巻線構造及び磁石式発電機
【課題】同一の電機子巻線の構造から選択的に出力特性を変更することができる巻線構造を備えた磁石式発電機を得る。
【解決手段】電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、前記電機子巻線は、三相電機子巻線を複数回路有して構成し、前記三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を2つ以上に分割し夫々のコイル群に接続端子(T1〜7,T9,T11,T13〜22,T24, T26,T28〜30)を設けるとともに、各相巻線における一つのコイル群に中間接続端子(T8,T10,T12,T23,T25,T27)を設け、前記各相巻線同士について前記接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続して結線することで、接続の仕方(ハーネス30の選択)で出力電圧特性を調整可能とする。
【解決手段】電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、前記電機子巻線は、三相電機子巻線を複数回路有して構成し、前記三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を2つ以上に分割し夫々のコイル群に接続端子(T1〜7,T9,T11,T13〜22,T24, T26,T28〜30)を設けるとともに、各相巻線における一つのコイル群に中間接続端子(T8,T10,T12,T23,T25,T27)を設け、前記各相巻線同士について前記接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続して結線することで、接続の仕方(ハーネス30の選択)で出力電圧特性を調整可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機や電動機の電機子巻線、界磁巻線等における巻線構造に関し、特に、スロット数に対応する複数の突極が配されたコアの前記各突極に巻回された巻線について接続する巻線構造、及びこの巻線構造を備えた磁石式発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機の電機子巻線の巻線構造においては、スロット数に対応する複数の突極が配されたコアに対して、各突極に順次巻線を巻回し、三相の場合は三つのコイル群を形成することが行われていた。
例えば、界磁に永久磁石を使用した磁石式発電機(三相同期発電機)の場合、スロット数や巻線数ターンの設計値、磁石寸法等により出力電圧電流が決められるが、従来、設定された所望の電圧仕様に基づいたスロット数や巻線数ターンを有する電機子コアが製造されることが行われていた。
【0003】
したがって、従来の構造であると、出力電圧電流の仕様を変更する場合には、界磁マグネット仕様、スロット数、巻線数等を設計変更し、それに応じた電機子コアを製造することが必要であった。
すなわち、磁石式発電機においては、必要とする出力電圧特性により、それぞれ対応した電機子コア仕様と同じく界磁マグネット仕様を用意しなければならなかった。これは、電機子巻線と界磁側マグネットの仕様が一種類で可変することができないからである。そのため、磁石式発電機における種々の出力電圧仕様に対して、磁石発電機の巻線及びマグネット配置の仕様が多種となり、多種の在庫及び金型・製造設備治具等を用意しなければならず、量産効果を出しにくいという現象が生じていた。
【0004】
また、三相電機子巻線について、各電機子巻線に中間タップを設ける構造が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平5−328647号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の三相電機子巻線は、電機子巻線で電源に接続されている巻線数ターンには、ターン数比率の分担以上に電圧が印加され、キャリヤ周波数が高くパルス幅変調のインバータで回転電機が運転された場合は、回転電機の端子には立ち上り時間の速くピーク値の高い電圧が印加されることがあり、回転電機に使用している電機子巻線の寿命が短くなるため、電源に接続されている電機子巻線の寿命が一部に偏ることがないよう、使用時間毎に端子を切り替えて、電機子巻線の寿命を平均的にすると共に片寄りをなくして寿命を延ばすものである。すなわち、特許文献1に記載された中間タップを設ける構造は、電機子巻線に中間タップを設けることにより、選択的な出力特性の変更を目的としたものでない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、電機子巻線に接続端子を設ける構造により、同一の電機子巻線の構造により選択的に出力特性を変更することができる巻線構造及びこの巻線構造を有する磁石式発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の請求項1の巻線構造は、スロット数に対応する複数の突極が配されたコアの前記各突極に巻回された巻線に対して、スロット毎に前記巻線両端に接続端子を設け、所望とする出力特性に合わせて、外部接続電線により前記巻線の前記接続端子同士を選択接続して成ることを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2は、電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、前記電機子巻線のスロット毎にその両端に設けた接続端子と、前記電機子巻線の前記接続端子を、所望とする出力電圧電流に合わせて選択接続する外部接続電線とを具備することを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項3は、電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、前記電機子巻線は、三相電機子巻線を複数回路有して構成し、前記三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を2つ以上に分割し夫々のコイル群に接続端子を設けるとともに、各相巻線における一つ又は複数のコイル群に中間接続端子を設け、前記各相巻線同士について前記接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続して結線して成ることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4は、請求項2の磁石式発電機において、前記接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成することを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項5は、請求項3の磁石式発電機において、前記接続端子及び中間接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成することを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項6は、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の磁石式発電機において、前記外部接続電線は、前記接続端子を選択的に接続することで、各電機子巻線を直並列に接続可能として成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の巻線構造によれば、巻線に対して複数の接続端子を設けることで、接続端子に対する外部接続電線の接続の仕方を変えることで、巻線についての選択的な接続が可能となり、発電機や電動機の電機子巻線や界磁巻線において、複数通りの出力特性を得ることができる。
