説明

帯電ロール

【課題】重合トナーに対する耐トナー付着性に優れ、しかもロール表面の耐久性にも優れる帯電ロールを提供する。
【解決手段】軸体1と、その外周に形成されたベースゴム層2と、上記ベースゴム層の外周に形成された軟化剤移行防止層3と、上記軟化剤移行防止層3の外周に形成された抵抗調整層4と、さらにその外周に形成された表層5とを備えた帯電ロールであって、上記表層5が、N−メトキシメチル化ナイロン100重量部に対しメラミン系樹脂を20〜80重量部の割合で含有する樹脂組成物によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、プリンター等の電子写真装置に用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真複写機による複写はつぎのようにして行われる。すなわち、軸中心に回転する感光ドラムに原稿像を静電潜像として形成し、これにトナーを付着させてトナー像を形成し、このトナー像を複写紙に転写することにより複写を行うものである。この場合において、上記感光ドラム表面に対して静電潜像を形成させるためには、予め感光ドラム表面を帯電させ、この帯電部分に対して原稿像を、光学系を介して投射し、光の当たった部分の帯電を打ち消すことにより静電潜像をつくるといったことが行われる。そして、上記静電潜像の形成に先立って感光ドラム表面を帯電させる方式としては、最近では、帯電ロールと呼ばれる部材を、感光ドラム表面に直接接触させる方式(接触帯電方式)が採用されている。
【0003】
上記帯電ロールとしては、例えば、軸体となる芯金と、その外周面に形成されたベースゴム層と、上記ベースゴム層の外周面に形成された一層ないし複数層(抵抗調整層や表層等)とを備えた多層構造のロールが一般的である(例えば、特許文献1参照)。そして、各システム毎に要求される帯電性、耐久性、トナー離型性、感光ドラムとの追従性等の特性が最適化されるよう、従来から、特に、これらロールの表層材料の選択に重点が置かれており、各種樹脂系材料やゴム系材料のコーティングによる表層形成が行われている。
【特許文献1】特開2000−291634公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、フルカラーLBP(レーザービームプリンター)、フルカラーMFP(マルチファンクションプリンター)の高画質化に伴い、その印刷に使用されるトナーも、従来の粉砕トナーから重合トナーに移行しつつある。この重合トナーには、流動性を高めるために、シリカ,ステアリン酸等の外添剤が多量に含まれており、従来の粉砕トナーよりも付着性が高い。そのため、特に、フルカラーLBPやフルカラーMFPに組み込まれる帯電ロールには、トナーあるいはトナー外添剤の付着防止性能の向上が強く求められている。ここで、従来の帯電ロールでは、その表層材料として主にポリアミド系樹脂が用いられているが、上記のような重合トナーを使用した場合では、充分な離型性が得られず、その付着汚染が著しい。このようなトナー付着を改善するには、一般的に、その表層硬度を高くする方法が考えられるが、しかし、単に表層を高硬度化しただけでは、表層に割れや亀裂が発生しやすい等といった耐久面での問題があることから、上記のような用途において、耐トナー付着性および耐久性(耐割れ性)を両立させることは困難であった。また、このように高硬度化したロールを感光ドラムに当接して使用すると、感光ドラム表面の摩耗が生じるといったことも懸念される。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、重合トナーに対する耐トナー付着性に優れ、しかもロール表面の耐久性にも優れる帯電ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の帯電ロールは、軸体と、その外周に形成されたベースゴム層と、上記ベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された表層とを備えた帯電ロールであって、上記表層が、N−メトキシメチル化ナイロン100重量部に対しメラミン系樹脂を20〜80重量部の割合で含有する樹脂組成物によって形成されているという構成をとる。
【0007】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、帯電ロールにおける表層を中心に、更なる研究を重ねた結果、その表層材料として、N−メトキシメチル化ナイロンをポリマー材料として用い、上記N−メトキシメチル化ナイロン100重量部に対し、メラミン系樹脂を20〜80重量部の割合で含有すると、重合トナーに対する耐トナー付着性と、耐久性との両立が達成されることを突き止め、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の帯電ロールは、その表層が、N−メトキシメチル化ナイロン100重量部に対しメラミン系樹脂を20〜80重量部の割合で含有する樹脂組成物によって形成されている。そのため、本発明の帯電ロールは、重合トナーに対する耐トナー付着性と耐久性(ロール表面の耐割れ性)との両立を実現することができる。このことから、本発明の帯電ロールは、特にフルカラーLBPやフルカラーMFPの用途に適しており、また、本発明の帯電ロールをフルカラーLBPやフルカラーMFP等の電子写真装置に組み込むことにより、長期にわたり良好な複写画像を得ることができるようになる。
