説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】低〜中〜高速の電子写真装置において前露光手段が不要で感光体を均一に帯電可能で、充分な帯電能力を有する帯電部材を提供する。また、多色ゴースト画像等の発生を抑制でき、高品位な電子写真画像を安定して形成可能な電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−Nb結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子写真感光体の表面を帯電する方式の1つとして、接触帯電方式が実用化されている。接触帯電方式は、感光体に接触配置された帯電部材に電圧を印加し、該帯電部材と該感光体との間の当接部近傍で微少な放電をさせることによって、該感光体の表面を帯電する方式である。
【0003】
接触帯電方式に用いられる帯電部材においては、帯電部材と感光体との当接ニップを十分に確保する観点から、導電性の弾性層を有する構成が一般的である。しかしながら、導電性弾性層は、低分子量成分を比較的多量に含むことが多いため、この低分子量成分が帯電部材の表面にブリードし、感光体に付着することがある。そこで、低分子量成分の帯電部材の表面へのブリードの抑制を目的として、導電性弾性層上に表面層を設けることがある。
【0004】
ところで、接触帯電方式においては、帯電装置および電子写真装置の小型化、並びにコスト削減を図るために、直流電圧のみの電圧を帯電部材に印加する方式(以降「DC接触帯電方式」ともいう。)が採用されることがある。ところが、DC接触帯電方式を採用した場合の課題として、感光体の帯電1周目と帯電2周目以降の飽和電位との間に電位差が生じることがある。かかる電位差は、文字や黒い図形の画像を出力した後に、引き続いてハーフトーン画像を出力したときに、当該ハーフトーン画像上に、直前に出力した文字や黒い図形の跡が現れる現象を生じさせる原因となる。なお、本明細書においては、直前に出力した画像の跡が現れている画像を、「ゴースト画像」とも称する。
【0005】
特許文献1は、ゴースト画像の発生を抑制することを目的として、帯電部材の表面層の電気抵抗値を高くすると共に薄膜化し、更には、導電性弾性層の電気抵抗値を低くすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−086263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フルカラーの電子写真画像形成装置においては、上記の電位差とは異なる種類の電位差に起因する「多色ゴースト画像」の発生という課題がある。
【0008】
以下に「多色ゴースト画像」の発生原因を説明する。すなわち、フルカラーの電子写真画像形成装置として、中間転写体を用いたものが知られている。中間転写体を用いたフルカラーの電子写真画像の形成は、複数の感光体上に、各色のトナー像をそれぞれ形成し、各感光体から、中間転写体上に順次各色のトナー画像を転写し、その後、中間転写体上の多色トナー像を紙などの記録媒体に一括して転写することによって行われる。
【0009】
ここで、中間転写体が、トナー画像を担持した状態で、次のステーションの感光体と接したときに、中間転写体のトナー画像が形成されている部分と、トナー画像が形成されていない部分とでは、中間転写体から感光体に流れる電流量が異なるため、感光体上に電位差が生じてしまう。かかる電位差を生じた感光体に対して、新たな電子写真画像の形成のために帯電させたときに、当該電位差を解消することができなかった場合、新たに形成された電子写真画像には、当該電位差に起因する濃度ムラが発生することがある。このような濃度ムラが生じた電子写真画像を「多色ゴースト画像」と称する。感光体と接する中間転写体が担持しているトナーの層の数が多くなればなる程、その感光体に生じる電位差が大きくなり、その結果として、電子写真画像に生じる濃度ムラも大きくなる傾向にある。そして、多色ゴースト画像は、プロセススピードを速めるほど、発生しやすくなる。
【0010】
多色ゴースト画像の発生を抑える方法として、帯電部材による感光体の一次帯電に先立って、感光体に生じた上記電位差を、前露光装置を用いて除去する方法が知られている。しかし、前露光装置を用いること無しに、多色ゴースト画像の発生を抑制することができれば、電子写真画像形成装置やプロセスカートリッジの小型化、及びコスト削減が達成可能となる。
【0011】
そこで本発明は、優れた帯電能力を有し、電位差が生じている感光体であっても所定の電位に均一に帯電させ得る帯電部材を提供することを目的とする。また、本発明は、高品位な電子写真画像を安定して形成可能な電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−Nb結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有していることを特徴とする。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
式(1)中、RおよびRは、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
式(3)〜(6)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、各々式(1)中のケイ素原子および酸素原子との結合位置を示す。
【0021】
また、本発明の他の態様によれば、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている上記の帯電部材とを有する電子写真装置が提供される。更に、本発明の他の態様によれば、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている上記の帯電部材とを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低〜中〜高速の電子写真装置において前露光手段が不要で感光体を均一に帯電可能で、充分な帯電能力を有する帯電部材が提供される。また、多色ゴースト画像の発生を抑制でき、高品位な電子写真画像を安定して形成可能な電子写真装置およびプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る帯電部材の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る帯電部材を備えた電子写真装置の概略構成図である。
【図3】本発明に係る高分子化合物の29Si−NMRでの測定結果を示す図である。
【図4】本発明に係る高分子化合物の13C−NMRでの測定結果を示す図である。
【図5】感光体ドラムの表面電位測定装置の概略を示す図である。
【図6】本発明に係る表面層の形成工程における架橋反応の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の帯電部材は、基体、該基体上に形成された弾性層、および該弾性層上に形成された表面層を有する。帯電部材の最も簡単な構成は、基体上に弾性層および表面層の2層を設けた構成であるが、基体と弾性層との間や弾性層と表面層との間に別の層を1つまたは2つ以上設けてもよい。帯電部材の代表例であるローラ形状の帯電ローラの断面を示した図1において、101は基体であり、102は弾性層であり、103は表面層である。
【0025】
<基体>
帯電部材の基体は、導電性を有していればよく(導電性基体)、例えば、鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属製(合金製)の基体を用いることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理などの表面処理を施してもよい。
【0026】
<弾性層>
弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーの如き弾性体を1種または2種以上用いることができる。ゴムとしては以下のものが挙げられる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴム等。
【0027】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーおよびオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」、(株)クラレ製の商品名「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」、住友化学(株)製の商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製の商品名「サントプレーン」などが挙げられる。
【0028】
また、弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。弾性層の電気抵抗値は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗値の好適な範囲は10Ω以上10Ω以下であり、より好適な範囲は10Ω以上10Ω以下である。導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。
【0029】
陽イオン性界面活性剤としては以下のものが挙げられる。第四級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム等)、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩およびハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩等)。
【0030】
陰イオン性界面活性剤としては以下のものが挙げられる。脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩および高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩。
【0031】
帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよび多価アルコール脂肪酸エステルの如き非イオン性帯電防止剤が挙げられる。電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(Li、Na、Kなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩としては、具体的には、LiCFSO、NaClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCNおよびNaClなどが挙げられる。
【0032】
また、弾性層用の導電剤として、周期律表第2族の金属(Ca、Baなど)の塩(Ca(ClOなど)やこれから誘導される帯電防止剤を用いることもできる。また、これらと多価アルコールもしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオールとの錯体の如きイオン導電性導電剤を用いることもできる。多価アルコールとしては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。モノオールとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
また、弾性層用の導電剤として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンの如き導電性のカーボンを用いることもできる。ゴム用カーボンとして以下のものが挙げられる。Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Reinforcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)およびMedium Thermal(MT:中粒熱分解)。
【0034】
また、弾性層用の導電剤として、以下のものを用いることもできる。グラファイト(天然グラファイトおよび人造グラファイト等)、金属酸化物(酸化スズ、酸化チタンおよび酸化亜鉛等)、金属(ニッケル、銅、銀およびゲルマニウム等)、および導電性ポリマー(ポリアニリン、ポリピロールおよびポリアセチレン等)。
【0035】
また、弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウムおよび硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤が挙げられる。
【0036】
弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、MD−1で60度以上85度以下であることが好ましく、特には70度以上80度以下であることがより好ましい。
【0037】
また、弾性層の形状は、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
【0038】
<表面層>
本発明に係る帯電部材を構成する表面層は、Si−O−Nbの結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は下記式(1)で示される構成単位と下記式(2)で示される構成単位とを有している。
【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
式(1)中、RおよびRは、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
式(3)〜(6)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、各々式(1)中のケイ素原子および酸素原子との結合位置を示す。
【0047】
本発明における前記高分子化合物は、シロキサン結合およびケイ素原子に結合した有機鎖部分が互いに重合している構造を有するため架橋密度が大きい。そのため、帯電部材の弾性層上に前記高分子化合物からなる表面層を形成した場合、弾性層中の低分子量成分が帯電部材の表面に染み出すことを有効に抑制することができる。加えて、前記高分子化合物中にSi−O−Nb結合を有することによって帯電部材の帯電能力を高めることができる。
【0048】
前記高分子化合物における式(1)のR及びRとしては、各々独立に下記式(7)〜(10)で示される構造から選ばれる何れかであることが好ましい。このような構造とすることで、表面層をより強靭で耐久性に優れたものとすることができる。特に下記式(8)および(10)に示されるエーテル基を含む構造は、表面層の弾性層への密着性をより一層向上させることができる。
【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
【化16】

