説明

布ICタグ

【課題】自然の感触で使用することができ、かつ洗濯の際のもみ洗いや衝撃に対しても耐性の向上が図れる織物ICタグを提供すること。
【解決手段】織物基材と、該織物基材の片面に形成された導電性インキからなる印刷アンテナと、該アンテナに電気的又は電磁的に接続されたICチップと、前記アンテナ、前記ICチップを含むインレットの上から覆うように積層され、前記織物基材と接着する保護部材とにより織ICタグを構成した布ICタグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布ICタグ(後段にて定義)に関し、特にスーツ、シャツ、ズボン、スカートなどの衣類、或いはシーツ、毛布、タオルなどの布状製品に取り付けて使用されるIC付きタグに関する。
【0002】
さらに本発明は、ネームや標章等を織り込んで使用される織り込みネームICタグに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明が対象とするスーツ、シャツ、ズボン、スカートなどの衣類においても、或いはシーツ、毛布、タオルなどの布状製品においても、製造国、メーカ名、素材、洗濯の指針などの衣類に関連する情報を布状のタグとして付けているものが多い。また、スーツの裏地には製造元の名前や標章が刺繍等により表示された布片が縫い付けられ、作業着やユニホームの胸部には会社名等が刺繍された布片を縫い付けているものが多い。このようなタグ或いは布片にICを組み合わせて、所謂、ICタグとして利用する技術は既に知られている。
【0004】
一方、ICタグには、電子タグ、無線タグ、無線ICタグ、RFタグなどいろいろな呼び名がある。このICタグとして、シールラベル形状のものにICタグ製品を構成する基本的な部品、例えばICチップと小型のアンテナからなるインレットを一体化した織り込みICタグがある。ICチップは、例えば衣類の製造国、メーカ、素材などの衣類に関連する情報を記憶するものであり、その読み取りには無線(RF:Radio Frequency)を使った専用のリーダー/ライターが使われる。つまり、ICタグに記憶されているID番号(固体を表す情報)を読み取るので、別名RFIDタグとも呼ばれている。アンテナは、該ICチップに記憶された情報をリーダーなどに電波で発するために使われる。
【0005】
従来、このICインレットの基材には、例えば、特許文献1に示す如く、延伸処理された強靭な透明耐熱性シート、具体的にはその一つであるペット(PET:ポリエチレンテレフタート)基材が多く用いられている(特許文献1)。
【0006】
また、従来に、特許文献2に示す如く、金銀糸(導電部)と絹糸(絶縁部)とをもって一枚の生地たる織物(基布)を構成し、該金銀糸(導電部)の配線パターンにより形成される導電性領域と、絶縁性を示す絶縁領域とを具備するアンテナを上着の肩口に取り付けたものがある(特許文献2)。すなわち、該文献2には、金銀糸からなるアンテナのRFID(Radio Frequency Identification)への適用について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−276451号公報
【特許文献2】特開2009−44439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前者の如く、ペット(PET)基材が多く使用されているICインレット(ICタグ製品を構成する基本的な部品)は、ペット(PET)の持つ硬さや加工性、縫製適正のなさなどから、これをタグ加工して衣服に取り付けて使用する用途にはなじまなかった。
仮に、ICインレットを衣服などに無理に取り付けようとすると、衣服の柔軟性や衣服が持つ風合いを損ねる。また、不自然なものとならざるを得なかった。
また更に、特にペット(PET)フィルムにICインレットを構成するICチップを接合する場合、アンカー効果が得られにくいため、ペット(PET)基材からICチップが取れ易く、洗濯の際のもみ洗いや衝撃に対して耐性のないものであった。
従って、洗濯が必要とされる衣類などへの適用には不向きであり、実際に実用化されたものがなかった。
【0009】
また、後者の如く、導電性を示す導電部を有する金銀糸と絶縁性を示す絹糸とによって生地である織物における導電部の配線パターンにより形成される導電性領域と絶縁性を有するスロットとを具備するウェアラブルアンテナは、金銀糸と絹糸とをもって織物を形成し、かつこれらの糸をもってアンテナを構成する、特殊な構成であることから量産化には不向きである。
