説明

幕板構造およびキッチン

【課題】 たとえばシンクの直下に設置されるキャビネットの有効高さが比較的小さい場合にも、包丁を立てた状態で収納する包丁収納ユニットをキャビネットの扉の内側面に取り付けることを可能にする幕板構造。
【解決手段】 シンク(3)の前面を覆う本発明の幕板構造(30)は、シンクの前面(3a)の上側部分を覆うための幕板本体(31)と、幕板本体の内側面から所定距離だけ奥側に垂下してシンクの前面の下側部分を覆うためのカバー部材(32)とを備えている。幕板本体とカバー部材とは一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幕板構造およびキッチンに関し、特にキッチンのシンクの前面を覆うための幕板構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンにおいて、たとえばシンクの直下に設置されたキャビネットの扉(引出し前板または開閉扉板)の内側面には、包丁を鉛直方向に沿って立てた状態で収納するための包丁差し具が取り付けられている。一方、本出願人は、特開2000−236964号公報において、収納の観点からデッドスペースである台座の設置を省略した収納効率の高いベースキャビネットとして、最下段に引出し収納部が設けられた構成を提案している。
【0003】
特開2000−236964号公報に開示された構成では、最下段に引出し収納部が設けられているので、シンクの直下に設置されるキャビネットの有効高さが比較的小さくなる。したがって、このキャビネットの扉の内側面に従来の包丁差し具を取り付けると、包丁の柄の部分が幕板の下端部分と干渉しないように収納可能な包丁の長さが著しく制限される。
【0004】
そこで、本出願人は、有効高さが比較的小さいキャビネットの扉の内側面に取り付けられた包丁収納ユニットに比較的長い包丁を斜め状態で収納する構成を提案している(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2002−238785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、包丁が立てた状態ではなく斜め状態で収納されるため、腰を比較的大きく屈めなければ包丁の柄の部分を把持することができず、ひいては包丁の取出し動作や収納動作などを楽な姿勢で行うことができないという不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、たとえばシンクの直下に設置されるキャビネットの有効高さが比較的小さい場合にも、包丁を立てた状態で収納する包丁収納ユニットをキャビネットの扉の内側面に取り付けることを可能にする幕板構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、シンクの前面を覆う幕板構造であって、
前記シンクの前面の上側部分を覆うための幕板本体と、
前記幕板本体の内側面から所定距離だけ奥側に垂下して前記シンクの前面の下側部分を覆うためのカバー部材とを備えていることを特徴とする幕板構造を提供する。
【0008】
第1形態の好ましい態様によれば、前記幕板本体と前記カバー部材とは一体的に形成されている。
【0009】
本発明の第2形態では、第1形態の幕板構造を有するキッチンにおいて、
前記幕板本体の直下に取り付けられた扉と、
前記扉の内側面に取り付けられて包丁を立てた状態で収納するための包丁収納ユニットとを備えていることを特徴とするキッチンを提供する。
【0010】
第2形態の好ましい態様によれば、前記包丁収納ユニットは、前側に設けられて比較的長い包丁を収納するための第1収納部と、奥側に設けられて比較的短い包丁を収納するための第2収納部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、たとえばキッチンにおいて、シンクの前面の上側部分を覆うための幕板本体と、幕板本体の内側面から所定距離だけ奥側に垂下してシンクの前面の下側部分を覆うためのカバー部材とを備えている。この構成では、幕板本体の縦方向の幅寸法を比較的小さく抑えつつ、幕板本体とカバー部材との協働作用により外部からシンクの前面への視線を確実に遮ることができる。
【0012】
