説明

希釈液肥の供給方法

【課題】分配ラインの詰まりを有効に防止しながら、複数グループの分配ラインに理想的な状態の希釈液肥を供給して全ての作物を理想的な状態で生育させる。
【解決手段】希釈液肥の供給方法は、分配ライン1を連結している排出ライン2に水を供給して、排出ライン2と分配ライン1を水で満たす水充満工程と、排出ライン2に所定量の希釈液肥を供給し、排出ライン2の水を先端部から排水し、排出ライン2の水を排水した後、先端からの排水を停止して、排出ライン2に供給される希釈液肥を分配ライン1に供給して、分配ライン1でもって作物に希釈液肥を供給する液肥供給工程と、液肥供給工程の後、排出ライン2に水を供給して供給される水で排出ライン2の希釈液肥を分配ライン1に移送し、さらに、分配ライン1の希釈液肥を作物に供給して、分配ライン1と排出ライン2を水で満たす水充満工程とを繰り返して、作物に希釈液肥を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液肥を所定の倍率に希釈して水に混合して希釈液肥とし、これを植物に供給する供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、液肥を水に混合して希釈液肥とし、これを植物に供給する肥料の供給装置を開発した。(特許文献1参照)
以上の供給装置は、水補給部でもって排出ラインの後端に水を供給し、この排出ラインに液肥ポンプで液肥を供給して希釈液肥とし、希釈液肥を排出ラインを介して灌水チューブに供給して、灌水チューブでもって作物に供給する。灌水チューブは無数の灌水孔を設けているチューブであって、後端から供給される希釈液肥を各々の灌水孔から同じ流量で作物に灌水する。灌水孔は、単位時間の排水量を特定の流量とする定流量孔で、たとえば1分間の排水量を約20mlとする微細な孔である。灌水チューブは、作物を植え付けしている畝に沿って配設されるので、複数の畝のある畑には複数の灌水チューブが設けられる。生育状態や種類の異なる複数の作物を植え付けする畑にあっては、図1に示すように、排出ライン92に複数グループの灌水チューブ91を連結する。
【0003】
以上の供給装置は、排出ライン92に所定量の希釈液肥を供給し、排出ライン92から灌水チューブ91に希釈液肥を移送して灌水チューブ91の灌水孔97から作物に灌水する。供給装置は連続して希釈液肥を供給するのではなく、1日に数回の割合で灌水する。灌水するタイミングは、日射量や植え付けしている作物の種類、さらに、培地の水分率などで最適な状態に調整され、たとえば1日に1〜数十回の割合で灌水している。
【0004】
以上の供給装置は、希釈液肥の供給量を調整して、種々の作物に理想的な状態で灌水できる。しかしながら、経時的に発生する灌水チューブの詰まりを解消できない欠点がある。とくに、灌水チューブは非常に小さい多数の灌水孔を設けているので、灌水孔が詰まりやすく、詰まると全ての灌水孔から同じ流量で灌水できなくなる欠点がある。灌水チューブの灌水孔が詰まると、作物に供給される灌水量が変化して、生育にばらつきが発生し、全ての作物を理想的な状態で生育できなくなる欠点がある。とくに、作物の生育に好ましい有機肥料を供給すると灌水チューブの灌水孔が詰まりやすい弊害が発生する。さらに、肥料に含まれるリン酸とカルシウムやマグネシウムが結合し、スケールとなって付着しやすくなる。
【0005】
ところで、液肥の供給装置において、液肥を供給するライン配管の一部を洗浄する装置は開発されている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−278415号公報
【特許文献2】特開平9−28140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載される供給装置を図2に示している。この図の装置は、主管81の途中に薬液供給ライン82を接続して、薬液供給ライン82の洗浄必要箇所80の下流側には主管81の適宜箇所と接続される洗浄水用自動弁84を有する分岐流路83が設けられ、また、洗浄必要箇所80の上流側には排出流路85を有する三方切換弁86が設けられており、洗浄水用自動弁84および三方切換弁86も制御装置87により制御される。あらかじめ制御装置87のプログラムに記憶されている洗浄開始時になると、制御装置87は分岐流路83に設けられた洗浄水用自動弁84を開き、三方切換弁86の流路を排出流路85側へ切り換える。主管81からの洗浄水88は、分岐流路83から洗浄必要箇所80を通り排出流路85から排出される。このようにして、洗浄必要箇所80は洗浄される。
【0008】
以上の装置は、供給ラインの一部の詰まりを防止できるが、液肥の詰まりが特に作物の生育を阻害する灌水チューブの詰まりを防止できない欠点がある。
【0009】
さらに、希釈液肥の供給装置は、1台で多数の畝に灌水することから、長い排出ラインに複数グループの灌水チューブを連結して使用される。この構造になると、各々のグループの灌水チューブに最適な希釈液肥を供給できなくなる弊害も発生する。たとえば、1本の排出ラインにイチゴとキュウリに灌水する2グループの灌水チューブを連結する状態にあっては、排出ラインに残存するイチゴに供給する希釈液肥の一部がキュウリに灌水され、また、反対にキュウリに灌水する希釈液肥の一部がイチゴに灌水される弊害もある。
【0010】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、灌水チューブ等の分配ラインの詰まりを有効に防止して、全ての作物を理想的な状態で均一に生育できる希釈液肥の供給方法を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、排出ラインに複数グループの分配ラインを連結する状態にあっても、各々のグループの分配ラインに理想的な状態の希釈液肥を供給して全ての作物を理想的な状態で生育できる希釈液肥の供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
