説明

巻取紙の検査試料の採取装置

【課題】 完成された巻取紙の紙質等の検査に供するための検査試料を採取する際に、簡単な作業により、抄紙機の走行方向に沿って確実に直線状に切断して、所望の長さの検査試料を得られる巻取紙の検査試料の採取装置を提供する。
【解決手段】 台車2に昇降自在な支持フレーム2cと揺動自在な首フレーム2f、支持軸5bを介して採取フレーム3を設ける。採取フレーム3に、カッティングフォーク32aとロータリカッター32bとからなる一対のカッターユニット32を設け、これらカッターユニット32で切断された検査試料Sを巻き取るコア6を設ける。カッターユニット32を巻取紙Rの周面に対向させて配し、巻取紙Rの巻尻の端部をカッターユニット32に導入し、これらで切断させながらコア6で巻き取れば、検査試料Sを採取できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抄紙機により製造された巻取紙の紙質等に関して検査を行うために、巻取紙の一部から検査試料を採取するための採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場では、抄紙機で製造される紙は、抄紙機の最終部においてリールに巻き取られて巻取紙として完成される。その後、必要に応じて小幅の小巻取に巻き直されたり、平判状に裁断されたりして、二次加工された後に出荷される。
【0003】
抄紙機により製造される紙は、紙質が安定していなければならないから、紙を構成する繊維の配向や厚さ、含水率等が抄紙機における紙の走行方向と幅方向とでそれぞれ一定となる必要がある。このため、抄紙機上に坪量計と水分計等のいわゆるBM計(Basis Weight、Moisture)が配設されて、抄紙機を走行する紙に対してオンラインで紙質の検査が行われている。抄紙機の運転が安定した状態にある場合にはBM計等によるオンライン検査において十分な紙質を得ることができ、万一、許容値から外れる値が検出された場合には、得られた値に関する情報を、原料の供給系や抄紙機の駆動系等にフィードバックして紙質の安定化を図るようにしている。
【0004】
一方、抄紙機により仕様の異なる紙の製造を開始する場合や紙切れ後の運転再開の場合等では、それまでとは異なる性質の紙を製造することになるなどから、完成された巻取紙の一部を検査装置に供して実測することにより、紙質の検査が行われている。すなわち、完成された巻取紙から一部を裁断して検査試料を採取し、これを検査装置に供するようにしている。この検査試料の採取は、完成された巻取紙の一部を人手により行っている。この検査試料に必要な寸法は、検査装置が要求する寸法に応じるものであるが、例えば、幅60cmで長さが600cmを要している。この検査試料を、巻取紙の軸方向、すなわち抄紙機の幅方向に沿って切断して採取することは、リールスタンド等に掛け渡した状態で巻取紙の軸方向に沿って水平に切断すればよいから、比較的容易に行える。他方、抄紙機の走行方向に沿って切断して検査試料を採取することは、巻取紙を巻き解きながら検査試料を直線状に切断することが困難であるため、検査試料の採取作業に手間がかかっている。このため、実測データを抄紙機の運転状況に対して反映させるまでに時間を要してしまうおそれがある。このとき、不十分な紙質である場合には、実測データが取得されるまでの間に製造された紙が不良品となってしまうおそれがあり、全く無駄になってしまうことになる。
【0005】
ところで、巻取状やシート状のサンプル採取の自動化を図るものとして、検査・試験用サンプルの採取方法及び装置が開示されている(特許文献1参照)。あるいは、感熱紙等塗被紙の実機製品検査のためのサンプリング方法が開示されている(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−285739号公報
【特許文献2】特開平3−255331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1及び特許文献2に開示された試験用サンプルの採取装置やサンプリング方法は、紙の巻取紙に対して検査試料を採取するものではないため、例えば、巻取紙の幅方向の任意の位置の一部について、走行方向に切断して試料を採取するような場合には実施できない。また、巻取紙は重量が大きく、巻取紙を検査試料の採取装置まで搬送させて試料の採取を行うことは、大がかりな作業となってしまうので、採取装置を巻取紙まで移動させて採取作業を行うことが要求されるが、特許文献1及び特許文献2に記載された採取装置やサンプリング方法では、この要求に答えることができない。
