説明

帯電装置、帯電装置を備える画像形成装置、および放電電極形成方法

【課題】 被帯電物の帯電均一性を向上できる帯電装置、帯電装置を備える画像形成装置、および放電電極形成方法を提供する。
【解決手段】 帯電装置12に、シールドケース34の内部空間に設けられ、複数の突起部36aが一方向に配列され、該突起部36aからイオン流を発生する放電電極36であって、シールドケース34の幅方向から眺めたときに、該シールドケース34の長手方向において隣接する突起部36aから発生するイオン流に重なりが生じるように、突起部36aの幅方向が、該突起部36aの配列方向Cを含む仮想第1平面に対して、配列方向Cを含み前記仮想第1平面に垂直な仮想第2平面上で、所定の角度で傾斜して構成される放電電極を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電方式の帯電装置、帯電装置を備える画像形成装置、および放電電極形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を用いる画像形成装置においては、感光体を帯電させる帯電装置、トナー像を記録用紙に静電的に転写させる転写装置、記録用紙を静電的に剥離させる剥離装置などに、コロナ放電方式の帯電装置(コロナ放電装置)がよく用いられている。
【0003】
コロナ放電装置としては、感光体、記録用紙などの被帯電物に対向する開口部を有するシールドケースと、該シールドケースの内部空間に設けられる放電電極とを備える、所謂コロトロン式のコロナ放電装置が知られている。コロトロン式のコロナ放電装置は、高電圧を印加されることによって、放電電極においてコロナ放電を生じる。コロナ放電によって発生するイオン流は、被帯電物へと向かい、これによって放電電流が生じ、その結果、被帯電物は帯電する。
【0004】
また、コロナ放電装置としては、コロトロン式のコロナ放電装置の構成に、放電電極と被帯電物との間に設けられるグリッド電極を加えた、所謂スコロトロン式のコロナ放電装置も知られている。スコロトロン式のコロナ放電装置は、コロナ放電の際に、グリッド電極に所定の電圧が印加されることによって、被帯電物をより均一に帯電させることができる。しかしながら、コロトロン式、スコロトロン式などのコロナ放電装置は、放電を安定化させるために大量の放電電流を流す必要があり、その結果、大量のオゾンが発生してしまうという問題がある。
【0005】
コロナ放電装置以外の帯電装置としては、半導電性のローラまたはブラシからなる帯電部材を備え、該帯電部材を被帯電物に接触または近接対峙させ、該帯電部材と被帯電物との間に電圧を印加することによって、被帯電物を帯電させる接触帯電装置が知られている。接触帯電装置によれば、放電領域が、被帯電物と帯電部材との接触部近傍に形成される微小空隙に限られるので、コロナ放電装置に比べ、放電電流を少なくすることができる。よって、接触帯電装置は、オゾンの発生量を減少させることができる。
【0006】
しかしながら、接触帯電装置では、被帯電物との接触、電気的ストレスなどによって帯電部材の磨耗、劣化が起こり易く、帯電工程の高速化および帯電部材の長寿命化が難しいという問題がある。また、接触帯電装置では、汚れ、環境条件、経時変化などによる帯電部材の特性変化によって、帯電特性が劣化し易いという問題もある。
【0007】
さらに近年、感光体上で多色画像を重ね合せる技術(IOI:Image On Image)が開発されている。IOIは、複数色の位置ずれが起こり難く、また転写工程が1回で済むため画像劣化を起こし難くいので、高品位な画像形成性能に優れているけれども、IOIでは、接触帯電装置を用いることができない。したがって、IOIでは、非接触でかつ均一性の高い帯電装置が必要とされる。
【0008】
このような事情から、コロトロン式、スコロトロン式などのコロナ放電装置において、オゾン発生量の減少、長寿命化、帯電特性の向上などが図られている。
【0009】
特許文献1は、コロナ放電装置の放電電極を、鋸歯状の放電電極とした帯電装置を開示している。鋸歯状の放電電極のように、先鋭状の突起部を有する放電電極を備えるコロナ放電装置は、該突起部に電界が集中し易く、かつ放電ポイントが少なくなるので、印加する電圧が比較的低電圧でもコロナ放電が可能であり、オゾンの発生を抑制することが可能である。
【0010】
ただし、突起部を有する放電電極を備えるコロナ放電装置では、該突起部の磨耗、放電生成物の付着などによって放電状態のばらつきが引き起こされ、コロナ放電装置の長手方向において、被帯電物の帯電電位にむらが生じ、被帯電物の帯電均一性の低下が起こる場合がある。突起部の摩耗などが生じた場合、帯電均一性の低下を防ぐため、放電し難い状態の突起部からでも必要な放電電流が生じるように、印加電圧条件を高めに設定する。しかしながら、印加電圧を高めると、放電し易い突起部では過多に放電が起こってしまい、被帯電物の帯電に寄与しない不要な放電が起こり、オゾンの発生量が増加してしまう。
【0011】
このような問題を解決する技術として、特許文献2および特許文献3は、鋸歯状の放電電極を突起部ごとに分離し、各突起部と電源との間に電気抵抗体を接続する技術を開示している。このような構成にすると、放電電流量が多い突起部は、接続される電気抵抗体による電圧降下が大きくなるので、印加電圧が小さくなって、コロナ放電が制限される。放電電流量が少ない突起部は、接続される電気抵抗体による電圧降下が小さい分、印加電圧が大きくなってコロナ放電が促される。したがって、特許文献2,3に記載の技術によれば、突起部ごとのイオン流のばらつきが少なくなり、帯電均一性が向上する。さらに、印加電圧を小さくし、放電電流の総量を下げても充分な帯電均一性が得られるので、オゾン発生量を減少させることもできる。なお、コロナ放電装置に電気抵抗体を設ける必要があるので、製造コストは増加する。
【0012】
特許文献4は、スコロトロン式の放電装置において、放電電極の先端部、すなわち放電領域に対向するグリッド電極の開口率を小さくすることによって、イオン流の一部をグリッド電極に吸収させて、帯電均一性を向上させる技術を開示している。特許文献4に記載の技術によれば、簡易かつ低コストで、帯電均一性の向上が図れる。ただし、被帯電物へ向かうイオン流をグリッド電極が吸収してしまう分、被帯電物の帯電電位が低下するという問題がある。
【0013】
特許文献5は、後述する帯電電位のリップルを解消するために、電界規制部材を設けた帯電装置を開示している。特許文献5の段落[0026]には、オゾン発生量を減らし、かつ被帯電物の帯電均一性を向上させるために、放電電極の突起部のピッチを広げることが望ましい旨の記載がある。これを確認するために、放電電極の突起部のピッチが狭い条件および広い条件それぞれにおいて放電試験を行い、被帯電物の帯電電位を測定した。測定は、後述する図2に示すような実験系で行った。グリッド電極のないコロナ放電装置(コロトロン)に突起部のピッチを変えた放電電極を装着し、感光体を帯電させ、感光体表面の帯電電位を、感光体の長手方向に沿って測定した。
【0014】
図8は、放電電極の突起部のピッチと帯電均一性との関係を示す図である。図8(a)に示すような、放電電極A1の突起部のピッチが狭い条件では、図8(b)に示すように、感光体の帯電電位に不規則なばらつきが観察された。また、このときの放電電極A1の突起部を観察すると、図8(a)に示すように、放電による発光A2が起きた突起部と、発光が起きていない突起部とが観察され、放電状態が不均一であることが確認された。このように放電状態が不均一な場合、上述したように放電電流を増加させたり、特許文献3に記載のような狭いグリッド電極を設けたりすることで、実用上支障のない帯電均一性を得ることはできるけれども、不要な放電を行うので、オゾン発生量の増加を招き好ましくない。
【0015】
図8(c)に示すような、放電電極A1の突起部のピッチが広い条件では、図8(d)に示すように、帯電電位にリップルが生じたけれども、不規則な変動ではなく、突起部のピッチ間隔と同程度の周期で生じる規則的な周期変動だった。また、放電時の発光状態を観察したところ、図8(c)に示すように、各突起部において放電による発光A2が観察され、各突起部で比較的安定して放電が起こっていることが確認された。また、ピッチが狭い条件とピッチが広い条件それぞれにおいて、放電電流量を同じ値としてオゾン発生量を比較したところ、突起部のピッチが広い条件ではオゾン発生量が低下していた。なお、ピッチが広い条件において生じる帯電電位のリップルは、グリッド電極を設けても解消することが困難であった。
【0016】
特許文献5によれば、放電電極の先端部と該先端部に隣接する他の先端部との間に、電界規制部材を設けることによって、突起部からのイオン流が被帯電物の長手方向に偏向するので、帯電均一性が向上し、オゾン発生量の軽減と帯電均一性の向上とを両立できるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平6−11946号公報
