帯電防止電気機器搬送装置
【課題】広い範囲の除電ができる帯電防止電気機器搬送装置の提供。
【解決手段】電気機器搬送装置は、電気機器用の載置領域に望むように支持基体に設けられて、電気機器の側面に弾性的に接触して除電する除電ブラシ装置と、除電ブラシ装置を、電気機器を支持基体上に載置できる開放位置と、電気機器に弾性的に接触する接触位置とに選択的に弾性的に保持する保持装置と、電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、搬送容器上で開口に望んで配置され、開口を通過する電気機器の外周面に弾性的に接触して除電する除電ブラシ装置とを備えている。
【効果】電気機器での静電気放電を防止できる。
【解決手段】電気機器搬送装置は、電気機器用の載置領域に望むように支持基体に設けられて、電気機器の側面に弾性的に接触して除電する除電ブラシ装置と、除電ブラシ装置を、電気機器を支持基体上に載置できる開放位置と、電気機器に弾性的に接触する接触位置とに選択的に弾性的に保持する保持装置と、電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、搬送容器上で開口に望んで配置され、開口を通過する電気機器の外周面に弾性的に接触して除電する除電ブラシ装置とを備えている。
【効果】電気機器での静電気放電を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は帯電防止電気機器搬送装置に関するものであり、特に電気機器の静電気を除去して静電気放電を防ぐことのできる支持基体および搬送箱などの帯電防止電気機器搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明で「電気機器」とは、半導体装置や、この半導体装置に抵抗やコンデンサ部品等で回路構成する電子部品、実装基板、液晶基板、および電子部品を搭載した電気・電子機器などを含む、静電気放電で悪影響を受ける可能性のある全ての電気機器を意味する。このような電気機器には、生産ラインにおける設備、機械部材などとの接触により接触摩擦帯電を発生し、静電気放電により電気機器の絶縁破壊が生じる可能性がある。このような静電気放電が発生する原因の1つは、電気機器を支持体あるいは搬送箱などの搬送装置に対して載置あるいは取り出し作業をするときに、電気機器が搬送装置と接触あるいは擦れ合って静電気が発生することである。
【0003】
このような静電気放電を防ぐために、除電ブラシを半導体基板搬送アームの上面に設置して、基板に帯電した静電気を基板搬送中に除去し、また搬送後の基板を搬送アームから取り外す際に生じた剥離帯電による静電気を除去することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、液晶表示素子の搬送トレイ上に導電性繊維からなる除電ブラシを設けて、液晶表示素子の全ての走査電極端子と信号電極端子とを短絡させて除電することが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−158277号公報
【特許文献2】特開平7−320890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような除電ブラシを用いた静電気帯電対策によれば、除電の必要な電気機器が絶縁体部分を持つ場合には、除電ブラシが接触した部分の除電はできても、接触しない部分には帯電が残されてしまうため静電気放電対策が不十分であり、静電気放電による不良を発生する可能性が残る。近年、半導体装置や、この半導体装置に抵抗やコンデンサ部品等で回路構成する電子部品、実装・液晶基板、および、電子部品を搭載した電気・電子機器に至る全ての静電気放電で破壊する電気機器が大量に生産されており、これらの電気機器は筐体で囲われてはいるが、筐体の底面や側面がライン生産中での設備・機械部材などと接触して、接触摩擦帯電を発生し、静電気放電により内部ICなどの絶縁破壊が生じる可能性がある。
【0007】
電気機器を搬送した後、支持基体や箱中から取り出すとき、電気機器筐体の表面と固定支持基体(クッション材など)、あるいは箱との接触・摩擦により帯電が発生する。電気機器を固定する支持基体や搬送箱は導電性材料で構成されており、自体の静電気帯電は防止可能である。しかし、導電性である支持基体や搬送箱においても、電気機器の筐体が絶縁物であれば、静電気帯電は発生する。支持基体や搬送箱が導電性材料であれば、電気機器も静電気が発生しないという考えは大きな間違いであり、この現象は静電気対策の中でも見落としがちである。
【0008】
この帯電現象を説明するためには、接触・摩擦による静電気発生モデルについて説明する必要がある。2つの材料として、材料Aと材料Bとが接触するときに電荷の移動が生じ、電気二重層を形成し、分離したときに静電気が発生する。この発生電荷量は材料間の仕事関数の差に依存する。仕事関数とは物質から電子を外に取り出すのに必要なエネルギーであり材料固有である。材料間の仕事関数差が大きいと静電気による発生電荷量は増加する。従って、材料が低抵抗な金属であっても、静電気は仕事関数差に依存するので、電荷は発生する。ただし、低抵抗な金属あるいは導電性材料の場合は、その材料自体の抵抗が低いので、緩和され易く、接地を通じて静電気が逃げてしまい、発生していないように見える。ただし、これら低抵抗な材料に高抵抗な材料(絶縁物)が接触した場合は、仕事関数差で発生した電荷は絶縁物上には保持され、緩和しない。つまり、本課題のように高抵抗な電気機器筐体の側面や底面が帯電した場合、帯電状態は維持されるので静電気放電により電気機器が静電気不良を起こす可能性がある。
【0009】
一般的な暫定対策は、電気機器を搬送した後、支持基体や箱中から取り出すときにイオナイザを設置する。しかし、イオナイザの増設はコスト増大、メンテナンスは現場作業者の負担になる。従って、静電気放電の発生を抑えるために、作業者に簡易で恒久的な静電気帯電を抑制する機能が必要である。
【0010】
