説明

巾木及び巾木の製造方法

【課題】 本発明の課題は、表面、上端面及び裏面に同じ意匠が表された巾木を提供することである。
【解決手段】 本発明の巾木1は、ポリマー層3と前記ポリマー層3の一面側に設けられた化粧層4とを有する帯状の本体板2を有し、前記ポリマー層3の他面に、前記ポリマー層3の一部分をその長手方向に切除した長状溝7が形成され、前記長状溝7にて区画された第1本体板21と第2本体板22が前記化粧層4を介して繋がっており、前記長状溝7において本体板2を折り曲げることにより、前記第1本体板21及び第2本体板22の他面側が接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面の下方に取り付けられる巾木及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の足、台車、車いす、ストレッチャー及び掃除機などが当たることによる損傷や汚れ付着を防止するため、建物の部屋などの壁面の下方と床面の間に、巾木が取り付けられる。
巾木は、所定幅の細長い帯状板からなる巾木本体(例えば、木質合成板、樹脂成形品などを帯状に加工した細長い板)と、前記巾木本体の表面に設けられた化粧層と、を有する。巾木は、その裏面(化粧層とは反対側の面)を壁面に向けて貼り付けられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−25712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の巾木は、化粧層が表面にしか設けられていないので、出隅と入隅に取り付ける巾木を別個に作製しなければならない。
具体的には、巾木を出隅又は入隅に取り付ける場合、一方の巾木の右端部と他方の巾木の左端部を接合して直角状の巾木を作製する。この場合、出隅用の巾木は、2つの巾木の裏面間の成す角が直角状となるように2つの巾木が接合されるのに対し、入隅用の巾木は、2つの巾木の表面間(化粧層が設けられた面の間)の成す角が直角状となるように2つの巾木が接合される。
このように出隅及び入隅に取り付けられる巾木は、何れも直角状に形成されるものの、表裏面の向きが逆になるため、出隅及び入隅のそれぞれに対応した直角状の巾木を作製しなければならないという問題点がある。
【0005】
上記問題点を解消するためには、巾木の表面だけでなく、裏面にも化粧層を設けることが考えられる。
例えば、ある模様の化粧プリント(以下、第1化粧プリントという)を、巾木本体の表面と上端面の境界(表面と上端面の間の直角部)において折り曲げながら、前記表面及び上端面に貼り付け、さらに、同じ模様の化粧プリント(以下、第2化粧プリントという)を、巾木本体の裏面に別途貼り付けることにより、表面、上端面及び裏面に化粧層が設けられた巾木を作製できる。
しかしながら、このような巾木は、第1化粧プリントと第2化粧プリントの間に継ぎ目が生じるので、巾木の表裏面における意匠(見栄え)が同じにならない。
【0006】
また、1枚の化粧プリントを、巾木本体の表面と上端面の境界(直角部)、及び、上端面と裏面の境界(直角部)において、それぞれ折り曲げながら、前記表面、上端面及び裏面に同時に貼り付けることも考えられる。
しかしながら、巾木本体は細長い帯状板からなるので、1枚の化粧プリントを2ヶ所において折り曲げながら綺麗に貼り付けることは、巾木の機械的製造上、極めて難しい。
【0007】
本発明の第1の目的は、簡易に製造でき、表面、上端面及び裏面に同じ意匠が表された巾木を提供することである。
本発明の第2の目的は、表面、上端面及び裏面に同じ意匠が表された巾木を、簡易に製造できる、巾木の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の巾木は、ポリマー層と前記ポリマー層の一面側に設けられた化粧層とを有する帯状の本体板を有し、前記ポリマー層の他面に、前記ポリマー層の一部分をその長手方向に切除した長状溝が形成され、前記長状溝にて区画された第1本体板と第2本体板が前記化粧層を介して繋がっており、前記長状溝において本体板を折り曲げることにより、前記第1本体板及び第2本体板の他面側が接合されている。
【0009】
上記本発明の巾木は、ポリマー層に形成された長状溝において区画された第1本体板と第2本体板が化粧層を介して繋がっており、前記長状溝において本体板を折り曲げることにより、前記第1本体板及び第2本体板の他面側が接合されている。
