説明

帯電防止剤および帯電防止撥水加工剤、それらを用いた帯電防止加工方法および帯電防止撥水加工方法、ならびに前記方法により処理された繊維製品

【課題】撥水剤と組み合わせた場合、帯電防止性と撥水性とを付与することができる帯電防止剤を提供。
【解決手段】式(1)で表されるアニオンと、


とアルキルピリジニウム塩を含む四級アンモニウムカチオンの少なくとも1種のカチオンとからなる塩を含有することを特徴とする帯電防止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤および帯電防止撥水加工剤、より詳しくは、特定のアニオンと特定のカチオンとからなる塩を含有する帯電防止剤、およびこの帯電防止剤と撥水剤とを含有する帯電防止撥水加工剤、それらを用いた帯電防止加工方法および帯電防止撥水加工方法、ならびにこれらの方法により処理された繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維などの疎水性材料は帯電防止性に劣り、静電気が帯電しやすく、ほこりの付着や衣類の人体へのまとわりつきといった問題がある。このため、従来からこのような疎水性材料には帯電防止加工処理が施されている。ところが、従来の帯電防止剤を用いた帯電防止加工処理では疎水性材料の疎水性が低下するという問題があった。
【0003】
一方、スポーツ衣料やカジュアル衣料などの撥水性を要求される分野においては、ポリエステル繊維などの合成繊維に撥水処理が施されているが、従来の撥水剤を用いた撥水処理では合成繊維の帯電防止性が低下するという問題があった。
【0004】
このように帯電防止性と撥水性とは相反するため、従来から、撥水性と帯電防止性の両特性を付与することができる帯電防止撥水加工剤が提案されている。例えば、特表2003−519281号公報(特許文献1)には、(a)(i)有機オニウムカチオンなどのカチオンおよび(ii)共役酸が所定の酸度を示す弱配位アニオンからなる少なくとも1つのイオン性非重合塩と、(b)少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、(c)少なくとも1つの絶縁材と、を含む撥水撥油性帯電防止組成物が開示されている。上記公報には、好ましい有機オニウムカチオンとして四級アンモニウムカチオンおよびアルキルピリジニウムカチオンなどが例示されている。また、好ましい弱配位アニオンとしてアルカン、アリールおよびアルカリールスルホネートアニオンといった有機アニオンや、ペルフルオロアルカンスルホネートアニオンといったフルオロ有機アニオンなどが例示されている。そして、このような撥水撥油性帯電防止組成物が十分な帯電防止および撥性の特性を示すものであることも開示されている。
【0005】
また、特開平11−189976号公報(特許文献2)には、合成繊維を主材として構成される繊維構造体を、撥水剤、アニオン系帯電防止剤、および架橋剤で処理してなる撥水・帯電防止性合成繊維構造体が開示されており、撥水剤としてフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート重合体からなるものが例示されている。また、アニオン系帯電防止剤としてはアルキルリン酸エステル系帯電防止剤が例示され、前記アルキルリン酸エステルのカウンターカチオンとしてH、Na、K、およびNHが示唆されている。そして、前記合成繊維構造体が高撥水性および高耐水性を有し、さらに優れた帯電防止性を有するとともに、その撥水性、耐久性および帯電防止性の洗濯耐久性に優れるものであることも開示されている。
【0006】
さらに、特表2006−510581号公報(特許文献3)には、(a)4以上の炭素原子を有するカチオンおよび(b)特定の構造のスルホジカルボン酸エステルのアニオンを含むイオン液体組成物が開示されている。前記カチオンとしてテトラブチルアンモニウムカチオンといった四級アンモニウムカチオンやN−アルキルピリジニウムカチオンといった置換ピリジニウムカチオンなどが例示され、前記スルホジカルボン酸エステルのアニオンとしてスルホコハク酸のビス(2−エチルヘキシル)エステルのアニオン(ドキュセート)が開示されている。そして、前記イオン液体組成物が燃料用やポリマー用の帯電防止添加剤として有用であることも開示されている。
【特許文献1】特表2003−519281号公報
【特許文献2】特開平11−189976号公報
【特許文献3】特表2006−510581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、撥水剤と組み合わせて使用した場合に、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することを可能とする帯電防止剤、およびこの帯電防止剤と撥水剤とを含有する帯電防止撥水加工剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ビスアルキルスルホコハク酸アニオンまたはビスアルキルリン酸アニオン、ならびに四級アンモニウムカチオンおよびピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンからなる塩を含有する帯電防止剤と、撥水剤とを組み合わせて帯電防止撥水加工処理を施す場合に、前記カチオンとして所定の炭素数のアルキル基を少なくとも1つ有する四級アンモニウムカチオンまたはピリジニウムカチオンを用いることにより、前記帯電防止剤および前記撥水剤が互いの特性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の帯電防止剤は、下記式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
〔式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるアニオンと、
下記式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
〔式(2)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基は炭素数6〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基は炭素数1〜5の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、炭素数6〜11のアリール基、または炭素数7〜12のアリールアルキル基であり、前記残りの基が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される四級アンモニウムカチオンおよび下記式(3):
【0014】
【化3】

