説明

布帛印刷方法及びカラー図柄付き布帛

【課題】布帛に対してカラー図柄を綺麗にインクジェット印刷することが可能で、かつ耐洗濯性や耐摩擦性に優れたカラー図柄付き布帛を得ることも可能な布帛印刷方法を提供する。
【解決手段】布帛11の表面に白色又は淡色のゲル状の水性インク12をスクリーン印刷してプライマー層12を形成するスクリーン印刷工程と、プライマー層12の表面に複数色の紫外線硬化型インク13をインクジェット印刷してカラー図柄13を形成するインクジェット印刷工程とを経ることにより、カラー図柄付き布帛10を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛にカラー図柄を印刷するための布帛印刷方法と、この布帛印刷方法によりカラー図柄が印刷されたカラー図柄付き布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
織物地、編物地又は不織布などの布帛の表面にインクを吹き付けて図柄を印刷(インクジェット印刷)することは既に公知となっている(例えば特許文献1)。インクジェット印刷は、シルクスクリーン印刷などのように製版する必要がないので、製版にかかる手間やコストを抑えることができる。また、印刷枚数が少ない場合でも対応しやすく、多品種少量生産にも適している。しかし、布帛にインクジェット印刷された図柄は、紫外線硬化型インクを用いたとしても、耐洗濯性や耐摩擦性が低く、長期間の使用を経た後に綺麗な外観を保つのは非常に困難であった。
【0003】
また、インクジェット印刷では、布帛に対して緻密なカラー図柄を綺麗に印刷することは非常に困難である。というのも、布帛に対してインクを直接吹き付けると、布帛にインクが過剰に染み込んだ状態となり、カラー図柄の発色が不十分になりやすいからである。特に、黒や紺などの濃色の布帛に対してカラー図柄をインクジェット印刷すると、カラー図柄が目立たなくなり、殆ど判別することができない。さらに、布帛を形成する繊維の状態によっては、インクが布帛に十分に定着せずに滲んだ状態となり、カラー図柄自体が不鮮明になることもある。
【0004】
このような実状に鑑みてか、これまでには、水溶性高分子を主成分とするインク受理層を布帛の表面に予め形成しておき、このインク受理層に対してインクジェット印刷を行う方法も提案されている(例えば特許文献2)。これにより、インクジェット印刷を行う際のインクの染み込みや滲みを防止することができる。インク受理層の主成分となる水溶性高分子としては、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、グアガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが例示されている。
【0005】
しかし、上記のように、水溶性高分子を主成分とするインク受理層を設けることにより、インクジェット印刷時の布帛に対するインクの染み込みを防止でき、発色性を著しく低下させることなくカラー図柄を印刷することができたとしても、その耐洗濯性や耐摩擦性は未知数である。したがって、水溶性高分子を主成分とするインク受理層を設ける布帛印刷方法では、カラー図柄を印刷した布帛を衣服の生地として用いた場合であって、長期間の使用を経た場合に、そのカラー図柄が綺麗な外観を保っているとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−021833号公報
【特許文献2】国際公開第2007/029476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、インクが染み込みやすく綺麗にインクジェット印刷することが困難な布帛に対して、カラー図柄を綺麗にインクジェット印刷することが可能な布帛印刷方法を提供するものである。また、この布帛印刷方法によってカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛を提供することも本発明の目的である。さらに、布帛に対してカラー図柄がしっかりと定着し、耐洗濯性や耐摩擦性に優れたカラー図柄付き布帛を得ることも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、布帛の表面に白色又は淡色のゲル状の水性インクをスクリーン印刷してプライマー層を形成するスクリーン印刷工程と、前記プライマー層の表面に複数色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷してカラー図柄を形成するインクジェット印刷工程と、を経ることを特徴とする布帛印刷方法を提供することによって解決される。このように、水性インクによってプライマー層を形成することにより、インクジェット印刷用のインク(紫外線硬化型インク)の布帛に対する染み込みや滲みを防ぎ、緻密なカラー図柄を鮮やかに印刷することが可能になる。また、紫外線硬化型インクを布帛にしっかりと定着させ、得られるカラー図柄付き布帛の耐洗濯性や耐摩耗性を向上することも可能になる。
【0009】