従ってこの発明の目的は、搬送装置から電気機器を取り出すときに、電気機器の帯電部分の広い範囲を除電することができて静電気帯電を防ぐことのできる帯電防止電気機器搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の帯電防止電気機器搬送装置は、電気機器を載置するため載置領域を持つ支持基体と、上記載置領域外で上記載置領域に望んで上記支持基体に設けられて、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置と、上記支持基体に設けられて、上記ブラシ要素を、上記載置領域を開放して上記電気機器を上記支持基体上に受け入れ得るようにする開放位置と、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に上記ブラシ要素を弾性的に接触させる接触位置とに選択的に弾性的に保持する保持装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の帯電防止電気機器搬送装置は、電気機器を収納し、容器壁に設けられて上記電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、上記搬送容器上で上記開口に望んで配置され、上記開口を通過する上記電気機器の外周面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の装置によれば、電気機器に発生する静電気を除電ブラシ装置により除電して静電気放電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第1の実施の形態を示す概略平面図である。
【図2】図1の帯電防止電気機器搬送装置の概略平面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿って示す帯電防止電気機器搬送装置の概略側面断面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿って示す帯電防止電気機器搬送装置の概略平面断面図である。
【図5】除電ブラシ装置のブラシ要素を示す概略斜視図である。
【図6】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第2の実施の形態を示す概略平面図である。
【図7】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第3の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図8】図7の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【図9】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第4の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図10】図9の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【図11】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第5の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図12】図11の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【図13】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第6の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図14】図13の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1〜5に示すように、この発明の第1の実施の形態の帯電防止電気機器搬送装置は、例えば直方体形状の電気機器1を載置するための板状の支持体2と、支持体2を電気機器1と共に収納する中空直方体形状の搬送箱である搬送容器3とを備えている。これら支持体2と搬送容器3とは、図に示すように支持体2を別個の搬送容器3内に収納して協働して一つの帯電防止電気機器搬送装置として用いることもできるし、例えば支持体2を搬送容器3の底壁とするなどにより一体構造の帯電防止電気機器搬送装置とすることもできるし、また支持体2と搬送容器3とを別個にしてそれぞれ独立した帯電防止電気機器搬送装置として使用することもできる。換言すれば、この発明の帯電防止電気機器搬送装置は、支持体2、搬送容器3あるいはこれらの組み合わせを意味するものである。
【0017】
支持体2は、支持基体4と、支持基体4上に取り付けられた除電ブラシ装置5と、除電ブラシ装置5を後に説明する開放位置と接触位置とに保持する保持装置6とを備えている。支持基体4は、電気機器1を載置するため載置領域7(図4参照)に対応した凹部8を持つ矩形の板状の部材である。
【0018】
除電ブラシ装置5は、載置領域7を囲むように支持基体4に設けられて、支持基体4の載置領域7に載置された電気機器1の側面のほぼ全周に弾性的に接触する複数のブラシ要素9を有し、電気機器1の除電をするものである。図5に例示するブラシ要素9は矩形の板状体10と、板状体10に植え込まれた導電性のブラシ繊維11とを備えている。除電ブラシ装置5の除電効果を上げるためにはブラシ要素9を接地することが好ましい。ブラシ繊維11として適当な材質は、ステンレス、アルミ、銅などの金属、あるいは導電性アクリル、導電性ポリアミド、導電性アセテート、導電性ポリエステル、および、これら材料に銅イオンを吸着させた銅イオン繊維やカーボン材を混入した炭素繊維などの導電性材料である。一般的なブラシ繊維11の繊維径は5−50μm、長さは1−30mmである。
【0019】
保持装置6は、支持基体4に設けられて、ブラシ要素9を、支持基体4の載置領域7を開放して電気機器1を支持基体4上に受け入れ得るようにする開放位置(図5の想像線で示す)と、支持基体4に載置された電気機器1の側面にブラシ要素9を弾性的に接触させる接触位置(図5の実線で示す)とに選択的に弾性的に保持するものである。
【0020】
保持装置6は、図示の例では、ブラシ要素9を支持基体4に枢着するヒンジ12と、ブラシ要素9を接触位置に偏倚するバネ13とを備えている。ヒンジ12は、板状体10のブラシ繊維11が植え込まれていない側の側縁に設けられていて、その両端側の板状体10には矩形断面の角柱であるカム部材14が設けられていて、カム部材14のカム面は支持基体4に取り付けられた板バネであるバネ13によって弾性的に接触されて押圧されている。このため、ヒンジ12で回動可能に枢支されたブラシ要素9は、バネ13がカム部材14の平坦なカム面を押圧している位置では弾性的に安定して保持され、ブラシ要素9を手あるいは工具でヒンジ12回りに回動させて平坦なカム面間の山部がバネ13を乗り越えるようにすれば、乗り越えた側の平坦なカム面が弾性的に保持されその位置で安定する。このようにしてバネ13とカム部材14との弾性的係合により、ブラシ要素9を図5の想像線で示す開放位置と図5の実線で示す接触位置とに選択的に保持することができる。
