説明

帯電防止性感圧式接着剤組成物、並びにそれを用いてなる帯電防止性感圧式接着シート及び積層体

【課題】光学フィルムへの密着性が良く、光学フィルムを被着体に貼着後、高温高圧下、高温下、又は高温高湿下に長期間曝されても、貼着界面での発泡や、浮き・剥がれが生じず、透明性やリワーク性にも優れ、更にブリードが発生しない帯電防止性の良好な帯電防止性感圧式接着剤組成物の提供。
【解決手段】ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)0.1〜5.0重量部、及び硬化剤(C)0.1〜3.0重量部を含有する帯電防止性感圧式接着剤組成物であって、
ウレタン樹脂(A)が、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなる帯電防止性感圧式接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムや光学フィルム等の貼り合わせに好適に用いられる帯電防止性感圧式接着剤組成物に関し、更に前記帯電防止性感圧式接着剤組成物を用いた帯電防止性感圧式接着性シート、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されようになってきた。更に、LCDを構成する液晶セル用部材には、偏光フィルムや位相差フィルムが積層されている。
【0003】
又、これらの表示装置には、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための表面保護フィルム(プロテクトフィルム)などが使用されている。更にFPDを表示装置として利用するだけではなく、それらの表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置としても利用されることがある。このタッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
【0004】
前記表示装置に使用される種々のフィルムは、感圧式接着剤により被着体に貼着され、使用されている。表示装置に用いられるため、感圧式接着剤は透明性に優れることが要求されるので、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂を主剤とする感圧式接着剤が一般に使用されている。
【0005】
これらのフィルムのうち表面保護フィルムは、例えば液晶ディスプレイなどの組み込みが完了した後に表面保護の役割を終え、剥離除去される場合が多い。ディスプレイから表面保護フィルムを剥離する際に、剥離帯電が生じて周囲のゴミや埃を吸引してしまったり、液晶の配向不良や電子回路を破壊したりという問題が生じることがある。
【0006】
又、偏光フィルムや位相差フィルム等の各種光学フィルムは、感圧式接着剤を用いて、被着体(液晶セルを構成しているガラスや他の光学フィルム)に貼着される。具体的には、各種光学フィルム/感圧式接着剤層/剥離シートという積層状態にある感圧式接着シートから感圧式接着剤層表面を覆っていた剥離シートを剥がし、感圧式接着剤層を介して偏光フィルムや位相差フィルム等が被着体である液晶セルガラス等に貼着される。剥離シートを剥離する際、静電気が生じる可能性があり、その静電気によって、貼着時に埃やクズを吸引してしまい、異物混入という貼着状態の不具合欠点を引き起こしたり、被着体内部に封止されている液晶や電子回路が損傷を受けたりする可能性がある。
【0007】
又、偏光フィルムに使用されているトリアセチルセルロース系保護フィルムやシクロオレフィン系保護フィルムは、一般的な感圧式接着剤による接着が困難である。又、偏光フィルムは、これら材料の特性故に寸法安定性にも乏しく、特に高温下、又は高温高湿条件下では、フィルムの収縮による寸法の変化が激しい。
【0008】
光学フィルム/感圧式接着層/被着体からなる積層体が、高温下、又は高温高湿条件下に置かれ、光学フィルムの寸法が変化すると、感圧式接着層と被着体との貼着界面に気泡が生じたり(発泡)、光学フィルムが被着体から浮き上がり、剥がれたりする。用いられる感圧式接着剤の主たる成分であるベース樹脂の分子量や感圧式接着剤の架橋度を調整し、接着力を大きくすることによって、光学フィルムの寸法変化に抗して、過酷な環境下でも発泡、浮き・剥がれが生じないようにする試みが従来なされてきた。
【0009】
又、液晶ディスプレイ等の製造工程において、偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼着するに際し、貼着位置にずれが生じた場合など貼着からある時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが必要となる場合がある。従って、偏光板に塗布されている感圧式接着剤を介して貼着した後、ある時間経過後であっても液晶セルから比較的容易に剥離することができるリワーク性の良好な感圧式接着剤が求められていた。
【0010】
上記したように、光学部材の表面保護に使用したり、液晶セル用のガラス部材に偏光フィルムを積層するために使用したりする感圧式接着剤には、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、リワーク性、帯電防止性等が求められる。そして、位相差フィルムや各種ディスプレイのカバーフィルムを積層するための感圧式接着剤にも同様の性能が求められる。そこで、過酷な条件下でも、被着体との界面に発泡が生じず、浮き・剥がれも生じない光学フィルム貼着用の感圧式接着剤であって、剥離時の帯電防止性や光学特性に優れ、リワーク性に優れた様々な感圧式接着剤が提案されてきた。
【0011】
樹脂成分として、反応性官能基を有する単量体、及び他の単量体をラジカル共重合してなる重量平均分子量100万以上200万以下の共重合体(A)と、上記共重合体の存在下でカルボキシル基を有する単量体、及び他の単量体をラジカル共重合してなる重量平均分子量1万以上10万以下の共重合体(B)、並びに上記共重合体(A)及び/又は上記共重合体(B)と反応可能な反応性官能基を少なくとも2個有する多官能性化合物からなる感圧式接着剤、更に該感圧式接着剤からなる感圧式接着層が光学部材の少なくとも一方の面に形成されている光学部材が提案されている(特許文献1)。
【0012】
又、ウレタン樹脂又はウレタンウレア樹脂を含む感圧式接着剤組成物を使用することが提案されている(特許文献2、3、4)。
【0013】
一方、感圧式接着剤の帯電防止機能の付与については、アクリル系粘着剤に電荷制御剤を添加する例が開示されている。電荷制御剤としては、金属錯体タイプやイミド系、ビスフェノール系、リン酸系、カルボン酸系、四級アミンタイプ、オニウム系、イミダゾール系などが例示されている(特許文献5)。
【0014】
又、ポリ(メタ)アクリレートをベースとした感圧式接着剤にカチオン系界面活性剤と過塩素酸リチウムを配合した帯電防止性感圧式接着剤が開示されている(特許文献6)。
【0015】
更に、易剥離性フィルムとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体をベースとした感圧式接着剤にグリセリン脂肪酸エステルなどに代表される界面活性剤を添加して帯電防止性を付与した帯電防止性感圧式接着剤が提案されている(特許文献7)。
【0016】
更に、アルキレンオキサイド鎖を有するポリエーテルポリオール成分とポリエステルポリオール成分、及びジイソシアネート成分を反応させて得られる水酸基含有ポリウレタン樹脂と、3官能のイソシアネート化合物で得られるポリウレタン樹脂にイオン化合物を付与することで、帯電防止性、透明性、再剥離性のバランスが良好な帯電防止性感圧式接着が得られることが提案されている(特許文献8)。
【0017】
特許文献1〜4に記載される感圧式接着剤を用いてなる感圧式接着フィルムは、いずれも、被着体に貼着後、高温高圧下、高温下、又は、高温高湿下に長期間曝されても、被着体との貼着界面に発泡が生じず、浮き・剥がれも生じない。しかし、液晶表示装置の更なる高性能化や大型化においては、高温高湿下での耐久性や光学機能維持特性が不十分であった。又、帯電防止性の付与については有効な方法が記載されていない。特に特許文献2〜4に記載される感圧式接着剤は貼着した後、接着力が経時で上昇しリワークが困難になる場合があった。又、特許文献5、6に記載されている手法では十分な帯電防止性の発現が困難であった。更に特許文献5、6、8に記載される手法であると光学用途に使用した場合、使用する帯電防止剤の影響で耐湿熱性が低下してしまうという問題があった。更に、特許文献7に記載されているグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤を添加して帯電防止機能を付与すると、界面活性剤は水分を吸水して感圧式接着剤と被着体との界面に浮きでてくるブリードといわれる現象が生じ、貼着すると接着力が低下するばかりでなく、ブリード物が被着体を汚染してしまう問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2004−331697号公報
【特許文献2】特開2003−292928号公報
【特許文献3】特開2002−38119号公報
【特許文献4】特開2009−8859号公報
【特許文献5】特開2004−155977号公報
【特許文献6】特開2006−2140号公報
【特許文献7】特開2009−35645号公報