ここで、「白色」とは、マンセル表色系における明度が9以上で10以下の色を指すものとする。また、「淡色」とは、マンセル表色系における明度が5以上であって、「白色」に属さない色を指すものとする。このように白色又は淡色の水性インクでプライマー層を設けることにより、布帛の地色に影響されることなく、カラー図柄を鮮やかに印刷することが可能になる。水性インクの明度は、7以上であると好ましく、8以上であるとより好ましく、9以上であるとさらに好ましい。
【0010】
また、「カラー図柄」とは、複数色(少なくとも2色)で表現された図柄を意味する。また、「図柄」とは、点、線、塗り潰し、色彩、グラデーション又はこれらを組み合わせることにより表現された視覚的に認識し得る形象をいう。具体的には、各種図形や各種模様のほか、絵や写真なども「図柄」の範疇に含まれるものとする。また、文字も「図柄」の範疇に含まれるものとする。
【0011】
本発明の布帛印刷方法において、プライマー層を形成する水性インクは、白色又は淡色のゲル状のものであれば特に限定されないが、アクリル系粘着剤などの粘着剤が添加され、その粘度が高められたものを使用すると好ましい。このように粘着剤を配合されたインクは、「ラバーインク」と呼ばれることもある。このように、プライマー層を形成する水性インクとして高粘度のものを使用することにより、布帛の表面にプライマー層を綺麗に形成することが可能になる。ラバーインクは、シルクスクリーン印刷などのスクリーン印刷にも好適に使用することができる。手刷りの場合だけでなく、機械刷りの場合にも好適に使用できる。
【0012】
また、本発明の布帛印刷方法において、インクジェット印刷の方法は、特に限定されないが、フルカラーで表現されたデジタルイメージデータに基づいて行うと好ましい。「フルカラー」とは、インクジェット印刷のためのデジタルイメージデータがあらゆる色を表現できることを意味し、12ビットカラー、15ビットカラー、15ビットハイカラー、16ビットカラー、16ビットハイカラー、18ビットカラー、24ビットカラー、トゥルーカラー、30ビットカラー、ディープカラー、32ビットカラー、36ビットカラー、42ビットカラー、48ビットカラー、浮動小数点カラーなどのほか、各種インデックスカラーなどが例示される。空間分割や時間分割により本来の表示性能では表示されない中間階調を表現する疑似フルカラーもフルカラーの概念に含むものとする。「デジタルイメージデータ」とは、BMP形式、EPS形式、GIF形式、JPEG形式、PNG形式、TIFF形式、RAW形式など、画像をデジタル的に表現したデータのことをいう。
【0013】
ところで、本発明の布帛印刷方法でできる布帛の種類は、特に限定されない。布帛としては、織物地、編物地又は不織布などが例示される。なかでも、綿糸を綾織りにした厚手の生地(デニム生地)や、綿や麻を平織りにした厚手の生地(帆布)が好適である。これらの生地は、インクジェット印刷用のインクをそのまま吹き付けると染み込んだり滲んだりしやすく、緻密なカラー図柄を鮮明に印刷することは困難であると考えられているため、本発明の布帛印刷方法を採用する意義が高まるからである。特に、ジーンズパンツなど、衣類として洗濯される機会の多いデニム生地であると好適である。
【0014】
また、本発明の布帛印刷方法において、布帛の地色も、特に限定されないが、濃色であればあるほど本発明の布帛印刷方法で印刷されたカラー図柄の発色と、他の布帛印刷方法で印刷されたカラー図柄の発色との差が歴然となる。このため、布帛の地色は、黒色又は濃色であると好ましい。ここで、「黒色」とは、マンセル表色系における明度が0以上で1以下の色を指すものとする。また、「濃色」とは、マンセル表色系における明度が5以下であって、「黒色」に属さない色を指すものとする。布帛の地色の明度は、4以下であると好ましく、3以下であるとより好ましく、2以下であるとさらに好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、インクが染み込みやすく綺麗にインクジェット印刷することが困難な布帛に対して、カラー図柄を綺麗にインクジェット印刷することが可能な布帛印刷方法を提供することが可能になる。また、この布帛印刷方法によってカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛を提供することも可能になる。さらに、布帛に対してカラー図柄がしっかりと定着し、耐洗濯性や耐摩擦性に優れたカラー図柄付き布帛を得ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のカラー図柄付き布帛の断面を拡大した拡大断面図である。
【図2】染色有り・洗い加工無しのデニム生地からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真である。
【図3】染色有り・洗い加工有りのデニム生地からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真である。
【図4】クリーム色の帆布からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真である。
