説明

巻取装置

【課題】シートの幅方向への位置ズレを補正し、得られる巻回素子の品質低下を抑制することのできる巻取装置を提供する。
【解決手段】巻取装置は、電極シート5を回転体へ供給する電極シート供給機構等を備えている。電極シート供給機構は、回転体により巻取られた所定長の電極シート5の終端部となる位置で当該電極シート5を切断する切断手段や、次回の巻取りを開始するにあたり電極シート5を回転体へ供給するシート供給手段等を備えている。シート供給手段は、電極シート5を把持するチャック48や、電極シート5の始端部5dの位置を補正する始端部補正機構等が設けられている。始端部補正機構は、電極シート5の幅方向の位置を検出する平行光レーザセンサ72の検出結果を基にチャック48の位置を調整し、正電極シート5の幅方向の位置ズレZを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二次電池等に内蔵される巻回素子を得るための巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池として用いられる電池素子は、正極活物質が塗布された正極シートと、負極活物質が塗布された負極シートとが、絶縁素材からなるセパレータシートを介して重ね合わされた状態で巻回されて製造される。
【0003】
当該電池素子を製造する巻取装置においては、ロール状に巻回された原反から供給される上記各シートがそれぞれ別個の搬送路に沿って搬送され、最終的には各搬送路に設けられた供給機構によって随時、巻回機構へと送り出される。そして、当該巻回機構によって電池素子1つ分の巻回がほぼ完了したところで、巻回機構の回転が一旦停止され、前記各供給機構の把持手段により各シートを把持した上で、各搬送路に設けられたカッタ機構により各シートが切断される。その後、各シートの巻き残りの部分が完全に巻き取られることで、電池素子の巻回が完了する。続いて、次回の巻回を開始するにあたり、各供給機構は、各シートを把持したまま移動し、切断された各シートの先端部を巻回機構へと送り出す。
【0004】
ところが、各シートを巻回するに際し、搬送中の各シートが蛇行(幅方向への位置ズレ)を起こしてしまうことが懸念される。シートが蛇行した状態で巻取られてしまうと、製品の品質低下を招く。
【0005】
これに対し、巻回中におけるシートの幅方向への位置ズレを補正すべく、蛇行補正機構等を備えることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−263089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いくら巻回中に蛇行補正を行ったとしても、シート自体にクセ(幅方向への反り等)がある場合には、巻回終了後にシートを切断した際、切断されて何らの保持もされていないシート先端部分においては、それまで付与されていた張力が抜けることで、幅方向への湾曲が生じることがある(図13参照)。
【0008】
このように、把持手段により把持された側のシート先端部分が幅方向へ湾曲している場合には、次回の巻回作業を開始するにあたり当該シート先端部分を巻回機構へ送り出す際、シート端縁部が巻回機構の巻芯に対しシート幅方向へ位置ズレした状態となるおそれがある(図17参照)。このようにシート端縁部が巻芯に対し位置ズレを起こしたまま、巻回作業が行われた場合には、当該シート端縁部の端がはみ出す等、得られる巻回素子の品質低下が懸念される。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シートの幅方向への位置ズレを補正し、得られる巻回素子の品質低下を抑制することのできる巻取装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.ロール状の原反から繰り出され、連続的に搬送される帯状のシートを所定の巻回手段により所定長ごとに巻取る巻取装置であって、
前記巻回手段により巻取られた所定長のシートの終端部と、当該巻回手段により次回巻取られる所定長のシートの始端部との区切りとなる位置において、前記シートを切断する切断手段と、
少なくとも前記切断手段による前記シートの切断に際し当該切断手段よりも上流位置において当該シートを把持可能な把持部を有すると共に、次回の巻取りを開始するにあたり、少なくともシート搬送方向に沿って前記巻回手段に向け移動することにより、前記把持部により把持された前記シートの始端部を前記巻回手段が巻回開始可能な位置へ供給するシート供給手段と、
前記把持部により把持された前記シートの始端部の幅方向の位置を検出可能な始端部検出手段と、
前記シート供給手段による前記巻回手段に向けてのシート供給に際し、前記始端部検出手段の検出結果に基づいて、少なくとも前記把持部の位置を調整することにより、前記巻回手段に対する前記シートの始端部の幅方向への位置ズレを補正する始端部補正手段とを備えたことを特徴とする巻取装置。