このように第1本体板及び第2本体板の他面側が接合された巾木は、その表面に第1本体板の一面(化粧層の意匠)が表れ、その裏面に第2本体板の一面(化粧層の意匠)が表れ、その上端面に長状溝に対応する本体板の一面(化粧層の意匠)が表れている。
従って、本発明によれば、巾木の表面、上端面及び裏面に、1つの化粧層による同じ意匠が表された巾木を提供できる。
なお、ポリマー層と化粧層とを有する上記帯状の本体板は、カレンダー成形、押出し成形などの従来公知の成形法によって簡易に作製できる。
かかる本体板のポリマー層に長状溝を形成し、本体板を折り曲げるという簡単な手順により、本発明の巾木は得られる。
【0010】
本発明の好ましい巾木は、巾木の表面又は裏面の何れか一方の面に、その短手方向に切除した短手溝が形成されている。
かかる巾木は、前記短手溝において、略直角状に折り曲げることができる。かかる略直角状に折り曲げられた巾木の表裏面には、それぞれ化粧層の意匠が表れている。従って、略直角状の巾木は、その裏面側を壁面に取り付けることにより、出隅用の巾木として使用でき、その表面側を壁面に取り付けることにより、入隅用の巾木として使用できる。
【0011】
また、本発明の好ましい巾木は、前記ポリマー層が、硬質ポリマーを含む板状成形体であり、前記化粧層が、化粧の施された基材フィルムであり、前記基材フィルムが前記板状成形体の一面側に積層接着されている。
かかる巾木は、第1本体板及び第2本体板を折り曲げたときに、その折り曲げ部分において亀裂などが生じ難く、外見上良好である。
【0012】
本発明の別の局面によれば、巾木の製造方法を提供する。
本発明の巾木の製造方法は、ポリマー層と前記ポリマー層の一面側に設けられた化粧層とを有する帯状の本体板の、前記ポリマー層の短手方向中途部から長手方向に向かって前記ポリマー層の一部分を切除することにより、前記ポリマー層に長状溝を形成する工程、前記長状溝において前記本体板をその他面側に折り曲げる工程、を含む。
かかる巾木の製造方法によれば、本体板のポリマー層に長状溝を形成した後、この長状溝において本体板を他面側に折り曲げるだけで、表面、上端面及び裏面に同じ意匠(1つの化粧層の意匠)が表された巾木を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の巾木は、表面、上端面及び裏面に同じ意匠が表されているので、巾木の施工時、表裏面の何れの面を壁面へ取付けることができる。
さらに、本発明の好ましい巾木は、入隅用及び出隅用の何れの巾木としても使用することができる。
また、本発明の巾木の製造方法によれば、上記表面、上端面及び裏面に同じ意匠が表された巾木を、簡易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る巾木の斜視図。
【図2】図1のII−II線で切断した縦断面図。
【図3】本体板の斜視図。
【図4】図1の巾木を構成する本体板(長状溝が形成された本体板)の斜視図。
【図5】短手溝が形成された巾木の斜視図。
【図6】図5のVI−VI線で切断した横断面図。
【図7】略直角状に折り曲げた入隅用及び出隅用の巾木の斜視図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る巾木の縦断面図。
【図9】図8の巾木を構成する本体板の斜視図。
【図10】他の実施形態に係る本体板の斜視図。
【図11】図10の本体板を折り曲げることにより得られる巾木の縦断面図。
【図12】本発明の他の実施形態に係る巾木の縦断面図。
【図13】本発明の巾木を出隅材として使用した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、用語の接頭語として、第1、第2などを付す場合があるが、該接頭語は、用語を区別するために付加されたものであり、部材の順序や優劣などを意味しない。また、各図において、各部材又は各部の長さ、厚み、及び大きさは、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0016】
図1及び図2において、本発明の巾木1は、帯状のポリマー層3とその一面側に設けられた化粧層4とを有する本体板2から構成されている。
