説明

帯電装置及び電子写真装置

【課題】オゾンの発生量を増加させることも、また、画像形成装置を大型化することもなく、高速機において感光体を所定の電位に帯電させることのできる帯電装置、電子写真装置を提供する。
【解決手段】本発明の帯電装置は、1本のチャージャー線とメッシュ状のグリッド電極43とを備えている。このグリッド電極43は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域52及び密領域53を有している。また、これら粗領域52と密領域53とが感光体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されていると共に、粗領域52と密領域53との境界が、感光体表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも感光体の回転方向上流側の位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に搭載され、静電潜像担持体である感光体の表面を帯電させる帯電装置、及び該帯電装置を備える電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に搭載される、静電潜像担持体である感光体の表面を帯電させる帯電装置には、帯電ローラや帯電ブラシ等を用いる接触帯電方式と、コロナ帯電に代表される非接触帯電方式とに分類される。
【0003】
接触帯電方式は、感光体にローラやブラシ等の帯電部材を直接接触させて電子を付着させるため、帯電を効率よく行うことができ、帯電部材に印加する電圧が低くて済む上、環境汚染の原因となるオゾンの発生も極めて少なく、エコロジー対策の点からも優れている。
【0004】
しかしながら、接触帯電方式は、感光体と接触部材とが接触する、通常3〜5mm幅位のニップ領域でしか電圧を印加することができず、印加領域が狭いといった欠点がある。そのため、低速機では感光体を所定の電位にまで帯電させることはできるが、高速機では感光体を所定の電位にまで到達させることが困難である。また、帯電部材が感光体に直接接触しているため、接触部材のごみ等が付着し易く、高速機では、付着物による感光体表面の傷つきの問題が大きい。
【0005】
他方、非接触帯電方式は、コロナ放電を用いるため、接触帯電方式に比して必然的に高電圧を要し、オゾンの発生はあるものの、印加領域を広く確保できるといったメリットがある。そのため、高速機においても感光体の表面を所定電位に帯電することが可能である。また、感光体には直接接触しないので、感光体の表面を傷つける惧が少ない。
【0006】
ここで、本発明の説明図である図3を参照して、コロナ帯電を用いた帯電装置の構成を簡単に説明する。図3に示すように、該帯電装置では、高電圧が印加されるチャージャー線41を有している。チャージャー線42は、チャージャーケース42内に保持され、シールドされている。チャージャーケース42は、感光体と対向する面が開放されており、該開放された面を介してチャージャー線41が感光体と対向するように配される。チャージャー線41は、感光体の回転方向と直交する方向を軸方向として配される。
【0007】
このような構成では、印加領域はチャージャーケースの幅(感光体の回転方向の幅)によって決まる。チャージャーケースの幅は、内部に備えるチャージャー線の本数を増加させることで、大きくすることができる。
【0008】
ところで、コロナ帯電には、コロトロン帯電とスコロトロン帯電とがある(例えば、特許文献1)。コロトロン帯電とスコロトロン帯電との違いは、グリッド電極の有無にある。図3で示した帯電装置は、スコロトロン帯電であり、チャージャー線41と感光体との間に、バイアス電圧が印加されるメッシュ状のグリッド電極43が配置されている。
【0009】
グリッド電極が配置されていないコロトロン帯電では、高圧電源を印加されたチャージャー線が振動するために感光体とチャージャー線との距離が印加工程中変化してしまい、感光体の回転方向と直交する方向において帯電電位にバラ付きが発生する。
【0010】
これに対し、グリッド電極が配置されたスコロトロン帯電では、高圧電源を印加されたチャージャー線が振動しても、感光体とグリッド電極に印加されたバイアス電圧にてグリッド電極を通過するチャージャー線からの電流が吸い取られて帯電電位が規制され、感光体の表面電位は飽和し、均一になる。
【0011】
感光体の帯電電位となる上記飽和値は、グリッド電極に印加される電圧によって制御することができる。チャージャー線に高圧電源が印加されることで発生する放電電位をA、グリッド電極に印加されるバイアス電圧をBとした場合、A>BではBとなり、A≦BではB未満となる。スコロトロン帯電はコロトロン帯電に比べて構造が複雑で帯電効率も劣るが、帯電電位の均一性に優れ、コロナ帯電においては主流となっている。
【0012】
上記グリッド電極としては、SUS(厚み0.1mm)等の導電性の薄板に、スリットや六角形等の多角形の開口を複数、エッチング等の手法にて形成したものが用いられている。
【0013】
そして従来、グリッド電極の目開きは、開口としてスリットを有するタイプのものであれば、スリット幅1.0mm〜1.4mm、スリットピッチが1.16mm〜1.56mm程度のものが多用されている。また、開口として六角形の開口を有するタイプのものであれば、開口の外接円の径2.5mm〜3.4mm、円のピッチ2.75mm〜3.65mm程度のものが多用されている。
【特許文献1】特開平10−142904(公開日:1998年5月29日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、高速印字の要求にしたがって感光体の周速度がますます高速化される中、非接触帯電方式であっても、印加領域を広げる対応のみでは対処できず、感光体を所定の電位にまで到達させることが困難になってきている。
【0015】
つまり、非接触帯電方式では、チャージャーケースの幅(感光体の回転方向の幅)を大きくすることで、印加領域を広げることができるが、感光体の周囲には、帯電装置だけでなく、現像装置やクリーニング装置、転写装置等、カールソンプロセスで用いられる周知の部材が種々配置される。そのため、チャージャーケースの幅を広げて印加領域を広げるにも限界があり、チャージャーケースの幅を広げ過ぎると、他の部材の配置スペースを確保するために、感光体のドラム径が大きくなり、画像形成装置を大型化してしまう。
