説明

布類展張搬送方法及び布類展張搬送機

【課題】 布類の投入装置を複数基使用した従来の布類展張搬送機では、布類投入能力に余力があるにも拘わらず、布類両端角部を受取る受取チャックが2つしかないので、受取チャック側での処理スピードが遅くなっており、布類の処理能力が低いものであった。
【解決手段】 複数基の投入装置1A〜1Dと、それぞれ1つの受取チャックを有した3ットの展開チャック装置20A〜20Cとを使用し、複数基の投入装置1A〜1Dにおける作動順が到来した投入装置の各投入チャック11,11に対応する位置に、3セットの展開チャック装置における中間受取チャック21Bと作動順が到来した投入装置に近い位置にある左右いずれか1つの外側受取チャック(21A又は21C)とを移動させるようにすることにより、受取チャックの移動距離(移動時間)を短縮できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シーツのような大面積の布類を展張させて次工程側に搬送させるための布類展張搬送方法及び布類展張搬送機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ランドリー工場においては、シーツのような大面積の布類を洗濯・乾燥後にプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツのような大面積の布類を展張させて後送するための布類展張搬送機として、従来から図5及び図6に示すようなものがある。尚、この種の布類展張搬送機としては、例えば特開2001−159067号公報(特許文献1)に示されるもののほか、多数公知になっている。
【0004】
この図5及び図6に示す従来の布類展張搬送機は、大面積の布類Sの一辺(主として長辺)の両端角部Sa,Saを一対の投入チャック11,11で保持して所定高位置まで移送する投入装置1A〜1Dと、投入装置1A〜1Dによってそれぞれ高位置まで移送された布類S1の両端角部Sa,Saを左右2つの受取チャック21A,21Bで受取って左右方向に展張させる左右展張装置2と、左右展張装置2の直下方に設置されていて左右展張装置2で展張された布類S2の下方部を吸引して展張させる吸引装置3と、左右展張装置2及び吸引装置3で展張された布類S4を受渡す受渡し装置4と、受渡し装置4から布類S5を受取ってプレス機側に搬送する搬送装置5とを備えている。
【0005】
この種の布類展張搬送機においては、各投入装置(1A〜1D)の投入チャック11,11に保持された布類Sが上動・左右展張後、受渡し装置4に受け渡されるまでは比較的短時間(約6秒前後)で行われる一方、丸めた状態の布類から一辺の両端角部Sa,Saを捜し出してその両端角部Sa,Saを各投入チャック11,11に保持させる作業にはかなりの時間を要する(1枚当たり平均して12〜13秒かかる)。そして、この種の布類展張搬送機では、機械を効率よく作動させるために、1台の展張搬送機に複数基の投入装置を設置することが多く、図5の従来例のものでは投入装置を左右に4基(1A〜1D)設置している。尚、4基の投入装置1A〜1Dを設置して全投入装置から布類投入作業を行う場合には、1枚当たりの布類投入時間が3秒程度(12秒÷4)で行え、布類投入能力にはかなりの余裕がある(各投入装置1A〜1Dにおいてはそれぞれかなりの待ち時間ができる)。
【0006】
又、この各投入装置1A〜1D間には、それぞれ作業スペースを確保する必要からかなりの間隔(隣接する投入装置の各中心間隔が例えば1.5〜1.6m程度)を有しており、左端の投入装置1Aの中心から右端の投入装置1Dの中心までの間隔が例えば4.5〜4.8m程度ある。
【0007】
この各投入装置1A〜1Dは、左右の各投入チャック11,11で布類Sの一辺(長辺)の両端角部Sa,Saをそれぞれ保持した状態で、該各投入チャック11,11を昇降装置(ロッドレスシリンダ)12により上方に移動させるようになっている。尚、この各投入装置1A〜1D部分では、投入チャック11,11に布類の両端角部Sa,Saを保持させた後、それぞれスタートボタン(13A〜13D)を押すが、スタートボタンを押した順番は順次コントローラに記憶される。
【0008】
左右展張装置2は、各投入チャック11,11で保持されている布類両端角部Sa,Saを受取る左右一対の受取チャック21A,21Bを有している。この各受取チャック21A,21Bは、布類の両端角部Sa,Saを保持した状態で、それぞれ左右動装置(サーボモータ23A,23Bを有する)22A,22Bにより相互に離間・近接方向に作動せしめられる。そして、各受取チャック21A,21Bを図5に符号21A′,21B′で示す位置(布類S2の上辺部が緊張する位置)まで離間させることにより、該布類上辺部を展張機の中央部においてきれいに展張させ得るようになっている。