また、基布に金銀糸で作るアンテナは、RFIDへの用途としては、抵抗値が高いこと、また、ICチップを具体的にどのように設けるのか、その方法について記述が一切ないこと、また、更に金銀糸は、ペット(PET)からなる基層に金属層を蒸着することにより構成されることから、このままではRFIDとして実際に使用できない。
また、特許文献1と同様にアンカー効果が得られにくく、ペット(PET)基材からICチップが取れ易く、洗濯の際のもみ洗いや衝撃に対して耐性がなく、衣類への使用としては実用向きとは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、これら不具合に鑑みなされ、その目的は衣類に付けても、自然の感触で使用することができ、かつ洗濯の際のもみ洗いや衝撃に対しても耐性の向上が図れる布ICタグを提供することにある。
ここで、本発明における「布ICタグ」との用語の意義を定義しておく。「布ICタグ」とは、ICチップとアンテナを備えた布状のタグであり、製品に取り付ける形態のタグ(付片)であるが、本発明においては、スーツの裏地に縫い付けた製造者を表示する布片、或いは作業着に縫い付けた名前を表示する布片に、ICとアンテナを備えたものも含むものとする。ただし、製造者又は氏名の表示とした機能に着目して「ネームICタグ」と称することがあり、製造者又は氏名を刺繍等で織り込んで表示したものを特に「織り込みネームICタグ」と称することがある。
【0011】
本発明は、前記目的を達成するため、布基材(含同等の柔軟性を有する化学繊維材)と、該布基材の片面に形成された導電性インキからなる印刷アンテナと、該アンテナに電気的又は電磁的に結合されたICチップと、前記アンテナ、前記ICチップを含むインレットの上から覆うように積層され、前記布基材と接着する保護部材とにより布ICタグを構成したことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、前記目的を達成するため、布基材(含同等の柔軟性を有する化学繊維材)と、該布基材の片面に形成された導電性インキからなる印刷アンテナと、該アンテナに電気的又は電磁的に結合されたICチップと、前記アンテナを保護する保護部材と、前記布基材、前記アンテナと前記ICチップからなるインレット、前記保護部材とを覆うように積層され、前記第1の布基材の片面に接着されたヒートシール部材とから布ICタグを構成したことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、前記目的を達成するため、布基材(含同等の柔軟性を有する化学繊維材)と、ヒートシール部材と、該ヒートシール部材の片面に形成された導電性インキからなる印刷アンテナと、該アンテナに電気的又は電磁的に結合されたICチップと、前記アンテナ、ICチップなどを保護する保護部材とを備え、前記布基材と前記ヒートシール部材とを前記アンテナ、前記ICチップからなるインレットを挟み込むようにして貼り合わせて布ICタグを構成したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記目的を達成するため、布基材(含同等の柔軟性を有する化学繊維材)と、ICチップおよび電極が形成された布とアンテナが形成された布と該ICチップ、該アンテナ、該電極を保護する保護部材を含み、該ICチップと該アンテナを該電極を介して電磁的に結合させてタグを構成した布製タグと、前記布製タグを覆うように積層され、前記布基材に接合されたヒートシール部材とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の課題を是正することができ、風合いの悪さの改善が図れ、洗濯堅牢性を持った布ICタグを得ることができる。その結果として衣服などに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例を示す簡易型ダイレクト方式の織ネームICタグの断面を模式的に示した構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す貼合方式の織ネームICタグの断面を模式的に示した構成図である。
【図3】本発明の他の実施例を示すダイレクト方式の織ネームICタグの断面を模式的に示した構成図である。
【図4】本発明の更に他の実施例を示す割符方式の織ネームICタグの断面を模式的に示した構成図である。