【0014】
本発明の磁石式発電機によれば、外部接続電線の接続の仕方を変えることで、複数通りの出力電圧電流特性を有する構造とすることができる。
したがって、固定子電機子巻線を共通にしたまま、出力電圧仕様を複数通りに容易に切り換えることができるため、電機子巻線を備えたステータ構造体を量産し易くなり、結果として発電機の製造コストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
本発明は、発電機や電動機の巻線構造に関するものであるが、以下、磁石式発電機の電機子巻線構造に適用した例について、図1乃至図12を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るアウタロータ型の磁石式発電機のステータ構造体1の正面説明図である。図2及び図3は、磁石式発電機のステータ構造体1の側面説明図及び背面説明図である。また、図4及び図5は、ステータコアの展開図及び等価回路図である。
【0017】
本発明の巻線構造を備えたステータ構造体1は、4つのボルト貫通孔11を貫通するボルトによって、例えば発電機の駆動源であるエンジンのクランクケース等に取り付けられる。ステータ構造体1の外周側には、エンジンの出力軸端部に連結されて回転する有底円筒状のロータヨーク(図示せず)が配置されている。ロータヨークの内側面には界磁用の複数の永久磁石が取り付けられており、このロータヨーク及びステータ構造体1によってアウタロータ型の磁石式発電機が構成される。
【0018】
ステータ構造体1は、スロット数に対応する複数の突極が周囲に配された環状のステータコア10と、周方向に4分割されて全体として環状体を成すカプラ20(20A〜20D)を備えて構成されている。
ステータコア10は、環状の基部と、この基部から放射状に突出形成された30個の突極とから構成される。ステータコア10は珪素鋼の薄板からコアプレートを打ち抜き成型し、これを複数重ねることで構成されている。
図1は、カプラ20をステータコア10に取り付け、このステータコア10の突極に合成樹脂等の絶縁材料からなるボビンを介してステータ巻線5を巻回し、更に、各突極を巻回したステータ巻線5の端部(引き出し口)をカプラ20の所定位置に装着された導電性の各接続端子25に接続することでターミナルT1〜T30が構成された状態のステータ構造体1を示している。
接続端子25は、各ターミナルT1〜T30に装着可能な形状の導電性の金属片(専用端子)で構成され、ステータ巻線5の端部を接続固定してステータ巻線5に対するタップとしての接続端子若しくは中間接続端子が形成できるようになっている。
【0019】
ステータ構造体1には、図5の等価回路図に示すように、ステータコア10の30個の突極にそれぞれ巻かれた主巻線における5個の突極に対応する巻線を1組とした三相(U相,V相,W相)の2回路が構成されている。すなわち、突極U1〜U5,V1〜V5,W1〜W5をそれぞれ巻回するU相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5cでU相,V相,W相を有する1つ目の三相回路が形成され、突極U6〜U10,V6〜V10,W6〜W10をそれぞれ巻回するU相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fでU相,V相,W相を有する2つ目の三相回路が形成されている。そして、U相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5c,U相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fの所望位置には、接続端子及び中間接続端子としてのターミナルT1〜T30が形成されている。接続端子及び中間接続端子の形成位置については後述する。
なお、主巻線の三相出力は、インバータ回路(図示せず)で所定周波数の交流に変換される等、目的に合わせた変換処理を経て電極負荷に提供される。
【0020】
次に、U相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5c,U相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fにおける接続端子及び中間接続端子としてのターミナルT1〜T30の位置について、図1、図4及び図5を参照して説明する。
突極U1を巻回する巻線51aの両端に接続端子となるターミナルT1,T2を形成する。突極U2を巻始めとし突極U5で巻き終わりとするように巻回する巻線52aの両端に接続端子となるにターミナルT7(突極U2側),T13(突極U5側)を形成し、突極U2の反ターミナルT7形成側に中間接続端子としてのターミナルT8を形成する。
突極V1を巻回する巻線51bの両端に接続端子となるターミナルT3,T4を形成する。突極V2を巻始めとし突極V5で巻き終わりとするように巻回する巻線52bの両端に接続端子となるにターミナルT9(突極V2側),T14(突極V5側)を形成し、突極V2の反ターミナルT9形成側に中間接続端子としてのターミナルT10を形成する。
突極W1を巻回する巻線51cの両端に接続端子となるターミナルT5,T6を形成する。突極W2を巻始めとし突極W5で巻き終わりとするように巻回する巻線52cの両端に接続端子となるにターミナルT11(突極W2側),T15(突極W5側)を形成し、突極W2の反ターミナルT11形成側に中間接続端子としてのターミナルT12を形成する。
【0021】
突極U6を巻回する巻線51dの両端に接続端子となるターミナルT16,T17を形成する。突極U7を巻始めとし突極U10で巻き終わりとするように巻回する巻線52dの両端に接続端子となるにターミナルT22(突極U7側),T28(突極U10側)を形成し、突極U7の反ターミナルT22形成側に中間接続端子としてのターミナルT23を形成する。
突極V6を巻回する巻線51eの両端に接続端子となるターミナルT18,T19を形成する。突極V7を巻始めとし突極V10で巻き終わりとするように巻回する巻線52eの両端に接続端子となるにターミナルT24(突極V7側),T29(突極V10側)を形成し、突極V7の反ターミナルT24形成側に中間接続端子としてのターミナルT25を形成する。
突極W6を巻回する巻線51fの両端に接続端子となるターミナルT20,T21を形成する。突極W7を巻始めとし突極W10で巻き終わりとするように巻回する巻線52fの両端に接続端子となるにターミナルT26(突極W7側),T30(突極W10側)を形成し、突極W7の反ターミナルT26形成側に中間接続端子としてのターミナルT27を形成する。
