説明

巻上げ機のロープ、エレベータおよび用途

巻上げ機械のロープ(10)は、ロープの横断方向における厚さより広い幅を有し、複合材料で作られた荷重支持部(11)を有し、上記複合材料は炭素繊維もしくはガラス繊維からなる非金属性繊維をポリママトリックス内に有している。エレベータは、駆動綱車、エレベータかご、およびエレベータかごを駆動綱車によって動かすロープ系を有し、上記ロープ系は少なくとも1本のロープを有し、その幅(t2)はロープの横断方向における厚さ(t1)より広く、ロープは複合材料で作られた荷重支持部(11)を有し、上記複合材料は強化繊維をポリマ マトリックス内に含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の巻上げ機ロープ、請求項24の前段に記載のエレベータ、および 請求項35の前段に記載の用途に関するものである。
【発明の背景】
【0002】
エレベータ用ロープは総じて金属ワイヤもしくは金属ストランドを編組みして作られ、実質的に丸い横断面形状を有している。メタリックロープに関する問題は、金属の材料特性のため、その張力強度および張力剛性に比して重量および厚さが大きいことである。また、従来技術のベルト状エレベータロープもあるが、これはその幅が厚さよりも広い。公知のものとして、いくつかの方式があり、例えば、ベルト状エレベータ巻上げロープの荷重支持部が金属線からなり、金属線を保護しベルトと駆動綱車との間の摩擦を増す軟質材料で被覆されたものがある。金属線であるため、このような方式は重量が大きいという問題がある。他方、欧州特許明細書第1640307 A2号に開示されている方式は、荷重支持部としてアラミド編組線の使用を提案している。アラミド材に関する問題は、張力剛性および張力強度が可もなく不可もないことである。さらに、アラミドは高温における性質に問題があり、安全上の問題を生ずる。編組線構造に基づいた方式に関する更なる問題は、編組みすることによってロープの剛性および強度が低下することである。加えて、編組線のそれぞれの繊維はロープが曲がると互いにずれ、これによって繊維の損耗が大きくなる。国際出願明細書PCT/FI97/00823により提案されている方式においても、張力強度および熱的安定性に問題があり、用いられている荷重支持部はポリウレタンで包囲したアラミド繊維である。
【発明の目的】
【0003】
本発明は、とりわけ、上述の従来技術方式における欠点を解消することを目的とする。本発明は、巻上げ機、とくに乗用エレベータのロープ掛設を改善することを特定の目的とする。
【0004】
本発明は、とりわけ、次の利点の1つ以上を実現することを 企図する。
−軽量で、その重量に比して張力強度および張力 剛性が大きいロープを達成する。
−高温に対する熱的安定性が改良されたロープを達成する。
−高い作動温度と相まって高熱伝導率を有するロープを達成する。
−簡易なベルト状構造を有し、製造が容易なロープを達成する。
−1つの直状荷重支持部もしくは複数の平行な直状 荷重支持部を有するロープを達成し、これによって曲げに有利な性状を得る。
−低重量のロープを有するエレベータを達成する。
−吊り索および釣合い重りの荷重容量を減少させることができる。
−走行および加速する質量および軸重が低減されたエレベータおよびエレベータロープを達成する。
−巻上げロープの重量対ロープ張力が低いエレベータを達成する。
−ロープの横断方向の振動振幅が小さく、その振動周波数が高いエレベータおよびロープを達成する。
−いわゆる反転曲げロープ掛設によって、稼動寿命を短縮させる影響を低減するエレベータを達成する。
−ロープの断絶も周期的特性もないエレベータおよびロープを達成し、これによってエレベータロープは騒音がなく、振動に関して有利である。
−ロープが直状構造であり、曲げてもその構造が 実質的に変わらないので、優れたクリープ抵抗を有するロープを達成する。
−内部摩損の少ないロープを達成する。
−高温に対して優れた耐性と優れた熱伝導率を有するロープを達成する。
−高い剪断耐性のロープを達成する。
−安全なロープ掛設のエレベータを達成する。
−以前のエレベータよりエネルギー消費量の少ない高層エレベータを達成する。
【0005】
エレベータシステムにおいて、本発明のロープは、エレベータかご、釣合い重り、またはこれら両方を支持し、および/または移動させる安全手段として使用することができる。本発明のロープは、釣合い重りを用いたエレベータおよび釣合い重りを用いないエレベータの両方における使用に適用可能である。また、他の巻上げ機と一緒に、例えばクレーン巻上げロープとして使用することも可能である。ロープが低重量であることによって、とくに 加速状況において有利である。なぜなら、ロープ速度の変更に必要なエネルギーはその質量に左右されるからである。低重量であることはさらに、補償用ロープの必要性が減少、もしくは全く消滅するので、補償用ロープを別に必要とするロープ系においても利点がある。低重量であることはまた、ロープの取り扱いも容易になる。
【発明の簡単な説明】
【0006】
本発明による巻上げ機の巻上げロープは、請求項1の特徴段に記載した事項を特徴とする。本発明によるエレベータは、請求項24の特徴段に記載した事項を特徴とする。本発明による用途は、請求項35の特徴段に記載した事項を特徴とする。本発明の他の実施例は、その他の請求項に記載した事項を特徴とする。発明の実施例は本願の詳細な説明および図面にも示す。本願に記載の発明の内容は、以下に記載する特許請求の範囲における以外の方法で定義することもできる。とくに、明示的もしくは暗示的な副課題に照らして、または達成される利点もしくは利点の組に関して本発明を考察すると、本発明の内容は、いくつかの別個の発明で構成されることもある。この場合、以下の特許請求の範囲に含まれる各属性のいくつかは、別個の発明概念の見地から不要なことがある。本発明のさまざまな実施例の構成要件は、発明の基本 概念の範囲内において他の実施例に関連して適用することができる。
【0007】
本発明によれば、巻上げ機用巻上げロープの幅はロープの横断方向におけるその厚さより大きい。ロープは複合材料で作られた荷重支持部を有し、この複合材料はポリママトリックス内に非金属性繊維を含み、上記強化繊維は炭素繊維もしくはガラス繊維からなる。材料の構成および選択によって、曲げ方向において薄い構造と、優れた張力剛性および張力強度と、改良された熱伝導率とを有する低重量の巻上げロープを達成することが可能である。さらに、このロープ構造は、曲げても実質的に変わらず、これによって長期稼動寿命が促進される。
【0008】
本発明の実施例では、上述の強化繊維は、ロープの長手 方向、すなわちロープの長手方向に平行な方向に敷設されている。したがって、力が繊維に対して張力の方向に配分され、さらに直状繊維は、曲げに際して、例えば螺旋形もしくは交差する形で配設された繊維よりも有利な性状を呈する。荷重支持部は、ポリママトリックスによって互いに結合された直状繊維からなって一体の要素を 形成し、曲げてもその形状および構造を良好に維持する。
【0009】
本発明の実施例では、個々の繊維が上述のマトリックス内に均一に配分されている。すなわち、強化繊維は前記荷重支持部内に実質的に均一に配分されている。
【0010】
本発明の実施例では、上記強化繊維は、上記ポリママトリックスによって一体の荷重支持部として互いに結合されている。
【0011】
本発明の実施例では、上記強化繊維は連続した繊維であり、ロープの長手方向に、好ましくはロープの全長にわたって延在して敷設されている。
【0012】
本発明の実施例では、上記荷重支持部は直状強化繊維からなり、これは、ロープの長手方向に平行で、ポリママトリックスによって互いに結合され、一体の要素を形成している。
【0013】
本発明の実施例では、上記荷重支持部の実質的にすべての強化繊維はロープの長手方向に延在している。
【0014】
本発明の実施例では、上記荷重支持部は一体の長尺状体である。すなわち、荷重支持部を形成する構体同士が互いに接触している。各繊維は、マトリックス内で、好ましくは化学結合により、好ましくは水素結合によって、および/または共有結合によって結合される。
【0015】
本発明の実施例では、ロープの構造は、実質的に均一な構体としてロープの全長にわたって連続している。
【0016】
本発明の実施例では、荷重支持部の構造は、実質的に均一な構体としてロープの全長にわたって連続している。
【0017】