【0021】
この発明の帯電防止電気機器搬送装置の搬送容器3は、支持体2をその上に載置された電気機器1と共に収納し、支持体2の載置領域7に対向する頂壁15等の容器壁に設けられて、電気機器1を通過させ得る開口16を有する搬送箱として使用できる容器である。搬送容器3は、図示の例では頂壁15の他に、支持体2を乗せる矩形の底壁17と、底壁17の3辺から立ち上がった側壁18、19および20と、底壁17の残りの一辺に設けられて搬送容器3内の空間を開閉する蓋体21とを備えている。
【0022】
搬送容器3の頂壁15に設けられた開口16の縁部には、頂壁15を含む平面と同じあるは平行な平面内で、開口16を囲んで開口16の外側から内側に向かって延びるように直接植設された導電性のブラシ繊維22を持ち、開口16を通過する電気機器1の外周面に弾性的に接触する複数のブラシ要素23を備えた除電ブラシ装置24が設けられている。開口16は電気機器1が通過できるように電気機器1よりも大きく、除電ブラシ装置24は開口16を通過しようとする電気機器1の外表面に接触して除電ができるように充分な長さと弾性とを持つものである。
【0023】
このような帯電防止電気機器搬送装置において、電気機器1を支持体2から取り外す場合に、電気機器1の支持基体4と接触している接触面には接触摩擦による静電気が発生する。しかしながら、この電気機器1の外周面に対して、フレキシブルである除電ブラシ装置5が接触しているので、発生した静電気を除去することができる。このように、支持基体4と、支持基体4上に取り付けられた除電ブラシ装置5と、除電ブラシ装置5を開放位置と接触位置とに保持する保持装置6とを備えた支持体2は、支持体2単独で用いても、電気機器1を保持し、搬送する場合にも優れた除電作用を発揮して電気機器1を静電気放電から保護できる。
【0024】
このようにして支持体2上に載置されて静電気放電から保護された電気機器1は、支持体2と共に搬送箱である搬送容器3の蓋体21を開けて搬送容器3内に収納して搬送することができる。電気機器1を搬送容器3から取り出す場合には、蓋体21を開けてそこから例えば手あるいは適当な工具を入れて電気機器1を支持体2から持ち上げて取り外し、搬送容器3の頂壁15に設けた開口16を通過させて取り出す。電気機器1はこのときにもその外周面が可撓性の除電ブラシ装置24によって接触され、外表面のほぼ全体が除電される。このように、除電ブラシ装置24が設けられた搬送容器3は、単独で用いても、電気機器1を取り出す際に除電ブラシ装置24に接触させることにより、電気機器1の除電を行って静電気放電からの保護をすることができる。
【0025】
除電ブラシ装置5は、電気機器1の大きさ、形状、構造に合わせて、接触面全体に効率良く接触させることが好ましいため、ブラシ繊維11の長さ、ブラシ繊維11の電気機器1に対する傾斜角度、ブラシ繊維11が植設されている板状体10を変更しても良い。ブラシ繊維11の長さは1−30mmが一般的であるが、電気機器1の大きさ、形状、構造によっては長さを変更して良い。また、長さを変えたブラシ繊維11を交互に並べても良い。ブラシ繊維11の傾斜角度については、ブラシ繊維11を支持基体4に対して水平に設置(傾斜角度0度)しても良いが、支持基体4に対して垂直(傾斜角度90度)方向に至るまで傾斜角度を付けても良い。板状体10は金属製であることが一般的であるが、金属製でなくても、導電性材料の片(シート等)でも良いし、金属や導電性の糸でも良く、ブラシ繊維11を支持基体4に取り付けることができれば、電気機器1の支持体2としての基体として軽量化できる。
【0026】
実施の形態2.
図6に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、搬送容器3の除電ブラシ装置24のブラシ要素23が、開口16の縁部に直接植設されているのではなく、縁部に取り付けられた板状体25と、この板状体25に植設された導電性のブラシ繊維26とを持っている。板状体25は開口16の縁部に固着されていても良いし、適当なバネ付のヒンジ装置などによって弾性的に支持されていてもよい。開口16の四隅には、除電ブラシ装置24の隙間を塞ぐように突出部16aが設けてある。その他の構成は図1〜5に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0027】
実施の形態3.
図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、支持体が、支持基体4の載置領域7内に設けられ、電気機器1の底面に接触して除電をするブラシ要素27を備えている。このブラシ要素27は、支持基体4の載置領域7に対応する凹部8の底面に直接植設されたブラシ繊維28を持ち、図7に示すように電気機器1が凹部8内に支持されたときには撓んで電気機器1の載置を妨げないようになり、図8に示すように電気機器1を支持体2から取り外す途中で、電気機器1の底面がブラシ繊維28から離れたときには、ブラシ繊維28が弾性によって直立した状態に復帰する。ブラシ繊維28は凹部8の底面の全体に一面に植設しても良いし、適当な間隔を置いて整列させて植設しても良い。その他の構成は図1〜5に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。この実施の形態においては、ブラシ要素27が電気機器1の底面にも必ず接触するので、電気機器1の側面を含め、電気機器1の全外表面に接触することができ、底面と側面の電気機器1の全体を除電することができる。
【0028】
実施の形態4.
図9および10に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、支持基体4の載置領域7内に設けられ、電気機器1の底面に接触して除電をするブラシ要素27が、ブラシ要素すなわちブラシ繊維28の変型を制限するスペーサ29を備えている。スペーサ29のために、電気機器1の凹部8内の位置が制限され、ブラシ繊維28が電気機器1の底面によって押しつぶされたり折れ曲がったりすることが無い。スペーサ29の高さよりもブラシ繊維28の長さが長いことが好ましい。その他の構成は図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0029】
実施の形態5.
