説明

帯板用スプール及びそれを備える帯板供給装置並びに帯板供給方法

【課題】巻回された帯板全体を一体的に回転させてその巻回された帯板の緩み又は締め付けを防止し、供給要求に応じた所望の長さの帯板を所望の速度で供給する。
【解決手段】帯板用スプールは、巻回された磁性材料からなる帯板19aを有する原材料19を装着可能に構成された芯材31と、原材料の両側のいずれか一方又は双方に設けられ帯板19aを磁力により吸着して芯材に対する帯板の巻回方向の移動を禁止するマグネット36を備える。原材料を両側から挟み幅方向の移動を制限する一対の側板32,33が芯材に設けられ、そのいずれか一方又は双方にマグネットが設けられる。供給装置は、この帯板用スプール30と、帯板用スプール30を回転させて外周から径方向に解き放たれる帯板19aを外部に供給する繰り出しモータ22と、帯板19aの供給に関する情報により繰り出しモータ22を制御するコントローラ23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯板を巻取る装置等に供給する原材料としての帯板が巻回されて蓄えられる帯板用スプール及びそれを備える帯板供給装置等の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電源ラインフィルタ等のインダクターとして用いられるトロイダルコイルは、リング状のトロイダルコアと、このトロイダルコアの周囲に絶縁材を介して巻回される導線とから成る。従来、この種のトロイダルコイルを構成するトロイダルコアとして、回転する巻芯の周囲に磁性帯板を幾十にも巻回し、巻回された磁性帯板から巻芯を抜き取ることにより得られたリング状のものが知られている。そして、このリング状のトロイダルコアを得るために、原材料としての磁性帯板が巻回されて蓄えられたスプールを準備し、そのスプールを回転させることにより巻き戻された帯板をローラにより案内し、その案内された帯板を巻取装置の巻芯に巻取ってトロイダルコアとする巻鉄心の巻取装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、このような巻鉄心であるトロイダルコアの生産効率を考えると、スプールから巻き戻された帯板を巻取装置の巻芯に比較的高速に巻取って、巻鉄心を得る時間を短縮することが考えられる。この場合には、スプールが回転してそのスプールから単位時間に巻き戻される帯板の量も増加するので、そのスプールの惰性による回転を防止するため、そのスプールの帯板を巻き戻す方向への回転及びその回転の停止等を強制的に行うことが必要とされる。その手段としては、例えば、そのスプールの回転をサーボモータ等により強制的に行うことが挙げられ、そのサーボモータ等を巻取装置の巻芯の回転速度に合わせて制御し、スプールの加減速を行わせることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−184636号公報(段落番号「0002」、図12、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、巻鉄心を得る時間を短縮すると、巻取装置において帯板を巻取る巻芯の回転速度が上昇するだけでなく、巻き初めにおける巻芯の回転速度を上昇させる加速度及び巻き終わり時における巻芯の回転速度を減じる減速度も著しく急になる。このため、その巻取装置に帯板を供給する帯板供給装置では、原材料である帯板が巻回されたスプールの回転を巻取装置における巻芯の回転速度に合わせて制御したとしても、スプールに巻回された帯板の慣性力によりその帯板の全体がスプールと一体となって回転しない不具合がある。
【0006】
例えば、スプールの回転速度を急激に上昇させる急加速時には、帯板の供給量を増加させるために帯板を巻き戻す方向へのスプールの回転速度を急激に上昇させるけれども、原材料のスプールに巻回された帯板は、その中央部分がスプールとともに回転したとしても、その帯板が実際に巻き戻される外周部分は、その慣性力により直ちにその回転速度が上昇することはなかった。このため、スプールに巻回された帯板の中央部分と外周部分の回転速度に違いが生じ、外周部分の回転速度が中央部分の回転速度より低下してその巻回の程度が緩まるだけであって、その帯板の供給量を急激に増加させることは困難であった。
【0007】
逆に、スプールの回転速度を急激に低減させる急減速時には、帯板を巻き戻す方向へのスプールの回転速度を急激に低下させるけれども、そのスプールに巻回された帯板の外周部分はその慣性力により直ちに減速するようなことはなかった。このため、スプールの急減速時には、外周部分の回転速度が中央部分の回転速度より増加して巻回された帯板における巻回の程度が強まるだけで、その外周からは余剰に帯板が供給され、繰り出された余剰の帯板が帯板供給装置と巻取装置との間で撓んでしまうような不具合を生じさせる。