【0008】
そこで、この発明は、巻取紙について幅方向の任意の位置で、巻取紙を巻き解きながら所望の長さを切断して走行方向の検査試料を採取することができ、しかも、移動式として、例えば、ワインダー装置等の次工程へ供されるために待機している状態にある巻取紙について検査試料を採取できるようにした巻取紙の検査試料の採取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置は、巻取紙を検査装置に供するために、該巻取紙の一部から検査試料を採取する採取装置において、巻取紙の周面に対向して配される一対の切断手段と、前記一対の切断手段により切断された、これら一対の切断手段の間に位置した検査試料を巻き取る試料巻取手段とを有し、巻取紙の端部を前記一対の切断手段に導き入れ、これら切断手段で切断された検査試料を前記試料巻取手段に巻き取ることを特徴としている。
【0010】
前記一対の切断手段を巻取紙に対向した状態に配し、これら一対の切断手段に巻取紙の端部を導入する。巻取紙を巻き解きながら、これら一対の切断手段を通過させることにより、巻取紙がこれら一対の切断手段により切断される。切断された巻取紙の部分のうちのこれら切断手段の間にある部分が前記試料巻取手段により巻き取られて検査試料が採取される。この巻取手段としては、該巻取手段に巻き取られた検査試料を検査装置に供するため、採取装置に対して着脱自在であることが好ましく、例えば、検査試料を巻き取るための紙管等のコアを着脱自在に支持するチャック機構等を設けることが好ましい。
【0011】
また、請求項2の発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置は、巻取紙を検査装置に供するために、該巻取紙の一部から検査試料を採取する採取装置において、鉛直方向に伸縮自在な支持フレームを具備して、床面を移動自在な台車と、前記支持フレームに、基端部を連繋させた設けた首フレームと、前記首フレームの先端部に前後方向の水平軸を中心として回動自在に設けた採取フレームと、前記採取フレームに、巻取紙の端部を導入する一対の切断手段と、該一対の切断手段により切断された、これら一対の切断手段の間に位置した検査試料を巻き取る試料巻取手段とを設け、前記台車を走行させて前記採取フレームの一対の切断手段を巻取紙の周面に対向させて位置させ、巻取紙の端部を前記一対の切断手段に導き入れ、これら切断手段で切断された検査試料を前記試料巻取手段に巻き取ることを特徴としている。
【0012】
検査試料を採取すべき巻取紙まで前記台車を走行させ、前記採取フレームの切断手段を巻取紙の周面に対向させて位置させる。巻取紙の端部を前記一対の切断手段に導き入れる。このとき、前記首フレームを昇降させて、切断手段を、巻取紙の端部を導き入れやすい位置に調整する。例えば、巻取紙から走行方向に沿って切断して検査試料を採取する場合には、採取フレームを首フレームに対して回動させて、前記一対の切断手段が水平線上に位置するように調整する。この状態で、巻取紙の巻尻の端部を一対の切断手段に導き入れ、巻取紙を巻き解きながら該切断手段を通過させると、これら一対の切断手段により巻取紙が走行方向に沿って切断される。この切断された一対の切断手段の間にある部分を前記試料巻取手段に巻き取らせれば、検査試料を採取できる。
【0013】
また、巻取紙の幅方向に沿って切断して検査試料を採取する場合には、採取フレームを首フレームに対して回動させて、前記一対の切断手段が鉛直線上に位置するように調整する。この状態で、巻取紙の側端部を一対の切断手段に導き入れ、台車を巻取紙の幅方向に走行させながら該切断手段を通過させると、これら一対の切断手段により巻取紙が幅方向に沿って切断されるから、この切断された一対の切断手段の間にある部分を前記試料巻取手段に巻き取らせれば、検査試料を採取できる。
【0014】
また、請求項3の発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置は、前記首フレームの基端部を、水平方向の軸を中心として揺動自在としてあることを特徴としている。