【0009】
特に、上記表層の厚みが10〜30μmの範囲に設定されていると、耐久使用によるロール表面(表層)のしわの発生が抑えられ、表層の平滑性が保たれることから、長期にわたって、よりトナー離型性に優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明の帯電ロールは、例えば、図1に示すように、軸体1の外周面に沿ってベースゴム層2が形成され、上記ベースゴム層2の外周面に軟化剤移行防止層3が形成され、上記軟化剤移行防止層3の外周面に抵抗調整層4が形成され、さらに上記抵抗調整層4の外周面に表層5が形成されて、構成されている。そして、本発明の帯電ロールでは、上記表層5が、特定の樹脂組成物によって形成されていることが最大の特徴である。
【0012】
上記軸体1としては、特に限定されるものではなく、例えば、図示のような中実体以外にも、中空円筒体からなる芯金であってもよい。そして、その形成材料についても、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属材料等があげられる。なお、必要に応じ、軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布してもよい。また、接着剤、プライマー等には、必要に応じて導電化を行ってもよい。
【0013】
上記軸体1の外周面に形成されるベースゴム層2の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等があげられ、単独であるいは二種以上併せて用いられる。また、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤が、上記材料中に適宜添加される。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加してもよい。
【0014】
上記ベースゴム層2の外周面に形成される軟化剤移行防止層3の形成材料としては、例えば、N−メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂やポリエステル等に、カーボンブラック等の導電剤を配合したものがあげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0015】
上記軟化剤移行防止層3の外周面に形成される抵抗調整層4の形成材料としては、例えば、ヒドリンゴム、EPDM、SBR、NBR、H−NBR、ポリウレタン系エラストマー等に、カーボンブラック、金属酸化物、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸リチウム等の導電剤を配合したものがあげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0016】
そして、上記ベースゴム層2、軟化剤移行防止層3および抵抗調整層4の各層形成材料の調製方法は、従来公知の方法が適用される。この例をあげると、まず、ベースゴム層2の形成材料(コンパウンド状)は、上記各成分をニーダー等の混練機により混練して調製することができる。また、軟化剤移行防止層3および抵抗調整層4の形成材料(コーティング液)は、上記各成分を、ボールミルやロール等で混練し、この混合物に溶剤を加えて混合攪拌することにより調製することができる。
【0017】
上記抵抗調整層4の外周面に形成される表層5の形成材料としては、N−メトキシメチル化ナイロンがポリマー材料として用いられ、かつ上記N−メトキシメチル化ナイロン100重量部(以下、「部」と略す)に対し、メラミン系樹脂が20〜80部の割合で含有された樹脂組成物が、使用される。上記メラミン系樹脂の含有割合は、好ましくは30〜60部の範囲である。すなわち、上記メラミン系樹脂の含有割合が20部未満であると、本発明の用途における耐トナー付着性が、所望のレベルに達し得ないからであり、逆に、上記メラミン系樹脂の含有割合が80部を超えると、ロールの耐久性(耐割れ性)や低硬度化等の点で問題があるからである。
【0018】
本発明で用いるN−メトキシメチル化ナイロンは、下記の式(1)に示す繰り返し単位を有する樹脂であり、通常のポリアミド樹脂のアミド結合部において、窒素に結合する水素が部分的にメトキシメチル基で置換されているものである。なかでも、下記の式(1)におけるmが5である「8−ナイロン」が、好ましく用いられる。なお、このN−メトキシメチル化ナイロンの電気抵抗は1×106 〜1×1010Ω・cmの範囲であると好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
上記N−メトキシメチル化ナイロンは、そのメトキシメチル化度(以下「M・M化度」と略す)が増大するに従って硬度が低下するのであり、この発明に用いるには、M・M化度が20〜40%の範囲内であることが必要であり、特に好ましくは、30%付近である。すなわち、M・M化度が20%未満では、得られる表層5の硬度が高すぎ、感光体との摺擦等において相手を早期に摩耗させたり傷付けたりするといった問題があり、逆に、M・M化度が40%を超えると、得られる得られる表層5の硬度が低すぎて、それ自体の摩耗が早く、実用的でないからである。
