説明

巻取装置、該巻取装置を備えた記録装置

【課題】 より広いトルクレンジに安定的に対応可能な巻取装置を低コストに実現する。
【解決手段】 巻取装置20は、ロール紙RPを巻き取る巻取軸21と、巻取軸21を回転させる複数のトルクモーター(第1トルクモーター33、第2トルクモーター34、第3トルクモーター35)と、巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径を検出する巻径検出器32と、巻径検出器32の出力信号に基づいて、所望の張力が作用する状態でロール紙RPが巻取軸21に巻き取られるように複数のトルクモーターを制御する制御装置100とを備え、制御装置100は、電圧を供給するトルクモーターを複数のトルクモーターから選択するスイッチ回路102と、選択したトルクモーターに供給する電圧を調整するテンションコントローラー101とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送体を巻取軸に巻き取る巻取装置、該巻取装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被搬送体を巻取軸に巻き取る巻取装置においては、仮に巻取軸の駆動トルクを一定にした状態で被搬送体を巻き取ると、巻取軸に巻き取られた被搬送体の巻径の変化によって、被搬送体が巻取軸に巻き取られる際に被搬送体に作用する張力(以下、「巻取張力」という。)が変動してしまう。このような巻取張力の変動を防止する従来技術の一例としては、巻取軸に巻き取られた被搬送体の巻径を検出する巻径検出器を備え、その巻径の変化に応じて、巻取軸を回転させるトルクモーターを制御する巻取装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。トルクモーターは、大きな起動トルクと垂下特性を持ち、回転速度−トルク特性の全域、特に低速および拘束時での安定した運転が得られるモーターである。このような巻取装置によれば、巻取軸に巻き取られた被搬送体の巻径の変化にかかわらず、一定の巻取張力で被搬送体を巻き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−36146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら巻取装置においては、例えば設定可能な巻取張力の範囲を拡大するためには、あるいは巻取軸に巻取可能な被搬送体の最大巻取量を大きくするためには、より広いトルクレンジを実現する必要が生ずる。そして、それに応じて例えばトルクモーターを大型化すると、巻取装置のコストが大幅に上昇してしまう虞が生ずる。またトルクモーターを大型化した場合、巻取軸に被搬送体を巻き取る初期段階(巻始め〜巻取量が比較的少ない段階)、つまり巻取軸の回転速度が比較的高速になる低トルク駆動時において、巻取張力が不安定になりやすい。
【0005】
このような状況に鑑み本発明は成されたものであり、本発明の目的は、より広いトルクレンジに安定的に対応可能な巻取装置を低コストに実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、被搬送体を巻き取る巻取軸と、前記巻取軸を回転させる複数のトルクモーターと、前記巻取軸に巻き取られた被搬送体の巻径を検出する巻径検出器と、前記巻径検出器の出力信号に基づいて、所望の張力が作用する状態で被搬送体が前記巻取軸に巻き取られるように前記複数のトルクモーターを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、電圧を供給するトルクモーターを前記複数のトルクモーターから選択する手段と、選択したトルクモーターに供給する電圧を調整する手段と、を有する、ことを特徴とした巻取装置である。
【0007】
このように複数のトルクモーターで巻取軸を回転させる構成を採用することによって、例えば一の大型なトルクモーターで巻取軸を回転させる構成と比較して、同程度のトルクレンジに対応可能な巻取装置をより低コストに実現することが可能になる。また巻取軸の回転速度が比較的高速となる低トルク駆動時においては、電圧を供給するトルクモーターの数を減らすことによって安定した低トルク駆動を実現することができるので、一定の巻取張力を安定的に維持することができる。すなわち巻取軸に被搬送体を巻き取る初期段階等において、巻取張力が不安定になる虞を低減させることができる。
【0008】
これにより本発明の第1の態様によれば、より広いトルクレンジに安定的に対応可能な巻取装置を低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
