説明

帯電装置

【課題】帯電ブラシの感光体への従動を可能とし、かつ画像におけるハケ筋及び巻き目筋の発生を抑制し得る帯電装置を提供する。
【解決手段】帯電装置30は、電子写真装置の感光体ドラム1を帯電するための帯電ブラシ31を備えている。帯電ブラシ31は、感光体ドラム1に従動されるロール状の静電植毛ブラシからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置の感光体を帯電するための帯電ブラシを備えた帯電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置における接触帯電装置としてロール状ブラシを採用したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された接触帯電装置100は、図6に示すように、感光体101を帯電するロール状ブラシからなる帯電ブラシ102を有している。
【0004】
ここで、上記ロール状ブラシからなる帯電ブラシ102では、ブラシ毛の長さ及び硬度によってはブラシ毛が感光体101から離れるときに跳ねるので、図7に示すように、この帯電ブラシ102にて帯電された感光体101により転写して得られる画像全体に分散した、いわゆるハケ筋と称される短く白い霜降り状の縦スジが発生する場合がある。
【0005】
そこで、上記特許文献1に開示された接触帯電装置100では、このハケ筋の発生を解消するために、図6に示すように、帯電ブラシ102のシャフト103に駆動機構104を設け、ロール状の帯電ブラシ102とドラム状の感光体101との周速比を1以下としている。具体的には、感光体101の周速が25mm/secのとき、帯電ブラシ102を周速が25mm/sec以下となるように駆動機構104にて駆動させている。
【0006】
これにより、帯電ブラシ102のブラシ毛が感光体101から離れるときの跳ねる勢いが低減されるので、ハケ筋の発生が低減されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−101559号公報(1996年4月16日公開)
【特許文献2】特開平6−130732号公報(1994年5月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の帯電装置においては、駆動機構104を設けて帯電ブラシ102を回転駆動させているが、本来、駆動機構104は部品点数の増大となるので、存在しない方が好ましい。したがって、帯電ブラシ102を感光体101に対して従動状態つまり連れ回りとするのがよい。
【0009】
しかしながら、特許文献1の接触帯電装置100においては、駆動機構104が存在しない場合と等価であるロール状の帯電ブラシ102とドラム状の感光体101との周速比を1とした場合には、ハケ筋の帯電斑が僅かに発生し、充分ではないとしている。
【0010】
この帯電ブラシを感光体に対して従動させる技術については、例えば、特許文献2にも開示があるが、特許文献2では、帯電ブラシを感光体に対して従動させる技術はハケ筋が発生するのでよくないとしている。
【0011】
ここで、従来技術において、ハケ筋が発生するのは、従来の帯電ブラシがパイル織りブラシ等の生地ブラシからなっており、生地ブラシのパイル長を長くすると摩擦力が得られなくなって従動が不可能となる一方、従動を容易とするために生地ブラシのパイル長を短くするとハケ筋が発生し易くなるためである。
【0012】
また、従来の帯電ブラシでは、パイル織りブラシ等の生地ブラシからなっていることに起因して、巻き目筋の帯電斑が発生するという他の問題を有している。
【0013】
すなわち、生地ブラシでは、リボン状の生地をスパイラル状に巻いてブラシ化するので、図8に示すように、生地の巻き目に沿った筋状の帯電斑が発生するという問題を有している。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、帯電ブラシの感光体への従動を可能とし、かつ画像におけるハケ筋及び巻き目筋の発生を抑制し得る帯電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の帯電装置は、上記課題を解決するために、電子写真装置の感光体を帯電するための帯電ブラシを備えた帯電装置において、上記帯電ブラシは、上記感光体に従動されるロール状の静電植毛ブラシからなっていることを特徴としている。尚、従動とは、ロール状の帯電ブラシが感光体に接触することにより該感光体の回転に伴って該感光体の周速度と同じ周速度にて逆回転すること、いわゆる連れ回ることをいう。