本発明の希釈液肥の供給方法は、分配ライン1を連結している排出ライン2に水を供給して、排出ライン2と分配ライン1を水で満たす水充満工程と、排出ライン2に所定量の希釈液肥を供給し、排出ライン2の水を先端部から排水し、排出ライン2の水を排水した後、先端からの排水を停止して、排出ライン2に供給される希釈液肥を分配ライン1に供給して、分配ライン1でもって作物に希釈液肥を供給する液肥供給工程と、液肥供給工程の後、排出ライン2に水を供給して供給される水で排出ライン2の希釈液肥を分配ライン1に移送し、さらに、分配ライン1の希釈液肥を作物に供給して、分配ライン1と排出ライン2を水で満たす水充満工程とを繰り返して、作物に希釈液肥を供給する。
【0012】
以上の方法は、分配ラインの詰まりを有効に防止して、たとえば、詰まりやすい微細な灌水孔を無数に設けている灌水チューブ等の分配ラインにおいては、これらの灌水孔の詰まりを防止し、各々の灌水孔から均一に灌水して、植え付けしている全ての作物を理想的な状態で均一に生育できる特徴がある。それは、以上の希釈液肥の供給方法が、作物に希釈液肥を供給しない状態で、排出ラインと分配ラインの両方に水を満たしているからである。また、水の満たされた分配ラインは、希釈液肥を排出する前に蓄えている水を排水して灌水孔を洗浄するので、希釈液肥を排水する毎に灌水孔が洗浄されて詰まりが有効に防止される。
【0013】
また、以上の方法は、1本の排出ラインに複数グループの分配ラインを連結する状態にあっても、各々の分配ラインに理想的な希釈液肥を供給して全ての作物を理想的な状態で生育できる特徴がある。それは、分配ラインから作物に希釈液肥を供給した後には、排出ラインと分配ラインに水を満たし、次に作物に希釈液肥に供給するときは、排出ラインに希釈液肥を供給して排出ラインと分配ラインの水を排水して、排出ラインに供給する希釈液肥を作物に供給できるからである。
【0014】
本発明の希釈液肥の供給方法は、排出ライン2に複数グループの分配ライン1を連結し、排出ライン2から希釈液肥を供給する分配ライン1のグループを選択して、各々のグループの分配ライン1に別々に希釈液肥を供給することができる。
以上の方法によると、排出ラインに複数グループの分配ラインを連結しながら、各々のグループの分配ラインに理想的な希釈液肥を供給して全ての作物を理想的な状態で生育できる。
【0015】
本発明の希釈液肥の供給方法は、水充満工程において、排出ライン2と分配ライン1に満たす水に殺菌剤を添加することができる。
以上の方法は、希釈液肥を供給した後、排出ラインと分配ラインを殺菌剤で殺菌できる。このため、排出ラインと分配ラインに微生物が繁殖するのを防止して綺麗な状態に保持できる。このことは、排出ラインと分配ラインの内面や灌水孔等に繁殖した微生物が付着するのを防止して、微生物による分配ラインの詰まりを有効に防止できる。
【0016】
本発明の希釈液肥の供給方法は、水充満工程において、排出ライン2と分配ライン1に満たす水に洗浄剤を添加することができる。
以上の方法は、希釈液肥を供給した後、排出ラインと分配ラインを洗浄剤で洗浄できる。このため、排出ラインと分配ラインの内面に異物が付着するのを防止して、綺麗な状態に保持できる。このことも、排出ラインと分配ラインの内面や灌水孔等にスケールが付着するのを防止して、分配ラインの詰まりを有効に防止できる。
【0017】
本発明の希釈液肥の供給方法は、分配ライン1の詰まり状態を検出し、分配ライン1が所定の詰まり状態になることを検出して、水充満工程で排出ライン2と分配ライン1に満たす水に殺菌剤と洗浄剤のいずれか又は両方を添加することができる。
以上の方法は、分配ラインが詰まる状態を検出して、排出ラインと分配ラインに殺菌水や殺菌水を充満するので、排出ラインと分配ラインを常に綺麗な状態に保持して、分配ラインの詰まりを有効に防止できる。また、排出ラインと分配ラインに常に殺菌剤や洗浄剤を供給しないので、殺菌剤や洗浄剤の使用量を少なくして、ランニングコストを低減しながら分配ラインの詰まりを防止できる。
【0018】
本発明の希釈液肥の供給方法は、分配ライン1を、開閉弁8を介して排出ライン2に連結すると共に、液肥供給工程で排出ライン2の水を排水する排水弁9を排出ライン2の先端に設けて、液肥供給工程の前工程または水充満工程の後工程として、開閉弁8または排水弁9の動作状態を検査する検査工程を設けることができる。
以上の方法は、検査工程において、開閉弁や排水弁の動作異常を速やかに検出して、水や希釈液肥が無駄に排水され、あるいは作物に過剰に散水されるのを有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】排出ラインに複数グループの分配ラインを連結してなる肥料の供給装置の一例を示す概略図である。
【図2】従来の液肥の供給装置を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる希釈液肥の供給方法に使用する希釈液肥の供給装置の概略構成図である。
【図4】図3に示す供給装置の複数グループの分配ラインに水を充満した状態を示す概略断面図である。
【図5】第1グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図6】第1グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図7】第1グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図8】第2グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図9】第2グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図10】第2グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図11】第3グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図12】第3グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【図13】第3グループの分配ラインに希釈液肥を供給する液肥供給工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための希釈液肥の供給方法を例示するものであって、本発明は希釈液肥の供給方法を以下の方法に特定しない。