【図5】染色無し・洗い加工無しのデニム生地からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真である。
【図6】本発明の布帛印刷方法によりカラー図柄を印刷したジーンズパンツの一例を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.本発明の布帛印刷方法の好適な実施態様
本発明の布帛印刷方法及びカラー図柄付き布帛の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明のカラー図柄付き布帛10の断面を拡大した拡大断面図である。本発明の布帛印刷方法は、図1に示すように、布帛11の表面に白色又は淡色のゲル状の水性インク12をスクリーン印刷してプライマー層を形成するスクリーン印刷工程と、プライマー層12の表面に複数色の紫外線硬化型インク13をインクジェット印刷してカラー図柄を形成するインクジェット印刷工程とを経ることにより、布帛11の表面にカラー図柄13が印刷されたカラー図柄付き布帛10を得るものとなっている。
【0018】
[スクリーン印刷工程]
本実施態様の布帛印刷方法において、スクリーン印刷工程は、所定形状のインク透過部(レジストされておらず水性インク12が透過できる部分)が形成されたスクリーンをフレームに張って、印刷対象である布帛11を前記スクリーンの下側に配し、前記スクリーンの上側に載せた水性インク12をスキージーで下側に押し付けることにより、インク透過部から水性インク12を透過させることにより、布帛11の表面に水性インク12が印刷されたプライマー層12を形成する工程となっている。スクリーン印刷工程は、手作業で行ってもよいが、有る程度の枚数の布帛11に対して同じ寸法形状のプライマー層12を印刷する場合には、スクリーン印刷機を用いるとよい。
【0019】
前記スクリーンには、メッシュシートが用いられる。前記スクリーンには、薄絹を使用する場合のほか、ポリエステル繊維やナイロン繊維などの合成繊維からなる編織地や、ステンレス線材などの各種線材からなる編織地を使用する場合もある。前記スクリーンにおけるインク透過部の寸法形状、すなわち布帛11におけるスクリーン印刷によりプライマー層12を形成する部分の寸法形状は、後述するインクジェット印刷工程で印刷するカラー図柄13の寸法形状に重なるのであれば特に限定されないが、カラー図柄13の周囲に余白が形成されないように、通常、カラー図柄13の寸法形状と同一にされる。
【0020】
水性インク12は、白色又は淡色のゲル状のものが使用される。本実施態様の布帛印刷方法において、水性インク12は、アクリル酸エステル(アクリル系粘着剤)が配合されてその粘度が高められた白色ペースト状の「水性ラバーインク」を使用している。水性インク12には、布帛11を形成する繊維との密着性や堅牢度を向上するために、硬化剤を添加すると好ましい。
【0021】
水性インク12の具体的な粘度は、前記スクリーンのインク透過部を通過できるのであれば特に限定されない。しかし、水性インク12の粘度が低すぎると、水性インク12が布帛11に対して過剰に染み込んでしまって、布帛11の表面にプライマー層12を均一に形成することができなくなるおそれがある。このため、水性インク12の粘度(25℃,BH型粘度計)は、50P(ポイズ)以上とすると好ましい。水性インク12の粘度は、100P以上であるとより好ましく、150P以上であるとさらに好ましい。一方、水性インク12の粘度を高くしすぎると、水性インク12が前記スクリーンを通過しにくくなるおそれがある。このため、水性インク12の粘度は、通常、3000P以下とされる。水性インク12の粘度は、2000P以下であると好ましく、1000P以下であるとより好ましい。
【0022】
以上のように、布帛11に対して水性インク12をスクリーン印刷することにより、プライマー層12を厚く形成できる。プライマー層12の厚さは、特に限定されないが、薄くしすぎると、布帛11の表面の凹凸がプライマー層12の表面に現れやすくなり、後述するインクジェット印刷工程で印刷するカラー図柄13を綺麗に印刷できなくなるおそれがある。このため、プライマー層12の厚さは、50μm以上に設定すると好ましい。一方、プライマー層12を厚くしすぎると、布帛11が硬くなりすぎるおそれがある。このため、プライマー層12の厚さは、500μm以下に設定すると好ましい。
【0023】
水性インク12のスクリーン印刷は、1度に行ってもよいが、複数回行うと好ましい。このように、2回以上の厚塗りを行うことにより、上記のように、ある程度厚みのあるプライマー層12であっても、均一かつ綺麗に形成することができる。スクリーン印刷工程で印刷されたプライマー層12を乾燥させた後、後述するインクジェット印刷工程が行われる。
【0024】
[インクジェット印刷工程]