【0015】
前記採取フレームは、首フレームに設けられた前記水平方向の軸によって支持されているため、この採取装置を使用しないときには、この水平方向の軸に採取フレームの重量が負荷としてかかり、曲げモーメントが生じる。このため、この水平方向の軸が経時により湾曲してしまうおそれがある。このため、採取装置の不使用時には首フレームを揺動させて、前記水平方向の軸を鉛直方向に配して、採取フレームの荷重がかからないようにしたものである。
【0016】
また、請求項4の発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置は、前記試料巻取手段により巻き取られる検査試料の長さを計測する長さ計測手段を備えていることを特徴としている。
【0017】
検査装置によって検査し、紙質の評価を十分に行えるためには、十分な長さの検査試料を必要とし、長さが不十分であると検査試料を採取し直さなければならない場合が生じる。そこで、検査試料の長さを計測することができるようにしたものである。特に、巻取紙の幅方向で検査試料を採取する場合には、巻取紙の幅は既知であるから、全幅で検査試料を採取することになる。他方、走行方向で検査試料を採取する場合には、巻取紙を巻き解きながら行うため、巻き取り長さが不明となってしまう。したがって、走行方向で検査試料を採取する場合の長さを計測することができれば十分であり、例えば、回転式測距計の計測環を巻取紙の周面に押圧させ、巻取紙が巻き解かれる際に該巻取紙との間の摩擦力によって計測環が回転することにより、巻き解かれる長さを計測できるようにする。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置によれば、作業者は一対の切断手段に巻取紙を導入させ、この切断手段に巻取紙を通過させて切断するから、簡単な作業で直線状に切断された検査試料を確実に採取することができる。
【0019】
また、請求項2の発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置によれば、巻取紙の走行方向と幅方向のいずれの方向にも検査試料を採取することができる。
【0020】
また、請求項3の発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置によれば、不使用時には要部に不要な荷重がかかることがなく、要部に変形等を生じさせず、常に安定して検査試料の採取を行える。また、採取フレームが使用位置にある場合には該採取フレームが高位置まで伸長した状態となっているのに対して、不使用時には採取フレームが低位置にあるから、安定した状態で保管することができる。
【0021】
また、請求項4の発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置によれば、検査に必要な長さを確実に採取することができ、迅速な検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置の概略の構造を説明する図で、斜め前方からの正面を示す斜視図である。
【図2】この発明に係る採取装置の概略の構造を説明する図で、斜め後方からの背面を示す斜視図である。
【図3】この発明に係る採取装置の概略の構造を説明する左側面図である。
【図4】この発明に係る採取装置の概略の構造を説明する背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る巻取紙の検査試料の採取装置を具体的に説明する。
【0024】
図1及び図2にはこの採取装置1の斜視図を示してあり、図1は斜め前方からの正面斜視図、図2は斜め後方からの背面斜視図である。この採取装置1は主として、移動自在な台車2とこの台車2に搭載されている採取フレーム3とから構成されている。
【0025】