【特許文献2】特開平5−2314号公報
【特許文献3】特開平8−160711号公報
【特許文献4】特開平7−104549号公報
【特許文献5】特開平11−212335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献5に記載の帯電装置を用いても、依然として帯電電位にむらが生じてしまう。これを以下に説明する。
【0019】
まず、従来のコロナ放電装置を用いて放電試験を行った。図9は、従来のコロナ放電装置による放電の様子を示す図である。従来のコロナ放電装置は、一定間隔で配列される針電極Hを有するスコロトロン式のコロナ放電装置である。針電極Hの先端から所定距離を隔てた位置に、グリッド電極の代わりに、発生したイオン流を着弾させる対向電極Tを設けて、放電試験を行った。放電試験を数10時間行ったところ、対向電極Tの表面には、図9(b)に示すような、楕円状のイオン流の境界跡が確認された。イオン流の境界跡から、図9(a)に示すように、針電極Hの配列方向に垂直な方向にはイオン流は拡散し易いけれども、図9(c)に示すように、針電極Hの配列方向では、隣接する針電極Hから生じたイオン流同士が反発しあうために、イオン流が均一に拡散し難いことがわかった。
【0020】
これから、特許文献1に記載の従来のコロナ放電装置などにおいては、突起部の摩耗、放電生成物の付着などが生じていなくとも、イオン流同士の反発によって、隣接する突起部間の中間位置に対向する箇所において被帯電物の帯電電位が落ち込み、その結果、被帯電物の帯電均一性が低下してしまうことがわかった。また、突起部のピッチを比較的広くしたり、特許文献2,3に記載の帯電装置のように電気抵抗体を挿入したりして、すべての突起部で放電を生じるように構成しても、隣接する突起部間の中間位置に対向する箇所における被帯電物の帯電電位に落ち込みが生じることがわかった。被帯電物の帯電電位の落ち込みは、突起部のピッチを広げるにつれてより顕著になった。
【0021】
次に、特許文献5に記載の帯電装置が上述した被帯電物の帯電電位の落ち込みを解消できていないことを、該帯電装置と同一の構成の装置である、図10に示す帯電装置57を用いた放電試験によって確認した。図10は、被帯電物表面から眺めたときの帯電装置57を表す模式図である。帯電装置57は、複数の突起部55を備え、突起部55の先端を通る直線であって、突起部55の配列方向に垂直な直線Zに対して、左右対称となる位置に、電界規制部材54が設けられる。
【0022】
帯電装置57は、電界規制部材54によって、突起部55から生じるイオン流56を、四方に広げ、やや四角に近い形状に偏向させた。これによって、突起部55から生じるイオン流56は、楕円に広がるイオン流と比べて拡散した。
【0023】
しかしながら、隣接する突起部55から生じたイオン流56は、互いに反発し、帯電装置57の長手方向においては、電界規制部材54を設けない状態よりも拡散しなかった。したがって、被帯電物を帯電装置57の幅方向に相対的に移動させると、イオン流56の境界部分に沿って、被帯電物が相対的に移動することになってしまい、被帯電物には、帯電電位の落ち込み部分が筋状に形成されてしまった。これによって、被帯電物の帯電均一性が低下してしまった。
【0024】
図11は、帯電装置57を用いた場合の、被帯電物の帯電電位分布を表すグラフである。帯電装置57を用いて被帯電物を帯電させると、被帯電物上の突起部55に対向する位置P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7に比べて、P1〜P7間の中点M1,M2,M3,M4,M5,M6付近、すなわち、隣接する突起部間の中間位置に対向する箇所では、被帯電物の帯電電位が低下しているのが確認できる。このように、電界規制部材54を設けた帯電装置57であっても依然として被帯電物には帯電むらが生じることが確認された。
【0025】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、被帯電物の帯電均一性を向上できる帯電装置、帯電装置を備える画像形成装置、および放電電極形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、開口部を有するシールドケースと、
前記シールドケースの内部空間に設けられ、複数の突起部が一方向に配列され、該突起部からイオン流を発生する放電電極であって、前記シールドケースの幅方向から眺めたときに、該シールドケースの長手方向において隣接する突起部から発生するイオン流に重なりが生じるように、前記突起部が、該突起部の配列方向に対する幅方向の角度を所定の角度として傾斜して配列される放電電極とを備えることを特徴とする帯電装置である。
【0027】
また本発明は、前記シールドケースの幅をWとし、
前記放電電極の、前記シールドケースの長手方向において隣接する任意の2つの突起部の、前記所定の角度をそれぞれ角度α、βとし、該2つの突起部の先端間のピッチをpとするとき、
各突起部が同じ方向に傾斜し、かつ、
p<W/{2tan(α)}+W/{2tan(β)}
であるように構成されることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記放電電極のすべての突起部の、前記所定の角度が同じ角度であるように構成されることを特徴とする。
【0029】
また本発明は、前記放電電極を前記シールドケースの内部空間に保持する保持部を備え、
前記放電電極は、板状材料を折り曲げて形成されたものであり、
前記保持部は、前記板状材料を折り曲げて前記放電電極を形成するために用いる折り曲げ部材であることを特徴とする。
【0030】
また本発明は、静電潜像を担持する像担持体と、
前記帯電装置とを備え、
前記帯電装置によって、前記像担持体を帯電させることを特徴とする画像形成装置である。
【0031】
また本発明は、1つの板状材料を折り曲げることによって、前記帯電装置が備える放電電極を形成することを特徴とする放電電極形成方法である。
【0032】
また本発明は、放電電極の突起部の幅方向の一端部を前記板状材料から分離させ、他端部を前記板状材料と繋げたまま折り曲げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、放電電極の突起部は、配列方向に対する幅方向の角度を所定の角度として傾斜して配列される。したがって、各突起部から発生するイオン流は、突起部の配列方向に対して、斜めに偏向する。これによって、隣接する突起部からのイオン流同士の反発によって生じるイオン流の境界部分(イオン流密度低下部分)も斜めに偏向するので、被帯電物がシールドケースの幅方向に相対的に移動する際、該被帯電物の移動方向とイオン流密度低下部分とが沿わないようになる。よって、被帯電物がシールドケースの幅方向へ相対的移動に移動しても、被帯電物上のイオン流密度の不均一とならない。したがって、本発明に係る帯電装置は、被帯電物の帯電均一性を向上できる。
【0034】
また本発明によれば、放電電極は、各突起部が同じ方向に傾斜し、かつ、p<W/{2tan(α)}+W/{2tan(β)}であるように構成される。これによって、イオン流の偏向状態を最適に設定でき、帯電均一性に優れる帯電装置を構成できる。
【0035】
また本発明によれば、放電電極のすべての突起部が、配列方向に対する幅方向の角度が同じ角度となるように構成される。これによって、各突起部から発生するイオン流の反発が抑えられるので、突起部の配列方向において、被帯電物の帯電均一性をより向上できる。
【0036】
また本発明によれば、放電電極は、保持部によって、折り曲げられたまま保持される。したがって、突起部の、配列方向に対する幅方向の角度を精度良く維持することができ、突起部の配列方向において、被帯電物の帯電均一性を維持することができる。
【0037】
また本発明によれば、本発明に係る帯電装置によって像担持体を帯電させるので、高品位な画像を形成することができる。また、本発明に係る画像形成装置は、帯電動作に伴うオゾン発生量を減少させることができる。さらに、本発明に係る帯電装置は簡便な構造で帯電均一性が向上するため、画像形成装置を、低コストで、コンパクトに構成することができる。
【0038】
また本発明によれば、放電電極を、1つの板状材料を折り曲げることによって形成するので、低コストで容易に放電電極を形成することができる。
【0039】
また本発明によれば、突起部の幅方向一端部を板状材料から分離させ、他端部を板状材料と繋げたまま折り曲げることによって、放電電極を形成するので、使用する板状材料の量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】画像形成装置1の断面を模式的に示す概略図である。