【0021】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
図3に示す希釈液肥の供給装置は、作物に灌水する複数グループの分配ライン1を先端側に連結している排出ライン2と、この排出ライン2に水を供給する水補給部3と、この水補給部3で供給される水に所定の濃度の液肥を供給して希釈液肥とする液肥供給機構4と、水補給部3と液肥供給機構4とを制御して、排出ライン2に希釈液肥を供給するコントロール回路6とを備える。さらに、図3の供給装置は、液肥供給機構4に加えて、殺菌剤や洗浄剤を供給する薬液供給機構5を設けている。
【0023】
分配ライン1は、一定の間隔で多数の灌水孔7を設けている灌水チューブが使用できる。灌水チューブである分配ライン1は、全ての作物に同じ流量で灌水できるように、灌水孔7を定流量特性の孔としている。分配ライン1は、作物に最適な流量で灌水できる灌水孔7のある灌水チューブが選択して使用される。たとえば、イチゴやキュウリの栽培にあっては、灌水孔7の排水流量を1分間に20mlとする灌水チューブが使用される。
ただ、本発明は、分配ラインを以上の構造には特定しない。分配ラインは、定流量特性のある灌水孔に代わって、水や希釈液肥を圧力で染み出させる部材を所定の間隔で配置することもできる。この分配ラインは、たとえば、パイプに所定の間隔で多数の孔を設けると共に、各々の孔には、水や希釈液肥を圧力で染み出させるスポンジ状や布状の灌水部を設けている。この分配ラインも、排出ラインから供給される水や希釈液肥を作物に最適な流量で灌水できる。さらに、分配ラインは、排出ラインに連結される太いメインパイプに、複数の細長いサブパイプを連結したものとすることもできる。この分配ラインは、メインパイプから枝分かれする各々のサブパイプの先端を作物の根元に配置して最適な流量で灌水できる。さらに、分配ラインは、マイクロスプリンクラー等の散水装置とすることもできる。すなわち、本発明は、分配ラインとして、排出ラインから供給される水や希釈液肥を作物に最適な流量で供給できる種々の構造が使用できる。
【0024】
図3の供給装置は、4本の分配ライン1を一端で連結して1グループの分配ライン1とし、1本の排出ライン2に3グループの分配ライン1を連結している。各グループの分配ライン1は、4本の分配ライン1の一端を連結して、連結端に開閉弁8を連結し、この開閉弁8を介して4本の分配ライン1を1グループとして排出ライン2に連結している。ひとつの開閉弁8が開かれると、互いに一端を連結している4本の分配ライン1に希釈液肥や水が供給される。各々の開閉弁8の開閉がコントロール回路6で制御されて、各グループの分配ライン1に灌水される。各々の分配ライン1は、各々の列の畝に沿って配置されて、1本の分配ライン1で1列の畝に灌水するように配置される。1本の排出ライン2に3グループの分配ライン1を連結する供給装置は、各グループの分配ライン1でもって、大きさが異なる、すなわち生育状態が異なる作物に灌水し、あるいは異なる種類の作物に灌水することができる。ただし、全ての畝に同じ大きさで同じ種類の作物を植え付けして、各グループの分配ラインで同じように灌水することもある。
【0025】
排出ライン2は、後端部を水補給部3と液肥供給機構4とに連結して、先端部には蓄えている水を排水する排水弁9を連結している。排出ライン2は、長くて圧力損失を少なくするために、すなわち、複数の分配ライン1に所定の流量で均一に灌水できるように、直径を40mm〜50mmとする太いパイプが使用される。排出ライン2には、塩化ビニルパイプやポリエチレンパイプが使用される。排出ライン2は、複数列に配置させる分配ライン1の一端を連結して、各々の分配ライン1に水や希釈液肥を供給するように配管される。多数の分配ライン1を連結している排出ライン2は長くなって、内容積が大きくなる。たとえば、直径を40mmとする排出ライン2は、100メートルで約125リットルの水を蓄える。本発明は、作物に灌水をしない状態では、排出ライン2に水を蓄えるので、希釈液肥を供給するときに排出ライン2の水を排出する必要がある。125リットルの水を蓄える排出ライン2は、排水弁9を開いて125リットルの水を排水した後、排水弁9を閉じて希釈液肥を分配ライン1に供給する。
【0026】
水補給部3は、原水タンク10と、この原水タンク10の水を供給する2台のポンプ11、12と、ポンプ11、12で供給される流量を検出する水量センサー13とを備えている。水補給部3は、2台のポンプ11、12を同時に運転して、原水タンク10の水を排出ライン2に供給する。2台のポンプ11、12は同時に運転を停止して、水の供給を停止する。水補給部3は、液肥供給機構4が液肥を供給しない状態で2台のポンプ11、12を運転して、原水タンク10の水を排出ライン2に供給する。また、水補給部3は、2台のポンプ11、12を運転する状態で、2台のポンプ11、12の間に液肥供給機構4で液肥を供給して、液肥供給機構4で供給される液肥を希釈して希釈液肥として排出ライン2に供給する。水補給部3のポンプ11、12は、排出ライン2に水を供給する状態と、希釈液肥を供給する状態で運転され、水と希釈液肥を供給しない状態で運転を停止する。
【0027】
2台のポンプ11、12を直列に連結している水補給部3は、2台のポンプ11、12に低揚程で安価なポンプを使用できる。また、2台のポンプ11、12の間の圧力を、1気圧以上の低圧力に設定できるので、液肥を供給する液肥ポンプ15に、流入側と排出側に逆止弁のあるダイヤフラムポンプを使用して正確に液肥を注入できる。ただし、水補給部は、必ずしも2台のポンプを使用する必要はなく、1台のポンプで原水タンクの水を吸入して排出ラインに供給できる。
【0028】
水補給部は、必ずしもポンプと原水タンクを設ける必要はない。たとえば、排出ラインよりも高所に配置した原水タンクとし、あるいは、水道を水補給部として使用することもできる。高所に配置している原水タンクや水道の水補給部は、排出側にポンプに代わって給水弁を設けている。この給水弁は、コントロール回路に制御されて、排出ラインへの水の供給をコントロールする。