前記台車2は井桁状に配された台車フレーム2aの下面の4箇所にロック機構付きのキャスター2bが取り付けられて、床面上を移動可能とされている。この台車フレーム2aに、鉛直方向を長手方向とした一対の支持フレーム2cが取り付けられている。また、これら支持フレーム2cのそれぞれと台車フレーム2aにはガスステー2dが連繋されて、支持フレーム2cが補強されている。支持フレーム2cは、台車フレーム2aに固定された固定フレーム21と摺動フレーム22とが入れ子式に連結されており、固定フレーム21に対して摺動フレーム22が摺動することにより、支持フレーム2cが伸縮するようにしてある。なお、固定フレーム21に螺合させた固定ネジの操作ノブ23を回動させることにより、これら固定フレーム21と摺動フレーム22との固定と解除とを行えるようにしてある。一対の支持フレーム2cの上端部、すなわち摺動フレーム22の上端には、架台フレーム2eが掛け渡されており、この架台フレーム2eの中央部には鉛直方向を長手方向とする首フレーム2fが、架台フレーム2eの長手方向と平行な方向の支持軸2hを中心として揺動可能に支持されている。また、この首フレーム2fの揺動範囲を、該首フレーム2fの長手方向が鉛直となる方向と水平となる方向との間としてあり、鉛直方向と水平方向とのそれぞれで固定できるようにしてある。前記固定フレーム21の上端近傍には、補強フレーム2gが掛け渡されており、この補強フレーム2gに、この台車2を応動させる際に把持する把持部24が取り付けられている。
【0026】
前記首フレーム2fの上端部には、図2に示すように、L字形に形成された取付ブラケット4を介して、保持フォーク5が支持されている。この保持フォーク5は、前記取付ブラケット4に固定された軸受箱5aにほぼ90度の範囲内で回動可能に支持された水平方向の支持軸5bに支持されている。この支持軸5bの回動範囲は、例えば、ラチェット機構等を介して、ほぼ90度の関係にある二位置でロックされるようにしてあることが好ましい。前記保持フォーク5は、図1及び図2に示すように、ほぼコ字形に形成されており、前記支持軸5bの回動により、このコ字形のそれぞれの腕部が、図1及び図2に示すように、ほぼ鉛直方向に並んだ状態と、この状態からほぼ90度回動してほぼ水平方向に並んだ状態とに位置するようにしてある。
【0027】
採取フレーム3は適宜距離を設けて配された一対の支持プレート3a、3aを有しており、これら支持プレート3a、3aに掛け渡された保持ロッド31が、前記保持フォーク5のコ字形の腕部に挟まれて、該保持フォーク5に保持されている。また、支持プレート3a、3aのそれぞれの内側面には、切断手段としてのカッターユニット32が設けられている。このカッターユニット32は、カッティングフォーク32aとロータリカッター32bとを備えており、これらカッティングフォーク32aとロータリカッター32bとの間に紙Pを導き入れ、該紙Pを通過させることにより切断されるようにしてある。なお、後述する作業を円滑に行えるように、一対のカッターユニット32のうちの一方のカッティングフォーク32aを他方のカッティングフォーク32aよりも僅かに長くして、先端部の高さを異ならせておくことが好ましい。
【0028】
前記カッターユニット32の下方には、該カッターナイフ32の間位置に位置させて、試料巻取手段として、紙管等により構成されたコア6が設けられている。このコア6に、後述するように前記カッターユニット32により切断された検査試料Sが巻き取られるもので、支持プレート3a、3aに設けられたチャック装置6aによって着脱自在とされている。
【0029】
また、前記支持プレート3a、3aの前部の上下位置には、ローラ軸7a、7aが掛け渡されており、これらローラ軸7a、7aの両端部に紙押さえローラ7が該ローラ軸7a、7aのそれぞれに対して回動自在に遊嵌されている。また、上側のローラ軸7aの後方には、支持ロッド8aが支持プレート3a、3aに掛け渡されて、該支持プレート3a、3aに回動自在に設けられている。この支持ロッド8aに前方に伸長させた支持アーム8bの基端部が取り付けられており、この支持アーム8bの先端部に前記支持ロッド8aの軸方向と平行な方向を軸として回動可能にガイドローラ8が支持されている。
【0030】
前記カッターユニット32のロータリカッター32bの一方には図示しない駆動モータの出力軸が連繋されており、この駆動モータの作動によってロータリカッター32bが回転する。また、この出力軸の回転がタイミングベルトとプーリやチェーンとチェーンスプロケット等の組合せによる動力伝達系9を介して該駆動モータが設けられた側の支持プレート3aに連繋している前記チャック装置6aに伝達され、このチャック装置6aに保持されたコア6を回転させ、このコア6の回転が、他方の支持プレート3aに配されているチャック装置6aを回転させ、この回転が動力伝達系9を介して他方のロータリカッター32bを回転させるようにしてある。