【0053】
式(7)〜(10)中、N、M、L、Q、S及びTは、各々独立に1以上8以下の整数を示し、x’及びy’は、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、式(1)のケイ素原子及び酸素原子との結合位置を示す。
【0054】
本発明に係る高分子化合物の一例として、式(1)中のRが式(3)で示す構造であり、Rが式(4)で示す構造であるときの高分子化合物の構造の一部を以下に示す。
【0055】
【化17】

【0056】
また、本発明に係る高分子化合物の他の例として、式(1)中のRが式(3)で示す構造であり、Rが式(6)で示す構造であるときの高分子化合物の構造の一部を以下に示す。
【0057】
【化18】

【0058】
前記高分子化合物におけるニオブとケイ素との原子数比Nb/Siは0.1以上12.5以下であることが好ましい。帯電部材の帯電能力向上の観点からこの値が0.1以上であれば好ましく、0.5以上であればより好ましい。また塗工性やコーティング液の保存性の安定化の観点からこの値が12.5以下であれば好ましく、10.0以下であればより好ましい。
【0059】
前記高分子化合物は、例えば、下記式(11)で示される構造を有する加水分解性化合物と、下記式(12)で示される加水分解性化合物とを加水分解、脱水縮合させて縮合物を得た後、当該縮合物が有するエポキシ基を開裂させて架橋させることで得られる。このとき、式(11)の3官能部位と、式(12)の5官能部位とで生じる加水分解と縮合の程度を制御し、膜物性の弾性率、緻密性を制御することができる。また、式(11)のR33の有機鎖部位を硬化サイトとして用いることで、表面層の強靭さ、および表面層の弾性層への密着性の制御が可能である。また、R33を紫外線照射により開環するエポキシ基を有する有機基とすることで、従来の熱硬化性材料と比較して硬化時間を短縮でき、弾性層の熱劣化を抑制することができる。
【0060】
【化19】

