説明

布類展張搬送機

【課題】 公知の布類展張搬送機では、丸ぐり部を有した布類(布団包布)の2枚重ね部分の表裏各面(特に表面)をきれいに展張させることができなかった。
【解決手段】 中央部に丸ぐり部Tを有した布類Sを展張吊上げ状態で次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機において、展張吊上げ布類Sの背面側に左右一対の拡張ベルト61,61を設ける一方、各背面側拡張ベルト61,61に対面する位置に、展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Sc,Scをそれぞれ各背面側拡張ベルト61,61側に押付ける左右一対の前面押付装置7,7を配置し、さらに各前面押付装置7,7として布類の左右外側部寄り前面Sc,Scをそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得る強制拡張部材77を使用していることにより、前面に丸ぐり部を有した布類であっても、その表裏各面をそれぞれきれいに展張させ得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、中央部に丸ぐり部を有した布団包布からなる大面積の布類を吊上げ状態で展張させ、その展張吊上げ状態の布類を次工程側に搬送させるための布類展張搬送機に関するものである。尚、以下の説明では、展張吊上げ状態の布類を単に展張吊上げ布類ということがある。又、以下の説明では、本願の布類展張搬送機で処理すべき布類(布団包布)を額縁包布ということがある。
【背景技術】
【0002】
ランドリー工場においては、シーツや布団包布のような大面積布類を洗濯・乾燥後にプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機として、例えば特開平7−54262号公報(特許文献1)に示されるものがある。この公知例の布類展張搬送機は、図16〜図19に示すように、布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを左右の吊上チャック110,110で掴持し、所定高位置において各吊上チャック110,110を左右離間方向に移動させることによって、布類Sを展張吊上げ状態で保持し得るようになっている。尚、図16の公知例では、展張すべき布類Sとして、中央部に丸ぐり部Tを有する額縁包布が採用されている。
【0004】
又、この公知例の布類展張搬送機では、図16に示す展張吊上げ状態の布類Sを、図17に示すように各吊上チャック110から受渡し装置104の受取チャック140(符号140′のようにチャックが閉じる)で受け取り(布類が図17のS1の状態になる)、続いて図18に示すように受取チャック140が後退する。この状態では、布類S2の上下中間部付近が送込みローラ134に接触する。そして、吸気ボックス131内が吸気されるとともに、送込みローラ134が布類送込み方向に回転して、布類S2の下半部を符号S3で示す状態を経て符号S4で示すように吸気ボックス131内に吸引する(所定タイマー後、吸気ボックス131内の吸気は停止する)。その後、コンベア(吸着コンベア)151が走行するとともに受取チャック140が開放し、布類上縁部が符号S4bで示すようにコンベア151の始端部(水平部)上に移乗する。そして、コンベア151が走行することによって、布類S4の下部側が順次引上げられていき、該布類がコンベア151によって次工程(プレス工程)側に搬送される。
【0005】
ところで、布類が展張吊上げ状態で、図18のように布類S4の下部側が吸気ボックス131内に吸引される(布類の下部側にテンションがかかる)と、布類S4はかなりの展張状態になるものの、布類Yに小皺や波打ち部分(図16の符号Y)が残ることがある。そこで、この公知例の布類展張搬送機では、コンベア151の始端部の直下近傍で展張吊上げ布類S4の背面側に左右一対の布類背面拡張装置106,106を設けている。この各布類背面拡張装置106,106は、図16に示すように左右にそれぞれ横向き姿勢で拡張ベルト161,161を有している。この各拡張ベルト161,161は、それぞれ前面側が左右外向きに走行するようになっている。又、各拡張ベルト161,161は、多数の小孔をあけた通気性のあるものを使用しており、該各拡張ベルト161,161の背面側に設けた吸気ボックス163内を吸気することにより、各拡張ベルト161,161の前面に布類の背面を吸引させ得る機能を有している。
【0006】
そして、この各布類背面拡張装置106,106は、吸気ボックス163内が吸気されるとともに各拡張ベルト161,161の前面がそれぞれ左右外向きに走行し、そのとき布類S4の背面が各拡張ベルト161,161の前面に接触しながら引き上げられていき、該布類を順次左右各外方に拡張させるように機能する。
【0007】
【特許文献1】特開平7−54262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、展張すべき布類が中央部に丸ぐり部Tを有する布類(額縁包布)Sでは、生地に表裏2枚重ね部分がある。そして、このように表裏2枚重ね生地を有する布類Sを上記公知例(図16〜図18)の布類展張搬送機で展張させる場合、展張吊上げ布類Sの背面側は各布類背面拡張装置106,106により左右に拡張させることができるものの、該展張吊上げ布類(額縁包布)Sの前面側を拡張させる(皺延ばしする)機能はほとんどない。従って、丸ぐり部Tの外側の布類前面に小皺や波打ち部分(図16の符号Y)が残り易くなる。
【0009】
又、表裏2枚重ね生地を有する布類(額縁包布)Sでは、2枚重ね部分の生地間(特に丸ぐり部Tの下部側)に空気が残って膨れたままになったり、図19に鎖線図示するように丸ぐり部Tの下端縁Taが重みで下方に垂れる(符号Ta′)ことがあり、2枚重ね生地部分の膨らみや垂れ下がり部分(符号Ta′)に波打ち部分ができ易くなる。尚、図19に鎖線図示する丸ぐり部下端縁Taの下方への垂れ下がり(符号Ta′)は、展張吊上げ布類Sの下部が吸気ボックス131内に吸引されることでも起こる。
【0010】