【0015】
〔式(3)中、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと
からなる塩を含有することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の第二の帯電防止剤は、下記式(4):
【0017】
【化4】

【0018】
〔式(4)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるアニオンと、
下記式(2):
【0019】
【化5】

【0020】
〔式(2)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基は炭素数6〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基は炭素数1〜5の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、炭素数6〜11のアリール基、または炭素数7〜12のアリールアルキル基であり、前記残りの基が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される四級アンモニウムカチオンおよび下記式(3):
【0021】
【化6】

【0022】
〔式(3)中、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと
からなる塩を含有することを特徴とするものである。
【0023】
前記式(2)中のR〜Rのうちの1つの基が炭素数10〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基のうちの2つの基がそれぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、さらに残りの1つの基が炭素数7〜9のアリールアルキル基であることが好ましく、また、前記(3)中のRが炭素数14〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0024】
本発明の帯電防止撥水加工剤は本発明の帯電防止剤と撥水剤とを含有することを特徴とするものである。
【0025】
本発明の帯電防止加工方法は本発明の帯電防止剤を用いて基材を処理することを特徴とするものであり、本発明の帯電防止撥水加工方法は本発明の帯電防止剤および撥水剤を用いて基材を処理することを特徴とするものである。
【0026】
本発明の繊維製品は本発明の帯電防止撥水加工方法により帯電防止撥水加工処理が施されたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、撥水剤と組み合わせて使用した場合に、互いの特性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することを可能とする帯電防止剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0029】
<帯電防止剤>
先ず、本発明の帯電防止剤について説明する。本発明の第一の帯電防止剤は、特定のビスアルキルスルホコハク酸アニオンと、特定の四級アンモニウムカチオンおよび特定のピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、からなる塩を含有することを特徴とするものである。また、本発明の第二の帯電防止剤は、特定のビスアルキルリン酸アニオンと、特定の四級アンモニウムカチオンおよび特定のピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、からなる塩を含有することを特徴とするものである。
【0030】
(ビスアルキルスルホコハク酸アニオン)
本発明に用いられるビスアルキルスルホコハク酸アニオンは、下記式(1):
【0031】
【化7】

【0032】
で表されるものである。
【0033】
前記式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。RおよびRの炭素数が5以下になると得られる帯電防止剤が十分な帯電防止性を付与することができず、また、撥水性を低下させ、さらに、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となる。他方、炭素数が11以上になると得られる塩の粘度が非常に高くなり実用的ではない。前記炭素数6〜10のアルキル基としては、ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基などが挙げられる。
【0034】
また、これらのアルキル基のうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点がより低くなるという観点から、炭素数8〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、例えば、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基が好ましく、2−エチルヘキシル基がより好ましい。本発明に用いられるビスアルキルスルホコハク酸アニオンとしてはビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アニオンが特に好ましい。
【0035】
(ビスアルキルリン酸アニオン)
本発明に用いられるビスアルキルリン酸アニオンは、下記式(4):
【0036】
【化8】

【0037】
で表されるものである。
【0038】
前記式(4)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。RおよびRの炭素数が5以下になると得られる帯電防止剤が十分な帯電防止性を付与することができず、また、撥水性を低下させ、さらに、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となる。他方、炭素数が11以上になると得られる塩の粘度が非常に高くなり実用的ではない。前記炭素数6〜10のアルキル基としては、前記式(1)中のRおよびRとして例示した炭素数6〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0039】
また、これらのアルキル基のうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点がより低くなるという観点から、炭素数8〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、例えば、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基が好ましく、2−エチルヘキシル基がより好ましい。本発明に用いられるビスアルキルリン酸アニオンとしてはビス−2−エチルヘキシルリン酸アニオンが特に好ましい。
【0040】
(四級アンモニウムカチオン)
本発明に用いられる四級アンモニウムカチオンは、下記式(2):
【0041】
【化9】