【特許文献8】特開2005−154491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、光学フィルムへの密着性が良く、光学フィルムを被着体に貼着後、高温高圧下、高温下、又は高温高湿下に長期間曝されても、貼着界面での発泡や、浮き・剥がれが生じないばかりでなく、ディスプレイ等の光学部材の表面保護フィルムでも要求される透明性や再剥離性にも優れ、更に帯電防止剤のブリードによる被着体への汚染性が低く、帯電防止性の良好な帯電防止性感圧式接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す感圧式接着剤組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
即ち、第1の発明は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)0.1〜5.0重量部、及び硬化剤(C)0.1〜3.0重量部を含有する帯電防止性感圧式接着剤組成物であって、
ウレタン樹脂(A)が、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなる帯電防止性感圧式接着剤組成物に関する。
【0022】
又、第2の発明は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)が、グリセリン脂肪酸エステル(B1)またはショ糖脂肪酸エステル(B2)である第1の発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物に関する。
【0023】
又、第3の発明は、ショ糖脂肪酸エステル(B2)が、下記一般式[1]で表わされる、ショ糖アルキレンオキサイド誘導体である第2の発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物に関する。
一般式[1]
【0024】
【化1】

【0025】
(Rは、脂肪酸由来の残基、nはアルキレンオキサイド付加のモル数で10〜30の整数である。)
【0026】
又、第4の発明は、ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が、50,000〜200,000である第1〜3いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物に関する。
【0027】
又、第5の発明は、ウレタン樹脂(A)が、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなる第1〜4いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物に関する。
【0028】
又、第6の発明は、ウレタン樹脂(A)が、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリイソシアネート(b)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーに、ポリアミノ化合物(c)を反応させてなる第1〜4いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物に関する。
【0029】
又、第7の発明は、シランカップリング剤(D)を含む第1〜6いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物に関する。
【0030】
又、第8の発明は、プラスチックフィルム基材の表面に、第1〜7いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層を有することを特徴とする表面保護フィルムに関する。
【0031】
又、第9の発明は、第1〜7いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層をシート状基材の片面又は両面に形成してなる帯電防止性感圧式接着性シートに関する。
【0032】
又、第10の発明は、光学部材上に、第1〜7いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層されてなる積層体に関する。
【0033】
又、第11の発明は、液晶セル用ガラス部材、第1〜7いずれかの発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、光学フィルムへの接着性が良く、光学フィルムを被着体に貼着後、高温高圧下、高温下、又は高温高湿下に長期間曝されても、貼着界面での発泡や、浮き・剥がれが生じず、光漏れ現象も発生しないだけではなく、リワーク性にも優れ、更に硬化剤との反応により、帯電防止剤がウレタンウレア樹脂と硬化剤中に組み込まれ、ブリードが生じない帯電防止性の良好な帯電防止性感圧式接着剤組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0035】
まず、本発明に用いるウレタン樹脂(A)について説明する。本発明のウレタン樹脂(A)は、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなる樹脂である。
【0036】
本発明は、ウレタン樹脂(A)の合成に用いるポリオールとして、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)を使用することを特徴とする。
【0037】
ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)は、ウレタン樹脂(A)の合成に使用するグリコール成分の合計100重量%中、40〜80重量%が好ましい。40重量%未満だと粘着性の低下や帯電防止性の発現が困難になるという問題がでる場合がある。又、80重量%をこえると、凝集力の不足という問題がでる場合がある。
【0038】
本発明に使用するポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)としては公知のものが使用でき、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールと各種ポリアルキレングリコール又は各種ポリエステルポリオールとの共重合体などが挙げられる。この中でも帯電防止性と感圧式接着剤層の耐湿熱性とを高いレベルで両立できるという観点からポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0039】
本発明は、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)と併用してポリエステルポリオール(a2)を使用することが好ましい。このことにより帯電防止性と感圧式接着剤層の耐湿熱特性とを更に向上させることができる。ポリエステルポリオール(a2)は、ウレタン樹脂(A)の合成に使用するグリコール成分の合計100重量%中、20〜60重量%が好ましい。20重量%未満だと凝集力の不足という問題がでる場合がある。又、60重量%をこえると、粘着性の低下という問題がでる場合がある。
【0040】
ポリエステルポリオール(a2)としては、公知のポリエステルポリオールを用いることができる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、多官能アルコール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールがある。多官能アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどの2個の水酸基を有する化合物が挙げられ、更にグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。
【0041】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0042】
又、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールも使用できる。
【0043】
本発明に使用するポリオールの重量平均分子量は、好ましくは100〜5,000、更に好ましくは500〜3,500である。100未満であれば、樹脂中のウレタン結合濃度の増加を招き、接着力を低下させるばかりか感圧接着剤の光学特性を損なう場合がある。又、5,000を超えると、感圧式接着剤に凝集力を付与するウレタン結合の減少を招き感圧式接着剤の耐熱性を損なう場合がある。
【0044】
ウレタン樹脂(A)の合成に用いるグリコール成分としては、更にその他のポリオール(d)を使用してもよい。
【0045】
その他のポリオール(d)としては、公知のものを使用でき、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリエーテルポリオール(a1)以外のポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類が挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオール類としては、公知のポリエーテルポリオールを用いることができる。例えば、テトラヒドロフラン、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の、プロピレンオキサイドを除くアルキレンオキサイドの重合体、共重合体、及びグラフト共重合体;
ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール若しくはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類などの水酸基が2個以上のものを用いることができる。更にビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド等のプロピレンオキサイドを除くアルキレンオキサイドを付加させたグリコール類を使用することができる。