【図2】帯電装置12および感光体ドラム11の外観を模式的に表した図である。
【図3】帯電装置12の構成を示す図である。
【図4】放電電極36の形成方法を説明するための図である。
【図5】突起部36aから発生するイオン流の様子を示す図である。
【図6】斜めに偏向したイオン流によって、被帯電物の帯電均一性が向上する作用について説明するための図である。
【図7】放電電極41について説明するための図である。
【図8】放電電極の突起部のピッチと帯電均一性との関係を示す図である。
【図9】従来のコロナ放電装置による放電の様子を示す図である。
【図10】被帯電物表面から眺めたときの帯電装置57を表す模式図である。
【図11】帯電装置57を用いた場合の、被帯電物の帯電電位分布を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に係る画像形成装置の実施形態である画像形成装置1は、像担持体と、本発明に係る帯電装置の第1実施形態である帯電装置12とを備える。図1は、画像形成装置1の断面を模式的に示す概略図である。画像形成装置1は、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、およびブラック(b)の4色のトナー像を順次重ね合わせて多色トナー像を形成し、該多色トナー像を記録媒体に定着させることで画像を形成する、タンデム構成の電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置1は、トナー像形成部2と、中間転写部3と、2次転写部4と、記録媒体供給部5と、定着部6と、スキャナ部7と、図示しない制御ユニット部とを含む。
【0042】
スキャナ部7は、原稿台と、光源と、CCD(電荷結合素子)イメージセンサ9とを含む。原稿台の上面には、複写すべき原稿が載置される。原稿台には、透明ガラスなどの透明性材料からなる板状部材が用いられる。光源は、原稿台に載置される原稿を照明する。CCDイメージセンサ9は、光源によって照明される原稿からの反射光を光電変換することで、反射光を画像情報(アナログ信号)に変換する。
【0043】
CCDイメージセンサ9は、変換部と転送部と出力部とを含む。変換部は、反射光である光信号を電気信号に変換する。転送部は、クロックパルスに同期して、電気信号を順次出力部へ転送する。出力部は、電気信号を電圧信号に変換し、増幅し、低インピーダンス化して出力する。
【0044】
画像形成装置1の全動作を制御する制御ユニット部は、後述するように制御部と演算部と記憶部とを含み、上記のようにして得られたアナログ信号に、公知の画像処理を行ってデジタル信号に変換する。スキャナ部7によって読み取られた原稿の画像情報は、制御ユニット部に送られて各種画像処理が施され、デジタル信号に変換された後、制御ユニット部の記憶部に記憶される。記憶部に記憶された画像情報は、出力指示に応じて記憶部から読み出され、後述する光走査ユニット13に転送される。
【0045】
スキャナ部7によれば、原稿台に載置された原稿は光源によって照明され、照明された原稿からの反射光が、CCDイメージセンサ9によってアナログの画像情報に変換される。アナログ信号の画像情報は、制御ユニット部によってデジタル信号化され、記憶部に記憶される。
【0046】
トナー像形成部2は、可視像形成ユニット10y,10m,10c,10bと、光走査ユニット13とを含む。可視像形成ユニット10y,10m,10c,10bは、後述する中間転写ベルト21の回転駆動方向、すなわち矢符27の方向における上流側からこの順番で一列に配置される。可視像形成ユニット10y,10m,10c,10bは、デジタル信号として入力される各色の画像情報に対応する静電潜像を形成し、静電潜像にトナーを供給して各色のトナー像を形成する。
【0047】
可視像形成ユニット10yは、イエロー(y)の画像情報に対応するトナー像を形成し、可視像形成ユニット10mは、マゼンタ(m)の画像情報に対応するトナー像を形成し、可視像形成ユニット10cは、シアン(c)の画像情報に対応するトナー像を形成し、可視像形成ユニット10bは、ブラック(b)の画像情報に対応するトナー像を形成する。各色に応じて設けられる可視像形成ユニット10y,10m,10c,10bについて、総称する場合は、参照符号として数字のみを付し、色ごとに区別する場合は、各色を表すアルファベットを該数字とともに参照符号として付すこととする。可視像形成ユニット10を構成する各部材についても同様とする。
【0048】
可視像形成ユニット10は、感光体ドラム11と、帯電装置12と、現像部14と、ドラムクリーナ15と、1次転写前帯電部16と、1次転写部22と、感光体除電部33とを含む。
【0049】
感光体ドラム11は、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動可能に支持されるローラ状部材である。感光体ドラム11は感光層を含み、該感光層の表面において、静電潜像ひいてはトナー像を担持する像担持体である。
【0050】
感光体ドラム11には、たとえば、アルミニウムなどからなる導電性基体と、該導電性基体表面に形成される感光層とからなるものを使用できる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性基体を使用でき、その中でも円筒状の導電性基体を好ましく使用できる。感光層としては、有機感光層、無機感光層などが挙げられる。
【0051】
有機感光層としては、電荷発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と、電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層との積層体、または、1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む樹脂層などが挙げられる。無機感光層としては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどから選ばれる1種または2種以上を含む樹脂層が挙げられる。
【0052】
導電性基体と感光層との間には、下地層が介在してもよい。また、感光層の表面には感光層を保護するための表面層(保護層)が設けられてもよい。
【0053】
図2は、帯電装置12および感光体ドラム11の外観を模式的に表した図である。帯電装置12は、感光体ドラム11に臨み、感光体ドラム11の長手方向44に沿って配置される。帯電装置12は、放電素子35と、シールドケース34とを備える。また、帯電装置12は、感光体ドラム11の表面電位を計測する表面電位計45および表面電位プローブ46を備える。なお、表面電位プローブ46および表面電位計45は、帯電装置12の実施形態としては、必須ではない。
【0054】
放電素子35は、高圧電源47と接続される電極である放電電極を備える。放電電極は、複数の突起部を有する。放電電極は、高圧電源47から電圧が印加されることによって少なくとも1の突起部においてコロナ放電を生じる。
【0055】
高圧電源47からの印加電圧は、被帯電物をいずれの極性で帯電させるかによって、その極性が異なるけれども、印加電圧の絶対値としては、4kV〜10kVの範囲内に制御される。また、放電素子35と帯電装置12の他の部材との距離によっても、必要な印加電圧は異なるけれども、トランスコストの観点および安全性の観点から最大値(絶対値)は10kV以下とすることが好ましい。
【0056】
シールドケース34は、感光体ドラム11に臨む壁部に開口部を有する箱状部材である。シールドケース34は、内部空間を有し、該内部空間に放電素子35が設けられる。シールドケース34は、感光体ドラム11の長手方向44とシールドケース34の長手方向とが一致するように配置され、該長手方向に直交する断面形状は略C字状である。
【0057】
シールドケース34は、接地されるか、または図示しない電源と接続される。電源と接続される場合、シールドケース34には、放電電極に印加される電圧と同極性の電圧が印加される。シールドケース34に印加される電圧の絶対値は、0kv〜1kVの範囲内である。
【0058】
本実施形態である帯電装置12は、スコロトロン式の帯電装置であり、放電電極と感光体ドラム11との間に、図示しないグリッド電極が設けられる。グリッド電極は、薄板状の金属からなり、4mm〜12mmの範囲内で、放電電極の突起部から離隔して設けられ、たとえば7mm離隔して設けられる。なお、本発明の実施形態としては、グリッド電極が設けられない、コロトロン式の帯電装置であってもよい。
【0059】
グリッド電極は、厚み方向に貫通するように形成される複数の貫通孔を有し、図示しないバイアス電源と接続される。グリッド電極には、バイアス電源から、放電電極に印加される電圧と同極性の電圧が印加される。印加される電圧の絶対値は、画像形成に必要な値に適宜制御され、範囲としては300V〜1kVである。
