説明

希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とそれを用いた放射線像変換パネル

【課題】 輝尽性蛍光体粒子内に発光分布がなく、それを用いた放射線像変換パネルは粒状性がよく、X線損傷による発光強度低下も小さい、希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とそれを用いた放射線像変換パネルを提供することにある。
【解決手段】 下記一般式(I)で表され、発光面積が蛍光体粒子表面積の50〜100%である希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
一般式(I) Ba(1-x)2(x)FBr(y)(1-y):aM1,bLn,cO
(式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCs、M2はBe,Mg,Sr及びCa、LnはCe,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYb、x,y,a,b及びcは、各々、0≦x≦0.3,0≦y≦0.3,0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0≦c≦0.1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とそれを用いた放射線像変換パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に代って、近年、輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法が用いられるようになった。
【0003】
この方法は、輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる)を利用するもので、被写体を透過した、又は被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光と言う)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起し、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光と言う)として放射させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体又は被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。そして、読取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0004】
この方法によれば、従来の放射線写真法に比して、遙かに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、撮影毎にフィルムを消費する放射線写真法に対して、放射線画像変換パネルは、繰り返して使用できるので、資源保護や経済効率の面からも有利である。
【0005】
放射線画像変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体の場合は輝尽性蛍光体層のみからなっている。輝尽性蛍光体層は、通常、輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合材からなるものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものとがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。尚、輝尽性蛍光体層の支持体側と反対側の表面には、通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護膜が設けられる。
【0006】
この輝尽性蛍光体は、通常、400〜900nmの範囲にある励起光によって、波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用される。この種の輝尽性蛍光体として、例えば、特開昭59−56479号公報、特開昭59−56480号公報などに記載の希土類元素賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭61−235486号公報、特開昭61−235487号公報などに記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号公報に記載の希土類元素賦活オキシハライド蛍光体;特開昭58−69281号公報に記載のセリウム賦活3価金属オキシハライド蛍光体;特開昭60−70484号公報に記載のビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号公報、特開昭60−157100号公報などに記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号公報に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ硼酸塩蛍光体;特開昭60−217354号公報に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号公報、特開昭61−21182号公報などに記載のセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号公報に記載のセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号公報に記載の2価のユーロピウム賦活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78151号公報に記載の2価のユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体等が知られている。
【0007】