【0009】
吸引装置3は、図6に示すように縦向きの吸引ボックス31内の空気を吸引機(バキュームファン)33で下方に吸引するようになっている。吸引ボックス31の吸気口32の近傍には、モータ38,38(図5)よって回転せしめられる送込みローラ37,37が設けられている。
【0010】
受渡し装置4は、吸着ボックス41を伸縮シリンダ43で前後移動させ得るようにしたものである。
【0011】
搬送装置5は、左右展張装置2から受渡し装置4を介して展張状態の布類S4を受取る前側コンベア(バキュームコンベア)51と、それに連続する後側コンベア(排出コンベア)52を有している。尚、後側コンベア52は、プレス機側に連続している。
【0012】
図5及び図6の布類展張搬送機は、次のように機能する。まず、各投入装置1A〜1Dのそれぞれ作業位置において洗濯・乾燥済みの大面積布類Sから一辺(長辺)の両端角部Sa,Saを捜し出して当該投入装置(1A〜1D)の各投入チャック11,11に保持させた後、当該投入装置のスタートボタン(13A〜13D)を押すが、そのスタートボタン操作順は順次コントローラ(図示しない)に記憶される。そして、左右展張装置2の各左右動装置22A,22Bにより各受取チャック21A,21Bを、先順の投入装置(図5の状態では左から2番目の投入装置1B)の各投入チャック11,11に対応する位置までそれぞれ移動させ、その後に各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを保持したまま上動して、その布類両端角部を各受取チャック21A,21Bに受渡し(S1の状態)、次に該各受取チャック21A,21Bがそれぞれ左右外側に移動して(符号21A′,21B′の各位置)、布類S1の上辺部を展張させる(S2の状態)。続いて、送込みローラ37が送込み方向に高速回転するとともに、切換ダンパ35が鎖線図示側に切換えられて吸引ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側がS3の状態を経てS4のように吸引ボックス31内に吸い込まれる。このとき、この布類には、バキュームファン33の吸引作用により下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される(S4の状態)。その後、切換ダンパ35が実線図示側に切換えられ、各受取チャック21A′,21B′で保持されていた布類S4の上辺部が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持され、該吸着ボックス41が鎖線図示するように後退し、そのとき布類上辺部が前側コンベア(バキュームコンベア)51上に移乗され(符号S5の状態)、布類が展張状態のままで前側コンベア51及び後側コンベア52を経てプレス機側に供給される。
【0013】
各受取チャック21A′,21B′は、布類角部の保持を開放した後、それぞれ左右動装置22A,22B(サーボモータ23A,23B)により、スタートボタンが押された次順の投入装置の各投入チャック11,11(布類両端角部を保持して待機している)に対応する位置まで移動された後、当該投入装置が作動して次の布類Sの両端角部Sa,Saを各受取チャック21A,21Bに受け渡し、以下同様に上記動作を行って搬送装置5側に移送される。
【0014】
ところで、各左右動装置22A,22Bによる各受取チャック21A,21Bの移動スピードは、布類展張時が70m/分程度(秒速約1.2m)であり、空状態での移動時が260m/分程度(秒速約4.3m)である。他方、展張処理される布類Sは、サイズにもよるが長辺側の長さが約3m程度あり、図5に符号S2で示す布類の展張状態では、左側受取チャック21A′の位置A0及び右側受取チャック21B′の位置B0が機体10の中央から左右にそれぞれ約1.5m程度離れた位置にある。
【0015】
そして、この各受取チャック21A′,21B′は、布類展張位置において布類各端部を開放した後、それぞれ次順の投入装置の各投入チャック11,11に対応する位置まで移動せしめられるが、そのとき次順の投入装置が左右各端部のもの(1A又は1D)である場合には、左右の受取チャック21A′,21B′の一方をかなり長い距離移動させる必要がある。即ち、次順の投入装置が、図5において例えば左端部の投入装置1Aである場合には、左側受取チャック21A′は左側展開位置A0から左端部の投入装置1Aの左側投入チャック11に対応する位置A1までの比較的短い距離L1(例えば0.4〜0.5m程度)を移動させればよいが、右側受取チャック21B′は右側展開位置B0から当該投入装置1Aの右側投入チャック11に対応する位置B1までのかなり長い距離L2(3m前後)を移動させる必要があり、該右側受取チャック21B′が該距離L2(3m前後)を移動するのに単純計算で約0.7秒かかる。
