説明

帯電装置

【課題】中空の弾性材からなるシャフトレスの帯電ローラを位置規制する規制部材への異物の堆積を簡単な構成で回避することのできる帯電装置を得る。
【解決手段】回転支軸を有しない中空の弾性材からなる帯電ローラ4を備えた帯電装置。帯電ローラ4は感光体ドラム2の表面に接触して該感光体ドラム2の回転に従動回転する。規制部材5は帯電ローラ4が摺接する摺接部材5aを備えている。摺接部材5aは、帯電ローラ4の表面に付着したトナーなどの異物を掻き取るための溝又は穴が形成され、所定のタイミングで、従動回転方向eに対して斜行する方向、又は、従動回転方向eとは直交する方向に往復移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置、特に、複写機やプリンタなどの電子写真方式による画像形成装置に搭載される帯電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置において、一方向に回転駆動される感光体ドラムを所定の電位に帯電させる帯電手段として、従来では、金属製の支軸に導電性のゴム材を巻回した帯電ローラが用いられていた。支軸は軸受け部材にて回転自在に保持され、かつ、ばねで圧接されている。これにて、帯電ローラは感光体ドラムの表面に接触して該感光体ドラムの回転に従動回転することになる。
【0003】
しかしながら、シャフト付きの帯電ローラでは、シャフトを付ける分コストが上昇し、軸受け部材や圧接用のばねを必要とするのでコストがさらに上昇し、また、構成が複雑化する。
【0004】
そこで、特許文献1には、シャフトレスで中空の弾性部材からなる帯電ローラが提案されている。この帯電ローラは規制部材で囲まれて位置規制されつつ感光体ドラムの回転に伴って従動回転し、感光体ドラムに電荷を付与する。帯電ローラは従動回転時に規制部材の規制面に摺接し、位置規制される。
【0005】
しかしながら、感光体ドラムの表面に付着しているトナーやトナーに含まれる後処理剤、紙粉などの異物が、帯電ローラを介して規制部材の規制面(摺接面)に付着し、堆積する不具合を有している。これらの堆積物が帯電ローラの表面に再付着すると感光体ドラムの帯電むらや異常放電を誘発し、画像ノイズの原因となる。
【特許文献1】特開2006−163197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、中空の弾性材からなるシャフトレスの帯電ローラを位置規制する規制部材への異物の堆積を簡単な構成で回避することのできる帯電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である帯電装置は、
一方向に回転駆動される感光体ドラムを所定の電位に帯電させる帯電装置において、
回転支軸を有しない中空の弾性材からなり、感光体ドラムの表面に接触して該感光体ドラムの回転に従動回転する帯電ローラと、
帯電ローラの従動回転位置を決めるための規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、帯電ローラが摺接する摺接部材と、該摺接部材を所定のタイミングで移動させる移動手段とを含み、
前記摺接部材には帯電ローラの表面に付着した異物を掻き取るための溝又は穴が形成されていること、
を特徴とする。
【0008】
前記帯電装置において、帯電ローラは摺接部材に摺接しつつ従動回転する。摺接部材は移動手段によって所定のタイミングで移動することにより、感光体ドラムの表面から帯電ローラに付着した異物を溝又は穴に掻き取り、異物の堆積を回避する。これにて、堆積物が帯電ローラの表面に再付着することがなくなり、ひいては感光体ドラムの帯電むらや異常放電の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る帯電装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
(画像形成装置の概略構成、図1参照)
まず、本発明に係る帯電装置を搭載した画像形成装置について図1を参照して説明する。図1は電子写真方式によるプリンタの概略構成を示し、プロセスユニット1は、矢印E方向に回転駆動される感光体ドラム2、帯電装置3、現像器6、残留トナーのクリーニングブレード7、トナー回収部8、転写ローラ9、レーザ走査光学ユニット10を備えている。
【0011】
画像形成は周知の電子写真方式にて行われる。即ち、感光体ドラム2が所定の速度で矢印E方向に回転駆動され、その表面は帯電装置3にて所定の電位に帯電され、画像データに基づいて変調されたレーザビームLBにて静電潜像が形成され、現像器6にて現像される。一方、転写材Sは感光体ドラム2と転写ローラ9とのニップ部を矢印F方向に搬送され、トナー画像を転写される。その後、転写材Sは図示しない定着器でトナーの定着を施され、プロセスユニット1の外部に排出される。
【0012】
また、プリンタには制御部11が設けられている。この制御部11は前記プロセスユニット1を含めてプリンタの各部分の状態や動作を制御し、特に、以下に説明する帯電装置3の動作を制御する。
【0013】
(帯電装置の基本的形態、図1及び図2参照)
帯電装置3は、帯電ローラ4と規制部材5とで構成されている。帯電ローラ4は、回転支軸を有しない(シャフトレス)中空の弾性材からなり、感光体ドラム2の表面に接触して感光体ドラム2の回転に基づいて従動回転する。詳しくは、この帯電ローラ4は、PA,PI,PFA,PTEEなどの導電性樹脂や非導電性樹脂に導電性コート処理を施したチューブ、あるいは、導電性ゴムからなり、表面抵抗は105〜108Ωであり、外径は8.5mm(外径30mmの感光体ドラム2に対する)、肉厚は0.1mmである。なお、これらの数値は例示であることは勿論である。