その結果、シンクの直下に設置されるキャビネットの有効高さが比較的小さい場合にも、柄の部分が幕板本体の下端部分と干渉しないように比較的長い包丁も立てた状態で収納することが可能になる。すなわち、本発明の幕板構造は、たとえばシンクの直下に設置されるキャビネットの有効高さが比較的小さい場合にも、包丁を立てた状態で収納する包丁収納ユニットをキャビネットの扉の内側面に取り付けることを可能にする。こうして、腰を比較的大きく屈めなくても包丁の柄の部分を把持することができ、ひいては包丁の取出し動作や収納動作などを楽な姿勢で行うことができる。
【0013】
なお、本発明の幕板構造では、幕板本体とカバー部材とを一体的に形成することにより、構成の簡素化を図り、ひいては製造コストの低減を図ることができる。ただし、幕板本体とカバー部材とを別体に形成しても、柄の部分が幕板本体の下端部分と干渉しないように比較的長い包丁も立てた状態で収納するという本発明の効果が得られることはいうまでもない。
【0014】
また、本発明では、上述の幕板構造をキッチンに適用して、幕板本体の直下に取り付けられた扉の内側面に包丁を立てた状態で収納するための包丁収納ユニットを取り付ける場合、包丁収納ユニットは、前側に設けられた第1収納部と奥側に設けられた第2収納部とを有することが好ましい。この構成では、たとえば柄の部分が幕板本体の下端部分と干渉しないように比較的長い包丁を第1収納部に収納し、柄の部分がカバー部材の下端部分と干渉しないように比較的短い包丁を第2収納部に収納することができるので、収納効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるキッチンの構成を概略的に示す斜視図である。本実施形態では、システムキッチンに対して本発明の幕板構造を適用している。図1を参照すると、本実施形態のシステムキッチンSKは、床Fの上に載置されたベースキャビネットBCを備えている。
【0016】
ベースキャビネットBCの上部には、システムキッチンSKに向かって左側から加熱調理部(ガスコンロ、IHコンロなど)1と、一対のカウンタ2aおよび2bとが設けられ、この一対のカウンタ2aと2bとの間にはシンク3が設けられている。また、シンク3に隣接して、たとえば湯水混合型の水栓4が設けられている。ベースキャビネットBCは、4つのキャビネット5〜8を備えている。
【0017】
すなわち、加熱調理部1の下方にはキャビネット5が、加熱調理部1とシンク3との間のカウンタ2aの下方にはキャビネット6が、シンク3の下方にはシンクキャビネット7が、シンク3よりも端部側のカウンタ2bの下方にはキャビネット8がそれぞれ設けられている。キャビネット5は、加熱調理部1の直下に設けられた引出し収納部11と、その下方に設けられた下段引出し収納部12とから構成されている。
【0018】
キャビネット6は、カウンタ2aの直下に設けられた引出し収納部13と、その下方に設けられた下段引出し収納部14とから構成されている。シンクキャビネット7は、シンク3の直下に設けられた引出し収納部15と、その下方に設けられた下段引出し収納部16とから構成されている。キャビネット8は、カウンタ2bの直下に設けられた引出し収納部17と、その下方に設けられた下段引出し収納部18とから構成されている。
【0019】
本実施形態では、シンクキャビネット7において、引出し収納部15の引出し前板(すなわちキャビネットとしての引出し収納部15の扉)15aの内側面(後面)に、包丁20を収納するための包丁収納ユニット21(図中破線で示す)が取り付けられている。なお、シンクキャビネット7の引出し収納部15は、引出し前板15aと、一対の側板15bおよび15cと、底板15dと、背板(不図示)とから構成されている。引出し前板15aの外側面(前面)には、把手15eが取り付けられている。
【0020】
図2は、本実施形態の包丁収納ユニットの構成を概略的に示す斜視図であって、奥側から包丁収納ユニットを見た図である。図3は、本実施形態の包丁収納ユニットの構成を概略的に示す斜視図であって、手前側から包丁収納ユニットを見た図である。上述したように、本実施形態の包丁収納ユニット21は、たとえばビスのような締結手段を介して、引出し前板15aに取り付けられる。
【0021】