【0016】
【特許文献1】特開2001−159067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、図5及び図6に示す従来の布類展張搬送機では、受取チャック21A〜21Bが2つ1組のみであるので、上記のように各外端部に位置する各投入装置1A,1D部分の布類を展張・後送するのに約6秒かかる。他方、投入装置1A〜1Dは4基有しているので、布類投入能力に十分余力があり(1枚当たりの布類投入時間は約3秒である)、各投入装置1A〜1D部分ではそれぞれかなりの待ち時間が生じる。
【0018】
このように、従来の布類展張搬送機では、各投入装置側での布類投入能力に十分余力があるにも拘わらず、特に左右各端部に位置する投入装置1A,1Dの布類を処理するのに受取チャック(21A又は21B)の移動距離(及び移動時間)が長いために、1枚当たりの布類処理スピードを速くできない(時間当たりの布類処理枚数が少ない)という問題があった。
【0019】
そこで、本願発明は、受取チャック側での布類処理スピードを速くして、時間当たりの布類処理枚数を多くできるようにした布類展張搬送方法及び布類展張搬送機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0021】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、洗濯・乾燥後のシーツのような大面積布類をきれいに展張して後送させるための布類展張搬送方法を対象にしている。
【0022】
この請求項1の布類展張搬送方法は、機体の前部において左右一対の投入チャックを有した投入装置によりシーツのような大面積の布類の一辺の両端角部を保持して所定高位置まで吊上げ、その吊上げ布類の各保持部分を左右展張装置の2つの受取チャックで受取り、該両受取チャックを左右に離間させて吊上げ布類を左右に展張させた後、その展張布類を次工程側に搬送させるようにしたものである。
【0023】
又、この布類展張搬送方法では、投入装置は左右に複数基設置し、左右展張装置は1つの受取チャックと該受取チャックを左右に移動させる1つの左右動装置を1セットにした展開チャック装置を3セット使用し、さらに各展開チャック装置の3つの受取チャックが左右同一直線上に位置するように配置したものを使用している。
【0024】
投入装置は、左右に複数基設置されているが、2基では左右展張装置側での処理能力が布類投入能力を上回ることがあるので処理能力に無駄ができることがあり、他方、5基以上では左右展張装置側での処理能力に対して布類投入能力が必要以上に上回るので設備(投入装置)に無駄ができるとともに機体が必要以上に大型化する。従って、この投入装置は、実際には3基又は4基が好ましい。
【0025】
この投入装置には、人の肩幅程度の間隔をもって左右一対の投入チャックが設けられているとともに、該各投入チャックを昇降装置により所定高さ範囲で昇降させ得るようになっている。又、各投入装置部分にはそれぞれ作業スペースを確保する必要から、各投入装置間にかなりの間隔(隣接する投入装置の各中心間隔が例えば1.5〜1.6m程度)を有しており、4基の投入装置を使用したものでは両端に位置する2つの投入装置の中心間隔が例えば4.5〜4.8m程度になっている。
【0026】
この各投入装置は、両投入チャックに布類の一辺の両端角部を保持させた後、スタートボタンを押すと、コントローラに作動順が記憶されて待機するようになっている。そして、作動順が到来した投入装置に対して左右展張装置の受取チャックが受取り可能位置まで移動した時点で、待機していた当該投入装置が作動するようになっている。尚、各投入装置の作動順は、それぞれ作業員が布類の一辺(長辺)の両端角部を捜し出して、該両端角部をそれぞれ投入チャックに保持させた後、スタートボタンを押すと、そのスタートボタン操作順がコントローラに記憶されて、各投入装置の作動順が決められる。
【0027】
左右展張装置には、3セットの展開チャック装置が使用されているが、この各展開チャック装置の3つの受取チャックは所定高さ位置の左右同一直線上においてそれぞれ左右動装置で個別に左右移動せしめられるようになっている。
【0028】
そして、この請求項1の布類展張搬送方法は、複数基の投入装置における作動順が到来した投入装置の各投入チャックに対応する位置に、3セットの展開チャック装置における中間受取チャックと作動順が到来した投入装置に近い位置にある左右いずれか1つの外側受取チャックとを移動させるようにしている。