【図5】本発明の一実施例を示す織ネームICタグの織ネーム布表面などを示す図である。
【図6】本発明の一実施例を示す織ネームICタグの織ネーム布裏面などを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
布ICタグ、特に織ネームICタグは、織ネーム基布、インレット(印刷アンテナ、ICチップ)などを保護する保護部材などに基づいて実現した。
以下、本発明の実施形態について布ICタグとして織ネームICタグを例にして図面を参照して説明する。本発明において、ネームとは、氏名や社名は勿論、マーク、ロゴ、図形などの標章をすべて含むものである。
まず、織ネームICタグは、例えば図5、図6に示す如く構成される。図5は織ネームICタグの織ネーム布表面およびその厚みを示す図、図6はその織ネーム布裏面およびその厚みを示す図である。
【0018】
同図において、織ネームICタグは、織ネーム基材1を含み、該基材の表面11には、図5に示す如く、例えば会社名12などが周知の方法、例えば印刷や刺繍などで形成されている。基材1の裏面12には、図6に示す如く、ICチップ3やアンテナ2を含む布製インレット23が形成されている。基材1の側面13、14の厚みtは2mm以下に構成される。これらによって、衣類などへの利用が可能となる。ICチップ3には、周知の固体情報のほかにユーザに応じたユニーク情報、つまり製品保証に関連する情報や素材の構成要素識別情報などを記憶したものを利用すると良い。これによって、本織ネームICタグを装着した衣類などについて、例えば、在庫管理、リサイクル管理が可能となる。アンテナ2は、例えば図6に示す如く、ICチップ3を中心として左右点対称にクランク状に形成すると良い。
以下、本発明の織ネームICタグの実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す織ICタグの簡易型ダイレクト方式の構成を概略的に示す要部断面図である。
図1において、所定のネームを織り込んだ織ネーム基材1は印刷が可能な布、又は布と同様に柔軟性を有し、フィルム状に構成された化学繊維材、例えばポリエステル化学繊維、不織布、耐洗紙などが対象として挙げられる。従って、本発明においては、布ICとは、基材として布は勿論、化学繊維材、不織布、耐洗紙なども含まれる。
【0020】
また、例えば布生地では、アセテートサテン(アセテート朱子織)、ポリエステルサテン(ポロエステル朱子織)などであるが、この具体例では洗濯堅牢を考慮すれば、アセテートサテンよりもポリエステルサテンが好ましい。これらの基材、特に布生地はICチップのボンディングに際して接着材のアンカー効果があるものが多く、ICチップの接合強度は通常のPET機材よりも強靭な接合効果が得られる特徴がある。
【0021】
アンテナ2は前記織ネーム基材1の(裏面/図6参照)に、ネーム基材1のネーム(表面/図5参照)に対向するように銀を主成分とする導電性インキが印刷されることにより構成される。例えば、アンカー効果のある基布(ポリエステルサテン)に、直接導電性インキ(REXALPHA 東洋インキ製)で所定のアンテナ印刷パターンをシルクスクリーン法で印刷する。印刷としては、グラビア印刷方式でも可能であるが、アンテナの所定抵抗値が得られ易いのは、導電性インキ皮膜の厚さからシルクスクリーン印刷の方が効果的である。また、アンテナ2の形状として、例えば図6に示す如く、ICチップが取付けられる中心位置に対して点対称に形成し、かつクランク状に形成することで、その長さを直線状に形成することに比べ長く構成することができる。
【0022】
ICチップ3は固体を表す情報、例えば商品に関する製造元、素材などが特定できる情報などを記録するものであり、該ICチップ(Monza 2 Inpinj)は前記織ネーム基材1の基布に、通常に行われているICインレットの製法と同様にボンディングし、布ベースのICインレットとして作成される。
【0023】
4は前記織ネーム基材1の基布の表面に、前記印刷アンテナ2やICチップ3を含むICインレット(図6参照)などを保護するように形成された保護部材を示し、該保護部材は、例えばウレタン系や塩ビゾル系インキ層などの保護樹脂層からなり、アンテナ2の酸化防止と前記ICチップの保護と脱落防止を図ることを目的とし設けられる。
【0024】