具体的に、包丁収納ユニット21は、図2および図3に示すように、前側(引出し前板15a側)に設けられた第1収納部21aと、第1収納部21aの奥側に隣接して設けられた第2収納部21bと、第1収納部21aおよび第2収納部21bの横方向に隣接して設けられた第3収納部21cとにより構成されている。第1収納部21aは、横方向に沿って並んだ横方向に細長い複数(図では3つ)の差込口21aaを有し、この差込口21aaを介して比較的長い包丁20aが鉛直方向に沿って立てた状態で収納される。
【0022】
第2収納部21bは、横方向に沿って並んだ横方向に細長い複数(図では3つ)の差込口21baを有し、この差込口21baを介して比較的短い包丁(果物ナイフを含む)20bが鉛直方向に沿って立てた状態で収納される。第3収納部21cは、横方向に細長い比較的大きな矩形状の開口部を有する収納ラックであって、たとえばラップやホイルや菜箸や他の適当な調理道具などが収納される。包丁収納ユニット21に収納ラック21cを付設することにより、第1収納部21aおよび第2収納部21bの横の空間をデッドスペースにすることなく有効活用することができる。
【0023】
図4は、本実施形態の幕板構造およびその周辺の構成を概略的に示す断面図である。図5は、図4のA部の拡大詳細図であって、本実施形態の幕板構造の構成を拡大して示す断面図である。図6は、本実施形態の幕板構造の作用効果を従来技術に比して説明する図である。図4および図5を参照すると、本実施形態の幕板構造30は、シンク3の前面3aの上側部分を覆うための幕板本体31と、幕板本体31の内側面から所定距離だけ奥側に垂下してシンク3の前面3aの下側部分を覆うためのカバー部材32とを備えている。
【0024】
具体的に、カバー部材32は、たとえば適当な樹脂材料により幕板本体31と一体的に形成され、幕板本体31の下端から奥側に突出する突出部32aと、幕板本体31の内側面から所定距離だけ突出した位置で突出部32aの先端から鉛直方向に垂れ下がる垂下部32bとにより構成されている。ここで、カバー部材32の垂下部32bは、第1収納部21aに立てた状態で収納された比較的長い包丁20aの柄の部分と第2収納部21bに立てた状態で収納された比較的短い包丁20bの柄の部分との間に向かって垂れ下がり、垂下部32bの下端は第2収納部21bに立てた状態で収納された比較的短い包丁20bの柄の上端よりも高く設定されている。
【0025】
以上のように、本実施形態では、システムキッチンSKにおいて、シンク3の前面3aの上側部分を覆うための幕板本体31と、幕板本体31の内側面から所定距離だけ奥側に垂下してシンク3の前面3aの下側部分を覆うためのカバー部材32とを備えているので、幕板本体31の縦方向の幅寸法を比較的小さく抑えつつ、幕板本体31とカバー部材32との協働作用により外部からシンク3の前面3aへの視線を確実に遮ることができ、ひいてはシンク3の直下の扉(すなわち引出し前板)15aを開けたときにキャビネット(すなわち引出し収納部)15の内部の美観を保つことができる。
【0026】
その結果、図6(a)に示すようにシンク3の直下に設置されるキャビネット15の有効高さが比較的小さい場合にも、柄の部分が幕板本体31の下端部分と干渉しないように比較的長い包丁20aを立てた状態で収納することが可能になる。これに対し、図6(b)に示すように幕板41だけでシンク3の前面を覆う従来技術では、幕板41の縦方向の幅寸法が比較的大きくなり、比較的長い包丁20aを立てた状態で収納しようとすると柄の部分が幕板41の下端部分と干渉するため、比較的長い包丁20aを斜め状態で収納せざるを得ない。
【0027】
すなわち、本実施形態の幕板構造30は、たとえばシンク3の直下に設置されるキャビネット15の有効高さが比較的小さい場合にも、包丁20aを立てた状態で収納する包丁収納ユニット21をキャビネット15の扉15aの内側面に取り付けることを可能にする。こうして、腰を比較的大きく屈めなくても包丁20aの柄の部分を把持することができ、ひいては包丁20aの取出し動作や収納動作などを楽な姿勢で行うことができる。
【0028】
また、本実施形態の幕板構造30では、幕板本体31とカバー部材32とを一体的に形成しているので、構成の簡素化を図り、ひいては製造コストの低減を図ることができる。ただし、これに限定されることなく、幕板本体31とカバー部材32とを別体に形成しても、柄の部分が幕板本体31の下端部分と干渉しないように比較的長い包丁20aも立てた状態で収納するという効果が同様に得られる。