このように、図16〜図19に示す公知例の布類展張搬送機では、丸ぐり部Tを有する布類(額縁包布)Sを展張させるのに、布類背面は布類背面拡張装置106,106により比較的きれいに展張させ得るものの、2枚重ね部分の前面側に小皺や波打ち部(図16の符号Y)又は膨らみや垂れ下がり部(図19の符号Ta′)等の弛みが残り易くなる。そして、布類前面に弛みが残ったままで展張布類が後送されてプレス機でプレスされると、該弛み部分を折返し状態で押し潰して明確な折り皺が発生するという問題がある。このように折り皺の付いた布類では、見栄えが悪くなるとともに、顧客からの苦情が出ることになる。
【0011】
尚、展張吊上げ布類Sが送り込まれていく途中で、図19に示す丸ぐり部下端縁Taの垂れ下がり部分Ta′が拡張ベルト161,161部分を通過するが、その際にも布類前面の垂れ下がり部分Ta′には拡張ベルト161による拡張機能は働かない。
【0012】
本願発明は、上記した公知の問題点に鑑み、布団包布のような丸ぐり部を有する布類(額縁包布)であっても、表裏両面をきれいに展張させ得るようにした布類展張搬送機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0014】
本願発明は、中央部に丸ぐり部を有した布団包布からなる大面積の布類の一辺の両端角部をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分を左右に離間させて布類を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機を対象にしている。
【0015】
そして、本願発明の布類展張搬送機は、展張吊上げ布類の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルトを有する左右一対の布類背面拡張装置を設けている一方、各布類背面拡張装置の各拡張ベルトに対面する位置に、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面をそれぞれ各拡張ベルト側に押付ける左右一対の前面押付装置を配置している。
【0016】
布類背面拡張装置の左右各拡張ベルトは、展張吊上げ状態にある布類の背面側で該展張吊上げ布類の上部寄り位置において、該展張吊上げ布類の幅中央部から左右に振り分けた位置に設置されている。又、該各拡張ベルトは、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようになっている。尚、この布類背面拡張装置は、各拡張ベルトの前面に布類背面を吸引させ得る吸気機能を備えたものが好ましい。
【0017】
各前面押付装置は、各拡張ベルトの前面にある展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に摺接して該左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得る強制拡張部材と、該強制拡張部材を正面視において展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に対面する対面位置と展張吊上げ布類の左右外端部より外側の退避位置との間で左右に移動させる左右動装置と、強制拡張部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置とを備えている。
【0018】
左右の各強制拡張部材としては、例えばそれぞれ左右外側に走行するようにした拡張ベルトを使用したもの(後述の第1実施例)、複数個のローラを縦向き姿勢で並置して該各ローラの奥側面がそれぞれ左右外側に回転するようにしたもの(後述の第2実施例)、横向きの螺旋ロールで布類に対して左右外向きの展張機能を有するもの(後述の第3実施例)、等が採用できる。又、これらの強制拡張部材は、モータ等の動力装置で駆動せしめられる。尚、各強制拡張部材は、運転時に常時連続走行させていてもよいが、布類左右外側部寄り前面の対面位置に移動した時点から退避位置に後退するまでの間だけ間欠作動させるようにしてもよい。
【0019】
この各強制拡張部材は、それぞれ左右動装置により上記対面位置と上記退避位置との間で左右に移動せしめられるが、この左右動装置には例えば伸縮シリンダが使用できる。この各強制拡張部材の設置位置は、処理すべき布類(布団包布)のサイズによって位置決めされるが、上記対面位置では該強制拡張部材が展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に位置する一方、上記退避位置では該強制拡張部材が展張吊上げ布類の左右外端部より外側に位置するようになっている。
【0020】
左右の接離移動装置は、各強制拡張部材をそれぞれ前後に移動させるものであるが、この各接離移動装置には例えば伸縮シリンダが使用できる。尚、この各接離移動装置は、各強制拡張部材を左右動装置とともに前後移動させるようになっている。
【0021】
そして、この各接離移動装置は、強制拡張部材を後退移動(手前側に移動)させた状態では、該強制拡張部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間させる一方、強制拡張部材を前進移動(奥側に移動)させた状態では、該強制拡張部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面に接触させるように機能する。尚、強制拡張部材が展張吊上げ布類の前面から離間した状態では、強制拡張部材を左右に移動させても該強制拡張部材が展張吊上げ布類に接触することがない。
【0022】
本願の布類展張搬送機は、次の順序で作動する。尚、布類の供給前は、左右の各強制拡張部材がそれぞれ外側の退避位置で且つ拡張ベルトに対して手前側の後退位置にある。又、布類背面拡張装置の各拡張ベルトは、それぞれ作動させておく(拡張ベルト前面側がそれぞれ左右外向きに走行する)。
【0023】
この状態で、まず作業位置において布類(中央部に丸ぐり部を有する額縁包布)の一辺の両端角部を捜し出し、丸ぐり部が前面(手前側)に位置する状態で該両端角部をそれぞれ投入チャックに掴持させる。その後、各投入チャックが布類両端角部を掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャックに受け渡し、続いて各受取チャックが左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。このとき、左右の各強制拡張部材は、展張吊上げ布類の左右各外端部よりそれぞれ外側の退避位置にあり、該布類が左右に展張されるときに該布類の左右各外端部が各強制拡張部材に接触する(絡まる)ことがない。