これらの中で、沃素を含有する2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物蛍光体、沃素を含有する希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体及び沃素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体などが高感度の輝尽発光を示すものとして知られている。
【0008】
又、輝尽性蛍光体を利用する放射線画像変換方法の利用が進むにつれて、得られる放射線画像の画質の向上、例えば鮮鋭度の向上や粒状性の向上が更に求められるようになってきた。
【0009】
特に最近、より高輝度であり、X線損傷による鮮度低下の少ない輝尽性蛍光体が要望されている。
【0010】
輝尽性蛍光体の製造方法は、固相法あるいは焼結法と呼ばれる方法で、焼成後の粉砕が必須であり、感度、画像性能に影響する粒子形状の制御が困難であるという問題を有する。放射線画像の画質向上の手段の中で、輝尽性蛍光体の微粒子化と微粒子化された輝尽性蛍光体の粒径を揃えること、即ち、粒径分布を狭くすることが有効である。
【0011】
特開平7−233369号公報や特開平9−291278号公報などで開示されている液相からの輝尽性蛍光体の製造法は、蛍光体原料溶液の濃度を調整して微粒子状の輝尽性蛍光体前駆体を得る方法であり、粒径分布の揃った輝尽性蛍光体粉末の製造法として有効である。又、放射線被爆量の低減という観点から、希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体のうち、沃素含有量が高いものが好ましいことが知られているが、これは臭素に比べて沃素がX線吸収率が高いためである。即ち、上記のような液相で製造されるアルカリ土類金属フッ化沃化物系輝尽性蛍光体は、輝度、粒状性の点で有利である。
【0012】
しかしながら、液相にて前駆体結晶を得る場合、以下のような問題が有る。例えば、特開平10−88125号公報や特開平9−291278号公報に記載されている通り、(1)沃化バリウムを水あるいは有機溶媒に溶解し、この液を撹拌しながら無機フッ化物の溶液を添加する方法、(2)フッ化アンモニウムを水に溶解し、この液を撹拌しながら沃化バリウムの溶液を添加する方法が有効である。しかし、上記(1)の方法では、溶液中に過剰の沃化バリウムを存在させておく必要があり、そのため投入した沃化バリウムと固液分離後に得られるフッ化沃化バリウムの化学量論比は0.4前後と小さい値であることが多い。つまり、投入した沃化バリウムに対し、アルカリ土類金属フッ化沃化物系輝尽性蛍光体の収率は40%程度であることが多い。同様に(2)の方法でも、無機フッ化物に対して過剰の沃化バリウムを必要とし収率が低い。このように、フッ化沃化バリウムの液相合成は収率が低く、生産性が悪いという問題を有している。収率を上げる為、母液中の沃化バリウム濃度を下げると、粒子の肥大化を招き、これは画質特性上好ましくない。
【0013】
希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、特にアルカリ土類金属フッ化沃化物系輝尽性蛍光体の収率を上げる為、反応母液の濃度と弗素源を添加した後、濃縮することにより、基本組成式BaFI:xLn(Ln:Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素、xは0<x≦0.1の数値を表す。)で示される希土類元素含有角状フッ化沃化バリウム結晶を得る方法が提案(特開平11−29324号公報)されている。
【0014】
しかし、本発明者らが追試を行った結果、記載通りBaFI角状結晶は生成したものの、自然蒸発による濃縮を用いる為、生産性が著しく低く、工業的には現実的ではないことが判った。又、得られる角状結晶も粒径が大きく、かつ、粒径分布が広いため、画像特性が悪く、実用に供することが出来ないことも判った。
【0015】
また、特許文献1および特許文献2には、粒径が小さく粒径分布も狭い、かつ高輝度な、酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の作製方法が記載されている。
【0016】
しかし、輝尽性蛍光体を利用する放射線画像変換方法の利用が進むにつれて、得られる放射線画像の画質の向上、例えば輝度や粒状性の向上、繰り返し使用によるX線損傷での輝度劣化低減が更に求められるようになってきた。
【特許文献1】特開2002−38143号公報
【特許文献2】特開2003−268369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本願発明は前記した課題を解決するためになされた。
【0018】
本発明の発明者らの輝尽性蛍光体粒子とその発光状態の精緻な検討によれば、前記いずれの製造方法によっても、実際には輝尽性蛍光体粒子内に高発光量に発光する領域部分と、あまり発光しない領域部分というように発光分布があり、それ故、それを用いた放射線像変換パネルは粒状性が悪くなり、さらに繰り返しX線照射することにより蛍光体X線損傷による発光強度低下が大きいことも明らかとなった。
【0019】
本発明の目的は、輝尽性蛍光体粒子内に発光分布がなく、それを用いた放射線像変換パネルは粒状性がよく、X線損傷による発光強度低下も小さい、希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とそれを用いた放射線像変換パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、本発明の目的は下記構成を採ることにより達成されることが明らかとなった。
【0021】
請求項1
下記一般式(I)で表さられる希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体において、発光面積が蛍光体粒子表面積の50〜100%であることを特徴とする希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
【0022】
一般式(I)
Ba(1-x)2(x)FBr(y)(1-y):aM1,bLn,cO