【0060】
帯電装置12によれば、高圧電源47から印加される電圧によって、放電電極の突起部においてコロナ放電を生じる。より詳細には、放電電極全体に印加される電流量の絶対値が200μA〜1000μAの範囲内となるように、上記の範囲内で、放電電極への印加電圧が制御される。
【0061】
被帯電物をいずれの極性に帯電させるかによらず、帯電装置12のコロナ放電によって被帯電物に向かうイオン流が生じる。本発明は、放電電極の突起部から生じるイオン流を制御する(偏向させる)帯電装置に係るものであり、被帯電物を帯電させる極性はいずれであってもよい。本発明に係る帯電装置については後に詳述する。
【0062】
光走査ユニット13は、帯電状態にある感光体ドラム11y,11m,11c,11b表面に、各色の画像情報に対応するレーザ光13y,13m,13c,13bをそれぞれ照射し、感光体ドラム11y,11m,11c,11bそれぞれの表面に、各色の画像情報に対応する静電潜像を形成する。光走査ユニット13には、半導体レーザなどを使用できる。
【0063】
現像部14は、現像ローラと、規制ブレードと、現像槽と、攪拌ローラとを含む。現像ローラは、現像槽によって軸線回りに回転可能に支持されるローラ状部材である。現像ローラは、現像槽の、感光体ドラム11に臨む面に形成される開口部から、その一部が外方に向けて突出して感光体ドラム11表面に近接するように設けられる。
【0064】
現像ローラは、図示しない固定磁極を内包しており、該固定磁極によって、現像ローラ表面に現像剤を担持する。現像ローラは、現像ローラと感光体ドラム11との近接部(現像ニップ部)において、担持した現像剤を感光体ドラム11表面の静電潜像に供給する。現像ローラは、感光体ドラム11と逆方向に回転駆動する。したがって、現像ニップ部においては、現像ローラ表面と感光体ドラム11表面とが同じ方向に移動する。
【0065】
現像ローラは、図示しない電源と接続され、該電源から直流電圧(現像電圧)が印加される。これによって、現像ローラ表面の現像剤は、静電潜像に円滑に供給される。
【0066】
規制ブレードは、一端が現像槽によって支持され、他端が現像ローラ表面に対して間隙を有して離隔するように設けられる板状部材である。規制ブレードは、現像ローラ表面に担持される現像剤層の層厚を均一化する。
【0067】
現像槽は、感光体ドラム11に臨む面に開口部が形成され、内部空間を有する容器状部材である。現像槽は、内部空間に攪拌ローラを備え、現像剤を貯留する。現像槽には、現像剤の消費状況に応じて、図示しない現像剤補充部から現像剤が補充される。現像剤としては、この分野で常用されるものを使用できる。現像剤は、トナーのみからなる1成分現像剤であっても、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤であってもよい。
【0068】
攪拌ローラは、現像槽の内部空間において軸線回りに回転駆動可能に支持されるスクリュー状部材である。攪拌ローラは、回転駆動によって、現像槽内の現像剤を現像ローラの表面周辺に送給する。
【0069】
現像部14によれば、現像槽内の現像剤が、攪拌ローラによって現像ローラ表面に送給され、当該表面に現像剤層が形成される。現像剤層は、規制ブレードによって層厚が均一化される。その後、感光体ドラム11との電位差によって、感光体ドラム11表面の静電潜像に現像剤が選択的に供給され、感光体ドラム11表面に画像情報に対応するトナー像が形成される。
【0070】
1次転写前帯電部16は、感光体ドラム11表面に形成されたトナー像を帯電させる帯電装置である。1次転写前帯電部16としては、帯電装置12と同じものを使用できる。
【0071】
1次転写部22は、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。1次転写部22は、中間転写ベルト21を挟んで感光体ドラム11に対向し、かつ中間転写ベルト21の、感光体ドラム11と接する面とは反対側の面に圧接する。1次転写部22には、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面を被覆する導電性層とを含むローラ状部材が用いられる。
【0072】
金属製軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属によって形成される。導電性層は、導電性の弾性体などによって形成される。導電性の弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電剤を含む、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。
【0073】
1次転写部22は、図示しない高圧電源と接続される。1次転写部22には、高圧電源から、感光体ドラム11の表面に形成されるトナー像の帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、感光体ドラム11表面に形成されるトナー像は、中間転写ベルト21の表面に転写される。
【0074】
ドラムクリーナ15は、感光体ドラム11表面のトナー像が中間転写ベルト21に転写した後に、感光体ドラム11表面に残存する現像剤を除去、回収する。
【0075】
感光体除電部33は、ドラムクリーナ15によって現像剤が回収された後の感光体ドラム11を除電する。感光体除電部33にはランプなどの照明装置を用いることができる。
【0076】
トナー像形成部2によれば、帯電装置12によって感光体ドラム11が帯電する。光走査ユニット13は、記憶部に記憶されるデジタル信号の画像情報に対応するレーザ光を、帯電した感光体ドラム11に照射し、静電潜像を形成する。現像部14は、静電潜像に現像剤を供給し、感光体ドラム11表面にトナー像を形成する。トナー像は、1次転写部22によって、中間転写ベルト21に1次転写される。
【0077】
中間転写部3は、転写ベルトクリーナ17と、転写ベルト除電部18と、中間転写ベルト21と、支持ローラ23,24,25とを含む。中間転写ベルト21は、支持ローラ23,24,25の間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材である。中間転写ベルト21は、感光体ドラム11から転写したトナー像を担持しながら、感光体ドラム11と略同一の周速度で矢符27の方向に回転移動する。中間転写ベルト21は、たとえば、167mm/s〜225mm/sで回転移動する。
【0078】
中間転写ベルト21には、たとえば、厚さ100μmのポリイミドフィルムを使用できる。中間転写ベルト21の材料はポリイミドに限定されず、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどの合成樹脂、各種ゴムなどからなるフィルムを使用できる。合成樹脂または各種ゴムからなるフィルム中には、中間転写ベルト21の電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材が配合される。
【0079】
支持ローラ23,24,25は、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。支持ローラ23,24,25には、たとえば、アルミニウム製円筒体(パイプ状ローラ)が用いられる。
【0080】
支持ローラ24は、感光体ドラム11bより中間転写ベルト21の回転駆動方向下流側に設けられる。支持ローラ24は、中間転写ベルト21を介して後述する2次転写ローラ28に圧接し、2次転写ニップ部を形成する。支持ローラ24は、電気的に接地される。支持ローラ24は、中間転写ベルト21を張架する役割とともに、中間転写ベルト21上のトナー像を記録媒体に2次転写させる役割を有する。
【0081】
転写ベルトクリーナ17は、支持ローラ24より中間転写ベルト21の回転駆動方向下流側に設けられる。転写ベルトクリーナ17は、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体に転写された後に、中間転写ベルト21上に残存するトナーを除去する部材である。
【0082】
転写ベルトクリーナ17は、クリーニングブレードと、図示しないトナー貯留容器とを含む。クリーニングブレードは、中間転写ベルト21の、トナー像を担持する面に圧接し、残存トナーなどを掻き取る板状部材である。クリーニングブレードには、たとえば、弾性を有するゴム材料(ウレタンゴムなど)などを使用できる。トナー貯留容器は、クリーニングブレードによって掻き取られたトナーなどを一時的に貯留する容器状部材である。
【0083】