【0042】
で表されるものである。
【0043】
前記式(2)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基は炭素数6〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である。炭素数6〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有しない四級アンモニウムカチオンを用いると、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、前記帯電防止剤が撥水性を阻害し、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができず、また、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となる。他方、炭素数15以上の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有する四級アンモニウムカチオンを用いると得られる塩の粘度が非常に高くなり実用的ではない。前記炭素数6〜14のアルキル基としては、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルペンチル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基などが挙げられる。
【0044】
また、これらのアルキル基のうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とをより高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点がより低くなるという観点から、炭素数10〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、例えば、デシル基、2−エチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基が好ましく、炭素数12〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、例えば、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基がより好ましい。
【0045】
前記式(2)中の残りの基は炭素数1〜5の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、炭素数6〜11のアリール基、または炭素数7〜12のアリールアルキル基であり、前記残りの基が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。前記アリール基の炭素数が12以上、または前記アリールアルキル基の炭素数が13以上になると、得られる塩の粘度が非常に高くなり実用的ではない。
【0046】
前記炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基のうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点がより低くなるという観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0047】
前記炭素数6〜11のアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、トリメチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、イソプロピルメチルフェニル基などが挙げられる。これらのアリール基のうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点がより低くなるという観点から、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0048】
炭素数7〜12のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、イソプロピルベンジル基などが挙げられる。これらのアリール基のうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点がより低くなるという観点から、ベンジル基、フェニルエチル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0049】
このような四級アンモニウムカチオンのうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを特に高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点が特に低くなるという観点から、前記式(2)中のR〜Rのうちの1つの基が炭素数10〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基のうちの2つの基がそれぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、さらに残りの1つの基が炭素数7〜9のアリールアルキル基である四級アンモニウムカチオンがより好ましく、前記式(2)中のR〜Rのうちの1つの基が炭素数12〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基のうちの2つの基がメチル基であり、さらに残りの1つの基がベンジル基である四級アンモニウムカチオンが特に好ましい。
【0050】
(ピリジニウムカチオン)
本発明に用いられるピリジニウムカチオンは、下記式(3):
【0051】
【化10】