【0061】
式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R41は、各々独立に炭化水素基を示す。
【0062】
【化20】

【0063】
【化21】

【0064】
【化22】

【0065】
【化23】

【0066】
式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60およびR61は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は、各々独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4〜12の整数を示す。また、「*」は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。
【0067】
本発明における前記高分子化合物は、式(11)及び(12)で示される加水分解性化合物と、式(17)で示される加水分解性化合物との架橋物であることが好ましい。この場合、合成段階での式(11)及び(12)の化合物の溶解性、塗工性、更に硬化後の膜物性として、電気特性を向上させることが可能となるので好ましい。特にR68がアルキル基の場合、溶解性、塗工性の改善として好ましい。また、R68がフェニル基の場合は、電気特性、特に体積抵抗率の向上に寄与するので好ましい。
【0068】
【化24】

【0069】
式(17)中、R68は、アルキル基またはアリール基を示し、R69〜R71は、各々独立に炭化水素基を示す。
【0070】
本発明に係る帯電部材は、上記の加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層の外周に形成した後に、該塗膜中の加水分解縮合物を架橋させて上記高分子化合物を形成し、これを表面層とすることによって形成することができる。
【0071】
〔高分子化合物の製造例〕
ここでは、前記高分子化合物の製造例として、表面層用のコーティング剤(塗料)の調製方法と、弾性層上において高分子化合物を形成させて表面層を得る方法をより具体的に説明する。高分子化合物は、次の工程(1)〜工程(6)を経て製造される。尚、成分(A)は式(11)の加水分解性シラン化合物であり、成分(B)は式(17)の加水分解性シラン化合物、成分(C)は式(12)の加水分解性ニオブ化合物である。
(1):成分(A)と成分(B)と成分(C)のモル比(成分(C)/[成分(A)+成分(B)]を0.1以上12.5以下に調整する工程、
(2):成分(A)と成分(B)を混合し、成分(D)の水、成分(E)のアルコールを添加した後、加熱還流により加水分解・縮合を行う工程、
(3):前記加水分解・縮合を行った溶液に成分(C)を添加し加水分解・縮合を行う工程、
(4):成分(F)の光重合開始剤を添加し、アルコールで濃度を希釈してコーティング剤(塗料)を得る工程、
(5):基体上に形成された弾性層上にコーティング剤を塗布する工程、
(6):加水分解縮合物を架橋反応させてコーティング剤を硬化する工程。
【0072】
尚、工程(2)において成分(A)、成分(B)及び成分(C)を同時に添加してもよい。また加水分解性シラン化合物は、成分(A)の1種類のみを使用してもよく、また成分(A)を2種類以上、もしくは成分(B)を2種類以上併用してもよい。
【0073】
式(11)中のR34〜R36の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、更にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0074】
以下に、式(11)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。4−(1,2−エポキシブチル)トリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリメトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリエトキシシラン。
【0075】
式(17)中のR68のアルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基が好ましく、更には炭素数6〜10のものが好ましい。R68のアリール基としては、フェニル基が好ましい。R69〜R71の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0076】
以下に、式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン。
【0077】
式(17)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用し、R68がフェニル基を有する場合、R68が炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基を有する加水分解性シラン化合物と併用することが更に好ましい。併用することにより、加水分解・縮合反応を通して構造が変化しても溶媒への相溶性が良好となる。
【0078】
式(12)中のR37〜R41の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0079】
以下に、式(12)で示される構造を有する加水分解性ニオブ化合物の具体例を示す。ニオブメトキシド、ニオブエトキシド、ニオブn−プロポキシド、ニオブi−プロポキシド、ニオブn−ブトキシド、ニオブi−ブトキシド、ニオブsec−ブトキシド、ニオブt−ブトキシド。
【0080】
成分(A)と成分(B)と成分(C)のモル比Nb/Siを、0.1以上12.5以下に調整することが好ましく、更に0.5以上10.0以下にすることが好ましい。0.1以上であれば、帯電能力がより向上し、多色ゴーストを抑制する効果が高くなる。12.5以下では、塗工性やコーティング液の保存性が安定する。
【0081】
また成分(D)の水の添加量は、成分(A)、成分(B)のモル数に対して、(成分(D)/{成分(A)+成分(B)}が、0.3以上6.0以下が好ましい。更に1.2以上1.8以下が好ましい。0.3以上であれば、縮合が十分に進行して未反応のモノマーが残存し難く成膜性が良好である。原料の有効使用の観点からもモノマーが残存しない系が望ましい。また6.0以下であれば、縮合の進行が早過ぎることも無く、白濁化や沈殿を防止できる。また、水分が多過ぎることも無いので極性が高過ぎることも無く、縮合物と水、アルコール混合時の相溶性も良好であるため、白濁化や沈殿を防止できる。
【0082】
また、成分(E)のアルコールとして、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール、第1級アルコールと第2級アルコールの混合系、または第1級アルコールと第3級アルコールの混合系を用いることが好ましい。特にエタノール、メタノールと2−ブタノールの混合液、エタノールと2−ブタノールの混合液、エタノール、2−ブタノールと1−ブタノールの混合液の使用が好ましい。
【0083】
また、成分(G)の光重合開始剤は、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩を用いることが好ましい。その他のカチオン重合開始剤としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。光重合開始剤はコーティング剤との相溶性を向上させるために事前にアルコールやケトンなどの溶媒に希釈しても良い。
【0084】
各種カチオン重合開始剤の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(18)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマーSP150、(株)アデカ製)や、下記式(19)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
【0085】
【化25】