インクジェット印刷工程は、プライマー層12の表面に複数色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷してカラー図柄13を形成する工程である。インクジェット印刷は、インクジェットプリンタを用いて行われる。スクリーン印刷工程を終えた布帛11をインクジェットプリンタへセットする際には、インクジェット印刷の印刷範囲がプライマー層12と重なっていないと、カラー図柄13の全体が綺麗に印刷されなくなったり、カラー図柄13の周囲に意図しない余白が形成されたりするため、プライマー層12を正確に位置合わせする。
【0025】
インクジェット印刷工程において、印刷するカラー図柄13は、複数色で表現されたものであれば特に限定されないが、鮮やかなフルカラー図柄であると好ましい。具体的には、フルカラー絵画やフルカラー写真であると好ましい。これにより、本発明の布帛印刷方法を採用する意義を高めることが可能になる。本実施態様の布帛印刷方法において、インクジェット印刷工程は、フルカラー写真をイメージスキャナで読み取ることにより得たデジタルイメージデータ(フルカラーイメージデータ)に基づいて行うようにしている。
【0026】
インクジェット印刷工程で使用する紫外線硬化型インクの種類は、インクジェット印刷用のものであれば特に限定されない。また、使用するインクの色も、2色以上であれば特に限定されないが、通常、3色以上とされる。フルカラーで印刷するためには、4色以上であると好ましい。本実施態様の布帛印刷方法において、紫外線硬化型インクは、シアン、マゼンタ、イエロー及び黒の4色を用いており、綺麗にフルカラー印刷できるようにしている。
【0027】
カラー図柄13を布帛11のプライマー層12へインクジェット印刷し終えると、紫外線ランプなどを用いて紫外線をカラー図柄13へ照射し、紫外線硬化型インク13を硬化させる。このように、紫外線硬化型インク13を用いることにより、得られるカラー図柄付き布帛10におけるカラー図柄13の耐洗濯性や耐摩擦性を向上することができる。以上により、本実施態様の布帛印刷方法が完了する。
【0028】
2.試験
[試験方法]
続いて、上記の本発明の布帛印刷方法によりカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛(後述する実施例1〜4に係るカラー図柄付き布帛)と、本発明以外の布帛印刷方法によりカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛(後述する比較例1.1〜4.2に係るカラー図柄付き布帛)のそれぞれについて、耐光性、耐洗濯性及び耐摩擦性を評価するために試験を行った。耐光性の試験は、「紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度(JIS L 0842:2004)」に規定される第3露光法(20時間照射)に基づいて行った。また、耐洗濯性の試験は、「洗濯に対する染色堅牢度(JIS L 0844:2005)」に規定されるA−2法に基づいて行った。さらに、「摩擦に対する染色堅牢度(JIS L 0849:2004)」に規定される摩擦試験機2型(試料は縦方向のみ)を用いて行った。以下において、特に言及しない内容については、実施例1〜4及び比較例1.1〜4.2の間で共通である。
【0029】
[実施例1]
まず、染色(インディゴ染め)有り・洗い加工無しのデニム生地(いわゆるノンウォッシュデニム)からなる布帛に対して、本発明及び本発明以外のそれぞれの布帛印刷方法によって、カラー図柄(縦方向に並べた3つの長方形の区画に、黄緑色の花のアップ写真と、青紫色の花のアップ写真と、赤紫色の花のアップ写真を配置した図柄)を印刷したカラー図柄付き布帛を使用して行った試験結果について説明する。下記表1に、その試験結果を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
また、図2に、染色有り・洗い加工無しのデニム生地からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類(実施例1、比較例1.1及び比較例1.2)のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真を示す。図2(a)は、上述した本発明の布帛印刷方法でカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛(実施例1)である。図2(b)は、実施例1と同じ布帛(デニム生地)に対して、まず白色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷した後、その上から別の4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例1.1)である。図2(c)は、実施例1と同じ布帛(デニム生地)に対して、そのまま4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例1.2)である。
【0032】
[実施例2]
次に、染色(インディゴ染め)有り・洗い加工有りのデニム生地(いわゆるウォッシュデニム)からなる布帛に対して、本発明及び本発明以外のそれぞれの布帛印刷方法によって、カラー図柄(実施例1等と同じカラー図柄)を印刷したカラー図柄付き布帛を使用して行った試験結果について説明する。下記表2に、その試験結果を示す。