【0012】
上記手段1によれば、始端部補正手段を備えることにより、シート切断後に、次回の巻始めとなるシートの始端部の幅方向の位置を検出し、その位置ズレを補正することができる。これにより、仮にシート自体に幅方向への反り等がある場合であっても、巻回手段に対し適正な位置へ当該シートの始端部を供給することができる。結果として、得られる巻回素子の品質の向上を図ることができる。
【0013】
手段2.前記シートは、所定の活物質が塗布された電極シートであることを特徴とする手段1に記載の巻取装置。
【0014】
所定の金属シートに活物質を塗布して製造された電極シートには残留応力が残りやすく、製造後(乾燥後)に反り等が発生しやすい。特にリチウムイオン電池素子等の製造において近年多く用いられる連続塗工形態の電極シート原反においては、一般にシート幅方向における所定部分が活物質塗工部分となり、残りの部分が未塗工部分となるため、シート幅方向への反り等が比較的発生しやすい。従って、上記手段2のような構成下において、手段1の作用効果がより奏効することとなる。
【0015】
手段3.少なくとも前記始端部検出手段が前記シートの始端部の幅方向の位置を検出するに際し、当該シートの始端部を支持する支持手段を備えたことを特徴とする手段1又は2に記載の巻取装置。
【0016】
剛性に乏しいシートの端部が自由になった状態では、当該端部がシート厚み方向へ垂れ下がるおそれがある。このように切断後のシートの始端部が何らの支持もされていない不安定な状態で、始端部検出手段による検出を行った場合には、正確な検出結果が得られないおそれがある。これに対し、本手段3によれば、このような不具合の発生を抑制し、始端部検出手段による検出精度を高めることができる。
【0017】
手段4.前記始端部検出手段は、前記シートの始端部よりも上流側に位置する始端部近傍の幅方向の位置を検出することに基づき、前記始端部の幅方向の位置を検出することを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の巻取装置。
【0018】
始端部にてピンポイントで検出を行う場合には、シートの停止位置の誤差やシートの反りの程度等により、始端部検出手段が当該始端部を認識できないことも考えられるため、上記手段4の構成とすることにより、より確実に始端部の位置検出を行うことができる。
【0019】
手段5.前記巻回手段による前記シートの巻取り中において、当該シートの幅方向への位置ズレを補正する蛇行補正手段を備えたことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の巻取装置。
【0020】
幅方向へ湾曲等したシートの始端部の位置を巻回手段に合せて動かした場合、始端部に続くシートの途中部分が位置ズレした状態で巻回手段に巻き取られるおそれがあるが、上記手段5の蛇行補正手段を備えることにより、このような不具合の発生を抑制し、得られる巻回素子のさらなる品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態における電池素子の構成を示すための断面模式図である。
【図2】巻取装置を示す正面模式図である。
【図3】回転体等を示す斜視図である。
【図4】電極シート供給機構の概略構成を示す模式図である。
【図5】補正部を示す側面図である。
【図6】電極シートの供給に際しての手順を説明する要部模式図である。
【図7】電極シートの供給に際しての手順を説明する要部模式図である。
【図8】電極シート等の巻取り過程を説明する要部模式図である。
【図9】電極シート等の巻取り過程を説明する要部模式図である。
【図10】電極シート等の切断過程を説明する要部模式図である。
【図11】巻回中の電極シートの状態を示す要部模式図である。
【図12】巻回終了後に電極シートを把持した状態を示す要部模式図である。
【図13】電極シートを切断した状態を示す要部模式図である。
【図14】電極シートの始端部の位置ズレを検出した状態を示す要部模式図である。
【図15】電極シートの始端部の位置ズレを補正した状態を示す要部模式図である。
【図16】電極シートを回転体へ接近させた状態を示す要部模式図である。
【図17】始端補正を行わず電極シートを回転体へ接近させた状態を示す要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0023】
まず、本実施形態の巻取装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。図1に示すように、リチウムイオン電池素子(以下、「電池素子」と称す)1は、筒状の巻芯コア2に対して、2枚のセパレータシート3,4と正電極シート5と負電極シート6とによって構成される帯状体7が巻回されることで構成されている。尚、図1においては、説明の便宜上、セパレータシート3,4、正電極シート5、及び、負電極シート6の相互の間隔をあけて示している箇所がある。