【0031】
前記架台フレーム2eの一方の端部には取付ブラケット10aを介して支持ロッド10bが固定されており、この支持ロッド10bに連結ブラケット10cを介して操作ロッド10dが連繋されている。この操作ロッド10dの先端部には、長さ計測手段としての回転式の測距計10が設けられており、計測された距離がその表示部に表示される。また、この操作ロッド10dは前記連結ブラケット10cの部分で回動可能に支持されており、この回動により前記測距計10が旋回して、検査試料Sを採取することになる巻取紙の周面に押圧されるようにしてある。また、操作ロッド10dは伸縮可能とされていることが好ましい。
【0032】
また、この採取装置1には、図示しない水準器が付属させてあり、検査試料Sの採取作業時にこの採取装置1が水平状態となるように確認できるようにしてある。
【0033】
以上により構成されたこの実施形態に係る採取装置1により検査試料Sを採取する作業について、以下に説明する。
【0034】
抄紙機で巻取紙Rの抄造が完成すると、次に抄造される紙を巻き取るためにリール交換が行われ、先の巻取紙Rはリールスタンドに掛け渡されて次工程への搬送に待機している。この巻取紙Rの検査試料Sを採取する場合には、この待機している巻取紙Rまで採取装置1を移動させる。移動させた採取装置1を、図3に示すように、採取フレーム3のカッターユニット32が巻取紙Rの周面に対向するように配置させる。巻取紙Rの紙の走行方向に沿って切断することにより検査試料Sを採取する場合には、一対のカッターユニット32が水平方向に並んだ状態となるように、前記採取フレーム3を回動させて調整する。また、前記支持フレーム2cの固定フレーム21に対して摺動フレーム22を摺動させて、採取ユニット3の高さを、検査試料Sを採取するのに適した位置となるように調整する。例えば、図3に示す巻取紙Rから検査試料Sを採取する場合には、想像線で示す採取フレーム3を該巻取紙Rの軸の高さ近傍とし、巻取紙Rよりも大径の巻取紙に対しては、同図上フレーム3xで示すようにより高い位置に設定する。この状態で、図示しない水準器等を参照しながら、採取フレーム3が水平状態となるように調整する。また、このとき、前記上下の紙押さえローラ7で巻取紙Rの周面を押圧すると共に、前記ガイドローラ8を巻取紙Rの周面に押圧する。さらに、前記操作ロッド10dを回動させて、前記測距計10を巻取紙Rの周面に当接させる。そして、台車2のキャスター2bをロックして、台車2が不用意に移動しないようにする。
【0035】
作業者は前記駆動モータを作動させた後、巻取紙Rの巻尻の端部を把持し、前記カッターユニット32のカッティングフォーク32aとロータリカッター32bとの間に導き入れる。このとき、左右のカッティングフォーク32aの長さを異ならせて先端の高さを異ならせてあれば、先端の高い側のカッティングフォーク32aに先に導き、巻取紙Rの巻尻の端部が確実に該カッティングフォーク32aに導入されたことを確認し、次いで低い側のカッティングフォーク32aに導き入れることにより、紙Pの導入作業を行い易い。すなわち、高い側のカッターユニット32に導かれた紙Pは該カッターユニット32に供されて切断が開始され、ロータリカッター32bの回転によって前進を始める。これにより、巻取紙Rから紙Pが巻き解かれて巻尻の端部の全体が先進するので、この前進に合わせて低い側のカッターユニット32に紙Pを導入することで作業性が良好となる。
【0036】
巻尻の端部が左右のカッターユニット32に導入されたならば、これら一対のカッターユニット32により、巻取紙Rが走行方向に沿って切断されることになる。切断が開始されて巻尻の端部が前記コア6に達するまで前進したならば、該端部をコア6に貼着させる。例えば、予め両面接着テープをコア6の表面に貼付しておき、巻尻の端部をこの両面接着テープに貼着させればよい。以後は、前記カッターユニット32で切断された検査試料Sが、想像線で示すように、このコア6の回転により巻き取られることになる。作業者は前記測距計10の表示部を見ながら、所望の長さの検査試料Sを巻き取らせる。所望の長さの検査試料Sが巻き取られたならば、前記駆動モータを停止させて、カッターナイフ等で検査試料Sの末端部を切断し、コア6をチャック装置6aから外せば、採取された検査試料Sを検査装置に供することができる。
