説明

帯電装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】帯電ローラーに付着した汚れを均一に除去し良好な画像が得られるとともに、清掃部材の駆動機構を簡素化した帯電装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】帯電装置40は、感光体38を帯電させる帯電ローラー71と、帯電ローラー71の表面に接触して帯電ローラー71を清掃する清掃部材81と、清掃部材81を帯電ローラー71に対して線速差をもって回転駆動させ且つ軸方向に沿って往復駆動させる駆動機構部80と、を備える。駆動機構部80は、清掃部材81に設けられる出力側ギア84に噛合する入力側ギア87と入力側ギア87に対して同軸に設けられるウオーム88とを有する原動軸部材85と、ウオーム88に噛合するウオームホイル97と清掃部材81の軸方向側に押圧されウオームホイル97の回転によって清掃部材81を軸方向に変位させる偏芯カム98とを有するカム部材95と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる帯電装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、帯電ローラーを清掃する機構を有する帯電装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置には、像担持体である感光体の表面を帯電させるために帯電装置が用いられている。帯電装置としては、感光体とコロナワイヤを非接触に配置し、コロナ放電により感光体の表面を帯電させるコロナ帯電方式と、帯電ローラー等の帯電部材を用いて感光体の表面に接触させる接触帯電方式とが知られている。しかし、近年、人体に有害なオゾンの排出量を減らすため、オゾン排出量がより少ない接触帯電方式が採用されることが多くなっている。
【0003】
このような接触帯電方式において帯電ローラーを感光体表面に接触させる場合、感光体表面にトナーの成分や用紙の紙粉等の異物が付着し、その異物が帯電ローラーの表面に移動することがある。帯電ローラー表面に異物が付着すると、感光体表面に帯電不良を発生させるので、印刷の画質に大きな影響を与える原因となる。このような帯電ローラーへの異物の付着を防止するため、従来から、スポンジ等の清掃部材を帯電ローラーの表面に押圧して、帯電ローラーに付着した異物による汚れを拭き取るようにしていた。
【0004】
ところが、清掃部材をスポンジ等の部材により構成すると、帯電ローラーに部分的に拭き残しが発生し、帯電ローラーの筋状の汚れによる帯電不良を防ぐことができずに、印刷画質に影響を与えるという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1では、清掃部材が帯電ローラーに対して線速差をもって回転駆動するとともに、帯電ローラーの軸方向に往復移動することによって、帯電ローラーの汚れを除去している。具体的には、この帯電装置は、清掃部材の一方の軸部にはギアを設けて、このギアがアイドルギアを介して感光体ドラムのギアに噛み合い、感光体ドラムの回転に同期して清掃部材が回転駆動する。また、清掃部材の他方の軸部には軸方向に傾斜した円板状カムを設けて、この円板状カムが装置本体に設けた凹部に嵌まり込み、清掃部材の回転駆動にともない、清掃部材が円板状カムにガイドされて軸方向に往復駆動し、帯電ローラーを清掃している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−24212号公報(段落[0031]〜[0033]、[0038]〜[0042]、第8図、第10図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した先行技術では、清掃部材は1回転すると軸方向に1往復移動して、清掃部材の回転駆動に対して軸方向の往復移動が頻繁に行なわれることになる。このように清掃部材が速く往復移動すると、清掃部材と感光体ドラムとの各ギアを介して連結された感光体に清掃部材の往復移動の振動等が伝わり、感光体の回転駆動トルクが変動するおそれがある。この感光体ドラムのトルク変動によって感光体の線速が不安定となり、画像に帯状の濃度ムラが発生するという問題があった。