【0047】
ポリカーボネートポリオール類は、公知のポリカーボネートポリオールを使用することができる。ポリカーボネートポリオールは、例えば、(1)グリコール又はビスフェノールと炭酸エステルとの反応、(2)グリコール又はビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
【0048】
(1)の製法で用いられる炭酸エステルとして具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0049】
(1)及び(2)の製法で用いられるグリコール又はビスフェノールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、ビスフェノール類にエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等も用いることができる。これらの化合物は1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0050】
上記記載のポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)、ポリエステルポリオール(a2)、及びその他のポリオール(d)は、感圧式接着剤組成物としての性能を満たすため、ウレタン樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が0〜−80℃となるように適宜選択するのが好ましい。尚、ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求めた値である。
【0051】
本発明に用いられるポリイソシアネート(b)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0053】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0054】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0055】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0056】
又、一部上記ポリイソシアネート(b)のトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。ポリフェニルメタンポリイソシアネート(別名:PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。尚、ポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、又はこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。ポリオールとジイソシアネートの反応物もポリイソシアネート(b)として使用することができる。
【0057】
本発明に用いられるポリイソシアネート(b)としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型、又は難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性の点から好ましい。
【0058】
本発明に用いるウレタン樹脂(A)の製造方法は、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)と、場合によって好ましく使用されるポリエステルポリオール(a2)及びその他のポリオール(d)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させて、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するウレタン樹脂を作製する。
【0059】
ウレタン樹脂(A)の合成時には、公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0060】
三級アミン系化合物としてはトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(別名:DBU)等が挙げられ、場合によっては単独、もしくは併用することもできる。
【0061】
有機金属系化合物としては錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。
【0062】
錫系化合物としてはジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0063】
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0064】
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。
【0065】
上記三級アミン系化合物、有機金属系化合物等の触媒は、場合によっては単独でも使用できるが、併用することもでき、特にポリオール成分としてポリエステルジオール類とポリエーテルジオール類を併用する場合においては、ジブチル錫ジラウレートと2−エチルヘキサン酸錫を併用することにより安定に均一なウレタン樹脂が得られるので好ましい。
【0066】
ウレタン樹脂を含む帯電防止性感圧式接着剤組成物は、硬化剤(C)を含有するが、この際、上記触媒はウレタン樹脂のヒドロキシル基と硬化剤のイソシアネート基との反応を著しく促進する。その結果保存安定性が乏しくなり、塗工が困難になる場合がある。このとき、キレート化合物が存在していると、この有機金属化合物触媒とキレートを形成し、触媒能が調整され、硬化剤(C)との反応を遅らせることができ、結果的に保存安定性の優れた帯電防止性感圧式接着剤組成物を与えることができる。
【0067】
当該キレート化合物としては、アセチルアセトン、ジメチルグリオキシム、オキシン、ジチゾン、エチレンジアミン四酢酸(別名:EDTA)のようなポリアミノオキシ酸、クエン酸のようなオキシカルボン酸、縮合リン酸等が挙げられる。キレート化合物の中では、アセチルアセトンが有機溶媒に可溶であり、揮発性を有して必要で有れば除去することが容易であり好ましい。
【0068】
本発明のウレタン樹脂の合成時には公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。斯かる目的で使用される溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジメトルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド等が挙げられる。ウレタン樹脂(A)の溶解性、溶剤の沸点等の点から特に酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン又はこれらの混合溶剤が好ましい。
【0069】
又、本発明のウレタン樹脂(A)は、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリイソシアネート(b)と反応させて得られるウレタンプレポリマーに、ポリアミノ化合物(c)を加えて鎖延長反応を行うことで得られるウレタン樹脂であることも好ましい形態の一つである。[以下、ウレタン樹脂(A2)と記載する場合がある。]
【0070】
前記好ましい形態のウレタン樹脂(A2)の場合、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)は、ウレタン樹脂(A2)の合成に使用するグリコール成分の合計100重量%中、80〜100重量%が好ましく、100重量%がより好ましい。80重量%未満だと光学特性が悪化したり帯電防止性の発現が困難になったりする場合がある。
【0071】
本発明のポリアミノ化合物(c)は、2個以上のアミノ基を有する化合物であり、公知のものを使用できる。
【0072】
具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン;
イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ポリアミン;
フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;
及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、末端に一級又は二級アミノ基を有するデンドリマー、両末端にプロポキシアミンを有し、下記一般式[4]で示されるポリオキシアルキレングリコールジアミン等も使用することができる。
【0073】
一般式[4]
2N−CH2−CH2−CH2−O−(Cm2m−O)n−CH2−CH2−CH2−NH2
(式中、mは2〜4の任意の整数、nは2〜50の任意の整数を示す。)
【0074】
本発明に使用するポリアミノ化合物(c)としては、反応の制御の面から特に一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)にエチレン性不飽和化合物(c2)をマイケル付加反応させた化合物(c3)が好ましく、更にエチレン性不飽和化合物(c2)としては、ウレタン樹脂(A2)への架橋点導入の面から、水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を使用するのが好ましい。
【0075】