【0009】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、被搬送体を所定の搬送方向へ搬送する搬送装置と、前記搬送装置の駆動力源となる搬送用モーターと、前記搬送装置により搬送される被搬送体を前記搬送方向の下流側で巻き取る巻取軸と、前記巻取軸を回転させる複数のトルクモーターと、前記巻取軸に巻き取られた被搬送体の巻径を検出する巻径検出器と、前記巻径検出器の出力信号に基づいて、所望の張力が作用する状態で被搬送体が前記巻取軸に巻き取られるように前記搬送用モーター及び前記複数のトルクモーターを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、電圧を供給するトルクモーターを前記複数のトルクモーターから選択する手段と、選択したトルクモーターに供給する電圧を調整する手段と、を有する、ことを特徴とした巻取装置である。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、前述した第1の態様と同様に、より広いトルクレンジに安定的に対応可能な巻取装置を低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
さらに本発明の第2の態様は、搬送装置による被搬送体の搬送速度を任意の速度に維持することによって、巻取軸への被搬送体の送り速度を任意の速度に設定して維持することができる。それによって、巻取軸に被搬送体を巻き取る際の巻取速度を任意の速度に設定することができる。また、例えば巻取装置に対する被搬送体の送出速度に変動等が生じても、それに左右されることなく、被搬送体の巻取速度を一定の速度に維持することが可能になるので、被搬送体の巻取速度の変動等に起因して巻取張力が不安定になる虞を低減させることができる。
【0011】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様又は第2の態様に記載の巻取装置において、前記制御装置は、所定の加速度で前記巻取軸の回転速度を加減速する手段を有する、ことを特徴とした巻取装置である。
【0012】
一般にトルクモーターは、電圧が供給されていない状態ではモーター軸が自由に回転可能な状態となる。そのため、トルクモーターへの電圧の供給を遮断して巻取軸の回転を停止させるときには、それまで被搬送体に作用していた巻取張力が巻取軸を逆回転させる力として作用し、それによって巻取軸が僅かに逆回転して被搬送体に弛みが生ずることがある。そして、この弛みが生じた状態から巻取軸の回転を開始すると、開始直後に急激なトルク変動が生じて瞬間的に被搬送体に過大な張力が作用する虞がある。そのため従来の一般的な巻取装置は、巻取軸の回転の停止時に被搬送体に弛みが生じないように、トルクモーターから巻取軸への駆動力伝達経路に一方向クラッチを介在させることによって巻取軸の逆回転を防止している。
【0013】
しかし従来の巻取装置は、巻取軸への駆動力伝達経路に一方向クラッチを介在させることによってコストが上昇してしまうことになる。また、巻取軸への駆動力伝達経路に一方向クラッチを介在させることによって、巻取軸に対する被搬送体の巻取方向が一方向に制限されてしまうことになる。そのため、従来の巻取装置において双方向の巻取を可能にするには、回転方向を転換するギア機構等をさらに設ける必要があり、それによってコストがさらに上昇してしまうことになる。
【0014】
それに対して本発明の第3の態様は、所定の加速度で巻取軸の回転速度を加減速することができる。つまり巻取軸の回転の停止時には、例えば緩やかに減速しながら巻取軸の回転を停止することができるので、被搬送体に生ずる弛みを低減させることができる。また巻取軸の回転の開始時には、例えば緩やかに加速しながら巻取軸の回転を開始することができるので、仮に被搬送体の弛みが生じていたとしても、それに起因して急激なトルク変動が生じる虞を低減させることができる。したがって、トルクモーターから巻取軸への駆動力伝達経路に一方向クラッチ等を介在させることなく、巻取軸の回転の開始時に被搬送体に過大な張力が作用する虞を低減させることができる。
【0015】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した第1〜第3の態様のいずれかに記載の巻取装置において、前記制御装置は、前記複数のトルクモーターへの電圧供給をトルクモーターごとにON/OFF可能なスイッチ回路を有する、ことを特徴とした巻取装置である。
【0016】
このような特徴によれば、巻取軸のトルク制御を簡略化することができる。例えば、複数のトルクモーターへ供給する電圧は共通電圧とし、スイッチ回路の切り換えによって巻取軸に作用するトルクを調整することが可能になる。