上述したように、U相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5c,U相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fに接続端子及び中間接続端子(ターミナルT1〜T30)を設けることにより、図1のステータ構造体1の等価回路図は図5のようになる。
【0022】
したがって、図5の等価回路において、各接続端子及び中間接続端子(ターミナルT1〜T30)に対して、外部接続電線にて電機子巻線の選択的組み合わせを換えるように接続すれば、出力端に複数種類の出力電圧を得ることができる。
【0023】
次に、外部接続電線による電機子巻線の第1の接続例について、図6及び図7により説明する。
図6におけるターミナルT1〜T30に対して、T13,T14,T15,T28,T29,T30を外部接続電線30Aで接続し、これらを中性点端子(N−2)に接続する一方、T1とT7、T2とT8,T16とT22、T17とT23を外部接続電線30Aによりそれぞれ接続し、T1,T7,T16,T22をU相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(R−1)に、T2,T8を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(R−2)に接続する。
そして、T3とT9、T4とT10,T18とT24、T19とT25を外部接続電線30Aによりそれぞれ接続し、T3,T9,T18,T24をV相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(W−1)に、T4,T10を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(W−2)に接続する。
また、T5とT11、T6とT12,T20とT26、T21とT27を外部接続電線30Aによりそれぞれ接続し、T5,T11,T20,T26をW相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(L−1)に、T6,T12を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(L−2)に接続する。
【0024】
その結果、外部接続電線30Aで電機子巻線間が接続されたステータ構造体1の等価回路図は、図7のように中性点を備えたスター結線の三相回路となり、2個のコイルが並列に接続された部分に3個のコイルを直列に接続して構成されるコイル群同士を並列に接続して各相の回路が構成される(第1の接続例)。
【0025】
次に、外部接続電線による電機子巻線の第2の接続例について、図8及び図9により説明する。
図8におけるターミナルT1〜T30に対して、T13,T14,T15,T28,T29,T30を外部接続電線30Bで接続し、これらを中性点端子(N−2)に接続する一方、T2とT7、T17とT22を外部接続電線30Bによりそれぞれ接続し、T1とT16をU相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(R−1)に、T8を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(R−2)に接続する。
そして、T4とT9、T19とT24を外部接続電線30Bによりそれぞれ接続し、T3,T18をV相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(W−1)に、T10を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(W−2)に接続する。
また、T6とT11、T21とT26を外部接続電線30Bによりそれぞれ接続し、T5,T20をW相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(L−1)に、T12を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(L−2)に接続する。
【0026】
その結果、外部接続電線30Bで電機子巻線間が接続されたステータ構造体1の等価回路図は、図9のように中性点を備えたスター結線の三相回路となり、2個のコイルが直列に接続された部分に更に3個のコイルを直列に接続して構成されるコイル群同士を並列に接続(5個のコイル同士を並列に接続)して各相の回路が構成される(第2の接続例)。
第2の接続例によれば、第1の接続例に比較して各相におけるU1,U2、U6,U7、V1,V2、V1,V6、W1,W6部分が並列から直列に置き換わっているので、出力電圧をその分だけ大きくすることができる。
【0027】
続いて、外部接続電線による電機子巻線の第3の接続例について、図10及び図11により説明する。
図10におけるターミナルT1〜T30に対して、T28,T29,T30を外部接続電線30Cで接続し、これらを中性点端子(N−2)に接続する一方、T2とT7、T13とT16、T17とT22を外部接続電線30Cによりそれぞれ接続し、T1をU相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(R−1)に、T23を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(R−2)に接続する。
そして、T4とT9、T14とT18,T19とT24を外部接続電線30Cによりそれぞれ接続し、T3をV相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(W−1)に、T25を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(W−2)に接続する。
また、T6とT11、T15とT20,T21とT26を外部接続電線30Cによりそれぞれ接続し、T5をW相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(L−1)に、T27を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(L−2)に接続する。
【0028】
その結果、外部接続電線30Cで電機子巻線間が接続されたステータ構造体1の等価回路図は、図11のように中性点を備えたスター結線の三相回路となり、10個のコイルが直列に接続して各相の回路が構成される(第3の接続例)。
第3の接続例によれば、各相において10個のコイルが直列に接続されるので、第2の接続例に比較して略倍程度の出力電圧を得ることができる。
【0029】
第1乃至第3の接続例における外部接続電線30A,30B,30Cは、図12に示すような予め所望の箇所が接続された配線束(外部接続電線30A,30B,30Cの3種類の配線回路にそれぞれ対応する配線束)であるハーネス30で構成される。ハーネス30は、電機子接続側に4本の分岐配線31が形成され、負荷接続側に2本の分岐配線32が形成されている。各分岐配線31端には、T28〜T30及びT1〜T4に接続する円弧の一部を構成する湾曲状のコネクタ33、T5〜T12に接続するコネクタ34、T13〜T19に接続するコネクタ35、T20〜T27に接続するコネクタ36がそれぞれ接続されている。また、各分岐配線32端には、上述した端子(R−1)(W−1)(L−1)に接続するためのターミナル端子37、及び、端子(R−2)(W−2)(L−2)(N−2)に接続するためのターミナル端子38がそれぞれ接続されている。