また、清掃部材を回転駆動する機構と往復駆動する機構とが清掃部材の両側に別設され、清掃部材の駆動機構が複雑になり、また、駆動機構を構成する部品点数が多くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、帯電ローラーに付着した汚れを均一に除去し良好な画像が得られるとともに、清掃部材の駆動機構を簡素化した帯電装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、像担持体を帯電させる帯電ローラーと、前記帯電ローラーの表面に接触して前記帯電ローラーを清掃する清掃部材と、前記清掃部材を前記帯電ローラーに対して線速差をもって回転駆動させ且つ軸方向に沿って往復駆動させる駆動機構部と、を備える帯電装置において、前記駆動機構部は、前記清掃部材に設けられる出力側ギアに噛合する入力側ギアと前記入力側ギアに対して同軸に設けられるウオームとを有する原動軸部材と、前記ウオームに噛合するウオームホイルと前記清掃部材の軸方向に押圧され前記ウオームホイルの回転によって前記清掃部材を軸方向に変位させる偏芯カムとを有するカム部材と、前記清掃部材を前記カム部材の方向に付勢する付勢部材と、を備えることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、原動軸部材が回転駆動すると、入力側及び出力側ギアの回転によって清掃部材は回転するとともに、ウオームとウオームホイルの噛合によってカム部材の偏芯カムは減速して回転し、偏芯カムの変位に応じて、清掃部材はその回転に対して比較的に遅く軸方向に往復移動する。
【0011】
また、第2の発明では、前記偏芯カムは前記付勢部材の付勢力により前記入力側ギアの側面部に圧接されることを特徴としている。
【0012】
また、第3の発明では、前記駆動機構部は、前記帯電ローラーを支持するケース部材内の一端側に回転自在に支持されることを特徴としている。
【0013】
また、第4の発明では、前記入力側ギアは前記像担持体に設けたドラム側ギアに噛合することを特徴としている。この構成によれば、入力側ギアは、清掃部材に設けた出力側ギアに噛合するとともに、駆動源であるドラム側ギアに噛合する。
【0014】
また、第5の発明では、前記ケース部材は、樹脂からなり、前記カム部材の軸部が回転可能に嵌合するとともに一端が開放された長孔部と、前記長孔部の少なくとも一方の内側面から突出して形成され前記軸部の外周面の一部が回転可能に当接する突起部と、前記長孔部の幅方向において少なくとも前記突起部の形成される内側面との間に所定の間隔を隔てて形成される孔部とを有することを特徴としている。
【0015】
また、第6の発明では、前記孔部は、前記長孔部に沿った細長状であり、少なくとも前記突起部に近接する側の面が前記長孔部の開放側に向かうにつれて前記長孔部に接近するように傾いて形成されることを特徴としている。
【0016】
また、第7の発明では、上記の構成の帯電装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、原動軸部材が回転駆動すると、入力側及び出力側ギアの回転によって清掃部材は回転するとともに、ウオームとウオームホイルの噛合によってカム部材の偏芯カムは減速して回転し、偏芯カムの変位に応じて、清掃部材はその回転に対して比較的に遅く軸方向に往復移動する。従って、清掃部材が回転するとともに軸方向にゆっくりと往復移動するので、駆動機構部の回転ムラが発生するおそれがなく像担持体は安定して回転し、帯状の濃度ムラ等の画像不良が発生することなく、帯電ローラーに付着した汚れを良好に除去することができる。更に、清掃部材を駆動させる駆動機構部は、その構成部材が少なくてすみ、簡素な構成となり、装置が大型化することがない。
【0018】
また、第2の発明によれば、付勢部材の付勢力により偏芯カムが入力側ギアの側面部に圧接され、そして偏芯カムが回転すると、清掃部材は軸方向に往復移動するので、偏芯カムに圧接させるカムフォロア等の部材を設けなくてもよく、また、確実に清掃部材を軸方向に往復移動させることができる。
【0019】
また、第3の発明によれば、駆動機構部は前記帯電ローラーを支持するケース部材内の一端側に回転自在に支持されるので、帯電装置が嵩張ることがない。
【0020】
また、第4の発明によれば、入力側ギアは清掃部材に設けた出力側ギアに噛合するとともに駆動源であるドラム側ギアに噛合するので、駆動機構部が大型化することがない。
【0021】
また、第5の発明によれば、カム部材の軸部をケース部材の長孔部に挿入した後、軸部を突起部に対して押し込むと、突起部の近傍が弾性変形するために、カム部材の軸部は、突起部を乗り越えて、長孔部の嵌合部と突起部とによって回転可能に支持される。従って、カム部材をケース部材に簡単に取り付けることができ、且つ、カム部材の軸部をケース部材に確実に支持することができる。
【0022】