【0029】
即ち、この布類展張搬送方法によれば、作動順が到来した投入装置が機体中央部から左側のものである場合には、左側受取チャックと中間受取チャックの2つを当該投入装置の各投入チャックに対応する位置まで移動させ、逆に作動順が到来した投入装置が機体中央部から右側のものである場合には、右側受取チャックと中間受取チャックの2つを当該投入装置の各投入チャックに対応する位置まで移動させるようにしている。又、投入装置が3基のものでは、中央に位置する中間投入装置に対して中間受取チャックと左右いずれか一方の外側受取チャックを移動させる。尚、各受取チャックの移動時には、使用しない1つの外側受取チャックは、布類展張作業の邪魔にならない左右外側の退避位置に移動させる。
【0030】
このようにすると、作動順が到来した投入装置に対して、3つの受取チャックのうちの当該投入装置に近い2つの受取チャックが使用されるので、従来のように受取チャックが2つしかないものに比して、作動順が到来した投入装置に対して受取チャックの移動距離が短くなる場合がある。
【0031】
即ち、4基の投入装置を使用している場合、例えば左側受取チャックと中間受取チャックとが布類展張位置にある状態で、次順の投入装置が左端部のものである場合には、右展張位置にある中間受取チャックが左端投入装置の右側投入チャックの位置まで移動する必要から、該受取チャックの移動距離の短縮は起きないが、その状態で次順の投入装置が機体中央部から右側に位置するものである場合には、当該投入装置における左側投入チャックに対応する位置に中間受取チャックが移動し、右側投入チャックに対応する位置に右側受取チャックが移動するので、2つだけの受取チャックしかない従来のものに比して、受取チャックの移動距離が短縮できるようになる。
【0032】
因に、上記した従来例(図5及び図6)のものでは、2つの受取チャックのみで行っていたので、受取チャックの移動距離が最大で3mでそのときの移動時間が約0.7秒かかっていたが、本願では、該受取チャックの移動距離が半分程度でよい場合が多くなる。
【0033】
尚、受取チャックの移動距離が短縮できるのは、主として左右各端部に位置する投入装置1A,1Dの布類を処理するときであるが、この左右各端部の投入装置の作動順は単純計算で2回に1回の割合で巡ってくる。
【0034】
ところで、作動順が到来した投入装置部分に受取チャックを移動させるときの移動距離を短くするのに、本願で使用している1セットの展開チャック装置(1つの受取チャックと1つの左右動装置)を左右に4セットして、その左右2セットずつでそれぞれ4基の投入装置の左右2基ずつを担当させるようにすることも考えられる。ところが、その場合(展開チャック装置が4セットの場合)には、本願の展開チャック装置が3セットのものと機能面(受取チャックの移動距離短縮)ではほとんど差がないにも拘わらず、展開チャック装置のセット数が単純に1セット多くなり、コスト面や設置スペースの面で不利になるという問題がある。
【0035】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の布類展張搬送方法を行うための布類展張搬送機を対象にしている。即ち、この請求項2の布類展張搬送機は、機体の前部において左右一対の投入チャックを有した投入装置によりシーツのような大面積の布類の一辺の両端角部を保持して所定高位置まで吊上げ、その吊上げ布類の各保持部分を左右展張装置の2つの受取チャックで受取り、該両受取チャックを左右に離間させて吊上げ布類を左右に展張させた後、その展張布類を後送手段で次工程側に搬送させるようにしたものである。
【0036】
そして、この請求項2の布類展張搬送機には、投入装置を左右に複数基(3基又は4基が好ましい)設置し、左右展張装置として1つの受取チャックと該受取チャックを左右に移動させる1つの左右動装置を1セットにした展開チャック装置を3セット使用し、各展開チャック装置の3つの受取チャックを左右同一直線上に位置するように配置しているとともに、複数基の投入装置における作動順が到来した投入装置の各投入チャックに対応する位置に、3セットの展開チャック装置における中間受取チャックと作動順が到来した投入装置に近い位置にある左右いずれか1つの外側受取チャックとを移動させるように制御するコントローラを備えている。
【0037】
この請求項2の布類展張搬送機では、上記各構成により、上記請求項1の布類展張搬送方法の場合と同じ機能を達成できる。
【発明の効果】
【0038】