【0086】
【化26】

【0087】
以上のように合成されたコーティング剤を実際に塗布する適当な濃度に調整する。このとき塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールおよび2−ブタノールなどのアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。特にエタノール、2−ブタノールと1−ブタノールの混合溶媒が好ましい。
【0088】
〔表面層の形成〕
このようにして調製されたコーティング剤は、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの手法によって、弾性層の上に塗布されコーティング層が形成される。コーティング層に活性化エネルギー線を照射すると、コーティング剤に含まれる加水分解縮合物中のカチオン重合可能なエポキシ基が開裂・重合する。これによって、該加水分解縮合物同士が架橋し硬化し、表面層が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0089】
表面層の硬化を紫外線で行うことで、余分な熱が発生しにくく、熱硬化のような溶剤の揮発中における相分離が生じにくく、均一な膜状態が得られる。このため、感光体への均一で安定した電位を与えることができる。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による弾性層の劣化を抑制することができるため、弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0090】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が用いられる。なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間やランプ出力、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0091】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0092】
架橋および硬化反応の具体例を図6に示す。すなわち、前記した成分(A)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いると共に、成分(B)および成分(C)を加水分解させて生成する縮合物は、カチオン重合可能な基としてエポキシ基(グリシドキシプロピル基)を有する。このような加水分解縮合物のエポキシ基はカチオン重合触媒(図6中、Rと記載)の存在下で、エポキシ環が開環し、連鎖的に重合が進む。その結果、NbO5/2およびSiO3/2を含むポリシロキサン同士が架橋し、硬化して本発明に係る表面層が形成される。なお図6中、nは1以上の整数を示す。
【0093】
表面層の膜厚の目安としては、帯電能力、弾性層を有する場合における弾性層からの低分子成分のブリードアウトの抑制等の観点から、10〜400nm、特には、50〜350nmが好ましい。
【0094】
<電子写真装置及びプロセスカートリッジ>
本発明に係る電子写真装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている帯電部材とからなり、該帯電部材として本発明に係る帯電部材が使用されているものである。また本発明に係るプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている帯電部材とを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジであって、該帯電部材として本発明に係る帯電部材が使用されているものである。
【0095】
図2によって、本発明の帯電部材が帯電ローラとして使用される電子写真装置及びプロセスカートリッジの概略構成について説明する。各色のトナーを内包する現像器等の現像手段4a〜4dにそれぞれ対向配設された感光体ドラム1a〜1dが中間転写ベルト6の移動方向に並設されている。各現像手段により各感光体ドラム上に形成された各色トナー画像は転写ローラ7a〜7dにより中間転写体に静電的に順次重ねて転写され、イエロー、マゼンタ、シアンにブラックを加えた4色のトナーによるフルカラートナー画像が形成される。また、各感光体ドラム上に各色トナー像を形成するための、帯電手段2a〜2d、露光手段3a〜3d、現像手段4a〜4dが、各感光体ドラム1a〜1dの周りに配設されている。さらに、中間転写ベルトにトナー像を転写した後、各感光体ドラム上に残留するトナーを摺擦して回収するクリーニングブレードを有するクリーニング装置5a〜5dが配設されている。
【0096】
次に、画像形成動作について説明する。各帯電手段2a〜2dである帯電ローラにより均一に帯電された感光体ドラム1a〜1dの表面に、パーソナルコンピュータ等のホストからの画像データに応じて変調されたレーザビームが露光手段3a〜3dより照射され、各色に対して所望の静電潜像が得られる。この潜像はこれと対向して配設されている各色のトナーを内包した現像器である現像手段4a〜4dにより、現像位置で反転現像されトナー像として可視化される。このトナー像は、各転写位置で中間転写ベルト6に順次転写され、不図示の給紙手段により所定のタイミングで給紙され、搬送手段により搬送されてくる転写材Pに一括して転写される。この転写材P上のカラートナー画像は不図示の定着装置によって加熱溶融され、転写媒体上に永久定着され所望のカラープリント画像が得られる。
【0097】
また、電子写真方式のカラー画像形成装置では、4色のトナーを用いてフルカラートナー像を形成するフルカラーモードだけではなく、ブッラクトナー用の感光体ドラムのみを用いて白黒画像を形成するモノカラーモードを選択、切り換え可能な構成となっている。
【0098】
更に詳細に説明すると、電子写真感光体(感光体ドラム)は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。プロセススピードは可変である。電子写真感光体には、例えば、導電性を有する円筒状の支持体と該支持体上に無機感光材料または有機感光材料を含有する感光層とを有する公知の電子写真感光体などを採用すればよい。また、電子写真感光体は、電子写真感光体の表面を所定の極性、電位に帯電させるための電荷注入層をさらに有していてもよい。
【0099】
帯電部材(帯電手段)である帯電ローラは、電子写真感光体に所定の押圧力で接触させてあり、本装置では電子写真感光体の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラに対して帯電バイアス印加電源から、所定の直流電圧のみが印加されることで、電子写真感光体の表面が所定の極性電位に一様に帯電処理される。
【0100】
露光手段には公知の手段を利用することができ、例えば、レーザービームスキャナーなどが挙げられる。電子写真感光体の帯電処理面に該露光手段により目的の画像情報に対応した像露光がなされることにより、電子写真感光体の帯電面の露光明部の電位が選択的に低下(減衰)して電子写真感光体に静電潜像が形成される。
【0101】
現像手段としては公知の手段を利用することができる。例えば、本例の現像手段は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体と、収容されているトナーを撹拌する撹拌部と、トナー担持体のトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材とを有する構成とされている。
【0102】
現像手段は、電子写真感光体の表面の静電潜像の露光明部に、電子写真感光体の帯電極性と同極性に帯電しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する。現像方式としては、特に制限はなく、既存の方法を用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式、磁気ブラシ方式などが挙げられるが、特にフルカラー画像を出力するフルカラー電子写真装置には、トナーの飛散性改善などの目的より、接触現像方式が好ましい。接触現像方式に用いられるトナー担持体としては、接触安定性の確保という面から、ゴムなどの弾性を有する化合物を用いることが好ましい。例えば、金属などの支持体上に導電性を付与した弾性層を設ける現像ローラなどが挙げられる。この弾性層は、弾性材料を発泡成形した発泡体を弾性材料として用いてもよい。また、さらにこの上に層を設けたり、表面処理を施してもよい。表面処理としては、紫外線や電子線を用いた表面加工処理、化合物などを表面に付着および含浸させる表面改質処理などが挙げられる。
【0103】
中間転写ベルトは公知の手段を利用することができ、例えば、樹脂及びエラストマー材料に導電性微粒子等を含有させ中電気抵抗値に調整された導電性ベルトなどを例示することができる。
【0104】
転写手段としての転写ローラは公知の手段を利用することができ、例えば、金属などの支持体上に中電気抵抗値に調整された弾性樹脂層を被覆してなる転写ローラなどを例示することができる。転写ローラは、中間転写ベルトを介して、電子写真感光体に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、電子写真感光体の回転と順方向に電子写真感光体の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。
【0105】
転写残余トナーなどの電子写真感光体上の残留物は、ブレード型などのクリーニング手段により、電子写真感光体上より回収される。その後、再び帯電ローラによる帯電を受け、繰り返し画像形成が行われる。
【0106】
なお、本例の電子写真装置は、電子写真感光体と帯電ローラを、樹脂成形体などの支持部材によって一体的に支持し、この一体的な構成のまま電子写真装置本体に着脱可能に構成されたプロセスカートリッジ(不図示)を有する装置であってもよい。電子写真感光体や帯電ローラだけでなく、さらに、現像手段やクリーニング手段も併せて一体的に支持したプロセスカートリッジとしてもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。以下の説明において、「部」は「質量部」を意味する。先ず、実施例に先立って、〔1〕導電性弾性層の形成及び評価、並びに〔2〕縮合物の合成及び評価について説明する。
【0108】
〔1〕導電性弾性層の形成及び評価
表1に示す材料を6L加圧ニーダー(使用装置:TD6−15MDX、トーシン社製)にて、充填率70体積%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド[商品名:サンセラーTBzTD、三新化学工業(株)製]4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性層用の混練物1を得た。
【0109】
【表1】