【0017】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、被記録材に記録を実行する記録装置であって、記録実行後の被記録材を巻き取る前述した第1〜第4の態様のいずれかに記載の巻取装置を備えている、ことを特徴とした記録装置である。
本発明の第5の態様によれば、被記録材に記録を実行する記録装置において、前述した第1〜第4の態様のいずれかの発明による作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インクジェットプリンターの概略構成を図示した要部側面図。
【図2】巻取装置の構成を図示した要部側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<インクジェットプリンター1の概略構成>
本発明に係るインクジェットプリンター1の概略構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンター1の概略構成を図示した要部側面図である。
【0021】
「記録装置」としてのインクジェットプリンター1は、給送軸11、搬送駆動ローラー12、搬送従動ローラー13、ロール紙支持部材14、乾燥装置15、排出駆動ローラー16、排出従動ローラー17、キャリッジ18、記録ヘッド19及び巻取装置20を備えている。
【0022】
給送軸11には、「被搬送体」及び「被記録材」としてのロール紙RPが支持される。ロール紙RPは、軸体等に巻かれた帯状の長尺な記録紙である。給送軸11に支持されている記録前のロール紙RPは、図示していないモーターの動力が伝達されて給送軸11が回転することによって、搬送駆動ローラー12と搬送従動ローラー13との間へ送出される。そして記録前のロール紙RPは、搬送駆動ローラー12と搬送従動ローラー13とで挟持され、図示していないモーターの動力が伝達されて搬送駆動ローラー12が回転することによって、ロール紙支持部材14へ送出される。
【0023】
ロール紙支持部材14へ送出された記録前のロール紙RPは、そのロール紙支持部材14に支持された状態で、往復動方向Xへ往復動するキャリッジ18に搭載された記録ヘッド19からインクが噴射されて記録面に記録が実行される。記録後のロール紙RPは、再び搬送駆動ローラー12の回転により搬送され、中間ローラー1aに案内されて乾燥装置15へ送出される。
【0024】
乾燥装置15へ送出された記録後のロール紙RPは、乾燥装置15を通過する際に、記録面に噴射されたインクの強制的な乾燥が行われる。乾燥装置15を通過した記録後のロール紙RPは、中間ローラー1b及び1cに案内されて排出駆動ローラー16と排出従動ローラー17との間へ送出される。そして記録後のロール紙RPは、排出駆動ローラー16と排出従動ローラー17とで挟持され、図示していないモーターの動力が伝達されて排出駆動ローラー16が回転することによって、巻取装置20へ送出される。巻取装置20へ送出された記録後のロール紙RPは、巻取軸21に巻き取られる。
【0025】
<巻取装置20の構成>
本発明に係る巻取装置20の構成について、図2を参照しながら説明する。
図2は、巻取装置20の構成を図示した要部側面図である。
【0026】
巻取装置20は、巻取軸21、第1中継ローラー22、昇降ローラー23、第2中継ローラー24、第1案内ローラー25、第2案内ローラー26、送りローラー27及びニップローラー28を備えている。
【0027】
第1中継ローラー22及び第2中継ローラー24は従動回転可能に軸支されている。昇降ローラー23は、従動回転可能に軸支されているとともに、昇降方向Aへ昇降可能に設けられている。この昇降ローラー23は、排出駆動ローラー16(図1)の回転に連動して下降し、送りローラー27の回転に連動して上昇する。
【0028】
第1案内ローラー25及び第2案内ローラー26は従動回転可能に軸支されている。送りローラー27は、第1案内ローラー25と第2案内ローラー26との間に配設されており、図示していないギア付きDCモーターの動力が伝達されて回転する。ニップローラー28は、従動回転可能に軸支されているとともに、図示していない付勢手段の付勢力によって送りローラー27に当接する方向へ付勢されている。
【0029】
さらに巻取装置20は、ロール紙センサー31、巻径検出器32、第1トルクモーター33、第2トルクモーター34、第3トルクモーター35、第1動力伝達ベルト36、第2動力伝達ベルト37及び第3動力伝達ベルト38を備えている。
【0030】
ロール紙センサー31は、反射式センサーであり、第1中継ローラー22と第2中継ローラー24との間に送出された記録後のロール紙RPを非接触で検出可能なセンサーである。
【0031】