一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)としては、上記の2個以上のアミノ基を有する化合物の中で一級アミノ基を2個以上有するものを使用することができ、特にイソホロンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンは、マイケル付加反応の制御が容易であり、得られるマイケル付加反応させた化合物(c3)を使用して得られたウレタン樹脂(A2)の透明性が優れていることから好ましい。
【0076】
エチレン性不飽和化合物(c2)のうち水酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコール、ダイセル化学工業製プラクセルFA、プラクセルFA2D、プラクセルFA3、プラクセルFA5、プラクセルFA10L、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFM3X、プラクセルFM5、プラクセルFM5Lなどの水酸基を末端に有するポリエステル鎖を有する不飽和化合物、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基を末端に有するポリエーテル鎖を有する不飽和化合物が挙げられる。
【0077】
上記化合物を単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができるが、特に後述する硬化剤(C)との反応性や、感圧式接着剤の光学特性などの面から4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用するのが好ましい。
【0078】
又、エチレン性不飽和化合物(c2)のうち水酸基を有しないものを例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。極性の調節を目的とする場合には、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキル基含有アクリレート、又は対応するメタクリレートが挙げられる。レベリング性の調節等を目的とする場合には、炭素数6以上が好ましい。
【0079】
更に、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシないしはフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;
酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;
ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等のα−オレフィン類;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有不飽和化合物類;
アミド基含有不飽和化合物、ジアルキルアミノ基含有不飽和化合物、四級アンモニウム塩基含有不飽和化合物などの窒素含有不飽和化合物類;
を併用することができる。
【0080】
アミド基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミドなどのモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド等が挙げられる。
【0081】
ジアルキルアミノ基含有不飽和化合物としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられる。
【0082】
又、四級アンモニウム塩基含有不飽和化合物は、上記ジアルキルアミノ基含有不飽和化合物を四級アンモニウム化せしめることにより得られる。対イオンとしてCl-、Br-、I-のハロゲンイオン又はQSO3-(Q:炭素数1〜12アルキル基)を有する四級アンモニウム塩基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−[1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル]アンモニウムクロライド、トリメチル−3−[1−(メタ)アクリルアミドプロピル]アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−[1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル]アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0083】
更に、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキルアルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有不飽和化合物;
ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する不飽和化合物、及びその誘導体;
グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレートなどのエポキシ基含有不飽和化合物;
酢酸アリル、アリルベンゼン、シアン化アリル等のアリル化合物;
シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトン、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレンなどのビニル化合物;
アセチレン、エチニルベンゼン、エチニルトルエン等のエチニル化合物;
も併用することができる。
【0084】
一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)と、エチレン性不飽和化合物(c2)とのマイケル付加反応では、一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)中のアミノ基の活性水素1モルと、エチレン性不飽和化合物(c2)中のエチレン性不飽和基1モルとが反応する。一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)中のアミノ基は、電子吸引性の基を持つ化合物のエチレン性不飽和基に容易にマイケル付加をするため、エチレン性不飽和化合物(c2)としては(メタ)アクリル系化合物が好ましく、特にアクリレート系化合物が、マイケル付加反応の効率の点から最も好ましい。
【0085】
一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)にエチレン性不飽和化合物(c2)をマイケル付加反応させた化合物(c3)の合成方法としては、マイケル付加反応に関する公知方法をそのまま利用できる。エチレン性不飽和化合物(c2)が、(メタ)アクリル系化合物、特にアクリレート系化合物等である場合、必要に応じてアルコール等の触媒下に10〜100℃で反応が進行する。使用するエチレン性不飽和化合物(c2)の種類にも因るが40〜80℃の反応温度が好ましい。反応温度が高すぎるとエステルアミド交換反応が生じるため好ましくない。又、エチレン性不飽和化合物(c2)が電子吸引性基を持たない場合には金属触媒の存在で反応が可能になり、この場合、触媒存在下で加熱しながら60〜100℃で反応させると適度な反応速度になり好ましい。又、合成溶剤は使用してもしなくても良く、その種類は特に限定しないが、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、ベンゼン等の公知の溶剤を使用できる。溶剤を使用する場合の溶液濃度は好ましくは20重量%以上、更に好ましくは50重量%以上である。これより希薄な場合には反応が進行しにくいため好ましくない。又、反応時間としては、使用するエチレン性不飽和化合物(c2)の種類により異なるが、30分〜5時間で終了する。
【0086】
一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)に付加させるエチレン性不飽和化合物(c2)の比率としては、マイケル付加反応させた化合物(c3)中に少なくとも2個の一級又は二級のアミノ基が残存するように、一級アミノ基を2個以上有する化合物(c1)が有する一級アミノ基1モルに対して、好ましくは0.1〜1.0モル、更に好ましくは0.2〜1.0モルの割合でエチレン性不飽和化合物(c2)中のエチレン性不飽和基を反応させることが好ましい。これより少ないとエチレン性不飽和化合物(c2)を導入した効果が得られない場合があり、更に保存安定性が低いことから好ましくない。これより多くても反応に寄与しない。
【0087】
ポリアミノ化合物(c)の使用量は、ウレタン樹脂(A2)100重量%中[ウレタンウレア樹脂(A2)の合成に使用するグリコール成分、ポリイソシアネート(b)、ポリアミノ化合物(c)、及び必要に応じて使用する反応停止剤(e)の合計100重量%中]、0.5〜11重量%の割合が好ましく、更に好ましくは1.0〜4.0重量%である。0.5重量%未満であると凝集力が低下し、耐久性の付与が困難になる場合がある。又、11重量%を超えると樹脂の柔軟性が低下することから帯電防止性の付与が困難になったり、光学特性が悪化したりする場合がある。
【0088】
本発明のウレタン樹脂(A2)は、末端がイソシアネート基であるウレタンプレポリマーと、ポリアミノ化合物(c)とを反応してなるが、更に必要に応じて反応停止剤(e)としてモノアミノ化合物を反応させることができる。
【0089】
反応停止剤(e)は、分子量を制御したり、ウレタン樹脂(A2)末端の未反応で残るイソシアネート基と反応して樹脂の反応活性を安定化させたりする役割を果たす。