【0052】
で表されるものである。
【0053】
前記式(3)中、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。Rの炭素数が7以下になると得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、前記帯電防止剤が撥水性を阻害し、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができず、また、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となる。他方、炭素数が19以上になると得られる塩の粘度が非常に高くなり実用的ではない。前記炭素数8〜18のアルキル基としては、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基、ペンタデシル基、2−ペンチルデシル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、2−ヘプチルデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基などが挙げられる。
【0054】
また、これらのアルキル基のうち、得られる帯電防止剤を撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とをより高水準でバランスよく付与することができ、また、得られる塩の融点がより低くなるという観点から、炭素数14〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、例えば、テトラデシル基、2−ブチルデシル基、ペンタデシル基、2−ペンチルデシル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、2−ヘプチルデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基が好ましく、炭素数16〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、例えば、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、2−ヘプチルデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基がより好ましい。
【0055】
前記ビスアルキルスルホコハク酸アニオンまたは前記ビスアルキルリン酸アニオンと、前記四級アンモニウムカチオンおよび前記ピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとからなる塩は、電荷を持つ化合物であるため、湿度が低い環境下でも帯電防止性に優れている。また、ハロゲンフリーでかつ融点が十分に低く(好ましくは25℃以下)、室温で液体であるという性質を有するイオン性液体であり、繊維などの基材表面への濡れ性が良好である。さらに、難揮発性、難燃性という特性も有するものでもある。また、上述した塩の粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は特に限定されないが、工業的な取り扱いの容易性、効率性という観点から、20000mPa・s以下であることが好ましい。
【0056】
上述した塩が、特定の炭素数のアルキル基を有するアニオンと特定の炭素数のアルキル基を有するカチオンとからなるものであるため、このような塩を含有する本発明の帯電防止剤は、撥水剤と組み合わせて使用した場合に、撥水性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができる。特に、本発明の帯電防止剤は、撥水剤の種類に制限されることなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができる点で優れている。また、上述した塩がハロゲンフリーであるため、本発明の帯電防止剤は製造コストが低く、腐食性がないなど、環境に対する負荷も低いものである。
【0057】
本発明の帯電防止剤の形態は特に制限されず、上述した塩をそのまま帯電防止剤として使用してもよいし、有機溶媒で希釈して使用してもよいし、賦形剤を用いて製剤化して使用してもよい。前記有機溶媒は安全性・価格・残留性などを考慮して適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテルなどが好ましい。前記賦形剤は、帯電防止剤の投与形態などに応じて、固体または液体状態の製剤を形成するときに通常用いられるものを適宜採用することができる。また、製剤化する方法も特に制限されず、練り込み、スプレー、コーティングといった表面加工などの手法を適宜採用することができる。固体状態の製剤としては、上述した塩を分散・固化させたものが挙げられる。
【0058】
(帯電防止剤の製造方法)
本発明の帯電防止剤の製造方法は特に制限されないが、例えば、前記式(1)または(4)で表されるアニオンとアルカリ金属イオンとの塩、および前記式(2)で表される四級アンモニウムカチオンおよび前記式(3)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとハロゲン化物イオンとの塩を、水と有機溶媒との混合溶媒中でイオン交換反応せしめることにより製造することができる。前記アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、また、前記ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。ここで用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンが挙げられる。また、水と有機溶媒との混合比率は特に制限されないが、水:有機溶媒の比率(体積比)が1:0.5〜1:2であることが好ましい。
【0059】
また、前記アニオンとアルカリ金属イオンとの塩と、前記カチオンとハロゲン化物イオンとの塩との混合比率は、前者:後者の比率(モル比)が1:0.8〜1:1.2であることが好ましく、1:1(等モル)程度であることが特に好ましい。さらに、水と有機溶媒との混合溶媒中における、前記アニオンとアルカリ金属イオンとの塩の濃度および前記カチオンとハロゲン化物イオンとの塩の濃度は特に制限されないが、0.1〜2mol/リットル程度であることが好ましい。
【0060】
前記アニオンとアルカリ金属イオンとの塩と、前記カチオンとハロゲン化物イオンとの塩とを、前記混合溶媒中に溶解せしめて混合すればイオン交換反応が進行し、混合溶媒(反応液)中に前記式(1)または(4)で表されるアニオンと前記式(2)で表される四級アンモニウムカチオンおよび前記式(3)で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンとからなる塩と、ハロゲン化金属塩が生成する。
【0061】
その反応条件は特に制限されないが、一般的に反応温度は室温以上かつ溶媒還流温度以下の温度であり、反応時間は30分〜14日程度であることが好ましい。また、反応させる際の圧力としては常圧下(大気圧下)でも加圧下でもよく、反応溶液を撹拌下に維持しても静置してもよい。
【0062】