本発明の実施例では、上記荷重支持部の実質的にすべての強化繊維はロープの長手方向に延在している。したがって、ロープの長手方向に延在する強化繊維は、荷重の大部分を支持するよう構成することができる。
【0018】
本発明の実施例では、ロープのポリママトリックスは非エラストマ系材料からなる。したがって、マトリックスによって強化繊維の実質的な支持を行なう構造が達成される。数々の利点には、稼動寿命が長く、小さい曲げ半径を採用できることが含まれる。
【0019】
本発明の実施例では、ポリママトリックスは、エポキシ、ポリ エステル、フェノール樹脂またはビニルエステルを含む。これらの硬質材料は、上述の強化繊維と相まって、とりわけ、曲げ時にロープの有利な性状を呈する有利な材料の 組合せとなる。
【0020】
本発明の実施例では、荷重支持部は、外部から曲げない 場合は直線に戻る剛性を呈し凝集した単一の長尺棒状体である。このためもあって、ロープはこのような性状を呈する。
【0021】
本発明の実施例では、ポリママトリックスの弾性係数(E)は、2 GPaより高く、好ましくは2.5 GPaより高く、さらに好ましくは2.5〜10 GPaの範囲内、最も好ましくは2.5〜3.5 GPaの範囲内である。
【0022】
本発明の実施例では、荷重支持部の横断面の方形面積の50%を超える分は上記強化繊維からなり、好ましくは50%〜80%が上記強化繊維からなり、さらに好ましくは55%〜70%が上記強化繊維からなり、最も好ましくは上記面積の約60%が強化繊維からなり約40%がマトリックス材からなる。これによって有利な強度特性を達成することができるとともに、それでもマトリックス材の量は、これで互いに結合した繊維を適切に包囲するのに十分である。
【0023】
本発明の実施例では、強化繊維は、マトリックス材とともに、一体の荷重支持部を形成するが、その内部では、ロープが曲がる際、繊維同士の間もしくは繊維とマトリックスと間に擦過する相対運動は実質的に生じない。したがって、数々の利点には、ロープの長い稼動寿命と曲げ時の有利な性状が含まれる。
【0024】
本発明の実施例では、荷重支持部はロープの横断面の大 部分を覆っている。したがって、ロープ構体の大部分が荷重の支持に寄与している。複合材料はそのような形に容易に成型することもできる。
【0025】
本発明の実施例では、荷重支持部の幅はロープの横断方向におけるその厚さより大きい。したがって、ロープは小半径の曲げに耐えることができる。
【0026】
本発明の実施例では、ロープには上述の荷重支持部が多数並んで含まれている。このようにして、複合材料部の破損に対する負担を減じることができる。なぜなら、ロープの幅/厚さの比は、個々の複合材料部の幅/厚さの比を過剰に増すことなしに、大きくすることができるからである。
【0027】
本発明の実施例では、強化繊維は炭素繊維からなる。このようにして、軽量構造と優れた張力剛性および張力強度と、優れた熱的特性が達成される。
【0028】
本発明の実施例では、ロープはさらに、複合材料部の外側にワイヤ、ラスもしくは金属製格子などの少なくとも1つの金属製要素を含む。これによって、剪断によるベルト損傷の傾向が小さくなる。
【0029】
本発明の実施例では、上述のポリママトリックスはエポキシからなる。
【0030】
本発明の実施例では、荷重支持部はポリマ層で包囲されている。これによって、ベルト表面は、とりわけ、機械的摩損および湿度から保護することができる。これによってまた、ロープの摩擦係数を十分な値に調節することが 可能である。ポリマ層は、好ましくはエラストマ、最も好ましくはポリウレタンなどの高摩擦性エラストマからなる。
【0031】
本発明の実施例では、荷重支持部は上述のポリママトリックスと、ポリママトリックスによって互いに結合された強化繊維と、各繊維の周囲に設けることができる被覆体と、場合に応じてポリママトリックス内に含める補助材とからなる。
【0032】
本発明によれば、エレベータは、駆動綱車、エレベータかご、およびエレベータかごを駆動綱車によって動かすロープ系を含み、上記ロープ系は少なくとも1本のロープを含み、その幅はロープの横断方向の厚さより広い。ロープは、ポリママトリックス内に強化繊維を含む複合材料で作られた荷重支持部を含んでいる。上記強化繊維は炭素繊維もしくはガラス繊維からなる。これによって、エレベータロープが低重量ロープで、熱耐性の点で有利であるという利点が生ずる。エネルギー効率のよいエレベータもまた、このことによって達成される。したがって、補償用ロープを何ら使用しなくても、エレベータを実現することができる。所望に応じて、小径の駆動綱車を用いたエレベータを実現することができる。このようなエレベータも安全で、信頼性が高く、簡易でもあり、稼動寿命が長い。
【0033】
本発明の実施例では、上記エレベータロープは、上述のように巻上げ機のロープである。
【0034】
本発明の実施例では、エレベータは、エレベータかごと 釣合い重りを上記ロープによって動かすよう構成されている。エレベータロープは、好ましくは釣合い重りおよびエレベータかごへ1:1の巻上げ比で連結されるが、他の方法として、2:1の巻上げ比で連結することも可能である。
【0035】
本発明の実施例では、エレベータは、プーリに対して配置された第1のベルト状ロープもしくはロープ部分、および第1のロープもしくはロープ部分に対して配置された第2のベルト状ロープもしくはロープ部分を含み、上記それぞれのロープもしくはロープ部分は、曲げ半径の方向から見て駆動綱車の周縁に互いに重なって取り付けられる。これによって、ロープはプーリに密に設置され、小さなプーリを使用することができる。
【0036】
本発明の実施例では、エレベータは多数のロープを含み、これらは、駆動綱車の周縁に対して互いに並んで、かつ重なって取り付けられる。これによって、ロープはプーリに密に設置される。
【0037】
本発明の実施例では、第1のロープもしくはロープ部分は自身に対して配されている第2のロープもしくはロープ部分へ、エレベータかごおよび/または釣合い重りに取り付けられた転向プーリを周回するチェーン、ロープ、ベルトまたは同等のものによって接続されている。これによって、異なる速度で動く巻上げロープの間の速度差を補償することが可能である。
【0038】
本発明の実施例では、ベルト状ロープは第1の転向プーリを周回し、この上でロープは第1の曲げ方向に曲がり、その後、ロープは第2の転向プーリを周回し、この上でロープは第2の曲げ方向に曲がるが、この第2の曲げ方向は第1の曲げ方向に対して実 質的に逆である。こうして、ロープのスパンは自由に調節可能になる。なぜなら、曲げ方向の変更は、曲げ時に実質的な変化を受けない構造のベルトとっては、問題が少ないからである。炭素繊維の特性も、この効果に寄与している。
【0039】
本発明の実施例では、エレベータは、補償ロープなしで 設置される。これは、ロープ系に使用されるロープが上述のような設計である本発明によるエレベータでは、とくに有利である。数々の利点には、優れたエネルギー効率と、簡易なエレベータ構造が含まれる。この場合、釣合い重りに跳ね返り制限手段を設けることが好ましい。
【0040】
本発明の実施例では、エレベータは釣合い重りを有する エレベータであり、その巻き上げ高さは、30メートルを超え、好ましくは30〜80メートル、最も好ましくは40〜80メートルであり、上記エレベータは、補償ロープなしで設置される。このように設置されるエレベータは、初期のエレベータより簡易であり、しかもエネルギー効率がよい。
【0041】
本発明の実施例では、エレベータの巻き上げ高さは、75メートルを超え、好ましくは100メートルを超え、さらに好ましくは150メートルを超え、最も好ましくは250メートルを超える。本発明の利点は、とくに高い巻上げ高さを有するエレベータにおいて顕著である。なぜなら、高い巻上げ高さを有するエレベータでは通常、巻上げロープの質量が移動すべき全質量を構成するからである。したがって、高い巻上げ高さを有するエレベータは、本発明によるロープを設けると、初期のエレベータよりかなりエネルギー効率が高い。こうして実現されるエレベータはまた、技術的にも簡易で、より材料効率がよく、製造が安価である。なぜなら、例えば制動すべき質量が小さいからである。この効果は、エレベータの寸法に関する構成要素の大部分に 反映される。本発明は、高層エレベータもしくは超高層エレベータとしての使用に良好に適用可能である。
【0042】
本発明によれば、上述の定義に1つによる巻上げ機ロープは、エレベータ、とくに乗用エレベータの巻上げロープとして使用される。利点の1つは、エレベータのエネルギー効率が改善されていることである。