巻径検出器32は、巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径を検出する検出器である。巻径検出器32は、揺動軸322で揺動可能に軸支された揺動体321と、その揺動体321の一端側に軸支された従動ローラー323と、その揺動体321の他端側の揺動位置を検出可能な巻径センサー324とを有している。揺動体321は、図示していない付勢手段の付勢力によって、巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの外周面に従動ローラー323が当接する方向へ付勢されている。巻径センサー324は、揺動体321の他端側の揺動軌跡に沿って配設された複数のフォトマイクロセンサー(図示せず)を有している。このような構成の巻径検出器32は、巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径が変化すると、それに応じて揺動体321が揺動し、その揺動体321の揺動位置に応じて巻径センサー324の出力信号が変化する。
【0032】
第1トルクモーター33、第2トルクモーター34及び第3トルクモーター35は、大きな起動トルクと垂下特性を持ち、回転速度−トルク特性の全域、特に低速および拘束時での安定した運転が得られる公知のトルクモーターである。第1トルクモーター33の動力は、第1動力伝達ベルト36を介して巻取軸21に伝達される。第2トルクモーター34の動力は、第2動力伝達ベルト37を介して巻取軸21に伝達される。第3トルクモーター35の動力は、第3動力伝達ベルト38を介して巻取軸21に伝達される。
【0033】
さらに巻取装置20は、巻取張力設定器41、巻取速度設定器42及び制御装置100を備えている。
【0034】
巻取張力設定器41は、例えば複数の接点を有するロータリースイッチで構成され、段階的に設定されている複数の巻取張力Tからユーザーが任意の巻取張力Tを選択するために設けられている。巻取速度設定器42は、例えば複数の押しボタンスイッチで構成され、ユーザーが任意の巻取速度Vを設定(通常速度、高速、低速等)するために設けられている。この巻取張力設定器41及び巻取速度設定器42の出力信号は、制御装置100へ入力される。
【0035】
公知のマイコン制御回路を含む制御装置100は、テンションコントローラー101及びスイッチ回路102を有している。テンションコントローラー101は、第1トルクモーター33、第2トルクモーター34及び第3トルクモーター35へ電圧を供給するとともに、その供給電圧を巻径検出器32の出力信号に基づいて調整する。スイッチ回路102は、第1トルクモーター33、第2トルクモーター34及び第3トルクモーター35への電圧供給をトルクモーターごとにON/OFF可能な回路である。制御装置100は、ロール紙センサー31及び巻径検出器32の出力信号に基づいて、前記のギア付きDCモーター(図示せず)、第1トルクモーター33、第2トルクモーター34及び第3トルクモーター35を制御する。
【0036】
上記説明した構成の巻取装置20において、排出駆動ローラー16(図1)の回転により巻取装置20へ送出される記録後のロール紙RPは、その排出駆動ローラー16の回転に連動して昇降ローラー23が下降することによって、第1中継ローラー22と第2中継ローラー24との間に送出される。第1中継ローラー22と第2中継ローラー24との間に送出された記録後のロール紙RPは、送りローラー27が回転するとともに、その送りローラー27の回転に連動して昇降ローラー23が上昇することによって、搬送方向Yへ搬送されて巻取軸21へ送出される。
【0037】
このとき巻取軸21へ送出されるロール紙RPの送り速度は、送りローラー27の回転速度を所望の速度(ユーザーが巻取速度設定器42で設定した巻取速度V)に制御することによって、一定の速度に維持することができる。また巻取軸21に巻き取られた記録後のロール紙RPの巻径は、巻径検出器32の巻径センサー324の出力信号から特定することができる。制御装置100は、このロール紙RPの送り速度及び巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径に応じて、所望の巻取張力T(ユーザーが巻取張力設定器41で設定した巻取張力T)が作用する状態でロール紙RPが巻取軸21に巻き取られるように、巻取軸21の回転制御を実行する。より具体的には制御装置100は、ロール紙RPの送り速度及び巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径に応じて、電圧を供給する一又は二以上のトルクモーターをスイッチ回路102により選択するとともに、その選択したトルクモーターへ供給する電圧をテンションコントローラー101により調整する。