反応終了後、目的とする塩を含む反応液から有機溶媒および水を除去することにより、本発明の帯電防止剤を得ることができる。その際、前記帯電防止剤は有機溶媒に優先的に溶解して水には溶解しないことから、有機溶媒が除去されるに従って、前記反応液は油相(帯電防止剤)と水相とに分離する。また、ハロゲン化金属塩および未反応の原料化合物は水に優先的に溶解することから、前記反応液から水相を除去することによって、ハロゲン化金属塩および未反応の原料化合物も水とともに除去され、本発明の帯電防止剤が得られることとなる。なお、前記反応液から有機溶媒および水を除去する方法は特に限定されず、例えば、反応液から先ず有機溶媒を揮発させて除去した後に水を分離除去する方法、または、反応液から先ず水相を分離除去した後に有機溶媒を揮発させて除去する方法が採用される。また、より純度の高い塩を得るために、必要に応じて精製工程、乾燥工程〔例えば、減圧下(約40mmHg以下)、80〜100℃で数時間減圧乾燥〕をさらに実施しても良い。なお、このような精製工程としては、例えば、純水により洗浄を行い精製する工程や、更にジクロロエタン等の溶媒にて希釈することにより洗浄効率を上げて精製する工程が挙げられる。
【0063】
<帯電防止撥水加工剤>
次に、本発明の帯電防止撥水加工剤について説明する。本発明の帯電防止撥水加工剤は、本発明の帯電防止剤と撥水剤とを含有するものである。本発明の帯電防止撥水加工剤は帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができる。
【0064】
(撥水剤)
前記撥水剤としては、撥水機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、フッ素系、シリコーン系、炭化水素系、シリカ系の撥水剤が挙げられる。これらの撥水剤のうち、本発明の帯電防止剤と混合することにより帯電防止性と撥水性とをより高水準でバランスよく付与することができるという観点から、フッ素系撥水剤が特に好ましい。
【0065】
前記フッ素系撥水剤としては、フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートと、フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートと共重合可能な他の単量体との乳化重合または溶液重合により得られる共重合体が挙げられる。
【0066】
本発明の帯電防止撥水加工剤において、本発明の帯電防止剤と撥水剤との混合比率は、帯電防止剤と撥水剤の特性を互いに阻害しないものであれば特に制限されないが、帯電防止剤:撥水剤の比率(質量比)が1:0.1〜1:10であることが好ましい。帯電防止剤と撥水剤との混合比率が上記下限未満になると帯電防止性を十分に付与できない傾向にあり、他方、上記上限を超えると撥水性を十分に付与できない傾向にある。
【0067】
<帯電防止加工方法>
次に、本発明の帯電防止加工方法について説明する。本発明の帯電防止加工方法は、本発明の帯電防止剤を用いて基材に帯電防止加工処理を施す方法である。具体的な方法としては、基材に本発明の帯電防止剤をスプレーまたは塗布する方法、あるいは基材を本発明の帯電防止剤に浸漬する方法などが挙げられる。これにより、本発明の帯電防止剤が基材表面に付着して基材に帯電防止性が付与される。また、本発明の帯電防止加工方法では、必要に応じて、帯電防止剤が付着した基材を基材に応じた条件で乾燥させてもよい。
【0068】
本発明の帯電防止加工方法により付与された帯電防止性は、この後に撥水加工処理を施しても大きく低下することがないため、本発明の帯電防止加工方法と撥水加工処理とを組み合わせることによって基材に帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができる。
【0069】
本発明の帯電防止加工方法は、特に編物、織物または不織布などの基材(以下、「繊維製品」という。)に適用することができる。繊維製品を形成する合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリエステル、およびこれらのポリエステルにジカルボン酸成分(イソフタル酸、アジピン酸、スルホイソフタル酸など)またはジオール成分(プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールなど)を付加的に共重合したもの、6―ナイロン、6,6―ナイロン、芳香族ナイロン、ポリプロピレン、ポリアクリルニトリルなどの合成繊維が挙げられる。また、前記繊維製品は、この合成繊維と、綿、麻などの天然繊維、またはレーヨン、アセテートなどの半合成繊維とを含む混合物であってもよい。
【0070】
<帯電防止撥水加工方法>
本発明の帯電防止撥水加工方法は、本発明の帯電防止剤および撥水剤を用いて基材に帯電防止撥水加工処理を施す方法である。具体的には、基材に本発明の帯電防止撥水加工剤をスプレーまたは塗布する方法、あるいは基材を本発明の帯電防止撥水加工剤に浸漬する方法などが挙げられる。また、これらの方法では、必要に応じて、帯電防止撥水加工剤が付着した基材を基材に応じた条件で乾燥させてもよい。
【0071】
本発明の帯電防止撥水加工剤に含まれる帯電防止剤と撥水剤とが互いにその特性を著しく阻害しないため、本発明の帯電防止撥水加工剤を用いる帯電防止加工方法によって基材に帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができる。
【0072】
また、本発明の帯電防止撥水加工方法として、先ず、本発明の帯電防止加工方法により基材に帯電防止加工処理を施した後、撥水加工処理を施す方法も挙げられる。前記撥水加工処理方法としては、帯電防止加工処理が施された基材に撥水剤をスプレーまたは塗布する方法、あるいは帯電防止加工処理が施された基材を撥水剤に浸漬する方法などが挙げられる。前記撥水加工処理において用いられる撥水剤としては上記例示した撥水剤が挙げられる。また、前記撥水加工処理においては、必要に応じて、撥水剤が付着した基材を基材に応じた条件で乾燥させてもよい。
【0073】
本発明の帯電防止加工方法と前記撥水加工処理とは、これらにより付与される帯電防止性と撥水性とを互いに著しく阻害しないため、本発明の帯電防止加工方法により帯電防止性を付与した後、前記撥水加工処理を施して撥水性を付与することによって、基材に帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することができる。
【0074】
本発明の帯電防止撥水加工方法を適用することができる基材は特に制限されないが、例えば、上記例示した繊維製品などが挙げられる。
【0075】
<繊維製品>
本発明の繊維製品は、本発明の帯電防止撥水加工方法によって、例えば上記例示した繊維製品などに帯電防止撥水加工処理が施されたものである。本発明の繊維製品は帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく有するものである。
【実施例】
【0076】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例における帯電防止性および撥水性の評価は以下に示す評価方法に従って実施した。
【0077】
<帯電防止性>
JIS L1094:1997「織物及び編物の帯電性試験方法」に記載の「5.2 摩擦帯電圧測定法」に従って、得られた不織布の摩擦帯電圧を測定した。また、「5.1 半減期測定法」、に従って、得られた不織布について帯電圧が1/2に減衰するまでの時間(半減期)を測定した。なお、この半減期が短いほど不織布は帯電防止性に優れていることを意味する。
【0078】
<撥水性>
1.IPA/水法
表1に示す割合のイソプロピルアルコール(IPA)と水との混合液(約50μl)をスポイトで不織布上に滴下し、直径が約5mmの液滴を作成した。この液滴を5滴作成し、60秒間放置した後、液滴の形状を目視観察し、形状を保持している液滴の個数をカウントした。この試験を、表1に示す各IPA濃度の混合液について実施し、形状を保持している液滴の個数が4個以上となる最大IPA濃度を測定した。
【0079】
【表1】