【0024】
本実施形態において、巻芯コア2は、十分な剛性を有する材料(例えば、アルミニウム等の金属素材やポリプロピレン(PP)等の樹脂素材)により形成されている。また、当該巻芯コア2は、断面非円形状(本実施形態では、断面正方形状)の挿通孔8を有している(図3等参照)。
【0025】
セパレータシート3,4は、巻芯コア2の長手方向に沿った長さと同一の幅を有するものであり、異なる電極シート5,6同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく絶縁体、特に本実施形態ではPPにより構成されている。
【0026】
正電極シート5及び負電極シート6もまた、セパレータシート3,4と同様、巻芯コア2の長手方向に沿った長さとほぼ同一の幅を有するものである。本実施形態における正電極シート5及び負電極シート6は金属製の薄板よりなり、その表裏両面にはその長手方向に沿って活物質が連続塗工されている。これにより、電極シート5,6には、その幅方向に活物質塗工部Maと活物質未塗工部Mbとが形成された状態となっている(図11参照)。そして、当該活物質を介して、正電極シート5及び負電極シート6間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート5側から負電極シート6側へイオンが移動し、反対に、放電時には、負電極シート6側から正電極シート5側へとイオンが移動する。また、正電極シート5の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート6の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
【0027】
リチウムイオン電池を得るに際しては、前記電池素子1が金属製で筒状をなす電池容器(図示せず)内に配設されるとともに、前記正極リード及び負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品を前記電気容器の両端開口に設けることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0028】
次に、前記電池素子1を製造するための巻取装置11について説明する。図2に示すように、巻取装置11は、回転可能に設けられたターレット12を備えている。該ターレット12は、2枚の円盤状のテーブル14,15が相対向するようにして構成されており、両テーブル14,15間に跨って、回転体20が、テーブル14,15の中心を対称中心として2つ設けられている。尚、両テーブル14,15(ターレット12)は時計回りに回転可能に構成されているとともに、両テーブル14,15が同期回転するように設定されている。これにより、各回転体20が着脱ポジションP1及び巻取ポジションP2間を移動することができるようになっている。尚、両テーブル14,15は、180°ずつ反転可能となっていてもよい。
【0029】
図3にしたがって巻回手段としての回転体20の一例について説明すると、回転体20は、軸線C方向に延び、軸線C方向一端側のテーブル14から他端側のテーブル15に向けて突出する回転軸としての巻芯21と、前記軸線C方向に延び、軸線C方向他端側のテーブル15から一端側のテーブル14に向けて突出する巻芯受け31とから構成されている。
【0030】
前記巻芯21は、全体として棒状をなしており、軸線C方向他端側に延びる基部22と、当該基部22から軸線C方向他端側に延びる装着部23と、前記基部22及び装着部23間に形成されたテーパ段差部24とから構成されている。また、基部22、装着部23、及び、テーパ段差部24の中心軸はそれぞれ前記軸線Cと一致している。
【0031】
前記基部22は、円柱状をなし、図示しない駆動手段によって、前記テーブル14に対し軸線C方向に沿って相対移動可能(出没可能)に構成されている。これにより、前記巻芯受け31に対して巻芯21が接離可能となっている。加えて、基部22は、図示しない回転駆動手段(例えば、モータ)によって、軸線Cを回転軸としてテーブル14に対して相対回転可能となっており、ひいては巻芯21全体が軸線Cを回転軸として相対回転可能となっている。すなわち、回転駆動手段は帯状体7を巻取る際の巻取動力として機能する。
【0032】
前記装着部23は、電池素子1の製造時において、前記巻芯コア2がその外周部分に装着されるものである。当該装着部23は、棒状をなすとともに、前記巻芯コア2の挿通孔8の断面形状に対応すべく断面非円形状(本実施形態では、断面正方形状)に形成されている。さらに、装着部23は、前記基部22よりも細化されており、また、装着部23の先端側面部には、軸線C方向へと延びる一対の先割れ部25が形成されている。加えて、当該先割れ部25の内周部分には、後述する受けピン33を嵌合可能な図示しない嵌合凹部が形成されている。