【0038】
ここで一般にトルクモーターは、垂下特性を持つとともに、トルクが供給電圧の二乗に比例する。また巻取軸21にロール紙RPを巻き取る際に、一定の巻取速度V及び一定の巻取張力Tを維持するには、例えば巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径が2倍になると、物理的に2倍のトルクが必要になるとともに巻取軸21の回転速度を1/2にする必要がある。したがって一定の巻取速度V及び一定の巻取張力Tが維持するには、巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径が大きくなるに従ってトルクモーターへ供給する電圧を上昇させていけば良い。このときのロール紙RPの巻径とトルクモーターへの供給電圧との関係は、トルクモーターの垂下特性の仕様(モーターの製造元から提供されるトルク特性曲線)から特定することができる。これを例えば比例式の計算式あるいはデーターテーブルとして導出し、予め制御装置100の不揮発性メモリー(図示せず)等に記憶させ、その計算式あるいはデーターテーブルに基づいてトルクモーターへの供給電圧を調整すれば良い。
【0039】
さらに、巻取軸21にロール紙RPを巻き取る初期段階(巻始め〜巻取量が比較的少ない段階)、すなわち回転速度が比較的高速となる低トルク駆動時においては、電圧を供給するトルクモーターの数を減らす。例えば第1トルクモーター33にのみ電圧を供給すると、このとき電圧が供給されない第2トルクモーター34及び第3トルクモーター35は、モーター軸が回転自在になる。したがって、この状態においては第1トルクモーター33の動力のみによって巻取軸21が回転する状態となる。それによって、低トルク駆動時における巻取張力Tを安定的に維持することができる。
【0040】
他方、回転速度が比較的低速となる高トルク動作時には、巻取軸21に巻き取られたロール紙RPの巻径、設定されている巻取張力Tや巻取速度V等に応じて、電圧を供給するトルクモーターの数を増加させる。例えば、第1トルクモーター33、第2トルクモーター34及び第3トルクモーター35の全てに電圧を供給する。このとき巻取軸21に作用するトルクは、電圧を供給している複数のトルクモーターから発生するトルクが合算されたものとなるので、あたかも大型のトルクモーターで巻取軸21を回転させているのと同様の効果が得られる。それによって、より広いトルクレンジを実現することができる。
【0041】
以上説明したように本発明に係る巻取装置20は、複数のトルクモーターで巻取軸21を回転させる構成を採用することによって、例えば一の大型なトルクモーターで巻取軸21を回転させる構成と比較して、同程度のトルクレンジに対応可能な巻取装置20をより低コストに実現することが可能になる。また巻取軸21の回転速度が比較的高速となる低トルク駆動時においては、電圧を供給するトルクモーターの数を減らすことによって安定した低トルク駆動を実現することができるので、一定の巻取張力Tを安定的に維持することができる。すなわち巻取軸21にロール紙RPを巻き取る初期段階等において、巻取張力Tが不安定になる虞を低減させることができる。
【0042】
このようにして本発明によれば、より広いトルクレンジに安定的に対応可能な巻取装置20を低コストに実現することができる。
【0043】
また本発明に係る巻取装置20は、上記実施例のように、送りローラー27及びニップローラー28を設け、巻取軸21へのロール紙RPの送り速度を任意の速度に維持することが可能な構成とするのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、当該構成要素を具備することによって、任意の巻取速度Vを設定することが可能になる。さらに、例えば排出駆動ローラー16から巻取装置20へのロール紙RPの送出速度に変動等が生じても、それに左右されることなく、ロール紙RPの巻取速度Vを一定の速度に維持することが可能になる。それによって、ロール紙RPの巻取速度Vの変動等に起因して巻取張力Tが不安定になる虞を低減させることができる。
【0044】
また本発明に係る巻取装置20は、上記実施例のように、複数のトルクモーターへの電圧供給をトルクモーターごとにON/OFF可能なスイッチ回路102を設けるのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、当該構成要素を具備することによって、巻取軸21のトルク制御を簡略化することができる。例えば、複数のトルクモーターへ供給する電圧は共通電圧とし、スイッチ回路102の切り換えによって巻取軸21に作用するトルクを調整することが可能になる。
【0045】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0046】