この本体板2の前記ポリマー層3の他面(ポリマー層3の他面とは、ポリマー層3の一面とは反対側の面を指す)において、前記ポリマー層3の一部をその長手方向Xに直線状に切除することにより、ポリマー層3の他面に長状溝7が形成されている。この長状溝7を境にして第1本体板21と第2本体板22が前記化粧層4を介して繋がっている。第1本体板21と第2本体板22は、双方の他面側が接合するように、前記長状溝7において他面側へ折り曲げられている。
かかる巾木1は、折り曲げ部分にて繋がった、第1本体板21の他面側と第2本体板22の他面側が接合された合掌構造となっている。かかる構成からなる巾木1は、細長い帯状体であり、その表面1a側、上端面1c側及び裏面1b側に、前記化粧層4が位置している。
従って、上記巾木1は、その表面1a、上端面1c及び裏面1bに同じ意匠(1つの化粧層4の意匠)が表されている。
【0017】
具体的には、本発明の巾木1は、細長い長方形板である。
好ましい実施形態において、本発明の巾木1の下方には、不陸調整片5が突設されている。この不陸調整片5は、柔らかい帯状板からなる。巾木1を壁面の下方に取り付けたとき、不陸調整片5の下方部が床面上に接する。柔軟な不陸調整片5は、その下方部が床面の不陸(床面の凹凸)に応じて適宜変形し、巾木1と床面の間に隙間が生じることを防止する機能を有する。
【0018】
巾木1は施工時に所望の長さに切断されるので、巾木1の長さは、任意である。もっとも、運搬などを考慮すると、巾木1の長さは、通常、900mm〜4000mm程度が好ましい。また、巾木1の幅についても、施工場所に合わせて適宜設定されるので、特に限定されないが、通常、30mm〜400mmである。なお、巾木1の幅とは、巾木1の長手方向Xに直交する方向(即ち、短手方向Y)における長さをいう。
巾木1の厚みについても特に限定されないが、余りに薄いと低剛性となって施工性が悪くなり、一方、余りに厚くても費用対効果の点で好ましくない。かかる点を考慮すると、巾木1の厚みは、2mm〜15mm程度が好ましい。
【0019】
本発明の巾木1は、その表面1a、上端面1c及び裏面1bが実質的に平坦面状に形成されている。なお、実質的に平坦面状とは、施工時に、壁面との間に隙間が生じない程度に平坦であることを意味する。例えば、所望の意匠を形成するために凹凸(例えばエンボス凹凸)が形成されている場合において、このような凹凸が形成された面は、前記実質的に平坦面に含まれる。
【0020】
本発明の巾木1を構成するために用いられる、本体板2は、図3に示すように、帯状のポリマー層3と、前記ポリマー層3の一面側に設けられた化粧層4と、を有する。
ポリマー層3は、ポリマーを含む組成物を板状に成形した板状成形体からなる。前記ポリマーは、硬質ポリマー、又は、軟質ポリマーの何れでもよい。
【0021】
上記ポリマー層3及び化粧層4の構造は、従来から公知のものを採用することができる。
例えば、前記ポリマー層3としては、単層構造のほか、2層構造、3層構造などの複数の層を有する構造(複層構造という)を採用することもできる。
ポリマー層3が複層構造の場合、各層が同じ種類のポリマーで且つそれぞれ物性の異なっていてもよいし、或いは、各層が異なるポリマー組成物で形成されていてもよい。さらに、ポリマー層3は、硬質ポリマーを含む組成物から形成された層(以下、硬質ポリマー層という)と軟質ポリマーを含む組成物から形成された層(以下、軟質ポリマー層という)とを有する2層構造、或いは、硬質ポリマー層と軟質ポリマー層と他のポリマー層とを有する3層以上の複層構造でもよい。このようなポリマー層3であれば、硬質ポリマー層によって強度を付与でき且つ軟質ポリマー層によって柔軟性を付与でき、ポリマー層3の設計を容易に行うことができる。
ポリマー層3を形成する組成物としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を主成分とした熱可塑性樹脂組成物、ゴムを主成分としたゴム組成物、硬質ポリマーを含む組成物、軟質ポリマーを含む組成物などが挙げられる。
【0022】
熱可塑性樹脂組成物の主成分としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合(EVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。柔軟性を高めるため、前記熱可塑性樹脂組成物には可塑剤が併用されていることが好ましい。これらの中では、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)をベースとした熱可塑性樹脂組成物が、利便性の観点から好ましい。