【0090】
本発明に用いる反応停止剤(e)としては、例えば、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソノニルアミン等のジアルキルアミン類の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の水酸基を有するモノアミン、モノメチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン等のアルキルヒドラジン類、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、ラウリン酸ヒドラジド等のヒドラジド類、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン等の三級アミノ基と一級アミノ基を有する化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等アルコキシシリル基を有するモノアミノ化合物を用いることができる。更に、一級又は二級アミノ基を1個だけ有するアミノ化合物も反応停止剤として用いることができる。
【0091】
上記の反応停止剤(e)の中でも2−アミノ−2−メチル−プロパノールなどのように水酸基を有するモノアミン化合物は、末端が水酸基である保存安定性に優れたウレタン樹脂(A2)を得ることができる。更に末端が水酸基であるウレタン樹脂(A2)は、この水酸基を後述する硬化剤(C)との反応点として使用することができることから好ましい。尚、水酸基を有するモノアミンの場合、アミノ基と水酸基との両方が、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基と反応可能であるが、アミノ基の反応性の方が高く、優先的にイソシアネート基と反応する。
【0092】
上記の反応停止剤(e)は、ウレタン樹脂(A2)100重量%中[ウレタン樹脂(A2)の合成に使用するグリコール成分、ポリイソシアネート(b)、ポリアミノ化合物(c)、及び必要に応じて使用する反応停止剤(e)の合計100重量%中]0.05重量%〜2.0重量%が好ましく、0.05重量%未満であると樹脂の反応安定性を損なう場合があり、2.0重量%を超えると樹脂の重量平均分子量(Mw)が低くなり耐久性を損なう場合がある。
【0093】
更に、この様にして得られたウレタン樹脂(A2)の水酸基に環状エステル化合物及び/又は環状エーテル化合物を開環付加して変性することができる。
【0094】
本発明に用いるウレタン樹脂(A2)の製造方法は、まず、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリエーテルポリオール(a)及び必要に応じて使用されるその他のポリオール(d)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させて、少なくとも1個のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを作製する。次に、得られたウレタンプレポリマーとポリアミノ化合物(c)と必要に応じて反応停止剤(e)とを反応させてウレタン樹脂(A2)を作製することができる。
【0095】
ウレタンプレポリマーを合成するときに用いる有機金属化合物触媒は、ウレタンプレポリマーが、ポリアミノ化合物(c)と反応するとき、反応を著しく促進する。イソシアネート基とアミノ基との反応は、元来、非常に早いが、有機金属化合物触媒の存在下では、更に反応が促進され、制御が困難になる場合がある。このとき、キレート化合物が存在していると、この有機金属化合物触媒とキレートを形成し、触媒能が調整され、ポリアミノ化合物(c)との反応を制御しやすくする。
【0096】
反応停止剤(e)の使用量は、ポリアミノ化合物(c)と混合添加する場合と、単独で最後に添加する場合により異なるが、混合添加する場合にはウレタンプレポリマー中のイソシアネート基1モルに対して、反応停止剤(e)中のアミノ基が、好ましくは0.5モル以下、更に好ましくは、0.3モル以下になる量を使用するのが望ましく、単独で最後に添加する場合には最終的に存在するイソシアネート基1モルに対して0.5〜3.0モルであり、特にウレタン樹脂(A2)の安定化を目的とした場合には1〜3.0モルが好ましい。この範囲外では成膜性が低下したり、変着色したりする等の悪影響が見られる場合がある。
【0097】
反応の終点は、滴定に因るイソシアネート%測定、IR測定によるイソシアネートピークの消失により判断する。
【0098】
カルボキシル基や三級アミノ基を有するウレタン樹脂(A2)は、水に分散もしくは溶解せしめるためイオン化することもできる。
【0099】
ウレタン樹脂(A)の分子量は、GPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で50,000〜200,000である必要がある。好ましくは、50,000〜130,000である。重量平均分子量が50,000未満であると感圧接着剤としての耐久性と光学機能維持特性とのバランスが悪化する。又、200,000を超えると粘度が高すぎ扱いにくくなる。
【0100】
次に、本発明に用いられる少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)について説明する。脂肪酸エステル誘導体(B)は、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化反応により得られる化合物であり、界面活性剤として使用されることが多い。多価アルコールには、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ショ糖などが使用でき、脂肪酸には、下記一般式[5]で表される脂肪酸が使用できる。
【0101】
一般式[5]
CnHmCOOH
(CnHmは直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、nは8〜22、mは17〜45の任意の整数を示す高級脂肪酸であり、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が挙げられる。)
【0102】
脂肪酸エステルは、水分を吸水すると感圧式接着剤と被着体との間にブリードしてきて貼着すると接着力が低下してしまう。そのため、脂肪酸エステル誘導体が少なくとも1つのヒドロキシル基を有していれば、下記で説明する硬化剤(C)のイソシアネート基と脂肪酸エステル誘導体のヒドロキシル基とが反応し、脂肪酸エステル誘導体がウレタン樹脂(A)に組み込まれブリードが生じないばかりでなく、ウレタン樹脂(A)と硬化剤との過剰な架橋反応を抑制するため、帯電防止性と粘着物性の両立が可能となる。又、水分による影響も軽減される。更に脂肪酸エステルは可塑剤としても効果もあり、被着体へのぬれが進行し接着力の向上も期待できる。
【0103】
脂肪酸エステル誘導体(B)としては、ウレタン樹脂(A)との相溶性という観点から、グリセリン脂肪酸エステル(B1)またはショ糖脂肪酸エステル(B2)であることが好ましい。更に脂肪酸が、オレイン酸であることが特に好ましい。
【0104】
更に、ショ糖脂肪酸エステル(B2)が、下記一般式[1]で表されるショ糖アルキレンオキサイド脂肪酸エステル誘導体であることがウレタン樹脂(A)との相溶性向上の観点から好ましい。
【0105】
一般式[1]
【0106】
【化2】

【0107】
(Rは、脂肪酸由来の残基、nはアルキレンオキサイドのモル数で10〜30の整数である。)
【0108】
一般式[1]は、脂肪酸とショ糖アルキレンオキサイド付加体とのエステル化反応により得られる化合物である。式中Rは、一般式[5]で表される直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸由来の残基であり、nが8〜22である場合、より帯電防止性が得られるので好ましい。脂肪酸としては、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられ、上記同様にショ糖アルキレンオキサイド付加オレイン酸エステルであるとウレタン樹脂(A)や溶剤への相溶性がより良好という特徴を持つためより好ましい。
【0109】
上記の脂肪酸エステルは、公知のものを使用できる。グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセロールモノラウレート、グリセロールジラウレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールジパルミテート、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールジオレエート等が挙げられる。
【0110】
更に、グリセリンアルキレンオキサイド脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレングリセロールモノラウレート、ポリオキシエチレングリセロールモノパルミテート、ポリオキシエチレングリセロールモノステアレート、ポリオキシエチレングリセロールモノオレエート等が挙げられる。
【0111】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート等が挙げられる。
更に、ショ糖アルキレンオキサイド脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等が挙げられる。
【0112】