【0016】
なお、チャージャー線に印加する電圧を非常に高くすることで、印加領域を広げることなく高速機において感光体を所定の電位にまで到達させることも考えられるが、このような対策ではオゾンの発生量が必然的に増加してしまい、エコロジーに反するものとなるため、好ましくない。
【0017】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであって、その目的は、オゾンの発生量を増加させることもなく、また、画像形成装置を大型化することもなく、高速機において感光体を所定の電位に帯電させることのできる帯電装置、電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る帯電装置は、上記課題を解決するために、電子写真装置に搭載され、回転駆動される静電潜像担持体の表面を所定の電位に帯電させる帯電装置であって、上記静電潜像担持体と対向する位置に、該静電潜像担持体の回転方向と直交する方向を軸方向として配置され、高電圧が印加される1本のワイヤーと、上記ワイヤーをシールドし、上記静電潜像担持体と対向する面が開放されたシールド電極と、上記シールド電極の開放された面に配置されたメッシュ状のグリッド電極とを備え、上記グリッド電極は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域及び密領域を有しており、上記粗領域と密領域とが、静電潜像担持体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されていると共に、上記粗領域と密領域との境界が、上記静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にあることを特徴としている。
【0019】
本発明の帯電装置は、電子写真装置に搭載されるものであり、回転駆動される静電潜像担持体の表面を所定の電位に帯電させるものである。この帯電装置は、上記静電潜像担持体と対向する位置に、静電潜像担持体の回転方向と直交する方向を軸方向として配置されており、1本のワイヤーと、シールド電極と、グリッド電極とを備えている。
【0020】
シールド電極は、ワイヤーをシールドするものであり、静電潜像担持体と対向する面が開放されている。また、ワイヤーは、高電圧が印加されることによってコロナ放電を行う。グリッド電極はメッシュ状になっており、このコロナ放電により流れる電流の強度を調整するようになっている。
【0021】
また、上記グリッド電極は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域及び密領域を有している。すなわち、このグリッド電極は、複数の開口部(メッシュ)を有しており、その開口部の大きさや、数、密度の異なる粗領域及び密領域を有している。
【0022】
ここで、粗領域は、メッシュ部材の目開きが密領域に比して大きい方の領域であり、密領域は、粗領域に比してメッシュの目開きが小さい方の領域である。つまり、粗領域は密領域と比較して、開口間を形成する電極線の幅を同じとした場合に、開口の面積が大きいと共に、単位面積当たりに存在する開口の数が少なく、密領域は粗領域と比較して、開口間を形成する電極線の幅を同じとした場合に、開口の面積が小さいと共に、単位面積当たりに存在する開口部の数が多くなる。但し、粗領域と密領域で必ずしも開口間を形成する電極線の幅が同じである必要はなく、粗領域とは、密領域に対して開口のサイズが大きくて目が粗い状態であり、密領域とは粗領域に対して開口のサイズが小さく目が細かい状態である。
【0023】
このように、グリッド電極が粗領域と密領域とを有することにより、各領域にて異なる電流調整を行うこととなり、帯電の制御を各領域に応じて行うことができる。
【0024】
例えば、粗領域では、メッシュの目開きがより大きいため、ワイヤーから放電された電流を十分に通過させることができる。このため、静電潜像担持体表面に十分な電流を印加して、静電潜像担持体を十分に帯電させることができる。以下、この粗領域にて行う帯電を粗帯電と称することもある。
【0025】
一方、密領域では、メッシュの目開きがより小さいために、ワイヤーから放電された電流を好ましい値に制御することが可能となる。このため、静電潜像担持体表面に印加させる電流の強度を制御して、静電潜像担持体の帯電を好ましい値に制御することができる。以下、この密領域にて行う帯電を調整帯電と称することもある。
【0026】
また、本発明の帯電装置では、上記粗領域と密領域とが、静電潜像担持体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。それゆえ、粗帯電と調整帯電とがこの順で行われるようになっている。
【0027】
このように、静電潜像担持体表面へ印加する電流強度を変化させる調整が可能な複数の領域を有することで、粗帯電と調整帯電との両方を行うことが可能となる。また、粗帯電と調整帯電とをこの順で行うため、例え高速機の場合であっても、より安定した帯電を行うことが可能になる。
【0028】
また、本発明の帯電装置では、1本のワイヤーを用いているため、静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布は1つのピークを持つものとなる。また、本発明の帯電装置は、上記粗領域と密領域との境界が、静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にある。
【0029】
なお、静電潜像担持体を帯電させることによって、静電潜像担持体表面には電流(ドラム電流)が流れる。このドラム電流の強度分布と静電潜像担持体の表面電位の強度分布とは対応している。すなわち、静電潜像担持体の表面電位の大きい部分ではドラム電流の値が大きくなり、静電潜像担持体の表面電位の小さい部分ではドラム電流の値が小さくなる。より詳細には、静電潜像担持体の表面電位の強度分布のピークがドラム電流の値の極大値(ドラム電流のピーク)となる。
【0030】
従って、本発明の帯電装置は、粗領域と密領域との境界が、ドラム電流の強度分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側に配置されている、と表現することもできる。