【0029】
水量センサー13は、水補給部3が排出ライン2に供給する水の流量を検出してコントロール回路6に出力する。水量センサー13は、最小測定量の水が通過する毎に流量パルス信号をコントロール回路6に出力する。このタイプの水量センサー13には、10〜150mlの水の通過を検出する毎に、ひとつの流量パルス信号を出力する水道メーターが最適である。ただし、水量センサー13には、水の流量を検出して流量信号をコントロール回路6に出力できる全てのものが使用できる。
【0030】
水量センサー13の信号はコントロール回路6に入力され、コントロール回路6は水量センサー13から入力される流量信号で水の流量を検出する。さらに、コントロール回路6は、液肥ポンプ15である電磁定量ポンプから排出される肥料量が、所定の希釈倍率となるように、水量センサー13の流量信号に基づいて、液肥供給機構4の液肥ポンプ15を制御する。
【0031】
さらに、コントロール回路9は、水量センサー13から入力される流量信号から、排出ライン1に設けた開閉弁8や排出弁9が正常に開閉しているかどうかを検出する。コントロール回路6は、全ての開閉弁8と排出弁9を閉じた状態で、ポンプ11、12を短時間(例えば数秒間)運転して、このときに、排出ライン1に水が流れるかどうかを水量センサー13の信号から検出して、開閉弁8または排出弁9の動作異常を検出する。全ての開閉弁8と排出弁9を閉じる状態では、排出ライン1を流れる水量は0になるからである。このコントロール回路9は、開閉弁8や排出弁9の異常を検出すると、このことを外部に表示する。
【0032】
液肥供給機構4は、所定の濃度の液肥を蓄える複数の液肥タンク14と、各々の液肥タンク14に蓄える液肥を排出ライン2に供給する液肥ポンプ15とを備える。液肥ポンプ15は、コントロール回路6に制御されて、排出ライン2に液肥を供給する。
【0033】
図の液肥供給機構4は、3グループの液肥タンク14A、14B、14Cを備える。ただし、液肥供給機構は、1〜2個、又は4個以上の液肥タンクを設けることもできる。液肥タンク14は、液体の肥料を水に所定の倍率、たとえば10倍に希釈して蓄え、あるいは粉末あるいは固形状の肥料を水に溶解して蓄える。液肥タンク14には、ひとつあるいは複数の肥料を水に希釈して蓄えることができる。図に示す液肥タンク14は、タンク内の液肥を安定して供給できるように、ストレーナー付きフート弁16を介して液肥ポンプ15に連結している。
【0034】
液肥ポンプ15は、コントロール回路6に制御されて、液肥タンク14A、14B、14Cに蓄えている肥料を所定の供給量で排出ライン2に供給する。液肥ポンプ15は、コントロール回路6に制御されて液肥を排出ライン2に排出する電磁定量ポンプである。電磁定量ポンプはダイアフラム式ポンプである。ただ、ダイヤフラムポンプに代わって、ピストンポンプやプランジャーポンプも使用できる。これ等の電磁定量ポンプは、ダイヤフラムやピストン等の往復運動して液肥を排出する。コントロール回路6は、ダイヤフラムやピストンを往復運動させる回数、すなわちストロークさせる回数を制御して、液肥タンク14から排出ライン2に供給する液肥の供給量、すなわち流量をコントロールする。液肥ポンプ15に電磁定量ポンプを使用する装置は、液肥ポンプ15で正確に液肥を供給できると共に、故障を少なくして長期間にわたって正確に液肥を供給できる。ただし、液肥ポンプには、電磁定量ポンプに変わって液肥を所定の流量で供給できる全ての定流量ポンプを使用できる。
【0035】
図の液肥供給機構4は、3台の液肥ポンプ15A、15B、15Cを3グループの液肥タンク14A、14B、14Cに別々に連結している。ただし、本発明の供給装置は、図示しないが、液肥ポンプを切換弁を介して複数の液肥タンクに連結して、液肥ポンプを液肥タンクの数よりも少なくすることもできる。この液肥ポンプは、連結する複数の液肥タンクを切換弁で切り換えて、各々の液肥タンクの液肥を排出ラインに供給することができる。
【0036】
薬液供給機構5は、液肥供給機構4と同じように、所定の濃度の薬液を蓄える薬液タンク17と、各々の薬液タンク17に蓄える薬液を排出ライン2に供給する薬液ポンプ18とを備える。薬液ポンプ18はコントロール回路6に制御されて、薬液を排出ライン2に供給する。
【0037】
図の薬液供給機構5は、2グループの薬液タンク17A、17B備え、一方の薬液タンク17Aには殺菌剤を、他方の薬液タンク17Bには洗浄剤を充填している。殺菌剤には過酸化水素水を使用し、洗浄剤には酸が使用できる。過酸化水素水は、約5000倍〜50000倍に希釈して排出ライン2に供給して殺菌作用がある。また、過酸化水素水を微量に添加することによって、根に酸素が供給され、発根促進効果もある。酸にはクエン酸、リンゴ酸、酢酸などを使用する。酸の洗浄剤は、排出ライン2や分配ライン1に付着するカルシウムやマグネシウムなどのスケールを除去する。酸は、200倍〜500倍に希釈して排出ライン2に添加する。
【0038】
図3の薬液供給機構5は、殺菌剤と洗浄剤を排出ライン2に供給するので、2個の薬液タンク17A、17Bを備える。薬液タンク17は、排出ライン2と分配ライン1に供給する薬液の数により特定される。したがって、殺菌剤のみを供給する装置にあっては1個の薬液タンクを設けている。
【0039】
薬液ポンプ18は、コントロール回路6に制御されて、薬液タンク17に蓄えている薬液を所定の供給量で排出ライン2に供給する。薬液ポンプ18は、液肥供給機構4に使用する液肥ポンプ15と同じものが使用できる。薬液ポンプ18は、コントロール回路6に制御されて、薬液タンク17から排出ライン2に供給する薬液の供給量、すなわち流量をコントロールする。
【0040】
図の薬液供給機構5は、2台の薬液ポンプ18A、18Bを2グループの薬液タンク17A、17Bに別々に連結している。ただし、図示しないが、薬液ポンプを切換弁を介して複数の薬液タンクに連結して、薬液ポンプを薬液タンクの数よりも少なくすることもできる。この薬液ポンプは、連結する複数の薬液タンクを切換弁で切り換えて、各々の薬液タンクの薬液を排出ラインに供給する。
【0041】