【0033】
【表2】

【0034】
また、図3に、染色有り・洗い加工有りのデニム生地からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類(実施例2、比較例2.1及び比較例2.2)のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真を示す。図3(a)は、上述した本発明の布帛印刷方法でカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛(実施例2)である。図3(b)は、実施例2と同じ布帛(デニム生地)に対して、まず白色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷した後、その上から別の4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例2.1)である。図3(c)は、実施例2と同じ布帛(デニム生地)に対して、そのまま4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例2.2)である。
【0035】
[実施例3]
次に、クリーム色の帆布からなる布帛に対して、本発明及び本発明以外のそれぞれの布帛印刷方法によって、カラー図柄(実施例1,2等と同じカラー図柄)を印刷したカラー図柄付き布帛を使用して行った試験結果について説明する。下記表3に、その試験結果を示す。
【0036】
【表3】

【0037】
また、図4に、クリーム色の帆布からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類(実施例3、比較例3.1及び比較例3.2)のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真を示す。図4(a)は、上述した本発明の布帛印刷方法でカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛(実施例3)である。図4(b)は、実施例3と同じ布帛(帆布)に対して、まず白色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷した後、その上から別の4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例3.1)である。図4(c)は、実施例3と同じ布帛(帆布)に対して、そのまま4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例3.2)である。
【0038】
[実施例4]
次に、染色無し・洗い加工無しのデニム生地(いわゆるホワイトデニム)からなる布帛に対して、本発明及び本発明以外のそれぞれの布帛印刷方法によって、カラー図柄(実施例1,2等と同じカラー図柄)を印刷したカラー図柄付き布帛を使用して行った試験結果について説明する。下記表4に、その試験結果を示す。
【0039】
【表4】

【0040】
また、図5に、染色無し・洗い加工無しのデニム生地からなる布帛に対して、本発明の布帛印刷方法を含む計3種類の印刷方法でカラー図柄を印刷することにより得た3種類(実施例4、比較例4.1及び比較例4.2)のカラー図柄付き布帛をそれぞれ撮影した写真を示す。図5(a)は、上述した本発明の布帛印刷方法でカラー図柄を印刷したカラー図柄付き布帛(実施例4)である。図5(b)は、実施例4と同じ布帛(デニム生地)に対して、まず白色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷した後、その上から別の4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例4.1)である。図5(c)は、実施例4と同じ布帛(デニム生地)に対して、そのまま4色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷したカラー図柄付き布帛(比較例4.2)である。
【0041】
[考察]
図2〜5を見ると、本発明の布帛印刷方法によってカラー図柄を印刷した実施例1〜4のカラー図柄付き布帛には、布帛の地色にかかわらず、カラー図柄がくっきりと印刷されていることが分かる。写真をフルカラーで掲載できないのが残念であるが、実際の実施例1〜4のカラー図柄付き布帛を見ると、緻密なカラー図柄が実際のフルカラー写真と同様のリアルな質感で表現されていることが分かる。
【0042】
これに対し、本発明以外の布帛印刷方法によってカラー図柄を印刷した比較例1.1〜4.2のカラー図柄付き布帛は、本発明の布帛印刷方法によってカラー図柄を印刷した実施例1〜4のカラー図柄付き布帛と比較して、いずれもカラー図柄が不鮮明となっていることが分かる。なかでも、布帛の地色が濃色である比較例1.1〜2.2において、その傾向は顕著となっている。特に、濃色の布帛にそのまま4色の紫外線硬化型インクを吹き付けた比較例1.2及び比較例2.2のカラー図柄付き布帛では、印刷されたカラー図柄が花であることさえも容易に判別できないレベルまで、カラー図柄が布帛の地色と同化してしまっている。