【0043】
本発明の実施例では、上述の定義の1つによる巻上げ機ロープは、上述の定義の1つによるエレベータの巻上げロープとして使用される。ロープは、高層エレベータにおける使用に、および/または補償ロープの必要性を減じるのに良好に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
次に、実施例および添付図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図1a】ないし
【図1m】は本発明のロープの概略図あって、それぞれが異なる 実施例を示す。
【図2】は本発明のエレベータの実施例を示す 概略図である。
【図3】は図2におけるエレベータの詳細を示す図である。
【図4】は本発明のエレベータの実施例を示す 概略図である。
【図5】は、状態監視装置を有する本発明のエレベータの実施例を示す概略図である。
【図6】は、状態監視装置を有する本発明のエレベータの実施例を示す概略図である。
【図7】は本発明のエレベータの実施例を示す 概略図である。
【図8】は本発明のロープの横断面を詳細に示す拡大概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0045】
図1a〜図1mは、本発明のさまざまな実地例による、好ましくは乗用エレベータの巻上げロープの長手方向から見たロープの好ましい横断面を表す概略図である。図1a〜図1lにより示されたロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120)は、それぞれがベルト状構造を有し、換言すれば、ロープは、第1の方向、すなわちロープの長手方向に対して垂直な方向から測定すると、厚さt1を有し、第2の方向、すなわちロープの長手方向および上述の第1の方向に対して垂直の方向から測定すると、幅t2を有し、この幅t2は厚さt1よりも実質的に広い。したがって、ロープの幅はその厚さより実質的に広い。さらに、ロープは、少なくとも1つの、好ましくは2つの幅広で実質的に平坦な表面を有することが好ましいが、これは必ずしも必須ではない。幅広の表面は、摩擦もしくは確実な接触を利用する力伝達面として効率的に使用することができる。なぜなら、こうすれば大きな接触面が得られるからである。幅広の表面は完全に平坦である必要はなく、溝もしくは突起部を設けることができ、または湾曲形状を有していてもよい。ロープは、その長さ全体にわたって実質的に均一な構造であることが好ましいが、必ずそうする必要はない。なぜなら、所望に応じて、横断面は、例えば歯型構造として循環的に変化するように配設してもよいからである。ロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120)は荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121)を有し、これは炭素繊維もしくはガラス繊維、好ましくは炭素繊維の方であるが、これをポリママトリックス内に含む非金属系繊維複合材料でできている。荷重支持部(または、場合によっては複数の荷重支持部)とその繊維はロープの長手方向に敷設され、このためロープは曲げてもその構造を維持する。したがって、個々の繊維は実質的にロープの長手方向に向いている。したがって、各繊維は、張力がロープに働くと、その力の方向に向く。上述の強化繊維は上記ポリママトリックスによって互いに結合され、一体の荷重支持部を形成している。したがって、上記荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、11、121)は単一の相互密着した長尺棒状体になっている。上記強化繊維は、好ましくはロープの長手方向に向き、好ましくはロープの長さ全体にわたって延在する長尺の連続繊維である。上記荷重支持部の強化繊維の、好ましくは大部分、最も好ましくは実質的にすべてをロープの長手方向に向けられて配置する。 換言すれば、強化繊維は実質的に互いに絡み合わないことが好ましい。こうして、ロープの長さ全体にわたって、できる限り不変に連続する横断面構造を有する荷重 支持部が達成される。上記強化繊維は、荷重支持部内にできる限り均一に配分され、これによって荷重支持部は確実に、ロープの横断方向にできる限り均一になる。図1a〜図1mに示すロープの曲げ方向は、同図における上もしくは下である。
【0046】
図1aに示すロープ10は、荷重支持複合材料部11を有し、これは横断面方向に矩形であり、ポリマ層1によって包囲されている。他の方法として、ロープをポリマ層1なしに形成することができる。
【0047】
図1bに示すロープ20は、矩形横断面の荷重支持複合材料部21が2つ、横に並んで配され、ポリマ層1で包囲されている。ポリマ層1はロープを案内する突起部22を有し、これはロープ10の幅広側の両縁端部の中間で、両複合材料部21の間の領域の中央に配置されている。ロープは、このような方法で複合材料部を3つを以上、図1cに示すように並べて有してもよい。
【0048】
図1dに示すロープ40は、矩形横断面の荷重支持複合材料部41が多数、ベルトの幅方向に並んで配され、ポリマ層1で囲まれている。同図に示す荷重支持部はその幅が厚さよりやや広い。他の選択肢として、複合材料部は実質的に方形の横断面形状を有するものとして実現することができる。
【0049】
図1eに示すロープ50は、その両側にワイヤ52を配した矩形横断面形状の荷重支持複合材料部51を有し、複合材料部51およびワイヤ52はポリマ層1によって包囲されている。ワイヤ52はロープおよびストランドでよく、好ましくは金属などの耐剪断性材料で作る。ワイヤは、好ましくはロープ表面からの距離が複合材料部51と同じであり、複合材料部から離間させることが好ましいが、これは必須ではない。しかし、この保護用金属部はまた、さまざまな形、例えば複合材料部の長さに沿って続く金属製ラスもしくは金属製格子であってもよい。
【0050】
図1fに示すロープ60は、ポリマ層1で囲まれた矩形横断面形状の荷重支持複合材料部61を有する。ロープの表面には、好ましくはポリマ層1の連続部分を形成する複数の楔形突起部62からなる楔形表面が形成されている。
【0051】
図1gに示すロープ70は、ポリマ層1で囲まれた矩形の横断面形状の荷重支持複合材料部71を有する。ロープの縁端部は膨れた部分72を有し、この部分は、好ましくはポリマ層1の 一部を形成している。膨れた部分は、複合材料部の縁端部を、例えば摩損から保護する利点を有する。
【0052】
図1hに示すロープ80は、円形横断面の荷重支持複合材料部81を多数有し、ポリマ層1で囲まれている。
【0053】
図1iは、方形横断面の荷重支持部91が2つ並んで配置されて、ポリマ層1によって囲まれている。ポリマ層1は、支持部91の間の領域に溝92を有してロープを曲げやすくし、ロープが例えば曲状面に容易に追随するようにする。他の 選択肢として、溝はロープの案内に使用することができる。ロープは、この方法で3つ以上の複合材料部を、図1jに示すように並べて配してもよい。
【0054】
図1kに示すロープ110は、実質的に方形な横断面を有する荷重支持複合材料部111を有する。荷重支持部111の幅はロープの横断方向におけるその厚さより広い。このロープ110は、先の実施例で説明したようなポリマ層を全く使用せずに形成されて、荷重支持部111がロープの横断面全体を覆っている。
【0055】
図1lに示すロープ120は、角の丸い実質的に矩形の横断面形状の荷重支持複合材料部121を有する。荷重支持部121は、幅がロープの横断方向におけるその厚さより広く、薄いポリマ層1で被覆されている。荷重支持部121はロープ120の横断面の大部分を覆っている。ポリマ層1は、ロープの厚さ方向t1における荷重支持部の厚さと比べると、非常に薄い。
【0056】
図1mに示すロープ130は、角の丸い実質的に矩形の横断面形状の荷重支持複合材料部131が互いに隣接している。荷重支持部131は、幅がロープの横断方向におけるその厚さより広く、薄いポリマ層1によって覆われている。荷重支持部131はロープ130の横断面の大部分を覆っている。ポリマ層1は、ロープの厚さ方向t1における荷重支持部の厚さと比べると、非常に薄い。ポリマ層1の厚さは、好ましくは1.5mm未満であり、最も好ましくは約1mmである。
【0057】