【0016】
上記の発明によれば、帯電装置のロール状の帯電ブラシは、ロール状の静電植毛ブラシからなっており、感光体に従動される。このため、帯電ブラシを回転駆動するための駆動装置が不要となる。この結果、帯電ブラシを感光体に従動させることにより、感光体への帯電ブラシによる損傷が軽減され、感光体膜の削れ量を抑えることができ、感光体の高寿命化が期待できる。また、帯電装置の小型化が可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0017】
ここで、従来の帯電ブラシではパイル織りブラシ等の生地ブラシからなっていたので、帯電ブラシを感光体に従動させる場合、印刷した画像にハケ筋及び巻き目筋等の帯電斑が発生していた。
【0018】
しかし、本発明では、帯電ブラシは、感光体に従動されるロール状の静電植毛ブラシからなっている。この結果、静電植毛ブラシは、従来のパイル織りブラシ等の生地ブラシに比べて、ブラシ毛の長さ、硬度及び密度が適切となっているので、ハケ筋の帯電斑を抑制することができる。また、ロール状の静電植毛ブラシは、接着剤を塗布した円筒状の基材に、静電的にブラシ毛を飛翔させて植毛する。このため、リボン状の生地をスパイラル状に巻いてブラシ化するのではないので、生地の巻き目に沿った筋状の帯電斑が発生することがない。
【0019】
したがって、帯電ブラシの感光体への従動を可能とし、かつ画像におけるハケ筋及び巻き目筋の発生を抑制し得る帯電装置を提供することができる。
【0020】
本発明の帯電装置では、前記帯電ブラシは、ブラシ毛が繊維太さ3.3デシテックス(dtex)以下、長さ1.0mm以下、かつ密度50,000本/inch以上の静電植毛ブラシからなっていることが好ましい。
【0021】
これにより、感光体に従動し、かつ画像におけるハケ筋及び巻き目筋の発生を抑制するための最適なブラシ毛の長さ、硬度及び密度を得ることができる。
【0022】
具体的には、上記特性の静電植毛ブラシからなる帯電ブラシにおいては、長さ1.0mm以下であるので、感光体に対して従動させることを可能とする摩擦力が得られ、従動が可能となる。また、ブラシ毛が長さ1.0mm以下の短さであっても、繊維太さ3.3デシテックス(dtex)以下であり、かつ密度50,000本/inch以上の静電植毛ブラシからなっているので、印刷した画像にハケ筋が発生することもない。
【0023】
また、本発明の帯電装置では、前記帯電ブラシは、感光体とは反対方向に回転されると共に、上記帯電ブラシのブラシ毛は、該帯電ブラシの回転方向に対して、ブラシ毛先端がブラシ毛根元よりも先行するように斜毛して植毛されていることが好ましい。
【0024】
すなわち、帯電ブラシのブラシ毛が感光体に対して垂直に接触する場合には、ブラシ毛には座屈力が作用する。この結果、ブラシ毛が折り曲げられ、いわゆる寝癖がついた状態になると、ブラシ毛の弾性による接触圧が失われる。
【0025】
この点、本発明では、帯電ブラシのブラシ毛は、該帯電ブラシの回転方向に対して、ブラシ毛先端がブラシ毛根元よりも先行するように斜毛して植毛されている。このため、座屈力が作用することはなく、常に、一定の弾力性及び接触圧を保持することができる。
【0026】
また、本発明の帯電装置では、前記帯電ブラシは、感光体を帯電するために2個設けられているとすることが可能である。
【0027】
これにより、例えば、2個の帯電ブラシに電位差をつけて帯電させることが可能となる。この結果、1個目の帯電ブラシにて感光体の表面電位を高く付与し、2個目の帯電ブラシにて感光体の表面電位を適性値にすることができ、感光体の表面電位を精度よく設定することができる。
【0028】
尚、このように、帯電ブラシを2個設けることができたのは、帯電ブラシが感光体に従動され、その結果、駆動装置が不要となり、小スペース化が可能となったためであること、及び帯電ブラシが静電植毛ブラシからなっており、帯電ブラシの小径化が可能となったためである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の帯電装置は、以上のように、帯電ブラシは、感光体に従動されるロール状の静電植毛ブラシからなっているものである。
【0030】
それゆえ、帯電ブラシの感光体への従動を可能とし、かつ画像におけるハケ筋及び巻き目筋の発生を抑制し得る帯電装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明における帯電装置の実施の一形態を示すものであって、帯電装置の構成を示す斜視図である。