また、第6の発明によれば、ケース部材の孔部が長孔部の開放側に向かうにつれて長孔部に接近するように傾いて形成されることで、孔部の近傍の開放側が弾性変形し易くなり、カム部材の軸部をケース部材の突起部に対して押し込むと、軸部が突起部を容易に乗り越える。このために、カム部材の軸部を損傷させることなくケース部材に取り付けることができ、且つ、カム部材の軸部をケース部材に確実に支持することができる。
【0023】
また、第7の発明によれば、帯電ローラーに付着した汚れを均一に除去し良好な画像が得られるとともに、清掃部材の駆動機構部を簡素化した帯電装置を備える画像形成装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態である帯電装置を搭載した画像形成装置の概略構成を示す図
【図2】本実施形態に係る帯電装置を示す斜視図
【図3】本実施形態に係る帯電装置の一部を断面した平面図
【図4】本実施形態に係る帯電装置の支持部材を示す側面図
【図5】本実施形態に係る帯電装置の駆動機構部を示す斜視図
【図6】本実施形態に係る駆動機構部のカム部材を支持する構成を示す平面図
【図7】本実施形態に係るカム部材の支持構成の変形例を示す平面図
【図8】本実施形態に係る帯電装置の駆動機構部を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこの実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0026】
図1は、胴内排紙方式の画像形成装置を示す図である。尚、実線で示した矢印は用紙Pまたは原稿の搬送方向および搬送経路を示し、また、一点鎖線で示した矢印は感光体に照射される光線を示す。
【0027】
画像形成装置10の下部には、カセットタイプの給紙部14が配設されている。給紙部14は上下2段の給紙カセット16a、16bを有し、給紙カセット16a、16bには印刷前の用紙Pが積載して収容されている。給紙カセット16a、16bに収容された用紙Pは、選択された給紙カセット16a(16b)からピックアップローラー18a(18b)により1枚ずつ繰り出され、繰り出された用紙Pは一対の給紙ローラー20a、20bによって用紙搬送路L1へと送り出される。
【0028】
画像形成装置10の右側面には、手差しトレイ22が配設されている。手差しトレイ22が図1に示す閉状態から開操作されて水平位置状態にあると、給紙カセット16a、16bと異なるサイズの用紙Pが手差しトレイ22に載置可能となる。手差しトレイ22に載置された用紙Pは、ピックアップローラー24により1枚ずつ繰り出され、繰り出された用紙Pは、一対の給紙ローラー26a、26bによって用紙搬送路L2へと送り出される。
【0029】
用紙搬送路L1は、複数の搬送ローラー28を備え、給紙カセット16a、16bの左方に配置されている。給紙カセット16a、16bから送り出された用紙Pが、用紙搬送路L1の各搬送ローラー28によって上方に搬送され、画像転写部36に送られる。用紙搬送路L2は、複数の搬送ローラー30を備え、手差しトレイ22の左方に配置されている。手差しトレイ22から送り出された用紙Pが、用紙搬送路L2の搬送ローラー30によって略水平に搬送され、画像転写部36に送られる。
【0030】
画像転写部36の用紙搬送方向上流側には、レジストローラー32が配設されている。レジストローラー32は、用紙Pにトナー像を転写するタイミングと同期をとって、画像転写部36に向けて用紙Pを送り出す。
【0031】
画像形成装置10の上部には、原稿給送読取器37が配設されている。原稿のコピーを行う場合、原稿が原稿給送部に載置され、載置された原稿が1枚ずつ分離して原稿給送部から原稿読取部に送り出され、原稿読取部によって原稿の画像データが読み取られる。
【0032】
画像形成装置10の略中央部には、画像形成部34が配設されている。画像形成部34は、像担持体である感光体38を備え、更に、感光体38の周辺にその回転方向に沿って順に、帯電装置40と、露光器42と、現像器44と、転写ローラー48、及びクリーニング器46を備える。
【0033】
感光体38の表面が帯電装置40によって所定の極性および電位で一様に帯電されると、 露光器42は、原稿給送読取器37によって読み取られた原稿の画像データに基づいて、感光体38上に原稿画像の静電潜像を形成する。
【0034】