【0030】
上記構造により、ハーネス30のコネクタ33,34,35,36を図3のステータ構造体1のカプラ20(20A〜20D)に円弧状に設けられた各ターミナルT1〜T30に対応するように差し込むように接続し、ターミナル端子37,38を負荷側に接続すれば、所望の電機子巻線回路(配線回路が異なる外部接続電線30A,30B,30Cに対応する配線回路)を有する電機子巻線を得ることができる。
したがって、外部接続電線30A,30B,30Cに対応する配線回路を有するハーネス30を接続(配線回路が異なるハーネス30を選択)するだけで、ステータ構造体1における電機子巻線構造が同一であっても異なる電機子巻線回路を得ることができる。
【0031】
第1乃至第3の接続例の電機子巻線をそれぞれ有するインバータ式の磁石式発電機についての無負荷出力電圧特性を図13に示す。図13は、発電機において、回転数(2500rpm、3500rpm、3800rpm)に対する三相整流後の直流電圧を測定したグラフである。出力電圧は回転数に比例し、第3の接続例γ(システム出力電圧AC230V,50Hz用)、第2の接続例β(システム出力電圧AC120V,60Hz用)、第1の接続例α(システム出力電圧AC100V,50/60Hz用)の順に傾きが高い出力電圧の特性が得られる。
【0032】
上述した第1乃至第3の接続例で示したように、ターミナルT1〜T30に対する外部接続電線における接続の仕方(ハーネス30の選択)を変えることで、各コイル群(電機子巻線)を直並列に接続可能として複数通りの出力電圧特性を得ることができる。
したがって、固定子電機子巻線部分の構造を共通にしたまま、外部接続電線による接続で出力電圧仕様を複数通りに容易に切り換えることができるため、出力特性に応じた電機子巻線の製造が不要となる。その結果、ステータ構造体1における電機子巻線の製造工程において、他の電圧仕様に切り換えるための段取り替えが発生しないため、段取り替え工程が削減され、多品種管理のコストも削減できる効果がある。
【0033】
また、一つの電機子巻線仕様で全ての電圧タイプに対応できるため、造り溜めができる。したがって、原材料費が安くなっている時期を見計らい適時生産を計画して、造り溜めをすることにより電機子巻線の量産を可能とし、実質的な製造コストの削減が期待でできるという利点もある。
また、タップを設けることができる接続端子(専用端子)やカプラ構造であれば、その部分を除く電機子巻線を巻く部分を他の仕様にも使用できるので、他仕様が必要となった場合に接続端子とカプラの金型のみで他仕様の製造ができるので、最小の金型投資で済ませることが可能となる。
【0034】
上述した磁石式発電機の例では、図5に示したように、三相の電機子巻線を2回路有し、三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を1つのコイルと、4つのコイルとに分割している。夫々のコイル群に対しては、U相の場合、接続端子(T1,T2)(T7,T13)を設けるとともに、4つのコイル群側に中間接続端子T8を設けている。そして、各相巻線同士について接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続してスター結線の構造を構成している。
この構造に対して、コイル毎(電機子巻線のスロット毎)にその両端に接続端子を設けるようにしてもよい。この場合、コイル1個毎に外部接続電線により接続することが可能となるので、回路構成について多彩なバリエーションを得ることができ、それに応じて種々の出力特性が得られる。
【0035】
また、上記例では、界磁に永久磁石を使用した磁石式発電機について適用した例を説明したが、発電機や電動機の電機子巻線構造、電動機の界磁巻線等における巻線構造に適用することで、外部接続電線による接続の仕方を調整して出力特性を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る電機子巻線構造を備えたステータ構造体の正面説明図である。
【図2】ステータ構造体の側面説明図である。
【図3】ステータ構造体の背面説明図である。
【図4】ステータの展開図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電機子巻線構造の等価回路図である。
【図6】本発明の一実施形態において第1の接続例を適用した電機子巻線構造の接続状態を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態において第1の接続例を適用した電機子巻線構造の等価回路図である。
【図8】本発明の一実施形態において第2の接続例を適用した電機子巻線構造の接続状態を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態において第2の接続例を適用した電機子巻線構造の等価回路図である。
【図10】本発明の一実施形態において第3の接続例を適用した電機子巻線構造の接続状態を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施形態において第3の接続例を適用した電機子巻線構造の等価回路図である。
【図12】本発明の電機子巻線構造で使用するハーネスの外観説明図である。
【図13】第1乃至第3の接続例を適用した電機子巻線構造を有する磁石式発電機における回転数に対する三相整流後の出力電圧特性を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ステータ構造体、 5…ステータ巻線、 5a…U相巻線、 5b…V相巻線、 5c…W相巻線、 5d…U相巻線、 5e…V相巻線、 5f…W相巻線、 10…ステータコア、 20(20A〜20D)…カプラ、 25…接続端子(中間接続端子)、 30…ハーネス、 30A,30B,30C…外部接続電線、 33,34,35,36…コネクタ、 51a,52a,…巻線、 51b,52b…巻線、 51c,52c…巻線、 51d,52d…巻線、 51e,52e…巻線、 51f,52f…巻線、 T1〜T30…ターミナル(接続端子、中間接続端子)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機や電動機の電機子巻線、界磁巻線等における巻線構造に関し、特に、スロット数に対応する複数の突極が配されたコアの前記各突極に巻回された巻線について接続する巻線構造、及びこの巻線構造を備えた磁石式発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機の電機子巻線の巻線構造においては、スロット数に対応する複数の突極が配されたコアに対して、各突極に順次巻線を巻回し、三相の場合は三つのコイル群を形成することが行われていた。
例えば、界磁に永久磁石を使用した磁石式発電機(三相同期発電機)の場合、スロット数や巻線数ターンの設計値、磁石寸法等により出力電圧電流が決められるが、従来、設定された所望の電圧仕様に基づいたスロット数や巻線数ターンを有する電機子コアが製造されることが行われていた。
【0003】
したがって、従来の構造であると、出力電圧電流の仕様を変更する場合には、界磁マグネット仕様、スロット数、巻線数等を設計変更し、それに応じた電機子コアを製造することが必要であった。