以上の希釈液肥の供給装置は、水補給部3が、原水タンク10から排出ライン2に水を供給しているが、この原水タンク10に蓄えられる水には、水道水だけでなく、河川水や農業用水、ため池等の水を利用することもできる。ただ、河川水や農業用水、ため池等の水は、水道水のように殺菌されていないので、微生物が生息していたり、雨水等によって汚れの成分が含まれていることがある。このように使用する水の水質によっては、分配ラインはさらに詰まり易くなる。図3の供給装置は、薬液供給機構5から排出ライン2に、殺菌剤や洗浄液等の薬液を供給して、排出ライン2と分配ライン1を定期的に殺菌・洗浄できるので、分配ライン1が短期間に詰まって作物の生育をアンバランスとする弊害が発生するのを有効に防止できる特長がある。
【0042】
コントロール回路6は、以下の方法で希釈液肥を作物に灌水する。コントロール回路6は、1日に数回の割合で、一定の希釈薬液を排出ライン2から分配ライン1に供給して作物に灌水する。コントロール回路6は、タイマに制御され、あるいは日射量を検出する日射量センサに制御され、あるいはまた、作物を植え付けしている培地の水分を検出する水分センサーに制御されて、最適なタイミングで、希釈薬液を排出ライン2から分配ライン1に供給する。
【0043】
希釈液肥の供給装置は、設置した最初に、水補給部3の2台のポンプ11、12を運転して、排出ライン2と分配ライン1に水を充満させる。このとき、排水弁9を閉じて開閉弁8を開き、排出ライン2から分配ライン1に水を供給する。1本の排出ライン2に複数グループの分配ライン1を連結している図3に示す供給装置は、排水弁9を閉じる状態で、全ての開閉弁8を開いて、全ての分配ライン1に水を満たす。また、各々の開閉弁8を順番に開いて、開いた開閉弁8に連結している分配ライン1に水を満たして全ての分配ライン1に水を満たすこともできる。排出ライン2と分配ライン1に水を満たした後、排水弁9と全ての開閉弁8を閉じると共に、2台のポンプ11、12の運転を停止する。希釈液肥が供給されるタイミングまでこの状態を保持する。
【0044】
作物に希釈液肥を供給するタイミングになると、コントロール回路6は、以下に示すように、液肥供給工程と水充満工程とを繰り返して作物に希釈液肥を灌水する。コントロール回路6が、水と希釈液肥を供給して作物に灌水する状態を図4〜図13に示している。
なお、図4ないし図7は、第1グループの分配ライン1に水と希釈液肥を供給して灌水する状態を、図8ないし図10は、第2グループの分配ライン1に水と希釈液肥を供給して灌水する状態を、さらに、図11ないし図13は、第3グループの分配ライン1に水と希釈液肥を供給して灌水する状態をそれぞれ示している。ただし、これらの図において、水を鎖線のハッチングで、希釈液肥を実線のハッチングで示している。
【0045】
[第1グループの分配ラインから灌水する状態]
(1)液肥供給工程
この工程の最初において、排出ライン2と分配ライン1は、図4に示すように、水が満たされている。この工程において、コントロール回路6は、排水弁9を開き、全ての開閉弁8を閉じる状態として2台のポンプ11、12と液肥ポンプ15を運転して、排出ライン2に希釈液肥を供給する。この工程では、第1グループの分配ライン1に希釈液肥を供給するので、コントロール回路6は、第1グループで生育させる作物への灌水に最適な希釈液肥を排出ライン2に供給する。すなわち、コントロール回路6は、排出ライン2に供給する希釈液肥の種類と濃度が、第1グループの作物に最適となるように液肥供給機構4の液肥ポンプ15を制御する。排出ライン2に供給される希釈液肥は、図5に示すように、排出ライン2に充満している水を排水弁9から押し出して外部に排水する。排出ライン2の水が排水されて、灌水する必要のある分配ライン1である第1グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Aの位置まで希釈液肥が供給されるタイミングで、コントロール回路6は排水弁9を閉じて開閉弁8Aを開く。その後、図6に示すように、排出ライン2に供給している希釈液肥を開閉弁8Aから第1グループの分配ライン1に供給し、分配ライン1の灌水孔7から第1グループの作物に供給する。
【0046】
コントロール回路6は、開閉弁8Aの近傍に、希釈液肥と水を判別するセンサを設け、このセンサの信号で、開閉弁8Aを開いて、排出ライン2から第1グループの分配ライン1に希釈液肥を供給することができる。また、コントロール回路6は、排出ライン2の開閉弁8Aの上流側に充填される水量を記憶して、この水量の水が排出ライン2に供給されたことを検出して、開閉弁8Aを開いて第1グループの分配ライン1に希釈液肥を供給することもできる。このコントロール回路6は、排出ライン2に供給される水量を水量センサー13で検出し、開閉弁8Aの上流側に蓄えている水量の希釈液肥が供給されると、開閉弁8Aを開いて希釈液肥を第1グループの分配ライン1に供給する。
【0047】
排出ライン2に、第1グループの作物に灌水する所定量の希釈液肥が供給された後、コントロール回路6は、液肥ポンプ15の運転を停止して、希釈液肥の供給を停止する。この状態で、排出ライン2と第1グループの分配ライン1には希釈液肥が残存している。
【0048】
(2)水充満工程
液肥供給工程に続いて、コントロール回路6は、この工程で、図7で示すように、排出ライン2に水を供給して、先の工程で排出ライン2に残存している希釈液肥を第1グループの分配ライン1に押し出して、第1グループの分配ライン1と排出ライン2に水を充満させる。すなわち、作物に灌水する第1グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Aを開弁する状態に保持して2台のポンプ11、12を運転して排出ライン2に水を供給し、供給される水で排出ライン2に残っていた希釈液肥を第1グループの分配ライン1に供給し、さらに分配ライン1から押し出して第1グループの作物に供給する。第1グループの分配ライン1の先端まで水が充満された後、2台のポンプ11、12の運転を停止して開閉弁8Aを閉じる。コントロール回路6は、灌水している第1グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Aよりも排出ライン2の上流側の内容積と、この開閉弁8Aに連結している分配ライン1の内容積の和の水量を排出ライン2に供給して、排出ライン2と第1グループの分配ライン1に水を満たすことができる。排出ライン2の開閉弁8Aよりも上流側の内容積と、第1グループの分配ライン1の内容積は特定の容積であるから、コントロール回路6はこの容積を記憶している。この容積の水量が排出ライン2に供給されたことを水量センサー13で検出した後、2台のポンプ11、12の運転を停止し、開閉弁8Aを閉じて水の供給を停止する。