現像器44は、帯電したトナーを感光体38の表面に供給し、感光体38上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。トナー像は画像転写部36の転写ローラー48によって用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは、用紙搬送路L3を通って、定着部50へと搬送される。用紙Pにトナー像が転写された後、感光体38の表面に残留する残留トナーがクリーニング器46によってクリーニングされ回収される。
【0035】
定着器50は、熱源を内蔵する熱ローラー52と、熱ローラー52を加圧する加圧ローラー54とを備える。トナー像を転写された用紙Pが熱ローラー52と加圧ローラー54によって加圧加熱され、用紙P上のトナー像が溶融定着される。トナー像が定着された用紙Pは、一対の排出ローラー58a、58bによって胴内排紙部60に排出される。
【0036】
トナー像が定着された用紙Pは、必要に応じて、経路切り替えガイド56によって搬送方向を切り替えられ、搬送ローラー64a、64bによってスタックトレイ62上に排出される。また、両面印刷を行う場合には、胴内排紙部60に排出させる途中において、用紙Pの後端が切り替えガイド56を通過したタイミングで排出ローラー58a、58bを逆回転させて、経路切り替えガイド56、66を用紙搬送路L4側に切り替える。これによって、用紙Pは、用紙搬送路L4の各搬送ローラー68の間を通って、用紙搬送路L1からレジストローラー32に搬送される。その後、画像転写部36で用紙Pの裏面にもトナー像が転写されると、用紙Pは定着部50によって再度定着され排出される。
【0037】
次に、上述の画像形成装置10に用いられる帯電装置40について図2〜図4を用いて説明する。図2は帯電装置を示す斜視図であり、図3は帯電装置の左側を断面した平面図であり、図4は支持部材を模式的に示す側面図である。尚、図3は図2の帯電装置40の裏面側を示す平面図である。
【0038】
図2に示すように、帯電装置40は、帯電ローラー71と、清掃部材81と、駆動機構部80と、前記の帯電ローラー71と清掃部材81と駆動機構部80とを収容するケース部材91とを備える。
【0039】
帯電ローラー71は、金属製の芯金の周面にゴム等の弾性層を形成した導電性ゴムローラーからなり、感光体38に所定のニップ圧で圧接されており、感光体38の回転にともない従動回転する。
【0040】
清掃部材81は、帯電ローラー71に付着しているトナーや用紙の紙粉等を除去するものであり、ゴムや樹脂のスポンジ状のローラーからなり、帯電ローラー71と同様に軸方向に延び帯電ローラー71の上方でその表面に接触している。また、清掃部材81は回転可能に支持されるとともに帯電ローラー71の軸方向に移動可能に支持される。尚、清掃部材81は導電性のナイロン等樹脂でブラシ状に形成してもよい。
【0041】
ケース部材91は、非導電性を有する樹脂で帯電ローラー71の軸方向に長く延びる箱状に形成され、ケース部材91の一側面には開口部91hが形成される。この開口部91hに後述するバネ部材の一端が対向して、バネ部材の一端が装置本体の電源に接続された給電用の端子に圧接され、帯電ローラー71に所定の電圧を印加することが可能になる。
【0042】
駆動機構部80は、ケース部材91内の一端側に配設され、感光体38の一端側に設けたドラム側ギア39に接続される。感光体38が回転すると、ドラム側ギア39の回転駆動力によって、駆動機構部80は清掃部材81を帯電ローラー71に対して線速差をもって回転駆動させるとともに、軸方向に沿って往復駆動させる。これによって、帯電ローラー71に付着しているトナーや用紙の紙粉等が除去される。
【0043】
図3に示すように、帯電装置40は、前述の帯電ローラー71、清掃部材81、駆動機構部80、ケース部材91の他に、一対の支持部材92(右側の支持部材92は不可視)と、第1バネ部材75と、一対の第2バネ部材76(右側の第2バネ部材76は不可視)とを備え、これらの各部材はケース部材91内に収容される。
【0044】
一対の支持部材92は、帯電ローラー71の軸方向の両端部側に設けられ、帯電ローラー71に設けた回転軸74を回転自在に支持するとともに、清掃部材81に設けた軸部材83を回転自在で且つ軸方向に移動自在に支持する。一方の支持部材92(図3の左側の支持部材92)の外側には第1バネ部材75が配設され、他方の支持部材92(図3の右側の支持部材92、不可視)の外側には駆動機構部80が配設される。
【0045】
第1バネ部材75は、コイルスプリングからなり、清掃部材81の軸部材83の端部に当接して清掃部材81を駆動機構部80側に押圧する。
【0046】