【図2】上記帯電装置を備えた電子写真装置の画像形成部を示す全体構成図である。
【図3】本発明における帯電装置の他の実施の形態を示す構成図である。
【図4】上記帯電装置を備えた電子写真装置にて作成した画像を示す平面図である。
【図5】上記帯電装置を備えた電子写真装置の感光体ドラムにおける膜厚の経時変化を示すグラフである。
【図6】従来の帯電装置の構成を示す正面図である。
【図7】上記従来の帯電装置を備えた電子写真装置にて作成した画像における霜降り状のはけ筋を示す平面図である。
【図8】上記従来の帯電装置を備えた電子写真装置にて作成した画像における斜めに走る巻き目筋を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1及び図2に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0033】
図2は、本実施の形態の帯電装置を備えた電子写真装置における画像形成部の構造を模式的に示す正面図である。尚、電子写真装置は、該電子写真装置が備えるスキャナにて読み込まれたデータや、電子写真装置に接続された外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置)からのデータを画像として出力するものである。
【0034】
図2に示すように、画像形成部40は、感光体としての感光体ドラム1と、帯電装置30と、露光装置3と、現像装置10と、転写ロール4と、搬送ベルト5と、クリーニング装置20とを備えており、感光体ドラム1の周囲に、回転方向に沿って、帯電装置30、露光装置3、現像装置10、転写ロール4及び搬送ベルト5、並びにクリーニング装置20をこの順序で配置した構成となっている。
【0035】
感光体ドラム1は、電子写真装置における静電潜像担持体となるものであり、円柱形状を有している。
【0036】
帯電装置30は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面を一様に所定の電位まで帯電させるためのものである。帯電装置30は帯電ブラシ31を備え、この帯電ブラシ31は感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向して設置されている。尚、帯電装置30については、後に詳述する。
【0037】
露光装置3は、帯電装置30によって帯電された感光体ドラム1の表面を、例えばパーソナルコンピュータ等の画像処理装置からのデータに基づき、レーザ光等により露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成させるためのものである。露光装置3として、例えば半導体レーザや発光ダイオードを用いることができる。
【0038】
現像装置10は、感光体ドラム1の表面に現像剤を供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像するためのものである。本実施の形態の現像装置10では、例えば非磁性1成分トナーからなる現像剤が使用されており、いわゆる非磁性1成分現像方式を採用している。尚、本発明においては、必ずしも非磁性1成分トナーに限らず、全ての現像剤を対象とすることができる。
【0039】
搬送ベルト5は、感光体ドラム1の表面に現像剤像が形成された後に、PPC(Plain Paper Copy)用紙等の記録媒体6を感光体ドラム1に運搬するためのものである。
【0040】
転写ロール4は、感光体ドラム1の表面の現像剤像を、転写材である記録媒体6に転写するためのものであり、板金の面方向と記録媒体6の面方向とを平行にして、搬送ベルト5を間に挟んで感光体ドラム1と隣接対向するように設置されている。尚、記録媒体6は、例えば用紙、OHP等である。転写ロール4は、例えば、ウレタンゴムロールからなっている。
【0041】
クリーニング装置20は、クリーニングブラシ21と、固体潤滑剤供給装置22と、クリーニングブレード23とを備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。
【0042】
上記構成の電子写真装置において、画像を形成する動作を、図2に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0043】