【0033】
一方、前記巻芯受け31は、円柱状をなす支持部32と、当該支持部32に一体形成され、軸線C方向一端側に向けて突出する受けピン33と、当該受けピン33の外周側に設けられ、先端筒状の受け部34とを備えている。尚、支持部32、受けピン33、及び、受け部34のそれぞれの中心軸は、前記軸線Cと一致している。
【0034】
前記支持部32は、前記テーブル15に対して軸線Cを回転軸として相対回転(本実施形態では、自由回転)可能、かつ、軸線C方向に相対移動不能に支持されている。
【0035】
前記受けピン33は、円柱状をなすとともに、その外周面の大部分が軸線Cと略平行となるように構成されている。当該受けピン33は、前記受け部34の内側に配設されており、また、その外径は、前記嵌合凹部の内径と同径或いは若干大径となるように構成されている。尚、受けピン33は、前記嵌合凹部への嵌合をより容易なものとすべく、その先端部分が先細り形状となっている。
【0036】
前記受け部34は、前記巻芯コア2の外径と略等しい外径を有しており、その先端面が前記巻芯コア2の一端面と当接可能な被当接面35となっている。また、受け部34と受けピン33との間の環状空間は、装着部23の先端部を収容可能な収容凹部36となっており、前記受けピン33が、前記嵌合凹部に嵌合された際には、装着部23の先端部が前記収容凹部36に収容されるようになっている。
【0037】
上記のように構成されている回転体20にあっては、後記する着脱装置13によって、装着部23に巻芯コア2が取付けられる。そして、基部22を軸線C方向に沿って他端側(テーブル15側)へと相対移動させることで、受けピン33が前記嵌合凹部に嵌合されるとともに、受け部34の収容凹部36に対して装着部23の先端部が挿入される。このとき、装着部23の先端部が受けピン33によって外周側へ広げられることとなり、ひいては巻芯コア2の他端部が前記装着部23によって内周側から保持されることとなる。併せて、巻芯コア2の一端部が、前記テーパ段差部24に当接・保持されることとなる。さらに、巻芯コア2の他端の当接面が、受け部34の被当接面35に当接する。このようにして巻芯コア2が、回転体20に装着される。
【0038】
説明を図2の巻取装置11に戻す。前記2つの回転体20が、前記ターレット12の回動により、着脱ポジションP1(図の右側位置)と、巻取ポジションP2(図の左側位置)との間を移動可能である点については上述したが、本実施形態では、着脱ポジションP1に対応して、後述する巻芯コア2の取付及び電池素子1の取外を行うための着脱装置13が設けられている。
【0039】
また、巻取ポジションP2は、前記巻芯コア2に対し帯状体7を巻回するポジションであって、当該巻取ポジションP2に対応して、帯状体7を供給するための帯状体供給機構が設けられている。より具体的には、帯状体供給機構は、2枚のセパレータシート3,4をそれぞれ巻取ポジションP2に位置する回転体20の方へ供給するセパレータ供給機構と、正電極シート5を回転体20の方へ供給する正電極シート供給機構と、負電極シート6を回転体20の方へ供給する負電極シート供給機構とを備えている(図2においてはいずれも図示を省略する)。いずれの供給機構も、ロール状に巻回された原反から帯状体7(セパレータシート3,4や電極シート5,6)を引き出して、回転体20の方へ供給することができるよう構成されているが、ここでは、正電極シート供給機構及び負電極シート供給機構の構成に特徴があるので、次には、正電極シート供給機構を代表例として、図4を参照しつつ、詳細を説明することとする。
【0040】
正電極シート供給機構の最上流側においては、正電極シート5がロール状に巻回された原反40が、支持手段としての支持軸41にて自由回転可能に支持されている。
【0041】
支持軸41から回転体20にかけての正電極シート5の供給経路の途中には、張力付与手段42が設けられている。当該張力付与手段42は、一対のローラ43,44と、両ローラ43,44間に設けられた段差ローラ45とを具備している。
【0042】
また、正電極シート5の供給経路の途中において、前記張力付与手段42の下流側(回転体20側)には、電極シート供給手段47が設けられている。電極シート供給手段47は、把持部としての上下一対のチャック48と、当該チャック48の開閉動作を行う図示しない開閉用アクチュエータ(例えばモータやシリンダ)とを備えている。
【0043】
電極シート供給手段47は、前記正電極シート5の供給経路に沿って移動可能に構成されている。より詳しくは、電極シート供給手段47は、図示しないアクチュエータ(例えばモータ)により、前記回転体20から相当距離離間した退避位置(図4参照)と、回転体20に最も接近した最接近位置(図7参照)との間を移動可能に構成されている。前記最接近位置は、チャック48により把持された正電極シート5の先端側を、回転体20の回転に基づき巻取開始可能な程度に十分に近い位置である。
