説明

常温剥離特性を有する印刷可能な熱転写材料

【課題】常温剥離特性を有する印刷可能な熱転写材料を提供すること。
【解決手段】第一及び第二表面を有し、かつセルロース性不織布ウェブである柔軟な第一層;
転写温度で本質的に粘着性を有さず、0℃以上のガラス転移温度を有する、アクリル性ポリマー又はポリ(ビニルアセテート)である熱可塑性ポリマーを含有する、第一層の第一表面を覆う第二層であって、さらに剥離増強添加剤を含有する該第二層;及び
65℃〜180℃の範囲で溶融し、ポリオレフィン、ポリエステル又はエチレン−ビニルアセテートコポリマーである熱可塑性ポリマーを含有する、第二層を覆う第三層;
を含有する印刷可能な熱転写材料であって、
第二層及び第三層が、支持体表面にイメージを転写した後に該熱転写材料を周囲温度に冷却すると、支持体から第一層を容易かつきれいにはがすことができるようになっている前記印刷可能な熱転写材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写紙等の熱転写材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、客が選んだデザイン、メッセージ、イラスト等(本明細書中ではまとめて“客が選んだグラフィック”という)を、Tシャツ、スエットシャツ等に施すことを含む有意な産業が発達してきている。これらの客が選んだグラフィックは一般的に、商業的に入手可能な、特定の最終用途のために仕立てた製品であり、剥離又は転写紙上に印刷してある。それらを熱及び圧力をかけることにより布商品に施して、その後剥離又は転写した紙を除くのである。
布商品に自分のグラフィックを製造する機会を客に与えようとする試みが幾つかなされてきた。そのようなグラフィックを製造することは、熱転写可能な材料から製造される色クレヨンを含み得る。そのようなクレヨンはキットの形態で入手でき、輪郭をはっきりさせたパターンを有する不特定の熱転写シートをまた含む。転写シートの観測面に製図用機器の圧力でパターン又はアートワークを作ることにより、熱転写可能な鏡像パターンを転写シートの連表面にコーピーシートから転写した圧力により作ることができる。次に、熱転写可能な鏡像を熱転写によりTシャツ又は他の物品の上に施すことができる。
【0003】
パーソナルコンピューターシステムの使用を通して、Tシャツ等の織物上の個人化した、創作的なデザイン又はイメージについて記載してきた。その方法は、電気的にイメージを創り出し、電気的にイメージをプリンターに転写し、プリンターを利用して、本質的にシンガポールダンマー樹脂(Singapore Dammar Resin)からなる最終コーティング又はトップコーティングを有する転写シートの観測面上にイメージを印刷し、熱転写シートの観測面を織物に対して設置し、転写シートの連にエネルギーをかけてイメージを織物に転写することを含む。転写シートは、シンガポールダンマー樹脂の保護膜でコートした熱転写可能なコーティングである、商業的に入手できるあらゆる転写シートであり得る。シンガポールダンマー樹脂コーティング中で粗い粒子を使用することもまた記載されている。粗い粒子は、種々のインク及びワックスベースクレヨンに対して転写シートの感受性を増強する働きをする。
ワックスベースクレヨン、感熱プリンターリボン及びインパクトプリンターリボン又はドットプリンターで作ったイメージに対する感受性を増強した改良した熱転写紙が開示されている。例えば、セルロース性ベースシートは、フィルム形成バインダーを約15〜約80%及び直径約2〜50μmの粒子からなる粉末化ポリマーを約85〜約20重量%含有するイメージ感受性コーティングを有する。バインダーは一般的にラテックスである。また、セルロース性ベースシートは、一般的には溶融押出により又はフィルムを貼り合わせることによりベースシートに形成されるイメージ感受性コーティングを有する。次に、コーティング又はフィルムの表面を、例えばコートしたベースシートをエンボスロールを通過させることによりざらざらにする。
【0004】
イメージ保持ラミネートを支持体に転写することを一般的に改良することに関しての努力もまた幾つかなされてきた。例えば、改良した剥離性が、キャリアーからの剥離した裂け目を転写して転写したイメージ上に保護膜を形成することについて記載されている。剥離を溶液をして施し、モンタンワックス、エステルガム即ち炭化水素樹脂、溶剤及びビニルアセテート含有量の小さいエチレン−ビニルアセテートコポリマーを含有する。
多孔性、半多孔性、又は無孔性材料に転写したラミネートの接着及び溶融転写ウェブを使用して平らでない表面にイメージを転写できるようにする転写層を改良するさらなる努力がなされてきた。
最後に、熱転写紙に関する多数の文献が存在することに注意すべきである。それらの多くが染料及び/又は染料転写層を含有するかそうでなければ含む材料及び本発明の方法とは非常に異なる方法に関するものである。熱転写紙の改良にも関わらず、キャリアー又はベースシートがまだ温かいうちにイメージを転写する材料からキャリアー又はベースシートを全て除去することが要求されている。この要求により、ハンドアイロンに特有の加熱ムラがあり、かつ転写材料を前もってアイロンがけした部分を冷ますという両方の理由のために、ハンドアイロンで転写を行うときに特有の問題がある。従って、冷却後にキャリアー又はベースシートが除去できるようになる熱転写紙、すなわち、常温剥離性を有する印刷可能な熱転写紙を改良する機会がある。インクジェット印刷可能な紙にもまたそのような要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、常温剥離特性を有する印刷可能な熱転写材料を提供することによる上述のいくつかの難点及び問題点に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
熱転写材料は第一及び第二表面を有する柔軟な第一層を含む。第一層は一般的にフィルム又はセルロース性不織布ウェブであり得る。第二層は第一層の表面を覆い、かつ転写温度(例えば、177℃)で本質的に粘着性を有さず、少なくとも約19(Mpa)1/2の溶解度パラメーター及び少なくとも約0℃のガラス転移温度、すなわちTgを有する熱可塑性ポリマーから構成される。第二層を構成する熱可塑性ポリマーとしは、例えば、硬アクリル性ポリマー又はポリ(ビニルアセテート)をあげることができる。第三層は第二層を覆い、かつ約65℃〜約180℃の範囲で溶融する熱可塑性ポリマーを含む。