〔式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsの群の中から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M2はBe,Mg,Sr及びCaの群の中から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbの群の中から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x,y,a,b及びcは、各々、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1の条件を満たす値である。〕
請求項2
発光面積が蛍光体粒子表面積の80〜100%であることを特徴とする請求項1記載の希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
【0023】
請求項3
放射線像変換パネルの蛍光体層の輝尽性蛍光体が、請求項1または2記載の希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体であることを特徴とする放射線像変換パネル。
【0024】
なお、上記の本発明における発光面積が蛍光体粒子表面積の、50〜100%、より好ましくは80〜100%であるとは、輝尽性蛍光体粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真像(SEM像)と、カソードルミネッセンス法により得られた発光像(CL像)を重ね合わせることにより、各粒子の発光表面積比を求め、100個の粒子につき平均した発光面積比(%)が、50〜100%(80〜100%)であることをいう。
【0025】
カソードルミネッセンス法による測定は、電子放出源が小さくて輝度が高く、かつ長時間安定な電子ビームが得られるショットキー型電子銃を備えたSEM、またはEPMA(X線マイクロアナライザー)にカソードルミネッセンスを検出する検出器、または分光器が装着された装置で行う。
【0026】
図1(1)に示すのが、本発明の輝尽性蛍光体(構造式:BaFI:Eu2+)粒子のカソードルミネッセンス法により得られた発光像である。それに対し、図1(2)に示すのが、従来の輝尽性蛍光体(構造式:BaFI:Eu2+)粒子のカソードルミネッセンス法により得られた発光像である。
【0027】
これらの各粒子の発光像の面積を、SEMで求めた同一粒子の表面積で除したものの、200個における平均が発光表面積比(百分率)である。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、輝尽性蛍光体粒子内に発光分布がなく、それを用いた放射線像変換パネルは粒状性がよく、X線損傷による発光強度低下も小さい、希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とそれを用いた放射線像変換パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0030】
液相法による輝尽性蛍光体前駆体製造については、特開平10−140148号に記載された前駆体製造方法、特開平10−147778号に記載された前駆体製造装置が好ましく利用できる。ここで輝尽性蛍光体前駆体とは、前記一般式(1)で示される物質が600℃以上の高温を経ていない状態を示し、輝尽性蛍光体前駆体は、輝尽発光性や瞬時発光性をほとんど示さない。本発明では以下の液相合成法により前駆体を得ることが好ましい。
【0031】
上記一般式(1)からなる酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体の製造は、粒子形状の制御が難しい固相法ではなく、粒径の制御が容易である液相法により行なうことが好ましい。
【0032】
特に、下記の液相合成法により輝尽性蛍光体を得ることが好ましい。
【0033】
BaI2とLnのハロゲン化物を含み、一般式(1)のxが0でない場合には更に、M2のハロゲン化物を、yが0でない場合はBaBr2を、そしてM1のハロゲン化物を含み、それらが溶解したのち、BaI2濃度が3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上の溶液を調製する工程、
上記の溶液を50℃以上、好ましくは80℃以上の温度に維持しながら、これに濃度5mol/L以上、好ましくは8mol/L以上の無機フッ化物(フッ化アンモニウムもしくはアルカリ金属のフッ化物)の溶液を添加して希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ヨウ化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶の沈澱物を得る工程、
上記の無機フッ化物を添加しつつ、反応液から溶媒を除去する工程、
上記の前駆体結晶沈澱物を反応液から分離する工程、
そして、分離した前駆体結晶沈澱物を焼結を避けながら焼成する工程を含む製造方法である。
【0034】
尚、本発明に係る粒子(結晶)は平均粒径が1〜10μmで、かつ単分散性のものが好ましく、平均粒径が1〜5μm、平均粒径の分布(%)が20%以下のものが好ましく、特に平均粒径が1〜3μm、平均粒径の分布が15%以下のものが良い。
【0035】
本発明における平均粒径とは、粒子(結晶)の電子顕微鏡写真より無作為に粒子200個を選び、球換算の体積粒子径で平均を求めたものである。
【0036】
続いて、以下に輝尽性蛍光体の製造法の詳細について説明する。
【0037】
〔前駆体結晶の沈澱物の作製、輝尽性蛍光体作製〕