【0008】
特に、スプールの交換頻度を減少させるために、スプールに予め原材料として巻回される磁性帯板の長さを長くすると、その帯板は幅方向にずらすことなく先に巻回された帯板の上に必ず巻回されるため、スプールに巻回された帯板の外径は著しく増大することになる。すると、巻回された帯板からなる原材料の外周近傍の慣性力は更に増大し、その原材料の中心部分の回転加速度をスプールの回転加速度に合致させることができたとしても、慣性力が増大した原材料の外周近傍における帯板の回転加速度をその中心部分に合致させることは著しく困難になる。このため、巻回された帯板を含む原材料の全体をスプールと一体的に回転させることはますます困難になる傾向にある。
【0009】
本発明の目的は、巻回された帯板全体を一体的に回転させてその巻回された帯板の緩み又は締め付けを防止し得る帯板用スプールを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、巻回された帯板を含む原材料の全体を一体的に回転させて供給要求に応じた所望の長さの帯板を所望の速度で供給し得る帯板供給装置並びに帯板供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の帯板用スプールは、巻回された磁性材料からなる帯板を有する原材料を装着可能に構成された芯材と、原材料の両側のいずれか一方又は双方に設けられ原材料を構成する帯板を磁力により吸着して芯材に対する帯板の巻回方向の移動を禁止するマグネットとを備える。
【0012】
この帯板用スプールでは、原材料における帯板の幅方向の移動を制限する側板が芯材に設けられることが好ましい。
【0013】
本発明の帯板供給装置は、巻回された磁性材料からなる帯板を有する原材料が装着された上記帯板用スプールと、その帯板用スプールを回転させて外周から径方向に解き放たれる帯板を外部に供給する繰り出しモータと、帯板の供給に関する情報により繰り出しモータを制御するコントローラとを備える。
【0014】
本発明の帯板供給方法は、巻回された磁性材料からなる帯板を有する原材料が装着された芯材を回転させて外周から径方向に解き放たれる帯板を外部に供給する帯板供給方法の改良である。
【0015】
その特徴ある点は、芯材の回転時に帯板を磁力により吸着して帯板の芯材に対する巻回方向の移動を禁止するところにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、帯板を磁力により吸着して芯材に対する帯板の巻回方向の移動を禁止するマグネットを備えるので、その芯材を回転させると、巻回された帯板を含む原材料はその芯材と一体的に回転することになる。このため、この芯材を備えるスプールを回転させると、その芯材に巻回された帯板の外周部分の回転速度と芯材近傍の部分における回転速度は一致し、その速度が相違することに起因して生じる巻回された帯板の緩み又は締め付けは防止される。
【0017】
また、このスプールを備える帯板供給装置及び帯板供給方法では、芯材の回転時に帯板を磁力により吸着して帯板の芯材に対する巻回方向の移動を禁止するので、帯板の供給に関する情報に基づいてコントローラが繰り出しモータを制御して帯板用スプールを回転させることにより、帯板を含む原材料の全体をスプールと一体的に回転させて、供給要求に応じた所望の長さの帯板を所望の速度で供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施形態の帯板供給装置を示す図5のA−A線断面図である。
【図2】巻回された帯板を除く図1のB−B線断面図である。
【図3】図1のC−C線断面図である。
【図4】本発明実施形態のスプールの取り付け状況を示す分解図である。
【図5】本発明実施形態の帯板供給装置を巻取装置に接続した正面図である。
【図6】円盤状の永久磁石からなるマグネットを一方の側板として用いた図1に対応する断面図である。
【図7】円盤状の永久磁石からなるマグネットを他方の側板として用いた図1に対応する断面図である。
【図8】一方の側板が芯材に設けられ他方の側板を有しないスプールを示す図1に対応する断面図である。
【図9】図8に示すスプールの斜視図である。
【図10】側板を介さずにマグネットが芯材に取付けられたスプールの斜視図である。
【図11】平板材が放射状に設けられた側板を備えるスプールの斜視図である。