【0031】
また、上記粗領域と密領域との境界が、静電潜像担持体の表面電位の強度分布(ドラム電流の強度分布)のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にあるため、密領域の大きさを粗領域の大きさよりも大きくすることができる。この場合、調整帯電を行う領域をより大きくすることができるため、安定した帯電を実現することが可能になる。
【0032】
このように、粗領域の大きさと密領域の大きさとを異ならせると共に、各領域を上記の順序で配置することにより、各領域にて適切な帯電を適切な順序で行うことができる。従って、オゾンの発生量を増加させることもなく、電子写真装置を大型化することもなく、高速機において静電潜像担持体を所定の電位に帯電させることが可能となる。
【0033】
本発明に係る帯電装置では、上記グリッド電極は、複数のスリットを有しており、上記粗領域のスリット幅が2.0〜2.6mm、スリットピッチが2.15〜2.77mmであり、上記密領域のスリット幅が1.2〜1.6mm、スリットピッチが1.35〜1.77mmであることが好ましい。上記の構成によれば、高速機において静電潜像担持体を所定の電位に帯電させることが可能となる。
【0034】
本発明に係る帯電装置では、上記グリッド電極は、複数の多角形の開口を有しており、上記粗領域の開口に外接する外接円の径が4.0〜4.5mm、外接円のピッチが4.25〜4.77mmであり、上記密領域の開口に外接する外接円の径が3.5〜4.0mm、外接円のピッチが3.75〜4.27mmであることが好ましい。上記の構成によれば、高速機において静電潜像担持体を所定の電位に帯電させることが可能となる。
【0035】
本発明に係る電子写真装置は、上記課題を解決するために、表面に静電潜像が形成され回転駆動される静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を所定の電位に帯電させる帯電装置とを備える電子写真装置であって、上記帯電装置が、上記静電潜像担持体と対向する位置に、該静電潜像担持体の回転方向と直交する方向を軸方向として配置され、高電圧が印加される1本のワイヤーと、該ワイヤーをシールドし、上記静電潜像担持体と対向する面が開放されたシールド電極と、該シールド電極の開放された面に配置されたメッシュ状のグリッド電極とを備えたスコロトロン帯電装置であり、上記グリッド電極は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域及び密領域を有しており、上記粗領域と密領域とが、静電潜像担持体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されていると共に、上記粗領域と密領域との境界が、上記静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にあることを特徴としている。
【0036】
上記の構成によれば、既に帯電装置として説明したように、安定した帯電を行うことができる。また、オゾンの発生量を増加させることもなく、電子写真装置を大型化することもなく、高速機において静電潜像担持体を所定の電位に帯電させることが可能となる。
【0037】
本発明に係る電子写真装置では、上記グリッド電極は、複数のスリットを有しており、上記粗領域のスリット幅が2.0〜2.6mm、スリットピッチが2.15〜2.77mmであり、上記密領域のスリット幅が1.2〜1.6mm、スリットピッチが1.35〜1.77mmであることが好ましい。また、本発明に係る電子写真装置では、上記グリッド電極は、複数の多角形の開口を有しており、上記粗領域の開口に外接する外接円の径が4.0〜4.5mm、外接円のピッチが4.25〜4.77mmであり、上記密領域の開口に外接する外接円の径が3.5〜4.0mm、外接円のピッチが3.75〜4.27mmであることが好ましい。上記の構成によれば、高速機において静電潜像担持体を所定の電位に帯電させることが可能となる。
【0038】
本発明に係る電子写真装置では、上記静電潜像担持体の周速度が400mm/sec以上であることが好ましい。上記の構成によれば、上記電子写真装置が高速機である場合においても安定した帯電を行うことができる。
【0039】
本発明に係る電子写真装置では、上記グリッド電極に印加する電位が、静電潜像担持体表面の帯電電位として設定されている電位と略同じであることが好ましい。上記の構成によれば、静電潜像担持体表面をグリッド電極に印加した電位と同じ電位に帯電させることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る帯電装置は、以上のように、電子写真装置に搭載され、回転駆動される静電潜像担持体の表面を所定の電位に帯電させる帯電装置であって、上記静電潜像担持体と対向する位置に、該静電潜像担持体の回転方向と直交する方向を軸方向として配置され、高電圧が印加される1本のワイヤーと、上記ワイヤーをシールドし、上記静電潜像担持体と対向する面が開放されたシールド電極と、上記シールド電極の開放された面に配置されたメッシュ状のグリッド電極とを備え、上記グリッド電極は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域及び密領域を有しており、上記粗領域と密領域とが、静電潜像担持体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されていると共に、上記粗領域と密領域との境界が、上記静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にある構成である。
【0041】
本発明に係る電子写真装置は、以上のように、表面に静電潜像が形成され回転駆動される静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を所定の電位に帯電させる帯電装置とを備える電子写真装置であって、上記帯電装置が、上記静電潜像担持体と対向する位置に、該静電潜像担持体の回転方向と直交する方向を軸方向として配置され、高電圧が印加される1本のワイヤーと、該ワイヤーをシールドし、上記静電潜像担持体と対向する面が開放されたシールド電極と、該シールド電極の開放された面に配置されたメッシュ状のグリッド電極とを備えたスコロトロン帯電装置であり、上記グリッド電極は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域及び密領域を有しており、上記粗領域と密領域とが、静電潜像担持体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されていると共に、上記粗領域と密領域との境界が、上記静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にある構成である。