図11および12に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、ブラシ要素27が、ブラシ要素27のブラシ繊維28に電気機器1への接触圧力を与えるバネ機構30を備えている。図示の例では、バネ機構30は支持基体4の凹部8の側壁面に固着された固定板部材31と、固定板部材31に枢着されて固定板部材31と共に蝶番を構成する可動板部材32と、固定板部材31および可動板部材32間に設けられた例えば捻りバネ等のバネ33とを備えた機構であって、可動板部材32の先端部にブラシ繊維28が植設されていて、バネ33の弾性力によってブラシ繊維28が電気機器1の底面に弾性的に接触するようにしてある。電気機器1が支持体2に支持された状態では、図11に示すように、ブラシ繊維28と可動板部材32とは共に凹部8の底面と平行にまで移動し、電気機器1が図12に示すように支持体2から取り外される状態では、例えば図12に示す位置まではバネ33によって復帰して電気機器1の移動に追従するが、それ以上の追従はできず、電気機器1がブラシ要素27から離れて支持体2から取り外されるようにしてある。その他の構成は図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0030】
実施の形態6.
図13および14に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、ブラシ要素27が、ブラシ要素27のブラシ繊維28に電気機器1への接触圧力を与えるバネ機構34を備えている。図示の例では、バネ機構34は、支持体2の凹部8の底面の角隅部に枢着された可動板部材35と、凹部8の底面との間に設けられた圧縮コイルバネであるバネ36とを備えた機構であって、可動板部材35の先端部に植設されたブラシ繊維28を電気機器1の底面に向かって偏倚するように作用する機構である。この例においても、ブラシ繊維28の電気機器1の底面に対する追従には限度があって、電気機器1を支持体2から取り外されるようにしてある。その他の構成は図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0031】
以上に図示して説明した帯電防止電気機器搬送装置は単なる例であって様々な変形が可能であり、またそれぞれの具体例の特徴を全てあるいは選択的に組み合わせて用いることもできる。例えば、図示の例では、搬送箱である搬送容器3の頂壁15の開口16の縁部に全周に亘って除電ブラシ装置24を設けてあるが、縁部の一部だけあるいは容器壁の内面の一部にだけ除電ブラシ装置を配置し、電気機器1を動かしてその全外表面を除電ブラシ装置24に接触させて除電することもできる。また、支持体2に設ける除電ブラシ装置5を開放位置あるいは接触位置に保持するための保持装置は、リンク機構を用いて行うこともできる。更に、電気機器1は図示した直方体のものに限らず、円柱形、球形、平板状などの様々な形状のものがあるが、いずれもこの発明の帯電防止電気機器搬送装置によって除電することができる。また支持基体4が導電性のものでも絶縁性のものの場合でもこの発明の除電ブラシ装置によって除電することができる。また、除電効率を上げるために、ブラシ繊維11、22、26、28は接地されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は帯電防止電気機器搬送装置として利用できるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 電気機器、2 支持体、3 搬送容器、4 支持基体、5 除電ブラシ装置、6 保持装置、7 載置領域、8 凹部、9、23、27 ブラシ要素、10、25 板状体、11、22、26、28 ブラシ繊維、12 ヒンジ、13、33、36 バネ、14 カム部材、15 頂壁、16 開口、16a 突出部、17 底壁、18、19、20 側壁、21 蓋体、24 除電ブラシ装置、29 スペーサ、30、34 バネ機構、31 固定板部材、32、35 可動板部材。
【技術分野】
【0001】
この発明は帯電防止電気機器搬送装置に関するものであり、特に電気機器の静電気を除去して静電気放電を防ぐことのできる支持基体および搬送箱などの帯電防止電気機器搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明で「電気機器」とは、半導体装置や、この半導体装置に抵抗やコンデンサ部品等で回路構成する電子部品、実装基板、液晶基板、および電子部品を搭載した電気・電子機器などを含む、静電気放電で悪影響を受ける可能性のある全ての電気機器を意味する。このような電気機器には、生産ラインにおける設備、機械部材などとの接触により接触摩擦帯電を発生し、静電気放電により電気機器の絶縁破壊が生じる可能性がある。このような静電気放電が発生する原因の1つは、電気機器を支持体あるいは搬送箱などの搬送装置に対して載置あるいは取り出し作業をするときに、電気機器が搬送装置と接触あるいは擦れ合って静電気が発生することである。
【0003】
このような静電気放電を防ぐために、除電ブラシを半導体基板搬送アームの上面に設置して、基板に帯電した静電気を基板搬送中に除去し、また搬送後の基板を搬送アームから取り外す際に生じた剥離帯電による静電気を除去することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、液晶表示素子の搬送トレイ上に導電性繊維からなる除電ブラシを設けて、液晶表示素子の全ての走査電極端子と信号電極端子とを短絡させて除電することが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−158277号公報
【特許文献2】特開平7−320890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような除電ブラシを用いた静電気帯電対策によれば、除電の必要な電気機器が絶縁体部分を持つ場合には、除電ブラシが接触した部分の除電はできても、接触しない部分には帯電が残されてしまうため静電気放電対策が不十分であり、静電気放電による不良を発生する可能性が残る。近年、半導体装置や、この半導体装置に抵抗やコンデンサ部品等で回路構成する電子部品、実装・液晶基板、および、電子部品を搭載した電気・電子機器に至る全ての静電気放電で破壊する電気機器が大量に生産されており、これらの電気機器は筐体で囲われてはいるが、筐体の底面や側面がライン生産中での設備・機械部材などと接触して、接触摩擦帯電を発生し、静電気放電により内部ICなどの絶縁破壊が生じる可能性がある。