感光体ドラム1の表面は、帯電装置30によって均一に帯電される。表面が帯電された感光体ドラム1は、露光装置3によって、データに基づき露光され、感光体ドラム1の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置10の現像剤供給ロール12を介して現像ローラ11により、感光体ドラム1の表面に現像剤が供給され、感光体ドラム1の表面の静電潜像が、現像されて顕像化される。続いて、搬送ベルト5によって記録媒体6が感光体ドラム1へ運搬され、転写ロール4によって、感光体ドラム1の表面の現像剤像が、記録媒体6に転写される。そして、転写後の感光体ドラム1は、残留したトナーや紙粉等が、クリーニングブラシ21及びクリーニングブレード23によって除去される。このようなサイクルで画像形成は行われる。
【0044】
次に、本実施の形態の帯電装置30の詳細について説明する。
【0045】
本実施の形態の帯電装置30は、図1に示すように、ロール状ブラシからなる帯電ブラシ31と、回転軸であるシャフト32と、シャフト32に接続された電圧印加装置33とからなっており、帯電ブラシ31は、該帯電ブラシ31の回転軸であるシャフト32と感光体ドラム1の回転軸方向とを互いに平行にして、感光体ドラム1に隣接対向するように設置されている。
【0046】
ここで、本実施の形態の帯電装置30では、帯電ブラシ31は感光体ドラム1に従動する、つまり連れ回るようになっている。このため、シャフト32は、図示しない壁面に回転自在に軸支されており、該シャフト32を回転駆動するための駆動機構は設けられていない。具体的には、帯電ブラシ31は感光体ドラム1に接触するだけで回転するようになっており、例えば、感光体ドラム1が周速100mm/secにて時計回りに回転する場合には、帯電ブラシ31は反時計回りに周速100mm/secにて回転する。
【0047】
上記帯電ブラシ31は、図1に示すように、円柱形状の基材31aにブラシ毛31bを起毛したものからなっており、詳細には、ブラシ毛31bは基材31aに接着剤を塗布した後、ブラシ毛31bを静電植毛したものからなっている。この静電植毛とは、例えば、負極性に帯電された多数の細かく切ったブラシ毛31bを山盛りに載置し、基材31aに正極性を印加することによって、各ブラシ毛31bを静電的に飛翔させ、接着剤が塗布された基材31aに植毛する技術をいう。
【0048】
ところで、上述したように、本実施の形態の帯電装置30における帯電ブラシ31は、感光体ドラム1に従動される。このため、帯電ブラシ31を回転駆動するための駆動装置が不要となる。この結果、帯電ブラシ31を感光体ドラム1に従動させることにより、感光体ドラム1への帯電ブラシ31による損傷が軽減され、感光体膜の削れ量を抑えることができ、感光体ドラム1の高寿命化が期待できる。また、帯電装置30の小型化が可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0049】
ここで、従来の帯電ブラシではパイル織りブラシ等の生地ブラシからなっていたので、帯電ブラシを感光体ドラム1に従動させる場合、印刷した画像にハケ筋及び巻き目筋等の帯電斑が発生していた。
【0050】
しかし、本実施の形態では、帯電ブラシ31は、感光体ドラム1に従動されるロール状の静電植毛ブラシからなっている。この結果、静電植毛ブラシは、従来のパイル織りブラシ等の生地ブラシに比べて、ブラシ毛の長さ、硬度及び密度が適切となっているので、ハケ筋の帯電斑を抑制することができる。また、ロール状の静電植毛ブラシは、接着剤を塗布した円筒状の基材31aに、静電的にブラシ毛を飛翔させて植毛する。このため、リボン状の生地をスパイラル状に巻いてブラシ化するのではないので、生地の巻き目に沿った筋状の帯電斑が発生することがない。
【0051】
さらに、帯電ブラシ31を静電植毛ブラシとしたことによって帯電ブラシ31が小径となり、これによっても、帯電装置30の小型化が可能となり、コストダウンを図ることができる。また、帯電ブラシ31を感光体ドラム1に従動させることにより、注入帯電の割合が増え、放電生成物を抑えることができ、これによっても、感光体ドラム1の高寿命化を図ることができる。
【0052】
したがって、帯電ブラシ31の感光体ドラム1への従動を可能とし、かつ画像におけるハケ筋及び巻き目筋の発生を抑制し得る帯電装置30を提供することができる。
【0053】
また、本実施の形態の帯電装置30では、帯電ブラシ31は、ブラシ毛が繊維太さ3.3デシテックス(dtex)以下、長さ1.0mm以下、かつ密度50,000本/inch以上の静電植毛ブラシからなっていることが好ましい。
【0054】
これにより、感光体ドラム1に従動し、かつ画像におけるハケ筋及び巻き目筋の発生を抑制するための最適なブラシ毛31bの長さ、硬度及び密度を得ることができる。