【0042】
それゆえ、本発明の帯電装置、電子写真装置では、安定した帯電を行うことができる。また、オゾンの発生量を増加させることもなく、画像形成装置を大型化することもなく、高速機において静電潜像担持体を所定の電位に帯電させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すると以下の通りである。
【0044】
まず、図7に基づいて、本実施の形態である帯電装置4を搭載する画像形成装置(電子写真装置)である全体構成を簡単に説明する。
【0045】
本画像形成装置は、所定のシート(記録用紙)に、画像データに応じたモノクロ画像を形成するものである。本画像形成装置は、図2に示すように、露光ユニット1、現像装置2、ドラム状の感光体3、帯電装置4、クリーナユニット5、及び定着ユニット6等よりなる画像形成部7と、給紙部8と、排紙部9とを備えている。
【0046】
帯電装置4は、静電潜像担持体である感光体3の表面を所定の電位に均一に帯電させるためのものである。本画像形成装置では、感光体3は周速度600mm/secで高速回転される。詳細については後述するが、該帯電装置4には、画像形成装置を大型化することなく高速回転される感光体3表面を均一に安定して帯電するための工夫が施されている。
【0047】
露光ユニット1は、帯電装置4によって均一に帯電された感光体3の表面を入力された画像データに応じて露光し、該表面に画像データに応じた静電潜像を形成するものである。露光ユニット1として、ここではレーザ照射部11および反射ミラー部12を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)13を用いる構成を例示したが、ELやLED等の発光素子をアレイ状に並べた、ELやLED書込みヘッドを用いる構成としてもよい。さらに、本画像形成装置では、高速印字処理に伴う照射タイミングの高速化を低減すべく、複数のレーザ光を利用する手法を採用している(具体的には2ビーム手法)。
【0048】
現像装置2は、感光体3の表面に形成された静電潜像を黒トナーで顕像化するものである。クリーナユニット5は、現像・画像転写後における感光体3の表面に残留したトナーを、除去・回収するものである。
【0049】
転写機構10は、上述のようにして感光体3の表面で顕像化された静電像(未定着トナー)を、自身が搬送するシート上に転写するものである。転写機構10は、シートに対して静電像が有する電荷の逆極性の電界を印加する。例えば、静電像が(―)極性の電荷を有している時は、転写機構10の印加極性は(+)極性となる。
【0050】
転写機構10には、駆動ローラ101と従動ローラ102及び他のローラに巻回された転写ベルト103が配置されている。該転写ベルト103は、所定の抵抗値(1×109〜1×1013Ω・cmの範囲)を有する。
【0051】
また、感光体3と転写ベルト103の接触部には駆動ローラ101及び従動ローラ102とは異なった導電性で転写電界を印加することが可能な導電性ローラ105が配置されている。該導電性ローラ105には、弾性が持たされており、これにより、感光体3と転写ベルト103とは、転写ニップと称される所定の幅を有する面で接触するようになり、搬送されるシートへの転写効率の向上を図っている。
【0052】
さらに、転写ベルト103の転写領域の下流側における転写ベルト103の背面側には、搬送されるシートが転写領域で印加された電界を除電して次工程への搬送をスムーズに行わせるための除電ローラ106が配置されている。
【0053】
その他、転写機構10には、転写ベルト103のトナー汚れを除去するクリーニングユニット、及び転写ベルト103の除電を行う除電機構が配置されている。なお、該除電機構、及び前述の除電ローラ106としては、本画像形成装置を介して接地する。
【0054】
転写機構10でシート上に転写された静電像(未定着トナー)は、定着ユニット6に搬送されることで未定着トナーが溶融されシート上に定着される。
【0055】
定着ユニット6は、加熱ローラ61、加圧ローラ62を備えており、加熱ローラ61の外周部には、シート剥離爪、ローラ表面温度検出部材(サーミスター)、ローラ表面クリーニング部材が配置され、内周部には加熱ローラ表面を所定温度(定着設定温度:概ね160〜200℃)とする熱源を有している。
【0056】
他方、加圧ローラ62は、ローラの両端部で前記加熱ローラ61に対し所定圧量で加圧ローラ62が圧接することが可能な加圧部材が配置され、さらに加圧ローラ62の外周には加熱ローラの外周と同様にシート剥離爪、ローラ表面のクリーニング部材が配置されている。
【0057】
このような定着ユニット6は、定着ニップ部と称される加熱ローラ61と加圧ローラ62との圧接部600において、搬送されるシート上の未定着トナーを加熱ローラ61表面の温度での溶融と、圧接力でのシート上への投鋲作用で未定着トナーをシート上に定着する。
【0058】
給紙部8は、画像形成に使用するシートを蓄積し、上記した画像形成部7へとシートを供給するものである。本画像形成装置では、高速印字処理を行うことを目的とするため、画像形成部の下方に、定型サイズを各々の給紙トレイに500〜1500枚収納可能な複数の給紙トレイを備えた多段給紙装置が配置されると共に、該多段給紙装置の側方には、複数の種類のシートを多量に収納可能な大容量給紙カセット83が配置されている。また、画像形成部7の側壁に、主として不定型サイズの印字等に用いる手差し給紙トレイ82が配置されている。
【0059】
排紙部9は、本画像形成装置において手差しトレイ82とは反対側の側面に配置されている。図2では、排紙部9が1段の排紙トレイ91よりなる構成を例示しているが、排紙トレイ91に代えて、排紙シートの後処理装置(ステープル、パンチ処理等々)、複数段排紙トレイをオプションとして配置することも可能である。