【0024】
尚、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャックの引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部の下端縁部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0025】
続いてその展張吊上げ布類の上縁部を搬送コンベア上に移乗させるが、このとき展張吊上げ布類が展張状態のままで後方(奥側)に移動して布類背面が左右の各拡張ベルトの前面(左右外側に走行している)に接触する。そして、その直後に左右の各強制拡張部材が左右動装置によりそれぞれ外側の退避位置から内側の対面位置に移動され、続いて各接離移動装置により各強制拡張部材をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面に接触させる。このとき、各強制拡張部材は、動力装置(各モータ)により布類の左右各外側部寄り前面をそれぞれ外側に拡張させる方向に駆動される。尚、この状態では、強制拡張部材と拡張ベルトの間で展張吊上げ布類の左右各外側部寄り部分が軽く挟圧されている。
【0026】
この状態で展張吊上げ布類の上縁部が搬送コンベアによって引き取られていく(布類が展張状態のまま引き上げられる)が、それに伴って展張吊上げ布類の背面側が各拡張ベルトで順次左右に展張される一方、左右各外側部寄り前面がそれぞれ強制拡張部材で左右外側に引っ張られて布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除される。
【0027】
又、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部が拡張ベルト高さに差しかかったときには、各拡張ベルトによる背面側展張機能と各強制拡張部材による前面側展張機能とにより、丸ぐり部の下縁部分が左右各外側に引っ張られる作用を受ける。
【0028】
さらに、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部が拡張ベルト高さに差しかかった時点で、各左右動装置がそれぞれ退避側に作動し、各強制拡張部材を丸ぐり部下縁部の左右各外側部寄り位置に摺接しながら退避位置まで移動するが、この各強制拡張部材の移動時に、丸ぐり部下縁部が左右各外側に引っ張られて、該丸ぐり部下縁部分が確実に緊張状態に伸展せしめられる。尚、退避位置まで後退した各強制拡張部材は、それぞれ接離移動装置により手前側の後退位置に戻されて、そこで次の布類展張作業時まで待機する。
【0029】
このように、本願の布類展張搬送機を使用すれば、丸ぐり部を有した布類(額縁包布)であっても、表裏の各全面をきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができる。
【0030】
尚、この布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も展張・搬送させることができるが、その場合には各前面押付装置全体を作業の邪魔にならない下方位置に退避させ得るようにしておくとよい。
【発明の効果】
【0031】
本願の布類展張搬送機によれば、展張吊上げ布類を搬送コンベア側に送り込む過程で、布類背面拡張装置により布類背面を左右に展張させ得るとともに、前面押付装置の強制拡張部材で布類前面をきれいに展張させ得るようになっているので、中央部に丸ぐり部を有した布類であってもその表裏両面をそれぞれきれいに(小皺や波打ち部分や膨らみ部分がない状態で)展張させることができ、仕上がり精度の良好な展張布類に加工することができるという効果がある。
【0032】
又、各前面押付装置の強制拡張部材は、それぞれ展張布類(額縁包布)の左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させるように作動されるので、丸ぐり部の周囲全面を一層きれいに展張させることができ、しかも垂れ皺が残り易い丸ぐり部の下端縁もきれいに展張させることができる。
【実施例】
【0033】
以下、添付の図面を参照して本願実施例の布類展張搬送機を説明すると、図1〜図11には第1実施例が示され、図12〜図13には第2実施例が示され、図14〜図15には第3実施例が示されている。尚、これらの実施例の布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も何ら問題なく展張させることができるが、特に中央部に丸ぐり部を有する布団包布のような布類を展張させるのに適したものである。
【0034】
図1〜図11の第1実施例
まず、この第1実施例の布類展張搬送機の基本構成を図1〜図3を参照して説明する。この布類展張搬送機は、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5と、布類背面拡張装置6と、布類前面展張用の前面押付装置7,7とを有している。
【0035】
投入装置1は、展張すべき布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを掴持する一対の投入チャック11,11を有し、該各投入チャック11,11を昇降装置12(図3)で上下動させ得るようにしたものである。尚、昇降装置12にはロッドレスシリンダが使用されている。
【0036】
各投入チャック11,11は、人の肩幅程度の間隔で左右に並置されている。そして、この各投入チャック11,11は、昇降装置12により投入作業高さとなる低位置(図1、図3の高さ)と布類全体を吊下げ得る高位置(布類の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で上下動せしめられる。そして、低位置において、布類の一辺の両端角部Sa,Saを各投入チャック11,11で掴持させた後(布類が図1の符号S′の状態となる)、昇降装置12で受け渡し高さまで上昇せしめられる。