本願請求項1及び2の各発明では、複数基の投入装置と3セットの展開チャック装置とを有し、作動順が到来した投入装置に対して3つの受取チャックのうちの当該投入装置に近い2つの受取チャックを布類受取位置(投入装置の各投入チャックが対応する位置)まで移動させるようになっているので、受取チャックの移動距離を短くできる場合が多くなる。
【0039】
従って、本願各発明では、作動順が到来した投入装置に対して受取チャックを移動させる際に、全体として受取チャックの移動に要する時間が短くなるので、布類1枚当たりの処理時間が短縮され、時間当たり布類処理枚数を多くできるという効果がある。
【0040】
又、処理しようとしている投入装置が左右いずれの位置のものでも、3つの展開チャック装置のうちの中間受取チャックを有した展開チャック装置は常に使用されるので、該中間受取チャックの展開チャック装置を常時共用(有効利用)できるという効果がある。
【0041】
因に、上記したように、4セットの展開チャック装置を使用して、その左右2セットずつでそれぞれ4基の投入装置の左右2基ずつを担当させるようにすることも考えられるが、その場合(展開チャック装置が4セットの場合)には、本願の展開チャック装置が3セットのものと機能面(受取チャックの移動距離短縮)ではほとんど差がないにも拘わらず、展開チャック装置のセット数が単純に1セット多くなり、コスト面や設置スペースの面で不利になる。
【実施例】
【0042】
以下、図1〜図4を参照して本願実施例の布類展張搬送方法及び布類展張搬送機を説明する。尚、この実施例の布類展張搬送機は、シーツのような大面積の布類Sをきれいに展張させてプレス機や折畳み機のような次工程装置側に搬送するものである。
【0043】
図1〜図4に示す実施例の布類展張搬送機は、後述するように左右展張装置2として3セットの展開チャック装置20A〜20Cを使用している以外は図5及び図6に示す従来例の布類展張搬送機とほぼ同構造のものが採用されている。即ち、この実施例の布類展張搬送機にも、従来例の布類展張搬送機と同構造の、4基の投入装置1A〜1Dと、吸引装置3と、受渡し装置4、搬送装置5を備えている。
【0044】
又、本願実施例の布類展張搬送機(図1〜図4)において、従来例のもの(図5及び図6)と同符号を付しているものは、相互に同機能をするものであり、これらの装置類の構造、機能等の説明として、以下に説明するもの以外は従来技術の項の説明を援用する。尚、受渡し装置4の吸着ボックス41は、その前半部の上面に多数の小孔を有し、吸着ボックス41内の空気が吸引機42で吸引されることによって、吸着ボックス41の前半部上面に布類上辺部を吸着させ得るようになっている。
【0045】
4基の各投入装置1A〜1Dは、図5の従来例のものと同様に、機体10の前部において左右に所定間隔をもって並置されていて、左端の投入装置1Aの中心から右端の投入装置1Dの中心までの間隔が例えば4.5〜4.8m程度有している。尚、以下の説明では、各投入装置1A〜1Dを左側から順に、第1投入装置1A、第2投入装置1B、第3投入装置1C、第4投入装置1Dということがある。
【0046】
この各投入装置1A〜1Dには、人の肩幅程度の間隔をもって左右一対の投入チャック11,11を有している。この各投入チャック11,11は、昇降装置12により、作業員が布類両端角部Sa,Saを保持させ得る下動位置と、上方にある各受取チャック(21A〜21C)に布類両端角部Sa,Saを受渡し得る上動位置との間で上下動せしめられる。
【0047】
又、各投入装置1A〜1Dには、それぞれスタートボタン13A〜13Dが設けられている。そして、両投入チャック11,11に布類両端角部Sa,Saを保持させた後、当該投入装置1A〜1Dのスタートボタン13A〜13Dを押すと、その信号がコントローラ9に入力されて、投入装置の作動順が決められる。尚、スタートボタンを押した各投入装置1A〜1Dの投入チャック11,11は、2つの受取チャック(21Aと21B、又は21Bと21C)が該投入チャック11,11に対応する位置まで移動するまでは、布類両端角部Sa,Saを保持したまま待機しており、該2つの受取チャックが所定位置まで移動したときにコントローラ9からの信号で昇降装置12を投入チャック上昇側に作動させるようになっている。
【0048】
この実施例の布類展張搬送機では、左右展張装置2として、3セットの展開チャック装置20A〜20Cが使用されている。この各展開チャック装置20A〜20Cは、それぞれ1つの受取チャック(21A〜21C)と、該各受取チャック(21A〜21C)を所定高さ位置の左右同一直線上においてそれぞれ左右動装置22A〜22Cで個別に左右移動せしめ得るようにしたものが採用されている。
【0049】