上述のロープのぞれぞれは、少なくとも1つの一体の荷重支持複合材料部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121)を含み、これはポリママトリックス内に埋設された合成強化繊維を含むものである。強化繊維は最も好ましくは連続した繊維である。これらは実質的にロープの長手方向に敷設されて、引張り応力が自動的に繊維に対してその長手方向に加わる。強化繊維を包囲するマトリックスは、各繊維の相対的位置が実質的に変わらない。マトリックスは、わずかに弾性があるので、繊維に加わる力の配分を均等化する手段として働き、繊維間接触およびロープの内部摩損を低減し、これによってロープの稼動寿命が増大する。結果として生じる長手方向の繊維間の動きは、マトリックスに影響を及ぼす弾性剪断からなるが、曲げ時に発生する主たる影響は、複合材料部のすべての材料同士間の相対的動きにあるのではなく、それらの伸長にある。強化繊維は、最も好ましくは炭素繊維からなり、優れた張力剛性、低重量構造、および優れた熱的特性などの特徴を達成することができる。他の選択肢として、いくつかの用途に適した強化材はガラス繊維強化材であり、これは、とりわけ優れた電気絶縁性を提供する。この場合、ロープの張力剛性は幾分低くなるので、小径の駆動綱車を使用することができる。複合材マトリックスは、個々の繊維ができる限り均一に配分され、最も好ましくはエポキシからなり、これは、強化材に対する接着性が高く、強度に優れ、ガラス繊維および炭素繊維との組み合わせるのに有利な性状を呈する。他の選択肢として、例えばポリエステルもしくはビニルエステルを使用することができる。最も好ましくは、複合材料部(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120)は炭素繊維約60%とエポキシ約40%を含む。上述のように、ロープはポリマ層1を含んでもよい。ポリマ層1は、好ましくはエラストマ、最も好ましくは例えばポリウレタンなどの高摩擦性エラストマで構成して、駆動綱車とロープの間でロープの駆動に十分な摩擦を得る。
【0058】
下表は炭素繊維とガラス繊維の有利な特性を示す。両者は優れた強度および剛性の特性を有しているが、他方、優れた耐熱性を有している。これはエレベータにおいては重要である。なぜなら、耐熱性が乏しいと、巻上げロープに損傷を与え、あるいはロープに引火することにもなりかねず、安全上の問題があるからである。優れた熱伝導性は、とりわけ、摩擦熱の伝導を促進し、これによって駆動 綱車の過熱もしくはロープ構成要素の蓄熱が減少する。

ガラス繊維 炭素繊維 アラミド繊維
密度 Kg/m3 2540 1820 1450
強度 N/mm2 3600 4500 3620
剛性 N/mm2 75000 200000〜600000 75000〜120000
軟化温度 度/C 850 >2000 450〜500、炭化
熱伝導性 W/mK 0.8 105 0.05

【0059】
図2は、ベルト状ロープを利用する本発明の実施例によるエレベータを示す。ロープAおよびBは、図1a〜図1lのいずれか1つで実現することが好ましいが、必ずそうする必要はない。駆動綱車2を周回する多数のロープAおよびBは互いに重ねて設置されている。ロープAおよびBは、ベルト状設計であり、ロープAは駆動綱車2に対して設置され、ロープBはロープAに対して設置されている。それぞれのベルト状ロープAおよびBの駆動綱車2の中心軸の方向における厚さは、駆動綱車2の半径方向における厚さより大きい。異なる半径を走行するロープAおよびBは異なる速度を有する。エレベータかごもしくは釣合い重り3に取り付けられた転向プーリ4を周回するロープAおよびBは、チェーン5によって互いに連結され、これによって異なる速度で走行するロープAおよびBの間の速度差を補償する。チェーンは、回転自在の転向プーリ4を周回して、必要に応じてロープは、駆動綱車に対して配されたロープAおよびBの間の速度差に対応する速度で転向プーリを周回することができる。この補償は、チェーンを使用する以外のやり方でも実現することができる。チェーンではなく、例えばベルトもしくはロープを使用することも可能である。他の選択肢として、チェーン5を省略して、同図に示すロープAおよびBを一本の連続するロープとして実現することができ、これを転向プーリ4に周回させて戻し、ロープの一部分を駆動綱車に掛かっている同じロープの他の部分に載せ掛けることができる。重ねて設置されたロープを、図3に示すように駆動綱車上に並べて配することもでき、これによって効率的なスペースの利用が可能になる。加えて、3本以上のロープを重ねて駆動綱車に周回させることもできる。
【0060】
図3は、図2によるエレベータの断面A-Aの方向から見た詳細を示す。駆動綱車には、互いに隣接して配置された多数の互いに重なったロープAおよびBが支持されて、上記互いに重なったロープの各組は、多数のベルト状ロープAおよびBを含む。同図において、互いに重なったロープは、隣接する互いに重なったロープとは駆動綱車の表面に設けられた突起部uによって分離されて、上記突起部uは好ましくは、駆動綱車の表面からその円周の全長にわたって突出し、突起部uがロープを案内する。こうして、駆動綱車2の互いに平行な突起部uは、互いの間にロープAおよびBの溝形ガイド面を形成している。突起部uは、駆動綱車2の表面から始まる順序で見て、互いに重なったロープうち最後のものBの材料厚の少なくとも中線の位置に達する高さを有することが好ましい。所望に応じて、当然、図3における駆動綱車は、 突起部なしに、または異なる形状の突起部によって実現することもできる。もちろん、所望に応じて、上述のエレベータは、駆動綱車において互いに隣接するロープがなく、互いに重なったロープAおよびBだけがあるように実現することもできる。互いに重なった方式でロープを配置することによって、コンパクトな構造が可能になり、軸方向から測定して寸法の短い駆動綱車を使用することができる。
【0061】
図4は、本発明の実施例によるエレベータのロープ系を示し、ロープ8は反転方式の配置、すなわちロープがプーリ2からプーリ7へ、さらにプーリ9へ走行するに従って曲げ方向が変化する配置を用いて配設されている。この場合、ロープスパンdは自由に調節可能である。なぜなら、曲げ方向が変わることは、本発明によるロープを用いれば不都合ではなく、それは、ロープが非編組型であり、曲げてもその構造を維持し、曲げ方向に薄いからである。同時に、ロープが駆動綱車と接触を保つ部分が180度を超えて可能であり、これは摩擦に関して有利である。同図は、転向プーリの領域におけるロープ掛設のみを図示している。プーリ2および9からロープ8は、公知の技術によってエレベータ昇降路におけるエレベータかご、および/もしくは釣合い重りへ、ならびに/または固定装置へ送ることができる。これはロープを、例えば、駆動綱車として機能するプーリ2からエレベータかごへ、さらにプーリ9から釣合い重りへ継続させて、または逆にして実現してもよい。構造上、ロープは図1a〜図1lに示すもののうちの1つであることが好ましい。
【0062】
図5は、状態監視機構を設けた本発明によるエレベータの一実施例を概略的に示し、これは、ロープ213の状態を監視する、とくに荷重支持部を取り巻くポリマ被覆材の状態を監視するものである。ロープは、好ましくは、上述した図1a〜図1lのうちの1つに示すタイプのものであり、導電部、好ましくは炭素繊維を含有する部分を有するものである。状態監視機構は、ロープ213の端部、すなわちロープ213の荷重支持部のその固定装置216付近の位置に接続された状態監視装置210を有し、荷重支持部は導電性である。監視 機構はさらに、導体212を含み、これは、ロープ213を案内する導電性、好ましくは金属性の転向プーリ211へ、さらに状態監視装置210へも接続されている。状態監視装置210には導体212および214が接続され、両導体間に電圧を発生するよう配設されている。電気絶縁ポリマ被覆が摩耗すると、その絶縁性能が低下する。ついには、ロープ内の導電性部分がプーリ211と接触し、それによって導体214および212の間に回路が閉成される。状態監視装置210はさらに、導体212および214、ロープ213ならびにプーリ211により形成される回路の電気特性を監視する手段を有している。これらの手段は、電気特性が変化するとロープの過剰摩耗に関する警報を発する、例えばセンサとプロセッサを含んでもよい。監視する電気特性は、例えば上記回路を流れる電流もしくは抵抗の変化、または磁界もしくは 電圧の変化でよい。
【0063】