【0043】
また、上記表1〜4を見ると、本発明の布帛印刷方法によってカラー図柄を印刷した実施例1〜4のカラー図柄付き布帛は、耐光性、耐洗濯性及び耐摩擦性の全ての項目において、「4級」以上の高評価(「4級」、「4−5級」又は「5級」)となっており、実施例1のカラー図柄付き布帛が商品として販売するのに十分な品質を実現できるものであることが分かる。特に、湿潤状態の耐摩擦性では、「4−5級」と、従来のインクジェット印刷では考えられないレベルの高評価を得ている。
【0044】
これに対し、本発明以外の布帛印刷方法によってカラー図柄を印刷した比較例1.1〜4.2のカラー図柄付き布帛は、いずれも、耐光性、耐洗濯性及び耐摩擦性の全ての項目において、実施例1〜4のカラー図柄付き布帛を上回る項目は無かった。実施例1〜4のカラー図柄付き布帛を上回る項目が無いどころか、湿潤状態での耐摩擦性は、比較例1.1、比較例2.1、比較例3.1及び比較例4.1のカラー図柄付き布帛で「1−2級」、比較例1.2、比較例2.2、比較例3.2及び比較例4.2のカラー図柄付き布帛で「2−3級」又は「3級」と、商品にはなり得ないレベルの低評価であった。商品として販売するのには、湿潤状態の耐摩擦性で「3−4級」以上の評価が必要であろう。
【0045】
以上のことから、本発明の布帛印刷方法でカラー図柄が印刷されたカラー図柄付き布帛は、カラー図柄の見た目と堅牢度の双方において、他の布帛印刷法でカラー図柄が印刷されたカラー図柄付き布帛よりも、優れていることが分かった。
【0046】
3.用途
本発明の布帛印刷方法及びカラー図柄付き布帛は、その用途を限定されるものではなく、織物地、編物地又は不織布などの布帛の表面にカラー図柄を印刷することについて需要のある全ての用途で使用することができる。このような用途としては、ズボンなどの衣類や、鞄などの服飾品や、布団カバーなどの寝具や、カーテンなどの家具などが例示される。なかでも、デニム生地や帆布からなる衣類や服飾品に好適に応用することができ、ジーンズパンツ(ジーパン)やジーンズジャンパー(ジージャン)として好適である。特に、地色(デニム生地の色)が黒や紺などの濃色である場合に好適である。
【0047】
本発明の布帛印刷方法及びカラー図柄付き布帛は、フルカラー写真のようにリアルな質感で緻密なカラー図柄を表現することが可能であるため、従来には見られないような個性的な衣類等を提供することが可能になる。例えば、破れて糸が解れた様子をカラー図柄として印刷すると、実際のデニム生地には穴が開いていないのにもかかわらず、そのデニム生地に穴があいて、その内側が見えているかのように見せることも可能になる。穴の中に描く図柄により、衣類等をより個性的なデザインとすることができる。
【0048】
例えば、図6に示すように、実際には、ジーンズパンツの下側には何も履いていないにもかかわらず、ジーンズパンツが破れてその下側から甲冑が覗いているような騙し絵的なカラー図柄を表現することも可能である。図6は、本発明の布帛印刷方法によりカラー図柄を印刷したジーンズパンツの一例を撮影した写真である。図6に示すジーンズパンツにおけるカラー図柄は、近くで手で触りながら見ないと、それが印刷であるとは分からないくらいのリアルさで仕上がっている。
【符号の説明】
【0049】
10 カラー図柄付き布帛
11 布帛
12 水性インク(プライマー層)
13 紫外線硬化型インク(カラー図柄)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の表面に白色又は淡色のゲル状の水性インクをスクリーン印刷してプライマー層を形成するスクリーン印刷工程と、
前記プライマー層の表面に複数色の紫外線硬化型インクをインクジェット印刷してカラー図柄を形成するインクジェット印刷工程と、
を経ることを特徴とする布帛印刷方法。
【請求項2】
前記水性インクがアクリル系粘着剤を添加されたものである請求項1記載の布帛印刷方法。
【請求項3】
インクジェット印刷がフルカラーで表現されたデジタルイメージデータに基づいて行われる請求項1記載の布帛印刷方法。
【請求項4】
前記布帛がデニム生地である請求項1記載の布帛印刷方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の布帛印刷方法によってカラー図柄が印刷されたカラー図柄付き布帛。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183794(P2012−183794A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50053(P2011−50053)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(511061431)ワンライト株式会社 (1)
【出願人】(511061442)有限会社ろけっと (1)
【Fターム(参考)】