すなわち、磁石式発電機においては、必要とする出力電圧特性により、それぞれ対応した電機子コア仕様と同じく界磁マグネット仕様を用意しなければならなかった。これは、電機子巻線と界磁側マグネットの仕様が一種類で可変することができないからである。そのため、磁石式発電機における種々の出力電圧仕様に対して、磁石発電機の巻線及びマグネット配置の仕様が多種となり、多種の在庫及び金型・製造設備治具等を用意しなければならず、量産効果を出しにくいという現象が生じていた。
【0004】
また、三相電機子巻線について、各電機子巻線に中間タップを設ける構造が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平5−328647号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の三相電機子巻線は、電機子巻線で電源に接続されている巻線数ターンには、ターン数比率の分担以上に電圧が印加され、キャリヤ周波数が高くパルス幅変調のインバータで回転電機が運転された場合は、回転電機の端子には立ち上り時間の速くピーク値の高い電圧が印加されることがあり、回転電機に使用している電機子巻線の寿命が短くなるため、電源に接続されている電機子巻線の寿命が一部に偏ることがないよう、使用時間毎に端子を切り替えて、電機子巻線の寿命を平均的にすると共に片寄りをなくして寿命を延ばすものである。すなわち、特許文献1に記載された中間タップを設ける構造は、電機子巻線に中間タップを設けることにより、選択的な出力特性の変更を目的としたものでない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、電機子巻線に接続端子を設ける構造により、同一の電機子巻線の構造により選択的に出力特性を変更することができる巻線構造及びこの巻線構造を有する磁石式発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の請求項1の巻線構造は、スロット数に対応する複数の突極が配されたコアの前記各突極に巻回された巻線に対して、スロット毎に前記巻線両端に接続端子を設け、所望とする出力特性に合わせて、外部接続電線により前記巻線の前記接続端子同士を選択接続して成ることを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2は、電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、前記電機子巻線のスロット毎にその両端に設けた接続端子と、前記電機子巻線の前記接続端子を、所望とする出力電圧電流に合わせて選択接続する外部接続電線とを具備することを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項3は、電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、前記電機子巻線は、三相電機子巻線を複数回路有して構成し、前記三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を2つ以上に分割し夫々のコイル群に接続端子を設けるとともに、各相巻線における一つ又は複数のコイル群に中間接続端子を設け、前記各相巻線同士について前記接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続して結線して成ることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4は、請求項2の磁石式発電機において、前記接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成することを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項5は、請求項3の磁石式発電機において、前記接続端子及び中間接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成することを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項6は、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の磁石式発電機において、前記外部接続電線は、前記接続端子を選択的に接続することで、各電機子巻線を直並列に接続可能として成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の巻線構造によれば、巻線に対して複数の接続端子を設けることで、接続端子に対する外部接続電線の接続の仕方を変えることで、巻線についての選択的な接続が可能となり、発電機や電動機の電機子巻線や界磁巻線において、複数通りの出力特性を得ることができる。
【0014】
本発明の磁石式発電機によれば、外部接続電線の接続の仕方を変えることで、複数通りの出力電圧電流特性を有する構造とすることができる。
したがって、固定子電機子巻線を共通にしたまま、出力電圧仕様を複数通りに容易に切り換えることができるため、電機子巻線を備えたステータ構造体を量産し易くなり、結果として発電機の製造コストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
本発明は、発電機や電動機の巻線構造に関するものであるが、以下、磁石式発電機の電機子巻線構造に適用した例について、図1乃至図12を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るアウタロータ型の磁石式発電機のステータ構造体1の正面説明図である。図2及び図3は、磁石式発電機のステータ構造体1の側面説明図及び背面説明図である。また、図4及び図5は、ステータコアの展開図及び等価回路図である。
【0017】
本発明の巻線構造を備えたステータ構造体1は、4つのボルト貫通孔11を貫通するボルトによって、例えば発電機の駆動源であるエンジンのクランクケース等に取り付けられる。ステータ構造体1の外周側には、エンジンの出力軸端部に連結されて回転する有底円筒状のロータヨーク(図示せず)が配置されている。ロータヨークの内側面には界磁用の複数の永久磁石が取り付けられており、このロータヨーク及びステータ構造体1によってアウタロータ型の磁石式発電機が構成される。
【0018】
ステータ構造体1は、スロット数に対応する複数の突極が周囲に配された環状のステータコア10と、周方向に4分割されて全体として環状体を成すカプラ20(20A〜20D)を備えて構成されている。
ステータコア10は、環状の基部と、この基部から放射状に突出形成された30個の突極とから構成される。ステータコア10は珪素鋼の薄板からコアプレートを打ち抜き成型し、これを複数重ねることで構成されている。
図1は、カプラ20をステータコア10に取り付け、このステータコア10の突極に合成樹脂等の絶縁材料からなるボビンを介してステータ巻線5を巻回し、更に、各突極を巻回したステータ巻線5の端部(引き出し口)をカプラ20の所定位置に装着された導電性の各接続端子25に接続することでターミナルT1〜T30が構成された状態のステータ構造体1を示している。