例として、第一層はセルロース性不織布ウェブであり得る。例えば、セルロース性不織布ウェブは、ラテックス含浸紙であり得る。他の例として、第二層に含まれる熱可塑性ポリマーは、少なくとも約25℃のガラス転移温度を有することができる。さらなる例として、第三層はフィルム形成バインダーを含むことができる。該バインダーは粉末化熱可塑性ポリマーを含むことができる。加えて、第二層はまた、脂肪酸、ポリエチレングリコールの二価金属イオン塩又はそれらの混合物といった、効果的な量の剥離増強添加剤を含むことができる。例えば、剥離増強剤としては、カルシウムステアレート、分子量約2,000〜約10,000のポリエチレングルコール又はそれらの混合物をあげることができる。
所望により、インクジェット印刷可能な熱転写材料を提供するために、第四層により第三層を覆うことができる。第四層は一般的に、フィルム形成バインダー及び粉末化熱可塑性ポリマーを含み、それぞれ、約65℃〜約180℃の範囲で溶融する。任意には、第三層が第二層よりもむしろ第四層を覆う場合には、第五層により第二層を覆うことができる。第五層は、上述したように約65℃〜約180℃の範囲で溶融するフィルム形成バインダーを含む。得られたインクジェット印刷可能な熱転写材料は常温剥離特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書において、用語“印刷可能な”は、直接及び例えばオフセットグラビアプリンター、シルクスクリーニング、タイプライター、レーザープリンター、ドットマトリックスプリンター及びインクジェットプリンター等の任意の手段により材料上にイメージを置くことをいう。さらに、イメージ組成物としては、任意のインク又は印刷工程に一般的に使用される他の組成物をあげることができる。
用語“インクジェット印刷可能な”は、材料、例えば紙にインクジェットプリンターによりイメージを形成することをいう。インクジェットプリンターにおいて、インクは小さなノズル(又はノズルの集まり)を通して押し出して、小滴を形成する。小滴は、静電的に電荷を帯びており、反対の電荷を帯びている紙の後ろの圧盤にくっつく。電気的に制御した偏向板を用いて、小滴の軌跡を制御して紙上の所望の箇所に命中させることができる。使用していない小滴を紙からインク溜めに回収する。他の方法では、プリンターヘッドが紙をスキャンするように加熱して泡を形成することにより、要求に応じた形態の小さなインク溜めに小滴を射出する。
用語“分子量”は、文脈から他の意味が明らかである場合や、その用語がポリマーに関するものである場合の他は、概して重量平均分子量をいう。分子量の単位は原子質量単位、時折“ダルトン”といわれるものであると長い間理解され、受け入れられてきた。その結果、現在の文献において単位がまれに記載されている。それ故、その慣例を踏襲して、本明細書においては分子量の単位は記載していない。
本明細書において、用語“セルロース性不織布ウェブ”は、少なくとも約50重量%のセルロース性繊維を含有するあらゆるウェブ又はシート状材料を含む。セルロース性繊維に加えて、ウェブは他の天然繊維、合成繊維又はそれらの混合物を含有することができる。セルロース性不織布ウェブは、比較的短い繊維を空気レイイング(air laying)又は湿式レイイング(wet laying)してウェブ又はシートを形成することにより製造できる。このように、この用語は製紙組成物から製造される不織布ウェブを含む。そのような組成物としては、セルロース性繊維単独又はセルロース性繊維と他の天然繊維及び/又は合成繊維との混合物をあげることができる。組成物はまた、添加剤及び充填剤、例えばクレー及び二酸化チタン、界面活性剤、起泡抑制剤等の製紙分野で周知の他の材料を含むことができる。
【0008】
本明細書において、用語“硬アクリル性ポリマー”は、一般的に少なくとも約0℃のTgを有するあらゆるアクリル性ポリマーをいう。例えば、Tgは少なくとも約25℃であり得る。他の例としては、Tgは約25℃〜約100℃の範囲であり得る。硬アクリル性ポリマーは一般的に、アクリレート又はメタクリレートエステルの、又は両方の混合物の付加重合により形成されるポリマーである。これらのモノマーのエステル部は、C1−C6アルキル基、例えばメチル、エチル、及びブチル基等であり得る。メチルエステルは一般的に“硬い”性質を付与する一方、他のエステルは一般的に“軟らかい”性質を付与する。用語“硬い”及び“軟らかい”は、それぞれ、室温硬さ及び常温柔軟性を定性的にいうものである。軟らかいラテックスポリマーは一般的に、約0℃未満のガラス転移温度を有する。これらのポリマーは非常に容易に流動し、熱及び圧力をかけて転写を行ったときに織物に接着する傾向にある。少し硬くなく、容易に変形する硬いポリマーは一般的に、コーティングを十分に固くするための充填剤を必要とする。したがって、ガラス転移温度はポリマー硬度とかなり相関関係がある。
本明細書において、用語“常温剥離特性”は、いったんイメージを布等の支持体に転写したら、熱転写材料を室温に冷却後にバッキング又はキャリアシート(本発明における第一層)を支持体から容易にかつきれいにはがせることをいう。すなわち、冷却後、バッキング又はキャリアシートを、イメージを転写した支持体から、無理なく、キャリアシート上にイメージの一部を残したり、或いは転写したイメージコーティングに欠陥を生じたりせずに剥離できるのである。
前述したように、本発明により常温剥離特性を有する印刷可能な熱転写材料を提供する。印刷可能な熱転写材料は、第一及び第二表面を有する柔軟な第一層を含む。柔軟な第一層は、ベースシート又はバッキングとして働く。柔軟な第一層は一般的にフィルム又はセルロース性不織布ウェブであり得る。柔軟性に加えて、第一層はまた、取り扱い、コーティング、シーティング、及び製造に関連する他の操作に対して、及びイメージ転写後の除去に対して十分な強度を有するべきである。例えば、第一層は熱転写紙の製造に一般的に使用されるような紙であり得る。
2、3の態様において、第一層はラテックス含浸紙である。例えば、ラテックス含浸紙は、ロプレックス(登録商標)B−15(ロームアンドハース社、フィラデルフィア、ペンシルバニア)等の反応性アクリル性ポリマーラテックスで含浸したウッドパルプ繊維又はαパルプ繊維の無サイズ紙であり得る。しかしながら、任意の多くの他のラテックスを所望により使用することができ、いくつかの例を下記の表Aにまとめた。
【0009】
【表1】