転写ベルト除電部18は、転写ベルトクリーナ17より中間転写ベルト21の回転駆動方向下流側、かつ、感光体ドラム11yより上流側に設けられる。転写ベルト除電部18は、中間転写ベルト21上の残存トナーが転写ベルトクリーナ17によって除去された後に、中間転写ベルト21を除電するブラシ状部材である。
【0084】
中間転写部3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト21のトナー像を担持する面における所定位置に重ね合わされて、多色トナー像が形成される。多色トナー像は、後述するように、2次転写ニップ部において記録媒体に2次転写される。2次転写後、中間転写ベルト21上に残留するトナー、オフセットトナー、紙粉などは転写ベルトクリーナ17によって除去される。残留トナーなどの除去後、中間転写ベルト21は転写ベルト除電部によって除電される。
【0085】
記録媒体供給部5は、レジストローラ19a,19bと、ピックアップローラ20と、記録媒体カセット26とを含む。記録媒体カセット26は記録媒体8を貯留する。記録媒体8には、たとえば、普通紙、コート紙、カラーコピー専用用紙、OHP用フィルム、葉書などがある。記録媒体8のサイズには、A4、A3、B5、B4、葉書サイズなどがある。
【0086】
ピックアップローラ20は、記録媒体8を搬送路Sに1枚ずつ送給するローラ状部材である。レジストローラ19a,19bは互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材である。レジストローラ19a,19bは、中間転写ベルト21上の多色トナー像が2次転写ニップ部に搬送されるのに同期して、2次転写ニップ部に記録媒体8を送給する。
【0087】
記録媒体供給部5によれば、記録媒体カセット26内に貯留される記録媒体8が、ピックアップローラ20によって1枚ずつ搬送路Sに送給され、さらに、レジストローラ19a,19bによって2次転写ニップ部に送給される。
【0088】
2次転写部4は、2次転写前帯電部32と、2次転写ローラ28とを含む。2次転写前帯電部32は、中間転写ベルト21上に担持された多色トナー像を帯電させる帯電装置である。2次転写前帯電部32としては、帯電装置12と同じものを使用できる。
【0089】
2次転写ローラ28は、中間転写ベルト21を介して支持ローラ24に圧接するように設けられるローラ状部材である。2次転写ローラ28は、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動する。2次転写ローラ28は、たとえば、金属製軸体と、当該金属製軸体の表面を被覆する導電性層とを含むローラ状部材が用いられる。
【0090】
金属製軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属によって形成される。導電性層は、導電性の弾性体などによって形成される。導電性の弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電剤を含む、EPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。
【0091】
2次転写ローラ28は、図示しない高圧電源と接続される。2次転写ローラ28には、高圧電源から、中間転写ベルト21上に担持される多色トナー像の帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト21上に担持される多色トナー像は、2次転写ニップ部において、記録媒体8の表面に転写される。
【0092】
2次転写部4によれば、中間転写ベルト21上の多色トナー像は、記録媒体供給部5から送給される記録媒体8に2次転写される。未定着の多色トナー像を担持する記録媒体8は、定着部6に搬送される。
【0093】
定着部6は、排紙部29と、定着ローラ30と、加圧ローラ31とを含む。定着ローラ30は、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動可能に支持されるローラ状部材である。定着ローラ30の内部には、ハロゲンランプなどの加熱部が設けられる。定着ローラ30は、記録媒体8に担持される未定着の多色トナー像を構成するトナーを加熱溶融させて記録媒体8に定着させる。
【0094】
定着ローラ30としては、たとえば、芯金と、弾性体層と、表面層とからなるローラ状部材を使用できる。芯金を形成する金属には熱伝導率の高い金属を使用でき、たとえば、アルミニウム、鉄などが挙げられる。芯金の形状としては、円筒状、円柱状などが挙げられるけれども、芯金からの放熱量が少ない円筒状の方が好ましい。
【0095】
弾性体層を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないけれども、耐熱性に優れるものが好ましい。このような材料の具体例としては、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコーンゴムが好ましい。
【0096】
表面層を構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、トナーの吸着性が低いものであれば特に制限されない。たとえば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0097】
加圧ローラ31は、定着ローラ30の鉛直方向下方において、定着ローラ30に圧接された状態で回転自在に設けられるローラ状部材である。定着ローラ30と加圧ローラ31との圧接部が定着ニップ部である。加圧ローラ31は、定着ローラ30の回転駆動に従動して回転する。加圧ローラ31は、多色トナー像の記録媒体8への加熱定着に際し、溶融状態にあるトナーを記録媒体8に対して押圧することによって、多色トナー像の記録媒体8への定着を促進する。
【0098】
加圧ローラ31としては、たとえば、芯金と、弾性体層と、表面層とからなるローラ状部材が使用できる。芯金、弾性体層および表面層としては、それぞれ、定着ローラ30の芯金、弾性体層および表面層と同じものを使用できる。また、加圧ローラ31の内部には、定着ローラ30と同様に、加熱部が設けられてもよい。排紙部29は、多色トナー像が定着した記録媒体8を貯留するトレイ状部材である。
【0099】
定着部6によれば、記録媒体8に担持される未定着の多色トナー像は加熱溶融し、記録媒体8に定着する。多色トナー像が定着した記録媒体8は、排紙部29に排紙され、画像形成は完了する。
【0100】
画像形成装置1は、図示しない制御ユニット部を含む。制御ユニット部は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における鉛直方向上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御ユニット部の記憶部には、画像形成装置1の鉛直方向上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、記憶部には、各種処理を実行するプログラムが書き込まれる。各種処理とは、たとえば、記録媒体判定処理、付着量制御処理、定着条件制御処理などである。
【0101】
記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1に電気的に接続可能な電気、電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile
Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)レコーダ、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
【0102】
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種処理のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。
【0103】
制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御ユニット部は、前記処理回路とともに主電源を含み、電源は制御ユニット部だけでなく、画像形成装置1内部における各部材にも電力を供給する。
【0104】
次に、本発明に係る帯電装置12について詳細に説明する。図3は、帯電装置12の構成を示す図である。図3(a)はシールドケース34の長手方向に対する帯電装置12の断面を示す図であり、図3(b)はシールドケース34の開口部からシールドケース34の内部空間を眺めたときの図であり、図3(c)は帯電装置12の一部である放電電極36の側面図である。帯電装置12は、放電素子35とシールドケース34とを含み、放電素子35は放電電極36、保持部37、および取付部38を含む。
【0105】