ゴム組成物の主成分としては、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどが挙げられる。
【0023】
硬質ポリマーとしては、硬質塩化ビニル、硬質オレフィン系樹脂、硬質エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂などが挙げられる。
軟質ポリマーとしては、軟質塩化ビニル、軟質酢酸ビニル、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマーなどの各種エラストマー、ゴムなどが挙げられる。
【0024】
上記各組成物には、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、クレーなどの充填剤、短繊維などの補強剤、可塑剤、架橋剤、加工助剤、安定剤、耐候剤、プロセスオイルなどの各種添加剤が添加されていてもよい。また、ポリマー層3全体は、非発泡でもよいし、或いは、ポリマー層3の全体又は一部が発泡されていてもよい。層全体が発泡している又は一部の層が発泡しているポリマー層3を用いることにより、軽く且つ耐衝撃性に優れた巾木1を提供できる。前記発泡させるための発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p'−オキシビスベンゼンスルホンヒドラジド、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミドなどが挙げられる。
【0025】
ポリマー層3の曲げ弾性率は、特に限定されないが、好ましくは20〜3000MPa、より好ましくは200〜1600MPa、さらに好ましくは300〜800MPaである。曲げ弾性率が前記範囲よりも高いと、切削加工性が低下する上、ポリマー層3の強度が低下する傾向があるからである。曲げ弾性率が前記範囲よりも低いと、ポリマー層3の剛性を保持することが困難となって耐傷つき性や耐摩耗性が低下する上、壁面の凹凸に追随し過ぎて意匠性が低下するおそれがあるからである。
なお、硬質ポリマーを含む組成物から形成された硬質ポリマー層は、定常状態で、その曲げ弾性率が700MPa以上のものをいい、軟質ポリマーを含む組成物から形成された軟質ポリマー層は、その曲げ弾性率が700MPa未満のものをいう。
ただし、前記各曲げ弾性率は、JIS K7171に準じて測定される値をいう。
【0026】
ポリマー層3は、ショアーD硬度30〜70が好ましい。かかる硬度範囲のポリマー層3は、切削が容易な上、カッター、ナイフ、包丁等の汎用的な切断用具で容易に切断できる。なお、ポリマー層3の硬度は、上記範囲以外でもよい。
【0027】
ポリマー層3の厚みは特に限定されない。もっとも、本発明の巾木1は、本体板2を2つ折りした構造であるため、巾木1の幅は、ポリマー層3の厚みの2倍を超える。従って、ポリマー層3の厚みは、形成しようとする巾木1の厚みに応じて適宜設定され、例えば、ポリマー層3の厚みは、1mm〜7mm程度である。
【0028】
次に、上記本体板2の化粧層4は、前記ポリマー層3の一面全体に設けられている。
化粧層4は、所望の意匠(例えば、模様)を表した層である。意匠の表示方法は、特に限定されないが、一般には、意匠は、印刷によって付与される。巾木1の表面に表出させる意匠としては、マーブル模様、石目模様、木目模様などが挙げられる。なお、化粧層4は、着色模様や着色無地であってもよい。着色無地の場合には、化粧層4には模様が省略される。
化粧層4は、ポリマー層3の一面にシートを設け且つこのシートの表面に直接印刷することにより形成してもよいし、或いは、ポリマー層3の一面にシートを設け且つこのシートの表面にホットメルト接着剤に裏塗りした印刷を転写することより形成してもよい。また、化粧層4は、透明又は着色の基材シートに印刷が施されたもの(化粧の施された基材シート)をポリマー層3に接着することにより形成してもよい。
【0029】
好ましくは、化粧の施された基材シートが用いられる。