【0010】
含浸分散体は一般的に、クレー及び二酸化チタン等の乳白剤を含有する。これらの2種の材料の量は、例えばそれぞれ、乾燥重量を基準にしてポリマー100部当たり16部及び4部である。例えば、第一層は含浸前に13.3ポンド/1300平方フィート(50g/m2)の基本重量を有することができる。
紙中の含浸剤のレベルがより高い方が適当であり得る場合もあるが、含浸紙は一般的に、乾燥重量を基準にして、約5〜約50重量%の範囲の含浸剤を含有することができる。具体的には、乾燥重量を基準として、該紙は繊維100重量部当たり18部の含浸固有物を含有することができ、15.6ポンド/1300平方フィート(58g/m2)の基本重量を有することができる。適当な厚さは、3.8±0.3ミル(97±8μm)である。
上述したようにポリマー分散体に含浸させた紙に加えて、全体的に又は部分的に、例えば熱水に可溶なポリマーの溶液又は分散体に浸すことができる。例えば、紙を顔料含有ポリ(ビニルアルコール)溶液に含浸することができる。他の可溶なポリマーとしては、例えば、スチレン−無水マレイン酸コポリマー(塩基に可溶)、スターチ、ポリビニルピロリドン及びカルボキシエチルセルロースをあげることができる。
【0011】
第一層は、当業者に周知の方法により容易に製造することができる。また、紙含浸法も当業者に周知である。一般的に、紙を過剰の含浸分散体にさらし、ニップを通し、乾燥する。
第二、即ち剥離層により第一層の第一表面を覆う。第二層は、転写温度(例えば約177℃)で本質的に粘着性を有さず、少なくとも約19(Mpa)1/2の溶解度パラメーター及び少なくとも約0℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーから構成される。本明細書において、“転写温度で本質的に粘着性を有さず”とは、転写したイメージに悪影響を与えるのに十分な程度まで第二層が第三層(存在するならば、あるいは第四層)にくっつくことをいう。具体的には、熱可塑性ポリマーは硬アクリル性ポリマー又はポリ(ビニルアセテート)であり得る。例えば、熱可塑性ポリマーは、少なくとも約25℃のガラス転移温度(Tg)を有することができる。他の例として、Tgは、約25℃〜約100℃の範囲であり得る。適当なポリマーの例としては、適当なガラス転移温度を有する表Aに記載したものがあげられる。第二層はまた、脂肪酸、ポリエチレングリコールの二価金属イオン塩又はそれらの混合物等の剥離増強添加剤の効果的な量を含むことができる。例えば、剥離増強添加剤としては、カルシウムステアレート、分子量約2,000〜約10,000のポリエチレングリコール又はそれらの混合物があげられる。
【0012】
第三層は第二層を覆い、約65℃〜約180℃の範囲で溶融する熱可塑性ポリマーを含む。第三層は転写コーティングとして作用し、熱転写材料の早期離層を防止するためにその後の層の接着を向上させる。該層はフィルム形成バインダーのコーティングを第二層に施すことにより形成することができる。第三層が約15〜約80重量%のフィルム形成剤バインダー及び約85〜約20重量%の粉末化熱可塑性ポリマーを含有する場合、バインダーは粉末化熱可塑性ポリマーを含むことができる。一般的に、フィルム形成バインダー及び粉末化熱可塑性ポリマーはそれぞれ約65℃〜約180℃の範囲で溶融する。例えば、フィルム形成バインダー及び粉末化熱可塑性ポリマーはそれぞれ約80℃〜約120℃の範囲で溶融し得る。また、粉末化熱可塑性ポリマーは直径約2〜約50μmの粒子からなる。望ましくは第三層の厚さは約12〜約80μmである。
一般的に、本明細書において特定した基準を満たすあらゆるフィルム形成バインダーを使用することができる。実際問題として、水分散性エチレン−アクリル酸コポリマーが特に効果的なフィルム形成バインダーであることが分かった。
同様に、粉末化熱可塑性ポリマーは、本明細書中で前述した基準を満たすあらゆる熱可塑性ポリマーであり得る。例えば、粉末化熱可塑性ポリマーはとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、エチレン−ビニルアセテートコポリマー又はポリオレフィンをあげることができる。
【0013】
本明細書において、用語“溶融する”及びその変化形は、定性的な意味においてのみ使用し、かついかなる特定の試験方法をいうものではない。本明細書において溶融温度又は範囲とは、フィルム形成バインダー及び/又は粉末化熱可塑性ポリマーが溶融し、溶融転写工程の条件下で流動し、実質的に滑らかなフィルムとなるおおよその温度又は範囲を意味するものである。そのように行う際、該材料及び特に粉末化熱可塑性ポリマーは、イメージが転写される織物の繊維マトリックス中に部分的に流動することができる。
フィルム形成バインダー又は粉末化熱可塑性ポリマーの溶融挙動に関する製造者が公表したデータは、本明細書に記載した溶融要求と相関関係を有する。しかしながら、真の融点又は軟化点は、材料の性質に依存して与えられ得るということに注意すべきである。例えば、主に直鎖ポリマー分子から構成されるようなポリオレフィン及びワックスの材料は、融点未満で幾分結晶化するため、一般に、比較的狭い温度範囲で溶融する。製造者から示されなければ、融点は示差走査熱量計等の公知方法で容易に測定することができる。多くのポリマー及び特にコポリマーは、ポリマー鎖の分岐又は側鎖成分であるため無定形である。これらの材料は、温度が上昇するにつれて軟化し、さらに徐々に流動する。ASTM試験方法E−28に記載されている、そのような材料の環球軟化点(ring and ball softening point)が、本発明におけるポリマー及びコポリマーの挙動を予測するのに有用であると思われる。さらに、記載した融点又は軟化点は、ポリマーの化学的な性質よりも本発明における性能を示すのによりよいものである。
【0014】
また、第三層は溶融押出フィルムであり得る。第三層を形成する溶融押出フィルムの基準は一般的に第三層について上述したのと同じである。溶融押出第三層を構成するポリマーは、一般的に約80℃〜約130℃の範囲で溶融する。ASTM試験方法D−1238に従って測定されるポリマーのメルトインデックスは、少なくとも約25g/10分であるべきである。ポリマーの化学的性質は、公知ではない。これらの基準を満たし、商業的に入手できるポリマーのタイプは、例えば、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、ビニルアセテート、エチルアセテート、又はブチルアクリレートのコポリマーがあげられる。使用できる他のポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタンがあげられる。所望により又は必要により、ワックス、可塑剤、レオロジー改質剤、酸化防止剤、帯電防止剤、粘着防止剤、及び他の添加剤を含むことができる。
溶融押出第三層を、スクリューを通してスロットダイに溶融ポリマーを押し出す押出コーターにより施すことができる。フィルムはスロットダイを出て、重力により第一層の上に流れる。得られた被覆第一層をニップにより通過させ、第二層を冷やして第一層と接着させる。より粘度の小さいポリマーについては、溶融ポリマーは自立(self-supporting)フィルムを形成することができない。このような場合、スロットダイと接触させるか又はロールを使用して第一層をコートし、浴から溶融ポリマーを第一層に移すことができる。