最初に、水系媒体中を用いて弗素化合物以外の原料化合物を溶解させる。すなわち、BaI2とLnのハロゲン化物、そして必要により更にM2のハロゲン化物、そして更にM1のハロゲン化物を水系媒体中に入れ充分に混合し、溶解させて、それらが溶解した水溶液を調製する。ただし、BaI2濃度が3.3mol/L以上好ましくは3.5mol/L以上となるように、BaI2濃度と水系溶媒との量比を調整しておく。このときバリウム濃度が低いと所望の組成の前駆体が得られないか、得られても粒子が肥大化する。よって、バリウム濃度は適切に選択する必要があり、本発明者らの検討の結果、3.3mol/L以上で微細な前駆体粒子を形成することができることが分かった。このとき、所望により、少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。BaI2の溶解度が著しく低下しない範囲で低級アルコール(メタノール、エタノール)を適当量添加しておくのも好ましい態様である。この水溶液(反応母液)は80℃に維持される。
【0038】
次に、この80℃に維持され、撹拌されている水溶液に、無機フッ化物(フッ化アンモニウム、アルカリ金属のフッ化物など)の水溶液を注入する。この注入は、撹拌が特に激しく実施されている領域部分に行なうのが好ましい。この無機フッ化物水溶液の反応母液への注入によって、前記一般式(1)に該当する酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体前駆体結晶が析出する。本発明における希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体において、発光面積が蛍光体粒子表面積の50〜100%を得る好ましい一つの方法としては、この無機フッ化物の水溶液を注入する濃度や量を最適化することである。
【0039】
本発明においては、無機フッ化物水溶液の添加時に反応液から溶媒を除去する。溶媒を除去する時期は添加中であれば、特に問わない。溶媒の除去後の全質量が除去前の質量(反応母液の質量と添加した水溶液の質量の和)に対する比率(除去比率)が0.97以下であることが好ましい。これ以下では結晶がBaFIになりきらない場合がある。そのため除去比率0.97以下であることが好ましく、0.95以下がより好ましい。また、除去しすぎても反応溶液の粘度が過剰に上昇するなど、ハンドリングの面で不都合が生じる場合がある。
【0040】
そのため溶媒の除去比率は0.5までが好ましい。溶媒の除去に要する時間は生産性に大きく影響するばかりでなく、粒子の形状、粒径分布も溶媒の除去方法に影響されるので、除去方法は適切に選択する必要がある。一般的に溶媒の除去に際しては溶液を加熱し、溶媒を蒸発する方法が選択される。本発明においてもこの方法は有用である。溶媒の除去により、意図した組成の前駆体を得ることができる。更に、生産性を挙げるため、また、粒子形状を適切に保つため、他の溶媒除去方法を併用することが好ましい。併用する溶媒の除去方法は特に問わない。逆浸透膜などの分離膜を用いる方法を選択することも可能である。本発明では生産性の面から、以下の除去方法を選択することが好ましい。
1.乾燥気体の通気
反応容器を密閉型とし、少なくとも2箇所以上の気体が通過できる孔を設け、そこから乾燥気体を通気する。気体の種類は任意に選ぶことができる。安全性の面から、空気、窒素が好ましい。通気する気体の飽和水蒸気量に依存し、溶媒が気体に同伴され、除去される。反応容器の空隙部分に通気する方法の他、液相中に気体を気泡として噴出させ、気泡中に溶媒を吸収させる方法もまた有効である。
2.減圧
よく知られるように減圧にすることにより、溶媒の蒸気圧は低下する。蒸気圧降下により効率的に溶媒を除去することができる。減圧度としては溶媒の種類により適宜選択することができる。溶媒が水の場合86kPa以下が好ましい。
3.液膜
蒸発面積を拡大することにより溶媒の除去を効率的に行うことができる。本発明のように、一定容積の反応容器を用いて加熱、撹拌し、反応を行わせる場合、加熱方法しては、加熱手段を液体中に浸漬するか、容器の外側に加熱手段を装着する方法が一般的である。該方法によると、伝熱面積は液体と加熱手段が接触する部分に限定され、溶媒除去に伴い、伝熱面積が減少し、よって、溶媒除去に要する時間が長くなる。これを防ぐため、ポンプ、あるいは撹拌機を用いて反応容器の壁面に散布し、伝熱面積を増大させる方法が有効である。このように反応容器壁面に液体を散布し、液膜を形成する方法は”濡れ壁”として知られている。濡れ壁の形成方法としては、ポンプを用いる方法のほか、特開平6−335627号、同11−235522号に記載の撹拌機を用いる方法が挙げられる。
【0041】
これらの方法は単独のみならず、組み合わせて用いてもかまわない。液膜を形成する方法と容器内を減圧にする方法の組み合わせ、液膜を形成する方法と乾燥気体を通気する方法の組み合わせなどが有効である。特に前者が好ましく、特開平6−335627号、特願2002−35202に記載の方法が好ましく用いられる。
【0042】
次に、上記の蛍光体前駆体結晶を、濾過、遠心分離などによって溶液から分離し、メタノールなどによって充分に洗浄し、乾燥する。この乾燥蛍光体前駆体結晶に、アルミナ微粉末、シリカ微粉末などの焼結防止剤を添加、混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。なお、焼成条件を選ぶことによって焼結防止剤の添加を省略することも可能である。
【0043】
次に、蛍光体前駆体の結晶を、石英ポート、アルミナ坩堝、石英坩堝などの耐熱性容器に充填し、電気炉の炉心に入れて焼結を避けながら焼成を行う。焼成温度は400〜1,300℃の範囲が適当であり、500〜1,000℃の範囲が好ましい。焼成時間は、蛍光体原料混合物の充填量、焼成温度及び炉からの取出し温度などによっても異なるが、一般には0.5〜12時間が適当である。
【0044】
焼成雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気、あるいは少量の水素ガスを含有する窒素ガス雰囲気、一酸化炭素を含有する二酸化炭素雰囲気などの弱還元性雰囲気、あるいは微量酸素導入雰囲気が利用される。焼成方法については、特開2000−8034号に記載の方法が好ましく用いられる。上記の焼成によって目的の酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体が得られ、これを用いて形成された蛍光体層を有する放射線像変換パネルが作製される。
【0045】