【0037】
尚、この第1実施例では、投入装置1は左右に2基設けており、何れの投入装置1,1からでも布類を投入することができるようになっている。又、各投入装置1,1は、待機状態では、図1に示すように機体の幅中心から左右に振り分けた各位置に位置しているが、布類掴持後に上動する際には、機体の幅中心位置に移動するようになっている。
【0038】
左右展張装置2は、所定高位置において投入装置1の各投入チャック11,11から布類の両端角部Sa,Saをそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置(可逆回転可能なサーボモータを使用)22,22で左右方向に移動させ得るようにしたものである。各受取チャック21,21は、図1に示すように待機状態では機体の幅中央部において投入装置1の各投入チャック11,11の間隔と同間隔で待機しており、布類の両端角部Sa,Saを受け取った後(図1のS″の状態)、左右動装置22,22により布類の上辺部が緊張するまで左右外方に移動せしめられる(布類Sが図1の展張吊上げ状態となる)。
【0039】
吸引装置3(図3)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図3の鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸引されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向(図3の右回転方向)に回転せしめられる。
【0040】
そして、この吸引装置3は、布類Sが展張吊上げ状態において、送込みローラ34を送込み方向に回転させるとともに、吸気ボックス31内を吸引することにより、展張吊上げ状態の布類Sの下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引し、そのとき布類の下部側にテンション作用が働いて、展張吊上げ状態の布類Sを下方に展張させる機能が発生する。
【0041】
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により展張吊上げ状態で支持されている布類Sの上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸気する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させる伸縮シリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)には、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、布類受取面に布類上縁部を吸着(保持)させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で布類受取面に布類上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図3に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該布類上縁部を搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
【0042】
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52とを有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(布類受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部を吸着させ得るようになっている。
【0043】
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図3において、切換ダンパー36が実線図示位置にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止する一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止する一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
【0044】
布類背面拡張装置6は、展張吊上げ布類Sの背面を左右に展張させるもので、左右一対ある。この各布類背面拡張装置6,6はそれぞれ拡張ベルト61,61を有している。尚、以下の説明では、この布類背面拡張装置6の拡張ベルト61を背面側拡張ベルトということがある。
【0045】
この各背面側拡張ベルト61,61は、吸着コンベア51の始端部より僅かに前側の直下近傍位置において、機体の幅中央部から左右に振り分けた各位置に設置されている。又、該各背面側拡張ベルト61,61は、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようにそれぞれモータ62,62で駆動される。尚、各背面側拡張ベルト61,61のそれぞれ外端部は、展張吊上げ位置にある布類Sの左右端部Sd,Sdよりそれぞれ外側にはみ出す位置まで延出させている。
【0046】
各背面側拡張ベルト61,61は、図4及び図6に示すように、多数の小孔を設けた通気性のあるベルトを使用している。そして、各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の裏側には、それぞれ吸気ボックス63,63が配置されており、該吸気ボックス63,63内を吸引することにより、背面側拡張ベルト61の前面に布類の背面を吸着させ得るようにしている。各吸気ボックス63,63内は、それぞれダクト64,64を介して吸気フアン65の吸気口にそれぞれ接続されており、該吸気フアン65の吸気により該各吸気ボックス63,63内を吸引し、それによって各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の各小孔から周囲の空気を吸引し得るようになっている。尚、この実施例では、吸気フアン65は1台で両方の吸気ボックス63,63内を吸気するようにしているが、他の実施例では各吸気ボックス63,63ごとに吸気フアン65を1台ずつ使用してもよい。