インクジェットプリンターに使用されるインクは水ベースであるため、第四層は、インクジェットプリンターによりイメージを置く印刷可能な熱転写材料に有用である。第四層は、印刷したイメージがにじんだり、転写したイメージを水にさらしたときにイメージがにじみ出たりなくなったりするのを防止するか又は最小にする。第四層は、例えば、クロンザー(Kronzer)の米国特許第5,501,902号明細書に記載されている第二即ち印刷層であり得る。この特許は本明細書に含まれるものとする。従って、第四層は、最大の大きさが約50μm未満の熱可塑性ポリマー粒子を含むことができる。粒子は最大の大きさが約20μm未満であるのが望ましい。一般的に、熱可塑性ポリマーは本明細書に前述した基準を満たすあらゆる熱可塑性ポリマーであり得る。粉末化熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド及びエチレン−ビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれる。
【0015】
第四層はまた、熱可塑性ポリマーの重量を基準として、フィルム形成バインダーを約10〜約50重量%含む。所望により、バインダーの量は、約10〜約30重量%である。一般的に、前述した基準を満たすあらゆるフィルム形成バインダーを使用することができる。第四層が、下記のようなカチオン性ポリマーを含む場合、非イオン性又はカチオン性分散体又は溶液をバインダーとして使用することができる。適当なバインダーとしてはポリアクリレート、ポリエチレン、及びエチレンビニルアセテートコポリマーがあげられる。カチオン性ポリマー中で安定に存在するため、後者は特に望ましい。バインダーは、約120℃以下の温度で熱軟化性であるのが望ましい。
第四層の基本重量は約5〜約30g/m2で変化することができる。基本重量は、約10〜約20g/m2であるのが望ましい。前述したように、当業者に周知の方法により、第四層を第三層に施すことができる。第四層は一般的に、約65℃〜約180℃の融点を有する。さらに、第四層は熱可塑性ポリマーの重量を基準として、約2〜約20重量%のカチオン性ポリマーを含有することができる。カチオン性ポリマーとしては、例えば、アミド−エピクロロヒドリンポリマー、カチオン性官能基を有するポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン等があげられる。カチオン性ポリマーが存在する場合、非イオン性又はカチオン性分散液又は溶液等の相溶性バインダーが選ばれるべきである。紙コーティング分野において周知であるように、多くの商業的に入手できるバインダーが、アニオン性に帯電した粒子又はポリマー分子を有する。これらの材料は一般的に、第四層に使用できるカチオン性ポリマーと相溶性ではない。
一種以上の他の成分を第四層に使用することができる。例えば、この層は熱可塑性ポリマーの重量を基準として、約1〜約20重量%の保湿剤を含有することができる。保湿剤は、エチレングリコール及びポリ(エチレングリコール)からなる群から選ばれるのが望ましい。ポリ(エチレングリコール)は一般的に、約100〜約40,000の重量平均分子量を有する。約200〜約800の重量平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)が特に有用である。
【0016】
第四層はまた、熱可塑性ポリマーの重量を基準として、約0.2〜約10重量%のインク粘度改質剤を含有することができる。粘度改質剤は約100,000〜約2,000,000の重量平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)であるのが望ましい。ポリ(エチレングリコール)は、約100,000〜約600,000の重量平均分子量を有するのが望ましい。
第四層に存在し得る他の成分としては、熱可塑性ポリマーの重量を基準として、約0.1〜約5重量%の弱酸及び約0.5〜約5重量%の界面活性剤があげられる。特に有用な弱酸はクエン酸である。本明細書において、用語“弱酸”は、解離定数が1未満(すなわち、解離定数の負の対数が1より大きい)の酸をいう。
界面活性剤はアニオン性、非イオン性、又はカチオン性界面活性剤であり得る。カチオン性ポリマーが第四層に存在する場合、界面活性剤はアニオン性界面活性剤であるべきである。界面活性剤は、非イオン性又はカチオン性界面活性剤であるのが望ましい。しかしながら、カチオン性ポリマーが存在しない場合、所望により、アニオン性界面活性剤を使用することができる。アニオン性界面活性剤の例としては、特に、直鎖及び分岐鎖ナトリウムアルキルベンゼンスルホネート、直鎖及び分岐鎖アルキルスルフェート、及び直鎖及び分岐鎖アルキルエトキシスルフェートがあげられる。カチオン性界面活性剤としては、例えばタロートリメチルアンモニウムクロリドがあげられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルポリエトキシレート、ポリエトキシル化アルキルフェノール、脂肪酸エタノールアミド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドのポリマーとアルコールとの複合体、及びポリシロキサンポリエーテルがあげられる。界面活性剤が非イオン性界面活性剤であるのがより望ましい。
最後に、第五即ち中間層は、第二層を覆いかつ第三層の下にあり、第二層と第三層の間に位置することができる。一般的に、第五層は、第三層がフィルム形成バインダーから製造される場合有用ではない。しかしながら、第三層が溶融押出フィルムであるとき、第三層は第二層に非常に弱くしか接着できない。接着が弱いことにより、プリンター、特にレーザープリンター中で第二層から第三層が離層し得る。そのような場合の離層を防ぐために、第五層が必要なのである。一般的に、第五層は、第三層について記載したように約65℃〜約180℃の範囲で溶融するフィルム形成バインダーを含むことができる。さらに、第五層はまた第三層について記載したように粉末化熱可塑性ポリマーを含むことができる。
【0017】
所望により、前述の任意のフィルム層は加工助剤、剥離剤、顔料、つや消し剤、起泡抑制剤等の他の材料を含有することができる。このような材料及び同様の材料を使用することは、当業者には周知である。
フィルム形成バインダーをベースとする層は、公知のコーティング技術、例えばロール、ブレート及びエアナイフコート法により所定の層上に形成することができる。得られた熱転写材料を、例えば蒸気加熱ドラム、エアインピンジメント(air impingement)、輻射加熱、又はそれらの組み合わせにより乾燥することができる。
以下の実施例により本発明をさらに説明する。しかしながらそのような実施例は、本発明の趣旨又は範囲をいかなるようにも制限するように実施するべきではない。可能である限り、測定の単位はまたSI単位(国際単位系)の基本形又は誘導形のいずれかで示す。他に記載しない限り、部は全て重量部であり、基本重量は全て乾燥重量基準である。コーティングの乾燥を特定の実施例で具体的に説明する場合、モデル28精密科学電気乾燥オーブン(Precision Scientific Electric Drying Oven)を使用した。イメージは、ヘインズ(登録商標)製の木綿100%Tシャツ又はそれと同等のものに転写した。洗濯試験は標準的な家庭用洗濯機及び標準的な家庭用乾燥機で行った。イメージ転写は、約163−177℃及び/又は木綿のいずれかに設定したプロクターサイレックス(Proctor Silex)(登録商標)製ノンスチーム家庭用ハンドアイロン又はモデルS−600熱転写プレス(ヒックス社、ピッツバーグ、カンザス)のいずれかを使用した。
【実施例】
【0018】
実験データが多く、かつ試験した製品が複雑なため、データを表すのにコードシステムを使用した。第一層(即ち原紙)をIA、IB等として表した。第二層をIIA、IIB等として表した;第三層をIIIA等とした;第四層をIVA等とした;第五層をVA、VB等とした。また、表I〜Vを下記に示した。以下に示す全ての表において、ローマ数字と混乱するのを避けるため文字“I”をとばした。




