各左右動装置22A〜22Cは、サーボモータ23A〜23Cと、各台板24,24,24と、該台板24,24,24をガイドする共通のレール25,25と、各サーボモータ23A〜23Cと各台板24,24,24間にそれぞれ個別に掛けられたベルト(タイミングベルト)26,26,26とを有している。各受取チャック(左側受取チャック21A、中間受取チャック21B、右側受取チャック21C)は、それぞれ台板24,24,24に取付けられている。
【0050】
そして、この各展開チャック装置20A〜20Cは、それぞれサーボモータ23A〜23Cを所定回転方向及び所定回転量だけ作動させることにより、各受取チャック21A〜21Cをそれぞれ個別に左右方向の所定位置に移動させ得るようになっている。尚、各サーボモータ23A〜23Cの回転方向及び回転量は、次順の投入装置の位置に基いてコントローラ9で制御される。
【0051】
各展開チャック装置20A〜20Cは、作動順が到来した投入装置1A〜1Dの各投入チャック11,11に対応する位置に2つの受取チャック(21Aと21B、又は21Bと21C)を移動させるものである。そして、機体10の中央より左側にある第1投入装置1Aと第2投入装置1Bに対しては、左側受取チャック21Aの展開チャック装置20Aと中間受取チャック21Bの展開チャック装置20Bとが担当する一方、機体10の中央より右側にある第3投入装置1Cと第4投入装置1Dに対しては、中間受取チャック21Bの展開チャック装置20Bと右側受取チャック21Cの展開チャック装置20Cとが担当するようになっている。又、各展開チャック装置20A〜20Cは、後述するようにコントローラ9からの信号により、それぞれ所定の動作を行うようになっている。
【0052】
この実施例の布類展張搬送機では、次のように作動する。
【0053】
各投入装置1A〜1D部分においては、それぞれ作業員が大面積の布類Sの一辺(長辺)の両端角部Sa,Saを捜し出して、その両端角部Sa,Saを一対の投入チャック11,11に保持させた後、スタートボタン13A〜13Dを押す。スタートボタン13A〜13Dを押すと、それぞれスタート信号がコントローラ9に入力されて、各投入装置1A〜1Dの作動順が決められる。尚、スタートボタンを押した後は、当該作業員は次の布類の両端角部Sa,Saの捜し出し準備をすることができるが、当該投入装置の各投入チャック11,11が開放されるまでは次の布類を投入チャック11,11に保持させることができず、待ち時間ができる。
【0054】
そして、図1の例では、第2投入装置1Bに作動順が到来した場合を示しているが、この図1の場合には、左側展開チャック装置20Aのサーボモータ23Aと中間展開チャック装置20Bのサーボモータ23Bとがそれぞれ所定方向及び所定量だけ作動して、左側受取チャック21A及び中間受取チャック21Bをそれぞれ第2投入装置1Bの各投入チャック11,11に対応する位置まで移動させる。尚、このときの各サーボモータ23A,23Bの作動スピートは、各受取チャック21A,21Bが空の状態であるので、それぞれ260m/分(秒速約4.3m)程度の高速作動する。又、使用しない右側受取チャック21Cは、右側展開チャック装置20Cのサーボモータ23Cが作動することにより、布類展張作業に邪魔にならない右側の退避位置まで移動される。
【0055】
そして、その直後にコントローラ9からの信号で、第2投入装置1Bの各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを保持したまま上動し→各両端角部Sa,Saを各受取チャック21A,21Bに受け渡し(図1、図3のS1の状態)→各受取チャック21A,21Bを機体10の幅方向中心から等距離づつ離れた位置において左右に離間させて(各受取チャック21A,21Bが符号21A′,21B′の位置まで移動する)布類の上辺部を展張させる(上辺部展張布類S2となる)。尚、各受取チャック21,21Bの離間時の移動スピードは、布類に緊張時のダメージを与えないために70m/分程度の比較的低速に設定されている。続いて、送込みローラ37が送込み方向に高速回転(図3において右回転)するとともに、切換ダンパ35が鎖線図示側に切換えられて吸引ボックス31内の空気が吸引されて、布類の下端側がS3の状態を経てS4のように吸引ボックス31内に吸い込まれる。このとき、この布類S4には、バキュームファン33の吸引作用により、下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される。その後、送込みローラ37が停止し→切換ダンパ35が実線図示側に切換えられ→各受取チャック21A,21Bが開放されて両受取チャックで保持していた布類S4の上辺部が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持され→該吸着ボックス41が鎖線図示(図3)するように後退し、そのとき布類上辺部が前側コンベア(バキュームコンベア)51上に移乗されて(符号S5の状態)、展張状態のままで前側コンベア51及び後側コンベア52を経てプレス機側に搬送される。