前記インレット(ICタグ製品を構成する基本的な部品であるICインク、印刷アンテナ)表面に使用した保護部材4の保護樹脂層は柔軟性を損なわず、基材1の基布への強固な接着が確保できる材質のものが好ましい。例えは、Tシャツの絵柄印刷に使用されている塩ビゾルタイプのインキや、広範囲な多用途接着剤として使用されているシリル化ウレタン樹脂、若しくは衣類の裾上げテープなどの接着剤として使用されているポリアミド樹脂やホットメルトなどを使用することができる。
【0025】
以上により、織ネームICタグが構成されるが、係る実施例のICタグによれば、フレキシブルな布生地ベースのICタグを得ることができる。また、前記ICチップ3の基布へのボンディング時のアンカー効果と保護部材(保護樹脂層)4の基布1への強固な接着効果と相まってより一層の脱落防止、つまりICチップや印刷アンテナ2などが基布からの脱落防止が図れる。
【0026】
また、本織ネームICタグによれば、本織ネームICタグを、例えば衣服に取り付けて、衣服を洗濯した結果、洗濯時の捩れや衝撃に十分耐えることができた。また、本出願人の実験結果によれば、保護樹脂層として最も適しているのは、シリル化ウレタン樹脂(コニシ株式会社製)の塗工またはポリアミドフィルム(日本マタイ製)の積層ラミネートであった。
【0027】
また、本織ネームICタグは洗濯が必要とされる衣類に取付け可能とするものである。従って、織ネームICタグの厚み(図5、図6の厚み部分tの寸法)は2mm以下に抑えることが重要である。本出願人によれば、試作品などにより、その条件をクリアーできる構成であることを確認している。
【実施例2】
【0028】
図2は、本発明の他の実施例を示す織ICタグの貼合方式の構成を概略的に示す要部断面図である。同図において、5は織ネーム基材1、アンテナ2、ICチップ3、保護部材4などを覆うように形成されるヒートシール部材を示し、該部材は例えばポリアミド層からなる。なお、図面では、織ネーム基材1と他の部材とが分離して示してあるが、これらは保護部材4、ICチップ3、アンテナ2、ヒートシール部材5が織ネーム基材1上に積層されるように構成される。
【0029】
この実施例の応用例として、上記実施例に加え、つまり織ネーム基材1とは別個に積層の相手方として、織ネーム基材1’若しくは布生地1’を用意し、織ネーム基材1と織ネーム基材1’若しくは布生地1’とをもって、ICチップ3、印刷アンテナ2を含む布製インレット及び該インレットのICチップなどを保護する保護樹脂層4とを覆うように、かつ熱接着性の樹脂層5、例えばヒートシール性のあるポリアミド樹脂やホットメルト(裾上げテープなどのラミネート用樹脂)によって一体化した織ネームICタグとしても良い。
要するに、実施例1に示す織ネームICタグを、織ネーム基材1ともう一つの織ネーム基材1’若しくは布生地でもって袋状とし、これらをもってICタグを包み込むように構成したものである。
【0030】
本実施例は、サンドイッチ型インレットの積層構造としたICインレット一体型織ネームICタグと言えるものである。なお、このタグは、布生地や織ネーム基材に限らず、保護樹脂層4として接着層を間に挟んで貼合せラミネートしたICタグであり、耐洗紙や不織布、布などを表裏外層に例えば、一般のランドリータグとして活用することもできる。
【0031】
本実施例における基本構造例は、織ネーム基材/保護部材を構成するシリル化ウレタン樹脂層/ICインレット/ヒートシール部材を構成するポリアミド樹脂層/ICインレットの布基材からなる。
【実施例3】
【0032】
図3は本発明の更に他の実施例を示す織ICタグのダイレクト方式の構成を概略的に示す要部断面図である。図3において、5はヒートシール性のヒートシール部材を示し、該部材には、例えばポリアミド樹脂やウレタン樹脂のフィルムが使用される。そして、このフィルムに、導電性インクでアンテナ2を構成するパターン印刷を行い、該アンテナに電気的にICチップ3を接合したものである。ICチップ3のアンテナへの接合は、直接ボンディング、ストラップ方式のどちらでも良い。
【0033】
すなわち、本実施例は、ICチップ3、アンテナ2を含むICインレットをヒートシールフィルム側に先に設けておき、これを直接織ネーム部材または基布にヒートシールで貼り合わせ、直接一体化してなるものである。具体的には、ヒートシール性のあるポリアミド樹脂フィルム、若しくはウレタン樹脂フィルムに直接銀を主成分とする導電性インキでアンテナパターンを印刷し、またはエッチングでアンテナパターンを形成し、ICチップを取り付けてなるヒートシール性フィルム基材のICインレットを内側にして織ネーム基材や基布と貼り合わせ一体化した織ネームICタグである。