【0060】
続いて、シート搬送工程について説明する。給紙部8にある複数の給紙トレイの中から印字要求に合致するシートを収容する給紙トレイが選択され、該選択された給紙トレイよりシートが給紙される。給紙されたシートは、図2に示す搬送路15の中を、複数の搬送ローラ16‥によって、転写機構10の直前に配置されたレジストローラ35まで搬送され、ここで一旦停止される。一旦停止したシートは、シートの先端と感光体3上の静電像を合致させるタイミングにてレジストローラ35が再回転されることで、転写機構10へと搬送され、静電像が転写される。その後、シートは、定着ユニット6に送られて静電像が固着され、その後、排紙部9の排紙トレイ91に排出される。
【0061】
また、本画像形成装置では、定着ユニット6から排紙トレイ91までの搬送経路を、コピーモード、プリンタモード、FAXモード等の動作モード、及び片面印字か両面印字かの印字モードによって異ならせるようになっている。
【0062】
通常、コピーモードでは、ユーザが装置の近傍で操作を行うことから“フェースアップ排出”と呼ばれる印字面(画像形成面)を上に向けた排出が多く用いられている。一方、プリンタモード及びFAXモードでは、ユーザが装置の近傍に居ない状態が多いことから、排出されるシートをページ順に揃えることのできる、印字面(画像形成面)を下に向けたフェースダウン排出が多く用いられている。
【0063】
本画像形成装置では、定着ユニット6から排紙トレイ91へと至る搬送路として、図8に示すように、複数の搬送路I〜VIと、複数の分岐爪A〜Eとが配置されている。位置が固定されている分岐爪Eを除き、分岐爪A〜Dにはそれぞれに対応してソレノイド等からなる図示しない爪位置切換え手段が設けられており、該手段が図示しないのCPU等からなる制御装置にてオン・オフされることによって、シートを案内する搬送路を選択するようになっている。
【0064】
(1)片面印字でフェースアップ排出
定着ユニット6を通過したシートが搬送ローラ30を通過する直前に、分岐爪Aは、排紙ローラ32へと繋がる搬送路Iを開放し、搬送路IIを遮蔽する。これにより、搬送されるシートは、その先端部が分岐爪Aに案内されて搬送路Iを通過し、排紙ローラ32を経て排紙トレイ91上に排出される。
【0065】
(2)片面印字でフェースダウンの排出
定着ユニット6を通過したシートが搬送ローラ30を通過する直前に、分岐爪Aは搬送路IIを開放し、搬送路Iを遮蔽する。さらに分岐爪Cは搬送路IIIを開放し、搬送路Vを遮蔽する。搬送されるシートは、その先端部が分岐爪Aに案内されることによって、搬送路IIを通過し、シート先端の腰と搬送力とで分岐爪Bを移動し、搬送路IIIを開放した後に、分岐爪Cに案内されることで搬送路IIIに導かれる。シートの後端が分岐爪Eの位置に到達すると、シートの搬送が一旦停止し、分岐爪Cは搬送路IVを開放し、搬送路Vを遮蔽する。この時に分岐爪Bは、図示してはいないが、分岐爪保持シャフトに配置される弾性部材(バネ等)によって自然に位置変位していて搬送路IIを遮蔽する形態となる。このような状態になった後に、反転搬送ローラ33が逆回転することでシートの再搬送が行われ、前記分岐爪Eの位置に滞留する後端から搬送路IVを通過した後に排紙ローラ32を経て排紙トレイ91に排出される。
【0066】
(3)両面印字の印字手法での排出
第1面(表面)印字が終了し、定着ユニット6を通過したシートが搬送ローラ31を通過する直前に、分岐爪Aは搬送路IIを開放し、搬送路Iを遮蔽する。更に分岐爪Cは搬送路Vを開放し、搬送路IIIを遮蔽する。また、分岐爪Dは搬送路IVを開放する。搬送されるシートは、その先端部が分岐爪Aに案内されることによって、搬送路IIを通過し、シート先端の腰と、搬送力で分岐爪Bを移動した後に、分岐爪Cに案内されることで搬送路V、並びに搬送路IVに導かれる。シートの後端が搬送路IVに到達すると、シートの搬送が一旦停止する。(第1面のスイッチバックの完了)その後、分岐爪Dが搬送路Vを遮蔽し、分岐爪Eへの搬送路が開放されると、スイッチバックローラ34が逆回転することでシートの再搬送が行われ、前記搬送路IVの位置に滞留する後端から分岐爪Eを介して搬送路IIIを通過したシートは、前記印字処理工程(転写機構)の直前に配置されるレジストローラ35まで搬送される。その後に、第2面(裏面)印字が終了し、定着ユニット6を通過したシートは、前記(1)の〔片面印字でフェースアップの排出〕と同様の処理がなされて排紙トレイ91上に排出される。
【0067】
次に、本実施の形態である帯電装置4について詳細に説明する。
【0068】
図3(a)(b)に、上記帯電装置4の構成を示す。なお、図3(b)は、図3(a)におけるA−A線矢視断面図である。
【0069】
帯電装置4は、チャージャー線41と、チャージャーケース42と、グリッド電極43とを備えている。チャージャー線41は、電極44より高電圧が印加されるワイヤー部材であり、チャージャーケース42内部において、ホルダー部材46・46にて保持されている。本発明の帯電装置4は、チャージャー線を1本備えた構成となっている。
【0070】
チャージャーケース42は、チャージャー線41の軸方向を長手方向とし、感光体と対向配置される面が開放された導電性の箱型部材である。チャージャーケース42には、電極45よりチャージャー線41とは異なる電圧が印加されるようになっている。
【0071】
グリッド電極43は、上記チャージャーケース42における開放された面に配置され、チャージャー線41とは異なるバイアス電圧が印加されるようになっている。ここでは、グリッド電極43に対しても、電極45よりチャージャーケース42と同じ電圧が印加される。なお、グリッド電極43とチャージャーケース42とが絶縁されていて、それぞれに異なる電圧が印加されてもよい。
【0072】
上記グリッド電極43は、複数の開口を有する導電性のメッシュ部材である。開口の形状としては、図1(a)に示すスリット50や、図2(a)に示す多角形の開口51等がある。そして、グリッド電極43は、目開きが粗である粗領域25と、目開きが密である密領域53とを有している。グリッド電極43の目開きは、スリットタイプであればスリット幅及びスリットピッチにて規定され、多角形の開口を有するタイプであれば、外接する円の径とピッチで規定される。
【0073】