【0007】
電気機器を搬送した後、支持基体や箱中から取り出すとき、電気機器筐体の表面と固定支持基体(クッション材など)、あるいは箱との接触・摩擦により帯電が発生する。電気機器を固定する支持基体や搬送箱は導電性材料で構成されており、自体の静電気帯電は防止可能である。しかし、導電性である支持基体や搬送箱においても、電気機器の筐体が絶縁物であれば、静電気帯電は発生する。支持基体や搬送箱が導電性材料であれば、電気機器も静電気が発生しないという考えは大きな間違いであり、この現象は静電気対策の中でも見落としがちである。
【0008】
この帯電現象を説明するためには、接触・摩擦による静電気発生モデルについて説明する必要がある。2つの材料として、材料Aと材料Bとが接触するときに電荷の移動が生じ、電気二重層を形成し、分離したときに静電気が発生する。この発生電荷量は材料間の仕事関数の差に依存する。仕事関数とは物質から電子を外に取り出すのに必要なエネルギーであり材料固有である。材料間の仕事関数差が大きいと静電気による発生電荷量は増加する。従って、材料が低抵抗な金属であっても、静電気は仕事関数差に依存するので、電荷は発生する。ただし、低抵抗な金属あるいは導電性材料の場合は、その材料自体の抵抗が低いので、緩和され易く、接地を通じて静電気が逃げてしまい、発生していないように見える。ただし、これら低抵抗な材料に高抵抗な材料(絶縁物)が接触した場合は、仕事関数差で発生した電荷は絶縁物上には保持され、緩和しない。つまり、本課題のように高抵抗な電気機器筐体の側面や底面が帯電した場合、帯電状態は維持されるので静電気放電により電気機器が静電気不良を起こす可能性がある。
【0009】
一般的な暫定対策は、電気機器を搬送した後、支持基体や箱中から取り出すときにイオナイザを設置する。しかし、イオナイザの増設はコスト増大、メンテナンスは現場作業者の負担になる。従って、静電気放電の発生を抑えるために、作業者に簡易で恒久的な静電気帯電を抑制する機能が必要である。
【0010】
従ってこの発明の目的は、搬送装置から電気機器を取り出すときに、電気機器の帯電部分の広い範囲を除電することができて静電気帯電を防ぐことのできる帯電防止電気機器搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の帯電防止電気機器搬送装置は、電気機器を載置するため載置領域を持つ支持基体と、上記載置領域外で上記載置領域に望んで上記支持基体に設けられて、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置と、上記支持基体に設けられて、上記ブラシ要素を、上記載置領域を開放して上記電気機器を上記支持基体上に受け入れ得るようにする開放位置と、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に上記ブラシ要素を弾性的に接触させる接触位置とに選択的に弾性的に保持する保持装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の帯電防止電気機器搬送装置は、電気機器を収納し、容器壁に設けられて上記電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、上記搬送容器上で上記開口に望んで配置され、上記開口を通過する上記電気機器の外周面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の装置によれば、電気機器に発生する静電気を除電ブラシ装置により除電して静電気放電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第1の実施の形態を示す概略平面図である。
【図2】図1の帯電防止電気機器搬送装置の概略平面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿って示す帯電防止電気機器搬送装置の概略側面断面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿って示す帯電防止電気機器搬送装置の概略平面断面図である。
【図5】除電ブラシ装置のブラシ要素を示す概略斜視図である。
【図6】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第2の実施の形態を示す概略平面図である。
【図7】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第3の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図8】図7の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【図9】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第4の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図10】図9の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【図11】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第5の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図12】図11の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【図13】この発明の帯電防止電気機器搬送装置の第6の実施の形態を示す図3と同様の概略側面断面図である。
【図14】図13の帯電防止電気機器搬送装置の電気機器取り外し作業中の状態を示す概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1〜5に示すように、この発明の第1の実施の形態の帯電防止電気機器搬送装置は、例えば直方体形状の電気機器1を載置するための板状の支持体2と、支持体2を電気機器1と共に収納する中空直方体形状の搬送箱である搬送容器3とを備えている。これら支持体2と搬送容器3とは、図に示すように支持体2を別個の搬送容器3内に収納して協働して一つの帯電防止電気機器搬送装置として用いることもできるし、例えば支持体2を搬送容器3の底壁とするなどにより一体構造の帯電防止電気機器搬送装置とすることもできるし、また支持体2と搬送容器3とを別個にしてそれぞれ独立した帯電防止電気機器搬送装置として使用することもできる。換言すれば、この発明の帯電防止電気機器搬送装置は、支持体2、搬送容器3あるいはこれらの組み合わせを意味するものである。