図6は、ロープ219の状態、とくに荷重支持部の状態を監視する状態 監視機構を設けた本発明によるエレベータの実施例を概略的に示す。ロープ219は、上述のタイプのうちの1つであり、少なくとも1つの導電部217、218、220、221、好ましくは炭素繊維を含有する部分を有するものが好ましい。状態監視機構は、状態監視装置210を含み、これは、好ましくは荷重支持部へ接続されたロープの導電部を有している。監視装置210は、例えば電圧源もしくは電流源などの駆動信号をロープ219の荷重支持部へ送る手段と、送信された信号に対応する応答信号を荷重支持部の別の点から、もしくはそれに接続された箇所から検出する手段とを有している。状態監視装置は、応答信号に基づいて、好ましくはプロセッサによりこれを所定の限界値と比較して、駆動信号の入 力点と応答信号の測定点との間の領域における荷重支持部の状態を推定するように配設されている。状態監視装置は、応答信号が所望の範囲の値にない場合、警報を作動させるよう配設されている。ロープの荷重支持部の状態に依存する、抵抗もしくは容量などの電気特性に変化が生ずると、応答信号は変化する。例えば、亀裂による抵抗の増加で応答信号に変化が生じ、この変化から、荷重支持部が脆弱な状態にあることが推測される。好ましくは、これは、図6に示すように、状態監視装置210をロープ219の第1の端部に配して2つの荷重支持部217および218へ接続し、これらを導体222によりロープ219の第2の端部で接続することによって構成される。この構成によって、両支持部217、218の状態を同時に監視することができる。監視すべき対象が複数ある場合、互いに隣接する荷重支持部により生じる相互干渉は、隣接しない荷重支持部同士を導体222で相互接続することによって、好ましくは1つおきに支持部を互いに接続し、さらに状態監視装置210へ接続することによって、減少させることができる。
【0064】
図7は、エレベータロープ系が1本以上のロープ10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120を含む本発明によるエレベータの実施例を示す。ロープ10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、8の第1の端部はエレベータかご3へ固定され、第2の端部は釣合い重り6へ固定されている。ロープは建物に 支持された駆動綱車2によって駆動され、駆動綱車は、例えば駆動綱車に回転を与える電動機(図示せず)などの動力源へ接続されている。ロープは、図1a〜図1lのうちの1つに示すような構造のものであることが好ましい。エレベータは好ましくは乗用エレベータであり、これは建物内のエレベータ昇降路を走行するよう設置されている。図7に示すエレベータは、いくつかの改変をすればさまざまな巻上げ高さに利用することができる。
【0065】
図7に示すエレベータの有利な巻上げ高さの範囲は、100メートルを超え、好ましくは150メートルを超え、さらに好ましくは250メートルを超えるものである。この程度の巻上げ高さのエレベータでは、ロープの質量は、エネルギー効率とエレベータの構造に関して前々から非常に重要性を有している。したがって、本発明によるロープの使用は、高層エレベータのエレベータかご3の走行にとくに有利である。なぜなら、高い巻上げ高さ用に設計されたエレベータでは、ロープの質量がとくに大きな影響を与えるからである。したがって、とりわけ、エネルギー消費量の低い高層エレベータを達成することができる。図7のエレベータについて巻上げ高さの範囲が100メートルを超える場合、エレベータに補償用ロープを設けることが好ましいが、厳格に必要という訳ではない。
【0066】
上述のロープは、巻上げ高さが30メートルを超える釣合い重り式エレベータ、例えば居住用建物の乗用エレベータの用途にも良好に適用可能である。このような巻上げ高さの場合、従来から補償用ロープが必要であった。本発明によれば、補償用ロープの質量を減らし、または完全に除去することができる。この点について、ここで述べるロープは、30〜80メートルの巻上げ高さのエレベータの用途にさらに良好に適用可能である。なぜなら、このようなエレベータでは、補償用ロープの 必要性を完全に除去することさえできるからである。しかし、最も好ましい巻上げ高さは40メートルを超えることである。なぜなら、このような高さの場合、補償用ロープが最重要性をもって必要であるが、80メートル未満の高さ範囲では低重量ロープの使用によってエレベータは、所望に応じて、補償用ロープを全く使用しなくても実現できるからである。図7はロープを1本しか示していないが、多数のロープで釣合い重りとエレベータかごとを相互連結することが好ましい。
【0067】
本願において、「荷重支持部」とは、ロープにその 長手方向に加わる荷重、すなわちロープで支えられるエレベータかごおよび/または釣合い重りによってロープに加わる荷重の主たる部分を支えるロープの要素を言う。この荷重は荷重支持部においてロープの長手方向に張力を生じ、この張力はさらに、当該荷重支持部の内部でロープの長手方向に伝達される。したがって、荷重支持部は、例えば駆動綱車によってロープに加わる長手方向の力を釣合い重りおよび/またはエレベータかごへ伝達してこれらを動かすことができる。例えば、図7では、釣合い重り6およびエレベータかご3はロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120)によって、より正確に言えば、ロープにおける荷重支持部によって支持され、荷重支持部はエレベータかご3から釣合い重り6へ延在している。ロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120)は、釣合い重りおよびエレベータかごへ固定されている。釣合い重り/エレベータかごの重量により生じる張力は、固定点からロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120)の荷重支持部を介して上方へ、釣合い重り/エレベータかごから少なくとも駆動綱車2まで伝達される。
【0068】
上述のように、本発明の巻上げ機のロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、8、A、B)、とくに乗用エレベータのロープにおける荷重支持部の強化繊維は、連続した繊維であることが好ましい。したがって繊維は、好ましくは長い繊維であり、最も好ましくはロープの長さ全体にわたって延在するものである。したがってロープは、ポリママトリックスを内部に吸収し連続する繊維トウから強化繊維を巻き出して作ることができる。荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、112)の実質的にすべての強化繊維を同一の材料で作ることが好ましい。
【0069】
上述のように、荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、112)における強化繊維は、ポリママトリックス内に含まれている。これは、本発明において、個々の強化繊維をポリママトリックスによって、例えばこれらの繊維を製造中にポリママトリックス材に浸漬することによって、互いに結合することを意味している。したがって、ポリママトリックスによって互いに結合された個々の強化繊維は、相互の間にマトリックスの何らかのポリマを有している。本発明において、互いに結合されロープの長手方向に延在する多量の強化繊維は、ポリママトリックス内に分散している。これらの強化繊維は、好ましくはポリママトリックス内に実質的に均一に、すなわち均質に分散され、ロープの横断面の方向から見た場合、荷重支持部ができるかぎり均質である。換言すれば、このように荷重支持部の横断面における繊維密度が大きく変動することはない。マトリック スにより互いに結合された強化繊維は、1つの荷重支持部をなし、この内部では、ロープを曲げても、擦過する相対運動は生じない。本発明において、荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、112)における個々の強化繊維は、ポリママトリックスによって大部分が囲まれてはいるが、繊維間の接触が随所で発生する。なぜなら、多数の繊維を同時にポリママトリックスに含浸させる際、個々の繊維の相対的位置を制御することは困難であり、他方、これに伴う繊維間の接触を完全に除去することは本発明の機能性の点で絶対に必要なことではないからである。しかし、これらの付随的発生を減少させる必要がある場合には、個々の強化繊維をあらかじめ被覆してポリマ被覆材で囲ってから、個々の強化繊維を互いに結合することができる。