【0021】
上記N−メトキシメチル化ナイロンとともに用いられるメラミン系樹脂としては、特に限定はなく、メラミンをはじめ尿素,チオ尿素,グアニジン,グアナミン等の多官能のアミノ基を有する材料と、ホルムアルデヒドとを反応させることにより得られる、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ジメチロール尿素ジメチロールグアニジンや、また、一価アルコールでエーテル化したりメトキシメチル化をしたメラミン樹脂等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。そして、上記メラミン系樹脂の分子量は、通常、100〜4000であり、好ましくは分子量100〜500の範囲である。
【0022】
上記表層5の形成材料は、上記N−メトキシメチル化ナイロンおよびメラミン系樹脂を、溶剤に溶解し、コーティング液として使用に供される。上記溶剤としては、メタノール、水、トルエン、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。特に、上記表層5の形成材料に対する溶解性の点で、メタノール/水混合溶液を溶剤として用いることが好ましい。そして、このようにして得られるコーティング液は、粘度を0.005〜6Pa・sにすることが、塗工性等の点で好ましい。
【0023】
このように、この発明の表層5では、上記特定量のメラミン系樹脂が、上記N−メトキシメチル化ナイロンの分子間を架橋結合することによって、適正な割合で部分的に固定しているため、硬度が高く、吸湿が制限され、温度や湿度の変化に対してもその導電性の変動が小さくなる。
【0024】
なお、上記調製のコーティング液により形成された表層5は、特に導電剤を含有しなくとも、電気特性の要求の厳しい帯電ロールにおいて充分な性能を発揮することができるが、必要に応じて、上記コーティング液中にカーボンブラック等の導電剤を加えてもよい。また、上記コーティング液には、上記各成分とともに、必要に応じて、充填剤(粗面形成用の粒子等)、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤等を適宜に配合してもよい。
【0025】
また、上記表層の伸び(EB)が100〜200%の範囲に設定されていると、ロール表面への微小クラックの発生も、より抑えることができ、好ましい。上記伸びは、例えば、表層形成材料を用いて樹脂シートを作製し、これに対し、JIS K6301−1995に準じて、測定することができる。
【0026】
本発明の帯電ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0027】
すなわち、まず、前記のようにして調製されたベースゴム層2、軟化剤移行防止層3および抵抗調整層4の形成材料を用い、常法(金型成形法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等)に従って、軸体1の外周にベースゴム層2、軟化剤移行防止層3および抵抗調整層4をこの順序で形成し、ロール基体を作製する。
【0028】
一方、前記表層5用の各成分を溶剤に溶解し、サンドミル等で分散し、溶解することにより、表層5形成材料(コーティング液)を調製し、上記ロール基体の抵抗調整層4の外周面に、上記コーティング液を塗工する。この塗工法は、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来の方法が適用できる。そして、塗工後、乾燥および加熱処理(条件:60〜170℃)を行うことにより、コーティング液中の溶剤を蒸発除去させ、さらに架橋反応させる。このようにして、図1に示すような四層構造の帯電ロールを作製することができる。なお、本発明の帯電ロールにおいては、各層の厚みは、ロールの使用用途により適宜決定されるが、例えば、ベースゴム層2の厚みは1〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは厚み2〜6mmである。また、軟化剤移行防止層3の厚みは、3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは厚み5〜10μmである。また、抵抗調整層4の厚みは、10〜800μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは厚み100〜300μmである。
【0029】
そして、表層5の厚みは、10〜30μmに設定することが好ましく、特に好ましくは厚み12〜20μmの範囲である。すなわち、表層5の厚みが10μm未満であると、表層の厚みが薄すぎることから、亀甲模様状のしわ(収縮しわ)が発生しやすく、そのしわにトナーの外添剤が入り込んでトナー付着を引き起こしやすくなる傾向がみられるからであり、逆に、表層5の厚みが30μmを超えると、コーティング性等の加工性に劣るようになる傾向がみられるからである。
【0030】
また、表層5の電気抵抗は、1×105 〜1×1011Ω・cmの範囲に設定することが好ましく、より好ましくは1×108 〜1×1010Ω・cmである。
【0031】
なお、本発明の帯電ロールの例として、図1に示すような四層構造のものをあげたが、本発明はこれに限定されるものでなく、ベースゴム層と表層との二層構造であってもよい。また、必要に応じ、ベースゴム層と表層との間の抵抗調整層を、複数層となるよう形成してもよい。