【0034】
ここで、織ネーム基材1側には同じ樹脂層を予め薄く設けて置き、ICインレットが樹脂層の中に埋設するような構造としても良い。樹脂層としては、柔軟性があって、印刷ができ、かつヒートシール性がある、またはヒートシール性の部材を付与したフィルムであれば良い。このICタグを衣服に装着することを考慮し、風合いとヒートシール貼合強度を考えれば、ポリアミドフィルムかウレタンフィルムが望ましい。
【0035】
また、エッチングによるアンテナ形成も排除するものではなく、基材フィルムがエッチング適正を持つフィルムであれば、その基材も候補に挙げることができる。係る方法は、織り込みネームの裏面の凹凸が大きくアンテナ印刷のインキ皮膜が破断する懸念がある場合や直接ICチップの接合が困難な場合に、安定した一体化ICタグを作るのに効果的である。
【実施例4】
【0036】
図4は、本発明の更に他の実施例を示す織ICタグの割符方式の構成を概略的に示す要部断面図である。ICタグをマイクロストラップ方式でボンディングするタイプを示すものであるが、そのストラップを予め相方のヒートシール性のフィルムに設けておくものである。
【0037】
同図において、6は布製タグ部を示し、該タグ部は電極62、ICチップ3が形成された布61とアンテナ2が形成された布61’との重ね合わせにより形成されている。電極62とICチップ3とはマイクロストラップテープ63にて接着されている。アンテナ2と電極62とは図示の如く、対向して配置され、電磁的に結合されている。すなわち、ICチップ3が取付けされる布61に2つの電極62を対向して設け、該電極間にICチップ3を接続し、布61’に設けたアンテナ2を対向して配置し、アンテナ2と電極21間を電磁的に結合する構成としたものである。
【0038】
またこの布製タグ部6はICチップ3を布61にボンディングした後、保護樹脂4が塗工される。ヒートシール部材5は布製タグ部6の上から、布性タグ部の周囲を覆うように織ネーム基材1に貼り付けられている。ここで、布製タグ部6の布61’側は予めヒートシール部材5に設けておく。
なお、図面では、一部の構成が分離して示されているが、これらは積層される形で一体的に形成されるものである。
【0039】
ICチップ3がボンディングされる基材(布61)は、アンテナを構成する導電部分3が形成された基材(布61’)に対向する部分がエッチングできる基材であれば、エッチングで設けても良い。あるいは印刷方式で設けても良いが、導電部2のアンテナとICチップ3がしっかり導通が確保されるよう、確実な位置合わせとICチップ周辺がずれないように確固たるヒートシール接合することが重要である。
【0040】
以上述べたように本実施例は、ヒートシール性のあるフィルム基材に設けたマイクロストラップを使って、アンテナを印刷した基材の布や化学繊維材を位置合わせてして積層したICタグである。マイクロストラップ周辺はヒートシール基材のために相手方基材と強固接着し、洗濯堅牢性が増すだけでなく、マイクロストラップのICチップの導電部分と相方に印刷されたアンテナ(3’)ともしっかりと接合するもので、通信機能が確保されることになる。また、本実施例によれば、アンテナ2のパターンの自由度が増し、製造する上で有効である。
【0041】
以上述べた各実施例の如く、織ネーム基布とICインレットの構成要素であるアンテナ及びこれに接合すべきICチップと、これらを保護する樹脂層、並びにヒートシール可能な接着樹脂層とを兼ね備えているフレキシブルな布生地ベースの織ネームICタグにおいて、ICチップ3の取り付けは、導電性接着剤やUV硬化型接着剤など、従来のボンディング方式やマイクロストラップ方式で行うが、その際には、基材表面の凹凸形状や導電性の糸の表面状態などに応じて確実に導電性を確保できる方式を適宜選択する。特に基材が布ベースの場合、接着剤のアンカー効果が高くなり、ICチップは基布に強固に接着することが確認されている。
【0042】
このようにして構成したインレットの上に基材と強固に接着する保護部材(保護樹脂層)を設けることにより部材ICチップ3の周囲やアンテナの周囲がしっかりと固定でき、洗濯の際の捩れや衝撃に対してアンテナの破断やICチップ接合部の剥がれが防止でき、更に一層洗濯堅牢性の高いフレキシブルなICタグを得ることができる。本出願人はそのことを実験にて確認している。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の織ICタグは、衣類への適用を前提にしているが、その他洗濯、堅牢性を要求される衣料品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 織ネーム部材(基布)