接続端子25は、各ターミナルT1〜T30に装着可能な形状の導電性の金属片(専用端子)で構成され、ステータ巻線5の端部を接続固定してステータ巻線5に対するタップとしての接続端子若しくは中間接続端子が形成できるようになっている。
【0019】
ステータ構造体1には、図5の等価回路図に示すように、ステータコア10の30個の突極にそれぞれ巻かれた主巻線における5個の突極に対応する巻線を1組とした三相(U相,V相,W相)の2回路が構成されている。すなわち、突極U1〜U5,V1〜V5,W1〜W5をそれぞれ巻回するU相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5cでU相,V相,W相を有する1つ目の三相回路が形成され、突極U6〜U10,V6〜V10,W6〜W10をそれぞれ巻回するU相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fでU相,V相,W相を有する2つ目の三相回路が形成されている。そして、U相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5c,U相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fの所望位置には、接続端子及び中間接続端子としてのターミナルT1〜T30が形成されている。接続端子及び中間接続端子の形成位置については後述する。
なお、主巻線の三相出力は、インバータ回路(図示せず)で所定周波数の交流に変換される等、目的に合わせた変換処理を経て電極負荷に提供される。
【0020】
次に、U相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5c,U相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fにおける接続端子及び中間接続端子としてのターミナルT1〜T30の位置について、図1、図4及び図5を参照して説明する。
突極U1を巻回する巻線51aの両端に接続端子となるターミナルT1,T2を形成する。突極U2を巻始めとし突極U5で巻き終わりとするように巻回する巻線52aの両端に接続端子となるにターミナルT7(突極U2側),T13(突極U5側)を形成し、突極U2の反ターミナルT7形成側に中間接続端子としてのターミナルT8を形成する。
突極V1を巻回する巻線51bの両端に接続端子となるターミナルT3,T4を形成する。突極V2を巻始めとし突極V5で巻き終わりとするように巻回する巻線52bの両端に接続端子となるにターミナルT9(突極V2側),T14(突極V5側)を形成し、突極V2の反ターミナルT9形成側に中間接続端子としてのターミナルT10を形成する。
突極W1を巻回する巻線51cの両端に接続端子となるターミナルT5,T6を形成する。突極W2を巻始めとし突極W5で巻き終わりとするように巻回する巻線52cの両端に接続端子となるにターミナルT11(突極W2側),T15(突極W5側)を形成し、突極W2の反ターミナルT11形成側に中間接続端子としてのターミナルT12を形成する。
【0021】
突極U6を巻回する巻線51dの両端に接続端子となるターミナルT16,T17を形成する。突極U7を巻始めとし突極U10で巻き終わりとするように巻回する巻線52dの両端に接続端子となるにターミナルT22(突極U7側),T28(突極U10側)を形成し、突極U7の反ターミナルT22形成側に中間接続端子としてのターミナルT23を形成する。
突極V6を巻回する巻線51eの両端に接続端子となるターミナルT18,T19を形成する。突極V7を巻始めとし突極V10で巻き終わりとするように巻回する巻線52eの両端に接続端子となるにターミナルT24(突極V7側),T29(突極V10側)を形成し、突極V7の反ターミナルT24形成側に中間接続端子としてのターミナルT25を形成する。
突極W6を巻回する巻線51fの両端に接続端子となるターミナルT20,T21を形成する。突極W7を巻始めとし突極W10で巻き終わりとするように巻回する巻線52fの両端に接続端子となるにターミナルT26(突極W7側),T30(突極W10側)を形成し、突極W7の反ターミナルT26形成側に中間接続端子としてのターミナルT27を形成する。
上述したように、U相巻線5a,V相巻線5b,W相巻線5c,U相巻線5d,V相巻線5e,W相巻線5fに接続端子及び中間接続端子(ターミナルT1〜T30)を設けることにより、図1のステータ構造体1の等価回路図は図5のようになる。
【0022】
したがって、図5の等価回路において、各接続端子及び中間接続端子(ターミナルT1〜T30)に対して、外部接続電線にて電機子巻線の選択的組み合わせを換えるように接続すれば、出力端に複数種類の出力電圧を得ることができる。
【0023】
次に、外部接続電線による電機子巻線の第1の接続例について、図6及び図7により説明する。
図6におけるターミナルT1〜T30に対して、T13,T14,T15,T28,T29,T30を外部接続電線30Aで接続し、これらを中性点端子(N−2)に接続する一方、T1とT7、T2とT8,T16とT22、T17とT23を外部接続電線30Aによりそれぞれ接続し、T1,T7,T16,T22をU相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(R−1)に、T2,T8を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(R−2)に接続する。
そして、T3とT9、T4とT10,T18とT24、T19とT25を外部接続電線30Aによりそれぞれ接続し、T3,T9,T18,T24をV相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(W−1)に、T4,T10を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(W−2)に接続する。
また、T5とT11、T6とT12,T20とT26、T21とT27を外部接続電線30Aによりそれぞれ接続し、T5,T11,T20,T26をW相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(L−1)に、T6,T12を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(L−2)に接続する。
【0024】
その結果、外部接続電線30Aで電機子巻線間が接続されたステータ構造体1の等価回路図は、図7のように中性点を備えたスター結線の三相回路となり、2個のコイルが並列に接続された部分に3個のコイルを直列に接続して構成されるコイル群同士を並列に接続して各相の回路が構成される(第1の接続例)。
【0025】
次に、外部接続電線による電機子巻線の第2の接続例について、図8及び図9により説明する。
図8におけるターミナルT1〜T30に対して、T13,T14,T15,T28,T29,T30を外部接続電線30Bで接続し、これらを中性点端子(N−2)に接続する一方、T2とT7、T17とT22を外部接続電線30Bによりそれぞれ接続し、T1とT16をU相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(R−1)に、T8を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(R−2)に接続する。
そして、T4とT9、T19とT24を外部接続電線30Bによりそれぞれ接続し、T3,T18をV相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(W−1)に、T10を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(W−2)に接続する。
また、T6とT11、T21とT26を外部接続電線30Bによりそれぞれ接続し、T5,T20をW相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(L−1)に、T12を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(L−2)に接続する。
【0026】
その結果、外部接続電線30Bで電機子巻線間が接続されたステータ構造体1の等価回路図は、図9のように中性点を備えたスター結線の三相回路となり、2個のコイルが直列に接続された部分に更に3個のコイルを直列に接続して構成されるコイル群同士を並列に接続(5個のコイル同士を並列に接続)して各相の回路が構成される(第2の接続例)。
第2の接続例によれば、第1の接続例に比較して各相におけるU1,U2、U6,U7、V1,V2、V1,V6、W1,W6部分が並列から直列に置き換わっているので、出力電圧をその分だけ大きくすることができる。
【0027】
続いて、外部接続電線による電機子巻線の第3の接続例について、図10及び図11により説明する。
図10におけるターミナルT1〜T30に対して、T28,T29,T30を外部接続電線30Cで接続し、これらを中性点端子(N−2)に接続する一方、T2とT7、T13とT16、T17とT22を外部接続電線30Cによりそれぞれ接続し、T1をU相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(R−1)に、T23を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(R−2)に接続する。
そして、T4とT9、T14とT18,T19とT24を外部接続電線30Cによりそれぞれ接続し、T3をV相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(W−1)に、T25を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(W−2)に接続する。
また、T6とT11、T15とT20,T21とT26を外部接続電線30Cによりそれぞれ接続し、T5をW相における電機子巻線全ターンからの出力電圧を得るための端子(L−1)に、T27を前記出力電圧の分圧を得るための中間タップとしての端子(L−2)に接続する。
【0028】
その結果、外部接続電線30Cで電機子巻線間が接続されたステータ構造体1の等価回路図は、図11のように中性点を備えたスター結線の三相回路となり、10個のコイルが直列に接続して各相の回路が構成される(第3の接続例)。
第3の接続例によれば、各相において10個のコイルが直列に接続されるので、第2の接続例に比較して略倍程度の出力電圧を得ることができる。
【0029】
第1乃至第3の接続例における外部接続電線30A,30B,30Cは、図12に示すような予め所望の箇所が接続された配線束(外部接続電線30A,30B,30Cの3種類の配線回路にそれぞれ対応する配線束)であるハーネス30で構成される。ハーネス30は、電機子接続側に4本の分岐配線31が形成され、負荷接続側に2本の分岐配線32が形成されている。各分岐配線31端には、T28〜T30及びT1〜T4に接続する円弧の一部を構成する湾曲状のコネクタ33、T5〜T12に接続するコネクタ34、T13〜T19に接続するコネクタ35、T20〜T27に接続するコネクタ36がそれぞれ接続されている。また、各分岐配線32端には、上述した端子(R−1)(W−1)(L−1)に接続するためのターミナル端子37、及び、端子(R−2)(W−2)(L−2)(N−2)に接続するためのターミナル端子38がそれぞれ接続されている。
【0030】
上記構造により、ハーネス30のコネクタ33,34,35,36を図3のステータ構造体1のカプラ20(20A〜20D)に円弧状に設けられた各ターミナルT1〜T30に対応するように差し込むように接続し、ターミナル端子37,38を負荷側に接続すれば、所望の電機子巻線回路(配線回路が異なる外部接続電線30A,30B,30Cに対応する配線回路)を有する電機子巻線を得ることができる。
したがって、外部接続電線30A,30B,30Cに対応する配線回路を有するハーネス30を接続(配線回路が異なるハーネス30を選択)するだけで、ステータ構造体1における電機子巻線構造が同一であっても異なる電機子巻線回路を得ることができる。
【0031】
第1乃至第3の接続例の電機子巻線をそれぞれ有するインバータ式の磁石式発電機についての無負荷出力電圧特性を図13に示す。図13は、発電機において、回転数(2500rpm、3500rpm、3800rpm)に対する三相整流後の直流電圧を測定したグラフである。出力電圧は回転数に比例し、第3の接続例γ(システム出力電圧AC230V,50Hz用)、第2の接続例β(システム出力電圧AC120V,60Hz用)、第1の接続例α(システム出力電圧AC100V,50/60Hz用)の順に傾きが高い出力電圧の特性が得られる。
【0032】
上述した第1乃至第3の接続例で示したように、ターミナルT1〜T30に対する外部接続電線における接続の仕方(ハーネス30の選択)を変えることで、各コイル群(電機子巻線)を直並列に接続可能として複数通りの出力電圧特性を得ることができる。
したがって、固定子電機子巻線部分の構造を共通にしたまま、外部接続電線による接続で出力電圧仕様を複数通りに容易に切り換えることができるため、出力特性に応じた電機子巻線の製造が不要となる。その結果、ステータ構造体1における電機子巻線の製造工程において、他の電圧仕様に切り換えるための段取り替えが発生しないため、段取り替え工程が削減され、多品種管理のコストも削減できる効果がある。
【0033】
また、一つの電機子巻線仕様で全ての電圧タイプに対応できるため、造り溜めができる。したがって、原材料費が安くなっている時期を見計らい適時生産を計画して、造り溜めをすることにより電機子巻線の量産を可能とし、実質的な製造コストの削減が期待でできるという利点もある。
また、タップを設けることができる接続端子(専用端子)やカプラ構造であれば、その部分を除く電機子巻線を巻く部分を他の仕様にも使用できるので、他仕様が必要となった場合に接続端子とカプラの金型のみで他仕様の製造ができるので、最小の金型投資で済ませることが可能となる。
【0034】
上述した磁石式発電機の例では、図5に示したように、三相の電機子巻線を2回路有し、三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を1つのコイルと、4つのコイルとに分割している。夫々のコイル群に対しては、U相の場合、接続端子(T1,T2)(T7,T13)を設けるとともに、4つのコイル群側に中間接続端子T8を設けている。そして、各相巻線同士について接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続してスター結線の構造を構成している。