図4に示すように、一対の第2バネ部材76は、コイルスプリングからなり、支持部材92の上部に当接するとともにケース部材91内の上壁に当接して、支持部材92を介して帯電ローラー71を感光体38表面側に付勢している。また、支持部材92には、清掃部材81の軸部材83を回転自在に支持する軸受け孔92bが形成される。更に、支持部材92には、下側の欠けた半円形の軸受け部92aが形成され、支持部材92が第2バネ部材76に付勢されても、軸受け部92aは帯電ローラー71の回転軸74を軸受けすることになる。更に、支持部材92には、ケース部材91の内壁に当接する当接面92dが形成され、この当接面92dのケース部材91の内壁への当接によって、支持部材92が図4の左右方向に移動しないようになっている。
【0047】
従って、この第2バネ部材76の付勢力によって、帯電ローラー71が感光体38の表面に均一に圧接され、感光体38の回転にともない帯電ローラー71が従動回転するとともに、清掃部材81が帯電ローラー71に接触する。
【0048】
また、支持部材92は導電性を有する樹脂で形成され、更に、一方の第2バネ部材76の一端は、ケース部材91の開口部91h(図2参照)まで延設されて、装置本体の電源に接続された給電用の端子(図略)に圧接している。これによって、支持部材92、回転軸74を介して帯電ローラー71に所定の電圧を印加することが可能になる。尚、一方の第2バネ部材76に替えて、第1バネ部材75(図3参照)を介して帯電ローラー71に電源を供給するようにしてもよい。
【0049】
次に、図5〜図8を用いて駆動機構部80を説明する。図5は駆動機構部を示す斜視図である。また、図6は駆動機構部のカム部材を支持する構成を示す平面図であり、図7はカム部材の支持構成の変形例を示す平面図である。図8は駆動機構部を示す側面図である。尚、図5は感光体側から見た斜視図であり、図8はケース部材を省略し駆動機構部を示している。
【0050】
図5に示すように、駆動機構部80は、帯電ローラー71と同じ方向に延びて配置される原動軸部材85と、原動軸部材85に交差して配置されるカム部材95とを備える。
【0051】
原動軸部材85は、ケース部材91に回転自在に支持される軸部86と、軸部86の周りに形成される入力側ギア87と、入力側ギア87に対して同じ軸芯で隣接して配置されるウオーム88と、を有する。入力側ギア87は清掃部材81の軸部材83(図8も参照)に設けられる出力側ギア84に噛合している。入力側ギア87と出力側ギア84は平歯車からなる。
【0052】
カム部材95は、ケース部材91に回転自在に支持される軸部96と、原動軸部材85のウオーム88に噛合し軸部96の周りに形成されるウオームホイル97と、ウオームホイル97と同じ軸芯で隣接して配置される偏芯カム98と、を有する。
【0053】
図6に示すように、カム部材95の軸部96は、ケース部材91に形成された長孔部91aと突起部91dに回転自在に支持される。
【0054】
長孔部91aは、カム部材95の軸部96の外径より僅かに大きい幅を有して、ケース部材91の端面から延びる長孔にて形成される。長孔部91aの奥には、嵌合部91bが形成され、長孔部91aの一方の内側面91cには突起部91dが形成される。
【0055】
嵌合部91bは、カム部材95の軸部96の外径より僅かに大きい半円形をなし、カム部材95の軸部96を回転可能に支持する。
【0056】
突起部91dは、長孔部91aの内側面91cから円弧状に突出して形成され、カム部材95の軸部96bが嵌合部91bに嵌っているときに、軸部96の一部に当接する。従って、カム部材95の軸部96は、嵌合部91bと突起部91dによって回転可能に支持される。
【0057】
ケース部材91の突起部91dの近傍には、孔部91eが形成される。孔部91eは、突起部91dに対向する位置を含んで長孔部91aと並列して延びる貫通孔で形成される。突起部91dの近傍の対向する位置に孔部91eを形成することで、突起部91dと孔部91eとの間の樹脂部分の幅を小さくして弾性変形可能になるようにしている。尚、孔部91eは、突起部91dの近傍の対向する位置に形成されるのであれば、長孔であっても丸孔であってもよい。
【0058】
カム部材95をケース部材91に組み立てる場合、カム部材95の軸部96をケース部材91の長孔部91aに挿入した後、軸部96を突起部91dに対して押し込むと、突起部91dの樹脂部分が孔部91e側に弾性変形するために、軸部96は、突起部91dを乗り越え嵌合部91bに嵌まる。軸部96が嵌合部91bに嵌った状態では、突起部91dは元の位置に戻り軸部96の一部に当接することで、カム部材95の軸部96はケース部材91に回転可能に支持される。
【0059】