【0047】
ところで、この第1実施例の布類展張搬送機では、処理すべき布類Sとして中央部に丸ぐり部Tを有した布団包布(額縁包布)を採用している。この額縁包布Sでは、丸ぐり部Tの周囲の生地が2枚重ね状態となっている。そして、丸ぐり部Tを有した布類Sを展張させる際には、図1に示すように丸ぐり部Tが前面側に向く姿勢で吊上げ展張するが、この場合、展張吊上げ布類Sにおける丸ぐり部T周部分の2枚重ね部分に空気が入って布類前面部分が膨らむことがある。特に、展張吊上げ状態の布類Sでは、丸ぐり部Tの下端縁Taが自重で垂れ下がることがある(図19の符号Ta′の状態)。
【0048】
そこで、この実施例の布類展張搬送機には、展張吊上げ布類Sの前面をきれいに展張させるための左右一対の前面押付装置7,7を設けている。尚、この左右一対の前面押付装置7,7は、図1〜図2に示すように同じものが左右対称形に配置されているが、該前面押付装置7の構成については、図4〜図7に示す右側の前面押付装置7で説明する。
【0049】
図4〜図6に示す前面押付装置7は、展張吊上げ布類(図1の符号Sの状態)の左右各外側部寄り前面Sc,Scに摺接させる強制拡張部材71と、該強制拡張部材71を左右に移動させる左右動装置72と、強制拡張部材71を拡張ベルト61前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scから離間する離間位置と展張吊上げ布類の前面Scに接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置73とを備えている。
【0050】
強制拡張部材71は、この実施例では、布類前面を摺接により左右に拡張させ得る拡張ベルトが使用されている。尚、以下の説明では、強制拡張部材となる拡張ベルト71を前面側拡張ベルトということがある。
【0051】
この前面側拡張ベルト71は、各布類背面拡張装置6の拡張ベルト(背面側拡張ベルト)61,61と同高さ位置で且つ展張吊上げ状態の布類Sの各外側部寄り前面Sc,Scにそれぞれ対面し得る位置において、走行面がほぼ鉛直面となる姿勢で設置されている。尚、この前面側拡張ベルト71の大きさは、特に限定するものではないが横長さが40〜50cm程度、上下幅が10cm程度のものでよい。
【0052】
この前面側拡張ベルト71は、横長のホルダー75に装着されている。そして、この前面側拡張ベルト71は、ホルダー75に取付けたモータ76によって奥面側が左右外側に走行せしめられるようになっている。尚、このモータ76は、特許請求範囲中の動力装置となるものである。
【0053】
図4〜図6に拡大図示するように、前面押付装置7の強制拡張部材(前面側拡張ベルト)71、左右動装置72、接離移動装置73は、横長(例えば50〜60cm長さ)の支持フレーム81に装着されている。この支持フレーム81は、その外端寄り位置を機枠10側のブラケットに枢支する一方、その中間長さ位置を格納用の伸縮シリンダ9で支持することにより、2点支持状態で取付けている。そして、前面押付装置7の使用時には、格納用伸縮シリンダ9を伸長させることで、支持フレーム81を横向き姿勢で支持する一方、この前面押付装置7の不使用時には、格納用伸縮シリンダ9を縮小させることにより、該前面押付装置7を下方の退避位置に弧回動(図1の矢印)させ得るようになっている。
【0054】
前面押付装置7の左右動装置72及び接離移動装置73には、それぞれ伸縮シリンダが使用されている。左右動装置72となる伸縮シリンダには、比較的長尺(例えば40〜50cm程度)のストロークを有するロッドレスシリンダが採用されている。接離移動装置73となる伸縮シリンダは、短小ストロークのものでよい。尚、以下の説明では、左右動装置72となる伸縮シリンダを左右動シリンダということがあり、接離移動装置73となる伸縮シリンダを接離動シリンダということがある。
【0055】
左右動シリンダ72は、支持フレーム81の奥面側に横向き姿勢で取付けられている。この左右動シリンダ72には、該左右動シリンダ72に沿って移動するスライダー82が取付けられており、このスライダー82に接離動シリンダ73が取付けられている。尚、接離動シリンダ73は、その伸縮側が奥側に向く姿勢で取付けられている。そして、接離動シリンダ73の伸縮側先端には、図6に示すように前面側拡張ベルト71のホルダー75が連結されている。
【0056】
そして、強制拡張部材(前面側拡張ベルト)71、左右動装置(左右動シリンダ)72、接離移動装置(接離動シリンダ)73からなる左右各側の前面押付装置7,7は、次のように機能する。
【0057】
左右動装置(左右動シリンダ)72は、強制拡張部材71を、図4、図5、図7に実線図示する内方側に進出する位置と、図5、図7に鎖線図示(符号71′)する外方側に後退する位置との間で左右水平方向に進退操作し得るようになっている。そして、強制拡張部材71が内方側進出位置にあるときには、該強制拡張部材71が布類背面拡張装置6,6の前面で展張吊上げ状態にある布類Sの外側部寄り前面Scに対面し(対面位置となる)、強制拡張部材71が外方側後退位置(図5に符号71′で示す鎖線図示位置)にあるときには、該強制拡張部材71′が展張吊上げ布類Sの外端部Sdより外側に位置する(退避位置となる)。
【0058】
接離移動装置(接離動シリンダ)73は、該接離動シリンダ73が縮小状態にあるときには、図5(及び図6の実線図示状態)に示すように強制拡張部材71を手前側に後退させて強制拡張部材71を拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scから所定距離だけ離間させる一方、該接離動シリンダ73が伸長すると、図7(及び図6の鎖線図示状態)に示すように強制拡張部材71を奥側に前進させて該強制拡張部材71を拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scに接触させるように機能する。尚、図5(及び図6の実線図示状態)に示す離間位置における、強制拡張部材71が展張吊上げ布類の前面Scから離間する距離は、強制拡張部材71が図5の鎖線図示位置(退避位置)から実線図示位置(対面位置)に進出するとき、該強制拡張部材71が展張吊上げ布類Sに接触しない程度に設定されている(例えば該離間距離を15〜20mmに設定する)。