【図12】単一のマグネットが芯材の中心から偏倚して設けられたスプールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図5に示すように、本発明の帯板供給装置20は、巻回された磁性材料からなる帯板19aを有する原材料19を装着可能に構成されたスプール30を備える。原材料19のスプール30に巻回される帯板19aは、その帯板19aを巻き戻す実線矢印で示すような方向へのスプール30の回転によりその外周から破線矢印で示すように径方向外側に解き放たれて巻き戻され、その帯板19aを巻取って巻鉄心とする巻取装置10へと繰り出されるものである。
【0021】
図5における巻取装置10は、矩形体から成る本体11の前面から先端が突出して回転可能に設けられた巻芯13を備える。この巻芯13は図示しない駆動手段により回転駆動され、この巻芯13が回転することにより、巻芯13の外周に帯板19aが巻回されるようになっている。そして、この巻取装置10には、カッタ案内装置14と溶接機16が設けられる。カッタ案内装置14は、巻芯13の外周に帯板19aが所定量巻回された後に磁性帯板19aの途中を切断し、かつその切断された供給装置20側における帯板19aの端部を次に巻芯13に巻取るときにその巻芯13に案内するものである。また、溶接機16は、カッタ案内装置14により切断された磁性帯板19aの巻芯13側終端部を巻回された帯板19aの外周に溶接して固定するものである。
【0022】
本発明の帯板供給装置20には、巻取装置10に供給する帯板19aの張力を所定の値に維持するテンション装置21が設けられる。このテンション装置21は、供給装置20の前面パネル20aに鉛直に設けられた基盤21aを有し、この基盤21aにはスプール30から巻き戻された帯板19aが最初に掛け回される転向プーリ21bと、その転向プーリ21bにより図の下方に転向された帯板19aをU字状に旋回させる旋回プーリ21cが設けられる。基盤21aにはレール21dが上下方向に延びて設けられ、そのレール21dには移動台21eがそのレール21dに沿って上下動可能に設けられる。旋回プーリ21cはこの移動台21eに回転可能に取付けられる。この移動台21eには無端のベルト21fが固定され、そのベルト21fはレール21dの両端部近傍に設けられた一対のプーリ21g,21hに掛け回される。そして、移動台21eがレール21dに沿って移動すると、このベルト21fが回動するように構成される。そして、ベルト21fの回動とともに回転する一方のプーリ21gの回転角度を検出するポテンショメータ21jが設けられる。
【0023】
この基盤21aには、旋回プーリ21cによりU字状に旋回させた帯板19aを巻取装置10へ導く一対の導出プーリ21k,21mが設けられる。そして、一方の導出プーリ21kは、基盤21aに設置されたエンコーダ21nの回転軸に固定される。これにより、その導出プーリ21kを介して巻取装置10に供給される帯板19aの量は、エンコーダ21nにより正確に検出できるようになっている。また、ベルト21fが掛け回された他方のプーリ21hには、テンションモータ21pが設けられ、このテンションモータ21pは移動台21eを常に一定の力で図の下方に移動させるように付勢するように構成される。このテンションモータ21pにより、その旋回プーリ21cに掛け回されて、巻取装置10における巻芯13へ供給される帯板19aに常に一定の張力が与えられるようになっている。
【0024】
図1に示すように、本発明の帯板供給装置20には、帯板用スプール30を回転させて外周から径方向に解き放たれる帯板19aを外部に供給する繰り出しモータ22と、帯板19aの供給に関する情報によりその繰り出しモータ22を制御するコントローラ23が設けられる。帯板用スプール30は帯板供給装置20の前面パネル20aにおける表面側にその前面パネル20aから突出して設けられた回転軸24に取付けられ、繰り出しモータ22は帯板供給装置20の内部側、即ち前面パネル20aにおける裏面側にその前面パネル20aと平行に設けられた架台22bを介して設けられる。
【0025】
スプール30が取付けられる回転軸24は前面パネル20aにベアリング軸受け26,26により枢支され、前面パネル20aの裏面側における回転軸24の端部には従動プーリ27が設けられる。前面パネル20aにおける裏面側に設けられた繰り出しモータ22の回転軸22aには駆動プーリ28が設けられ、この駆動プーリ28と従動プーリ27にはベルト29が掛け渡される。これにより、繰り出しモータ22が駆動してその回転軸22aが回転すると、その回転は駆動プーリ28、ベルト29及び従動プーリ27を介して回転軸24を回転させるように構成される。そして、前面パネル20aの表面側における回転軸24には雄ねじ24aが形成され、そこに嵌入されるスプール30をこの回転軸24と一体的に回転させるためのキー溝24bが長手方向に延びて形成される。