シールドケース34は、金属材料から形成される箱状部材であり、金属材料としては、たとえば、鉄にニッケルめっきを施したものを使用できる。シールドケース34の幅、すなわち、シールドケース34の内部空間の幅Wは、8mm以上30mm以下の範囲内で適宜設定することができ、本実施形態ではW=14[mm]である。シールドケース34の厚さは、0.5mm〜2mmの範囲内で設定できる。
【0106】
取付部38は、放電電極36および保持部37が取り付けられる部材である。取付部38は、シールドケース34の内部空間において、シールドケース34の開口部に対向する内壁の中央部に取り付けられる。取付部38には絶縁性材料を使用でき、たとえば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリルブタジエンスチレン樹脂)などを使用できる。
【0107】
放電電極36は、帯電装置12の長手方向に沿って配列される突起部であって、シールドケース34の開口部に向けて突出する複数の突起部36aと、突起部36aの配列方向Cにおいて、隣接する突起部36a同士を接続する接続部36bとを有する。放電電極36は、突起部36aと接続部36bとによってジグザグ状を成すように配列されて形成される。
【0108】
本実施形態では、放電電極36は、厚さ0.1mm〜0.2mmの板状のステンレス材から形成される。なお、放電電極36の材料としては、ステンレス材に限らず、インコネル、タングステン、銅、鉄などを用いることができる。さらに、放電電極36の表面には、ニッケル、クロム、金、白金めっき、またはニッケルを下地にした金めっき(Ni−Auめっき)などの加工を施してもよい。
【0109】
放電電極36は、突起部36aの幅方向が、配列方向Cを含む仮想第1平面(図3において、配列方向Cを含み、紙面に垂直な平面)に対して、該配列方向Cを含み前記仮想第1平面に垂直な仮想第2平面(図3において、配列方向Cを含み、紙面に平行な平面)上で、突起部36aの幅方向が所定の角度で傾斜して構成される。本実施形態では、各突起部36aの傾斜角度は、すべて同じ角度θである。角度θは、15°以上75°以下の範囲内で適宜設定することができ、本実施形態ではθ=45[°]である。
【0110】
各突起部36a間のピッチpは、1mm以上12mm以下の範囲内で適宜設定することができ、本実施形態ではすべて同一のピッチp=8[mm]である。図8を用いて説明したように、ピッチpが小さ過ぎると、コロナ放電を生じる突起部36aと、生じない突起部36aとが現われるおそれがあるので、好ましくない。また、ピッチpが大き過ぎると、帯電均一性が低下し易いので好ましくない。
【0111】
突起部36aは、矩形部36aaと、該矩形部36aaから突出方向に延びる三角形部36abとからなる。矩形部36aaおよび三角形部36abの厚さは、0.1mm〜0.2mmに設定される。三角形部36abは、先端の曲率半径が10μm〜30μm程度の尖りになるように形成される。三角形部36abの幅は0.5mm〜1mm、突出方向長さは1mm〜4mmに設定される。矩形部36aaの幅は、傾斜角度θおよびピッチpによるけれども、1mm〜30mmに設定され、突出方向長さは2mm〜10mmに設定される。
【0112】
放電電極36は、接続部36bの幅方向と、前記仮想第1平面とが、前記仮想第2平面上で、角度90°をなすように、すなわち、接続部36bの幅方向とシールドケース34の幅方向とが平行となるように構成される。接続部36bは、矩形状であり、厚さは0.1mm〜0.2mmに設定され、幅は、傾斜角度θおよびピッチpによるけれども、1mm〜20mmに設定され、突出方向長さは2mm〜10mmに設定される。
【0113】
ピッチp、傾斜角度θを用いると、矩形部36aaの幅、および接続部36bの幅は、下記式で表わされる。
矩形部36aaの幅 = p/cosθ
接続部36bの幅 = p×tanθ
【0114】
したがって、上記の範囲(p:1mm〜12mm、θ:15°〜75°)の場合、矩形部36aaの幅、および接続部36bの幅の範囲は、
矩形部36aaの幅 : 1mm〜46.4mm
接続部36bの幅 : 0.3mm〜44.8mm
となる。
【0115】
接続部36bの幅を大きく設定する場合、シールドケース34へのリーク防止、および実装を考慮すると、接続部36bの幅に応じて、シールドケース34と接続部36bとの距離を大きく設定する必要が生じる。たとえば、シールドケース34の幅が30mmであるときに、接続部36bの幅を大きく(ピッチpを大きく、かつ傾斜角度θを大きく(60°〜75°))設定する場合、リーク防止の観点などから、接続部36bの幅の上限は、20mm程度となる。なお、実使用上は、ピッチpを大きく設定する場合には、傾斜角度θを小さく設定して、接続部36bの幅を小さくし、リークを防止する。
【0116】
他方、矩形部36aaの幅や接続部36の幅を1mm程度に小さく設定すると(ピッチpを小さく、かつ傾斜角度θを小さく設定すると)、製造の際に放電電極36が破損し易く、また、精度良く傾斜角度θを揃えることが難しくなる。よって、実使用上は、ピッチpを小さく設定する場合には、製造の容易性を考慮して、傾斜角度θを大きく設定する。
【0117】
保持部37は、突起部36aの傾斜角度θを維持するように、シールドケース34の幅方向において、放電電極36を挟持する部材である。保持部37には、絶縁性の材料を使用でき、たとえば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂などを使用できる。
【0118】
放電電極36は、図4に示す板状材料39から形成される。図4は、放電電極36の形成方法を説明するための図である。図4(a)は板状材料39の正面図であり、図4(b)は板状材料39の底面図であり、図4(c)は板状材料39が折り曲げられた様子を示す図である。
【0119】
板状材料39は、板状材料39を折り曲げることによって突起部36aとなる突起予定部39aと、板状材料39を折り曲げることによって接続部36bとなる接続予定部39bとが交互に形成された、1枚の板状材料である。突起予定部39aおよび接続予定部39bはそれぞれ、矩形平板状の金属材料から、エッチングやプレス打ち抜きなどによって形成される。板状材料39には、ハーフエッチング部e1,e2が形成されており、一方面側からエッチングされたハーフエッチング部e1と他方面側からエッチングされたハーフエッチング部e2とが交互に形成される。ハーフエッチング部e1,e2は、エッチングによって形成される溝部であり、溝の深さが、板状材料39の厚み方向において、0.02mm〜0.05mmとなるように形成される。突起予定部39aと接続予定部39bとは、ハーフエッチング部e1およびハーフエッチング部e2を介して接続される。
【0120】
板状材料39を、2つの折り曲げ部材40a,40bによって折り曲げることで、放電電極36を形成することができる。折り曲げ部材40aは、突起部36aの傾斜角度と同一の傾斜角度θで形成される各鋸歯が、突起部36aのピッチpと同一のピッチpで配列された部材である。折り曲げ部材40bは、折り曲げ部材40aと同一形状の部材である。
【0121】
折り曲げ部材40aと折り曲げ部材40bとを互いに逆向きにして、折り曲げ部材40aと折り曲げ部材40bとの間に板状材料39を配置し、折り曲げ部材40aと折り曲げ部材40bとを板状材料39に対して押し込み、鋸歯の先端部によってハーフエッチング部e1,e2をそれぞれ裏側から挟み込むことで、板状材料39がジグザグ状に折れ曲がる。これによって、放電電極36が形成される。このように、放電電極36を、1つの板状材料39を折り曲げることによって形成することで、低コストで容易に放電電極36を形成することができる。なお、板状材料39の厚みが大きい、弾性が高いなどの理由で、折り曲げ部材40a,40bによって板状材料39を折り曲げることが困難な場合は、他の装置などによって適宜折り曲げて、放電電極36を形成すればよい。
【0122】
折り曲げ部材40a,40bは、保持部37として好ましく用いることができる。折り曲げ部材40a,40bを保持部37として用いる場合、折り曲げ部材40a,40bに放電電極36を挟持させた状態で、取付部38に取り付ける。
【0123】
以上のように構成される帯電装置12によって、被帯電物の帯電均一性が向上することを示す。図5は、突起部36aから発生するイオン流の様子を示す図である。図5(a)は、突起部36aから発生したイオン流を突起部36aの幅方向(図3に示す矢符B1の方向)から眺めたときの様子を示し、図5(b)は、突起部36aから発生したイオン流を突起部36aの厚み方向(図3に示す矢符B2の方向)から眺めたときの様子を示し、図5(c)は、突起部36aから発生したイオン流をシールドケース34の開口部から眺めたときのイオン流の様子を示している。図5(a)、図5(b)における矢符はイオン流の広がりを表しており、図5(c)において2点鎖線で示す楕円は各突起部36aから発生するイオン流の境界を表している。