【0059】
又、この第1実施例の布類展張搬送機では、後述するように(後述の作動説明)、各強制拡張部材71,71がそれぞれ布類外側部寄り前面Sc,Scに接触した状態で展張吊上げ布類Sが上方に引き上げられていき、図11に示すように展張吊上げ布類Sの丸ぐり部Tの下端縁Ta付近が強制拡張部材71,71の高さ位置に差しかかったときに、各左右動装置72,72により各強制拡張部材71,71を布類左右外側部寄り前面Sc,Scに摺接させながらそれぞれ退避位置まで移動せしめるようにしている。尚、各強制拡張部材71,71を対面位置から退避位置に移動させるタイミングは、例えば展張吊上げ布類の上方引き上げ開始時点から所定タイマー後に(展張吊上げ布類の丸ぐり部の下端縁Ta付近が強制拡張部材71,71の高さ位置に差しかかった時点で)コントローラからの信号で各左右動装置72,72を退避側に作動させるようにしたり、あるいは引き上げられる展張吊上げ布類の下端縁が所定高さ位置を通過するのを検出器で検出して該検出器からの信号で各左右動装置72,72を退避側に作動させるようにしたりすることができる。
【0060】
ところで、この第1実施例では、処理すべき布類Sのサイズが同じものを想定したものであり、その単一サイズの布類に応じて強制拡張部材71,71を対面位置と退避位置との間で移動させ得るようにしているが、他の実施例では、布類サイズに応じて各強制拡張部材71,71をそれぞれ左右適正位置(対面位置において各強制拡張部材71,71がそれぞれ展張吊上げ布類Sの外側部寄り前面Sc,Scに対応する位置)に調整するための位置調整装置(例えば伸縮シリンダ)を装備することができる。この場合、位置調整装置の操作は、操作パネルに設けた位置調整スイッチで行えるようにし、例えば「小」の位置調整スイッチを押すと位置調整装置が強制拡張部材71を小サイズ布類に対応する位置に移動し、「大」の位置調整スイッチを押すと位置調整装置が強制拡張部材71を大サイズ布類に対応する位置に移動するようにしておくとよい。
【0061】
次に、この第1実施例の布類展張搬送機の作動方法を図8〜図11を併用して説明する。尚、運転時の初期状態では、吸引装置3の吸気フアン33、布類背面拡張装置6の吸気フアン65、各背面側拡張ベルト61,61のモータ62、搬送装置5の吸着コンベア51及び搬出コンベア52等はそれぞれ作動している。又、前面押付装置7,7の各強制拡張部材(前面側拡張ベルト)71,71は、それぞれ図5に符号71′で示すように外側の退避位置で且つ背面側拡張ベルト61に対して手前側の後退位置にある。尚、各前面側拡張ベルト71,71は、運転中は背面側拡張ベルト61,61と同様に連続走行させてもよいが、この第1実施例では後述のように所定の行程範囲のみで走行させる。
【0062】
布類を布類展張搬送機に供給するには、作業位置において布類の一辺の両端角部を捜し出し、図1に示すようにその両端角部Sa,Saを投入装置1の各投入チャック11,11にそれぞれ掴持させる(図1、図8の各符号S′の状態)。次に各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡し(図1、図8の符号S″の状態)、続いて各受取チャック21,21が左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。尚、このとき、左右の各強制拡張部材(前面側拡張ベルト)71,71は、展張吊上げ布類の左右各外端部Sd,Sdよりそれぞれ外側(図5に符号71′で示す位置)に位置している。
【0063】
次に、展張吊上げ布類が図8の符号S″の状態から、送込みローラ34が送込み方向に高速回転するとともに、切換ダンパー36が鎖線図示(符号36′)側に切換えられて吸気ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側が吸気ボックス31内に吸い込まれる(展張吊上げ布類が図8の符号S1の状態になる)。このとき、この展張吊上げ布類S1には、吸気ファン33の吸引作用により、下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される。
【0064】
尚、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャック21,21の引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部Tの下端縁Ta部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0065】
その後、切換ダンパー36′が実線図示側に切換えられ(吸着コンベア51の吸気ボックス53内が吸気される)、各受取チャック21,21が開放されて、布類の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持される。尚、このとき、布類上辺部分を図示しないブロワーからのエアで吸着ボックス41の先端側上面に向けて押付けるようにするとよい。続いて、吸着ボックス41が図9に実線図示する位置を経て鎖線図示位置(符号41′)まで後退するが、その間に布類上辺部分が吸着コンベア51上に移乗される(図10の符号S3の状態)。
【0066】
ところで、展張吊上げ布類の上辺部が受取チャック21から吸着ボックス41を経て吸着コンベア51の始端部に移乗される間には、展張吊上げ布類の上部寄り部分が側面視において左右の強制拡張部材71,71間を前方から後方に横切るが、このとき左右の強制拡張部材が図5に鎖線図示(符号71′)するようにそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外端部Sd,Sdの外側に位置しているので、布類の各外端部Sd,Sdが各強制拡張部材71′に引っ掛かることがない。
【0067】