【0032】
そして、本発明の帯電ロールは、一般的な電子写真装置にも適用することが可能であるが、特に、フルカラーLBPやフルカラーMFP等の重合トナーを使用した電子写真装置用の帯電ロールとして好適に用いることができる。そして、本発明の帯電ロールをフルカラーLBPやフルカラーMFP等の電子写真装置に組み込むことにより、長期にわたり良好な複写画像を得ることができるようになる。
【0033】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例】
【0034】
〔実施例1〜10、比較例1〜3〕
まず、軸体となる芯金〔直径6mm、ステンレス(SUS304)製〕と、ベースゴム層形成材料としてSBR(JIS−A硬度20°)100部にカーボンブラック10部を添加したものとを準備した。そして、これらを用い、金型成形により、上記芯金外周面にベースゴム層が形成されたベースロールを作製した。つぎに、N−メトキシメチル化ナイロン(帝国化学社製、トレジンEF30T)100部と、導電剤(ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラック・インターナショナル社製)20部とを、MEK400部と混合することにより、軟化剤移行防止層用材料を調製した。また、NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN401)100部と、四級アンモニウム塩(和光純薬社製、TBAHS)1部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)30部と、ステアリン酸(花王社製、ルナックS30)0.5部と、亜鉛華(堺化学工業社製)5部と、加硫助剤(三新化学社製、サンセラーCZ−G)1.07部と、加硫助剤(大内新興化学社製、ノクセラーBZ−P)0.49部と、硫黄(鶴見化学工業社製、サルファックスPTC)1部とを混合・攪拌し、抵抗調整層用材料を調製した。そして、これらを用い、前述の方法に準じて、上記ベースロールの外周面に、順次、軟化剤移行防止層および抵抗調整層を形成することにより、軸体の外周にベースゴム層、軟化剤移行防止層および抵抗調整層が形成されてなるロール基体を作製した。なお、このロール基体のベースゴム層の厚みは3mmであり、軟化剤移行防止層の厚みは5μmであり、抵抗調整層の厚みは150μmである。
【0035】
つぎに、後記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これを、メタノール−トルエン混合溶液(メタノール:トルエン=7:3)500部に溶解して表層形成材料(コーティング液)を調製した。なお、表において、N−メトキシメチル化ナイロンは、帝国化学社製のトレジンEF30Tであり、メラミン樹脂は、住友化学社製のスミテックスレジンM3であり、クエン酸は、扶桑化学社製のクエン酸である。続いて、上記調製の各表層形成材料(コーティング液)を、上記作製のロール基体の外周面に対し、前述の方法(塗工法:ロールコート法)に従い塗工した。そして、その後、コーティング液を乾燥および加熱架橋させることにより、目的とする帯電ロールを作製した。なお、各帯電ロールにおける表層の厚みは、後記の表1および表2に併せて示す。
【0036】
このようにして得られた各帯電ロールについて、下記の基準に従い、各特性の比較評価および測定を行った。これらの結果を後記の表1および表2に併せて示した。なお、表において数値の記載のない箇所は、測定等を行っていない。
【0037】
〔伸び(EB)〕
表層材料により形成されたサンプルシートを用い、JIS K6301−1995に準じ、伸び(EB)を評価した。
【0038】
〔収縮しわ深さ〕
得られた各帯電ロールを、電子写真プリンターに組み込んで1万枚の画像出しを行った。その後、ロール表面(表層)の収縮しわの深さを、オリンパス社製のマイクロスコープPV10−CBにより測定した。
【0039】
〔耐トナー付着性〕
得られた各帯電ロールを、フルカラーLBPに組み込んで、1万枚の画像出し(マゼンダハーフトーン)を行った後、ロール表面の汚染状況(トナーおよびトナー外添剤の付着量)を目視により評価するとともに、プリント画像の状態を目視により評価した。すなわち、1万枚の画像出し後であってもプリント画像に問題がなく、細線にいたるまで鮮明にプリントされ、かつ、ロール表面の汚染も殆どないものを○、ロール表面において部分的にトナー等の付着がみられたが、プリント画像に問題はみられなかったものを△、ロール表面の汚染が全面に行き渡り、プリント画像にも濃度むらがみられたものを×として評価した。
【0040】
〔耐久性(耐割れ性)〕
上記耐トナー付着性評価の際の1万枚の画像出しを行った後のロール表面(表層)を、顕微鏡により観察し、割れや亀裂の有無を評価した。すなわち、ロール表面に割れや亀裂が全くみられなかったものを○、部分的に微小な亀裂がみられたが、プリント画像等に影響を与えない程度であるものを△、割れや亀裂がみられ、プリント画像等に悪影響を与え得るものを×として評価した。
【0041】
〔加工性〕