【0070】
本発明において、荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、112、131)の個々の強化繊維は、その周囲にポリママトリックス材を有している。ポリマトリックは強化繊維に対して直接配設されるが、各繊維間で強化繊維に薄い被覆を設けてもよく、例えば製造中の強化繊維の表面にプライマを施して、マトリックス材に対する化学的接着性を改善してもよい。個々の強化繊維は、荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、112、131)内に均一に配分されて、個々の強化繊維が互いの間にあるい程度のマトリックスポリマを挟持する。好ましくは、荷重支持部における個々の強化繊維の間のスペースの大部分は、マトリックスポリマで満たされる。最も好ましくは、荷重支持部における個々の強化繊維間のスペースの実質的に全部がマトリックスポリマで満たされる。繊維間領域には細孔が生じてもよいが、その数は最小化することが好ましい。
【0071】
荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、112、131)のマトリックスは、最も好ましくは、硬質材料特性を有するものである。硬質マトリックスは、とくにロープが曲がる際、強化繊維を支持するのに役立つ。曲がる際、曲げられたロープの外面に最も近い強化繊維は張力を受け、一方、内面に最も近い炭素繊維はその長手方向に圧縮を受ける。圧縮は強化繊維を座屈させやすい。ポリママトリックスの硬質材料を選択することによって、繊維の座屈を防止することができる。なぜなら、硬質材は繊維の支持に供することができ、これによって繊維が座屈するのを防止し、ロープ内で張力を均等化できるからである。したがって、とりわけロープの曲げ半径を小さくするには、硬質のポリマからなるポリママトリックス、好ましくはエラストマ(エラストマの例はゴム)または同様の弾性的性状材料もしくは柔軟材料以外のものを使用することが好ましい。最も好ましい材料は、エポキシ、ポリエステル、フェノール樹脂またはビニルエステルである。ポリママトリックスは、その弾性係数(E)が2 GPaを超え、最も好ましくは2.5 GPaを超える硬質のものが好ましい。この場合、弾性係数は、好ましくは2.5〜10 GPaの範囲内、最も好ましくは2.5〜3.5 GPaの範囲内である。
【0072】
図8は、荷重支持部の表面構造の部分的横断面(ロープの長手方向から見たもの)を円内に示すが、この横断面は、本願の他の各所で説明した荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、112、131)における強化繊維がポリママトリックス内に好ましく配設されている様子を示す。同図は、強化繊維FがポリママトリックスM内に実質的に均一に分散され、マトリックスが繊維を取り巻き、繊維に接着されている様子を示している。ポリママトリックスMは、各強化繊維Fの間のスペースを埋め、凝集した固形物を構成し、実質的にすべての強化繊維FをマトリックスM内で互いに結束している。これによって、各強化繊維Fの間の相互擦過と、マトリックスMおよび強化繊維Fの間の擦過を防止する。個々の強化繊維間、好ましくはすべての強化繊維FとマトリックスMとの間には化学接着剤を施し、これは、とりわけ構造上の凝集性の利点を生ずる。化学結合を強化するために、強化繊維とポリママトリックスMとの間に被覆材(図示せず)を設けることは可能であるが、必須ではない。ポリママトリックスMには、本願の各所で説明したように、基本ポリマの他に、マトリックス特性を微調整する添加剤を含ませてもよい。ポリママトリックスMは硬質エラストマで構成することが好ましい。
【0073】
本発明による用途では、図1a〜図1mに関連して述べたようなロープを、エレベータ、とくに乗用エレベータの巻上げロープとして用いる。達成される利点の1つは、エレベータのエネルギー効率の改善である。本発明による用途において、ロープの幅がロープの横断方向の厚さより広い構造のロープを、少なくとも1本、好ましくは多数本、取り付けて、エレベータかごを支持し走行させ、上記ロープは複合材で作られた荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)を有し、この複合材はポリママトリックス内に、炭素繊維もしくはガラス繊維からなる強化繊維を有するものである。巻上げロープは、最も好ましくは、一方の端部がエレベータかごへ、また他方の端部が釣合い重りへ、図7に関連して説明している方法で固定されるが、これは、釣合い重りなしのエレベータでの使用にも適用可能である。各図は、1:1の巻上げ比のエレベータだけを示しているが、上述のロープは、1:2の巻上げ比のエレベータの巻上げロープとしての用途にも適用可能である。ロープ(19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、8、A、B)は、高い巻上げ高さのエレベータ、好ましくは100メートルを超える巻上げ高さのエレベータにおける巻上げロープとしての用途に、良好に適している。説明したロープを使用すれば、補償用ロープなしの新設エレベータを設置したり、旧式エレベータを補償用ロープなしのエレベータに 転換したりすることもできる。提案したロープ(19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、8、A、B)は、30メートルを超える、好ましくは30〜80メートルの、最も好ましくは40〜80メートルの巻上げ高さを有して補償用ロープなしで設置されるエレベータにおける用途に、良好に適用可能である。「補償用ロープなしで設置」とは、釣合い重りおよびエレベータかごが補償ロープで連結されていないことを言う。しかし、このような明確な補償ロープがなくても、エレベータかごへ取り付けられ、とくにエレベータ昇降路とエレベータとの間に懸架されるよう配設されたかごケーブルをかごロープ質量の不均衡の補償に供することは、可能である。補償用ロープなしのエレベータの場合、釣合い重りが跳ね返る状況で釣合い重りガイドレールと係合するように構成した手段を釣り合い重りに設けることは有利であり、この跳ね返り状況は、跳ね返り監視手段によって、例えば釣合い重りを支えているロープの張力の減少から検出することができる。
【0074】
本願に記載の横断面は、複合材を何らかの他の 材料、例えば金属などに置き換えたロープにも利用できることは、明らかである。同様に、直状の複合材荷重支持部を有するロープは、上述のもの以外の何らかの横断面 形状、例えば円形もしくは楕円形を有してもよいことも、明らかである。
【0075】
本発明の利点はエレベータの巻上げ高さが高くなるほど顕著になる。本発明によるロープを使用することによって、巻き上げ高さが約500メートルの高さにもなる超高層エレベータを達成することができる。従来技術のロープによってこの程度の巻上げ高さを実現することは、実際上、不可能であり、または少なくとも経済的に引き合わない。例えば、荷重支持部が金属編組線を含む従来技術のロープを使用したとしても、巻き上げロープは数万キログラムの重量にまでなるであろう。したがって、このような巻上げロープの質量は最大積載重量よりかなり大きくなってしまうであろう。
【0076】
本願では、本発明をさまざまな見地から説明してきた。実質的に同じ発明をさまざまな方法で定義することができるが、さまざまな見地から発した定義により規定した各事項が互にわずかに相違して、互いに独立した別個の 発明を構成することもある。
【0077】