図7はケース部材91の孔部91eの変形例である。孔部91eは、突起部91dの近傍で円弧形の突起部91dに対向する位置に形成される細長状の貫通孔である。さらに、孔部91eは、長孔部91aの開放側(図7の下側)に向かうにつれて長孔部91aに接近するように傾く傾斜面91fを有する。従って、突起部91dと孔部91eとの間の樹脂部分は、長孔部91aの嵌合部91b側では幅が広く、一方、長孔部91aの開放側では幅が狭くなる。この構成によって、突起部91dと孔部91eとの間の開放側の樹脂部分は弾性変形し易くなり、軸部96を突起部91dに対して押し込むと、軸部96が突起部91dを乗り越え易くなるとともに、軸部96が嵌合部91bに嵌ると、嵌合部91bと突起部91dによって軸部96は確実に支持されることになる。尚、上記変形例では、孔部91eは、傾斜面91fの他方の面が長孔部91aに対して平行な面で形成されているが、これに替えて、他方の面を傾斜面91fと平行である面に形成してもよい。
【0060】
尚、上記カム部材95の支持構成では、ケース部材91の突起部91d及び孔部91eは、長孔部91aの一方の内側面91c側に設ける構成を示したが、これに替えて、長孔部91aの両方の側面に設ける構成にしてもよい。この場合には、突起部91dの側面からの突出量は、上記の実施形態より小さくしておくとよい。
【0061】
図8に示すように、偏芯カム98はその軸芯から外周縁までの距離が周上において異なる。つまり、偏芯カム98の単位回転角当りに対して外周縁までの距離が一定の割合で長くなり、180度の回転角で最も長くなり、180度を超えると、逆に外周縁までの距離が一定の割合で短くなるように形成されている。この回転角に対する外周縁までの距離の変位は清掃部材81の往復移動の片側移動量に応じて設定される。
【0062】
また、偏芯カム98の外周縁は出力側ギア84の側面部84aに対向するように配置され、そして、出力側ギア84は第1バネ部材75(図3参照)によって偏芯カム98側に押圧されているので、偏芯カム98の外周縁は出力側ギア84の側面部84aに常に当接することになる。このため、偏芯カム98が回転すると、偏芯カム98の位相に応じて出力側ギア84は第1バネ部材75(図3参照)の付勢力に抗して軸方向に移動し、軸部材83を介して清掃部材81は軸方向に移動する。偏芯カム98が半回転すると、清掃部材81は軸方向の一端側から他端側に移動し、更に偏芯カム98が半回転すると、逆に清掃部材81は軸方向の他端側から一端側に移動するので、偏芯カム98が1回転すると清掃部材81は1回往復移動することになる。
【0063】
このように、出力側ギア84と清掃部材81との間に設けた軸部材83は、出力側ギア84の軸方向移動にともない、支持部材92に設けた軸受け孔92b内で軸方向に摺動する。また、出力側ギア84が入力側ギア87によって回転させられると、出力側ギア84の軸部材83は支持部材92の軸受け孔92b内で回転する。尚、入力側ギア87は、出力側ギア84に噛合するとともに、感光体38に設けた平歯車からなるドラム側ギア39に噛合する。
【0064】
上述のように、支持部材92は軸受け孔92b内に清掃部材81の軸部材83を回転及び摺動自在に支持し、また、その軸受け部92a内に帯電ローラー71の回転軸74を回転自在に支持している。軸受け部92aは下側の欠けた半円形(図4も参照)に形成されているために、帯電装置40の近傍に配設された現像器44(図1参照)からトナーが飛散し、そのトナーが帯電ローラー71の回転軸74に付着するおそれがある。帯電ローラー71の回転軸74にトナーが付着すると帯電ローラー71の滑らかな回転が得られなくなるので、それを防ぐためにカバー部材99が回転軸74に配設される。
【0065】
カバー部材99はカバー部99aと保持部99bとを有して樹脂で形成される。カバー部99aは、支持部材92の半円形の軸受け部92aに対向し、更に回転軸74の下側で軸受け部92aの左右側に延びて回転軸74を被うように半円形状に形成される。保持部99bはカバー部99aの帯電ローラー71側に連設され回転軸74に嵌合している。保持部99bは回転軸74に嵌装されることで、カバー部99aが回転軸74の下側を被うようにカバー部材99が保持される。尚、第2バネ部材76は、支持部材92の上部から突出して形成したバネ受け92cに嵌めこまれて、支持部材92に保持されている。
【0066】
このような駆動機構部80を備える帯電装置40において、感光体38(図2参照)が回転すると、帯電ローラー71は、一対の第2バネ部材76の付勢力によって感光体38の表面に均一に圧接され、従動回転する。また、感光体38の回転にともないドラム側ギア39が回転すると、ドラム側ギア39に噛合する入力側ギア87が回転する。入力側ギア87の回転駆動は出力側ギア84に伝達され、この回転駆動によって清掃部材81は支持部材92の軸受け孔92bに支持されて回転する。
