流路ごとに少なくとも一の前記圧力損失部を有してなる接続流路部と、
前記複数の接続流路部のうち少なくとも一以上の接続流路部に配置された開閉弁部と、
前記開閉弁部の開閉動作を制御する演算部と
を備えたことを特徴とする差圧式流量測定装置。
【請求項5】
前記開閉弁部がポペット弁体を備えている請求項4に記載の差圧式流量測定装置。
【請求項6】
前記ポペット弁体に貫通孔が形成されている請求項5に記載の差圧式流量測定装置。
【請求項7】
前記開閉弁部がニードル弁体を備えている請求項4に記載の差圧式流量測定装置。
【請求項8】
前記ニードル弁体が多段形状に形成されている請求項7に記載の差圧式流量測定装置。
【請求項9】
前記第1圧力検知部と、前記第2圧力検知部と、前記接続流路部と、前記開閉弁部のいずれもが単一の本体ブロック内に配置されている請求項1ないし8のいずれか1項に記載の差圧式流量測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate