説明

巻線装置及び巻線方法

【課題】磁極に線材を多層に巻線する場合でも、安定した整列巻きを行うこと。
【解決手段】多極電機子1における磁極2の周囲に線材3を巻線するフライヤ4と、フライヤ4から繰り出された線材3を磁極2に対して案内する一対のフォーマ15,16とを備える巻線装置100であって、一対のフォーマ15,16を、磁極2を挟んで多極電機子1の回転軸方向に互いに離接するように移動させる第一の移動機構55と、分割フォーマ(15aと15b,16aと16b)を、磁極2の幅方向に互いに離接するように移動させる第二の移動機構56とを備える。また、巻線中、フライヤ4の回転軸と磁極2に巻線される多層線材の巻中心軸とが一致するように、フライヤ4と多極電機子1とを相対移動させる軸位置合せ機構99も備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多極電機子の磁極に線材を巻線する巻線装置、及びその巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機を構成する多極電機子(ステーター)の磁極に、フライヤから繰り出される線材を巻線するフライヤ式の巻線装置において、線材を案内するフォーマを使用したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−257724号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のフォーマを備えたフライヤ式の巻線装置は、磁極に線材を多層に巻線する過程にて線材の整列巻きに乱れが生じることがあり、改良の余地があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、磁極に線材を多層に巻線する場合でも、安定した整列巻きを行うことができる巻線装置及び巻線方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多極電機子における磁極の周囲を回動すると共に前記磁極径方向に移動して前記磁極に対して線材を巻線するフライヤと、前記磁極を挟持するように配設され、前記フライヤの移動に伴って前記磁極径方向へ移動して前記フライヤから繰り出された線材を前記磁極に対して案内する一対のフォーマとを備え、前記多極電機子の各磁極に線材を多層に巻線する巻線装置であって、前記一対のフォーマはそれぞれ分離可能な分割フォーマにて構成され、前記一対のフォーマを、前記磁極を挟んで前記多極電機子の回転軸方向に互いに離接するように移動させる第一の移動機構と、前記分割フォーマを、前記磁極の幅方向に互いに離接するように移動させる第二の移動機構とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、多極電機子における磁極の周囲を回動すると共に前記磁極径方向に移動して前記磁極に対して線材を巻線するフライヤと、前記磁極を挟持するように配設され、前記フライヤの移動に伴って前記磁極径方向へ移動して前記フライヤから繰り出された線材を前記磁極に対して案内する一対のフォーマとを備え、前記多極電機子の各磁極に線材を多層に巻線する巻線装置であって、前記磁極への巻線中、前記フライヤの回転軸と前記磁極に巻線される多層線材の巻中心軸とが一致するように、前記フライヤと前記多極電機子とを相対移動させる軸位置合せ機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁極の周囲に線材が多層に巻線され、線材が多極電機子の回転軸方向及び磁極の幅方向に広がっていく場合でも、一対のフォーマは、第一の移動機構及び第二の移動機構によって線材の広がりに合せて移動するため、線材は常にフォーマに案内されることとなる。したがって、安定した整列巻きを行うことができる。
【0008】
また、磁極に線材を多層に巻線する場合、磁極の外周面のうち線材に送りをかける面では、下層の線材と上層の線材とが交差するため、他の線材に送りをかけない面よりも層の高さが高くなる。このため、巻線に伴って磁極に巻線される多層線材の巻中心軸は変化することになるが、軸位置合せ機構によって、多層線材の巻中心軸とフライヤの回転軸とは巻線中一致するように調整される。したがって、巻線中、磁極の各面における線材の張力は一定に保たれるため、安定した整列巻きを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1及び図2を参照して本発明の実施の形態に係る巻線装置100について説明する。図1は巻線装置100を示す断面図であり、図2は巻線装置100の要部斜視図である。
【0011】
巻線装置100は、発電機や電動機を構成する多極電機子1(ステーター)の複数の磁極2(2A,2B,2C・・・)の周囲に線材3を多層に巻線する装置であり、線材3を繰り出しながら磁極2の周囲を回動するフライヤ4を用いて巻線を行うフライヤ式の巻線装置である。
【0012】
巻線装置100は、各部材が配置される基台5上に、多極電機子1の磁極2に対して線材3を自動で巻線する巻線機構6と、多極電機子1を回転させることによって磁極2を順次に巻線位置に送るインデックス機構7とを備える。
【0013】
多極電機子1は、図2に示すように、環状部1aと、この環状部1aから径方向外側に向かって放射状に突出した複数の磁極2とを備え、各磁極2の間にはスロット1bが開口している。
【0014】
磁極2の断面は4角形であり、磁極2の外周面は平滑状の4平面からなる。各磁極2の先端には鍔部2aが形成されている。
【0015】
インデックス機構7は、インデックスモータ9と、インデックスモータ9の出力軸9aに連結され多極電機子1の回転軸と同軸上に延在する支持軸10と、支持軸10に連結され多極電機子1を水平に載置するインデックス台11とを備える。
【0016】
多極電機子1は、環状部1aの貫通孔1cにインデックス台11の軸11aが挿通した状態にてインデックス台11上に載置されると共に、後述する電機子押え部材96にてインデックス台11とは反対方向(図1では上方)からインデックス台11に対して押圧されることによって、インデックス台11上に支持される。
【0017】
インデックスモータ9が駆動することによって、インデックス台11に支持された多極電機子1はインデックス台11の軸11aを回転軸として回転する。
【0018】
多極電機子1は、インデックス台11に支持された状態にて磁極2への巻線が行われ、その磁極2への巻線作業終了後には、インデックスモータ9の駆動によって回転し、次に巻線される磁極2が巻線位置に送られる。このように、インデックス機構7は、多極電機子1の磁極2を巻線機構6に対向する巻線位置に順次に送り、巻線機構6は巻線位置に送られた磁極2に対して巻線を行う。
【0019】
巻線機構6は、線材3を繰り出すと共に磁極2の周囲を回動して磁極2に対して線材3を巻線するフライヤ4と、フライヤ4から繰り出された線材3を磁極2に対して案内する一対のフォーマ15,16と、フォーマ15,16を移動させるフォーマ移動機構17と、フライヤ4及びフォーマ15,16を巻線位置における磁極2の径方向に移動させるトラバース機構18とを備える。
【0020】
以下に、巻線機構6について説明する。
【0021】
基台5上にはトラバース機構18が設けられ、トラバース機構18の駆動によって移動する移動台21にはフライヤ4とフォーマ15,16とが取り付けられた第一ヘッド22が立設している。
【0022】
第一ヘッド22は、軸受23を介して回転自在である円筒形状の第一スピンドル軸24を支持すると共に、第一スピンドル軸24の内周に軸受25を介して回転不能の第一中心体26を支持している(第一中心体26を回転不能とする構造については後述する)。
【0023】
第一スピンドル軸24の先端には環状の鍔部24aが一体に設けられ、鍔部24aには多極電機子1に向けて延在するフライヤ4が取り付けられている。このように、フライヤ4は、第一スピンドル軸24の回転軸から偏心した位置に取り付けられている。
【0024】
フライヤ4は、線材3の案内用のローラ4aを有し、先端に設けられたノズル27から線材3を繰り出す。
【0025】
第一スピンドル軸24の先端近傍には、プーリ28が取り付けられている。また、移動台21にはフライヤ回転モータ29が設けられ、フライヤ回転モータ29の出力軸にはプーリ30が取り付けられている。プーリ28とプーリ30とはベルト31を介して連結されている。これにより、フライヤ回転モータ29が駆動すると、第一スピンドル軸24が回転し、フライヤ4が第一スピンドル軸24の回転軸を中心に回動する。
【0026】
なお、第一スピンドル軸24には、線材3が挿通する貫通孔24bが形成されている。
【0027】
第一中心体26の内部は中空に形成され、両端部には第一スピンドル軸24の回転軸と同軸上に貫通孔26aが形成されている。両端部の貫通孔26aには円筒体43が圧入され、その円筒体43の内周には第一ヘッド22を挿通するロッド44がスプライン係合している。
【0028】
ロッド44は、軸方向、つまりフライヤ4の回転軸方向に移動可能に構成され(ロッド44の移動機構については後述する)、第一中心体26に対して相対移動する。ロッド44の端部には、先端がテーパ形状45aに形成されたカム45が連結されている。
【0029】
第一中心体26には、第一スピンドル軸24の回転軸と平行に貫通する一対の貫通孔26b,26cが形成されている。一対の貫通孔26b,26cは、第一スピンドル軸24の回転軸を中心として鉛直方向に互いに対称に設けられている。
【0030】
貫通孔26b,26cにはスラストブッシュ46a,46bが挿入され、スラストブッシュ46a,46bの内周にはロッド47a,47bが摺動自在に挿入されている。
【0031】
ロッド47a,47bは、軸方向に移動可能に構成され(ロッド47a,47bの移動機構については後述する)、ロッド47a,47bの端部には、先端がテーパ形状48cに形成されたカム48a,48bが連結されている。
【0032】
第一中心体26の先端面には、第一スピンドル軸24の開口端部から突出する一対の中継板32が取り付けられ、中継板32の先端にはフォーマ15,16を支持するフォーマ支持板33が取り付けられている。
【0033】
図2に示すように、フォーマ支持板33の端面には、多極電機子1の回転軸方向(鉛直方向)に延在したガイドレール34が設けられ、ガイドレール34にはガイドレール34に沿って移動可能な一対の鉛直移動板35(35a,35b)が係合している。一対の鉛直移動板35a,35bは、双方に連結された弾性部材としてのスプリング36にて互いに近づく方向に付勢されている。
【0034】
一対の鉛直移動板35a,35bのそれぞれには水平方向に延在したガイドレール37a,37bが設けられ、ガイドレール37a,37bのそれぞれにはガイドレール37a,37bに沿って移動可能な水平移動板38,39が係合している。
【0035】
水平移動板38,39は、それぞれ一対の移動板(38aと38b,39aと39b)からなり、それぞれの一対の移動板(38aと38b,39aと39b)は双方に連結された弾性部材としてのスプリング40a,40bにて互いに近づく方向に付勢されている。
【0036】
水平移動板38,39のそれぞれにはフォーマ15,16が、フライヤ4の回転軸を中心として互いに対称な位置に取り付けられている。
【0037】
フォーマ15は、分割可能な分割フォーマ15a,15bにて構成され、分割フォーマ15a,15bには互いに嵌合する凹凸構造が形成されている。
【0038】
分割フォーマ15a,15bはそれぞれ移動板38a,38bに取り付けられている。したがって、分割フォーマ15a,15bは、通常の状態ではスプリング40aの作用によって一体である。
【0039】
フォーマ15の端面は曲面状に形成され、巻線時に磁極2に対向する先端部は先細形状に形成されている。フライヤ4から繰り出された線材3は、フォーマの曲面に沿って滑り落ちて磁極2に案内される。
【0040】
フォーマ16も分割フォーマ16a,16bにて構成され、形状はフォーマ15と同じであるため説明を省略する。
【0041】
一対の鉛直移動板35aと35bとの対向する面35cは対称な斜面状に形成されている。ロッド44先端のカム45は、前進することによってフォーマ支持板33の開口部33aを挿通して斜面35cに当接するように配置されている。
【0042】
カム45のテーパ形状45aは、斜面35cに対応する形状に形成されているため、カム45が一対の鉛直移動板35aと35bとの間を前進してテーパ形状45aが斜面35cに当接することによって、一対の鉛直移動板35aと35bは、スプリング36の付勢力に抗して押し広げられ互いに離れる方向、つまり鉛直方向に移動する。このように、カム45を前進させることによって一対のフォーマ15と16は互いに離れる方向に移動し、カム45を後退させることによって一対のフォーマ15と16はスプリング36の付勢力によって近づく方向に移動する。
【0043】
なお、鉛直移動板35a,35b、スプリング36、及びカム45が、一対のフォーマ15,16を多極電機子1の回転軸方向に互いに離接するように移動させる第一の移動機構に該当する。
【0044】
一対の移動板38aと38bとの対向する面38cも対称な斜面状に形成されている。ロッド47a先端のカム48aは、前進することによってフォーマ支持板33の開口部33aを挿通して斜面38cに当接するように配置されている。
【0045】
カム48aのテーパ形状48cは、斜面38cに対応する形状に形成されているため、カム48aが一対の移動板38aと38bとの間を前進してテーパ形状48cが斜面38cに当接することによって、一対の移動板38aと38bは、スプリング40aの付勢力に抗して押し広げられ互いに離れる方向、つまり水平方向に移動する。このように、カム48aを前進させることによって一対の分割フォーマ15aと15bは互いに離れる方向に移動し、カム48aを後退させることによって一対の分割フォーマ15aと15bはスプリング40aの付勢力によって近づく方向に移動する。
【0046】
なお、移動板38a,38b、スプリング40a、及びカム48aが、分割フォーマ15a,15bを磁極2の幅方向に互いに離接するように移動させる第二の移動機構に該当する。
【0047】
一対の移動板39aと39bとの対向する面39cも対称な斜面状に形成され、一対の分割フォーマ16aと16bも、カム48bの前進及び後退によって、一対の分割フォーマ15aと15bと同様の動作をする。したがって、移動板39a,39b、スプリング40b、及びカム48bも第二の移動機構である。
【0048】
第一中心体26の先端面には、図2に示すように、フライヤ4の回転軸と平行な一対の支持軸111がフォーマ支持板33を挟むようにして設けられている。一対の支持軸111のそれぞれには、スプリング112を介して板状部材113が摺動自在に挿入され、支持軸111の先端には板状部材113の抜け止めのボルト114が螺合している。このように、スプリング112は、板状部材113の移動によって、板状部材113と第一中心体26の先端面との間にて圧縮可能なように構成されている。
【0049】
一対の板状部材113は、一対のフォーマ15と16の間を通る連結板115によって一体に形成されている。連結板115の中央部には巻線時に多極電機子1の磁極2の外周面に当接し多極電機子1の回転を規制する電機子回転止め部材116が取り付けられている。
【0050】
電機子回転止め部材116が多極電機子1の磁極2の鍔部2a外周面に当接することによって、スプリング112は一対の板状部材113にて圧縮されるため、電機子回転止め部材116は磁極2に対して反力を付与する。この反力によって多極電機子1の回転は規制される。なお、電機子回転止め部材116は、便宜上図1への図示を省略している。
【0051】
トラバース機構18は、図1に示すように、基台5に設けられたトラバースモータ50と、トラバースモータ50の出力軸に連結されフライヤ4の回転軸方向に延在するボールねじ51と、ボールねじ51が螺合すると共に移動台21に固定された移動体52aと、基台5上にボールねじ51と平行に配置され移動体52aを案内するガイドレール53と、移動台21に固定されると共にガイドレール53に案内される移動体52bとを備える。
【0052】
トラバースモータ50が駆動すると、移動体52aと52bはガイドレール53に案内され、第一ヘッド22を載置する移動台21はフライヤ4の回転軸方向に移動する。このように、トラバースモータ50を駆動することによって、フライヤ4及びフォーマ15,16をフライヤ4の回転軸方向に移動させることができる。トラバース機構18は、磁極2への線材3の巻線中、磁極2の周囲に線材3を一周巻線する毎に線材3を磁極2の径方向へ線材3の外径分移動させるために用いられるものである。
【0053】
次に、フォーマ移動機構17について説明する。
【0054】
フォーマ移動機構17は、ロッド44を軸方向に移動させることによってフォーマ15と16を鉛直方向に移動させるフォーマ鉛直移動機構55と、ロッド47a,47bを軸方向に移動させることによって分割フォーマ15aと15b,分割フォーマ16aと16bを水平方向に移動させるフォーマ水平移動機構56とからなる。フォーマ鉛直移動機構55及びフォーマ水平移動機構56は、基台5上における第一ヘッド22後方に配置されたフレーム57に支持される。
【0055】
まず、フォーマ水平移動機構56について説明する。
【0056】
フレーム57には、フライヤ4の回転軸と平行なガイド軸58が上方と下方に二つ固定されている。
【0057】
ガイド軸58は第一ヘッド22と略平行な第二ヘッド60を挿通している。第二ヘッド60は二つのガイド軸58に支持されると共に、そのガイド軸58に沿って移動可能である。
【0058】
第二ヘッド60は、軸受61を介して回転自在である円筒形状の第二スピンドル軸62を支持すると共に、第二スピンドル軸62の内周に軸受63を介して回転不能である円筒形状の第二中心体64を支持している(第二中心体64を回転不能とする構造については後述する)。
【0059】
第二スピンドル軸62の後端には、プーリ65が取り付けられている。また、第二ヘッド60の頂面には第二スピンドル軸回転モータ66が設けられ、第二スピンドル軸回転モータ66の出力軸にはプーリ67が取り付けられている。プーリ65とプーリ67とはベルト68を介して連結されている。これにより、第二スピンドル軸回転モータ66が駆動すると、第二スピンドル軸62が回転する。
【0060】
第二スピンドル軸62は、回転軸が第一スピンドル軸24の回転軸と同軸上であり、かつ第一スピンドル軸24の回転に同期して回転する。
【0061】
なお、第二スピンドル軸62には、線材3が挿通する貫通孔62aが形成されている。
【0062】
第二中心体64には、第一中心体26の貫通孔26aと同軸上に貫通孔64aが形成され、貫通孔64aには円筒体70が圧入されている。
【0063】
円筒体70の内周には、第一中心体26に支持されたロッド44がスプライン係合し、ロッド44は第二ヘッド60を挿通している。ロッド44は、軸方向に移動可能であり、第二中心体64に対して相対移動する。
【0064】
第二中心体64には、第一中心体26の貫通孔26b,26cと同軸上に貫通孔64b,64cが形成されている。貫通孔64b,64cには第一中心体26に挿入されたロッド47a,47bが挿入され、ボルトによって第二中心体64に固定されている。
【0065】
フレーム57の前面にはフォーマ水平移動モータ71が固定され、フォーマ水平移動モータ71の出力軸に連結されたボールねじ72は、第二ヘッド60の下部に螺合している。これにより、フォーマ水平移動モータ71が駆動すると、第二ヘッド60はガイド軸58に沿って移動し、第二中心体64に固定されたロッド47a,47bは軸方向に移動する。
【0066】
このように、フォーマ水平移動モータ71を駆動することによって、ロッド47a,47b先端のカム48a,48bを前進させることができ、分割フォーマ(15aと15b,16aと16b)を水平方向に互いに離れるように移動させることができる。
【0067】
次に、フォーマ鉛直移動機構55について説明する。
【0068】
ガイド軸58は第二ヘッド60と略平行な第三ヘッド75も挿通している。第三ヘッド75も第二ヘッド60と同様、二つのガイド軸58に支持されると共に、そのガイド軸58に沿って移動可能である。
【0069】
第三ヘッド75は、軸受76を介して回転自在である円筒形状の第三スピンドル軸77を支持すると共に、第三スピンドル軸77の内周に軸受78を介して回転不能である有底筒状の第三中心体79を支持している。
【0070】
第三スピンドル軸77の後端には、プーリ80が取り付けられている。また、第三ヘッド75の頂面には第三スピンドル軸回転モータ81が設けられ、第三スピンドル軸回転モータ81の出力軸にはプーリ82が取り付けられている。プーリ80とプーリ82とはベルト83を介して連結されている。これにより、第三スピンドル軸回転モータ81が駆動すると、第三スピンドル軸77が回転する。
【0071】
第三スピンドル軸77は、第三スピンドル軸77の回転軸が、フライヤ4の回転軸、つまり第一スピンドル軸24及び第二スピンドル軸62の回転軸とは偏心するように、第三ヘッド75に支持されている。しかし、第三スピンドル軸77は、第一スピンドル軸24及び第二スピンドル軸62の回転に同期して回転する。
【0072】
なお、第三スピンドル軸77には、線材3が挿通する貫通孔77aが形成されている。
【0073】
第三スピンドル軸77の回転中心である第三中心体79の底面中心は、L字型の拘束板84を介してロッド44の後端部に連結されている。このように、第一中心体26及び第二中心体64の中心軸と、第三中心体79の中心軸とは偏心して連結されるため、それぞれの中心体26,64,79の回転は拘束される。
【0074】
フレーム57の背面にはフォーマ鉛直移動モータ85が固定され、フォーマ鉛直移動モータ85の出力軸に連結されたボールねじ86は、第三ヘッド75の下部に螺合している。これにより、フォーマ鉛直移動モータ85が駆動すると、第三ヘッド75はガイド軸58に沿って移動し、第三中心体79に拘束板84を介して連結されたロッド44は軸方向に移動する。
【0075】
このように、フォーマ鉛直移動モータ85を駆動することによって、ロッド44先端のカム45を前進させることができ、一対のフォーマ15と16を鉛直方向に互いに離れるように移動させることができる。
【0076】
次に、インデックス機構7近辺に配置される機構について説明する。
【0077】
まず、多極電機子1をインデックス台11に対して押圧することによって、インデックス台11との間にて保持するワーク押え機構88について説明する。
【0078】
ワーク押え機構88は、基台5上に立設した支柱89の端部に固定された電機子押えモータ90と、電機子押えモータ90の出力軸に連結され多極電機子1の回転軸方向に延在するボールねじ91と、ボールねじ91が螺合する移動体92と、支柱89に鉛直方向に延在して配置され移動体92を案内するガイドレール93とを備える。
【0079】
移動体92の側面には軸受94を介して回転自在なロッド95が設けられている。ロッド95は、多極電機子1の回転軸と同軸上に配置され、ロッド95の先端には多極電機子1の環状部1aに当接するコの字形状の電機子押え部材96が連結されている。
【0080】
電機子押えモータ90が駆動すると、移動体92がガイドレール93に案内され、電機子押え部材96は多極電機子1の回転軸方向に移動する。このように、電機子押えモータ90を駆動することによって、電機子押え部材96はインデックス台11上に載置された多極電機子1の環状部1a上面に当接し、多極電機子1をインデックス台11に対して押圧する。これにより、多極電機子1は、インデックス台11と電機子押え部材96との間にて保持される。
【0081】
なお、電機子押え部材96に連結されたロッド95は軸受94を介して支持されているため、インデックスモータ9の駆動による多極電機子1の回転中、電機子押え部材96は多極電機子1に従属して回転する。
【0082】
多極電機子1の周囲には、フライヤ4から繰り出される線材3が、巻線すべき磁極2の両側にある磁極に引っかかることを防止するために、巻線すべき磁極2の両側にある磁極の鍔部2aをそれぞれ覆う一対のサイドフォーマ97が配設されている(図1及び3参照)。
【0083】
サイドフォーマ97は、先端に向かって先細となるような曲面状に形成され、基台5に立設した支柱98に支持され、図示しない機構によって移動可能に構成されている。
【0084】
巻線装置100は、多極電機子1の鉛直位置(高さ)をフライヤ4の回転軸と一致させるための電機子移動機構99を備える。
【0085】
電機子移動機構99は、基台5上に配置された支柱101と、支柱101の頂面に配置された電機子移動モータ102と、電機子移動モータ102の出力に連結され多極電機子1の回転軸方向(鉛直方向)に延在するボールねじ103と、ボールねじ103が螺合する移動体104と、支柱101に鉛直方向に延在して配置され移動体104を案内するガイドレール105とを備える。
【0086】
移動体104は、インデックスモータ9を載置するインデックスモータ載置台106に連結されている。また、インデックスモータ載置台106を中心としてボールねじ103の反対側には鉛直方向に延在するガイドロッド107が配置され、ガイドロッド107にはインデックスモータ載置台106に連結された移動体108が摺動自在に挿入されている。
【0087】
電機子移動モータ102が駆動すると、移動体104がガイドレール105に案内されると共に移動体108がガイドロッド107を摺動し、インデックスモータ載置台106は鉛直方向に移動する。これにより、インデックス台11に支持された多極電機子1は、鉛直方向に移動する。
【0088】
このように、電機子移動機構99における電機子移動モータ102を駆動することによって、多極電機子1の鉛直位置(高さ)をフライヤ4の回転軸と一致させることが可能となる。なお、電機子移動機構99が軸位置合せ機構に該当する。
【0089】
次に、巻線装置100の動作について図3及び図4も参照しつつ説明する。図3及び図4は巻線時におけるフォーマ15,16の動作を示す図であり、図3は1層目を巻線している状態の図であり、図4は6層目を巻線している状態の図である。なお、図3及び図4において、(a)図は磁極2の側面図であり、(b)図は磁極2の平面図である。
【0090】
巻線装置100の動作は、巻線装置100に搭載されたコントローラ(図示せず)によって自動制御される。
【0091】
まず、巻線を行う前の準備として、線材供給源(図示せず)から供給される線材3を、テンション装置(図示せず)を経てフレーム57の後部から、第三スピンドル軸77の貫通孔77a、第二スピンドル軸62の貫通孔62a、第一スピンドル軸24の貫通孔24bに順番に通す。そして、フライヤ4に設けたローラ4aを介してフライヤ先端のノズル27に導く。
【0092】
ノズル27から繰り出された線材3は、多極電機子1の環状部1aに設けられたピン1dに係止される。
【0093】
次に、多極電機子1を、貫通孔1cに軸11aが挿通するようにしてインデックス台11に載置する。この状態にて、多極電機子1と巻線機構6との位置合せを行なう。
【0094】
まず、電機子移動機構99の電機子移動モータ102を駆動することによって、多極電機子1の鉛直位置(高さ)とフライヤ4の回転軸とを一致させる。つまり、巻線すべき磁極2の巻中心軸とフライヤ4の回転軸とが同じ高さとなるように調整する。調整後、電機子押えモータ90を駆動することによって電機子押え部材96を多極電機子1に向けて下降させ環状部1aに押し付ける。これにより、多極電機子1は、インデックス台11と電機子押え部材96との間にて支持される。
【0095】
次に、インデックスモータ9を駆動することによって多極電機子1を回転させ、複数の磁極2のうち巻線すべき磁極を巻線位置に設定する。具体的には、図2に示すように、巻線すべき磁極2(図2では磁極2A)の径方向とフライヤ4の回転軸方向とを一致させる。このように、フライヤ4の回転軸に対向する位置が巻線位置である。
【0096】
以上の多極電機子1の巻線位置への位置合せは、磁極2近傍に設けたセンサ等の検知器を用いて磁極2の位置を検出し、その検出した情報を基に行われる。
【0097】
次に、トラバース機構18のトラバースモータ50を駆動することによって第一ヘッド22を前進させ、フライヤ4及びフォーマ15,16を巻線位置に配置された磁極2の基端部に配置する。
【0098】