化粧層4が化粧の施された基材シートから構成されている場合、前記基材シートをポリマー層3の一面に積層接着することにより、ポリマー層3の一面に化粧層4を容易に設けることができる。
上記本体板2においては、ポリマー層3の一部を切除した長状溝7を形成したときに、この長状溝7にて区画された第1本体板21及び第2本体板22が分離されず、第1本体板21及び第2本体板22が化粧層4を介して繋がったままとなる。このため、前記長状溝7において本体板2を他面側に折り曲げ、第1本体板21及び第2本体板22の他面側を接合できる。
【0030】
上記シートは、容易に折り曲げることができ且つ折り曲げても破損しない薄いフィルムであれば特に限定されず、例えば、合成樹脂製フィルム、紙、合成紙、薄手の織物生地などの布地などが挙げられる。
シートの厚みは、特に限定されないが、余りに薄いと折り曲げたときに破断する虞があり、一方、余りに厚いと折り曲げ難く且つ費用対効果の点で好ましくない。かかる点を考慮すると、シートが合成樹脂製フィルムや合成紙である場合、その厚みは、20μm〜200μmが好ましく、シートが紙である場合には、坪量70g/m〜300g/mが好ましく、シートが布地である場合には、200μm〜800μmが好ましい。
【0031】
印刷は、通常、基材フィルムの表面に設けられるが、基材フィルムが透明である場合には、基材フィルムの裏面に設けてもよい。
なお、基材フィルム自体が模様を有する場合(例えば、基材フィルムが、模様付き織物生地である場合など)には、前記印刷を省略することも可能である。
【0032】
また、印刷面の上から透明なオーバーコート層が設けられていてもよい。
オーバーコート層は、従来公知の方法に準じて、適宜形成できる。オーバーコート層は、有色又は無色の透明樹脂を用いて形成できる。かかるオーバーコート層は、表面光沢性や質感を与えると共に、化粧層4を保護する効果がある。特に、透明なオーバーコート層を通して化粧層4を見ることによって、化粧層4の意匠の質感が高められる。オーバーコート層の透明樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)又はポリ塩化ビニリデン(PVDC)が好適であるが、ポリエステル、ポリウレタンフィルムなどを用いてもよい。
加えて、化粧層4とポリマー層3との間に、又は、ポリマー層3が複層構造の場合には各層の間に、繊維補強シートを設けてもよい。繊維補強シートとしては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維などからなる織布又は不織布などが挙げられる。かかる繊維補強シートを有する巾木1は、温度による寸法変化が少なく、人間の足、台車、車椅子、ストレッチャー、掃除機などの衝突による衝撃から壁面を強力に保護できる。
【0033】
本発明の巾木1は、上記本体板2を折り曲げて得られるが、ポリマー層3を有する本体板2は、そのままでは折り曲げることができない。
このため、上記本体板2のポリマー層3の他面に、図4に示すように、その短手方向中途部から長手方向Xにポリマー層3の一部分を切除した直線状の長状溝7が形成される。
この長状溝7は、ポリマー層3のみを切除することによりに形成されており、長状溝7は化粧層4にまで至っていない。従って、本体板2は、前記長状溝7を境にして、2つの領域(第1本体板21及び第2本体板22)に区画されており、第1本体板21と第2本体板22は、化粧層4を介して繋がっている。
かかる長状溝7は、樹脂切削装置を用いることによって容易に形成することができる。
【0034】
長状溝7は、例えば、2本形成されている。なお、長状溝7は、1本でもよい。
2本の長状溝7,7が形成されている場合、それぞれの長状溝7において本体板2を折り曲げることにより、巾木1が構成されている。
2本の長状溝7,7は、図4に示すように、ポリマー層3の短手方向Yに隣接して形成され、それぞれ長手方向Xに向かって平行に延びている。
長状溝7の溝形状は、長状溝7において本体板2を折り曲げることができることを条件として特に限定されない。もっとも、折り曲げ部分の内側において実質的に隙間を生じないようにするため、長状溝7は、略直角V字状(図4に示すように、側面視略直角の溝であって、当該溝の一方の斜面と化粧層の他面の成す角が約45度)であることが好ましい。このような略直角V字状の2つの長状溝7が形成されている場合、折り曲げ部分に、各長状溝7に対応した2つの直角部が形成される。