本発明は、本発明を一例として説明した上述の 実施例のみに限定されず、以下の特許請求の範囲に記載の発明概念の範囲内で本発明の多くの変形およびさまざまな実施例が可能なことは、当業者には明らかである。したがって、上述のロープに歯型表面もしくは他の種類の型付け表面を設けて、駆動綱車との確実な接触を生ずることができることは、明らかである。さらに、図1a〜図1lに示す矩形複合材料部には、図示のものよりもっと丸みを帯びた縁端部、または全く丸みを帯びていない縁端部を設けてもよいことは明らかである。同様に、ロープのポリマ層1には、図示のものよりもっと丸みを帯びた縁端部/角部、または全く丸みを帯びでいない縁端部/角部を設けてもよい。同様に、図1a〜図1jの実施例における荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91)は、ロープの横断面の大部分を覆うように構成することができることは、明らかである。この場合、荷重支持部を取り巻くシース状ポリマ層1は、荷重支持部のロープの厚さ方向t1における厚さに比べて薄く作られる。同様に、図2、図3および図4に示す方式に関連して、上述のもの以外の種類のベルトを使用できることも、明らかである。同様に、必要に応じて、炭素繊維およびガラス繊維の両方を同じ複合材料部に使用することができることも、明らかである。また同様に、ポリマ層の厚さは上述とは異なってもよいことは明らかである。同様に、剪断耐性部は、本願に示すいずれかの他のロープ構造で追加的要素として使用することができることも、明らかである。同様に、強化繊維が分散されたポリママトリックスは、例えばエポキシなどの基本マトリックスポリマに、例えば強化材、充填材、色素剤、難燃材、安定剤もしくは同様の作用剤などの補助材料を混合して 構成してもよいことも、明らかである。同様に、ポリママトリックスはエラストマで構成しないことが好ましいが、エラストママトリックスを用いて本発明を利用できることも、明らかである。各繊維は必ずしも横断面が丸い必要はなく、他の横断面形状を有してよいことも明らかである。さらに、例えば強化材、充填材、色素剤、難燃材、安定剤もしくは 同様の作用剤などの補助材料をポリマ層1の、例えばポリウレタンなどの基本ポリマに混合してもよいことは明らかである。同様に、本発明は、上で検討したもの以外の巻上げ高さに設計されたエレベータにも適用できることは、明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上げ機、とくに乗用エレベータのロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130)であって、幅が該ロープの横断方向の厚さより広いロープにおいて、該ロープは、複合材料で作られた荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)を含み、前記複合材料は、ポリママトリックス内に炭素繊維もしくはガラス繊維からなる強化繊維を含むことを特徴とする巻上げ機のロープ。
【請求項2】
前記請求項のいずれかに記載のロープにおいて、前記強化 繊維は該ロープの長手方向に配向されていることを特徴とするロープ。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかに記載のロープにおいて、個々の繊維は前記マトリックスに均一に分散されていることを特徴とするロープ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のロープにおいて、前記強化 繊維は連続した繊維であり、該ロープの長手方向に配向され、好ましくは該ロープの全長にわたって延在していることを特徴とするロープ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のロープにおいて、前記強化 繊維は、前記ポリママトリックスによって、好ましくは製造段階において前記強化繊維をポリママトリックス材に浸漬することによって、一体の荷重支持部として互いに結合されていることを特徴とするロープ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)は、該ロープの長手方向に平行な複数の直状強化繊維からなり、ポリママトリックスによって互いに結合されて一体の要素を形成していることを特徴とするロープ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)の強化繊維の実質的にすべては該ロープの長手方向に延在していることを特徴とするロープ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)は一体の長尺状体であることを特徴とするロープ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のロープにおいて、前記強化 繊維は、該強化繊維と前記マトリックス間の化学的接着性を改善するための被覆を含むことを特徴とするロープ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のロープにおいて、該ロープの構造は、実質的に均一な構造として該ロープの全長にわたって連続していることを特徴とするロープ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)の構造は、実質的に均一な構造として該ロープの全長にわたって連続していることを特徴とするロープ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載のロープにおいて、前記ポリママトリックスは非エラストマ系材料からなることを特徴とするロープ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載のロープにおいて、前記ポリママトリックス(M)の弾性係数(E)は、2 GPaを超え、好ましくは2.5 GPaを超え、さらに好ましくは2.5〜10 GPaの範囲内、最も好ましくは2.5〜3.5 GPaの範囲内であることを特徴とするロープ。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載のロープにおいて、前記ポリママトリックスは、エポキシ、ポリエステル、フェノール樹脂またはビニルエステルを含むことを特徴とするロープ。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)の横断面方形面積の50%を超える分は前記強化繊維からなり、好ましくは50%〜80%が前記強化繊維からなり、さらに好ましくは55%〜70%が前記強化繊維からなり、最も好ましくは前記方形面積の約60%が強化繊維から、また約40%がマトリックス材料からなることを特徴とするロープ。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載のロープにおいて、前記強化 繊維は前記マトリックス材料とともに、一体の荷重支持部を形成し、その内部では、繊維同士の間、または繊維とマトリックスとの間の相対的な擦過運動が実質的に生じないことを特徴とするロープ。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)の幅は該ロープの横断方向の厚さより広いことを特徴とするロープ。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載のロープにおいて、該ロープは、前記荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)を多数含み、これらは互いに隣接して位置することを特徴とするロープ。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載のロープにおいて、該ロープは、前記複合材料部の外側にワイヤ、ラスもしくは金属製格子などの少なくとも1つの金属製要素(32)を追加的に含むことを特徴とするロープ。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)はポリマ層で囲まれ、該層は、好ましくはエラストマ、最も好ましくはポリウレタンなどの高摩擦性エラストマからなることを特徴とするロープ。
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部(111、121、131)は、該ロープ(110、120、130)の横断面の大部分を覆っていることを特徴とするロープ。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれかに記載のロープにおいて、前記荷重 支持部は、前記ポリママトリックスと、該ポリママトリックスによって互いに結合された強化繊維と、場合に応じて該繊維の周囲に設けられることのある被覆と、前記ポリママトリックス内に含まれることのある補助材料とからなることを特徴とするロープ。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれかに記載のロープにおいて、該ロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、8、A、B)の構造は実質的に均一な構造として該ロープの全長にわたって連続し、該ロープは、実質的に平坦な、好ましくは完全に平坦な幅広側面を含み、該幅広側面で摩擦による力の伝達が可能であることを特徴とするロープ。