【0026】
繰り出しモータ22にはコントローラ23の制御出力が接続され、そのコントローラ23の制御入力には巻取装置10とテンション装置21が接続される。そして、巻取装置10とテンション装置21からは帯板19aの供給に関する情報が入力されるように構成される。この実施の形態における巻取装置10からの帯板19aの供給に関する情報とは、巻芯13の回転速度に関する情報と、その回転速度の加速及び減速に関する情報が挙げられる。また、この実施の形態におけるテンション装置21からの帯板19aの供給に関する情報とは、移動台21eの位置に関するポテンショメータ21jにおける検出出力及び巻取装置10に供給される帯板19aの量に関するエンコーダ21nにおける検出出力が挙げられる。そして、このコントローラ23は、これらの情報に基づいて、メモリ23aに予め設定されて記憶されたプログラムに基づき繰り出しモータ22を制御するように構成される。
【0027】
前面パネル20aの表面側における回転軸24に取付けられる帯板用スプール30は、その雄ねじ24aに嵌入される芯材31と、その芯材31に設けられた一対の側板32,33とを備える。芯材31は回転軸24に嵌入可能な内径を有する筒状部材であって、その内径には回転軸24に形成されたキー溝24bに挿入可能な突起31aが形成され、これにより回転軸24に対してこの芯材31が独立して回転するような事態を回避するように構成される(図2及び図3)。この芯材31は、巻回された磁性材料からなる帯板19aを有する原材料19が装着可能なものであって、図4に示すように、原材料19が嵌入可能な大径部31bと、大径部31bの軸方向の両側にその大径部31bと同軸に形成された第1及び第2小径部31c,31dを有する。この実施の形態における原材料19は、厚紙からなり芯材31の大径部31bに嵌入可能な内径を有する巻筒19bと、その巻筒19bの周囲に巻回された帯板19aから成るものを例示するけれども、芯材31の周囲に嵌入可能である限り、原材料19は巻筒19bを用いることなく帯板19aを巻回したものであっても良い。そして、帯板19aは磁性材料であり、アモルファス金属からなるテープ状の薄帯板や、珪素鋼からなるテープ状の薄帯板等が例示される。
【0028】
一対の側板32,33は、芯材31の両側に大径部31bを挟むように設けられ、その大径部31bに装着された原材料19の巻回された帯板19aの幅方向の両側に位置し、その帯板19aの幅方向の移動を制限するように構成される。この一対の側板32,33はそれぞれ芯材31の両端における小径部31c,31dに嵌入可能な孔32a,33aが中央に形成された円盤状の部材からなり、その内の前面パネル20a側における一方の側板32は小径部31dに嵌入された状態で芯材31に固定され、他方の側板33はその芯材31に取り外し可能に構成される。この実施の形態における一方の側板32はアルミニウム合金から成り、他方の側板33は一対の側板32,33により挟む原材料19の状態を外部から視認可能な透明樹脂から成る場合を示す。なお、図1における符号37は回転軸24に嵌入されたスプール30を雄ねじ24aの先端側から押さえるワッシャ37を示し、符号38はその雄ねじ24aに螺着されるナット38を示す。
【0029】
芯材31に固定された一方の側板32には、その芯材31の大径部31bに装着された原材料19の巻回された帯板19aを磁力により吸着して芯材31に対する帯板19aの巻回方向の移動を禁止するマグネット36が設けられる。図2及び図3に示すように、この実施の形態におけるマグネット36は、直方体を成し長方形の着磁面36aを有する本体36cと、その本体36cの両側に設けられた取付片36d,36dと、傾動させることにより着磁面36aの着磁状態と非着磁状態を切替可能に構成された切替レバー36bとを備える。一方の側板32にはマグネット36の着磁面36aより僅かに大きな方形状の孔32bが放射状に形成され、このマグネット36は外側からその方形状の孔32bを貫通して着磁面36aが一方の側板32の帯板19aの側面が当接する片面と面一になった状態で取付片36d,36dがその側板32の他方の面に当接するように構成される。取付片36d,36dには取付孔36f(図4)が形成され、側板32にはその取付孔36fに対向して雌ねじ穴32cが形成される(図2)。図4に示すように、マグネット36の着磁面36aが側板32の片面と面一の状態で取付孔36fに雄ねじ36eを挿通させ、雌ねじ穴32cに螺合させることによりそのマグネット36は一方の側板32に取付けられる。そして、この一方の側板32には、この実施の形態では3個のマグネット36が回転中心から放射状に等角度にかつその中心から等しい距離に設けられる例を示す。