【0055】
具体的には、上記特性の静電植毛ブラシからなる帯電ブラシ31においては、長さ1.0mm以下であるので、感光体ドラム1に対して従動させることを可能とする摩擦力が得られ、従動が可能となる。
【0056】
また、ブラシ毛31bが長さ1.0mm以下の短さであっても、繊維太さ3.3デシテックス(dtex)以下であり、かつ密度50,000本/inch以上の静電植毛ブラシからなっているので、印刷した画像にハケ筋が発生することもない。
【0057】
ここで、帯電ブラシ31のブラシ毛31bが感光体ドラム1に対して垂直に接触する場合には、ブラシ毛31bには座屈力が作用する。この結果、ブラシ毛31bが折り曲げられ、いわゆる寝癖がついた状態になると、ブラシ毛31bの弾性による接触圧が失われる。
【0058】
そこで、本実施の形態では、帯電ブラシ31のブラシ毛31bは、該帯電ブラシ31の回転方向に対して、ブラシ毛先端がブラシ毛根元よりも先行するように斜毛して植毛されている。このため、座屈力が作用することはなく、常に、一定の弾力性及び接触圧を保持することができる。
【0059】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
本実施の形態の帯電装置30’は、図3に示すように、前記実施の形態1の帯電装置30の構成に加えて、帯電ブラシ31は、感光体ドラム1を帯電するために2個設けられている。
【0061】
これにより、例えば、感光体ドラム1の回転方向における下流側の帯電ブラシ31に電圧印加装置33を設けると共に、感光体ドラム1の回転方向における上流側の帯電ブラシ31に電圧印加装置34を設けることにより、2個の帯電ブラシ31・31に電位差をつけて帯電させることが可能となる。この結果、1個目の上流側の帯電ブラシ31にて感光体ドラム1の表面電位を高く付与し、2個目の下流側の帯電ブラシ31にて感光体ドラム1の表面電位を適性値にすることができ、感光体ドラム1の表面電位を精度よく設定することができる。
【0062】
尚、このように帯電ブラシ31・31を2個設けることができたのは、帯電ブラシ31が感光体ドラム1に従動され、その結果、駆動装置が不要となり、小スペース化が可能となったためであること、及び帯電ブラシ31が静電植毛ブラシからなっており、帯電ブラシ31の小径化が可能となったためである。
【0063】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0064】
本実施の形態の帯電装置30についての効果を確認するために、各種の性能評価実験を行った。
【0065】
〔実施例1〕
最初に、本実施の形態の帯電装置30の帯電ブラシ31を用いて、感光体ドラム1への従動性及び画質について、評価試験を行った。
【0066】
試験体としては、表1に示すように、帯電ブラシ31の繊維太さについて、2.3デシテックス(dtex)〜6.1デシテックス(dtex)の繊度となるものを使用した。また、繊維長さについては0.5mm〜1.5mmとした。さらに、植毛密度は45,000本/inch〜150,000本/inchとした。尚、デシテックス(dtex)とは、「長さ10,000mの繊維(糸)の重さがNグラムであるとき、その繊維(糸)はNデシテックス(dtex)である」と定義され、繊維(糸)の太さを表す単位である。1デシテックス(dtex)は、従来の0.9デニール(D)に相当する。
【0067】
また、試験条件として、電子写真装置はA4カラータンデム機を使用し、感光体ドラム1の周速100mm/secとし、帯電ブラシ31の両端にて2Nのバネ荷重をかけた。また、ブラシ印加電圧は直流電圧−1kvとした。さらに、ブラシシャフト外径は直径8.5mmとし、評価画像は600dpiにおける1on/1off画像とした。尚、1on/1off画像とは、縦横の600dpiにおいてそれぞれ1ドットおきに印字した画像をいう。
【0068】
【表1】

【0069】
その結果、表1に示すように、試験番号No.1及び試験番号No.2にて示す繊維太さが6.1デシテックス(dtex)及び4.1デシテックス(dtex)のものでは、従動させることができず、かつ画質においてもはけ筋が発現した。
【0070】
これに対して、試験番号No.3〜試験番号No.12にて示す繊維太さが2.3デシテックス(dtex)〜3.3デシテックス(dtex)のものでは、従動させることができ、かつ画質においてもはけ筋はなく、図4に示すように、良好であった。ただし、試験番号No.7〜試験番号No.8にて示す繊維太さが3.3デシテックス(dtex)であり、繊維長さが1.2mm〜1.5mmであり、さらに植毛密度が50,000本/inchの場合には、従動が滑らかではなく、画質においても、若干のハケ筋が発現した。