【請求項24】
駆動綱車(2)、該駆動綱車(2)を回転させる動力源、エレベータかご(3)、および該エレベータかご(3)を前記駆動綱車(2)によって動かすロープ系を含み、該ロープ系は、少なくとも1本のロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、8、A、B)を含み、その幅(t2)は前記ロープの横断方向におけるその厚さ(t1)より広いエレベータにおいて、前記ロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、8、A、B)は、複合材料で作られた荷重支持部(11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131)を含み、前記複合材料はポリママトリックス内に強化繊維を含み、該強化繊維は炭素繊維もしくはガラス繊維からなることを特徴とするエレベータ。
【請求項25】
請求項24に記載のエレベータにおいて、前記ロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、8、A、B)は請求項1ないし23のいずれかに記載のものであることを特徴とするエレベータ。
【請求項26】
請求項24または25のいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータは前記ロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、8、A、B)を多数本含み、これらは前記駆動綱車の周縁に互いに並んで取り付けられていることを特徴とするエレベータ。
【請求項27】
請求項24ないし26のいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータは、プーリ、好ましくは前記駆動綱車に対して配された第1のベルト状ロープもしくはロープ部分(A)と、第1のロープもしくはロープ部分に対して配された第2のベルト状ロープまたはロープ部分(B)とを含み、該ロープもしくはロープ部分(A、B)は、その曲げ半径の方向から見てプーリ(2)の周縁に互いに重ねて取り付けられていることを特徴とするエレベータ。
【請求項28】
前記請求項に記載のエレベータにおいて、第1のロープもしくはロープ部分(A)は、これに対して配された第2のロープもしくはロープ部分(B)へ、前記エレベータかご(3)および/または釣合い重り(6)に取り付けられた転換プーリを周回するチェーン、ベルトもしくは同等のものによって連結されることを特徴とするエレベータ。
【請求項29】
請求項24ないし28のいずれかに記載のエレベータにおいて、前記ロープ(8)は第1の転向プーリ(2)を周回し、該プーリにおいて前記ロープは第1の曲げ方向に曲がり、その後、前記ロープは第2の転向プーリを周回し、該プーリにおいて前記ロープは第2の曲げ方向に曲がり、第2の方向は第1の方向とは実質的に反対であることを特徴とするエレベータ。
【請求項30】
請求項24ないし29のいずれかに記載のエレベータにおいて、前記ロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、8、A、B)はエレベータかご(3)および釣合い重り(6)を動かすよう配設されていることを特徴とするエレベータ。
【請求項31】
請求項24ないし30のいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータは補償用ロープなしで設置されることを特徴とするエレベータ。
【請求項32】
請求項24ないし31のいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータは、巻上げ高さが30メートルを超え、好ましくは30〜80メートル、最も好ましくは40〜80メートルの釣合い重り式エレベータであり、該エレベータは補償用ロープなしで設置されることを特徴とするエレベータ。
【請求項33】
請求項24ないし32のいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータは高層エレベータであることを特徴とするエレベータ。
【請求項34】
請求項24ないし33のいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータの巻上げ高さは75メートルを超え、好ましくは100メートルを超え、さらに好ましくは150メートルを超え、最も好ましくは250メートルを超えることを特徴とするエレベータ。
【請求項35】
請求項1ないし23のいずれかに記載の巻上げ機のロープ(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130)をエレベータ、とくに乗用エレベータの巻き上げロープとすることを特徴とする巻上げ機ロープの用途。
【請求項36】
前記請求項に記載の用途において、前記エレベータは請求項24ないし34のいずれかに記載のものであることを特徴とする用途。
【請求項37】
請求項35ないし36のいずれかに記載の用途において、請求項1ないし21のいずれかに記載のロープをエレベータの巻上げロープとして使用し、該エレベータは補償用ロープなしで設置することを特徴とする用途。
【請求項38】
請求項35ないし37のいずれかに記載の用途において、請求項1ないし21に記載のロープを釣合い重り式エレベータの巻上げロープとして使用し、該エレベータは、30メートルを超え、好ましくは30〜80メートル、最も好ましくは40〜80メートルの巻き上げ高さを有し、補償用ロープなしで設置することを特徴とする用途。
【請求項39】
請求項35ないし38のいずれかに記載のエレベータにおいて、請求項1ないし23のいずれかに記載のロープをエレベータ巻上げロープとして、高層エレベータであるエレベータにおいて使用することを特徴とする用途。
【請求項40】
請求項35ないし39のいずれかに記載の用途において、請求項1ないし23のいずれかに記載のロープをエレベータ巻上げロープとして、巻上げ高さが75メートルを超え、好ましくは100メートルを超え、さらに好ましくは150メートルを超え、最も好ましくは250メートルを超えるエレベータにおいて使用することを特徴とする用途。
【請求項41】
請求項35ないし40のいずれかに記載の用途において、請求項1ないし23のいずれかに記載のロープを使用して、少なくとも1台のエレベータと、好ましくは釣合い重りも支持して動かすことを特徴とする用途。


【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【図1h】
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【図1i】
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【図1j】
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【図1k】
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【図1l】
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【図1m】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−509899(P2011−509899A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542655(P2010−542655)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際出願番号】PCT/FI2009/000018
【国際公開番号】WO2009/090299
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(591159044)コネ コーポレイション (75)
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
【Fターム(参考)】