【0056】
他方、上記左側受取チャック21A′及び中間受取チャック21B′が布類展張位置において開放されると、コントローラ9からの信号で直ちに3つの展開チャック装置20A〜20Cの各受取チャック21A〜21Cが次順の作動順の投入装置に対応する位置に作動せしめられる。例えば次順の作動順の投入装置が図4に示すように第4投入装置1Dである場合には、図1の状態から図4の状態、即ち、左側受取チャック21Aが左側退避位置まで移動する一方、中間受取チャック21Bと右側受取チャック21Cとがそれぞれ第4投入装置1Dの各投入チャック11,11に対応する位置まで高速移動し、以下、上記と同様に各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを保持したまま上動し→各両端角部Sa,Saを各受取チャック21B,21Cに受け渡し→各受取チャック21B,21Cを左右に離間(図4の符号21B′,21C′)させて布類の上辺部を展張させ→吸引装置3により布類の下方部分を吸引・展張させ(図4の展張布類S2となる)→その後、各受取チャック21B,21Cが開放されて布類の上辺部が吸着ボックス41を介して前側コンベア51の始端部上に移乗され→布類が展張状態のままで前側コンベア51及び後側コンベア52を経てプレス機側に搬送される。
【0057】
この実施例の布類展張搬送機では、上記のように、4基の各投入装置1A〜1Dからそれぞれ布類両端角部Sa,Saを受取る際に、機体中央より左側の2基(第1及び第2)の投入装置1A,1Bは左側受取チャック21Aと中間受取チャック21Bとで担当し、機体中央より右側の2基(第3及び第4)の各投入装置1C,1Dは中間受取チャック21Bと右側受取チャック21Cとで担当するようになっている。
【0058】
このようにすると、各受取チャック(21A〜21C)が展張位置において布類両端角部Sa,Saを開放した後、各受取チャック(21A〜21C)が次順の作動順の投入装置(1A〜1D)に対応する位置まで移動する際に、必ず中間受取チャック21Bが共用されるので、各受取チャック(21A〜21C)を所定位置まで移動させる距離が短くてよい場合が多くなる。例えば、左側受取チャック21Aと中間受取チャック21Bとが図1の布類展張位置(21A′,21B′の位置)で右側受取チャック21Cが右側退避位置にある状態から、図4に示すように第4投入装置1Dに2つの受取チャックを対応させる際に、中間受取チャック21Bを第4投入装置1Dの左側投入チャック11に対応する位置までの距離L3(L3=10cm程度)だけ移動させ、右側受取チャック21Cを右側退避位置から第4投入装置1Dの右側投入チャック11に対応する位置までの距離L4(L4=60cm程度)だけ移動させるとともに、左側受取チャックを左側退避位置(図4の符号21Aの位置)までの距離L5(L5=90cm程度)だけ移動させる。この場合、次順の作動順の投入装置は第4投入装置1Dであり、中間受取チャック21Bと右側受取チャック21Cのみが第4投入装置1Dの作動待機(待ち時間)の対象になる(左側受取チャック21Aは邪魔にならない)が、両受取チャック21B,21Cの最大移動距離がL4の60cm程度であるので、受取チャックが該最大移動距離L4を移動するのに必要な時間(60cm÷秒速4.3m)は0.1〜0.2秒程度の短時間となる。
【0059】
又、図1に示すように、左側受取チャック21Aと中間受取チャック21Bを使用して布類展張作業を行った後、次順の作動順の投入装置が第3投入装置1Cである場合には、符号21B′の位置にある中間受取チャックが第3投入装置1Cの左側投入チャック11に対応する位置までの約100cmの距離だけ移動する一方、右側退避位置にある右側受取チャック21Cが第3投入装置1Cの右側投入チャック11に対応する位置までの約150cmの距離だけ移動する。この場合、両受取チャック21B′,21Cの最大移動距離が150cm程度であるので、受取チャックが該最大移動距離を移動するのに必要な時間(150cm÷秒速4.3m)は0.3〜0.4秒程度の短時間となる。
【0060】