【0049】
以上の状態で、全ての分配ライン1と排出ライン2とは水で満たされた状態となる。この状態は、次回にいずれかのグループの分配ライン1に希釈液肥が灌水されるタイミングまで保持される。
なお、第1グループの作物へ希釈液肥の灌水は、一日に数回の割合で(1)と(2)の工程を繰り返して行われる。
【0050】
[第2グループの分配ラインから灌水する状態]
(1)液肥供給工程
この工程の最初において、排出ライン2と分配ライン1は、図4に示すように、水が満たされている。この工程において、コントロール回路6は、排水弁9を開き、全ての開閉弁8を閉じる状態として2台のポンプ11、12と液肥ポンプ15を運転して、排出ライン2に希釈液肥を供給する。この工程では、第2グループの分配ライン1に希釈液肥を供給するので、コントロール回路6は、第2グループで生育させる作物への灌水に最適な希釈液肥を排出ライン2に供給する。すなわち、コントロール回路6は、排出ライン2に供給する希釈液肥の種類と濃度が、第2グループの作物に最適となるように液肥供給機構4の液肥ポンプ15を制御する。排出ライン2に供給される希釈液肥は、図8に示すように、排出ライン2に充満している水を排水弁9から押し出して外部に排水する。排出ライン2の水が排水されて、灌水する必要のある分配ライン1である第2グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Bの位置まで希釈液肥が供給されるタイミングで、コントロール回路6は排水弁9を閉じて開閉弁8Bを開く。その後、図9に示すように、排出ライン2に供給している希釈液肥を開閉弁8Bから第2グループの分配ライン1に供給し、分配ライン1の灌水孔7から第2グループの作物に供給する。
【0051】
コントロール回路6は、開閉弁8Bの近傍に、希釈液肥と水を判別するセンサを設け、このセンサの信号で、開閉弁8Bを開いて、排出ライン2から第2グループの分配ライン1に希釈液肥を供給することができる。また、コントロール回路6は、排出ライン2の開閉弁8Bの上流側に充填される水量を記憶して、この水量の水が排出ライン2に供給されたことを検出して、開閉弁8Bを開いて第2グループの分配ライン1に希釈液肥を供給することもできる。このコントロール回路6は、排出ライン2に供給される水量を水量センサー13で検出し、開閉弁8Bの上流側に蓄えている水量の希釈液肥が供給されると、開閉弁8Bを開いて希釈液肥を第2グループの分配ライン1に供給する。
【0052】
排出ライン2に、第2グループの作物に灌水する所定量の希釈液肥が供給された後、コントロール回路6は、液肥ポンプ15の運転を停止して、希釈液肥の供給を停止する。この状態で、排出ライン2と第2グループの分配ライン1には希釈液肥が残存している。
【0053】
(2)水充満工程
液肥供給工程に続いて、コントロール回路6は、この工程で、図10で示すように、排出ライン2に水を供給して、先の工程で排出ライン2に残存している希釈液肥を第2グループの分配ライン1に押し出して、第2グループの分配ライン1と排出ライン2に水を充満させる。すなわち、作物に灌水する第2グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Bを開弁する状態に保持して2台のポンプ11、12を運転して排出ライン2に水を供給し、供給される水で排出ライン2に残っていた希釈液肥を第2グループの分配ライン1に供給し、さらに分配ライン1から押し出して第2グループの作物に供給する。第2グループの分配ライン1の先端まで水が充満された後、2台のポンプ11、12の運転を停止して開閉弁8Bを閉じる。コントロール回路6は、灌水している第2グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Bよりも排出ライン2の上流側の内容積と、この開閉弁8Bに連結している分配ライン1の内容積の和の水量を排出ライン2に供給して、排出ライン2と第2グループの分配ライン1に水を満たすことができる。排出ライン2の開閉弁8Bよりも上流側の内容積と、第2グループの分配ライン1の内容積は特定の容積であるから、コントロール回路6はこの容積を記憶している。この容積の水量が排出ライン2に供給されたことを水量センサー13で検出した後、2台のポンプ11、12の運転を停止し、開閉弁8Bを閉じて水の供給を停止する。
【0054】
以上の状態で、全ての分配ライン1と排出ライン2とは水で満たされた状態となる。この状態は、次回にいずれかのグループの分配ライン1に希釈液肥が灌水されるタイミングまで保持される。
なお、第2グループの作物へ希釈液肥の灌水は、一日に数回の割合で(1)と(2)の工程を繰り返して行われる。
【0055】
[第3グループの分配ラインから灌水する状態]
(1)液肥供給工程
この工程の最初において、排出ライン2と分配ライン1は、図4に示すように、水が満たされている。この工程において、コントロール回路6は、排水弁9を開き、全ての開閉弁8を閉じる状態として2台のポンプ11、12と液肥ポンプ15を運転して、排出ライン2に希釈液肥を供給する。この工程では、第3グループの分配ライン1に希釈液肥を供給するので、コントロール回路6は、第3グループで生育させる作物への灌水に最適な希釈液肥を排出ライン2に供給する。すなわち、コントロール回路6は、排出ライン2に供給する希釈液肥の種類と濃度が、第3グループの作物に最適となるように液肥供給機構4の液肥ポンプ15を制御する。排出ライン2に供給される希釈液肥は、図11に示すように、排出ライン2に充満している水を排水弁9から押し出して外部に排水する。排出ライン2の水が排水されて、灌水する必要のある分配ライン1である第3グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Cの位置まで希釈液肥が供給されるタイミングで、コントロール回路6は排水弁9を閉じて開閉弁8Cを開く。その後、図12に示すように、排出ライン2に供給している希釈液肥を開閉弁8Cから第3グループの分配ライン1に供給し、分配ライン1の灌水孔7から第3グループの作物に供給する。