【0030】
次に、上記供給装置を用いて磁性帯板を繰り出す本発明の帯板供給方法ついて説明する。
【0031】
本発明の帯板供給方法は、巻回された磁性材料からなる帯板19aを有する原材料19が装着された芯材31を回転させて原材料19の外周から径方向に解き放たれる帯板19aを外部に供給する方法である。芯材31に原材料19を装着するには、図4に示すように、原材料をその芯材31に嵌入することにより行う。具体的には、他方の側板33を芯材31より取り外し、その取り外した側から原材料19における巻筒19bを帯板19aとともにその芯材31の大径部31bに嵌入させる。このとき、帯板19aがいたずらにマグネット36に吸引されることを防止するため、マグネット36における切替レバー36bを図3の一点鎖線で示すように傾動させ、マグネット36の着磁面36aを非着磁状態としておくことが好ましい。その後、他方の側板33を芯材31の小径部31cに嵌入することにより取付け、一対の側板32,33により原材料19の巻回された帯板19aの幅方向の移動を制限する。この状態で、マグネット36における切替レバー36bを図3の実線で示すように傾動させて復元し、着磁面36aを着磁状態として原材料19における巻回された帯板19aをその着磁面36aに吸着させる。これにより、巻回された帯板19aの自由な移動は抑制されて、その帯板19aを含む原材料19をスプール30と一体化させることができる。
【0032】
芯材31に原材料19が装着され、一対の側板32,33により巻回された帯板19aの幅方向の移動を制限したスプール30は、次に回転軸24に取付けられる。具体的には、図4に示すように、回転軸24の雄ねじ24aに芯材31を嵌入し、その後ワッシャ37をその雄ねじ24aに嵌入し、ナット38を螺着する。芯材31の嵌入時には、その突起31aをキー溝24bに挿入する。これによりスプール30を回転軸24に取付けることができ、突起31aがキー溝24bに挿入されるので、スプール30の回転軸24から独立した回転は禁止されることになる(図2及び図3)。その後、図5に示すように、スプール30の外周側における帯板19aを巻き戻して転向プーリ21bに掛け回した後、旋回プーリ21cに掛け回してU字状に旋回させ、更に一対の導出プーリ21k,21m間にS字状に掛け回す。そしてその帯板19aの先端部分を供給先に案内する。
【0033】
図5に示す巻取装置10に帯板19aを供給する場合を説明すると、スプール30から繰り出され、テンション装置21の導出プーリ21k,21m間から案内された帯板19aは、カッタ案内装置14を通過した後に巻取装置10の巻芯13に導かれる。そして、この巻取装置10において、巻芯13を所定の回転速度で回転させ、その巻芯13に帯板を巻取る。その巻芯13を回転させるという情報は巻取装置10からコントローラ23に発せられ、この情報に基づいて予め設定されたプログラムに基づきコントローラ23は繰り出しモータ22を駆動してスプール30を回転させる。すると、スプール30の芯材31に装着された原材料19の巻回された帯板19aがその外周から破線矢印で示すように径方向に解き放たれて巻き戻され、必要な量の帯板19aが繰り出されることになる。巻取装置10に供給される帯板19aの量は、エンコーダ21nにより検出され、この検出信号はコントローラ23にフィードバックされる。これにより巻取装置10では巻芯13に帯板19aを巻取ることができる。
【0034】
ここで、帯板19aを供給すると巻回された帯板19aの外径は減少するので、スプール30の回転数と帯板19aの供給量は比例しない。このため、コントローラ23は、テンション装置21からの帯板19aの供給に関する情報、具体的にはそのポテンショメータ21jからの検出信号に基づいてメモリ23aに記憶されたプログラムを補正して繰り出しモータ22を制御する。例えば、原材料19である帯板19aの外径が減少して供給装置20における帯板19aの供給量が減少すると、テンション装置21における転向プーリ21bと導出プーリ21k間における帯板19aの長さが縮まって、旋回プーリ21cは徐々に上昇する。中立位置から旋回プーリ21cが上昇すると移動台21eも上方に移動し、ベルト21fが回動して一方のプーリ21gの回転角度がポテンショメータ21jによって検出される。旋回プーリ21cが上昇した旨の信号がポテンショメータ21jから入力されたコントローラ23はスプール30の回転速度を増加させるように繰り出しモータ22を制御し、帯板19aの供給量を増加させて巻取装置10が必要とする量に一致させる。
【0035】