【0044】
本実施形態における電極シート供給手段47は、蛇行補正手段としての蛇行補正機構51を具備している。詳しくは、蛇行補正機構51は、正電極シート5の幅方向の位置を検出するエッジセンサ52と、エッジセンサ52の検出結果を基に正電極シート5の幅方向の位置ズレを補正する補正部53と、前記補正部53を動作させるアクチュエータ(図示せず)とを備えている。
【0045】
本実施形態では、図5に示すように、補正部53は、上下一対のローラ54,55により構成されるとともに、前記アクチュエータによって、下側のローラ54の下部中央のピボットセンターαを回動中心として同図矢印方向に回動可能となっている。これにより、正電極シート5の位置ズレ(蛇行)が補正されるようになっている。
【0046】
さらに、本実施形態における電極シート供給手段47は、始端部補正手段としての始端部補正機構71を具備している。詳しくは、始端部補正機構71は、始端部検出手段としての平行光レーザセンサ72と、当該平行光レーザセンサ72の検出結果を基に上記チャック48の位置補正動作を行う補正用アクチュエータ(例えばモータやシリンダ)73と、チャック48により把持された正電極シート5の先端側を支持可能な支持手段としての支持機構74とを備えている。
【0047】
平行光レーザセンサ72は、正電極シート5の始端部5dよりもやや上流側に位置する始端部5d近傍にて、正電極シート5の幅方向一方側の側縁部5aに対応して配置されている(図14参照)。平行光レーザセンサ72は、正電極シート5の側縁部5aに対し、例えば7mm幅のレーザー光を照射し、当該レーザー光がどれだけ遮蔽されたかを判別することにより、正電極シート5の幅方向の位置を検出する。
【0048】
補正用アクチュエータ73は、正電極シート5の幅方向に沿ってチャック48をスライド変位させることにより、正電極シート5の幅方向の位置ズレZを補正するように構成されている(図14,15参照)。
【0049】
支持機構74は、正電極シート5の先端側を下側から支える支持部74aと、当該支持部74aを上下動可能に構成されたエアシリンダ等の駆動手段とからなる(図4参照)。
【0050】
さらに、正電極シート5の供給経路の途中において、電極シート供給手段47の下流側(回転体20側)には、正電極シート5を切断する切断手段61が設けられている。切断手段61は、例えば正電極シート5の下側に位置する台座部62と、上側に位置する刃部63とを備えている。なお、切断手段61は、台座部62及び刃部63が正極シート5の搬送経路上のシート切断位置と搬送経路外の退避位置との間を移動可能に設けられており、電極シート供給手段47の供給動作時には当該電極シート供給手段47の移動を阻害しないようにシート切断位置から退避位置へ退避するように構成されている。
【0051】
以上が正電極シート供給機構の説明であるが、負電極シート6を回転体20の方へ供給する負電極シート供給機構についても上記同様の構成を具備している。また、セパレータ供給機構についても、始端補正や蛇行補正に係る各種機構など、基本的には上記と同様の構成を具備している。
【0052】
また、本実施形態では、前記巻取ポジションP2に対応して、図示しないセパレータ固着手段が設けられている。セパレータ固着手段は、巻回の初期段階において、例えば、熱溶着により、セパレータシート3,4の先端部分を巻芯コア2の表面に対し取着可能に構成されている。勿論、単に接着テープ等を用いてセパレータシート3,4の先端部分を巻芯コア2の表面に対し貼付ける構成であっても差し支えない。
【0053】
なお、上記回転体20や各シート供給機構など、巻取装置11内の各種機構は、図示しない制御装置により動作制御される構成となっている。
【0054】
次に、上述した巻取装置11を用いて、電池素子1を製造するための方法について、特に、電極シート(図6〜図16等では正電極シート5)の供給に着目しつつ説明する。
【0055】
便宜上、まず回転体20による巻回手順について説明する。
【0056】
まず、ターレット12を時計回りに半回転させることで、一方の回転体20を着脱ポジションP1へと移動させる。このとき、他方の回転体20は巻取ポジションP2に位置することとなる。例えば、それまで巻取ポジションP2に位置しており帯状体7の巻回がほぼ完了した回転体20が、着脱ポジションP1へと移動させられる。一方、それまで着脱ポジションP1に位置しており新たな巻芯コア2の装着された回転体20が巻取ポジションP2へと移動させられる。
【0057】
かかる巻取ポジションP2に位置する回転体20においては、巻芯コア2が装着されているのであるが、当初、当該巻芯コア2には何も巻き付けられていない。この状態において、先ず上述したセパレータ固着手段により、セパレータシート3,4の先端部分が巻芯コア2の表面に対し取着固定される。
【0058】