【0056】
コントロール回路6は、開閉弁8Cの近傍に、希釈液肥と水を判別するセンサを設け、このセンサの信号で、開閉弁8Cを開いて、排出ライン2から第3グループの分配ライン1に希釈液肥を供給することができる。また、コントロール回路6は、排出ライン2の開閉弁8Cの上流側に充填される水量を記憶して、この水量の水が排出ライン2に供給されたことを検出して、開閉弁8Cを開いて第3グループの分配ライン1に希釈液肥を供給することもできる。このコントロール回路6は、排出ライン2に供給される水量を水量センサー13で検出し、開閉弁8Cの上流側に蓄えている水量の希釈液肥が供給されると、開閉弁8Cを開いて希釈液肥を第3グループの分配ライン1に供給する。
【0057】
排出ライン2に、第3グループの作物に灌水する所定量の希釈液肥が供給された後、コントロール回路6は、液肥ポンプ15の運転を停止して、希釈液肥の供給を停止する。この状態で、排出ライン2と第3グループの分配ライン1には希釈液肥が残存している。
【0058】
(2)水充満工程
液肥供給工程に続いて、コントロール回路6は、この工程で、図13で示すように、排出ライン2に水を供給して、先の工程で排出ライン2に残存している希釈液肥を第3グループの分配ライン1に押し出して、第3グループの分配ライン1と排出ライン2に水を充満させる。すなわち、作物に灌水する第3グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Cを開弁する状態に保持して2台のポンプ11、12を運転して排出ライン2に水を供給し、供給される水で排出ライン2に残っていた希釈液肥を第3グループの分配ライン1に供給し、さらに分配ライン1から押し出して第3グループの作物に供給する。第3グループの分配ライン1の先端まで水が充満された後、2台のポンプ11、12の運転を停止して開閉弁8Cを閉じる。コントロール回路6は、灌水している第3グループの分配ライン1を連結している開閉弁8Cよりも排出ライン2の上流側の内容積と、この開閉弁8Cに連結している分配ライン1の内容積の和の水量を排出ライン2に供給して、排出ライン2と第3グループの分配ライン1に水を満たすことができる。排出ライン2の開閉弁8Cよりも上流側の内容積と、第3グループの分配ライン1の内容積は特定の容積であるから、コントロール回路6はこの容積を記憶している。この容積の水量が排出ライン2に供給されたことを水量センサー13で検出した後、2台のポンプ11、12の運転を停止し、開閉弁8Cを閉じて水の供給を停止する。
【0059】
以上の状態で、全ての分配ライン1と排出ライン2とは水で満たされた状態となる。この状態は、次回にいずれかのグループの分配ライン1に希釈液肥が灌水されるタイミングまで保持される。
なお、第3グループの作物へ希釈液肥の灌水は、一日に数回の割合で(1)と(2)の工程を繰り返して行われる。
【0060】
さらに、コントロール回路6は、定期的に、排出ライン2と分配ライン1に供給する水に、殺菌剤や洗浄剤を添加する。コントロール回路6は、例えば、5日〜10日に1回の周期で、過酸化水素水等の殺菌剤を水に添加して排出ライン2と分配ライン1に供給する。過酸化水素水等の殺菌剤は、希釈液肥と同時に添加すると、液肥に含まれるリン酸や鉄マンガンなどの微量要素を酸化させて肥料としての効果が抑制されるおそれがある。したがって、過酸化水素水等の殺菌剤の添加は、好ましくは、液肥供給工程後の水充満工程時に行う。このように、液肥供給工程後の水充満工程時において過酸化水素水を添加することにより、洗浄効果を高めながら、液肥を酸化変質させる弊害を有効に防止できる。さらに、水補給部が河川水や農業用水、ため池等の水を使用する場合においては、分配ラインの詰まりを防止するために、毎回〜1日に1回の頻度で過酸化水素水等の殺菌剤を水に添加して排出ライン2と分配ライン1に供給することが好ましい。また、この場合には、液肥として水に添加されるリン酸等の微量要素を多くしてもよい。さらに、コントロール回路6は、例えば、数十日〜数ヶ月に1回の割合で、酸である洗浄剤を水に添加して排出ライン2と分配ライン1を洗浄する。酸である洗浄剤は、作物に頻繁に供給すると生育に悪い影響を与えることがあるので、好ましくは、作物を収穫後のタイミングにおいて、排出ライン2と分配ライン1に供給する水に酸を添加して洗浄する。
【0061】
さらに、コントロール回路6は、分配ライン1の詰まり状態を検出して、排出ライン2と分配ライン1に供給する水に、殺菌剤や洗浄剤を添加することもできる。コントロール回路6は、分配ライン1の詰まり状態を水量センサー13で検出することができる。すなわち、2台のポンプ11、12を運転する状態で、水量センサー13で検出する単位時間の流量が設定値よりも小さくなると、分配ライン1が詰まったと判定する。分配ライン1が詰まると、灌水孔7の排水量が少なくなって流量が低下するからである。たとえば、2台のポンプ11、12を運転して、分配ライン1が詰まらない状態で20リットル/分の流量で水を供給できる装置にあっては、流量が15リットル/分に低下すると、分配ライン1の詰まり状態と判定する。分配ライン1の詰まり状態を検出すると、コントロール回路6は水充満工程において、排出ライン2に供給される水に殺菌剤や洗浄剤を添加する。
【0062】
図3の薬液供給機構5は、コントロール回路9で薬液ポンプ18の運転を制御して、排出ライン2に供給される水に殺菌剤や洗浄剤を添加する。コントロール回路9は、過酸化水素水等の殺菌剤を充填している薬液タンク17Aに連結している薬液ポンプ18Aを運転して水に殺菌剤を添加し、また、酸の洗浄剤を充填している薬液タンク17Bに連結している薬液ポンプ18Bを運転して、水に洗浄剤を添加する。コントロール回路6は、水充満工程において排出ライン2と分配ライン1に水が充填されると、薬液ポンプ18の運転を停止する。