【0019】
【表2】











【0020】
【表3】



【0021】
【表4】

【0022】
他に記載しない限り、第二層をメイヤー(meyer)ロッド含有水中で分散体として施し、強制通風炉で乾燥した。他に記載しない限り、乾燥した被覆重量は2.5〜4.5ポンド/1300平方フィート(約9〜17g/m2)であった。





















【0023】
【表5】



【0024】
【表6】


【0025】
【表7】



【0026】
【表8】






【0027】
【表9】

【0028】
“常温剥離可能な”インクジェット熱転写材料の概念が適しているかどうかを検討するために、最初のスクリーニング実験を設計した。これらの実験を下記の表VIにまとめた。表VI(及びそれに続く表)中のサンプル(“ID”欄に記載した)を、表の番号及び文字(A〜Z)で番号を付けた;例えば、“VIA”は、表VIの最初のサンプルである。使用したスクリーニング法は、ペーパータオルをTシャツプレス(ヒックスモデルS−600、ヒックス社、ピッツバーグ、ペンシルバニア)上にのせることを含む。第三層のフィルムをペーパータオルの上に置き、コートした実験サンプルをフィルムの上に置いた。得られた“サンドイッチ”を次に365゜F(約185℃)で30秒間加熱プレスした。プレス後、サンドイッチがまだ熱いうちに紙の約1/3を直ちに剥がし、約30秒後に約1/3、及び室温に冷却後に残りの1/3を剥がした。次に、剥離の容易さを、優、良、可又は不可として主観的に評価した(不可のサンプルは通常、ほとんど全く剥がせない)。次に、ニュークレル599(層IVA)のフィルムを、100℃で約30秒間加熱プレスして第二層コート紙に接着することにより、最も興味深いサンプルの一つ、VIPの設計パラメーターをインクジェット印刷可能な、常温剥離性熱転写紙VIQに導入し、さらにこのサンプルをタイプIVAのコーティングで被覆した。次に、サンプルにテストパターンを印刷してTシャツ材料(木綿100%)に転写した。375゜F(約191℃)で30秒間プレスして冷却すると、イメージは十分に転写した。イメージは完全に転写され、タイプC−90642紙(キンバリークラーク社から商業的に入手可能な加熱剥離熱転写紙)を用いる“加熱剥離した”転写よりもさらに滑らかでかつさらに光沢があった。


