ロールコート法により塗工し得られた各帯電ロールの表面を目視評価した。すなわち、ロール表面に塗布むらや液垂れが生じないものを○、若干の塗布むらや液垂れが生じたが、支障をきたさない程度であるものを△、ひどい塗布むらや液垂れが生じたものを×として評価した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
これらの結果から、実施例品は、いずれも、耐トナー付着性に優れるとともに、ロール表面の耐久性に優れていることがわかる。
【0045】
これに対し、比較例1品は、耐トナー付着性に劣ることがわかる。比較例2品は、耐トナー付着性には優れるものの、耐久性に劣ることがわかる。比較例3品は、表層の伸びが大きく、耐トナー付着性に劣ることがわかる。
【0046】
〔実施例11〜20、比較例4〜6〕
まず、後記の表3および表4に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これを、メタノール−トルエン混合溶液(メタノール:トルエン=7:3)500部に溶解して表層形成材料(コーティング液)を調製した。なお、表において、N−メトキシメチル化ナイロンは、帝国化学社製のトレジンEF30Tであり、メラミン樹脂は、住友化学社製のスミテックスレジンM3であり、クエン酸は、扶桑化学社製のクエン酸である。
【0047】
つぎに、先に述べた実施例および比較例におけるベースロールと同様のものを作製した。そして、軟化剤移行防止層や抵抗調整層は設けず、ベースロール外周面に、直に、上記調製の各表層形成材料(コーティング液)を、前述の方法(塗工法:ロールコート法)に従い塗工した。そして、その後、コーティング液を乾燥および加熱架橋させることにより、目的とする帯電ロールを作製した。なお、各帯電ロールにおける表層の厚みは、後記の表3および表4に併せて示す。
【0048】
このようにして得られた各帯電ロールについて、先に述べた基準に従い、各特性の比較評価および測定を行った。これらの結果を後記の表3および表4に併せて示した。なお、表において数値の記載のない箇所は、測定等を行っていない。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
これらの結果から、実施例品は、いずれも、耐トナー付着性に優れるとともに、ロール表面の耐久性に優れていることがわかる。
【0052】
これに対し、比較例4品は、耐トナー付着性に劣ることがわかる。比較例5品は、耐トナー付着性には優れるものの、耐久性に劣ることがわかる。比較例6品は、表層の伸びが大きく、耐トナー付着性に劣ることがわかる。
【0053】
なお、前記実施例1〜10および比較例1〜3における抵抗調整層用材料に代えて、ポリウレタン系エラストマー(坂井化学社製、UN278)100部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)30部と、イオン導電剤(日本カーリット社製、LR147)1部と、2,4−トルエンジイソシアネート(三井化学社製、TDI100)10部とを混合・攪拌し、調製した材料を用い、各帯電ロールを作製したところ、上記実施例および比較例の結果に準ずる結果が得られた。
【0054】
また、前記実施例1〜10および比較例1〜3における抵抗調整層用材料に代えて、エピクロロヒドリンゴム(ダイソー社製、エピクロマーCG105)100部と、受酸剤(協和科学社製、ハイドロタルサイトDHT4A)3部と、ステアリン酸(花王社製、ルナックS30)0.5部と、イオン導電剤(日本カーリット社製、LR147)1部と、架橋剤(三新化学社製、サンセラー22C)2部とを混合・攪拌し、調製した材料を用い、各帯電ロールを作製した場合も、上記実施例および比較例の結果に準ずる結果が得られた。
【0055】
さらに、前記実施例1〜10および比較例1〜3における抵抗調整層用材料に、SBR,CR,IRをポリマー材料として用いた場合も、同様に、上記実施例および比較例の結果に準ずる結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の帯電ロールの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 軸体
2 ベースゴム層
3 軟化剤移行防止層
4 抵抗調整層
5 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、その外周に形成されたベースゴム層と、上記ベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された表層とを備えた帯電ロールであって、上記表層が、N−メトキシメチル化ナイロン100重量部に対しメラミン系樹脂を20〜80重量部の割合で含有する樹脂組成物によって形成されていることを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
上記表層の厚みが10〜30μmの範囲に設定されている請求項1記載の帯電ロール。

【図1】
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【公開番号】特開2006−163059(P2006−163059A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355570(P2004−355570)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】