【0017】
支持体2は、支持基体4と、支持基体4上に取り付けられた除電ブラシ装置5と、除電ブラシ装置5を後に説明する開放位置と接触位置とに保持する保持装置6とを備えている。支持基体4は、電気機器1を載置するため載置領域7(図4参照)に対応した凹部8を持つ矩形の板状の部材である。
【0018】
除電ブラシ装置5は、載置領域7を囲むように支持基体4に設けられて、支持基体4の載置領域7に載置された電気機器1の側面のほぼ全周に弾性的に接触する複数のブラシ要素9を有し、電気機器1の除電をするものである。図5に例示するブラシ要素9は矩形の板状体10と、板状体10に植え込まれた導電性のブラシ繊維11とを備えている。除電ブラシ装置5の除電効果を上げるためにはブラシ要素9を接地することが好ましい。ブラシ繊維11として適当な材質は、ステンレス、アルミ、銅などの金属、あるいは導電性アクリル、導電性ポリアミド、導電性アセテート、導電性ポリエステル、および、これら材料に銅イオンを吸着させた銅イオン繊維やカーボン材を混入した炭素繊維などの導電性材料である。一般的なブラシ繊維11の繊維径は5−50μm、長さは1−30mmである。
【0019】
保持装置6は、支持基体4に設けられて、ブラシ要素9を、支持基体4の載置領域7を開放して電気機器1を支持基体4上に受け入れ得るようにする開放位置(図5の想像線で示す)と、支持基体4に載置された電気機器1の側面にブラシ要素9を弾性的に接触させる接触位置(図5の実線で示す)とに選択的に弾性的に保持するものである。
【0020】
保持装置6は、図示の例では、ブラシ要素9を支持基体4に枢着するヒンジ12と、ブラシ要素9を接触位置に偏倚するバネ13とを備えている。ヒンジ12は、板状体10のブラシ繊維11が植え込まれていない側の側縁に設けられていて、その両端側の板状体10には矩形断面の角柱であるカム部材14が設けられていて、カム部材14のカム面は支持基体4に取り付けられた板バネであるバネ13によって弾性的に接触されて押圧されている。このため、ヒンジ12で回動可能に枢支されたブラシ要素9は、バネ13がカム部材14の平坦なカム面を押圧している位置では弾性的に安定して保持され、ブラシ要素9を手あるいは工具でヒンジ12回りに回動させて平坦なカム面間の山部がバネ13を乗り越えるようにすれば、乗り越えた側の平坦なカム面が弾性的に保持されその位置で安定する。このようにしてバネ13とカム部材14との弾性的係合により、ブラシ要素9を図5の想像線で示す開放位置と図5の実線で示す接触位置とに選択的に保持することができる。
【0021】
この発明の帯電防止電気機器搬送装置の搬送容器3は、支持体2をその上に載置された電気機器1と共に収納し、支持体2の載置領域7に対向する頂壁15等の容器壁に設けられて、電気機器1を通過させ得る開口16を有する搬送箱として使用できる容器である。搬送容器3は、図示の例では頂壁15の他に、支持体2を乗せる矩形の底壁17と、底壁17の3辺から立ち上がった側壁18、19および20と、底壁17の残りの一辺に設けられて搬送容器3内の空間を開閉する蓋体21とを備えている。
【0022】
搬送容器3の頂壁15に設けられた開口16の縁部には、頂壁15を含む平面と同じあるは平行な平面内で、開口16を囲んで開口16の外側から内側に向かって延びるように直接植設された導電性のブラシ繊維22を持ち、開口16を通過する電気機器1の外周面に弾性的に接触する複数のブラシ要素23を備えた除電ブラシ装置24が設けられている。開口16は電気機器1が通過できるように電気機器1よりも大きく、除電ブラシ装置24は開口16を通過しようとする電気機器1の外表面に接触して除電ができるように充分な長さと弾性とを持つものである。
【0023】
このような帯電防止電気機器搬送装置において、電気機器1を支持体2から取り外す場合に、電気機器1の支持基体4と接触している接触面には接触摩擦による静電気が発生する。しかしながら、この電気機器1の外周面に対して、フレキシブルである除電ブラシ装置5が接触しているので、発生した静電気を除去することができる。このように、支持基体4と、支持基体4上に取り付けられた除電ブラシ装置5と、除電ブラシ装置5を開放位置と接触位置とに保持する保持装置6とを備えた支持体2は、支持体2単独で用いても、電気機器1を保持し、搬送する場合にも優れた除電作用を発揮して電気機器1を静電気放電から保護できる。
【0024】
このようにして支持体2上に載置されて静電気放電から保護された電気機器1は、支持体2と共に搬送箱である搬送容器3の蓋体21を開けて搬送容器3内に収納して搬送することができる。電気機器1を搬送容器3から取り出す場合には、蓋体21を開けてそこから例えば手あるいは適当な工具を入れて電気機器1を支持体2から持ち上げて取り外し、搬送容器3の頂壁15に設けた開口16を通過させて取り出す。電気機器1はこのときにもその外周面が可撓性の除電ブラシ装置24によって接触され、外表面のほぼ全体が除電される。このように、除電ブラシ装置24が設けられた搬送容器3は、単独で用いても、電気機器1を取り出す際に除電ブラシ装置24に接触させることにより、電気機器1の除電を行って静電気放電からの保護をすることができる。
【0025】
除電ブラシ装置5は、電気機器1の大きさ、形状、構造に合わせて、接触面全体に効率良く接触させることが好ましいため、ブラシ繊維11の長さ、ブラシ繊維11の電気機器1に対する傾斜角度、ブラシ繊維11が植設されている板状体10を変更しても良い。ブラシ繊維11の長さは1−30mmが一般的であるが、電気機器1の大きさ、形状、構造によっては長さを変更して良い。また、長さを変えたブラシ繊維11を交互に並べても良い。ブラシ繊維11の傾斜角度については、ブラシ繊維11を支持基体4に対して水平に設置(傾斜角度0度)しても良いが、支持基体4に対して垂直(傾斜角度90度)方向に至るまで傾斜角度を付けても良い。板状体10は金属製であることが一般的であるが、金属製でなくても、導電性材料の片(シート等)でも良いし、金属や導電性の糸でも良く、ブラシ繊維11を支持基体4に取り付けることができれば、電気機器1の支持体2としての基体として軽量化できる。
【0026】
実施の形態2.