この構造に対して、コイル毎(電機子巻線のスロット毎)にその両端に接続端子を設けるようにしてもよい。この場合、コイル1個毎に外部接続電線により接続することが可能となるので、回路構成について多彩なバリエーションを得ることができ、それに応じて種々の出力特性が得られる。
【0035】
また、上記例では、界磁に永久磁石を使用した磁石式発電機について適用した例を説明したが、発電機や電動機の電機子巻線構造、電動機の界磁巻線等における巻線構造に適用することで、外部接続電線による接続の仕方を調整して出力特性を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る電機子巻線構造を備えたステータ構造体の正面説明図である。
【図2】ステータ構造体の側面説明図である。
【図3】ステータ構造体の背面説明図である。
【図4】ステータの展開図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電機子巻線構造の等価回路図である。
【図6】本発明の一実施形態において第1の接続例を適用した電機子巻線構造の接続状態を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態において第1の接続例を適用した電機子巻線構造の等価回路図である。
【図8】本発明の一実施形態において第2の接続例を適用した電機子巻線構造の接続状態を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態において第2の接続例を適用した電機子巻線構造の等価回路図である。
【図10】本発明の一実施形態において第3の接続例を適用した電機子巻線構造の接続状態を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施形態において第3の接続例を適用した電機子巻線構造の等価回路図である。
【図12】本発明の電機子巻線構造で使用するハーネスの外観説明図である。
【図13】第1乃至第3の接続例を適用した電機子巻線構造を有する磁石式発電機における回転数に対する三相整流後の出力電圧特性を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ステータ構造体、 5…ステータ巻線、 5a…U相巻線、 5b…V相巻線、 5c…W相巻線、 5d…U相巻線、 5e…V相巻線、 5f…W相巻線、 10…ステータコア、 20(20A〜20D)…カプラ、 25…接続端子(中間接続端子)、 30…ハーネス、 30A,30B,30C…外部接続電線、 33,34,35,36…コネクタ、 51a,52a,…巻線、 51b,52b…巻線、 51c,52c…巻線、 51d,52d…巻線、 51e,52e…巻線、 51f,52f…巻線、 T1〜T30…ターミナル(接続端子、中間接続端子)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット数に対応する複数の突極が配されたコアの前記各突極に巻回された巻線に対して、スロット毎に前記巻線両端に接続端子を設け、所望とする出力特性に合わせて、外部接続電線により前記巻線の前記接続端子同士を選択接続して成る
ことを特徴とする巻線構造。
【請求項2】
電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、
前記電機子巻線のスロット毎にその両端に設けた接続端子と、
前記電機子巻線の前記接続端子を、所望とする出力電圧電流に合わせて、選択接続する外部接続電線と
を具備することを特徴とする磁石式発電機。
【請求項3】
電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、
前記電機子巻線は、三相電機子巻線を複数回路有して構成し、
前記三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を2つ以上に分割し夫々のコイル群に接続端子を設けるとともに、各相巻線における一つ又は複数のコイル群に中間接続端子を設け、
前記各相巻線同士について前記接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続して結線して成る
ことを特徴とする磁石式発電機。
【請求項4】
前記接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成する請求項2に記載の磁石式発電機。
【請求項5】
前記接続端子及び中間接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成する請求項3に記載の磁石式発電機。
【請求項6】
前記外部接続電線は、前記接続端子を選択的に接続することで、各電機子巻線を直並列に接続可能として成る請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の磁石式発電機。
【請求項1】
スロット数に対応する複数の突極が配されたコアの前記各突極に巻回された巻線に対して、スロット毎に前記巻線両端に接続端子を設け、所望とする出力特性に合わせて、外部接続電線により前記巻線の前記接続端子同士を選択接続して成る
ことを特徴とする巻線構造。
【請求項2】
電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、
前記電機子巻線のスロット毎にその両端に設けた接続端子と、
前記電機子巻線の前記接続端子を、所望とする出力電圧電流に合わせて、選択接続する外部接続電線と
を具備することを特徴とする磁石式発電機。
【請求項3】
電機子巻線と磁石を備えた磁石式発電機において、
前記電機子巻線は、三相電機子巻線を複数回路有して構成し、
前記三相電機子巻線の各相巻線のコイル群を2つ以上に分割し夫々のコイル群に接続端子を設けるとともに、各相巻線における一つ又は複数のコイル群に中間接続端子を設け、
前記各相巻線同士について前記接続端子及び中間接続端子を所望の出力電圧電流に合わせて選択的に接続して結線して成る
ことを特徴とする磁石式発電機。
【請求項4】
前記接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成する請求項2に記載の磁石式発電機。
【請求項5】
前記接続端子及び中間接続端子は、磁石式発電機の固定子側の電機子巻線に装着されたカプラに設けた専用端子でタップを構成する請求項3に記載の磁石式発電機。
【請求項6】
前記外部接続電線は、前記接続端子を選択的に接続することで、各電機子巻線を直並列に接続可能として成る請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の磁石式発電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−115041(P2010−115041A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286443(P2008−286443)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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