この第一ヘッド22の前進にて、フォーマ15と16との間に配置された電機子回転止め部材116は、巻線位置に配置された磁極2の鍔部2a外周面に当接し、第一中心体26に対して近づく方向に移動する。これに伴い、スプリング112は、第一中心体26の先端面と板状部材113との間にて圧縮される。これにより、電機子回転止め部材116は、磁極2に対して反力を付与するため、多極電機子1の回転は規制される。
【0099】
フォーマ15と16は、カム45が一対の鉛直移動板35aと35bに当接していない状態であり、図3(a)に示すように、互いの先端部にて磁極2を挟持するように配置される。
【0100】
分割フォーマ(15aと15b,16aと16b)は、カム48a,48bが一対の移動板(38aと38b,39aと39b)に当接していない状態であり、図3(a)に示すように、スプリング40a,40bの付勢力にて一体である。分割フォーマが一体の状態では、分割フォーマの幅は、図3(b)に示すように磁極2の幅よりも僅かに広い。具体的には、巻線性を考慮して磁極2の幅に線材3の2外径分を加えた程度の幅が望ましい。
【0101】
次に、一対のサイドフォーマ97を、図3(b)に示すように、巻線すべき磁極2の両側にある磁極の鍔部2aをそれぞれ覆うように配置する。
【0102】
以上が巻線を行う前の準備であり、この状態で巻線が開始される。
【0103】
フライヤ4が磁極2の鉛直上方に位置した状態にて、フライヤ回転モータ29を駆動してフライヤ4を回転させ、フライヤ4から繰り出される線材3を磁極2の周囲に巻回する。
【0104】
なお、フライヤ4の回転に同期させて、第二スピンドル軸62及び第三スピンドル軸77を回転させる。これにより、線材供給源から供給される線材3は捻れることなく、ノズル27に案内される。
【0105】
フライヤ4が磁極2の鉛直上方から鉛直下方までの180°回転する過程では、フライヤ4から繰り出された線材3は、サイドフォーマ97に当接しその斜面に沿って案内されると共に、次にフォーマ15に当接しその曲面を滑り落ちて磁極2に案内され、磁極2に巻き付けられる。
【0106】
そして、フライヤ4が磁極2の鉛直下方から鉛直上方までの180°回転する過程では、フライヤ4から繰り出された線材3は、サイドフォーマ97に当接しその斜面に沿って案内されると共に、次にフォーマ16に当接しその曲面を滑り落ちて磁極2に案内され、磁極2に巻き付けられる、このようにして、フライヤ4が1回転するに伴い、線材3は磁極2に1巻きされる。
【0107】
磁極2への1巻きにおいて、磁極2の4面のうち最後に巻線される面(例えば上面)に線材3を巻線するときには、トラバースモータ50を駆動することによって、フライヤ4及びフォーマ15,16を巻線方向(磁極2の径方向)に線材3の外径分だけ移動させる。
【0108】
このように、フライヤ4の1回転に付き、磁極2の4面のうちの所定の1面(例えば上面)にて線材3の外径分の送りをかけて巻き進めることによって、磁極2には線材3が整列に巻線される。
【0109】
1層目の巻線は、線材3が磁極2の鍔部2aに当接するまで行い、2層目の巻線は、線材3の送りを1層目とは反対方向(磁極基端に向かう方向)にかけることによって行う。2層目の巻線を開始する際、フォーマ鉛直移動モータ85を駆動してカム45を前進させ、一対の鉛直移動板35aと35bとの斜面35cに当接させる。これにより、一対のフォーマ15と16は、鉛直方向(多極電機子1の回転軸方向)に互いに離れるように移動する。一対のフォーマ15と16のそれぞれの移動量は、カム45の前進量によって調節され、1層毎に線材3の外径分に設定される。このように、1層毎にフォーマ15と16を鉛直方向に線材3の外径分だけ移動させて巻線を行うことによって、線材3を安定して磁極2へ導くことができるため、安定した整列巻きを行うことができる。
【0110】
また、2層目以降についても、所定の1面にて線材3の外径分の送りをかけて巻線が行われる。これにより、例えば磁極2の4面のうち送りがかけられる所定の面が上面だとすると、上面では下層の線材3と上層の線材3とが交差する交差部が発生する。これは、例えば、ある層において線材3の送りがかけられる方向が磁極2の先端方向だとすると、その層の上層では線材3の送りがかけられる方向は磁極2の基端方向であり、このように、下層と上層とでは、線材3に送りをかける方向(巻線方向)が反対方向になるためである。
【0111】
線材3に送りがかけられる上面以外の他の3面では、送りがかけられないため交差部が発生することはなく、上層の線材3は下層の線材間の溝に案内されて巻線されるため、安定した整列巻きが行われる。
【0112】
多極電機子1の隣合う磁極2間のスロット1bは、外径方向に向かって広がっているため、図4に示すように、線材3は磁極2に略台形状に巻線される。これは、巻線を開始してから最初の数層は、線材3は環状部1aと磁極2の鍔部2aとの間に巻線されるが、層数が増えると線材3は環状部1aと鍔部2aとの間には巻線することができず、層数の増加に伴い線材3の折り返し位置(図4(b)に示す線材3a)が環状部1aから鍔部2aへと近づいていくためである。
【0113】
このように、層数が増えると線材3は鍔部2aに向かって広がって巻線される。この線材3の広がりに合わせて、分割フォーマ(15aと15b,16aと16b)を磁極2の幅方向に互いに離れるように移動させる。
【0114】
分割フォーマ(15aと15b,16aと16b)を移動させるには、フォーマ水平移動モータ71を駆動してカム47a,47bを前進させ、一対の移動板(38aと38b,39aと39b)の斜面38c,39cに当接させる。これにより、分割フォーマ(15aと15b,16aと16b)は、巻線位置に配置された磁極2の幅方向に互いに離れるように移動する。分割フォーマ15a,15b,16a,16bのそれぞれの移動量は、カム47a,47bの前進量によって調節され、1層毎に線材3の外径分に設定される。このように、1層毎に分割フォーマ(15aと15b,16aと16b)を磁極2の幅方向に線材3の外径分だけ移動させて巻線を行うことによって、線材3を安定して磁極2へ導くことができるため、安定した整列巻きを行うことができる。