又、布類上辺部分を吸着した吸着ボックス41が図8に示す前方突出位置から後退移動を開始し、展張吊上げ布類の上部寄り部分が左右の強制拡張部材71,71間を奥側に横切った直後(例えば吸着ボックス41が図9に実線図示する位置まで後退したとき)に、各左右動装置(左右動シリンダ)72をそれぞれ強制拡張部材前進側に作動させて、外側退避位置(図5の鎖線図示位置)にあった各強制拡張部材71′をそれぞれ布類外側部寄り前面Scに対面する位置まで内方に移動させる。続いて左右の各接離移動装置(接離動シリンダ)73を伸長させて、図7に示すように各強制拡張部材(前面側拡張ベルト)71をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触させるとともに、各前面側拡張ベルト71,71のモータ76を作動させて該前面側拡張ベルト71の奥側面をそれぞれ左右外向きに走行させる。
【0068】
この状態では、図7に示すように、展張吊上げ状態の布類Sが左右の各背面側拡張ベルト61,61と左右の各前面側拡張ベルト71,71とで表裏から軽く挟持され、且つ表裏各側の拡張ベルト61,71がそれぞれ左右外向きに走行しているので、展張吊上げ布類Sはその表裏各側からそれぞれ左右各外側に引っ張られる作用を受ける。
【0069】
そして、その後も吸着コンベア51が走行していることにより、展張吊上げ布類の下部側が順次上方に引き上げられていくが、その最中に布類の各外側部寄り部分がそれぞれ表裏から各拡張ベルト61,71で挟持され、且つ展張吊上げ布類Sの背面側が各背面側拡張ベルト61,61で順次左右に展張される一方、該展張吊上げ布類Sの前面側が各前面側拡張ベルト71,71で順次左右に展張されるので、布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除されるとともに、布類の表裏両面が左右に展張される。
【0070】
又、図11に示すように、展張吊上げ布類Sの丸ぐり部下縁部Taが前面側拡張ベルト71,71の高さ位置に差しかかったときには、各前面側拡張ベルト71,71による左右展張機能により、丸ぐり部Tの下縁Ta部分が左右各外側に引っ張られる作用を受け、丸ぐり部Tの下縁Ta部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部下縁Ta部分も緊張状態に伸展するようになる。
【0071】
さらに、展張吊上げ布類Sが図11に示す状態まで引き上げられた時点、即ち、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部Taが前面側拡張ベルト71,71の高さに差しかかった時点で、図示しないコントローラからの信号で各左右動装置(左右動シリンダ)72,72がそれぞれ退避側に作動し、各前面側拡張ベルト71,71を丸ぐり部下縁部Taの左右各外側部寄り位置Sc,Scに摺接しながら退避位置(図7の符号71′の位置)まで移動する。このとき、丸ぐり部下縁部Taが摺接により左右各外側に引っ張られ、丸ぐり部の下縁部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部下縁部分が確実に緊張状態に伸展する。
【0072】
退避位置まで後退した各前面側拡張ベルト(図7の符号71′)は、それぞれ接離移動装置73′(図7)が縮小することにより手前側の後退位置(図5に符号71′で示す鎖線図示位置)に戻されて、そこで次の布類展張作業時まで待機する。尚、各前面側拡張ベルト71が退避位置まで戻されたときに、モータ76がOFFになって、前面側拡張ベルト71の走行が停止する。
【0073】
このように、この布類展張搬送機を使用すれば、丸ぐり部Tを有した布類(額縁包布)Sであっても、表裏の各全面をそれぞれきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができ、折り皺のない状態で加工できる。
【0074】
又、この布類展張搬送機で、シーツのような1枚ものの布類を処理する際には、左右の各前面押付装置7,7全体を、図1に矢印で示すように作業の邪魔にならない下方位置に退避させておくことができる。
【0075】
図12〜図13の第2実施例
図12は第1実施例の図4に相当するものであり、図13は第1実施例の図5に相当するものである。そして、この第2実施例では、左右の前面押付装置7の強制拡張部材として、第1実施例の拡張ベルトに代えてそれぞれ複数個(この第2実施例では合計5個)のローラ77,77・・を縦向き姿勢で並置したものを使用している。
【0076】
左右各側の各ローラ77,77・・は、ホルダー75に取付けられていて、それぞれモータ78,78・・によりローラ奥面側をそれぞれ左右外方向(図13の矢印方向)に回転させるようになっている。尚、この第2実施例では、ローラ駆動用の各モータ78,78・・をホルダー75の上面に設置しているが、該各モータ78は、ローラ77に内蔵したものでもよい。又、この第2実施例のものでは、各ローラ77,77・・をそれぞれ個別のモータ78,78・・で回転せしめるようになっているが、他の実施例では、各ローラ77,77・・に1本のベルト(又はチエン)を掛け回して、単一のモータ78でまとめて回転させるようにしてもよい。
【0077】
尚、この第2実施例の布類展張搬送機におけるその他の構成は、上記第1実施例のものと同じであるので、その説明は該第1実施例のものを援用する。又、この第2実施例の前面押付装置7(強制拡張部材となるローラ77、左右動装置72、接離移動装置73等)の作動順序も、上記第1実施例のものと同じである。
【0078】
この第2実施例の布類展張搬送機では、強制拡張部材としてモータ78によって駆動される複数個のローラ77,77・・を使用しているが、この場合も、強制拡張部材(各ローラ77,77・・)が展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Scに対面する位置で該布類外側部寄り前面Scに接触したときに、該各ローラ77,77・・がそれぞれモータ78,78・・によって図13の矢印方向(ローラ奥面側が外方向)に回転しているので、布類外側部寄り前面Scに接触する各ローラ77,77・・が該布類外側部寄り前面Scを強制的に外側に拡張せしめるように作用する。
【0079】
従って、この第2実施例の布類展張搬送機でも、布類背面拡張装置6の拡張ベルト61と前面押付装置7(各ローラ77)とが共働して、布類Sの表裏両面をきれいに展張させることができる。
【0080】
図14〜図15の第3実施例
図14は第1実施例の図4に相当するものであり、図15は第1実施例の図5に相当するものである。そして、この第3実施例では、左右の各強制拡張部材として、第1実施例の拡張ベルトに代えてそれぞれ螺旋ロール79を使用している。