【0035】
長状溝7が本体板2の短手方向中央部に形成されていれば、第1本体板21と第2本体板22の幅(短手方向の長さ)は等しくなるため、本体板2を折り曲げたときに第1本体板21の下端面と第2本体板22の下端面が略同一平面上に揃う。従って、巾木1の表面1a全体及び裏面1b全体に、化粧層4(第1本体板21の化粧層4と第2本体板22の化粧層4)の意匠が表れる。
なお、長状溝7の形成位置によっては、本体板2を折り曲げたときに第1本体板21の下端面と第2本体板22の下端面が揃っていない場合があり、このような場合には、前記本体板2の折り曲げ後、何れか一方の下端面を削って両下端面を略同一平面上に揃えてもよい。
【0036】
また、第1本体板21のポリマー層3の下方及び第2本体板22のポリマー層3の下方には、ポリマー層3の一部分を長手方向Xに切除した嵌入溝9がそれぞれ形成されている。この嵌入溝9に、不陸調整片5の上方部が嵌入保持されている。
不陸調整片5は、柔軟な帯状板からなる(例えば、ゴム、MDFなどの軟質ポリマー層)。不陸調整片5の下方部は、床面の不陸に応じて変形し易いように、下方に向かうに従って厚みが薄くなっている。
接合された第1本体板21の他面と第2本体板22の他面は、次のような方法を用いて接着されている。その方法としては、例えば、樹脂ペースト(塩化ビニル樹脂の場合は、塩化ビニルゾル)を薄塗りした後に加熱硬化する方法、塩化ビニル製フィルムを貼り付けて加熱固着する方法、接着テープを貼り付ける方法、接着剤を塗布後に乾燥させる方法などが挙げられる。不陸調整片5の上方部と第1及び第2本体板21,22の各他面も同様な方法を用いて接着されている。
接着剤としては、変成シリコーン系接着剤、ラテックス系接着剤、溶融ポリマー接着剤、アクリレート接着剤、ビニル共重合系接着剤などの従来公知の接着剤を使用できる。例えば、第1本体板21の他面と第2本体板22の他面、及び、不陸調整片5の上方部の両面と第1及び第2本体板21,22の各他面を、それぞれ強固に接着できる公知の接着剤が使用され得る。
【0037】
上記構成からなる巾木1は、下記の各工程を経て製造できる。
図3に示すように、ポリマー層3と化粧層4を有する本体板2であって、所定の幅及び長さの上記本体板2を準備する。
次に、図4に示すように、この本体板2のポリマー層3の一部分を切除して、本体板2の長手方向Xに延びる上記長状溝7を形成する。
また、不陸調整片5を設ける場合には、ポリマー層3の下方部を切除して、本体板2の長手方向Xに延びる上記嵌入溝9を形成する。
第1本体板21及び/又は第2本体板22の他面(ポリマー層3の他面)に、接着剤を塗布する。
最後に、嵌入溝9に不陸調整片5を差し込みながら、本体板2を長状溝7において他面側に折り曲げ、第1本体板21と第2本体板22の他面同士を接着することにより、表面1a、上端面1c及び裏面1bに同じ意匠(1つの化粧層4の意匠)が表された巾木1を得ることができる。なお、不陸調整片5を第1本体板21又は第2本体板22の何れか一方の他面に予め貼っておき、他方の本体板を折り曲げて接着することにより、前記巾木1を形成してもよい。
本発明の製造方法よれば、ポリマー層3に長状溝7を形成した後、この長状溝7において本体板2を他面側に折り曲げるだけで、簡易に巾木1を製造できる。
【0038】
上記巾木1は、例えば、壁面の下方に取り付けられる。
本発明の巾木1は、表面1a及び裏面1bに同じ意匠(1つの化粧層4の意匠)が表れているので、どちらの面を壁面側に向けて施工してもよい。
また、施工場所が非常に長い場合には、一方の巾木1の右端部と他方の巾木1の左端部を接着剤で接着し、巾木1を長手方向Xに接合する。なお、接着剤による接着に代えて、巾木1の右端部と巾木1の左端部を連結するコネクターを用いて両巾木1を長手方向Xに接合してもよい。
【0039】
また、入隅や出隅に巾木1を取り付けるときには、巾木1は、略直角状に形成される。細長い長方形板からなる巾木1を、直角に折り曲げるために、上記巾木1の表面1a又は裏面1bの何れか一方の面に、その短手方向Yに切除した短手溝8を形成することが好ましい(図5及び図6参照)。
短手溝8は、接合された第1本体板21及び第2本体板22の何れか一方の本体板2の化粧層4を除き、巾木1の一部分を短手方向Yに切除することによって形成できる。