【0063】
さらに、本発明の供給方法は、開閉弁8や排出弁9が正常に動作しているかどうかを検査する検査工程を設けることができる。この検査工程において、コントロール回路9は、たとえば、全ての開閉弁8と排出弁9を閉じる状態でポンプ11、12を数秒間運転させて、このときの水量センサー13の信号から開閉弁8または排出弁9の異常を検出する。全ての開閉弁8と排出弁9を閉じる状態で、排出ライン1に水が流れると、いずれかの弁が閉弁していない異常であると判定して、このことを外部に警告し、あるいは外部に表示すると共に、ポンプ11、12の運転を中止する。このように、開閉弁8や排出弁9の異常を検査する検査工程は、好ましくは、各グループの作物への希釈液肥の灌水の前後の工程として、すなわち、各グループの分配ラインへの液肥供給工程の前工程及び水充満工程の後工程として行う。これにより、各グループの分配ラインと排出ラインとの連結部である開閉弁8の動作異常を速やかに検出できる。
【0064】
なお、以上の希釈液肥の供給方法では、液肥供給工程で作物に希釈液肥を灌水した後、水充満工程において、排出ライン2と分配ライン1に水を充満している。ここで、排出ライン2に充満される水は、排出ライン2が設置された環境や季節等によっては、外界から悪影響を受けることもある。たとえば、真夏の炎天下においては、排出ライン2となる配管が直射日光で加熱されて、排出ライン2に充満されている水の温度が高温(例えば、40℃以上)になることがある。このような高温の水を作物に灌水すると、作物を痛めたり、生育を遅らせる等の悪影響を及ぼすことがある。本発明の希釈液肥の供給方法では、液肥供給工程において、最初に、全ての開閉弁8を閉じる状態で排水弁9を開き、排出ライン2に希釈液肥を供給して、排出ライン2に充満されていた水を排水弁9から押し出して外部に排水するので、排出ライン2で高温に温められた水が作物に灌水されることがなく、作物に悪影響を与えるのを有効に防止できる特長もある。
【0065】
また、本発明の希釈液肥の供給方法では、希釈液肥を供給するとき以外は、常に排出ライン2と分配ライン1には水を充満しており、従来のように、排出ラインや分配ラインに液肥が残存する状態に長時間保持されることがない。したがって、従来のように、排出ラインや分配ラインに残存する液肥が、直射日光で高温に加熱されて変質し、変質した液肥が作物に灌水されることにより、作物に悪影響を及ぼすのを確実に防止できる特長もある。
【符号の説明】
【0066】
1…分配ライン
2…排出ライン
3…水補給部
4…液肥供給機構
5…薬液供給機構
6…コントロール回路
7…灌水孔
8…開閉弁 8A…開閉弁
8B…開閉弁
8C…開閉弁
9…排水弁
10…原水タンク
11…ポンプ
12…ポンプ
13…水量センサー
14…液肥タンク 14A…液肥タンク
14B…液肥タンク
14C…液肥タンク
15…肥料ポンプ 15A…液肥ポンプ
15B…液肥ポンプ
15C…液肥ポンプ
16…ストレーナー付きフート弁
17…薬液タンク 17A…薬液タンク
17B…薬液タンク
18…薬液ポンプ 18A…薬液ポンプ
18B…薬液ポンプ
80…洗浄必要箇所
81…主管
82…薬液供給ライン
83…分岐流路
84…洗浄水用自動弁
85…排出流路
86…三方切換弁
87…制御装置
88…洗浄水
91…灌水チューブ
92…排出ライン
97…灌水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分配ライン(1)を連結している排出ライン(2)に水を供給して、排出ライン(2)と分配ライン(1)を水で満たす水充満工程と、
前記排出ライン(2)に所定量の希釈液肥を供給し、排出ライン(2)の水を先端部から排水し、排出ライン(2)の水を排水した後、先端からの排水を停止して、排出ライン(2)に供給される希釈液肥を分配ライン(1)に供給して、分配ライン(1)でもって作物に希釈液肥を供給する液肥供給工程と、
前記液肥供給工程の後、排出ライン(2)に水を供給して供給される水で排出ライン(2)の希釈液肥を分配ライン(1)に移送し、さらに、分配ライン(1)の希釈液肥を作物に供給して、分配ライン(1)と排出ライン(2)を水で満たす水充満工程とを繰り返して、作物に希釈液肥を供給する希釈液肥の供給方法。
【請求項2】
前記排出ライン(2)に複数グループの分配ライン(1)を連結し、排出ライン(2)から希釈液肥を供給する分配ライン(1)のグループを選択し、各々のグループの分配ライン(1)に別々に希釈液肥を供給する請求項1に記載される希釈液肥の供給方法。
【請求項3】
前記水充満工程において、排出ライン(2)と分配ライン(1)に満たす水に殺菌剤を添加する請求項1又は2に記載される希釈液肥の供給方法。
【請求項4】
戦記水充満工程において、排出ライン(2)と分配ライン(1)に満たす水に洗浄剤を添加する請求項1ないし3のいずれかに記載される希釈液肥の供給方法。
【請求項5】
前記分配ライン(1)の詰まり状態を検出し、分配ライン(1)が所定の詰まり状態になることを検出して、前記水充満工程で排出ライン(2)と分配ライン(1)に満たす水に殺菌剤と洗浄剤のいずれか又は両方を添加する請求項3又は4に記載される希釈液肥の供給方法。
【請求項6】
前記分配ライン(1)が開閉弁(8)を介して前記排出ライン(2)に連結されると共に、前記液肥供給工程で前記排出ライン(2)の水を排水する排水弁(9)を排出ライン(2)の先端に設けており、前記液肥供給工程の前工程または前記水充満工程の後工程として、前記開閉弁(8)または前記排水弁(9)の動作状態を検査する検査工程を設けてなる請求項1又は2に記載される希釈液肥の供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−67114(P2011−67114A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219571(P2009−219571)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(599009385)
【Fターム(参考)】