【0080】
2.スプレー法
JIS L1092に記載の「6.2 はっ水度試験(スプレー試験)」に準拠し、下記基準により撥水性を判定した。なお、判定値に+印を付記したものは下記基準値よりもわずかに撥水性が良好であることを示し、−印を付記したものは下記基準値よりもわずかに撥水性が劣ることを示す。
5:表面に湿潤や水滴の付着がないもの。
4:表面にわずかな湿潤があるか、または小さな水滴の付着があるもの。
3:湿潤の一部(半分未満)に湿潤を示すもの。
2:表面の半分に湿潤を示すもの。
1:表面全体に湿潤を示すもの。
【0081】
(実施例1−1)
ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.02mol(8.89g)と塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム0.02mol(6.80g)とを容量200mLのビーカーの中でアセトン25mLと純水25mLとの混合溶媒に溶解せしめた。得られた混合溶液(反応液)を大気中にて室温(約25℃)で7日間放置したところ、この反応液は水相と油相とに分離した。さらに、60℃の熱風乾燥炉中で4時間放置してアセトンを完全に揮発させた後、分液ロートを用いて水相を除去した。次いで、得られた油相に純水100mLを添加して水洗した後、水相を除去した。この精製操作を3回行った後、得られた油相に対して減圧下(約40mmHg)、90℃で4時間減圧乾燥処理を施し、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−44℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は14000mPa・sであった。
【0082】
この帯電防止剤を濃度が3質量%となるようにイソプロピルアルコールに溶解した。この溶液にポリプロピレンからなるスパンボンド不織布を浸漬した後、ウェットピックアップ率が約90%となるようにマングルで絞り、110℃で3分間乾燥して帯電防止加工処理を施した。
【0083】
その後、この不織布に、不織布質量に対して2質量%の量のフッ素系撥水剤(日華化学(株)製、商品名「NKガード NDN−7E」、有効成分:約20質量%)をスプレーし、110℃で4.5分間乾燥して撥水加工処理を施した。
【0084】
この帯電防止撥水加工処理を施した不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0085】
(実施例1−2)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化テトラオクチルアンモニウム0.02mol(10.0g)を用いた以外は実施例1−1と同様にしてテトラオクチルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−37℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は7000mPa・sであった。
【0086】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0087】
(実施例1−3)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化ヘキサデシルピリジニウム0.02mol(7.16g)を用いた以外は実施例1−1と同様にしてヘキサデシルピリジニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−51℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は3400mPa・sであった。
【0088】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0089】
(実施例1−4)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化オクチルピリジニウム0.02mol(4.56g)を用いた以外は実施例1−1と同様にしてオクチルピリジニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は0℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は5000mPa・sであった。
【0090】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0091】
(実施例1−5)
ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムの代わりにビス−2−エチルヘキシルリン酸ナトリウム0.02mol(6.44g)を用いた以外は実施例1−1と同様にしてベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルリン酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−45℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は4500mPa・sであった。
【0092】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0093】
(実施例1−6)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化テトラオクチルアンモニウム0.02mol(10.0g)を用いた以外は実施例1−5と同様にしてテトラオクチルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルリン酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−39℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は6100mPa・sであった。
【0094】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0095】
(実施例1−7)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化ヘキサデシルピリジニウム0.02mol(7.16g)を用いた以外は実施例1−5と同様にしてヘキサデシルピリジニウム−ビス−2−エチルヘキシルリン酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−10℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は20000mPa・sであった。
【0096】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0097】
(実施例1−8)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化オクチルピリジニウム0.02mol(4.56g)を用いた以外は実施例1−5と同様にしてオクチルピリジニウム−ビス−2−エチルヘキシルリン酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は10℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は4300mPa・sであった。
【0098】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0099】
(比較例1−1)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化テトラブチルアンモニウム0.02mol(5.56g)を用いた以外は実施例1−1と同様にしてテトラブチルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−20℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は3100mPa・sであった。
【0100】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0101】
(比較例1−2)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化ヘキシルピリジニウム0.02mol(3.99g)を用いた以外は実施例1−1と同様にしてヘキシルピリジニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は40℃であった。
【0102】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0103】
(比較例1−3)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化テトラブチルアンモニウム0.02mol(5.56g)を用いた以外は実施例1−5と同様にしてテトラブチルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルリン酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は−22℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は2800mPa・sであった。
【0104】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0105】
(比較例1−4)
塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムの代わりに塩化ヘキシルピリジニウム0.02mol(3.99g)を用いた以外は実施例1−1と同様にしてヘキシルピリジニウム−ビス−2−エチルヘキシルリン酸からなる帯電防止剤を得た。この帯電防止剤の融点は45℃であった。
【0106】
この帯電防止剤を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0107】
(比較例1−5)
撥水加工処理を施さなかった以外は実施例1−1と同様にしてポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止加工処理を施した。この帯電防止加工処理のみを施した不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0108】
(比較例1−6)
撥水加工処理を施さなかった以外は実施例1−5と同様にしてポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止加工処理を施した。この帯電防止加工処理のみを施した不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0109】
(比較例1−7)
帯電防止加工処理を施さなかった以外は実施例1−1と同様にしてポリプロピレンからなるスパンボンド不織布にフッ素系撥水剤による撥水加工処理を施した。この撥水加工処理のみを施した不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0110】
(比較例1−8)
ベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤のイソプロピルアルコール溶液の代わりにカチオン系液状高分子化合物(日華化学(株)製、商品名「ナイスポールFL」、有効成分:約7.5質量%)の水分散物(濃度:1質量%)を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0111】
(比較例1−9)
ベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤のイソプロピルアルコール溶液の代わりにアルキルホスフェートの液状化合物(日華化学(株)製、商品名「デートロンN」、有効成分:約5質量%)の水分散物(濃度:2質量%)を用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0112】
(比較例1−10)
ベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸の代わりに、融点が−16℃、粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)が30mPa・sのエチルメチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホンアミドを用いた以外は実施例1−1と同様にして、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0113】
(比較例1−11)
帯電防止加工処理および撥水加工処理を共に施さずに、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
(実施例2−1)
実施例1−1で調製した帯電防止剤を濃度が3質量%となるようにイソプロピルアルコールに溶解した。この溶液にポリエステル100%の織物を浸漬した後、ウェットピックアップ率が約50%となるようにマングルで絞り、110℃で3分間乾燥して帯電防止加工処理を施した。
【0116】
その後、この織物に、織物質量に対して2質量%の量のフッ素系撥水剤(日華化学(株)製、商品名「NKガード NDN−7E」、有効成分:約20質量%)をスプレーし、110℃で4.5分間乾燥し、さらに170℃で1分間加熱して撥水加工処理を施した。
【0117】
この帯電防止撥水加工処理を施した織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0118】
(実施例2−2)
実施例1−2で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0119】
(実施例2−3)
実施例1−3で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0120】
(実施例2−4)
実施例1−4で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0121】
(実施例2−5)
実施例1−5で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0122】
(実施例2−6)
実施例1−6で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0123】
(実施例2−7)
実施例1−7で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0124】
(実施例2−8)
実施例1−8で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0125】
(比較例2−1)
比較例1−1で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0126】
(比較例2−2)
比較例1−2で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0127】
(比較例2−3)
比較例1−3で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0128】
(比較例2−4)
比較例1−4で調製した帯電防止剤を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0129】
(比較例2−5)
撥水加工処理を施さなかった以外は実施例2−1と同様にしてポリエステル100%の織物に帯電防止加工処理を施した。この帯電防止加工処理のみを施した織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0130】
(比較例2−6)
撥水加工処理を施さなかった以外は実施例2−5と同様にしてポリエステル100%の織物に帯電防止加工処理を施した。この帯電防止加工処理のみを施した織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0131】
(比較例2−7)
帯電防止加工処理を施さなかった以外は実施例2−1と同様にしてポリエステル100%の織物にフッ素系撥水剤による撥水加工処理を施した。この撥水加工処理のみを施した織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0132】
(比較例2−8)
ベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤のイソプロピルアルコール溶液の代わりに比較例1−8で用いたカチオン系液状高分子化合物の水分散物(濃度:1質量%)を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0133】
(比較例2−9)
ベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸からなる帯電防止剤のイソプロピルアルコール溶液の代わりに比較例1−9で用いたアルキルホスフェートの液状化合物の水分散物(濃度:2質量%)を用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0134】
(比較例2−10)
ベンジルジメチルドデシルアンモニウム−ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸の代わりに比較例1−10で用いたエチルメチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホンアミドを用いた以外は実施例2−1と同様にして、ポリエステル100%の織物に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0135】
(比較例2−11)
帯電防止加工処理および撥水加工処理を共に施さずに、ポリエステル100%の織物(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(スプレー法)を上記評価方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0136】
【表3】