【0110】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形、鋼製の基体(表面をニッケルメッキ加工したもの、以下「芯金」という)を準備した。そして、この芯金上の円柱面の軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを温度80℃で30分間乾燥させた後、さらに120℃で1時間乾燥させた。
【0111】
混練物1を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の導電性弾性層を積層した導電性弾性ローラを作製した。押出機はシリンダー径70mm、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッド、シリンダー、スクリューの温度を90℃とした。
【0112】
次に、上記ローラを異なる温度設定にした2つのゾーンをもつ連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定し、30分間で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定し、こちらも30分間で通過させ、加硫された導電性弾性ローラを得た。
【0113】
次に、この導電性弾性ローラの導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12秒間)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さRzが5.5μmで、振れが18μmの導電性弾性ローラ1(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を得た。
【0114】
十点平均粗さRzは、JISB6101に準拠して測定した。振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430vを用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0115】
〔2〕縮合物の合成及び評価
〔2−1〕縮合物1の調製
次に以下の2段階反応によって縮合物1を合成した。
【0116】
(合成−1):第1段階反応
以下の表2に示す各材料を混合した後、室温で30分間攪拌した。続いてオイルバスを用い、120℃で20時間加熱還流を行うことによって、各加水分解性シラン化合物の縮合物中間体1を得た。このときの合成濃度は、固形分(加水分解性化合物が全て脱水縮合したと仮定した時の、溶液全質量に対する質量比率)として28.0質量%である。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
(合成−2):第2段階反応
次に、縮合物中間体1の45.37gに対し、ニオブエトキシド(Nb−1)[Gelest(株)製]28.63g(0.090モル)添加し、室温で3時間攪拌して縮合物1を得た。一連の攪拌は750rpmの速度で行った。Nb/Si比は1.0であった。
【0120】
<評価(1)>:縮合物1の安定性;
縮合物1の安定性を以下の評価基準で評価した。
A:1ヶ月放置しても白濁・沈殿が無い状態である。
B:2週間程度から白濁気味になる状態である。
C:1週間程度から白濁気味になる状態である。
D:合成時に白濁・沈殿が生じる状態である。
【0121】
<評価(2)>:縮合物1の硬化膜中の式(1)の構造の確認;
次に29Si−NMR、13C−NMR測定[使用装置:JMN−EX400、JEOL社]を用いて、縮合物1の硬化物中の式(1)の構造の存在の有無を確認した。測定用試料の作成方法は以下のとおりである。
【0122】
先ず、光カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマーSP−150、(株)アデカ製]を、メタノールで10質量%となるように希釈した。次いで、25gの縮合物1に対して、上記光カチオン重合開始剤のメタノール希釈液を0.7g添加した。これを「縮合物1と光重合性開始剤との混合物」と称する。この「縮合物1と光重合性開始剤との混合物」に対して、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を加えて、理論固形分を7.0質量%に調整し、コーティング液No.1を得た。
【0123】
次いで、アルコールで脱脂したアルミニウム製シート(厚さ:100μm)の表面にコーティング液No.1をスピンコートした。スピンコート装置としては、1H−D7(商品名、ミカサ(株)製)を用いた。スピンコートの条件としては、回転数300rpm、回転時間を2秒間とした。
【0124】
そして、コーティング液No.1の塗膜を乾燥させた後、当該塗膜に対して、波長が254nmの紫外線を照射して、当該塗膜を硬化させた。当該塗膜が受ける積算光量は、9000mJ/cmとした。紫外線の照射には、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。得られた硬化膜をアルミニウム製シートから剥離し、メノウ製の乳鉢を用いて粉砕し、NMR測定用試料を調製した。この試料について、核磁気共鳴装置(商品名:JMN−EX400、JEOL社製)を用いて29Si−NMRスペクトル、および、13C−NMRスペクトルを測定した。
【0125】
29Si−NMRスペクトルを図3に示す。同図内にスペクトルを波形分離したピークを同時に示した。−64ppm〜−74ppm付近のピークがT成分を示す。ここでT成分とは、有機官能基との結合を1つもつSiが、Oを介して他の原子(Si、Nb)との結合を3つもつ状態、つまり−SiO3/2を示す。図3より、エポキシ基を含む有機鎖をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。
【0126】
また13C−NMRスペクトルを図4に示す。開環前のエポキシ基を示すピークは44ppm、51ppm付近に現れ、開環重合後のピークは69ppm、72ppm付近に現れる。図4より未開環のエポキシ基がほとんど残存せずに重合していることを確認した。以上の29Si−NMR測定および13C−NMR測定により、縮合物1の硬化物が、式(1)の構造を有していることを確認した。
【0127】
〔2−2〕縮合物2〜16の調製
(1)縮合物中間体2〜9の調製;
下記表4に記載の組成とした以外は、実施例1における縮合物中間体1と同様にして縮合物中間体2〜9を調製した。尚、表4における成分(A)および成分(B)の欄に記載した記号「EP−1」、「EP−2」、「EP−3」、「EP−4」、「EP−5」、「He」および「Ph」は各々、前記表3に示した加水分解性シラン化合物を表す。
【0128】
【表4】