具体的には、例えば、巾木1の長手方向中途部において、第2本体板22の全体(ポリマー層3及び化粧層4)から第1本体板21のポリマー層3までを、短手方向Yに直線状に切除することにより、短手溝8を形成する。このように第1本体板21の化粧層4を除いて、巾木1の厚み方向に切除した短手溝8を形成することにより、巾木1は、短手溝8において分離されず、第1本体板21の化粧層4を介して繋がっている。
短手溝8の溝形状は、短手溝8において巾木1を略直角状に折り曲げることができることを条件として特に限定されない。もっとも、短手溝8において略直角状に折り曲げたときに、接合部分が目立ち難くなることから、短手溝8は、図5及び図6に示すように、上記長状溝7と同様な略直角V字状であることが好ましい。
【0040】
このように短手溝8が形成された巾木1は、図7に示すように、該短手溝8にて区画された左右の領域11,12を、短手溝8において内側に折り曲げることができる。折り曲げられた左右の領域11,12は、略直角状に交わっている。なお、折り曲げたとき、短手溝8の一方の45度斜面と他方の45度斜面が接合するので、接合部分13が目立つこともない。
【0041】
上記略直角状に折り曲げられた巾木1は、その表面1a及び裏面1bに、それぞれ化粧層4の意匠が表れている。従って、略直角状の巾木1は、その裏面1b側を壁面に取り付けることにより、出隅用の巾木1として使用でき、その表面1a側を壁面に取り付けることにより、入隅用の巾木1として使用できる。
【0042】
次に、本発明の巾木1の他の実施形態を示す。
以下、他の実施形態について説明するが、上記実施形態と同様の構成及び効果についてはその説明を省略し、用語及び図番を援用する場合がある。
上記実施形態において、ポリマー層3の下方に嵌入溝9を設け、この嵌入溝9に不陸調整片5が嵌入保持されているが、このような嵌入溝9を形成せずに、不陸調整片5を保持することもできる。
例えば、図8に示すように、第1本体板21の他面と第2本体板22の他面の間に隙間6が生じるように、長状溝7において本体板2を折り曲げ、前記隙間6に不陸調整片5の上方部を差し入れ、接着剤を用いて、不陸調整片5の両面を第1本体板21の他面及び第2本体板22の他面に接着してもよい。
なお、不陸調整片5の上方部は、前記隙間6の全体を埋めるように差し入れられていてもよいし、一部に空洞を残した状態で前記隙間6に差し入れられていてもよい。
また、不陸調整片5の上方部が短く、前記隙間6の大部分に空洞が生じる場合には、この空洞を埋めるために、不陸調整片5と略同じ厚みのスペーサーを前記隙間6に設けてもよい。
【0043】
かかる巾木1を構成する本体板2としては、例えば、図9に示すように、ポリマー層3のみを切除して長手方向Xに平行に延びる略直角V字状の2本の長状溝7,7を、不陸調整片5の厚み相当する長さの間隔Zを短手方向Yに開けて形成すればよい。
【0044】
また、上記実施形態において、長状溝7の溝形状は、略直角V字状に形成されているが、例えば、図10に示すように、長状溝7の溝形状は、略凹状に形成されていてもよい。この場合、長状溝7の幅を、ポリマー層3の厚みの2倍に設定することが好ましい。ポリマー層3の2倍厚に相当する幅を有する長状溝7は、1本だけ形成すればよい。この1本の長状溝7において本体板2を折り曲げることにより、図11に示すように、第1本体板21の他面と第2本体板22の他面が接合され、且つ折り曲げ部分の内側において実質的に隙間を有しない巾木1を構成できる。
【0045】
また、上記実施形態において、巾木1には、不陸調整片5が設けられているが、図11に示すように、巾木1に、不陸調整片5が設けられていなくてもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態において、巾木1は、その表面1a全体及び裏面1b全体に、化粧層4(第1本体板21の化粧層4と第2本体板22の化粧層4)の意匠が表れているが、これに限定されず、表面1a又は裏面1bの何れか一方の面の一部に、化粧層4を有しない巾木1でもよい。このような巾木1は、例えば、図12に示すように、第1本体板21の幅が第2本体板22の幅より短くなるように、長状溝7において本体板2が折り曲げられた巾木1が挙げられる。かかる巾木1は、その表面1a側に第2本体板22の他面の下方が露出することになるが、このような場合、図12に示すように、この第2本体板22の他面の下方が露出した部分に、不陸調整片5の上方部の片面を接着することにより、第2本体板22の他面の露出を防止できる。