又、本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物は、上記脂肪酸エステル誘導体(B)と併用してそれ以外の帯電防止剤を使用してもよい。併用する化合物としては、特に限定されないが上記脂肪酸エステルや公知の界面活性剤、アルカリ金属の有機塩が挙げられ、これらは単独で又は複数を併用することもできる。
【0113】
又、本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物は、上記脂肪酸エステル誘導体(B)をウレタン樹脂(A)100重量部に対して0.1〜5.0重量部含み、好ましくは0.3〜4.0重量部含む。0.1重量部未満であると十分な帯電防止性が得られず、5.0重量部を超える量を添加してもそれ以上の帯電防止性を得るのは困難であるばかりか耐熱性の不良を生じる。
【0114】
次に、硬化剤(C)及びアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤(D)について説明する。
【0115】
本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物は、上記ウレタン樹脂(A)、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)、硬化剤(C)を含有することを特徴とする。前記ウレタン樹脂(A)、脂肪酸エステル誘導体(B)中に存在する反応性官能基としては、水酸基が挙げられる。従って、本発明に用いられる硬化剤(C)としては硬化剤として作用するために、ウレタン樹脂(A)、脂肪酸エステル誘導体(B)の水酸基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。特にポリイソシアネート化合物は、架橋反応後の接着性や被覆層への密着性に優れていることから好ましい。
【0116】
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、及びこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0117】
上記硬化剤(C)は、単独又は併用して使用できる。上記硬化剤(C)としては、反応性やポットライフ、更には感圧式接着剤層の光学特性などからヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体が好ましい。
【0118】
本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、上記硬化剤(C)を0.1〜3.0重量部含有することを特徴とする。3.0重量部を越えると帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層の架橋構造が密になり、感圧式接着剤層のタックが低下傾向となり、被着体に対する接着性が低下すると共に、柔軟性が低下するので、偏光板などの光学用フィルム用感圧接着剤に使用した場合、光漏れ防止性などの光学特性を損なうことになる。又、0.1重量部未満では、十分な架橋構造が得られないため、凝集力が低下し、耐熱性、耐湿熱性が低下する。ウレタン樹脂(A)の反応性官能基と上記硬化剤(C)中の官能基との反応により、樹脂組成物が三次元架橋し、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、従来よりも過酷な条件下における耐熱性及び耐湿熱性をも向上することができるため、光学部材用として好ましく使用することができる。
【0119】
又、本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物に、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤(D)を加えると耐湿熱性が向上するため、偏光板などの光学用フィルム用感圧接着剤の用途においては使用することが好ましい。シランカップリング剤(D)は、本発明の感圧式接着剤層中で特に傾斜構造を形成しやすく、接着剤層表面に偏在化し、耐湿熱特性の向上に特に効果を発揮すると考えられる。
【0120】
シランカップリング剤(D)としては公知のものを使用できる。例えば、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基とアルコキシ基とを有するシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン;
5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン;
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン;
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有する化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1, 3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス( 2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのいずれか1種以上を単独もしくは混合して使用することができる。
【0121】
シランカップリング剤を使用する場合は、ポリウレタン(A)100重量部に対して、シランカップリング剤(D)を0.01〜3.0重量部含有することが好ましい。特に0.1〜2.5重量部含有することがより好ましい。3.0重量部を越えると光学機能維持特性を損なう。又、0.01重量部未満では、十分な耐湿熱性向上が見られない。又、上記のいずれか1種以上を単独もしくは混合して使用することができる。
【0122】
本発明の帯電防止性感圧接着剤組成物には、必要に応じて、他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂を併用することもできる。更に、用途に応じて、有機・無機の顔料、フィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等の添加剤を配合しても良い。
【0123】
本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物を使用して、感圧式接着剤層とシート状基材とからなる積層製品(以下、「帯電防止性感圧式接着性シート」という。)を得ることができる。例えば、種々のシート状基材の片面、又は両面に本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって帯電防止性感圧式接着シートを得ることができる。帯電防止性感圧式接着シートを構成する感圧式接着剤層は、「感圧式」であるから室温程度でタックを有する。帯電防止性感圧式接着剤組成物を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、その他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒や、水を更に添加して、粘度を調整することもできるし、帯電防止性感圧式接着剤組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等は多量に添加するとウレタン樹脂(A)と硬化剤(C)との反応阻害を引き起こす可能性があるため注意が必要である。
【0124】
シート状基材としては、セロハン、各種プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材、偏光板などの光学フィルム等の平坦な形状のものが挙げられる。又、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に表面を剥離処理したものや帯電防止処理したものを用いることもできる。
【0125】
各種プラスチックシートとしては、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂、シクロオレフィン系樹脂のフィルム等が挙げられる。
【0126】
常法に従って適当な方法で上記シート状基材に帯電防止性感圧式接着剤組成物を塗工した後、帯電防止性感圧式接着剤組成物が有機溶媒や水等の液状媒体を含有する場合には、液状媒体を除去したり、帯電防止性感圧式接着剤組成物が揮発すべき液状媒体を含有しない場合は、溶融状態にある接着剤層を冷却して固化したりして、シート状基材の上に接着剤層を形成することができる。感圧式接着剤層の厚さは、0.1μm〜200μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましい。0.1μm未満では充分な接着力が得られないことがあり、200μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0127】
本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物をシート状基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては接着剤組成物の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0128】