【0129】
(2)縮合物2〜16の調製;
下記表5に記載の組成とした以外は、実施例1における縮合物1と同様にして縮合物2〜16を調製した。これらの縮合物を、評価(1)および評価(2)に供した。尚、表5中における成分(C)の欄に記載した記号「Nb−1」および「Nb−2」は各々、前記表3に示した加水分解性ニオブ化合物を表す。縮合物1〜16について、評価(1)および評価(2)の結果を表6に示す。
【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
(実施例1)
光カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマーSP−150、(株)アデカ製]を、メタノールで10質量%となるように希釈した。また、エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比)の混合溶媒を用いて、縮合物1の固形分濃度が1質量%、0.05質量%、0.1質量%、0.5質量%、3.5質量%、4質量%、および4.5質量%、になるように希釈した。そして、各々の希釈液に対して、縮合物1の固形分100質量部に対して、上記光カチオン重合開始剤の希釈液を、液量が3.0質量部となるように添加して、表面層形成用塗料1−1〜1−7を調製した。
【0133】
次に、上記〔1〕で作製した導電性弾性ローラ1(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を7本用意し、各々の導電性弾性ローラ1の導電性弾性層の外周部に表面層形成用塗料1−1〜1−7をリング塗布(吐出量:0.120mL/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.130mL)した。これに、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、硬化(架橋反応による硬化)させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には低圧水銀ランプ[ハリソン東芝ライティング(株)製]を用いた。このようにして帯電ローラ1−1〜1−7を得た。得られた各帯電ローラを下記の評価(3)〜評価(7)に供した。
【0134】
<評価(3)>:塗工性;
帯電ローラの表面の外観を目視にて観察し、表7に記載の基準で判断した。
【0135】
【表7】