【0029】
【表10】

【0030】
第一回目の実験では、第三層は常に押出フィルムであった。第二回目の実験は、下記の表VIIにまとめたように、全て水ベースコーティングを行った。ミクロセンFE532とマイケム58035とを組み合わせることにより、幾つか第二層を有する場合−特にロプレックスHA16及びクレーに関しては非常によく動くことが分かった。転写したポリマーは光沢のある表面を有していた。また、これらのサンプルからの転写によるTシャツ材料の洗濯試験は、C−90642熱剥離紙により製造したコントロールと同様に色を保持しなかった(イメージは360゜Fすなわち約182℃において30秒間熱圧後に転写した)。





【0031】
【表11】

【0032】
第三層IIIB又はIIIC、及びBP101(第一層IB)、及び新たな第二層IIHを用いると、光沢の問題は解決するように思われる。第二層IIHは、珪藻土であるセライト263充填剤由来の光沢のない、“微小に粗い”表面を有していた。これらの結果を下記の表VIIIにまとめた。熱圧条件は表VIIと同じ条件である。エチレン−ビニルアセテートコポリマーミクロセンFE532の代わりにミクロパウダーMPP635VFを用いたIIIDベースコートを試用して洗濯性を向上できるかどうかを検討した。しかしながら、該ベースコートは、IIH第二層から剥離しなかった。
【0033】
【表12】

【0034】
次の実験サンプルは、サンプルを被覆した一連の第二層を製造し、被覆した紙ウェブにサンプルをテーピングすることにより、ニュークレル599フィルム(IIIA第三層)により該サンプルをコートすることを含む。ベースコートに十分接着するコートしたサンプルを第四層、IVA でコートし、テストパターンで印刷し、ハンドアイロンを使用して木綿100%Tシャツ材料に転写した。アイロンを#6設定(木綿)に設定し、予め加熱した。すこし圧力をかけて紙に2回アイロンをかけた;即ち、8と1/2”×11”シートの各側を1回通過させ、真ん中を重複してかけた。次に、中ぐらいの圧力で、それぞれ表面全体を覆うように紙の上を10回素早く通過させた。1分間冷却後に紙を剥がした。結果を表IXにまとめた。
【0035】
【表13】

【0036】
サンプルIXB及びIXCを試験操作TR-A、TR-Bにおいてそれぞれ繰り返した。しかしながら、先駆の(precursor)ロールをIIIA第三層でコートした場合、接着は弱く、全く使い物にならない材料が得られた。これにより第二層を再び改質した;即ち、PEG20Mの量を10部(IIN第二層)に減らした。この剥離コートにより行った試験TR-C及びTR-Dはさらに成功したが、処理中に起こるフィルム離層を防止するために、押出コーティング工程(IIIA第三層の塗布)を非常にゆっくりと(60fpm)行った。
TR-C及びTR-Dからサンプルについて幾つかの欠点があることが分かった。TR-Dにより行った転写は、織物(第四層)にさらにポリマー層を転写したものであるが、数回洗浄後にポリマー層の亀裂を大きくする傾向にあった。サンプルTR-Cに関しては、同様の傾向がみられたがそれほど深刻な状況ではなかった。これはおそらく、ある程度までは、加熱剥離紙においてはポリマーが幾分紙の上に残るためであり、常温剥離設計においてはポリマーは全て転写されるためであろう。他の因子は、常温剥離設計にアイロンをかける場合、おそらく熱と圧力とをあまりかけない傾向にあるためであり、というのも、織物への浸透が可能である程度まで完全ではなくても、常に全ポリマー層を転写するからである。この設計に対して複数回コーティングすることにより、特に、一回のコーティングが非常に低速度で押出されるため、費用がかさむという別の問題点も考えられる。これらの全ての問題点は水−ベースポリマーで全てコーティングした場合に解決されると考えられるため、新しい水−ベース代替品が考えることが可能である。
全ての水−ベースコーティングに関する次の実験結果を表Xにまとめた。これらは、前述したハンドアイロン法により評価した。










【0037】
【表14】

【0038】
サンプルの幾つかは、特に第五層を有しないXEは非常に有望であった。第五層を除くとイメージをあまり亀裂しないようにみえた。これは、イメージを転写したときにさらに織物に流動する低分子量ポリマー(IIIE)を使用しているためであると考えられる。しかしながら、これらの成分はIIN第二層から剥離するため、別の第二層が考えられる。結果を表XIにまとめた。






















【0039】
【表15】

【0040】
表XIのデータから幾つかの結論が導かれた。再び、前述したアイロン法を使用した。第二層によりまず、ミクロパウダー−マイケムプライムコーティングの良好な剥離性が得られ、ほぼ許容できると思われる製品が得られた。転写されるポリマーの塊(サンプルXIC)を柔らかくする一つの試みは、直角方向におけるものである。このサンプルは、マイケムプライム4983よりも低分子量のエチレンアクリル酸バインダーを使用している。ユニモール(Unimol)66及びトーン0201を添加して、ポリアミドであるオルガソルが軟化するかどうかを検討した。トーン0201は、オルガソルをかなり軟化させたが、印刷物上でインクがひどく流れ、洗濯性に劣った。以下のこれらの有望な結果により、加熱したときにカルボセット760が黄変することが分かった。
サンプルXIGを製造して、含浸していない接着紙を、この設計の第一層(即ち原紙)が、例えば、ホルムアルデヒドはもちろん含浸剤からの匂いを除くのに使用できるかどうかを検討した。残念なことに、あまりにも容易に剥離する傾向にあり、アイロンがけの失敗の可能性が残った。それ故、次の実験において、B.F.グッドリッチ社製のホルムアルデヒドを含まない、微香性のラテックスを、含浸剤及び第二層の両方として幾つか評価した。
B.F.グッドリッチ社により、2種のホルムアルデヒドを含まないタイプのハイカー26172、すなわち、ホルムアルデヒドフリーハイカー26106及びホルムアルデヒドフリーハイカー26084が提供された。26172及び26106は硬アクリル性であり、一方26084は柔らかくかつわずかにアクリレート臭を有する。
第一層即ち原紙IFである、基本重量16.5ポンド/1300平方フィートのユーカリ硬木ブレンド原紙を、各ラテックスと二酸化チタン分散体(PD14)25乾燥重量部とを混合した配合物で含浸した。含浸剤の含浸量は40±4%であった。乾燥後、加熱プレス中で375゜Fにおいて30秒間各サンプルを加熱し、Tシャツ材料片のときよりも熱く設定したハンドアイロンでアイロンをかけた。ハイカー26172の変形体を有するサンプルのいずれもが加熱プレスにおいて黄変しなかった。アイロン時にはわずかに黄変した。ハイカー26084及び26106変形体を有するサンプルはさらに黄変した。
それぞれがPEG20Mを20乾燥部有する4種のラテックスをまた第二層として評価した。これらの試験に使用した第三層はIIIFであり、第四層はIVBである。これらのコーティングを第二層に施した後、サンプルをTシャツ材料上にアイロンがけし、冷却し、剥離した。データを表XIIにまとめた。残念ながら、“ほとんど黄変しない”ラテックスサンプルからは改質した26106又は26172のような剥離性が得られなかった。これは、界面活性剤の差異によるものと思われるが、幾つかの界面活性剤が被覆表面において濃縮することにより剥離性を提供できるためである。実際、カルシウムステアレートを添加すると、剥離性は非常に良くなった。
【0041】
【表16】