尚、左側受取チャック21Aと中間受取チャック21Bとが図1に示す布類展張位置(21A′と21B′の各位置)にある状態で、次順の作動順の投入装置が第1投入装置1Aである場合には、符号21A′の位置にある左側受取チャックが第1投入装置1Aの左側投入チャック11に対応する位置までの約30cmの距離だけ移動する一方、符号21B′の位置にある中間受取チャックが第1投入装置1Aの右側投入チャック11に対応する位置までの約300cmの距離だけ移動する。この場合、受取チャックが最大移動距離(約300cm)を移動するのに必要な時間(300cm÷秒速4.3m)は0.7秒程度となり、図5の従来例と同様になる(受取チャックが移動に要する時間を短縮できない)。
【0061】
ところで、4基の各投入装置1A〜1Dでは、それぞれ布類掛け作業(布類両端角部を各投入チャックに保持させる作業)が継続して行われており、各投入装置1A〜1Dのスタートボタン13A〜13Dによるスタート信号(作動順)は順次交替して出力されている。そして、あるときには2つの受取チャックが移動する距離(移動時間)が長い場合もあるが、平均すると受取チャックの移動に要する時間をかなり短縮できる。
【0062】
従って、この実施例の布類展張搬送機では、1枚当たりの布類の処理時間を、受取チャックの移動距離を短縮できる分だけ時間短縮でき、それによって布類の処理能率を向上させることができる。又、3つの受取チャック21A〜21Cのうちの中間受取チャック21Bを毎回共用させるので、該中間受取チャック21Bの展開チャック装置20Bを有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本願実施例の布類展張搬送機の正面図である。
【図2】図1の布類展張搬送機の平面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1の状態変化図である。
【図5】従来の布類展張搬送機の正面図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1A〜1Dは投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、9はコントローラ、10は機体、11は投入チャック、13A〜13Dはスタートボタン、20A〜20Cは展開チャック装置、21A〜21Cは受取チャック、22A〜22Cは左右動装置、Sは布類、Saは布類角部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部において左右一対の投入チャックを有した投入装置によりシーツのような大面積の布類の一辺の両端角部を保持して所定高位置まで吊上げ、その吊上げ布類の各保持部分を左右展張装置の2つの受取チャックで受取り、該両受取チャックを左右に離間させて吊上げ布類を左右に展張させた後、その展張布類を次工程側に搬送させるようにした布類展張搬送方法であって、
前記投入装置は左右に複数基設置し、前記左右展張装置は1つの受取チャックと該受取チャックを左右に移動させる1つの左右動装置を1セットにした展開チャック装置を3セット使用し、さらに該各展開チャック装置の3つの受取チャックが左右同一直線上に位置するように配置したものを使用し、
前記複数基の投入装置における作動順が到来した投入装置の各投入チャックに対応する位置に、前記3セットの展開チャック装置における中間受取チャックと作動順が到来した投入装置に近い位置にある左右いずれか1つの外側受取チャックとを移動させるようにした、
ことを特徴とする布類展張搬送方法。
【請求項2】
機体の前部において左右一対の投入チャックを有した投入装置によりシーツのような大面積の布類の一辺の両端角部を保持して所定高位置まで吊上げ、その吊上げ布類の各保持部分を左右展張装置の2つの受取チャックで受取り、該両受取チャックを左右に離間させて吊上げ布類を左右に展張させた後、その展張布類を次工程側に搬送させるようにした布類展張搬送機であって、
前記投入装置は左右に複数基設置し、
前記左右展張装置は1つの受取チャックと該受取チャックを左右に移動させる1つの左右動装置を1セットにした展開チャック装置を3セット使用し、
前記各展開チャック装置の3つの受取チャックは左右同一直線上に位置するように配置しているとともに、
前記複数基の投入装置における作動順が到来した投入装置の各投入チャックに対応する位置に、前記3セットの展開チャック装置における中間受取チャックと作動順が到来した投入装置に近い位置にある左右いずれか1つの外側受取チャックとを移動させるように制御するコントローラを備えている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−249761(P2009−249761A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98858(P2008−98858)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】