【0029】
また、本実施形態では、包丁収納ユニット21が前側に設けられた第1収納部21aと奥側に設けられた第2収納部21bとを有し、柄の部分が幕板本体31の下端部分と干渉しないように比較的長い包丁20aを第1収納部21aに収納し、柄の部分がカバー部材32の下端部分と干渉しないように比較的短い包丁20bを第2収納部21bに収納することができるので、高い収納効率が得られる。
【0030】
なお、上述の実施形態では、包丁収納ユニット21が、包丁を収納するための2つの収納部21aおよび21bと、たとえばラップやホイルや菜箸などを収納するための1つの収納ラック21cとを備えている。しかしながら、これに限定されることなく、包丁収納ユニットの構成については本発明の範囲内において様々な変形例が可能である。
【0031】
また、上述の実施形態では、シンクキャビネット7が、シンク3の直下に設けられた引出し収納部15と、その下方に設けられた下段引出し収納部16とから構成されている。しかしながら、これに限定されることなく、シンク3の下方の構成については本発明の範囲内において様々な変形例が可能である。
【0032】
また、上述の実施形態では、システムキッチンSKに対して本発明の幕板構造30を適用し、幕板本体31の直下の扉15aの内側面に包丁収納ユニット21を取り付けている。しかしながら、包丁収納ユニットに限定されることなく、たとえば包丁以外のものを収納するための収納ユニットや他の適当な物体を取り付ける場合にも同様に本発明を適用することができる。すなわち、キッチンに限定されることなく、シンクの前面を覆う一般的な幕板構造に対して本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態にかかるキッチンの構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本実施形態の包丁収納ユニットの構成を概略的に示す斜視図であって、奥側から包丁収納ユニットを見た図である。
【図3】本実施形態の包丁収納ユニットの構成を概略的に示す斜視図であって、手前側から包丁収納ユニットを見た図である。
【図4】本実施形態の幕板構造およびその周辺の構成を概略的に示す断面図である。
【図5】図4のA部の拡大詳細図であって、本実施形態の幕板構造の構成を拡大して示す断面図である。
【図6】本実施形態の幕板構造の作用効果を従来技術に比して説明する図である。
【符号の説明】
【0034】
SK システムキッチン
BC ベースキャビネット
1 加熱調理部
2 カウンタ
3 シンク
4 水栓
7 シンクキャビネット
15 包丁収納ユニットが取り付けられる引出し収納部
20 包丁
21 包丁収納ユニット
30 幕板構造
31 幕板本体
32 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクの前面を覆う幕板構造であって、
前記シンクの前面の上側部分を覆うための幕板本体と、
前記幕板本体の内側面から所定距離だけ奥側に垂下して前記シンクの前面の下側部分を覆うためのカバー部材とを備えていることを特徴とする幕板構造。
【請求項2】
前記幕板本体と前記カバー部材とは一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の幕板構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の幕板構造を有するキッチンにおいて、
前記幕板本体の直下に取り付けられた扉と、
前記扉の内側面に取り付けられて包丁を立てた状態で収納するための包丁収納ユニットとを備えていることを特徴とするキッチン。
【請求項4】
前記包丁収納ユニットは、前側に設けられて比較的長い包丁を収納するための第1収納部と、奥側に設けられて比較的短い包丁を収納するための第2収納部とを有することを特徴とする請求項3に記載のキッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−341002(P2006−341002A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171392(P2005−171392)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】