【0042】
Tシャツ材料上に転写したイメージ(ポリマー)を軟らかくする試みをさらに幾つか行い、表XIIIにまとめた。再び、前述したアイロン法を使用した。この研究から、第三層の基本重量がより低い(サンプルとXIIC)とクラッキングが悪くなることが分かった。低分子量ワックス又はポリマー(サンプルXIIB)はクラッキングを除くが、洗濯性はさらに悪くなった;即ち、洗濯時に色がより落ちた。ミクロセンFE532及びオルガソル3501等の高分子量ポリマーを第三層に添加するとさらにクラッキングした。







【0043】
【表17】

【0044】
表XIIIにまとめたデータにより、クラッキングを除きつつ、良好な洗濯性を保持しながら、転写したポリマーイメージをさらに軟らかくするのが難しいことを確認した。この問題を解決する唯一の手がかりは、被覆重量が減少するとき(サンプルXIIIC)クラッキングがさらに悪くなることである。これは、クラッキングは常に織物表面の過剰のポリマーに由来するものであるため、予想し得ることとは反対である。したがって、第三層の基本重量がより大きい場合も検討した。これらの検討結果を表XIVにまとめた;再び、上述したようにアイロンがけを行った。表XIVのデータにより、クラッキングの問題を除くのに重い第三層が必要であることを確認した。織物上のポリマー上のクラッキングは、転写されるポリマーの塊全体が硬すぎる場合か、又は材料の分子量が大きすぎる場合に大きくなることが分かった。第四層ポリマー塊は本質的に分子量が大きく、印刷性又は洗濯性の問題を生じずにこれを改質することはできない。第三層は分子量がより小さく又は、より軟らかくなり得るが、その塊が第四層の塊よりも大きい場合にのみ効果的になる。しかしながら、分子量が低すぎると洗濯性が悪くなる。これまでに行ってきた第三層の改質は全て6ポンド連の被覆重量において必要な効果を提供する際に効果がなかった。