続いて、当該巻取ポジションP2においては、回転体20(巻芯21)の回転が行われる。そして、所定タイミングが到来したならば、正電極シート供給機構及び負電極シート供給機構の各電極シート供給手段47が作動させられ、各電極シート5,6が巻芯コア2の方に向けて供給される。
【0059】
より詳しくは、図6に示すように、電極シート供給手段47が回転体20の方へ移動させられることで、チャック48によって把持された各電極シート5,6の先端側が、例えば巻芯コア2の方に向けて供給される。
【0060】
これにより、図7に示すように、各電極シート5,6の先端側が、各セパレータシート3,4で挟み込まれることとなり、各電極シート5,6が、それぞれ各セパレータシート3,4を介して互いに絶縁状態で巻き取られ始めることとなる。尚、各電極シート5,6を巻芯コア2の方に向けて供給する際には、後述するように、始端部補正機構71による電極シート5,6の始端補正が併せて行われる。
【0061】
そして、各電極シート5,6の巻取りが開始されたならば、図8に示すように、チャック48が開かれる。これにより、各電極シート5,6は、前記張力付与手段42にて所定の張力を付与されながら、セパレータシート3,4とともに巻き取られることとなる(図11参照)。尚、前記チャック48の開放に伴い、図9に示すように、電極シート供給手段47は幾分上流側(回転体20から離間する側)へ移動させられる。これにより、巻取り量が増大した場合でも、巻回素子がチャック48等に接触し、巻取りが阻害されてしまうといった事態が回避される。勿論、巻取り量の増大に伴って徐々に上流側に移動するよう構成してもよい。但し、この巻取りの最中においては、電極シート供給手段47が、前記退避位置よりも回転体20に近い側に位置するよう配置される。
【0062】
帯状体7の巻回がほぼ完了したならば、回転体20の回転が一旦停止され、図10に示すようにチャック48が閉状態とされた上で(図12参照)、各電極シート5,6が前記切断手段61で切断される(図13参照)。これにより、次回巻取り用の電極シート5,6の先端部分がチャック48で把持されることとなる。
【0063】
その後、回転体20を幾らか回転させた後、セパレータシート3,4についても切断する。そして、切断された残りの帯状体7が完全に巻き取られ、外周側のセパレータシート3,4に関しテープ止めが施されることで巻取が完了する。
【0064】
その後、前記回転体20等を着脱ポジションP1へと移動させた上で、巻芯21を巻芯受け31から離間する方向へと相対移動させ、前記受けピン33を嵌合凹部から抜き外すことで、装着部23による巻芯コア2の保持力が解除されることとなる。その上で、帯状体7の巻回された巻芯コア2を、巻芯コア2ごと装着部23から取り外すことで電池素子1が得られる。
【0065】
このような手順を繰り返し行うことにより、電子素子1が順次製造されていくこととなる。
【0066】
ここで、電池素子1の巻回中に各シート供給機構の蛇行補正機構51にて行われる蛇行補正の手順について正電極シート5の場合を例に説明する。
【0067】
制御装置は、電池素子1の巻回中、随時、エッジセンサ52により正電極シート5の側縁部5aの位置を検出し、当該検出結果を基に補正部53の駆動量(駆動角度)を算出する。そして、当該演算結果に基づいた所定角度分、補正部53を傾けることにより、基準位置Sに対する正電極シート5の位置ズレ(蛇行)を補正する(図11参照)。
【0068】
次に、巻回終了後、次回の巻回作業を開始するにあたり、各シート供給機構の始端部補正機構71にて行われる始端補正の手順について正電極シート5の場合を例に説明する。
【0069】
上述したように、帯状体7の巻回終了後は、図12に示すように、チャック48が閉状態とされる。そして、前記切断手段61により、図13に示すように、回転体20により巻取られた所定長の正電極シート5の終端部5cと、当該回転体20により次回巻取られる所定長の正電極シート5の始端部5dとの区切りとなる位置Kにおいて、正電極シート5が切断される。
【0070】
続いて、図14に示すように、平行光レーザセンサ72により正電極シート5の始端部5dの幅方向の位置を検出する。より具体的には、正電極シート5の始端部5dよりもやや上流側に位置する始端部5d近傍における当該正電極シート5の側縁部5aの位置を検出する。この際、支持機構74は、支持部74aを上昇させ、正電極シート5の先端側を下側から支持する(図4参照)。
【0071】
そして、図15に示すように、平行光レーザセンサ72の検出結果に基づいて、チャック48の位置を調整することにより、回転体20の巻芯21(巻芯コア2)に対する正電極シート5の始端部5dの幅方向への位置ズレZを補正する。
【0072】
その後、図16に示すように、電極シート供給手段47が回転体20の方へ移動する。これにより、チャック48によって把持された正電極シート5が適正に巻芯コア2の方に向けて供給され、次回の巻取りが開始される。
【0073】