【0047】
また、上記実施形態において、第1本体板21の他面と第2本体板22の他面とは、接着剤を用いて強固に接着されているが、この両他面が弱接着されていてもよい。また、不陸調整片5を有する場合には、第1本体板21の他面及び/又は第2本体板22の他面と、不陸調整片5の上方部の両面又は片面とが弱接着されていてもよい。なお、弱接着とは、手で剥離できる程度の接着強度を以て接着されている状態をいう。このように第1及び第2本体板21,22の両他面、又は、この両他面と不陸調整片5を弱接着する方法としては、上記接着剤よりも接着力が小さい接着剤又は粘着剤を用いたり、前記他面などの接合面に易剥離処理を行う(例えば、シリコーンを含む塗工液を塗工する)ことなどが挙げられる。
【0048】
第1本体板21と第2本体板22が弱接着にて接合されていれば、第1本体板21及び第2本体板22を開くことができる。また、不陸調整片5を有する場合であって、それらが弱接着にて接合されていれば、第1本体板21と第2本体板22を開いた後、不陸調整片5を取り外すことができる。
このように第1本体板21及び第2本体板22を開くことによって、本発明の巾木1を建物のコーナー部の保護材として使用できる。
例えば、図13に示すように、開いた第1本体板21と第2本体板22を略90度(他面間の成す角を略90度とする)にし且つ両板21,22の連結部分(上記実施形態では、巾木の上端面1c)を建物の柱の出隅部Aの線A1に一致するように配置して、第1本体板21と第2本体板22を出隅部Aに接着することにより、これを保護できる。すなわち、巾木1を出隅材として使用することもできる。また、特に図示しないが、第1本体板21と第2本体板22を略270度(他面間の成す角を略270度とする)にし且つ両板21,22の連結部分を建物の入隅部の線に一致するように配置して、第1本体板21と第2本体板22を接着することにより、入隅部を保護できる。すなわち、巾木1を入隅材として使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の巾木は、一般住宅、マンション、オフィスビルなどの室内外の壁面に取り付けて使用される。
【符号の説明】
【0050】
1…巾木、1a…巾木の表面、1b…巾木の裏面、1c…巾木の上端面、2…本体板、21…第1本体板、22…第2本体板、3…ポリマー層、4…化粧層、5…不陸調整片、7…長状溝、8…短手溝、X…長手方向、Y…短手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー層と前記ポリマー層の一面側に設けられた化粧層とを有する帯状の本体板を有し、
前記ポリマー層の他面に、前記ポリマー層の一部分をその長手方向に切除した長状溝が形成され、
前記長状溝にて区画された第1本体板と第2本体板が前記化粧層を介して繋がっており、
前記長状溝において本体板を折り曲げることにより、前記第1本体板及び第2本体板の他面側が接合されている、ことを特徴とする巾木。
【請求項2】
巾木の表面又は裏面の何れか一方の面に、その短手方向に切除した短手溝が形成されている、請求項1に記載の巾木。
【請求項3】
前記短手溝において略直角状に折り曲げられている、請求項2に記載の巾木。
【請求項4】
前記ポリマー層が、硬質ポリマーを含む板状成形体であり、前記化粧層が、化粧の施された基材フィルムであり、前記基材フィルムが前記板状成形体の一面側に積層接着されている、請求項1〜3のいずれかに記載の巾木。
【請求項5】
ポリマー層と前記ポリマー層の一面側に設けられた化粧層とを有する帯状の本体板の、前記ポリマー層の短手方向中途部から長手方向に向かって前記ポリマー層の一部分を切除することにより、前記ポリマー層に長状溝を形成する工程、
前記長状溝において前記本体板をその他面側に折り曲げる工程、
を含むことを特徴とする巾木の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−153410(P2011−153410A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14017(P2010−14017)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】