【0045】
【表18】

【0046】
Tシャツ材料への転写後に最も軟らかい手触りが得られた表XIVのサンプルはクラッキングしなかったが、一般的に、洗濯時にさらに色褪せした。これらのサンプルにおいて、柔軟効果を与える材料の多くは、第三層よりも第四層においてより効果的であった。第三層におけるカルシウムステアレートは硬化作用を有する一方、乾燥時にアンモニアを失ってステアリン酸になるために、アンモニウムステアレートは軟らかい触感を与えると思われる。PEG20Mは、所望の柔軟硬化を与えるが、イメージをより水に対して敏感にすると思われる、非常に軟らかい、蝋状の物質である。(もちろんPEGは水溶性である。)驚くべきことに、PEG200は洗濯性に悪影響を与えない柔軟作用を有すると思われる。このことに関する理論の一つとして、転写を行うとき、高温でオルガソルポリアミドを軟らかくすることができるが、冷却後には再び相溶性でなくなり得ることがあげられる。従って、織物を洗濯するときはポリマー塊を単に洗濯する。理想的なPEGレベル及び分子量を決定する前にさらに研究をすべきである。PEG200は非常に揮発性であるため蒸気は刺激的であり、一方PEG20Mは洗濯性に劣る。この間の分子量の幾つかが理想的であると思われる。
サンプルXIVJの5つの別々の製造から許容できる結果が得られた。それぞれの試みにおいて、印刷したサンプルを、前述した方法を使用して木綿100%のTシャツ材料上にアイロンがけした。Tシャツ材料を、暖/冷サイクルに設定した家庭用洗濯機で5回洗濯した。イメージのクラッキングは現れなかった。XIVJサンプルとコントロールとを比較すると、織物からの加熱剥離ではなく常温剥離の場合、XIVJサンプルによりさらに光沢のあるイメージ領域が得られた。コントロールは“加熱剥離”型C−90642であった。
特定の態様に関して明細書を詳細に記載してきたが、当業者が前述のことを理解すれば、これらの態様の代替物、変形体及び対等物を容易に考えつくであろう。従って、本発明の範囲を、添付の特許請求の範囲及びあらゆる対等物の範囲として評価すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二表面を有し、かつセルロース性不織布ウェブである柔軟な第一層;
転写温度で本質的に粘着性を有さず、少なくとも0℃のガラス転移温度を有する、アクリル性ポリマー及びポリ(ビニルアセテート)からなる群から選ばれる熱可塑性ポリマーを含有する、第一層の第一表面を覆う第二層であって、さらに剥離増強添加剤を含有する該第二層;及び
65℃〜180℃の範囲で溶融し、ポリオレフィン、ポリエステル、エチレン−ビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれる熱可塑性ポリマーを含有する、第二層を覆う第三層;
を含有する印刷可能な熱転写材料であって、
第二層及び第三層が、支持体表面にイメージを転写した後に該熱転写材料を周囲温度に冷却すると、支持体から第一層を容易かつきれいにはがすことができるようになっていることを特徴とする前記印刷可能な熱転写材料。
【請求項2】
前記剥離増強添加剤が脂肪酸の二価金属イオン塩である請求項1記載の前記印刷可能な熱転写材料。
【請求項3】
第三層がフィルム形成バインダーを含有する請求項1記載の印刷可能な熱転写材料。
【請求項4】
第三層が粉末化熱可塑性ポリマーを含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の印刷可能な熱転写材料。
【請求項5】
さらに第三層を覆う第四のインクジェット印刷層を含有し、該第四層が、ポリアクリレート、ポリエチレン及びエチレンビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれるフィルム形成バインダー;及びポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド及びエチレン−ビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれる粉末化熱可塑性ポリマーを含有し、フィルム形成バインダー及び粉末化熱可塑性ポリマーのそれぞれが65℃〜180℃の範囲で溶融する請求項1〜4のいずれか1項記載の印刷可能な熱転写材料。
【請求項6】
第一及び第二表面を有し、かつセルロース性不織布ウェブである柔軟な第一層;
転写温度で本質的に粘着性を有さず、少なくとも19(Mpa)1/2 の溶解度パラメーター及び少なくとも0℃のガラス転移温度を有する、第一層の第一表面を覆う第二層;
65℃〜180℃の範囲で溶融し、溶解度パラメーターが19(Mpa)1/2 未満であるフィルム形成バインダーを含有する、第二層を覆う第五層;及び
65℃〜180℃の範囲で溶融し、溶解度パラメーターが19(Mpa)1/2 未満である熱可塑性ポリマーを含有する、第五層を覆う第三層;
を含有する印刷可能な熱転写材料であって、第二層及び第五層が印刷可能な熱転写材料に常温剥離特性を与えるようになっていることを特徴とする印刷可能な熱転写材料。
【請求項7】
第一及び第二表面を有し、かつセルロース性不織布ウェブである柔軟な第一層;
転写温度で本質的に粘着性を有さず、少なくとも19(Mpa)1/2 の溶解度パラメーター及び少なくとも0℃のガラス転移温度を有する、第一層の第一表面を覆う第二層;
65℃〜180℃の範囲で溶融し、19(Mpa)1/2 未満の溶解度パラメーターを有するフィルム形成バインダーを含有する、第二層を覆う第五層;
65℃〜180℃の範囲で溶融し、溶解度パラメーターが19(Mpa)1/2 未満である溶融押出ポリマーを含有する、第五層を覆う第三層;及び
フィルム形成バインダー及び粉末化熱可塑性ポリマーを含有し、フィルム形成バインダー及び粉末化熱可塑性ポリマーのそれぞれが65℃〜180℃の範囲で溶融する、第三層を覆う第四層;
を含有するインクジェット印刷可能な熱転写材料であって、第二層及び第三層が印刷可能な熱転写材料に常温剥離特性を与えるようになっていることを特徴とするインクジェット印刷可能な熱転写材料。
【請求項8】
第二層がさらに、剥離増強添加剤を含有する請求項1、6又は7記載のインクジェット印刷可能な熱転写材料。
【請求項9】
剥離増強添加剤が、脂肪酸、ポリエチレングリコール又はそれらの混合物の二価金属イオン塩からなる群から選ばれる請求項8記載のインクジェット印刷可能な熱転写材料。
【請求項10】
剥離増強添加剤が、カルシウムステアレート、分子量2,000〜10,000のポリエチレングリコール又はそれらの混合物である請求項9記載のインクジェット印刷可能な熱転写材料。
【請求項11】
第一及び第二表面を有し、かつセルロース性不織布ウェブである柔軟な第一層;
転写温度で本質的に粘着性を有さず、少なくとも0℃のガラス転移温度を有する、アクリル性ポリマー及びポリ(ビニルアセテート)からなる群から選ばれる熱可塑性ポリマーを含有する、第一層の第一表面を覆う第二層であって、さらに脂肪酸の二価金属イオン塩である剥離増強添加剤を含有する該第二層;
65℃〜180℃の範囲で溶融し、ポリオレフィン、ポリエステル及びエチレンビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれるフィルム形成バインダーを含有する、第二層を覆う第五層;及び
65℃〜180℃の範囲で溶融し、ポリオレフィン、ポリエステル、エチレン−ビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれる熱可塑性ポリマーフィルムを含有する、第五層を覆う第三層;
を含有する印刷可能な熱転写材料であって、
第二層及び第五層が、支持体表面にイメージを転写した後に該熱転写材料を周囲温度に冷却すると、支持体から第一層を容易かつきれいにはがすことができるようになっていることを特徴とする前記印刷可能な熱転写材料。
【請求項12】
さらに第三層を覆う第四層を含有し、ポリアクリレート、ポリエチレン及びエチレンビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれるフィルム形成バインダー;及びポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド及びエチレン−ビニルアセテートコポリマーからなる群から選ばれる粉末化熱可塑性ポリマーを含有し、フィルム形成バインダー及び粉末化熱可塑性ポリマーのそれぞれが65℃〜180℃の範囲で溶融する該第四層を含有し、
第三層に含まれる熱可塑性ポリマーフィルムが溶融押出ポリマーフィルムである請求項11項記載の印刷可能な熱転写材料。
【請求項13】
セルロース性不織布ウェブがラテックス含浸紙である請求項1、6、7又は11記載の印刷可能な熱転写材料。
【請求項14】
第二層を含有する熱可塑性ポリマーが少なくとも25℃のガラス転移温度を有する請求項1、6、7又は11記載の印刷可能な熱転写材料。

【公開番号】特開2007−320320(P2007−320320A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212214(P2007−212214)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【分割の表示】特願平9−196950の分割
【原出願日】平成9年7月23日(1997.7.23)
【出願人】(505029713)ニーナ ペイパー インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】