〔放射線画像変換パネルの作製〕
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては、各種高分子材料、ガラス、金属等が用いられる。特に情報記録材料としての取扱い上、可撓性のあるシート又はウェブに加工できるものが好適である。この点からすると、セルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム;アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シート又は該金属酸化物の被覆層を有する金属シート等が好ましい。
【0046】
これら支持体の厚さは、用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には、10〜1000μmであり、取扱い上の点から、10〜500μmが好ましい。
【0047】
支持体の表面は滑面であっても良く、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としても良い。更に、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で、輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けても良い。
【0048】
下引層に用いられる結合剤(結着剤)の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、又はアラビアゴムのような天然高分子物質;ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル等のような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることが出来る。これらの中でも特に好ましいものは、ニトロセルロース、線状ポリエステル、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ニトロセルロースと線状ポリエステルとの混合物、ニトロセルロースとポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物及びポリウレタンとポリビニルブチラールとの混合物である。尚、これらの結合剤は、架橋剤によって架橋されたものでもよい。
【0049】
輝尽性蛍光体層は、例えば次のような方法により下引層上に形成することが出来る。
【0050】
先ず、沃素含有輝尽性蛍光体、黄変防止の為の亜燐酸エステル等の化合物及び結合剤を適当な溶剤に添加し、これらを充分に混合して結合剤溶液中に蛍光体粒子及び該化合物の粒子が均一に分散した塗布液を調製する。
【0051】
本発明に用いられる結合剤としては、例えばゼラチンの如き蛋白質、デキストランの如きポリサッカライド又はアラビアゴム、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニルデン−塩化ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール等のような、通常、層構成に用いられる造膜性の結合剤が使用される。
【0052】
輝尽性蛍光体層用塗布液において、結合剤は輝尽性蛍光体1質量部に対して0.01〜1質量部の範囲で使用される。しかしながら、得られる放射線画像変換パネルの感度と鮮鋭性の点では結合剤は少ない方が好ましく、塗布の容易さとの兼合いから0.03〜0.2質量部の範囲がより好ましい。
【0053】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製に用いられる溶剤例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;トリオール、キシロール等の芳香族化合物;メチレンクロライド、エチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0054】
尚、塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させる為の分散剤、又、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との結合力を向上させる為の可塑剤など種々の添加剤が混合されても良い。このような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることが出来る。可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステル等のポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステル等を挙げることが出来る。
【0055】
上記のように調製した塗布液を、下塗層の表面に均一に塗布することにより塗布液の塗膜を形成する。この塗布操作は、通常の塗布手段、例えばドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等を用いて行うことが出来る。次いで、形成された塗膜を徐々に加熱することにより乾燥し、下塗層上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。
【0056】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、及び超音波分散機などの分散装置を用いて行われる。調製された塗布液をドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、乾燥することにより、輝尽性蛍光体層が形成される。前記塗布液を保護層上に塗布・乾燥した後に輝尽性蛍光体層と支持体とを接着してもよい。
【0057】
放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結着剤と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1000μm程度である。特に、10〜500μmがより好ましい。