【0081】
この螺旋ロール79は、横向きロール軸の外周面に螺旋突条79aを設けたもので、モータ80により矢印方向(布類外側部寄り前面Scに接触する螺旋突条79aが布類前面を外側に拡張させる方向)に回転せしめられる。
【0082】
尚、この第3実施例の布類展張搬送機におけるその他の構成は、上記第1実施例のものと同じであるので、その説明は該第1実施例のものを援用する。又、この第3実施例の前面押付装置7(強制拡張部材となる螺旋ロール79、左右動装置72、接離移動装置73等)の作動順序も、上記第1実施例のものと同じである。
【0083】
この第3実施例の布類展張搬送機では、強制拡張部材としてモータ78によって駆動される螺旋ロール79を使用しているが、この場合も、強制拡張部材(螺旋ロール79)が展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Scに対面する位置で該布類外側部寄り前面Scに接触したときに、螺旋ロール79がモータ80によって矢印方向に回転しているので、該螺旋ロール79により布類外側部寄り前面Scを強制的に外側に拡張せしめるように作用する。
【0084】
従って、この第3実施例の布類展張搬送機でも、布類背面拡張装置6の拡張ベルト61と前面押付装置7(螺旋ロール79)とが共働して、布類Sの表裏両面をきれいに展張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本願第1実施例の前面押付装置を用いた布類展張搬送機の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である。
【図4】図1の右側前面押付装置部分の拡大図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図4のVI−VI拡大断面図である。
【図7】図5の状態から強制拡張部材が布類前面に接触した状態の変化図である。
【図8】図1の布類展張搬送機の作動説明図(図3相当図)である。
【図9】図8からの状態変化図である。
【図10】図9からの状態変化図である。
【図11】図10から状態変化したときの正面図である。
【図12】本願第2実施例の前面押付装置を用いた布類展張搬送機の一部正面図(図4相当図)である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】図1の右側前面押付装置部分の拡大図である。
【図15】本願第3実施例の前面押付装置を用いた布類展張搬送機の一部正面図(図4相当図)である。
【図16】公知例の布類展張搬送機の正面図である。
【図17】図16の布類展張搬送機の作動説明図である。
【図18】図17からの状態変化図である。
【図19】展張吊上げ状態の布類の説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1は投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、6は布類背面拡張装置、7は前面押付装置、11は投入チャック、21は受取チャック、22は左右動装置、61は背面側拡張ベルト、71は強制拡張部材(前面側拡張ベルト)、72は左右動装置、73は接離移動装置、76はモータ、77は強制拡張部材(ローラ)、78はモータ、79は強制拡張部材(螺旋ロール)、80はモータ、Sは布類、Saは布類角部、Scは布類外側部寄り前面、Sdは布類外端部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に丸ぐり部(T)を有した布団包布からなる大面積の布類(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分(Sa,Sa)を左右に離間させて布類(S)を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類(S)を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機であって、
前記展張吊上げ布類(S)の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルト(61)を有する左右一対の布類背面拡張装置(6,6)を設けている一方、
前記各布類背面拡張装置(6,6)の各拡張ベルト(61,61)に対面する位置に、前記展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc,Sc)をそれぞれ前記各拡張ベルト(61,61)側に押付ける左右一対の前面押付装置(7,7)を配置し、
さらに前記各前面押付装置(7,7)は、前記各拡張ベルト(61,61)の前面にある展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc,Sc)に摺接して該左右外側部寄り前面(Sc,Sc)をそれぞれ強制的に外側に拡張させ得る強制拡張部材(71,77,79)と、該強制拡張部材(71,77,79)を正面視において展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc)に対面する対面位置と展張吊上げ布類(S)の左右外端部(Sd,Sd)より外側の退避位置との間で左右に移動させる左右動装置(72)と、前記強制拡張部材(71,77,79)を拡張ベルト(61)前面にある展張吊上げ布類(S)の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類(S)の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置(73)とを備えている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−121142(P2008−121142A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306141(P2006−306141)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】