【0014】
前記帯電ローラ4は、感光体ドラム2の表面に載置されており、その従動回転位置を決めるための規制部材5が配置されている。また、規制部材5は、帯電ローラ4に対して所定の電圧を供給できるように導電性を有し、Niめっきを施した鉄やステンレスなどにて形成されている。規制部材5から供給される電圧が帯電ローラ4を介して感光体ドラム2に印加される。なお、帯電ローラ4へは他の導電性部材によって電圧が供給されてもよい。
【0015】
規制部材5は、帯電ローラ4の自由形状より大きな空間を有し、従動回転時に帯電ローラ4の位置を規制する規制面(摺接面)5aを有している。規制部材5は、自由状態のとき(感光体ドラム2が非回転時)に帯電ローラ4を感光体ドラム2上に保持する。図2に示すように、帯電ローラ4は感光体ドラム2の回転に伴って矢印e方向に従動回転し、かつ、従動回転時には規制面5aが帯電ローラ4を規制する。これにて、帯電ローラ4は若干押し潰された形状に変形し、かつ、摺動反力Gで感光体ドラム2の表面に適度な圧力で押し付けられる。
【0016】
(帯電装置の第1及び第2実施例、図3及び図4参照)
第1実施例である帯電装置3は、図3に示すように、帯電ローラ4を位置規制する規制部材5を摺接部材5a(規制面)と固定部材5b,5cとで構成している。第2実施例である帯電装置3は、図4に示すように、帯電ローラ4を位置規制する規制部材5を摺接部材5a(規制面)と固定部材5cと軽圧接部材5dとで構成している。軽圧接部材5dは図示しないトーションばねにて帯電ローラ4に軽く圧接し、帯電ローラ4を摺接部材5a側に弾性的に付勢する。
【0017】
帯電ローラ4の表面には、感光体ドラム2の表面に付着したトナーやトナーに含まれる後処理剤、紙粉などの異物が転写され、これらの異物がさらに摺接部材5aの従動回転方向eの上流側から付着して堆積することになる。そこで、第1及び第2実施例では、摺接部材5aを所定のタイミングで移動させる移動手段20(図5〜図9参照)を設けるとともに、摺接部材5aに帯電ローラ4の表面に付着した異物を掻き取るための溝、穴を形成した。
【0018】
また、掻き取った異物は溝や穴を通じて摺接部材5aの背面側に回り込み下方に落下する。落下する異物を回収するために、回収用部材5eが設置されている。
【0019】
移動手段20は、制御部11により動作を制御され、前記摺接部材5aを帯電ローラ4が従動回転する方向eに対して斜行する方向又は、従動回転方向eとは直交する方向に、往動又は往復動させる。また、移動手段20は、摺接部材5aを感光体ドラム2の累積駆動時間又は累積プリント枚数に応じて移動させてもよい。
【0020】
(移動手段及び溝又は穴の第1例、図5参照)
第1例は、図5に示すように、モータ21の出力軸に取り付けたカム板22と摺接部材5aの一端部とをリンク23で結合し、摺接部材5aに形成したガイド穴25に頭付きガイドピン26を係合させている。ガイド穴25は帯電ローラ4の従動回転方向eに対して直交する方向に形成されている。また、摺接部材5aには、従動回転方向eに対して斜行する複数の溝31が互いに平行に、かつ、表裏に貫通するように形成されている。
【0021】
この移動手段20では、モータ21が例えば矢印a方向に所定角度回転駆動されると、摺接部材5aはリンク23を介して右方向に付勢され、かつ、ガイド穴25に沿って従動回転方向eとは直交する方向(矢印b方向)に移動する。感光体ドラム2の累積駆動時間が所定の時間に達するごと、あるいは、累積プリント枚数が所定の枚数に達するごとに、モータ21を矢印a方向に所定角度正転させ、かつ、所定角度逆転させる。これにて、摺接部材5aが矢印b,b’方向に所定のタイミングで往復移動することになる。ここで、所定の累積駆動時間とは、例えば、5〜10分、あるいは1時間を意味し、所定の累積プリント枚数とは、例えば、10〜100枚、あるいは10000枚を意味する。
【0022】
以上のごとく、摺接部材5aが矢印b,b’方向に往復移動することにより、帯電ローラ4に付着したトナーなどの異物が溝31に掻き取られ、堆積物として滞留することが回避される。これにて、堆積物が帯電ローラ4の表面に再付着することがなくなり、ひいては感光体ドラム2の帯電むらや異常放電の発生が防止される。
【0023】
前記溝31は摺接部材5aの表裏に貫通しており、掻き取られた異物は摺接部材5aの背面から落下し、回収用部材5e(図3及び図4参照)で回収される。なお、溝31は必ずしも摺接部材5aの表裏に貫通していなくてもよく、帯電ローラ4に対向する面にのみ開口しており、異物を滞留させるだけでもよい。また、摺接部材5aは所定の累積駆動時間ごとに又は累積プリント枚数ごとに、0.1mm程度のピッチで一方向に移動するように制御してもよい。これにても、帯電ローラ4の表面から異物を掻き取ることができる。なお、このような変形例は以下に示す第2例〜第5例においても同様である。
【0024】
(移動手段及び溝又は穴の第2例、図6参照)
第2例は、図6に示すように、帯電ローラ4の従動回転方向eに対して斜行する方向に形成したガイド穴27に頭付きガイドピン26を係合させたもので、モータ21による駆動機構は前記第1例と同様である。また、摺接部材5aには、複数の穴32が表裏に貫通するように形成されている。
【0025】