本発明の表面保護フィルムは、被着体表面を所定の期間、機械的もしくは電気的に保護するためのフィルムであり、液晶パネルや、プラズマディスプレイ、偏光板、CRT(ブラウン管)などの光学部品の表面を一時的に保護するために用いられる。ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックフィルム基材の表面に、本発明の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層された状態のものである。感圧式接着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。
【0129】
本発明の積層体は、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の種々の光学特性を持つ、いわゆるシート(前述の通りフィルムともいう)状の光学部材に、上記本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層された状態のものである。感圧式接着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。
【0130】
本発明の積層体は、(ア)剥離処理されたシート状基材の剥離処理面に帯電防止性感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を感圧式接着剤層の表面に積層したり、(イ)シート状の光学部材に帯電防止性感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、感圧式接着剤層の表面に剥離処理されたシート状基材の剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0131】
このようにして得た積層体から感圧式接着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、例えば、感圧式接着剤層を液晶セル用ガラス部材に貼着することによって、「シート状の光学部材/感圧式接着剤層/液晶セル用ガラス部材」という構成の液晶セル用部材を得ることができる。
【0132】
又、本発明の帯電防止性感圧式接着性シート、及び積層体の用途は特に限定されないが、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材に好適に使用することができる。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例における「部」及び「%」は、特にことわらない限り「重量部」及び「重量%」を表す。
【0134】
合成例1〜6で得られた各樹脂の重量平均分子量(Mw)を以下の方法に従い求めた。
【0135】
<重量平均分子量(Mw)測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は、東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0136】
[ウレタン樹脂の合成]
合成例1
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリエステルポリオールP−1010(2官能ポリエステルポリオール、クラレ株式会社製)70部、ポリエーテルポリオールG−3000B(3官能ポリプロピレングリコール、旭電化株式会社製)270部、トルエン130部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.04部を仕込み、液が十分均一になった後に、ヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエル株式会社製)25部を1時間で滴下して、90℃で3時間反応を行った。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認し反応を終了した。トルエン115部を加えウレタン樹脂(A−1)の溶液を得た。このウレタン樹脂(A−1)の重量平均分子量Mwは55,000であった。
【0137】
[アミノ化合物の合成]
合成例2
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにイソホロンジアミン(IPDA)25.0部、トルエン25.0部を仕込み。4−ヒドロキシブチルアクリレート 19.1部、ブチルアクリレート 18.8部を室温で滴下した。滴下終了後、80℃で2時間反応させた後、トルエン37.9部を加えた。更に酢酸エチルを加え固形分を50%に調整したものを化合物(1)溶液とした。
【0138】
[ウレタン樹脂の合成]
合成例3
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにサンニックスPP−2000(2官能ポリプロピレングリコール、三洋化成工業株式会社製)440部、イソホロンジイソシアネート60部、トルエン125部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.04部を仕込み、100℃まで徐々に昇温して、2時間反応を行った。40℃まで冷却し、酢酸エチル374部、アセチルアセトン1.4部を加えた後、化合物(1)溶液19.3部を1時間で滴下し、更に1時間熟成した。滴定でイソシアネート基残量を確認した後、2−アミノ−2−メチル−プロパノール0.6部及び酢酸エチル100部を加えて、IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認し反応を終了した。このウレタン樹脂(A−2)の重量平均分子量Mwは110,000であった。
【0139】
[ウレタン樹脂の合成]
合成例4
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにサンニックスPP−2000(2官能ポリプロピレングリコール、三洋化成工業株式会社製)440部、イソホロンジイソシアネート60部、トルエン125部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.04部を仕込み、100℃まで徐々に昇温して、2時間反応を行った。40℃まで冷却し、酢酸エチル374部、アセチルアセトン1.4部を加えた後、化合物(1)溶液29部を1時間で滴下し、更に1時間熟成した。滴定でイソシアネート基残量を確認した後、2−アミノ−2−メチル−プロパノール0.5部及び酢酸エチル100部を加えて、IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認し反応を終了した。このウレタン樹脂(A−3)の重量平均分子量Mwは180,000であった。
【0140】
[ウレタン樹脂の合成]
合成例5
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにP−2010(2官能ポリエステルポリオール、株式会社クラレ製)440部、イソホロンジイソシアネート60部、トルエン125部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.04部を仕込み、100℃まで徐々に昇温して、2時間反応を行った。40℃まで冷却し、酢酸エチル374部、アセチルアセトン1.4部を加えた後、化合物(1)溶液19.3部を1時間で滴下し、更に1時間熟成した。滴定でイソシアネート基残量を確認した後、2−アミノ−2−メチル−プロパノール0.6部及び酢酸エチル100部を加えて、IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認し反応を終了した。このウレタン樹脂(A−4)の重量平均分子量Mwは100,000であった。
【0141】
[アクリル樹脂の合成]
合成例6
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート99部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1.0部、アセトン150部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.06部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を60℃に昇温させ、5時間反応させた。反応終了後、トルエンを190部とアクリル酸0.25部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.50部を添加して、70℃に昇温し、6時間反応させた。反応後、トルエン55部を添加して室温まで冷却しアクリル樹脂(A−5)の溶液を得た。得られたアクリル樹脂(A−5)の重量平均分子量は160万であった。
【0142】
実施例1〜16
合成例1、3、4で得られた樹脂(A−1)〜(A−3)の固形分100部に対し、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)、硬化剤(C)、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤(D)を表1に従い配合して帯電防止性感圧式接着剤組成物を得た。
【0143】
【表1】

【0144】
B−1:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート
B−2:グリセロールモノオレエート
B−3:ポリオキシエチレングリセロールモノオレエート
B−4:ソルビタンモノオレエート
硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0145】
比較例1〜9
合成例1、3、5で得られた樹脂(A−1)、(A−2)、(A−4)の固形分100部に対し、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)、硬化剤(C)、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤(D)を表2に従い配合して帯電防止性感圧式接着剤組成物を得た。