【0137】
(実施例3−1〜3−8および比較例3−1〜3−4)
フッ素系撥水剤の代わりにシリコーン系撥水剤(日華化学(株)製、商品名「ドライポン600E」、有効成分:54質量%)を用いた以外は、それぞれ実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−4と同様にしてポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表4に示す。
【0138】
(比較例3−5)
フッ素系撥水剤の代わりにシリコーン系撥水剤(日華化学(株)製、商品名「ドライポン600E」、有効成分:54質量%)を用いた以外は比較例1−7と同様にしてポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に撥水加工処理のみを施した。この撥水加工処理のみを施した不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表4に示す。
【0139】
なお、表4には、撥水加工処理を施さない場合(比較例1−5、1−6および1−11)についての結果も示した。
【0140】
【表4】

【0141】
(実施例4−1〜4−8および比較例4−1〜4−4)
フッ素系撥水剤の代わりに炭化水素系撥水剤(日華化学(株)製、商品名「ネオシードNR−90」、有効成分:30質量%)を用いた以外は、それぞれ実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−4と同様にしてポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に帯電防止撥水加工処理を施した。得られた不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表5に示す。
【0142】
(比較例4−5)
フッ素系撥水剤の代わりに炭化水素系撥水剤(日華化学(株)製、商品名「ネオシードNR−90」、有効成分:30質量%)を用いた以外は比較例1−7と同様にしてポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に撥水加工処理のみを施した。この撥水加工処理のみを施した不織布(洗濯なし(L−0))の帯電防止性および撥水性(IPA/水法)を上記評価方法により評価した。その結果を表5に示す。
【0143】
なお、表5には、撥水加工処理を施さない場合(比較例1−5、1−6および1−11)についての結果も示した。
【0144】
【表5】