図6に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、搬送容器3の除電ブラシ装置24のブラシ要素23が、開口16の縁部に直接植設されているのではなく、縁部に取り付けられた板状体25と、この板状体25に植設された導電性のブラシ繊維26とを持っている。板状体25は開口16の縁部に固着されていても良いし、適当なバネ付のヒンジ装置などによって弾性的に支持されていてもよい。開口16の四隅には、除電ブラシ装置24の隙間を塞ぐように突出部16aが設けてある。その他の構成は図1〜5に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0027】
実施の形態3.
図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、支持体が、支持基体4の載置領域7内に設けられ、電気機器1の底面に接触して除電をするブラシ要素27を備えている。このブラシ要素27は、支持基体4の載置領域7に対応する凹部8の底面に直接植設されたブラシ繊維28を持ち、図7に示すように電気機器1が凹部8内に支持されたときには撓んで電気機器1の載置を妨げないようになり、図8に示すように電気機器1を支持体2から取り外す途中で、電気機器1の底面がブラシ繊維28から離れたときには、ブラシ繊維28が弾性によって直立した状態に復帰する。ブラシ繊維28は凹部8の底面の全体に一面に植設しても良いし、適当な間隔を置いて整列させて植設しても良い。その他の構成は図1〜5に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。この実施の形態においては、ブラシ要素27が電気機器1の底面にも必ず接触するので、電気機器1の側面を含め、電気機器1の全外表面に接触することができ、底面と側面の電気機器1の全体を除電することができる。
【0028】
実施の形態4.
図9および10に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、支持基体4の載置領域7内に設けられ、電気機器1の底面に接触して除電をするブラシ要素27が、ブラシ要素すなわちブラシ繊維28の変型を制限するスペーサ29を備えている。スペーサ29のために、電気機器1の凹部8内の位置が制限され、ブラシ繊維28が電気機器1の底面によって押しつぶされたり折れ曲がったりすることが無い。スペーサ29の高さよりもブラシ繊維28の長さが長いことが好ましい。その他の構成は図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0029】
実施の形態5.
図11および12に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、ブラシ要素27が、ブラシ要素27のブラシ繊維28に電気機器1への接触圧力を与えるバネ機構30を備えている。図示の例では、バネ機構30は支持基体4の凹部8の側壁面に固着された固定板部材31と、固定板部材31に枢着されて固定板部材31と共に蝶番を構成する可動板部材32と、固定板部材31および可動板部材32間に設けられた例えば捻りバネ等のバネ33とを備えた機構であって、可動板部材32の先端部にブラシ繊維28が植設されていて、バネ33の弾性力によってブラシ繊維28が電気機器1の底面に弾性的に接触するようにしてある。電気機器1が支持体2に支持された状態では、図11に示すように、ブラシ繊維28と可動板部材32とは共に凹部8の底面と平行にまで移動し、電気機器1が図12に示すように支持体2から取り外される状態では、例えば図12に示す位置まではバネ33によって復帰して電気機器1の移動に追従するが、それ以上の追従はできず、電気機器1がブラシ要素27から離れて支持体2から取り外されるようにしてある。その他の構成は図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0030】
実施の形態6.
図13および14に示す帯電防止電気機器搬送装置においては、ブラシ要素27が、ブラシ要素27のブラシ繊維28に電気機器1への接触圧力を与えるバネ機構34を備えている。図示の例では、バネ機構34は、支持体2の凹部8の底面の角隅部に枢着された可動板部材35と、凹部8の底面との間に設けられた圧縮コイルバネであるバネ36とを備えた機構であって、可動板部材35の先端部に植設されたブラシ繊維28を電気機器1の底面に向かって偏倚するように作用する機構である。この例においても、ブラシ繊維28の電気機器1の底面に対する追従には限度があって、電気機器1を支持体2から取り外されるようにしてある。その他の構成は図7および8に示す帯電防止電気機器搬送装置と同様である。
【0031】
以上に図示して説明した帯電防止電気機器搬送装置は単なる例であって様々な変形が可能であり、またそれぞれの具体例の特徴を全てあるいは選択的に組み合わせて用いることもできる。例えば、図示の例では、搬送箱である搬送容器3の頂壁15の開口16の縁部に全周に亘って除電ブラシ装置24を設けてあるが、縁部の一部だけあるいは容器壁の内面の一部にだけ除電ブラシ装置を配置し、電気機器1を動かしてその全外表面を除電ブラシ装置24に接触させて除電することもできる。また、支持体2に設ける除電ブラシ装置5を開放位置あるいは接触位置に保持するための保持装置は、リンク機構を用いて行うこともできる。更に、電気機器1は図示した直方体のものに限らず、円柱形、球形、平板状などの様々な形状のものがあるが、いずれもこの発明の帯電防止電気機器搬送装置によって除電することができる。また支持基体4が導電性のものでも絶縁性のものの場合でもこの発明の除電ブラシ装置によって除電することができる。また、除電効率を上げるために、ブラシ繊維11、22、26、28は接地されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は帯電防止電気機器搬送装置として利用できるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 電気機器、2 支持体、3 搬送容器、4 支持基体、5 除電ブラシ装置、6 保持装置、7 載置領域、8 凹部、9、23、27 ブラシ要素、10、25 板状体、11、22、26、28 ブラシ繊維、12 ヒンジ、13、33、36 バネ、14 カム部材、15 頂壁、16 開口、16a 突出部、17 底壁、18、19、20 側壁、21 蓋体、24 除電ブラシ装置、29 スペーサ、30、34 バネ機構、31 固定板部材、32、35 可動板部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を載置するため載置領域を持つ支持基体と、
上記載置領域外で上記載置領域に望んで上記支持基体に設けられて、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置と、
上記支持基体に設けられて、上記ブラシ要素を、上記載置領域を開放して上記電気機器を上記支持基体上に受け入れ得るようにする開放位置と、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に上記ブラシ要素を弾性的に接触させる接触位置とに選択的に弾性的に保持する保持装置とを備えたことを特徴とする帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項2】
上記保持装置が、上記ブラシ要素を上記支持基体に枢着するヒンジと、上記ブラシ要素を接触位置に偏倚するバネとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項3】