1’ 布基材
2 印刷アンテナ
3 ICチップ
4 保護部材(保護樹脂層)
5 ヒートシール部材
6 布製タグ部
61、61’ 布
62 電極
63 マイクロストラップテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布基材と、該布基材の片面に形成された導電性インキからなる印刷アンテナと、該アンテナに電気的又は電磁的に結合されたICチップと、前記アンテナ、前記ICチップを含むインレットの上から覆うように積層され、前記布基材と接着する保護部材とからなることを特徴とする布ICタグ。
【請求項2】
前記布基材が、布生地、又は織ネームからなる請求項1記載の布ICタグ。
【請求項3】
前記布生地、又は織ネームが、アセテートサテン又はポリエステルサテンからなり、前記保護部材が、ウレタン系樹脂、又は塩化ビゾル系インキ層からなる請求項2記載の布ICタグ。
【請求項4】
第1の布基材と、該第1の布基材の片面側に形成された導電性インキからなる印刷アンテナと、該アンテナに電気的又は電磁的に結合されたICチップと、前記ICチップ、前記アンテナを含むインレットを保護する保護部材と、前記第1の布基材の裏面、前記インレット、前記保護部材とを覆うように積層されたヒートシール部材および前記第1の布基材とともに前記インレット、前記保護部材、前記ヒートシール部材を包み込むように覆う第2の布基材とからなることを特徴とする布ICタグ。
【請求項5】
前記第1の布基材が、アセテートサテン又はポリエステルサテンからなり、前記保護部材が、ウレタン系樹脂、又は塩化ビゾル系インキ層からなり、前記ウレタン系樹脂、又は塩化ビゾル系インキ層からなり、前記ヒートシール部材が、ポリアミド又はウレタン系の樹脂層からなる請求項4記載の布ICタグ。
【請求項6】
ヒートシール部材と、該ヒートシール部材の片面に形成された導電性インキからなる印刷アンテナと、該アンテナに電気的に接続されたICチップと、前記アンテナ、ICチップなどを保護する保護部材とを備え、前記布基材と前記ヒートシール部材とを前記アンテナ、前記ICチップからなるインレットを挟み込むようにして貼り合わせてICタグを構成したことを特徴とする布ICタグ。
【請求項7】
前記ヒートシール部材が、ポリアミド又はウレタン系の樹脂層からなる請求項6記載の布ICタグ。
【請求項8】
布基材と、ICチップと該ICチップに接着された電極が形成された布およびアンテナが形成された布とを含み、該電極と該アンテナを所定の箇所で電磁的に結合させてタグを構成した布製タグと、
前記布製タグの上から該布製タグを覆うように積層され、前記布基材に接合されたヒートシール部材とからなることを特徴とする布ICタグ。
【請求項9】
前記布基材が、アセテートサテン又はポリエステルサテンからなり、前記ヒートシール部材が、ウレタン系樹脂、又は塩化ビゾル系インキ層からなり、前記ストラップ部の接着材がストラップテープから構成されている、請求項8記載の布ICタグ。
【請求項10】
前記布基材が、織ネーム基材であり、該織ネーム基材の表面には、織ネームが形成され、裏面には、前記織ネームに対向する前記アンテナを含む前記布ICタグを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れかに記載の布ICタグ。
【請求項11】
前記布ICタグが衣類に装着されたことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れかに記載の布ICタグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−186842(P2011−186842A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52112(P2010−52112)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(510065230)株式会社ユニテック (1)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【出願人】(503120999)株式会社テクノリンクス (8)
【Fターム(参考)】