尚、仮に図17に示すように、チャック48により把持された正電極シート5の先端側が幅方向へ湾曲した状態のまま、補正することなく、当該正電極シート5を回転体20へ送り出してしまうと、正電極シート5の始端部5dが回転体20の巻芯21(巻芯コア2)に対し幅方向へ位置ズレZを起こしたまま、巻回作業が開始され、得られる電池素子1の品質が低下するおそれがある。
【0074】
これに対し、本実施形態では、上述したように始端部補正機構71を備えることにより、正電極シート5の切断後に、次回の巻始めとなる正電極シート5の始端部5dの幅方向の位置を検出し、その位置ズレZを補正することができる。これにより、仮に正電極シート5自体に幅方向への反り等がある場合であっても、回転体20の巻芯21(巻芯コア2)に対し適正な位置へ当該正電極シート5の始端部5dを供給することができる。結果として、得られる電池素子1の品質の向上を図ることができる。
【0075】
特に所定の金属シートに活物質を塗布して製造された電極シート5,6には残留応力が残りやすく、製造後(乾燥後)に反り等が発生しやすいため、電極シート5,6に対しては上記作用効果がより奏効することとなる。
【0076】
また、本実施形態では、正電極シート5の始端部5dの幅方向の位置を検出するに際し、当該正電極シート5の先端側を支持機構74が支持する構成となっている。これにより、正電極シート5の先端側の垂れ下がりを防止し、位置検出精度を高めることができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、正電極シート5の始端部5dよりもやや上流側に位置する始端部5d近傍における当該正電極シート5の側縁部5aの位置を検出することにより、正電極シート5の始端部5dの幅方向の位置ズレZを検出している。このため、正電極シート5の停止位置の誤差や、正電極シート5の反りの程度等により、平行光レーザセンサ72が正電極シート5の始端部5dの位置ズレZを検出できない等といった不具合の発生を抑制することができる。
【0078】
加えて、本実施形態では、正電極シート5等の巻取り中において、当該正電極シート5等の幅方向への位置ズレを補正する蛇行補正機構51を備えている。これにより、巻取り中における正電極シート5等の蛇行を補正することはもとより、正電極シート5の始端部5dの位置を回転体20に合せて動かした場合においても、当該始端部5dに続く正電極シート5の途中部分が位置ズレした状態で回転体20に巻き取られないようにすることができる。
【0079】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0080】
(a)上記実施形態では、巻取装置11によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、巻取装置11によって製造される巻回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの巻回素子等を製造することとしてもよい。
【0081】
(b)上記実施形態では、電池素子1が、巻芯コア2を具備する場合について具体化されているが、当該巻芯コア2を有しないタイプの電池素子を得る場合について具体化することとしてもよい。
【0082】
(c)上記実施形態では、始端補正や蛇行補正を実現する各種機構が、正電極シート供給機構、負電極シート供給機構及びセパレータシート供給機構の全てに設けられた構成となっているが、これに限らず、これらのシート供給機構のうち少なくとも1つに設けられた構成としてもよい。
【0083】
(d)上記実施形態では、電極シート供給手段47に、蛇行補正機構51を設けているが、これに限らず、電極シート供給手段47と、蛇行補正機構51とを別体で設けた構成としてもよし、蛇行補正機構51を省略した構成としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、蛇行補正機構51として、上下一対のローラ54,55からなる補正部53を傾動させることにより、正電極シート5等の蛇行補正を行う構成を採用しているが、他の構成であっても何ら差し支えない。例えば正電極シート5等の幅方向に移動可能な1つ或いは複数のローラで蛇行補正を行う構成を採用してもよい。
【0085】
(e)上記実施形態では、電極シート供給手段47に、始端部検出手段としての平行光レーザセンサ72を設けているが、平行光レーザセンサ72を電極シート供給手段47から独立して配置した構成としてもよい。
【0086】
また、始端部検出手段として、平行光レーザセンサ72とは異なる他の検出手段を採用してもよい。
【0087】