この移動手段20では、モータ21が例えば矢印a方向に所定角度回転駆動されると、摺接部材5aはリンク23を介して右方向に付勢され、かつ、ガイド穴27に沿って従動回転方向eとは逆になる斜め方向(矢印c方向)に移動する。感光体ドラム2の累積駆動時間が所定の時間に達するごと、あるいは、累積プリント枚数が所定の枚数に達するごとに、モータ21を矢印a方向に所定角度正転させ、かつ、所定角度逆転させる。これにて、摺接部材5aが矢印c,c’方向に所定のタイミングで往復移動することになる。
【0026】
以上のごとく、摺接部材5aが矢印c,c’方向に往復移動することにより、帯電ローラ4に付着したトナーなどの異物が穴32に掻き取られ、堆積物として滞留することが回避される。これにて、堆積物が帯電ローラ4の表面に再付着することがなくなり、ひいては感光体ドラム2の帯電むらや異常放電の発生が防止される。
【0027】
(移動手段及び溝又は穴の第3例、図7参照)
第3例は、図7に示すように、前記第1例と同様の移動手段20を備え、摺接部材5aには、複数の溝33がジグザグ状に表裏に貫通するように形成されている。摺接部材5aの移動形態は前記第1例と同様であり、溝33によって帯電ローラ4に付着したトナーなどの異物が掻き取られる。
【0028】
(移動手段及び溝又は穴の第4例、図8参照)
第4例は、図8に示すように、前記第1例と同様の移動手段20を備え、摺接部材5aには、複数の溝34が互いに平行に、かつ、表裏に貫通するように形成されている。摺接部材5aの移動形態は前記第1例と同様であり、溝34によって帯電ローラ4に付着したトナーなどの異物が掻き取られる。
【0029】
(移動手段及び溝又は穴の第5例、図9参照)
第5例は、図9に示すように、前記第1例と同様の移動手段20を備え、摺接部材5aには、複数の溝35が互いにクロスした状態で、かつ、表裏に貫通するように形成されている。摺接部材5aの移動形態は前記第1例と同様であり、溝35によって帯電ローラ4に付着したトナーなどの異物が掻き取られる。
【0030】
(他の実施例)
なお、本発明に係る帯電装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0031】
特に、帯電装置を搭載する画像形成装置としては、モノクロのプリンタに限定するものではなく、カラープリンタあるいは複写機やファクシミリとの複合機などであってもよい。また、帯電ローラに電圧を供給する機構などは任意であり、規制部材の構成、形状も任意である。
【0032】
さらに、移動手段は駆動源としてモータ以外にソレノイドなどを用いることができ、クラッチ手段を介在させてもよい。また、カムに代えてピニオンとラックの組合せなど種々の機構を用いることができる。また、摺接部材を移動させるタイミングを感光体ドラムの累積回転数に基づいて制御してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】基本形態である帯電装置を搭載した画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】帯電ローラの従動回転時を示す説明図である。
【図3】本発明に係る帯電装置の第1実施例を示す立面図である。
【図4】本発明に係る帯電装置の第2実施例を示す立面図である。
【図5】移動手段及び溝又は穴の第1例を示す平面図である。
【図6】移動手段及び溝又は穴の第2例を示す平面図である。
【図7】移動手段及び溝又は穴の第3例を示す平面図である。
【図8】移動手段及び溝又は穴の第4例を示す平面図である。
【図9】移動手段及び溝又は穴の第5例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…プロセスユニット
2…感光体ドラム
3…帯電装置
4…帯電ローラ
5…規制部材
5a…摺接部材
20…移動手段
31,33,34,35…溝
32…穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に回転駆動される感光体ドラムを所定の電位に帯電させる帯電装置において、
回転支軸を有しない中空の弾性材からなり、感光体ドラムの表面に接触して該感光体ドラムの回転に従動回転する帯電ローラと、
帯電ローラの従動回転位置を決めるための規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、帯電ローラが摺接する摺接部材と、該摺接部材を所定のタイミングで移動させる移動手段とを含み、
前記摺接部材には帯電ローラの表面に付着した異物を掻き取るための溝又は穴が形成されていること、
を特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記摺接部材を帯電ローラが従動回転する方向に対して斜行する方向、又は、従動回転方向とは直交する方向に、往動又は往復動させること、を特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記摺接部材を感光体ドラムの累積駆動時間又は累積プリント枚数に応じて移動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−300806(P2009−300806A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156139(P2008−156139)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】