【0124】
図5(a)に示すように、高電位の突起部36aが隣接するために、突起部36aの厚み方向にはイオン流が広がり難い。これに対し、図5(b)に示すように、突起部36aの幅方向では、イオン流は、低電位のシールドケース34へ向かうために、広がり易い。したがって、図5(c)に示すように、各突起部36aから発生するイオン流の境界Iは、その長径方向が、突起部36aの配列方向に対して斜めに偏向した楕円状となる。これによって、以下に示すように、被帯電物の帯電均一性が向上する。
【0125】
図6は、斜めに偏向したイオン流によって、被帯電物の帯電均一性が向上する作用について説明するための図である。図6(a)は、突起部36aから発生したイオン流をシールドケース34の幅方向から眺めたときの様子を示している。図6(a)に示すように、シールドケース34の幅方向からイオン流を眺めると、シールドケース34の長手方向において隣接する突起部36aから発生するイオン流の境界Iに重なりが生じることがわかる。
【0126】
図6(b)は、帯電装置12によるコロナ放電の際の、感光体ドラム11上の、突起部36aに対向する位置におけるイオン流密度を示すグラフである。図6(b)のグラフにおいて、縦軸はイオン流密度を表し、横軸は感光体ドラム11の長手方向における位置を表している。また、横軸において、P,P,Pはそれぞれ、感光体ドラム11上の各突起部36aに対向する位置を表しており、Mab,Mbcはそれぞれ、PとPとの中間位置、PとPとの中間位置を表している。2点鎖線Xは各突起部36aに単独でイオン流を発生させた場合のイオン流密度の分布である。実線Yはすべての突起部36aにイオン流を発生させた場合のイオン流密度の分布であり、実際の帯電工程におけるイオン流分布に相当する。
【0127】
図6(b)に示すように、各突起部36aに単独でイオン流を発生させた場合と比較して、すべての突起部36aにイオン流を発生させた場合では、突起部36a間の中間位置に対向する位置Mab,Mbc近傍において、イオン流密度の極端な低下は起こらず、突起部36aに対向する位置P,P,Pにおけるイオン流密度と略同一の密度のイオン流密度になることがわかる。したがって、感光体ドラム11の長手方向において、イオン流密度は均一になっている。
【0128】
図6(c)は、感光体ドラム11を回転駆動させた状態で、帯電装置12でコロナ放電を行った際の、感光体ドラム11の、長手方向における帯電電位を示すグラフである。図6(c)のグラフにおいて、縦軸は帯電電位を表し、横軸は感光体ドラム11の長手方向における位置を表している。また、横軸において、P,P,Pはそれぞれ、感光体ドラム11上の、各突起部36aに対向する位置を表しており、Mab,Mbcはそれぞれ、PとPとの中間位置、PとPとの中間位置を表している。
【0129】
図6(c)に示すように、感光体ドラム11の帯電電位は均一になった。感光体ドラム11の帯電電位の最大値と最小値との差は、数V程度だった。したがって、帯電装置12によって、被帯電物の帯電均一性が向上することがわかった。
【0130】
このように、帯電装置12においては、突起部36aの幅方向が、該突起部36aの配列方向Cを含む仮想第1平面に対して、配列方向Cを含み前記仮想第1平面に垂直な仮想第2平面上で、所定の角度で傾斜して、放電電極36が構成されるために、各突起部36aから発生するイオン流が、突起部36aの配列方向Cに対して斜めに偏向する。これによって、隣接する突起部36aから発生するイオン流同士の反発によって生じるイオン流の境界部分(イオン流密度低下部分)も斜めに偏向することになる。よって、突起部36aの配列方向Cにけるイオン流密度の分布が均一になる。
【0131】
さらに、感光体ドラム11などの被帯電物がシールドケース34の幅方向に相対的に移動する際、該被帯電物の移動方向とイオン流密度低下部分とが沿わないようになる。よって、被帯電物がシールドケース34の幅方向に相対的に移動しても、被帯電物上のイオン流密度は不均一とはならない。したがって、本発明に係る帯電装置12は、被帯電物の帯電均一性を向上できる。
【0132】
このような帯電装置12を備える画像形成装置1は、帯電装置12によって感光体ドラム11を帯電させることで、高品位な画像を形成することができる。また、画像形成装置1は、帯電動作に伴うオゾン発生量を減少させることができる。さらに、帯電装置12が簡便な構造で帯電均一性を向上させるため、画像形成装置1を、低コストで、コンパクトに構成することができる。
【0133】
なお、帯電装置12において、各突起部36aは、イオン流を斜めに偏向させ、被帯電物の帯電均一性を向上させる構成であれば、それぞれの形状および傾斜角度が多少異なっていても構わないけれども、すべての突起部36aが同一形状で、傾斜角度が同じ角度であるように構成されることが好ましい。これによって、各突起部36aから発生するイオン流の反発が抑えられるので、突起部36aの配列方向において、被帯電物の帯電均一性をより向上できる。
【0134】
また、本発明に係る帯電装置の他の実施形態としては、放電電極36の代わりに、複数の突起部が分離して配列される放電電極を備えてもよい。本実施形態および他の実施形態のように、複数の突起部を有する放電電極は、コロナ放電を生じる放電ポイントが限られるため、オゾンが発生し難いという利点がある。
【0135】
帯電装置12においては、上述したように、保持部37として、折り曲げ部材40a,40bを用いることが好ましい。これによって、突起部36aの傾斜角度を精度良く維持することができ、突起部36aの配列方向において、被帯電物の帯電均一性を維持することができる。また、保持部37と折り曲げ部材40a,40bとを兼用するので、製造コストを削減できる。
【0136】
帯電装置12は、感光体ドラム11を帯電させる装置以外としても使用することができる。たとえば、画像形成装置1に用いられる他の帯電装置である、1次転写前帯電部16および2次転写前帯電部32は、移動する被帯電物を帯電させる装置であるので、帯電装置12を好ましく用いることができる。
【0137】
上述したように、帯電装置12による帯電均一性向上の作用は、放電電極36のうちの、傾斜して配列される突起部36aによって生じるものである。したがって、本発明に係る帯電装置は、放電電極36とは異なる形状であっても、突起部を有し、該突起部が上述したように傾斜して構成される放電電極であれば、放電電極36の代わりに備えることができる。以下に、放電電極36の代わりに備えることが可能な、図7に示す放電電極41について説明する。
【0138】
図7は、放電電極41について説明するための図である。図7(a)は、放電電極41が保持部42および折り曲げ部材40aによって保持されている様子を示している。放電電極41ならびにこれを保持する保持部42および折り曲げ部材40aは、放電電極36および保持部37の代わりに、帯電装置12に備えることができる。
【0139】
放電電極41は、複数の突起部41aと複数の接続部41bと基部41cとを有する。放電電極41の材質は、放電電極36と同一である。基部41cは、シールドケース34の長手方向に延びる矩形状平板である。接続部41bは、基部41cの幅方向一端部に接続され、シールドケース34の長手方向に、突起部41aのピッチと同じ間隔で配列される矩形状平板である。接続部41bの幅は1mm〜10mm、突出方向における長さは2mm〜10mmである。
【0140】
突起部41aは、幅方向の一端部が接続部41bと接続され、他端部が遊端部となっている。遊端部と隣接する接続部41bとの距離は、0.1mm〜0.5mm程度である。突起部41aと接続部41bとの接続部分の突出方向における長さは、接続部41bの該方向における長さによるけれども、接続部41bの長さの半分程度であることが放電電極41の強度上好ましい。突起部41aの形状、ピッチp、および傾斜角度θは、放電電極36の突起部36aの形状、ピッチp、および傾斜角度θと同一である。
【0141】
保持部42は、凹部42aと凸部42bとが交互に繰り返して形成される櫛状の部材である。保持部42と折り曲げ部材40aとによって放電電極41が保持されるとき、保持部42の凸部42bによって、接続部41bおよび基部41cが折り曲げ部材40aに押し付けられる。また、このとき、折り曲げ部材40aの鋸歯によって、突起部41aが保持部42の凹部42aに囲まれて保持される。
【0142】
放電電極41は、板状材料43から形成される。図7(b)は板状材料43の正面図であり、図7(c)は板状材料43の底面図である。板状材料43は、板状材料43を折り曲げることによって突起部41aとなる突起予定部43aと、接続部41bと、基部41cとを有する、1枚の板状材料である。板状材料43は、矩形平板状の金属材料から、エッチングやプレス打ち抜きなどによって形成される。