【0058】
支持体上に蛍光体層が塗設された蛍光体シートは所定の大きさに断裁する。断裁にあたっては一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0059】
所定の大きさに断裁された蛍光体シートは一般に防湿性保護フィルムで封止される。封止方法としては、例を挙げると蛍光体シートを上下の防湿性保護フィルムの間で挟み周縁部をインパルスシーラで加熱融着する方法や2本の加熱したローラー間で加圧加熱するラミネート方式等が挙げられる。
【0060】
上記インパルスシーラで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を説明する。
【0062】
実施例1
ユーロピウム賦活フッ化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、2つの孔をもつ耐圧容器にBaI2水溶液(3.4mol/L)2500mlを反応器にいれた。さらに、EuI3・2H2Oを11gとヨウ化カリウム104gを添加した。
【0063】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら90℃に加温した。これに乾燥空気を10L/minの割合で通気しながら、フッ化アンモニウム水溶液(6mol/L)1000mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。反応終了後通気前後の溶液の質量比は0.94であった。該溶液をそのままの温度で90分間撹拌した後、ろ別し、エタノール2000mlで洗浄し、前駆体を作製した。
【0064】
実施例2
フッ化アンモニウム水溶液として3mol/Lの溶液を2000ml用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い前駆体を作製した。
【0065】
実施例3
フッ化アンモニウム水溶液として10mol/Lの溶液を660ml用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い前駆体を作製した。
【0066】
比較例1
ユーロピウム賦活フッ化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(4mol/L)2500mlとEuI3水溶液(0.2mol/L)26.5mlを反応器に入れた。更に、水溶液中にヨウ化カリウム332gを添加し、この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。
【0067】
フッ化アンモニウム水溶液(10mol/L)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後、そのままの温度で90分間撹拌した。90分撹拌した後ろ過しエタノール2000mlで洗浄し、80℃で乾燥した。
【0068】
〔焼成〕
上記で得られた各沈殿物(前駆体の結晶)を用い、下記のように焼成を行った。各前駆体に対し、焼結による粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、850℃で2時間焼成してユーロピウム賦活フッ化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0069】
〔表面処理〕
続いて得られた蛍光体粒子の100gを、シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)2gを含有するエタノール分散液中に浸してスラリー状とした後、ろ過、乳鉢解砕して、80℃で3時間乾燥した後、分級して平均粒径7μmの蛍光体粒子を調製した。
【0070】
〔放射線像変換パネルの作製〕
(下引層の形成)
以下に記載の下引層塗布液を、ドクターブレードを用いて、厚さ188μmの発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製 188E60L)に塗布し、100℃で5分間乾燥させて、乾燥膜厚30μmの下引層を塗設した。
【0071】
下引層塗布液
ポリエステル樹脂溶解品(東洋紡社製 バイロン55SS、固形分35%)288.2gに、β−銅フタロシアニン分散品0.34g(固形分35%、顔料分30%)及び硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製 コロネートHX)11.22gを混ぜ、プロペラミキサーで分散して下引層塗布液を調製した。
【0072】
(蛍光体層の形成)
蛍光体層塗布液
上記調製した各輝尽性蛍光体粒子300gと、ポリエステル樹脂(東洋紡社製 バイロン530、固形分30%、溶剤:メチルエチルケトン/トルエン=5/5)52.63gとを、メチルエチルケトン0.13g、トルエン0.13g及びシクロヘキサノン41.84gの混合溶剤に添加、プロペラミキサーによって分散して蛍光体層塗布液を調製した。
【0073】
(蛍光体層の形成、蛍光体シートの作製)
上記調製した蛍光体層塗布液を、ドクターブレードを用いて、上記形成した下引層上に、膜厚が180μmとなるように塗布したのち、100℃で15分間乾燥させて蛍光体層を形成して、蛍光体シートを作製した。
【0074】
〔防湿性保護フィルムの作製〕
上記作製した蛍光体シートの蛍光体層塗設面側の保護フィルムとして下記構成(A)のものを使用した。
【0075】
構成(A)
NY15///VMPET12///VMPET12///PET12///CPP20
NY:ナイロン
PET:ポリエチレンテレフタレート
CPP:キャステングポリプロピレン
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、樹脂層の膜厚(μm)を示す。
【0076】
上記「///」は、ドライラミネーション接着層で、該接着層の厚みが3.0μmであることを意味する。使用したドライラミネーション用の接着剤は、2液反応型のウレタン系接着剤を用いた。
【0077】
また、蛍光体シートの支持体裏面側の保護フィルムは、
CPP30//アルミフィルム9//ポリエチレンテレフタレート188