【0146】
比較例10、11
少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)を、ヒドロキシル基を持たない脂肪酸エステル誘導体に変えて、表2に従い配合して帯電防止性感圧式接着剤組成物を得た。
【0147】
比較例12
少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)を、過塩素酸リチウムに変えて、表2に従い配合して帯電防止性感圧式接着剤組成物を得た。
【0148】
比較例13、14
合成例6で得られたアクリル樹脂(A−5)の固形分100部に対し、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)、硬化剤(C)、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を表2に従い配合して帯電防止性感圧式接着剤組成物を得た。
【0149】
【表2】

【0150】
B−1:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート
B−5:グリセロールポリオキシエチレントリイソステアリン酸エステル
E−1:過塩素酸リチウム
硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0151】
上記帯電防止性感圧式接着剤組成物を剥離処理されたポリエステルフィルム(以下、「剥離フィルム」という。)上に乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させ、感圧式接着剤層を形成した。乾燥後、感圧式接着剤層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ多層構造の偏光板の片面を貼り合せ、「剥離フィルム/感圧式接着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」なる構成の積層体を得た。次いで、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成(暗反応)させて、接着剤層の反応を進行させ、積層体を得た。
【0152】
上記で得られた積層体を350mm×250mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、液晶セル用部材を得た。透明性、リワーク性、耐湿熱性、及び帯電防止性を以下の方法で評価した。結果を表3、表4に示す。
【0153】
<透明性の評価方法>
上記積層体を幅25mmに裁断し、剥離フィルムを剥がし、露出した感圧式接着層をガラス板に貼着した後、50℃−95%RHの条件下に放置し、23℃−50%RHに冷却した後、目視で評価し、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
○:「無色透明なもの。」
△:「曇り、凝集物が見られるもの。」
×:「透明でないもの。」
【0154】
<帯電防止性の評価方法>
実施例、比較例の帯電防止性感圧式接着剤組成物に関しては、上記積層体の剥離フィルムを剥がし、露出した感圧式接着剤層表面の表面抵抗値をデジタル超高抵抗/微少電流計(R8340 ADVANTEST製)で測定し、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
○:「表面抵抗値が4.0×1011以上、9.0×1012未満。」
△:「表面抵抗値が9.0×1012以上、4.0×1013未満。」
×:「表面抵抗値が4.0×1013以上、1.0×1014未満。」
(なお、表面抵抗値の単位は「Ω/□」である。)
【0155】
<再剥離性(リワーク性)の評価方法>
上記積層体を幅25mmに裁断し、剥離フィルムを剥がし、露出した感圧式接着層をガラス板に23℃−50%RHにて貼着し、50℃雰囲気下で5Kg/cm2の圧力をかけ、15分保持して貼り合せた後ロール圧着した。圧着24時間後、80℃で500時間静置した後、23℃−50%RH雰囲気下で剥離試験器にて、180度ピール、引っ張り速度300mm/分で引き剥がす180°ピール試験を実施し、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、3段階で評価した。
○:「実用上全く問題がない。」
△:「若干曇りが認められ、実用上問題がある。」
×:「全面的に感圧式接着剤の転着が認められ、実用不可である。」
【0156】
<耐湿熱性の評価方法>
耐湿熱性の評価として、上記液晶セル用部材を80℃、相対湿度90%で1000時間放置した後の浮きハガレ、発泡を目視で観察した。耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
○:「浮きハガレ・発泡が全く認められず、実用上全く問題なし。」
△:「若干浮きハガレ・発泡が認められるが、実用上問題がない。」
×:「全面的に浮きハガレ・発泡があり、実用不可である。」
【0157】
【表3】

【0158】
【表4】

【0159】
表3の実施例1〜16に示すように、特定量の、ウレタン樹脂(A)、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)、硬化剤(C)、場合によってシランカップリング剤(D)からなる本発明の帯電防止性感圧式接着剤組成物は、リワーク性、耐湿熱性、透明性、及び帯電防止性のいずれも良好であった。一方、表4に示すように、比較例1〜14の帯電防止性感圧式接着剤組成物は、リワーク性、耐湿熱性、光学特性、及び帯電防止性のいずれかが不良であり、すべての特性を満足できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)0.1〜5.0重量部、及び硬化剤(C)0.1〜3.0重量部を含有する帯電防止性感圧式接着剤組成物であって、
ウレタン樹脂(A)が、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなる帯電防止性感圧式接着剤組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステル誘導体(B)が、グリセリン脂肪酸エステル(B1)またはショ糖脂肪酸エステル(B2)である請求項1記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物。
【請求項3】
ショ糖脂肪酸エステル(B2)が、下記一般式[1]で表わされる、ショ糖アルキレンオキサイド誘導体である請求項2記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物。
一般式[1]
【化1】

(Rは、脂肪酸由来の残基、nはアルキレンオキサイドのモル数で10〜30の整数である。)
【請求項4】
ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が、50,000〜200,000である請求項1〜3いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物。
【請求項5】
ウレタン樹脂(A)が、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)とポリイソシアネート(b)とを反応させてなる請求項1〜4いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物。
【請求項6】
ウレタン樹脂(A)が、ポリプロピレングリコール骨格を有するポリオール(a1)とポリイソシアネート(b)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーに、ポリアミノ化合物(c)を反応させてなる請求項1〜4いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物。
【請求項7】
シランカップリング剤(D)を含む請求項1〜6いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物。
【請求項8】
プラスチックフィルム基材の表面に、請求項1〜7いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層を有することを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項9】
請求項1〜7いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層をシート状基材の片面又は両面に形成してなる帯電防止性感圧式接着性シート。
【請求項10】
光学部材上に、請求項1〜7いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層されてなる積層体。
【請求項11】
液晶セル用ガラス部材、請求項1〜7いずれか記載の帯電防止性感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材。

【公開番号】特開2011−208106(P2011−208106A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80005(P2010−80005)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】