【0067】
また、入力側ギア87の回転駆動はウオーム88に伝達され、ウオーム88に噛合するウオームホイル97は減速されて回転し、偏芯カム98も一体に減速して回転する。ここで、ウオーム88とウオームホイル97との減速比が1/Nであると、入力側ギア87の回転によって、出力側ギア84がN回転する期間に、ウオームホイル97とともに偏芯カム98は1回転することになる。尚、ここでは、入力側ギア87と出力側ギア84は等速回転としている。
【0068】
このように偏芯カム98が回転すると、偏芯カム98が出力側ギア84の側面部84aに押圧されているので、出力側ギア84は軸方向に往復移動し、更に清掃部材81は支持部材92の軸受け孔92bに支持されて軸方向に往復移動する。従って、清掃部材81は帯電ローラー71に接触しながらN回転すると同時に軸方向に1往復することになる。
【0069】
上記実施形態によれば、帯電装置40は、感光体38を帯電させる帯電ローラー71と、帯電ローラー71の表面に接触して帯電ローラー71を清掃する清掃部材81と、清掃部材81を帯電ローラー71に対して線速差をもって回転駆動させ且つ軸方向に沿って往復駆動させる駆動機構部80と、を備える。駆動機構部80は、清掃部材81に設けられる出力側ギア84に噛合する入力側ギア87と入力側ギア87に対して同軸に設けられるウオーム88とを有する原動軸部材85と、ウオーム88に噛合するウオームホイル97と清掃部材81の軸方向側に押圧されウオームホイル97の回転によって清掃部材81を軸方向に変位させる偏芯カム98とを有するカム部材95と、を備える。
【0070】
この構成によると、原動軸部材85が回転駆動すると、入力側及び出力側ギア87、84の回転によって清掃部材81は回転するとともに、ウオーム88とウオームホイル97の噛合によってカム部材95の偏芯カム98は減速して回転し、偏芯カム98の変位に応じて、清掃部材81はその回転に対して比較的に遅く軸方向に往復移動する。従って、清掃部材81が回転するとともに軸方向にゆっくりと往復移動するので、駆動機構部80の回転ムラが発生するおそれがなく感光体38は安定して回転し、帯状の濃度ムラ等の画像不良が発生することなく、帯電ローラー71に付着した汚れを良好に除去することができる。更に、清掃部材81を駆動させる駆動機構部80は原動軸部材85とカム部材95からなり、その構成部材が少なくてすみ、簡素な構成となり、装置が大型化することがない。
【0071】
また、上記実施形態によれば、第1バネ部材75により偏芯カム98が出力側ギア84の側面部84aに圧接され、そして偏芯カム98が回転すると、清掃部材81は軸方向に往復移動するので、偏芯カム98に圧接するカムフォロア等の部材を設けなくてもよく、また、確実に清掃部材81を軸方向に往復移動させることができる。
【0072】
また、上記実施形態によれば、駆動機構部80は、帯電ローラー71を支持するケース部材91内の一端側に回転自在に支持されることによって、帯電装置40が嵩張ることがない。
【0073】
また、上記実施形態によれば、入力側ギア87は清掃部材81に設けた出力側ギア84に噛合するとともに駆動源であるドラム側ギア39に噛合するので、駆動機構部80が大型化することがない。
【0074】
また、上記実施形態によれば、ケース部材91は、樹脂からなり、カム部材95の軸部96が回転可能に嵌合するとともに一端が開放された長孔部91aと、長孔部91aの少なくとも一方の内側面91cから突出して形成され軸部96の外周面の一部が回転可能に当接する突起部91dと、長孔部91aの幅方向において少なくとも突起部91dの形成される内側面91cとの間に所定の間隔を隔てて形成される孔部91eとを有する。
【0075】
この構成によると、カム部材95の軸部96をケース部材91の長孔部91aに挿入した後、軸部96を突起部91dに対して押し込むと、突起部91dの近傍が弾性変形するために、カム部材95の軸部96は、突起部91dを乗り越えて、長孔部91aの嵌合部91bと突起部91dとによって回転可能に支持される。従って、カム部材95をケース部材91に簡単に取り付けることができ、且つ、カム部材95の軸部96をケース部材91に確実に支持することができる。
【0076】
また、上記実施形態によれば、ケース部材91の孔部91eは、長孔部91aに沿った細長状であり、少なくとも突起部91dに近接する側の面91fが長孔部91aの開放側に向かうにつれて長孔部91aに接近するように傾いて形成される。
【0077】