【0115】
以上のように、線材3が多層に巻き進められるに合わせて、フォーマ15,16を鉛直方向に移動させると共に、分割フォーマ15a,15b及び分割フォーマ16a,16bを磁極2の幅方向に移動させることによって、線材3が巻線される位置に常にフォーマを配置することができ、線材3は安定して磁極2へ導かれる。
【0116】
なお、巻線を開始してから最初の数層は、線材3は環状部1aと鍔部2aとの間に巻線されるため巻き崩れの可能性は低い。しかし、層数が増え線材3が台形状に巻線されるようになると、各層の折り返し部における線材は環状部1aに接触しないため、その折り返し部にて巻き崩れが起こり易くなる。
【0117】
したがって、線材3が環状部1aと鍔部2aとの間に巻線される最初の数層は、フォーマ15,16のみを鉛直方向に移動させ、線材3が台形状に巻線されるようになってから分割フォーマ15a,15b及び分割フォーマ16a,16bを磁極2の幅方向に移動させるようにしてもよい。
【0118】
上記にて説明したように、磁極2の4面のうちの任意の1面にて線材3に送りをかけ、他の3面では線材3に送りをかけないため、送りをかける1面のみで交差部が発生し、他の3面では交差部が発生しない。
【0119】
したがって、交差部の発生する1面における層の高さは、線材3の外径に層数を乗じたものとなる。一方、交差部が発生しない他の3面においては、上層の線材3は下層の線材間の溝に案内されて巻線されるため、層の高さは線材3の外径に層数を乗じたものよりも低くなる。このように、送りをかける面を上面とした場合には、上面の層の高さは、他の3面の層よりも高くなり、上面と他の3面との層の高さは異なるものとなる。
【0120】
このため、多層に巻き進めるに伴い、フライヤ4から繰り出される線材3の張力は、上面に巻線しているときが他の面に巻線しているときに比較して大きくなる。このように、フライヤ4が磁極2を1回転する間に、線材3の張力は変化することとなる。これは、フライヤ4の回転軸と磁極2に巻線される多層線材の巻中心軸とが一致していないためである。
【0121】
ここで、巻中心軸とは、その軸を中心として磁極2に巻線を行った場合、磁極2の各面における線材3の張力が一定となる軸である。
【0122】
そこで、電機子移動モータ102を駆動させ多極電機子1の鉛直位置を調整することによって、磁極2に巻線される多層線材の巻中心軸をフライヤ4の回転軸と一致させる。例えば、磁極2の上面にて線材3の送りがかけられている場合には、層数が増えるに伴い多層線材の巻中心軸は、鉛直上方に移動することになるため、多極電機子1を鉛直下方に移動させることによって多層線材の巻中心軸をフライヤ4の回転軸と一致させることができる。なお、このとき電機子押え部材96も多極電機子1の移動に伴い移動させる必要がある。
【0123】
この多極電機子1の鉛直位置調整は、巻線中1層毎に行うことが望ましい。また、多極電機子1の移動量は、線材3の外径から算出して予めコントローラに設定することによって制御してもよく、また、センサ等の検知器を用いて磁極2の巻中心軸を検出し、その検出した情報を基に制御するようにしてもよい。
【0124】
なお、本実施の形態では、磁極2の4面のうち線材3に送りをかける面を上面又は下面である場合を想定し、電機子移動機構99は多極電機子1を鉛直方向にのみ移動可能な構成とした。しかし、線材3に送りをかける面を磁極2の側面とする場合には、電機子移動機構99は多極電機子1を水平方向に移動可能とする構成にすればよい。
【0125】
また、本実施の形態では、磁極2に巻線される多層線材の巻中心軸とフライヤ4の回転軸とを一致させる方法として、電機子移動機構99を用いて多極電機子1をフライヤ4に対して相対移動させるように構成した。しかし、巻線機構6を鉛直方向に移動させる等してフライヤ4を多極電機子1に対して相対移動させるように構成してもよい。
【0126】
以上にて説明した要領で磁極2に線材3を多層に巻線し、磁極2への巻線が終了したら、電機子押え部材96を上昇させると共に、第一ヘッド22を後退させ電機子回転止め部材116を磁極2の鍔部2a外周面から離す。
【0127】
そして、インデックスモータ9を駆動することによって多極電機子1を回転させ、磁極2の隣りの磁極を巻線位置に配置し、新たに巻線を開始する。
【0128】
なお、図示していないが、一対のフォーマ15,16及びサイドフォーマ97の他に、一対のフォーマ15,16に対向する位置に線材3外径分の隙間を設けて一対の対向フォーマをさらに設ける構成とすれば、線材3はフォーマ15,16と対向フォーマとの隙間に案内されて磁極2に導かれるため、より安定した整列巻線を行うことができる。
【0129】
以上の実施の形態1によれば、以下に示す効果を奏する。
【0130】
磁極2の周囲に線材3が多層に巻き進められ、線材3が多極電機子1の回転軸方向及び磁極2の幅方向に広がっていく場合でも、その広がりに合わせてフォーマ15,16が多極電機子1の回転軸方向に移動すると共に、分割フォーマ15a,15b及び分割フォーマ16a,16bが磁極2の幅方向に移動する。このように、各フォーマは、線材3が巻線される位置に常に配置され線材3を磁極2へと導くため、安定した整列巻きが行われる。
【0131】
特に、線材3が磁極2に略台形状に巻線される場合には、各層の折り返し部にて巻き崩れが起こり易くなる。しかし、線材3が台形状に広がって巻線されるに伴って、分割フォーマ15a,15b及び分割フォーマ16a,16bが磁極2の幅方向に移動するため、折り返し部における巻き崩れを防止することができる。