上記除電ブラシ装置が、上記載置領域を囲んで上記支持基体に設けられて、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面のほぼ全周に弾性的に接触する複数のブラシ要素を有することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項4】
上記除電ブラシ装置が、上記支持基体の上記載置領域内に設けられ、上記電気機器の底面に接触して除電をするブラシ要素を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項5】
上記除電ブラシ装置が、上記支持基体の上記載置領域内に設けられた上記ブラシ要素の変型を制限するスペーサを備えたことを特徴とする請求項4に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項6】
上記除電ブラシ装置が、上記支持基体の上記載置領域内に設けられた上記ブラシ要素に上記電気機器への接触圧力を与えるバネ機構を備えたことを特徴とする請求項4に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項7】
上記支持基体を上記電気機器と共に収納し、上記支持基体の上記載置領域に対向する容器壁に設けられて上記電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、
上記搬送容器上で上記開口に望んで配置され、上記開口を通過する上記電気機器の外周面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置とを備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項8】
電気機器を収納し、容器壁に設けられて上記電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、
上記搬送容器上で上記開口に望んで配置され、上記開口を通過する上記電気機器の外周面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置とを備えたことを特徴とする帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項9】
上記ブラシ要素が、上記開口を囲んで上記搬送容器に設けられて、上記電気機器の側面のほぼ全周に弾性的に接触して除電をすることを特徴とする請求項8に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項10】
上記ブラシ要素が、上記開口の縁部に直接植設されていることを特徴とする請求項8あるいは9に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項11】
上記ブラシ要素が、上記開口の縁部に取り付けられた板状体を持つことを特徴とする請求項8あるいは9に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項1】
電気機器を載置するため載置領域を持つ支持基体と、
上記載置領域外で上記載置領域に望んで上記支持基体に設けられて、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置と、
上記支持基体に設けられて、上記ブラシ要素を、上記載置領域を開放して上記電気機器を上記支持基体上に受け入れ得るようにする開放位置と、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面に上記ブラシ要素を弾性的に接触させる接触位置とに選択的に弾性的に保持する保持装置とを備えたことを特徴とする帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項2】
上記保持装置が、上記ブラシ要素を上記支持基体に枢着するヒンジと、上記ブラシ要素を接触位置に偏倚するバネとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項3】
上記除電ブラシ装置が、上記載置領域を囲んで上記支持基体に設けられて、上記支持基体に載置された上記電気機器の側面のほぼ全周に弾性的に接触する複数のブラシ要素を有することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項4】
上記除電ブラシ装置が、上記支持基体の上記載置領域内に設けられ、上記電気機器の底面に接触して除電をするブラシ要素を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項5】
上記除電ブラシ装置が、上記支持基体の上記載置領域内に設けられた上記ブラシ要素の変型を制限するスペーサを備えたことを特徴とする請求項4に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項6】
上記除電ブラシ装置が、上記支持基体の上記載置領域内に設けられた上記ブラシ要素に上記電気機器への接触圧力を与えるバネ機構を備えたことを特徴とする請求項4に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項7】
上記支持基体を上記電気機器と共に収納し、上記支持基体の上記載置領域に対向する容器壁に設けられて上記電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、
上記搬送容器上で上記開口に望んで配置され、上記開口を通過する上記電気機器の外周面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置とを備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項8】
電気機器を収納し、容器壁に設けられて上記電気機器を通過させ得る開口を有する搬送容器と、
上記搬送容器上で上記開口に望んで配置され、上記開口を通過する上記電気機器の外周面に弾性的に接触するブラシ要素を有し、上記電気機器の除電をする除電ブラシ装置とを備えたことを特徴とする帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項9】
上記ブラシ要素が、上記開口を囲んで上記搬送容器に設けられて、上記電気機器の側面のほぼ全周に弾性的に接触して除電をすることを特徴とする請求項8に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項10】
上記ブラシ要素が、上記開口の縁部に直接植設されていることを特徴とする請求項8あるいは9に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【請求項11】
上記ブラシ要素が、上記開口の縁部に取り付けられた板状体を持つことを特徴とする請求項8あるいは9に記載の帯電防止電気機器搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−60490(P2011−60490A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206853(P2009−206853)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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