【0071】
さらに、試験番号No.9にて示す繊維太さが3.3デシテックス(dtex)であり、繊維長さが1.0mmであり、かつ植毛密度が45,000本/inchの場合には、従動は可能であったが、画質において若干のハケ筋が発現した。
【0072】
この結果、ブラシ毛31bが繊維太さ3.3デシテックス(dtex)以下、長さ1.0mm以下、かつ密度50,000本/inch以上の帯電ブラシ31が、従動でき、かつ画質もよいことが確認できた。
【0073】
〔実施例2〕
次に、感光体ドラム1の膜厚についての経時変化について試験を行った。
【0074】
試験条件は、表2に示すとおりとした。
【0075】
【表2】

【0076】
すなわち、実施例では、試験体としては、材質ポリアミドの静電植毛ブラシのブラシ毛31bであって、繊維太さ2.3デシテックス(dtex)、ブラシ毛31bの長さ0.8mm、かつ密度150,000本/inchの帯電ブラシ31とした。
【0077】
また、電子写真装置はA4カラータンデム機を使用し、感光体ドラム1との周速差0mm/sec(=従動)とし、ブラシ保持方法として帯電ブラシ31の両端にて2Nのバネ荷重をかけ、帯電ブラシ31の感光体ドラム1への食い込み量を約0.1mmとした。
【0078】
一方、従来例では、試験体としては、材質ポリアミドのパイル織りブラシのブラシ毛であって、繊維太さ2.3デシテックス(dtex)、ブラシ毛の長さ2mm、かつ密度240,000本/inchの帯電ブラシとした。
【0079】
また、電子写真装置はA4カラータンデム機を使用し、感光体ドラム1との周速差は、帯電ブラシの周速を感光体ドラム1の周速に対して同一の回転方向に2倍とした。さらに、帯電ブラシの両端にて軸受けにて固定した。また、帯電ブラシ31の感光体ドラム1への食い込み量は約0.5mmとした。
【0080】
その結果、図5に示すように、従来例では、印字枚数20,000枚経過した後の感光体ドラム1の膜厚が約5μm減少したのに対して、実施例では、印字枚数20,000枚経過した後の感光体ドラム1の膜厚は1μm以下の減少であった。
【0081】
この結果、本実施例の帯電ブラシ31は、感光体ドラム1の膜厚の低下が少ないことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、電子写真装置の感光体を帯電するための帯電ブラシを備えた帯電装置に関するものであり、帯電装置及び該帯電装置を備えた電子写真装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 感光体ドラム(感光体)
20 クリーニング装置
30 帯電装置
30’ 帯電装置
31 帯電ブラシ
31a 基材
31b ブラシ毛
32 シャフト
33 電圧印加装置
34 電圧印加装置
40 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置の感光体を帯電するための帯電ブラシを備えた帯電装置において、
上記帯電ブラシは、上記感光体に従動されるロール状の静電植毛ブラシからなっていることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記帯電ブラシは、ブラシ毛が繊維太さ3.3デシテックス(dtex)以下、長さ1.0mm以下、かつ密度50,000本/inch以上の静電植毛ブラシからなっていることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
前記帯電ブラシは、感光体とは反対方向に回転されると共に、
上記帯電ブラシのブラシ毛は、該帯電ブラシの回転方向に対して、ブラシ毛先端がブラシ毛根元よりも先行するように斜毛して植毛されていることを特徴とする請求項1又は2記載の帯電装置。
【請求項4】
前記帯電ブラシは、感光体を帯電するために2個設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の帯電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−180245(P2011−180245A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42382(P2010−42382)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】