この構成によると、ケース部材91の孔部91eが長孔部91aの開放側に向かうにつれて長孔部91aに接近するように傾いて形成されることで、孔部91eの近傍の開放側が弾性変形し易くなり、カム部材95の軸部96をケース部材91の突起部91dに対して押し込むと、カム部材95の軸部96が突起部91dを容易に乗り越える。このために、カム部材95の軸部96を損傷させることなくケース部材91に取り付けることができ、且つ、カム部材95の軸部96をケース部材91に確実に支持することができる。
【0078】
尚、上記実施形態では、押圧されることによって偏芯カム98が出力側ギア84の側面部84aに当接する構成を示したが、本発明はこれに限らず、押圧されることによって偏芯カム98が清掃部材81の軸部材83に当接するようにしてもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる帯電装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、帯電ローラーを清掃する機構を有する帯電装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 画像形成装置
38 感光体(像担持体)
39 ドラム側ギア
40 帯電装置
71 帯電ローラー
74 回転軸
75 第1バネ部材(付勢部材)
76 第2バネ部材
80 駆動機構部
81 清掃部材
83 軸部材
84 出力側ギア
84a 側面部
85 原動軸部材
86 軸部
87 入力側ギア
88 ウオーム
91 ケース部材
91a 長孔部
91b 嵌合部
91c 内側面
91d 突起部
91e 孔部
91f 傾斜面
92 支持部材
92a 軸受け部
92b 軸受け孔
92d 当接面
95 カム部材
96 軸部
97 ウオームホイル
98 偏芯カム
99 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を帯電させる帯電ローラーと、前記帯電ローラーの表面に接触して前記帯電ローラーを清掃する清掃部材と、前記清掃部材を前記帯電ローラーに対して線速差をもって回転駆動させ且つ軸方向に沿って往復駆動させる駆動機構部と、を備える帯電装置において、
前記駆動機構部は、前記清掃部材に設けられる出力側ギアに噛合する入力側ギアと前記入力側ギアに対して同軸に設けられるウオームとを有する原動軸部材と、前記ウオームに噛合するウオームホイルと前記清掃部材の軸方向に押圧され前記ウオームホイルの回転によって前記清掃部材を軸方向に変位させる偏芯カムとを有するカム部材と、前記清掃部材を前記カム部材の方向に付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記偏芯カムは前記付勢部材の付勢力により前記入力側ギアの側面部に圧接されることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記駆動機構部は、前記帯電ローラーを支持するケース部材内の一端側に回転自在に支持されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記入力側ギアは前記像担持体に設けたドラム側ギアに噛合することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の帯電装置。
【請求項5】
前記ケース部材は、樹脂からなり、前記カム部材の軸部が回転可能に嵌合するとともに一端が開放された長孔部と、前記長孔部の少なくとも一方の内側面から突出して形成され前記軸部の外周面の一部が回転可能に当接する突起部と、前記長孔部の幅方向において少なくとも前記突起部の形成される内側面との間に所定の間隔を隔てて形成される孔部とを有することを特徴とする請求項3に記載の帯電装置。
【請求項6】
前記孔部は、前記長孔部に沿った細長状であり、少なくとも前記突起部に近接する側の面が前記長孔部の開放側に向かうにつれて前記長孔部に接近するように傾いて形成されることを特徴とする請求項5に記載の帯電装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の帯電装置が搭載された画像形成装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−227456(P2011−227456A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23115(P2011−23115)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】