【0136】
<評価(4)>:表面層の厚みの測定;
帯電ローラの表面層の切断面を走査型透過電子顕微鏡(商品名:HD−2000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。
【0137】
<評価(5)>:Si−O−Nb結合の確認;
帯電ローラの表面層内のSi−O−Nb結合の存在をESCA[使用装置:Quantum2000、アルバックファイ社]により確認した。すなわち、帯電ローラの表面にX線が照射されるようにし、表面層内の結合様式を評価した。検出されたO1sスペクトルより、帯電ローラの表面層内にSi−O−Nb結合の存在が確認された。
【0138】
<評価(6)>:感光体ドラムの表面電位の測定;
帯電ローラの、異なるプロセススピードにおける帯電能力を以下の方法で評価した。すなわち、図5に示す構成を有する電子写真画像形成装置として、レーザープリンタ(商品名:LBP7200、キヤノン(株)製)を用意した。そして、感光体ドラムの回転数を、プロセススピードが73.5mm/sec(低速時)、115.5mm/sec(中速時)、および173.5mm/sec(高速時)の場合に対応するよう変更し、各々の回転数における感光体ドラムの表面電位を表面電位計10で計測した。ここで、感光体ドラムの帯電は、感光体ドラムに接触させた帯電ローラに帯電バイアス電源S1から帯電バイアスとして1000Vを印加することによって行った。また、感光体ドラムとしては、上記レーザープリンタ用プロセスカートリッジ(商品名:CRG−318BLK、キヤノン(株)製)に装着されている感光体ドラムを用いた。なお、上記レーザープリンタにおいて、感光体ドラムは、前露光装置20によって帯電前の電位差を除去した後に、帯電ローラにより帯電されるように構成されている。
【0139】
<評価(7)>:多色ゴーストの評価;
評価に用いる電子写真画像形成装置として、プロセススピードの異なる下記(i)〜(iii)の3機種を用意した。
(i)A4縦出力用のレーザープリンタ(商品名:LBP5050、キヤノン(株)製、プロセススピード=73.5mm/sec(モノクロ印刷時))。
(ii)A4縦出力用のレーザープリンタ(商品名:LBP7200C、キヤノン(株)製、プロセススピード=115.5mm/sec)。
(iii)上記(ii)に係るレーザープリンタの出力枚数を30ppm(プロセススピード=173.3mm/sec)に改造したもの。
【0140】
上記のレーザープリンタ用のプロセスカートリッジの各々に帯電ローラを装着し、各プロセスカートリッジを上記レーザープリンタに装填した。そして、高温高湿環境(温度30℃、相対湿度80%)下で、電子写真画像として、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字が印字率1%となるような画像(以降、「E文字画像」と称する。)を連続出力した。出力枚数は、上記(i)のレーザープリンタについては、3000枚、上記(ii)のレーザープリンタについては9000枚、上記(iii)のレーザープリンタについては15000とした。
【0141】
E文字画像の連続出力の終了に引き続いて、レーザープリンタの第1ステーション(イエロー)及び第2ステーション(マゼンタ)において、それぞれ15mm四方のベタ画像を形成し、15mm四方の赤色のベタ画像を出力した。次いで、第4ステーション(ブラック)においてハーフトーン画像を1枚出力した。このハーフトーン画像を目視にて観察し、直前に出力した15mm四方のベタ画像の残像(以降、「ゴースト」と称する。)の有無、すなわち、ゴーストの発現の程度を下記の表8に示す基準で評価した。なお、ゴーストは、ハーフトーン画像上に白ぬけとなって現れる。評価結果を表9に示す。
【0142】
【表8】

【0143】
(実施例2および3)
縮合物2および縮合物3を用いたこと、および、混合溶媒による希釈濃度を0.05質量%、0.1質量%、1質量%、4質量%、および4.5質量%としたこと以外は、実施例1における表面層形成用塗料と同様にして表面層形成用塗料2−1〜2−5、および、表面層形成用塗料3−1〜3−5を調製した。そして、これらの表面層形成用塗料を用いたこと以外は、実施例1の帯電ローラ1−1と同様にして帯電ローラ2−1〜2−5および帯電ローラ3−1〜3−5を作製し、評価(3)〜評価(7)に供した。
【0144】
(実施例4および5)
縮合物4および縮合物5を用いたこと、および、混合溶媒による希釈濃度を0.5質量%、1質量%、および3.5質量%としたこと以外は、実施例1の表面層形成用塗料と同様にして表面層形成用塗料4−1〜4−3、及び、表面層形成用塗料5−1〜5−3を調製した。そして、これらの表面層形成用塗料を用いたこと以外は、実施例1の帯電ローラ1−1と同様にして帯電ローラ4−1〜4−3、及び、帯電ローラ5−1〜5−3を作製し、評価(3)〜評価(7)に供した。
【0145】
(実施例6および7)
縮合物6および縮合物7を用いたこと、および、混合溶媒による希釈濃度を0.1質量%、1質量%、および4質量%としたこと以外は、実施例1の表面層形成用塗料と同様にして表面層形成用塗料6−1〜6−3、及び、表面層形成用塗料7−1〜7−3を調製した。そして、これらの表面層形成用塗料を用いたこと以外は、実施例1の帯電ローラ1−1と同様にして帯電ローラ6−1〜6−3、及び、帯電ローラ7−1〜7−3を作製し、評価(3)〜評価(7)に供した。
【0146】
(実施例8〜16)
縮合物8〜16を用いたこと、および、混合溶媒による希釈濃度を1質量%としたこと以外は、実施例1の表面層形成用塗料と同様にして表面層形成用塗料8〜16を調製した。そして、これらの表面層形成用塗料を用いたこと以外は、実施例1の帯電ローラ1−1と同様にして帯電ローラ8〜16を作製し、評価(3)〜評価(7)に供した。
【0147】
実施例1〜16に係る帯電ローラについての、評価(3)〜評価(5)の結果を表9に、評価(6)および評価(7)の結果を表10に示す。
【0148】
【表9】