【0143】
板状材料43は、一方の面側からエッチングされて形成されるハーフエッチング部e3を有し、該ハーフエッチング部e3が、突起予定部43aと接続部41bとの接続部分となる。ハーフエッチング部e3は、エッチングによって形成される溝部であり、溝の深さが、板状材料43の厚み方向において、0.02mm〜0.05mmとなるように形成される。
【0144】
板状材料43を、折り曲げ部材40aと保持部42とによって折り曲げることで、放電電極41を形成することができる。すなわち、保持部42は、折り曲げ部材として用いることができる。このように、放電電極41を、1つの板状材料43を折り曲げることによって形成することで、低コストで容易に放電電極41を形成することができる。また、上記のように、突起部41aの幅方向一端部を板状材料43から分離させ、他端部を板状材料43と繋げたまま折り曲げることによって、放電電極41を形成するので、使用する板状材料43の量を小さくすることができる。
【0145】
さらに、各突起部41aの傾斜角度をすべて同一の角度θとするとき、突起予定部43aのピッチを同一に形成すれば、各突起部41a間のピッチpを同一に形成できるので、ピッチpの管理精度が向上するという利点がある。また、板状材料43を折り曲げる工程は、各突起予定部43aを一方向に折り曲げるのみであるので、簡便かつ作業精度が向上するという利点がある。
【0146】
次に、放電電極36の代わりに放電電極41を備えた帯電装置12について、シールドケース34の幅W、突起部41aのピッチp、および傾斜角度θを変更して、感光体ドラム11の長手方向における帯電電位を測定し、帯電均一性を評価した。感光体ドラム11の帯電電位の測定は図2に示す測定系で行った。傾斜角度θの調整は、折り曲げ部材40aの形状を変えることによって行った。
【0147】
帯電均一性の評価は、画像上に濃度むらとして現れるような帯電電位変動の有無を判断基準にし、評価「◎」は帯電電位変動が無く、非常に良好な状態を示し、評価「○」は帯電電位変動がほとんど無く、良好な状態を示し、評価「△」は帯電電位変動が多少見られ、実用上やや問題がある状態を示し、評価「×」は帯電電位変動が大きく、著しく劣悪な状態を示す。帯電電位変動は、以下の測定条件で測定した。
【0148】
<測定条件>
・感光体
負帯電型OPC、
外径Φ : 30mm、
回転周速度 : 220mm/s、
・帯電装置
放電電流設定値 : −300μA
設定電位 : −650V (グリッドバイアスを調整)
・除電光 : あり
・電位測定系
表面電位測定装置 :Trek社製 Model344
感光体〜プローブ距離 : 1mm
プローブスキャン速度 : 10mm/s
【0149】
帯電均一性の評価基準と帯電電位変動量との関係は、以下のとおりである。
◎ : 帯電電位変動が30V以下である。
○ : 帯電電位変動が30Vを超え、50V以下である。
△ : 帯電電位変動が50Vを超え、100V以下である。
× : 帯電電位変動が100Vを超える。
【0150】
ケース幅W、ピッチp、傾斜角度θ、W/tan(θ)、ならびに帯電均一性の評価結果を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
表1から、傾斜角度θ[°]とケース幅W[mm]とピッチp[mm]との関係が、
<W/tan(θ
を満たすときに、帯電均一性が良好となることがわかる。さらに、傾斜角度θが30°以上のときに、帯電均一性が非常に良好となることがわかる。
【0153】
この結果から、突起部41aから発生したイオン流は、斜めに偏向しながら、シールドケース34の上面および底面まで広がっていると考察される。なぜなら、このような場合において、イオン流をシールドケース34の幅方向から眺めたときに、イオン流の境界部分に重なりが生じるためには、一の突起部41aからシールドケース34の上面に向かうイオン流の、突起部41aの配列方向における長さと、隣接する突起部41aからシールドケース34の底面に向かうイオン流の、突起部41aの配列方向における長さとの和が、ピッチpより大きくなることが十分条件であるからである。
【0154】
本実施形態では、各突起部41aは、傾斜角度をすべて同一の角度θとして形成されるので、一の突起部41aからシールドケース34の上面に向かうイオン流の、突起部41aの配列方向における長さはW/{2tan(θ)}であり、隣接する突起部41aからシールドケース34の底面に向かうイオン流の、突起部41aの配列方向における長さもW/{2tan(θ)}である。したがって、これら2つの値の和は、W/tan(θ)であり、上記関係式p<W/tan(θ)が導かれる。
【0155】
上記の考察から、突起部の傾斜方向が同じ方向であれば、傾斜角度が異なっていても、本発明の効果を発揮できることがわかる。すなわち、突起部の傾斜の方向が同じとき、隣接する任意の2つの突起部の傾斜角度をそれぞれ角度α、βとすると、
<W/{2tan(α)}+W/{2tan(β)}
を満たすように、ピッチpおよび各突起部の傾斜角度を設定することで、イオン流の偏向状態を最適に設定でき、帯電均一性を向上させることができる。
【0156】
また、突起部41aの傾斜角度を30°以上にすると、突起部41aの配列方向において、比較的高密度のイオン流を、突起部41aと隣接する突起部41aとの中間位置にまで広げることができ、これによって、帯電均一性をより向上させることができると考察される。
【符号の説明】
【0157】
1 画像形成装置
11,11b,11c,11m,11y 感光体ドラム
12 帯電装置
34 シールドケース
36,41 放電電極
36a,41a 突起部
36b,41b 接続部
37,42 保持部
38 取付部
39,43 板状材料
39a,43a 突起予定部
39b 接続予定部
40a,40b 折り曲げ部材
41c 基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するシールドケースと、
前記シールドケースの内部空間に設けられ、複数の突起部が一方向に配列され、該突起部からイオン流を発生する放電電極であって、前記シールドケースの幅方向から眺めたときに、該シールドケースの長手方向において隣接する突起部から発生するイオン流に重なりが生じるように、前記突起部が、該突起部の配列方向に対する幅方向の角度を所定の角度として傾斜して配列される放電電極とを備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記シールドケースの幅をWとし、
前記放電電極の、前記シールドケースの長手方向において隣接する任意の2つの突起部の、前記所定の角度をそれぞれ角度α、βとし、該2つの突起部の先端間のピッチをpとするとき、
各突起部が同じ方向に傾斜し、かつ、
p<W/{2tan(α)}+W/{2tan(β)}
であるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記放電電極のすべての突起部の、前記所定の角度が同じ角度であるように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記放電電極を前記シールドケースの内部空間に保持する保持部を備え、
前記放電電極は、板状材料を折り曲げて形成されたものであり、
前記保持部は、前記板状材料を折り曲げて前記放電電極を形成するために用いる折り曲げ部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の帯電装置。
【請求項5】
静電潜像を担持する像担持体と、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の帯電装置とを備え、
前記帯電装置によって、前記像担持体を帯電させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
1つの板状材料を折り曲げることによって、請求項1〜4のいずれか1つに記載の帯電装置が備える放電電極を形成することを特徴とする放電電極形成方法。
【請求項7】
放電電極の突起部の幅方向の一端部を前記板状材料から分離させ、他端部を前記板状材料と繋げたまま折り曲げることを特徴とする請求項6に記載の放電電極形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−95508(P2011−95508A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249504(P2009−249504)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】