図1(b)に、図1(a)に示すグリッド電極43におけるスリット幅SW及びスリットピッチSPを示す。スリット幅SWとは、1つのスリット50の幅(スリットの長手方向と直交する方向の寸法)を表すものであり、スリットピッチSPとは、スリットの長手方向と直交する方向に隣り合う2つのスリット50・50の各中心線(スリットの長手方向に伸びる中心線)の間隔を表すものである。
【0074】
また、図2(b)に、図2(a)示すグリッド電極43における開口に外接する外接円の径HW及び、外接円のピッチHPを示している。外接円のピッチHPは、隣り合う2つの開口51・51の各外接円の中心点の間隔を表すものである。
【0075】
目開きが粗とは、目開きが密である場合と比較して、スリット50・51間、或いは開口51・51間を形成する電極線の幅を同じとした場合に、スリット50或いは開口51の面積が大きく、かつ、単位面積当たりに存在するスリット50或いは開口51の数が少ない状態である。
【0076】
具体的に説明すると、図1に示すグリッド電極43は、スリット間を形成する電極線の幅を0.15mm〜0.17mmとして、粗領域52におけるスリット幅SWが2.4mm(スリットピッチSPが2.55mm〜2.57mm)に設定されており、密領域53におけるスリット幅が1.4mm(スリットピッチSPが1.55mm〜1.57mm)に設定されている。
【0077】
ただし、ここで例示したグリッド電極43の目開きの具体例は、あくまでも一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スリット間を形成する電極線の幅を0.15mm〜0.17mmとした場合に、粗領域52のスリット幅SWを2.0mm〜2.6mm(スリットピッチSPを2.15mm〜2.77mm)と設定し、密領域53のスリット幅SWを1.2mm〜1.6mm(スリットピッチSPを1.35mm〜1.77mm)と設定することができる。
【0078】
また、図2に示すグリッド電極43の場合は、スリット間を形成する電極線の幅を0.25mm〜0.27mmとして、粗領域52における外接円の径HWは4.25mm(外接円のピッチHPが4.5mm〜4.52mm)に設定されており、密領域53における外接円の径HWは3.75mm(外接円のピッチHPが4.0mm〜4.02mm)に設定されている。
【0079】
ただし、図2に示すグリッド電極43の場合においても、例示したグリッド電極43の目開きの具体例は、あくまでも一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スリット間を形成する電極線の幅を0.25mm〜0.27mmとした場合に、粗領域52の外接円の径HWを4.0mm〜4.5mm(外接円のピッチHPを4.25〜4.77mmと設定し、密領域53の外接円の径HWを3.5〜4.0mm(外接円のピッチHPを3.75〜4.27mm)と設定することができる。
【0080】
すなわち、図1及び図2のいずれの場合においても、スリット幅を形成する電極線の幅はほぼ同じであり、粗領域52は密領域53と比較して、スリット50(開口51)の面積は大きく、かつ、単位面積当たりに存在するスリット50(開口51)の数は少なくなっている。一方、密領域53は粗領域52と比較して、スリット50(開口51)の面積は小さく、かつ、単位面積当たりに存在するスリット50(開口51)の数は多くなっている。
【0081】
また、感光体3を帯電させるに際して、帯電装置4のチャージャー線41に電圧を印加すると、各チャージャー線41がコロナ放電することによって感光体3表面が帯電し、感光体3表面に電流が流れる。この電流を「ドラム電流」と称する。
【0082】
感光体3の表面電位は、その箇所に応じて強弱が異なっている。この強弱の違いを表した分布が感光体表面電位の分布となる。ドラム電流の値は、感光体表面電位の強弱の分布に応じた電流値となる。すなわち、ドラム電流の強弱を示す分布(ドラム電流の分布)と感光体表面電位の強弱を示す分布(感光体表面電位の分布)とが対応している。従って、感光体表面電位が大きい部分ではドラム電流の値が大きくなり、感光体表面電位の小さい部分ではドラム電流の値が小さくなる。
【0083】
感光体表面電位は、チャージャー線と感光体の中心軸とを結ぶ直線上の感光体表面が最も大きく、この直線から離れるに従って感光体表面電位は小さくなる。すなわち、感光体表面電位の分布は、チャージャー線と感光体の中心軸とを結ぶ直線上の感光体表面にピークを有する分布となる。
【0084】
上記帯電装置4のグリッド電極は、粗領域52と密領域53との境界が、上記感光体表面電位のピークよりも、感光体の回転方向上流側に位置するように配置されている。つまり、上記境界と感光体3の中心軸とを結ぶ直線が、チャージャー線と感光体の中心軸とを結ぶ直線よりも、感光体の回転方向上流側に存在するように配置されている。
【0085】
ここで、感光体3表面に流れるドラム電流(感光体表面電位)の分布について説明する。図4は、チャージャー線41に電圧を印加した際における、感光体3表面に流れるドラム電流の強度分布を示すグラフである。なお、図4では、粗領域や密領域のない目開きがシングルパターンのスリットを有するグリッド電極を用いた場合を例に挙げている。また、グリッド電極としては、スリット幅が異なる3種類(0.6mm、1.2mm、2.4mm)のグリッド電極を用いている。
【0086】
図4に示す感光体上の長さとは、帯電装置4の中心部(チャージャー線が配置されている部分)に対応する感光体上の点を0.0mmとして、感光体3の回転方向下流側や上流側への距離を表したものであり、感光体3の回転方向下流側から上流側に向かって−30.0mm〜30.0mmとなっている。
【0087】
図4に示すように、いずれのグリッド電極を用いた場合においても、ドラム電流の分布は、ピーク(極大値)を1つ有する分布となる。このドラム電流の強度の分布を感光体上の長さに対応する部分に模式的に投影したものを図5に示す。図5には、ドラム電流の強度分布54が模式的に記されている。図4及び図5に示すように、ドラム電流のピークの位置は、チャージャー線が設けられている部分に対応した位置(チャージャー線と感光体の中心軸とを結ぶ直線上にある感光体表面の位置)となっている。
【0088】