【0149】
【表10】

【0150】
(比較例1)
原料組成を表11に示す配合としたこと以外は、(合成―1)と同様にして縮合物C−1を調製した。縮合物C−1を評価(1)に供したところ、評価結果は、「A」であった。なお、縮合物C−1の調製には、成分(C)に係る加水分解性ニオブ化合物を用いていないため、評価(2)は行わなかった。
【0151】
次に、縮合物C−1を用いたこと以外は実施例1の表面層形成用塗料と同様にして表面層形成用塗料C−1を調製した。そして、この表面層形成用塗料C−1を用いたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラC−1を作成し、評価(3)、評価(4)、評価(6)及び評価(7)に供した。なお、縮合物C−1の原料として加水分解性ニオブ化合物を用いていないため、評価(5)は行わなかった。
【0152】
(比較例2)
表11に示す材料を室温で3時間攪拌して縮合物C−2を調製した。縮合物C−2を評価(1)に供したところ、評価結果は、「D」であった。また、縮合物C−2の調製には、成分(A)および成分(B)に係る加水分解性シラン化合物を用いなかったため、評価(2)は行わなかった。
【0153】
次に、縮合物C−2を用いたこと、および、光カチオン重合開始剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして表面層形成用塗料C−2を調製した。そして、表面層形成用塗料C−2を用いたこと以外は、実施例1に係る帯電ローラ1−1の製法に準じて、帯電ローラC−2を作製した。そして、帯電ローラC−2を、評価(3)に供した。なお、表面層形成用塗料C−2の安定性および塗工性が悪く、成膜が困難なため、評価(4)、評価(6)、および評価(7)は実施しなかった。また、縮合物C−2の原料として加水分解性シラン化合物を用いていないため、評価(5)は行わなかった。評価結果を表12および表13に示す。
【0154】
【表11】

【0155】
【表12】

【0156】
【表13】

【符号の説明】
【0157】
101 基体
102 弾性層
103 表面層
1a〜1d 電子写真感光体
2a〜2d 帯電部材(帯電ローラ)
3a〜3d 像露光手段
4a〜4d 現像手段
5a〜5d クリーニング手段
6 中間転写体(中間転写ベルト)
7a〜7d 転写部材(転写ローラ)
P 転写材
10 表面電位計
20 前露光手段
21 電子写真感光体
22 帯電部材(帯電ローラ)
S1 バイアス印加電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、Si−O−Nb結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は、下記式(1)で示される構成単位、および下記式(2)で示される構成単位を有していることを特徴とする帯電部材:
【化1】

【化2】

[式(1)中、RおよびRは、各々独立に下記式(3)〜(6)のいずれかを示す;
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

[式(3)〜(6)中、R〜R、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R、R、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、各々式(1)中のケイ素原子および酸素原子との結合位置を示す。]]。
【請求項2】
前記高分子化合物において、式(1)中のRおよびRが各々独立に以下の式(7)〜(10)で示される構造から選ばれるいずれかである請求項1に記載の帯電部材:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

[式(7)〜(10)中、N、M、L、Q、SおよびTは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。x’およびy’は、各々独立に0または1を示す。「*」および「**」は、式(1)中のケイ素原子および酸素原子との結合位置を示す。]。
【請求項3】
前記高分子化合物におけるニオブとケイ素との原子数比Nb/Siが0.1以上12.5以下である請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記高分子化合物が、下記式(11)で示される構造を有する加水分解性化合物と、下記式(12)で示される加水分解性化合物との架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化11】

[式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R41は、各々独立に炭化水素基を示す;
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

[式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60およびR61は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は、各々独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4〜12の整数を示す。また、「*」は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。]]。
【請求項5】
前記高分子化合物が、下記式(11)で示される加水分解性化合物と下記(12)で示される加水分解性化合物と、下記式(17)で示される加水分解性化合物との架橋物である請求項1〜3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
【化16】

[式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立に炭化水素基を示す。また式(12)中、R37〜R41は、各々独立に炭化水素基を示す;
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

[式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60およびR61は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は、各々独立に水素、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立に1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立に4〜12の整数を示す。また、「*」は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。]]、
【化21】

[式(17)中、R68は、アルキル基またはアリール基を示し、R69〜R71は、各々独立に炭化水素基を示す。]。
【請求項6】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている請求項1〜5の何れかの一項に記載の帯電部材とを有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項7】
電子写真感光体と、該電子写真感光体に接触して配置されている請求項1〜5の何れかの一項に記載の帯電部材とを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237995(P2012−237995A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103315(P2012−103315)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】