【0145】
表2〜表5に示した結果から明らかなように、本発明の帯電防止剤と撥水剤とを用いて帯電防止撥水加工処理を施した不織布(実施例1−1〜1−8、2−1〜2−8、3−1〜3−8、および4−1〜4−8)は、いずれも帯電防止性および撥水性が高水準でバランスのよいものであった。一方、本発明の帯電防止剤の代わりに従来の帯電防止剤を用いたもの(比較例1−1〜1−4、1−8〜1−10、2−1〜2−4、2−8〜2−10、3−1〜3−4、および4−1〜4−4)は、撥水性に劣るものであった。
【0146】
具体的には、比較例1−1〜1−4と比較例1−7、比較例2−1〜2−4と比較例2−7、比較例3−1〜3−4と比較例3−5、および比較例4−1〜4−4と比較例4−5とを比較すると明らかなように、従来の帯電防止剤では不織布または織物に帯電防止性は付与されるものの、撥水剤により付与された撥水性が低下することが確認された。一方、実施例1−1〜1−8と比較例1−7、実施例2−1〜2−8と比較例2−7、実施例3−1〜3−8と比較例3−5、および実施例4−1〜4−8と比較例4−5とを比較すると明らかなように、本発明の帯電防止剤では撥水性をほとんど低下させることなく不織布または織物に高い帯電防止性を付与できることが確認された。また、実施例1−1、3−1および4−1と比較例1−5、実施例1−5、3−5および4−5と比較例1−6、実施例2−1と比較例2−5、実施例2−5と比較例2−6とを比較すると、本発明の帯電防止剤により付与された帯電防止性は撥水剤により著しく阻害されないことも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上説明したように、本発明によれば、撥水剤と組み合わせて使用した場合に、互いの特性を著しく阻害することなく、帯電防止性と撥水性とを高水準でバランスよく付与することを可能とする帯電防止剤を提供することが可能となる。
【0148】
したがって、本発明の帯電防止剤は、撥水剤と組み合わせて使用することによって、基材、特に繊維製品に、高水準でバランスよく帯電防止性および撥水性を付与することができるため、手術用ガウン、シーツ、シューズカバー、キャップ、エプロンなどの医療剤、紙おむつなどの衛生材、各種保護具、包装材などの工業資材、風呂敷などの包装材、ランドリー袋などの収納品、エプロンなどへの帯電防止撥水加工処理に適している。また、スポーツ衣料やカジュアル衣料など帯電防止性と撥水性とを要求される分野においても、高水準でバランスよく帯電防止性と撥水性の両特性を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

〔式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるアニオンと、
下記式(2):
【化2】

〔式(2)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基は炭素数6〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基は炭素数1〜5の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、炭素数6〜11のアリール基、または炭素数7〜12のアリールアルキル基であり、前記残りの基が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される四級アンモニウムカチオンおよび下記式(3):
【化3】

〔式(3)中、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと
からなる塩を含有することを特徴とする帯電防止剤。
【請求項2】
下記式(4):
【化4】

〔式(4)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6〜10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるアニオンと、
下記式(2):
【化5】

〔式(2)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基は炭素数6〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基は炭素数1〜5の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、炭素数6〜11のアリール基、または炭素数7〜12のアリールアルキル基であり、前記残りの基が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される四級アンモニウムカチオンおよび下記式(3):
【化6】

〔式(3)中、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
で表されるピリジニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと
からなる塩を含有することを特徴とする帯電防止剤。
【請求項3】
前記式(2)中のR〜Rのうちの1つの基が炭素数10〜14の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、残りの基のうちの2つの基がそれぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、さらに残りの1つの基が炭素数7〜9のアリールアルキル基であり、前記(3)中のRが炭素数14〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止剤。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の帯電防止剤と撥水剤とを含有することを特徴とする帯電防止撥水加工剤。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の帯電防止剤を用いて基材を処理することを特徴とする帯電防止加工方法。
【請求項6】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の帯電防止剤および撥水剤を用いて基材を処理することを特徴とする帯電防止撥水加工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の帯電防止撥水加工方法により帯電防止撥水加工処理が施されていることを特徴とする繊維製品。

【公開番号】特開2009−120768(P2009−120768A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298312(P2007−298312)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】