逆に、供給装置20における帯板19aの供給量が過剰である場合には、テンション装置21における旋回プーリ21cは移動台21eとともに徐々に下降する。中立位置から旋回プーリ21cが下降した旨の信号をポテンショメータ21jから入力されたコントローラ23はスプール30の回転速度を低下させるように繰り出しモータ22を制御し、帯板19aの供給量を減少させて巻取装置10が必要とする量に一致させる。ここで、この実施の形態における旋回プーリ21cの中立位置とは、レール21dの上下方向の中央附近を言うものである。
【0036】
このように、帯板19aの供給量等に変動が生じた場合でも、ポテンショメータ21jにより検出された旋回プーリ21cの中立位置からの変位がフィードバックされて繰り出しモータ22が制御されるので、繰り出しモータ22の回転速度は自動的に調整される。即ち、本発明では、例えば、図5に示す巻取装置10における巻取りの進行にともなうトロイダルコアの径の増大や、スプール30に巻回された帯板19aからなる原材料19の径の減少に対応した繰り出しモータ22の回転速度の補正が自動的になされることになる。
【0037】
一方、スプール30には原材料19の帯板19aを磁力により吸着するマグネット36が設けられる。このマグネット36は原材料19を構成する帯板19aを磁力により吸着するので、そのマグネット36が設けられた側板32に帯板19aを吸着することができる。ここで、この側板32は芯材31に固定されているので、芯材31に対する帯板19aの巻回方向の移動は禁止されることになる。このため、この帯板19aを含む原材料19は芯材31と一体となり、スプール30の回転速度にその原材料19の回転速度を合致させることができる。即ち、この芯材31を備えるスプール30を回転させると、芯材31に巻回された帯板19aの外周部分の回転速度と芯材31近傍の部分の回転速度は一致し、その速度が相違することに起因する巻回された帯板19aの緩み又は締め付けは防止される。なお、この実施の形態では、3個のマグネット36を回転中心から放射状に等角度にかつその中心から等しい距離に設けているので、スプール30の回転中心に対するバランスは保たれ、このマグネット36がスプール30を比較的高速で回転させる場合の妨げとなることはない。
【0038】
このスプール30を備える供給装置20では、帯板19aの供給に関する情報に基づいてコントローラ23が繰り出しモータ22を制御し、帯板用スプール30を回転させて外周から径方向に解き放たれる帯板19aを外部に供給するので、帯板19aを含む原材料19の全体がスプール30と一体的に回転し、供給要求に応じた所望の長さの帯板19aを所望の速度で供給することが可能になる。そして、このスプール30では、巻回された帯板19aを有する原材料19の全体をスプール30と一体的に回転させることができるので、スプール30に予め原材料19として巻回された磁性帯板19aの長さを長くすることにより、スプール30全体の交換頻度を低減させ、巻取装置10における生産効率を向上させることも可能となる。
【0039】
なお、上述した実施の形態では、一対の側板32,33の内の前面パネル20a側における側板32にマグネット36を設けた例を示したが、他方の側板33にマグネット36を設けても良く、双方の側板32,33にそれぞれマグネット36を設けても良い。
【0040】
また、上述した実施の形態では、取付片36d及び切替レバー36bを有するマグネット36を用いて説明したが、磁力により吸着して芯材31に対する帯板19aの巻回方向の移動を禁止可能である限り、種々の形状のマグネットであっても良く、マグネットを取付片を用いない他の手段により取付けても良い。例えば、図6に示すように、切替レバーを有しない永久磁石そのものをマグネット36として用いても良い。この永久磁石から成るマグネット36が円盤状である場合には、その円盤状のマグネット36を一方の側板32として用いることもでき、図7に示すように他方の側板33として用いることもできる。
【0041】
また、上述した実施の形態では、一対の側板32,33を備える帯板用スプール30を説明したが、この側板32,33はいずれか一方であっても良い。例えば、図8及び図9に示すように、側板32にマグネット36を設ければ、原材料19の帯板はそのマグネット36が設けられた側板32に吸着されるため、その帯板の幅方向の移動を制限する為に用いる他方の側板33(図1)は不要になる。このため、帯板用スプール30は、マグネット36が設けられた一方の側板32を芯材31に設けたようなものであっても良い。また、マグネット36が帯板19aを磁力により吸着して芯材31に対する帯板19aの巻回方向の移動を禁止する限り、一対の側板32,33は無くても良い。例えば、側板32,33に代えて、図6及び図7に示す永久磁石等から成る円盤状のマグネット36をその原材料19の両側のいずれか一方又は双方に設けるような場合には、帯板19aの幅方向の移動を制限する為の側板32,33は不要になる。