また、この分布から分かるように、スリット幅が大きいほどドラム電流は大きくなっている。ただし、スリットピッチを変化させた場合であっても、分布のピークの位置はほぼ同じである。このことから、スリットピッチを変化させた場合であっても、ピークの大小に差はあるものの、分布の形状はほぼ同じであることが分かる。
【0089】
このため、スリットピッチの異なる2つの領域(粗領域及び密領域)を有するグリッド電極を用いた場合には、ピークの位置は図4に示す分布とほぼ同じであって、ドラム電流の大きさが領域の境界を境にして異なるものと考えられる。
【0090】
また、上記粗領域と密領域とが感光体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。すなわち、グリッド電極は、感光体の回転方向に対して、粗領域が上流側で密領域が下流側となるように配置されている。このように配置することにより、粗帯電と調整帯電とをこの順で行うことができる。この場合、印加する電流量の異なる調整を2段階で行うことができる。すなわち、粗領域にてある程度のドラム電流を印加しておき、密領域にて印加する電流量の微調整を行うことで帯電を制御することが可能になる。
【0091】
さらに、本実施の形態のグリッド電極は、その粗領域と密領域との境界の位置がドラム電流のピークに対応する位置よりも感光体の回転方向上流側の位置となるように配置されている。この場合、粗領域の面積よりも密領域の面積を大きくすることができる。つまり、粗帯電を行う領域よりも調整帯電を行う領域が大きくなる。
【0092】
このように、粗領域よりも密領域を大きくして、電流量の微調整を行う領域を大きくすることにより、所定の電位に帯電させるための調整をより十分に行うことが可能となり、安定した帯電を行うことができる。
【0093】
上記粗領域と密領域との境界の位置は、感光体の表面電位をある程度の電位まで帯電させるための粗帯電と、帯電電位を所定の電位にするための調整電位とがバランスよく行われるような位置であればよい。このような位置とすれば、高速機において帯電不足となったり、過剰帯電となったりすることを回避できる。
【0094】
なお、上記境界の位置は、感光体の周速度、チャージャー線に印加する電圧、感光体の帯電すべき電位等を考慮して適宜設定することができる。例えば、感光体の回転方向上流側の1/3の範囲が粗領域なり、下流側2/3の範囲が密領域となるように境界を設けてもよい。この場合、上流側1/3の部分で粗帯電を行い、下流側2/3の部分で調整帯電を行うこととなり、粗帯電と密帯電とをバランスよく行うことができる。
【0095】
このように、粗領域と密領域とを上記の順で配置すると共に、密領域の大きさを粗領域の大きさよりも大きくして、調整帯電用の領域を粗帯電の領域よりも大きくすることにより、均一かつ安定した帯電を実現することが可能になる。
【0096】
また、上記帯電装置4は、感光体3に対し、感光体3の回転方向と直交する方向を長手方向とし、電極44・45が設けられている側を画像形成装置の奥側にして配置される。そして、感光体3を帯電させるに際しては、各チャージャー線41に4KV〜6KV程度の電圧が印加されると共に、グリッド電極43に感光体3の帯電電位に応じたバイアス電圧が印加される。ここで、グリッド電極43が、上流側から下流側に向かって、目開きの異なる粗領域52及び密領域53を有する構成となっているので、オゾンの発生量を増加させることもなく、また、画像形成装置を大型化することもなく、高速機において感光体3を所定の電位に安定して帯電させることが可能となる。
【0097】
本願出願人は、スコロトロン帯電を用いた帯電装置において、チャージャーケースの幅を大きくして印加領域を広げる以外の対応で、高速回転される感光体を所定の電位に安定して帯電させることを可能とすべく種々検討を行った。
【0098】
検討においては、帯電装置4の搭載を予定している電子写真装置である画像形成装置を使用し、条件を変更して、チャージャー線に流す電流(以下、ワイヤー電流とも記載)と感光体の表面電位(以下、ドラム表面電位とも記載)との関係を調べた。ここでは、ワイヤー電流の上限を900μAまでとした。これは、900μAを超えると、オゾン発生量が著しく増加するためである。
【0099】
なお、本発明は、粗領域と密領域とを有するグリッド電極を用いることにより、安定した帯電を実現すると共に、オゾン発生量の増加を抑制するものである。ただし、チャージャー線が1本の場合に粗領域及び密領域を有するグリッド電極を用いた場合には、ドラム表面電位の上昇カーブが所望の範囲で急峻になり、帯電の制御が難しくなる場合がある。このため、帯電の制御が簡便な手法を用いた場合の参考例を以下に説明する。
【0100】
(参考例)
本参考例では、スリット幅が2.4mm(スリットピッチが2.55mm〜2.57mm)のグリッド電極と、スリット幅が1.8mm(スリットピッチが1.95mm〜1.97mm)のグリッド電極と、スリット幅が1.2mm(スリットピッチが1.35mm〜1.37mm)のグリッド電極と、スリット幅が0.6mm(スリットピッチが0.75mm〜0.77mm)のグリッド電極とを用いた。
【0101】
また、本参考例では、感光体の周速度を600mm/sとした。また、グリッド電極に印加する電圧(グリッド電位)は、ドラム表面電位の目標電位である650Vとした。また、チャージャー線には、Φ60μのタングステンワイヤーを使用し、1本配置した。この条件にて、ワイヤー電流を50μA〜900μAまで変化させ、ドラム表面電位を測定した。この測定結果を図6に示す。
【0102】
図6は、ワイヤー電流とドラム表面電位との関係を示すグラフである。図6に示すように、各グリッド電極共にワイヤー電流が大きくなるにつれてドラム表面電位は上昇する。
【0103】
ここで、スリット幅が1.8mmのグリッド電極の場合には、ワイヤー電流が900μAに近づくにつれて、ドラム表面電位は目標電位の650Vに近づき、800μAにて650Vに到達する。つまり、目標電位又はそれに近い電位を得ることができると共に、ワイヤー電流を高電流とした場合においてもほぼ650Vとなった。
【0104】
一方、スリット幅が2.4mmのグリッド電極の場合には、ワイヤー電流が750μAとなった時点でドラム表面電位が650Vに到達し、ワイヤー電流が800μAでは目標電位である650Vを超えてしまった。
【0105】