例えば上記実施例に加えて、さらに制御装置100による巻取軸21の回転制御において、巻取軸21の回転の停止時には、緩やかに減速しながら巻取軸21の回転を停止させるのが好ましい。さらには、巻取軸21の回転の開始時には、緩やかに加速しながら巻取軸21の回転を開始するのが好ましい。これらは本発明に必須の構成要素ではないが、当該構成要素を具備することによって、巻取軸21の回転の停止時にロール紙RPに生ずる弛みを低減させることができる。また巻取軸21の回転開始時には、ロール紙RPの弛みが生じていたとしても、それに起因して急激なトルク変動が生じる虞を低減させることができる。したがって、トルクモーターから巻取軸21への駆動力伝達経路に一方向クラッチ等を介在させることなく、巻取軸21の回転の開始時にロール紙RPに過大な張力が作用する虞を低減させることができる。
尚、この巻取軸21の回転の開始時及び停止時における加速度(減速度)は、例えば加速度を増減調整しながら、最大巻取量のロール紙RPが巻き取られた状態の巻取軸21の回転開始及び回転停止を繰り返す実験を行うことにより適当な値を特定することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 インクジェットプリンター、20 巻取装置、21 巻取軸、27 送りローラー、28 ニップローラー、31 ロール紙センサー、32 巻径検出器、33 第1トルクモーター、34 第2トルクモーター、35 第3トルクモーター、41 巻取張力設定器、42 巻取速度設定器、100 制御装置、101 テンションコントローラー、102 スイッチ回路、T 巻取張力、RP ロール紙、V 巻取速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体を巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸を回転させる複数のトルクモーターと、
前記巻取軸に巻き取られた被搬送体の巻径を検出する巻径検出器と、
前記巻径検出器の出力信号に基づいて、所望の張力が作用する状態で被搬送体が前記巻取軸に巻き取られるように前記複数のトルクモーターを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、電圧を供給するトルクモーターを前記複数のトルクモーターから選択する手段と、選択したトルクモーターに供給する電圧を調整する手段と、を有する、ことを特徴とした巻取装置。
【請求項2】
被搬送体を所定の搬送方向へ搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の駆動力源となる搬送用モーターと、
前記搬送装置により搬送される被搬送体を前記搬送方向の下流側で巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸を回転させる複数のトルクモーターと、
前記巻取軸に巻き取られた被搬送体の巻径を検出する巻径検出器と、
前記巻径検出器の出力信号に基づいて、所望の張力が作用する状態で被搬送体が前記巻取軸に巻き取られるように前記搬送用モーター及び前記複数のトルクモーターを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、電圧を供給するトルクモーターを前記複数のトルクモーターから選択する手段と、選択したトルクモーターに供給する電圧を調整する手段と、を有する、ことを特徴とした巻取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の巻取装置において、前記制御装置は、所定の加速度で前記巻取軸の回転速度を加減速する手段を有する、ことを特徴とした巻取装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の巻取装置において、前記制御装置は、前記複数のトルクモーターへの電圧供給をトルクモーターごとにON/OFF可能なスイッチ回路を有する、ことを特徴とした巻取装置。
【請求項5】
被記録材に記録を実行する記録装置であって、記録実行後の被記録材を巻き取る請求項1〜4のいずれか1項に記載の巻取装置を備えている、ことを特徴とした記録装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−219222(P2011−219222A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90165(P2010−90165)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】