【0042】
また、上述した実施の形態では、一方の側板32に3個のマグネット36が設けられる例を示したが、図10に示すようにマグネット36は芯材31に側板32に設けられることを必要としない。図10では、芯材31の第1小径部31cに嵌入可能な台座39に3個のマグネット36が放射状に設けられたものを示す。ここで、図10ではマグネット36とともに一方の側板32を備える帯板用スプール30を示すけれども、原材料19の帯板はそのマグネット36に吸着されるため、この一方の側板32は備えなくても良い。
【0043】
また、上述した実施の形態では、円盤状の側板32,33を例示して説明したが、原材料19の帯板の幅方向の移動を制限する限り側板32,33は円盤状に限られない。例えば、図11に示すように、小径部31c又は31dに嵌入可能な嵌入部32dから平板材32eが放射状に設けられたような側板32であっても良い。そして、図では3枚の平板材32eが設けられる例を示すけれども、スプール30の回転中心に対するバランスが保たれる限り、この平板材32eは2枚でも良く、4枚でも5枚でも6枚でも7枚以上でも良い。
【0044】
また、図10及び図11では、原材料19の両側のいずれか一方である芯材31の第1小径部31cにマグネット36が設けられた帯板用スプール30を示すけれども、原材料19を構成する帯板を磁力により吸着して芯材31に対する帯板の巻回方向の移動を禁止する限り、原材料19の両側のいずれか一方である芯材31の第2小径部31dにマグネット36を設けても良く、そのマグネット36を原材料19の両側の双方に設けても良い。
【0045】
更に、上述した実施の形態では、3個のマグネット36が回転中心から放射状に等角度にかつその中心から等しい距離に設けられる例を示したが、このマグネット36の数は、1個でも2個でも良く、4個でも5個でも6個でも7個以上でも良い。また、スプール30を回転可能である限り、マグネット36を回転中心から放射状に等角度にかつその中心から等しい距離に設けることを要しない。例えば、図12に示すように、台座39に単一のマグネット36を芯材31の中心から偏倚して設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0046】
19 原材料
19a 帯板
20 帯板供給装置
22 繰り出しモータ
23 コントローラ
30 帯板用スプール
31 芯材
32,33 側板
36 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された磁性材料からなる帯板(19a)を有する原材料(19)を装着可能に構成された芯材(31)と、
前記原材料(19)の両側のいずれか一方又は双方に設けられ前記原材料(19)を構成する前記帯板(19a)を磁力により吸着して前記芯材(31)に対する前記帯板(19a)の巻回方向の移動を禁止するマグネット(36)と
を備えた帯板用スプール。
【請求項2】
原材料(19)における帯板(19a)の幅方向の移動を制限する側板(32,33)が芯材(31)に設けられた請求項1記載の帯板用スプール。
【請求項3】
巻回された磁性材料からなる帯板(19a)を有する原材料(19)が装着された請求項1又は2記載の帯板用スプール(30)と、
前記帯板用スプール(30)を回転させて外周から径方向に解き放たれる帯板(19a)を外部に供給する繰り出しモータ(22)と、
前記帯板(19a)の供給に関する情報により前記繰り出しモータ(22)を制御するコントローラ(23)と
を備えた帯板供給装置。
【請求項4】
巻回された磁性材料からなる帯板(19a)を有する原材料(19)が装着された芯材(31)を回転させて外周から径方向に解き放たれる前記帯板(19a)を外部に供給する帯板供給方法において、
前記芯材(31)の回転時に前記帯板(19a)を磁力により吸着して前記帯板の前記芯材(31)に対する巻回方向の移動を禁止する
ことを特徴とする帯板供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−16608(P2011−16608A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161323(P2009−161323)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】