(f)上記実施形態では、平行光レーザセンサ72が、正電極シート5の始端部5dよりもやや上流側に位置する始端部5d近傍にて、正電極シート5の幅方向一方側の側縁部5aに対応して配置されている。これに限らず、例えば平行光レーザセンサ72を、正電極シート5の幅方向両側の側縁部5aに対応して2箇所に配置する構成としてもよい。正電極シート5の幅方向両側に設けることにより、正電極シート5の幅のばらつきをも検出可能となる。また、平行光レーザセンサ72を、始端部5d近傍ではなく、正電極シート5の始端部5dに合せて配置した構成としてもよい。
【0088】
(g)上記実施形態では、正電極シート5の幅方向に沿ってチャック48をスライド変位させることにより、正電極シート5の幅方向の位置ズレZを補正する構成となっている。これに限らず、例えば所定点を中心にチャック48を回動することにより、正電極シート5の始端部5dの位置ズレZを補正する構成としてもよい。
【0089】
また、チャック48だけでなく、電極シート供給手段47全体を動かして、正電極シート5の始端部5dの位置ズレZを補正する構成としてもよい。
【0090】
(h)上記実施形態では、正電極シート5の始端部5dの幅方向の位置ズレZを補正した後、当該正電極シート5の先端側を巻芯コア2の方に向けて供給する構成となっている。これに限らず、電極シート供給手段47(チャック48)を回転体20の方へ移動しつつ、正電極シート5の始端部5dの位置ズレZを補正する構成としてもよい。
【0091】
(i)上記実施形態では、正電極シート5の始端部5dの幅方向の位置を検出するに際し、当該正電極シート5の先端側を支持する支持機構74を備えている。支持機構74の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、正電極シート5に対し斜め下方から支持部74aが当接するような構成としてもよい。また、支持機構74を省略した構成としてもよい。
【0092】
(j)電極シート5,6は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、長手方向に沿って所定間隔で活物質が間欠塗工された電極シート5,6の原反を採用してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…電池素子、2…巻芯コア、3,4…セパレータシート、5…正電極シート、5d…始端部、5a…側縁部、6…負電極シート、7…帯状体、11…巻取装置、20…回転体、47…電極シート供給手段、48…チャック、51…蛇行補正機構、61…切断手段、71…始端部補正機構、72…平行光レーザセンサ、73…補正用アクチュエータ、74…支持機構、Z…位置ズレ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の原反から繰り出され、連続的に搬送される帯状のシートを所定の巻回手段により所定長ごとに巻取る巻取装置であって、
前記巻回手段により巻取られた所定長のシートの終端部と、当該巻回手段により次回巻取られる所定長のシートの始端部との区切りとなる位置において、前記シートを切断する切断手段と、
少なくとも前記切断手段による前記シートの切断に際し当該切断手段よりも上流位置において当該シートを把持可能な把持部を有すると共に、次回の巻取りを開始するにあたり、少なくともシート搬送方向に沿って前記巻回手段に向け移動することにより、前記把持部により把持された前記シートの始端部を前記巻回手段が巻回開始可能な位置へ供給するシート供給手段と、
前記把持部により把持された前記シートの始端部の幅方向の位置を検出可能な始端部検出手段と、
前記シート供給手段による前記巻回手段に向けてのシート供給に際し、前記始端部検出手段の検出結果に基づいて、少なくとも前記把持部の位置を調整することにより、前記巻回手段に対する前記シートの始端部の幅方向への位置ズレを補正する始端部補正手段とを備えたことを特徴とする巻取装置。
【請求項2】
前記シートは、所定の活物質が塗布された電極シートであることを特徴とする請求項1に記載の巻取装置。
【請求項3】
少なくとも前記始端部検出手段が前記シートの始端部の幅方向の位置を検出するに際し、当該シートの始端部を支持する支持手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記始端部検出手段は、前記シートの始端部よりも上流側に位置する始端部近傍の幅方向の位置を検出することに基づき、前記始端部の幅方向の位置を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項5】
前記巻回手段による前記シートの巻取り中において、当該シートの幅方向への位置ズレを補正する蛇行補正手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−188278(P2012−188278A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55083(P2011−55083)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】