また、スリット幅が0.6mmのグリッド電極及びスリット幅が1.2mmのグリッド電極の場合には、ワイヤー電流として900μAの高電流を流した場合においても、ドラム表面電位は目標電位の650Vに到達しなかった。
【0106】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】(a)(b)共に、本発明の実施の一形態を示すものであり、スコロトロン帯電を用いた帯電装置に備えられたグリッド電極における目開きを説明する図面である。
【図2】(a)(b)共に、本発明の実施の一形態を示すものであり、スコロトロン帯電を用いた帯電装置に備えられた他のグリッド電極における目開きを説明する図面である。
【図3】(a)(b)共に、本発明の実施の一形態を示すものであり、スコロトロン帯電を用いた帯電装置の構成を示す図面である。
【図4】スコロトロン帯電を用いた帯電装置において、グリッド電極のスリット幅を可変させた場合の、感光体上の長さとドラム電流との関係を示す図面である。
【図5】本発明の実施の一形態を示すものであり、ドラム電流の分布を感光体上の長さに対応する部分に模式的に投影した図面である。
【図6】スコロトロン帯電を用いた帯電装置において、グリッド電極のスリット幅を可変させて感光体を帯電させた場合の結果を示す図面である。
【図7】本実施の一形態である帯電装置が搭載された画像形成装置の構成を示す図面である。
【図8】図7の画像形成装置における、定着ユニットから排紙トレイへと至る搬送路の構成を説明する図面である。
【符号の説明】
【0108】
3 感光体(静電潜像担持体)
4 帯電装置
41 チャージャー線
42 チャージャーケース(シールド電極)
43 グリッド電極
50 スリット(開口)
51 多角形の開口
52 粗領域
53 密領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置に搭載され、回転駆動される静電潜像担持体の表面を所定の電位に帯電させる帯電装置であって、
上記静電潜像担持体と対向する位置に、該静電潜像担持体の回転方向と直交する方向を軸方向として配置され、高電圧が印加される1本のワイヤーと、
上記ワイヤーをシールドし、上記静電潜像担持体と対向する面が開放されたシールド電極と、
上記シールド電極の開放された面に配置されたメッシュ状のグリッド電極とを備え、
上記グリッド電極は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域及び密領域を有しており、
上記粗領域と密領域とが、静電潜像担持体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されていると共に、
上記粗領域と密領域との境界が、上記静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にあることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
上記グリッド電極は、複数のスリットを有しており、
上記粗領域のスリット幅が2.0〜2.6mm、スリットピッチが2.15〜2.77mmであり、上記密領域のスリット幅が1.2〜1.6mm、スリットピッチが1.35〜1.77mmであることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
上記グリッド電極は、複数の多角形の開口を有しており、
上記粗領域の開口に外接する外接円の径が4.0〜4.5mm、外接円のピッチが4.25〜4.77mmであり、上記密領域の開口に外接する外接円の径が3.5〜4.0mm、外接円のピッチが3.75〜4.27mmであることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項4】
表面に静電潜像が形成され回転駆動される静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を所定の電位に帯電させる帯電装置とを備える電子写真装置であって、
上記帯電装置が、上記静電潜像担持体と対向する位置に、該静電潜像担持体の回転方向と直交する方向を軸方向として配置され、高電圧が印加される1本のワイヤーと、該ワイヤーをシールドし、上記静電潜像担持体と対向する面が開放されたシールド電極と、該シールド電極の開放された面に配置されたメッシュ状のグリッド電極とを備えたスコロトロン帯電装置であり、
上記グリッド電極は、メッシュの目開きが互いに異なる粗領域及び密領域を有しており、
上記粗領域と密領域とが、静電潜像担持体の回転方向上流側から下流側に向かってこの順に配置されていると共に、
上記粗領域と密領域との境界が、上記静電潜像担持体の表面電位の強度を示す分布のピークに対応する位置よりも静電潜像担持体の回転方向上流側の位置にあることを特徴とする電子写真装置。
【請求項5】
上記グリッド電極は、複数のスリットを有しており、
上記粗領域のスリット幅が2.0〜2.6mm、スリットピッチが2.15〜2.77mmであり、上記密領域のスリット幅が1.2〜1.6mm、スリットピッチが1.35〜1.77mmであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真装置。
【請求項6】
上記グリッド電極は、複数の多角形の開口を有しており、
上記粗領域の開口に外接する外接円の径が4.0〜4.5mm、外接円のピッチが4.25〜4.77mmであり、上記密領域の開口に外接する外接円の径が3.5〜4.0mm、外接円のピッチが3.75〜4.27mmであることを特徴とする請求項4に記載の電子写真装置。
【請求項7】
上記静電潜像担持体の周速度が400mm/sec以上であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電子写真装置。
【請求項8】
上記グリッド電極に印加する電位が、静電潜像担持体表面の帯電電位として設定されている電位と略同じであることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−121573(P2007−121573A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311938(P2005−311938)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】