【0037】
巻取紙Rの幅方向で切断して検査試料Sを採取する場合には、前記採取フレーム3を回動させて、カッターユニット32が鉛直方向に沿って並ぶ位置とする。この状態で、一対のカッターユニット32のそれぞれに、巻取紙Rの幅方向の端部を導入する。そして、コア6が検査試料Sを巻き取る速度に応じて、台車2を巻取紙Rの幅方向に移動させると、検査試料Sをコア6に巻き取ることができるものである。
【0038】
検査試料Sの採取を行うことのないこの採取装置1の不使用時には、図3に示すように、首フレーム2fを、支持軸2hを中心として揺動させて、採取フレーム3を同図上採取フレーム3zの位置まで前方に倒した状態とする。これにより、採取フレーム3zを支持している支持軸5bが鉛直方向となるから、該支持軸5bに採取フレーム3zの荷重が曲げモーメントとして作用することがなく、支持軸5bが疲労して湾曲したりすることがない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明に係る巻取紙Rの検査試料の採取装置によれば、一対の切断手段により直線状に切断された検査試料を、簡単な操作で採取することができるから、採取作業の時間を短縮でき、迅速に検査に供することができ、迅速に抄紙機による操業に反映させて、紙質の良好な紙の抄造に寄与する。
【符号の説明】
【0040】
1 採取装置
2 台車
2c 支持フレーム
2e 架台フレーム
2f 首フレーム
3 採取フレーム
3a 支持プレート
31 保持ロッド
32 カッターユニット(切断手段)
32a カッティングフォーク
32b ロータリカッター
5 保持フォーク
5b 支持軸
6 コア
7 紙押さえローラ
8 ガイドローラ
9 動力伝達系
10 測距計(長さ計測手段)
P 紙
R 巻取紙
S 検査試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取紙を検査装置に供するために、該巻取紙の一部から検査試料を採取する採取装置において、
巻取紙の周面に対向して配される一対の切断手段と、
前記一対の切断手段により切断された、これら一対の切断手段の間に位置した検査試料を巻き取る試料巻取手段とを有し、
巻取紙の端部を前記一対の切断手段に導き入れ、これら切断手段で切断された検査試料を前記試料巻取手段に巻き取ることを特徴とする巻取紙の検査試料の採取装置。
【請求項2】
巻取紙を検査装置に供するために、該巻取紙の一部から検査試料を採取する採取装置において、
鉛直方向に伸縮自在な支持フレームを具備して、床面を移動自在な台車と、
前記支持フレームに、基端部を連繋させた設けた首フレームと、
前記首フレームの先端部に前後方向の水平軸を中心として回動自在に設けた採取フレームと、
前記採取フレームに、巻取紙の端部を導入する一対の切断手段と、該一対の切断手段により切断された、これら一対の切断手段の間に位置した検査試料を巻き取る試料巻取手段とを設け、
前記台車を走行させて前記採取フレームの一対の切断手段を巻取紙の周面に対向させて位置させ、巻取紙の端部を前記一対の切断手段に導き入れ、これら切断手段で切断された検査試料を前記試料巻取手段に巻き取ることを特徴とする巻取紙の検査試料の採取装置。
【請求項3】
前記首フレームの基端部を、水平方向の軸を中心として揺動自在としてあることを特徴とする請求項2に記載の巻取紙の検査試料の採取装置。
【請求項4】
前記試料巻取手段により巻き取られる検査試料の長さを計測する長さ計測手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の巻取紙の検査試料の採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230554(P2010−230554A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79635(P2009−79635)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(506213809)メッツォオートメーション株式会社 (4)
【Fターム(参考)】