【0132】
また、磁極に線材を多層に巻線する場合、磁極2の外周面には線材3に送りをかける面と送りをかけない面とがあるため、送りをかける面の層の高さは他の面と比較して高くなる。このため、巻線に伴って磁極2に巻線される多層線材の巻中心軸は変化することになるが、巻線中、多層線材の巻中心軸とフライヤ4の回転軸とは一致するように調整される。したがって、巻線中、磁極2の各面における線材3の張力は一定に保たれるため、安定した整列巻きを行うことができる。
【0133】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、発電機や電動機を構成する電機子及び多層コイルの巻線装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施の形態である巻線装置100を示す断面図である。
【図2】同じく巻線装置100の要部斜視図である。
【図3】巻線時におけるフォーマの動作を示す図である。
【図4】巻線時におけるフォーマの動作を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
100 巻線装置
1 多極電機子
2 磁極
3 線材
4 フライヤ
6 巻線機構
7 インデックス機構
15,16 フォーマ
17 フォーマ移動機構
18 トラバース機構
35a,35b 鉛直移動板
38,39 水平移動板
45,48a,48b カム
44,47a,47b ロッド
55 フォーマ鉛直移動機構
56 フォーマ水平移動機構
99 電機子移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多極電機子における磁極の周囲を回動すると共に前記磁極径方向に移動して前記磁極に対して線材を巻線するフライヤと、
前記磁極を挟持するように配設され、前記フライヤの移動に伴って前記磁極径方向へ移動して前記フライヤから繰り出された線材を前記磁極に対して案内する一対のフォーマと、
を備え、前記多極電機子の各磁極に線材を多層に巻線する巻線装置であって、
前記一対のフォーマはそれぞれ分離可能な分割フォーマにて構成され、
前記一対のフォーマを、前記磁極を挟んで前記多極電機子の回転軸方向に互いに離接するように移動させる第一の移動機構と、
前記分割フォーマを、前記磁極の幅方向に互いに離接するように移動させる第二の移動機構と、
を備えることを特徴とする巻線装置。
【請求項2】
前記第一の移動機構は、
前記多極電機子の回転軸方向に移動可能な一対の第一移動板と、
前記一対の第一移動板を互いに近づく方向に付勢する弾性部材と、
前記一対の第一移動板の間を前進することによって当該一対の第一移動板を前記弾性部材の付勢力に抗して押し広げるカムと、を備え、
前記第二の移動機構は、
前記磁極の幅方向に移動可能な一対の第二移動板と、
前記一対の第二移動板を互いに近づく方向に付勢する弾性部材と、
前記一対の第二移動板の間を前進することによって当該一対の第二移動板を前記弾性部材の付勢力に抗して押し広げるカムと、を備え、
前記一対の第二移動板は、前記一対の第一移動板のそれぞれに設けられ、
前記フォーマは、前記一対の第二移動板のそれぞれに分割して取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の巻線装置。
【請求項3】
多極電機子における磁極の周囲を回動すると共に前記磁極径方向に移動して前記磁極に対して線材を巻線するフライヤと、
前記磁極を挟持するように配設され、前記フライヤの移動に伴って前記磁極径方向へ移動して前記フライヤから繰り出された線材を前記磁極に対して案内する一対のフォーマと、
を備え、前記多極電機子の各磁極に線材を多層に巻線する巻線装置であって、
前記磁極への巻線中、前記フライヤの回転軸と前記磁極に巻線される多層線材の巻中心軸とが一致するように、前記フライヤと前記多極電機子とを相対移動させる軸位置合せ機構を備えることを特徴とする巻線装置。
【請求項4】
多極電機子における磁極の周囲を回動すると共に前記磁極径方向に移動して前記磁極に対して線材を巻線するフライヤと、
前記磁極を挟持するように配設され、前記フライヤの移動に伴って前記磁極径方向へ移動して前記フライヤから繰り出された線材を前記磁極に対して案内する一対のフォーマと、
を備え、前記一対のフォーマがそれぞれ分離可能な分割フォーマにて構成された巻線装置にて前記多極電機子の各磁極に線材を多層に巻線する巻線方法であって、
前記磁極に線材を多層に巻き進めるに伴い、
前記一対のフォーマを、前記磁極を挟んで前記多極電機子の回転軸方向に互いに離れるように移動させると共に、
前記分割フォーマを、前記磁極の幅方向に互いに離れるように移動させることによって、
線材を前記磁極に案内して巻線を行うことを特徴とする巻線方法。
【請求項5】
多極電機子における磁極の周囲を回動すると共に前記磁極径方向に移動して前記磁極に対して線材を巻線するフライヤと、
前記磁極を挟持するように配設され、前記フライヤの移動に伴って前記磁極径方向へ移動して前記フライヤから繰り出された線材を前記磁極に対して案内する一対のフォーマと、
を備える巻線装置にて前記多極電機子の各磁極に線材を多層に巻線する巻線方法であって、
前記磁極への巻線中、前記フライヤの回転軸と前記磁極に巻線される多層線材の巻中心軸とが一致するように、前記フライヤと前記多極電機子とを相対移動させて巻線を行うことを特徴とする巻線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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