の構成のドライラミネートフィルムとした。また、この場合の「//」は接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0078】
(放射線像変換パネルの組み立て)
前記作製した各蛍光体シートを、各々一辺が20cmの正方形に断裁した後、上記作製した防湿性保護フィルムを用いて、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着、封止して、各放射線像変換パネルを作製した。尚、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは3mm幅のものを使用した。
【0079】
〔特性の評価〕
(発光面積比の測定)
日立製作所社製SEM S−4300SE型にGatan社製MonoCL3+検出器を装着した装置で発光箇所と発光スペクトルの測定を、カールツァイス社製SEM LEO1530VP型に集光ミラーと反射電子検出器からなる簡易CL検出器を装着した装置で発光箇所の測定を実施した。
【0080】
測定条件は、S−4300SE型での測定においては、加速電圧30kV、LEO1530VPでの測定は加速電圧5kVである。
【0081】
また、LEO1530VPの測定における蛍光体への導電処理はせず行っており、SEM観察時のエッジ効果(エッジが極端に光ること)を抑え、詳細な形態観察像と、カソードルミネッセンス法により得られる発光像(CL像)の比較ができ、発光箇所の特定が精度良く行えた。
【0082】
なお、ビーム電流はSEM像、CL像、CLスペクトルの分解能とSN比が両立できる電流値に調整し測定した。
【0083】
発光面積比は、前記した如く輝尽性蛍光体粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真像(SEM像)と、カソードルミネッセンス法により得られた発光像(CL像)を重ね合わせることにより、各粒子の発光表面積比を求め、100個の粒子につき平均した。
【0084】
(粒状性)
放射線画像変換パネルに管電圧80kVp、200mRのX線を照射した後、レジウス170(コニカミノルタ社製)の高精形モードで読みとり、G=4でフィルム出力し、結果を目視で比較した。得られた画像の粒状性を目視で3段階評価した。
【0085】
○印は、良好な粒状性を意味し、◎印は、「○」よりもさらに良好な粒状性を意味する。△印はやや粗い粒状性を意味し、×印は、著しく粗い粒状性を意味する。
【0086】
(X線損傷)
輝度の測定は、レジウス170(コニカミノルタ社製)を用い、各々の放射線画像変換パネル(試料)に管電圧80kVp、200mRのX線を照射した後、レジウス170(コニカミノルタ社製)高精度モードで読み取った輝尽発光の信号値を輝度と定義し、基準試料を用いた放射線画像変換パネルに対する強制劣化処理試料を用いた放射線画像変換パネルの輝度劣化率を算出し、下記の基準によりランク付けを行った。
【0087】
強制劣化処理試料には、上記放射線画像変換パネル(試料)に管電圧80kVp、200mRのX線を照射、レジウス170で消去を、500回行った後の輝度を測定した。初期輝度に対する輝度劣化率を算出し、下記の基準によりランク付けを行った。
【0088】
5:輝度劣化率が2%未満
4:輝度劣化率が2〜5%未満
3:輝度劣化率が5〜10%未満
2:輝度劣化率が10〜15%未満
1:輝度劣化率が15%以上
上記ランクにおいて、3以上であれば実用上許容範囲にある。
【0089】
【表1】

【0090】
表1より明らかな如く、本発明内の実施例1〜3は良好な特性を有するが、本発明外の比較例1はいずれの特性にも問題があることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】輝尽性蛍光体粒子のカソードルミネッセンス法により得られた発光像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表さられる希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体において、発光面積が蛍光体粒子表面積の50〜100%であることを特徴とする希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
一般式(I)
Ba(1-x)2(x)FBr(y)(1-y):aM1,bLn,cO
(式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsの群の中から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M2はBe,Mg,Sr及びCaの群の中から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbの群の中から選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x,y,a,b及びcは、各々、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1の条件を満たす値である。)
【請求項2】
発光面積が蛍光体粒子表面積の80〜100%であることを特徴とする請求項1記載の希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
【請求項3】
放射線像変換パネルの蛍光体層の輝尽性蛍光体が、請求項1または2記載の希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体であることを特徴とする放射線像変換パネル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−83329(P2006−83329A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271348(P2004−271348)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】