説明

平板型固定酸化物形燃料電池

【課題】本発明は、単セル9の温度が作動温度以上に昇温しても、稼働状態時に、自動的にこの単セル9の両セパレータ8を導通させて短絡することにより、他の単セル9のセル電圧を維持して電力を供給し続けることが可能な固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】
固体電解質層2の両面に燃料極層3と空気極層4を配置して発電セル5を構成し、発電セル5の外側に燃料極集電体6と空気極集電体7を配置して、集電体6,7の外側にセパレータ8を配置してなる単セル9を複数積層して燃料電池スタック1を構成し、当該燃料電池スタック1に反応用ガスを供給して発電反応が生じる固体酸化物形燃料電池において、上記積層方向に対向するセパレータ8間の発電セル5から外れた位置に、単セル9の温度が作動温度以上に昇温した際に、両セパレータ8を電気的に短絡させる短絡部材を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電セルとセパレータを交互に複数積層した構造の固体酸化物形燃料電池に関し、特に、少なくとも1つの単セルが発電セルの破損、電極剥離により抵抗が増加して単セルの温度が作動温度以上に上昇しても、この単セルの発電セルを電気的に除外することにより、他の単セルのセル電圧を維持して電力を供給し続けることが可能な固体酸化物形燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料の有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する固体酸化物形燃料電池が高効率でクリーンな発電装置として注目されている。この固体酸化形燃料電池は、固体電解質層の両面に燃料極層(アノード)と空気極層(カソード)を配置して成る発電セルの外側に燃料極集電体と空気極集電体を配置し、これらの集電体の外側にセパレータを配置した単セルを複数積層することによりスタック化されている。
【0003】
上記固体酸化形燃料電池では、反応用ガスとして空気極層側に酸化剤ガスが供給され、燃料極層側に燃料ガスが供給されることにより発電反応が生じている。このため、空気極集電体と燃料極集電体は、反応ガスが空気極層と燃料極層の界面に到達することができるように、いずれも多孔質の層で形成されている。
【0004】
そして、発電セル内において、空気極層側に供給された酸素は、空気極集電体内の気孔を通って空気極層の界面近傍に到達し、この部分で空気極層から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極層に向かって固体電解質層内を拡散移動し、燃料極層との界面近傍に到達した酸化物イオンはこの部分で燃料ガスと反応して反応生成物(H2O、CO2等)を生じ、燃料極層に電子を放出する。電極反応で生じた電子は、別ルートの外部負荷にて電力として取り出すことができる。
【0005】
この際、中温型の固体酸化物形燃料電池は、650℃〜800℃という高温で作動する。
このため、昇温時、又は降温時において、固体酸化物形燃料電池を均等に昇温・降温しないと、発電セルの面内に温度分布が生じ、熱応力で発電セルに割れが生じる可能性があった。
【0006】
このため、セパレータを介在して多数の発電セル積層した直列型固体酸化物形燃料電池では、少なくとも1つの発電セルが破損すると、稼働時、破損した発電セルを有する単セルにおいて、空気極層に供給された酸化剤ガスが発電セルの割れから燃料極層側へと移動して、酸化剤ガスと燃料極層に供給された燃料ガスにより燃焼反応が生じる。そして、この燃焼反応により燃料ガスである水素が減少するために、空気極層から電子を受け取った酸素が燃料極層に到達して発電反応が生じても電子が殆ど放出されなくなり、この単セルのセル電圧が極端に低下してしまう。
【0007】
他方、作動温度の低下などにより単セルのセル電圧が0.6V程度まで低下すると、燃料極層に含まれるニッケル等の金属が酸化する恐れがあり、燃料極層に含まれるニッケル等の金属が酸化すると、ニッケル等の金属が酸化物状体で固体電解質層に焼き付けられ、発電時の還元により収縮し電極が剥離する可能性があった。これは、固体電解質層と燃料極層の材料の熱膨張係数の差により生じる応力によるものである。
【0008】
そして、燃料極層に含まれるニッケル等の金属が酸化すると、燃料極層における活性化過電圧が上昇するために、この単セルのセル電圧が極端に低下してしまう。
【0009】
このように、発電セルの破損、又は電極層の剥離が生じて単セルの抵抗が極端に増加すると、燃料極層における活性化過電圧が増加して、単セルのセル電圧が極端に低下する。そして、この単セルのセル電圧が低下して最終的にセル電圧が0Vになると、この単セルに電流が流れなくなる。これにより、正常な発電セルで発生した電流がこの単セルを介すことにより流れが遮られて、外部負荷まで電流が流れなくなる。
【0010】
また、単セルの抵抗が増加すると、正常な発電セルより流れてくる電流によりジュール熱が発生する。このジュール熱は、低下したセル電圧と流れてくる電流を掛けた分だけ生じ、この部分の単セルの温度が昇温していく。そして、この単セルの温度が作動温度以上に昇温すると、隣接する単セルの発電セルを破損してしまう恐れがあるという問題点があった。
【0011】
ここで、上記のように電流の流れがなくなることを回避する方法として、発電セルの抵抗が上昇した時点で、燃料電池スタックに流れる電流値を減少させ発熱反応を抑制する方法があるが、電流値を減少させることにより燃料電池スタックから取り出される電力が大きく低下してしまうという問題点があった。
【0012】
これらの問題に対して、下記特許文献1においては、発電セルが破損し抵抗が上昇した時に、固体酸化物形燃料電池を室温まで降温し、発電セルが破損した単セルの両セパレータを覆う導電性を有するテープまたは、導電性を有する金属により形成された両セパレータを覆う中空環状体を用いて両セパレータを電気的に短絡することにより、他の単セルのセル電圧を維持して電力を供給し続ける事を可能とするものが提案されている。
【0013】
また、下記特許文献2においては、燃料電池スタックの積層方向に沿って金属端子を設けた棒状体を回動自在に配設して、セル電圧測定線によりセル電圧が低下している単セルを確認し、金属端子の先端を両セパレータに接触させて両セパレータを電気的に短絡することにより、他の単セルのセル電圧を維持して電力を供給し続ける事を可能とするものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−109651号公報
【特許文献2】特開2005−203256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の発明にあっては、導電性を有するテープ、又は中空環状体を取り付けるために、固体酸化物形燃料電池を室温まで降温させ、さらに燃料電池スタックを覆うモジュールを分解する必要があるために、時間と労力が掛るという問題点があった。また、特許文献2に記載の発明にあっては、破損した発電セルの単セルを確認するための電圧測定線や金属端子を有する棒状体を設けるために、装置が構造的に複雑になるという問題点があった。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発電セルの破損や電極の剥離等により抵抗が増加するとともに発熱反応により単セルの温度が作動温度以上に昇温しても、稼働時に、自動的に単セルの両セパレータを短絡することにより、他の単セルのセル電圧を維持して電力を供給し続けることが可能になるとともに、隣接する単セルの発電セルの破損を防ぐことができる固体酸化物形燃料電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、固体電解質層の両面に燃料極層と空気極層を配置して発電セルを構成し、この発電セルの外側に燃料極集電体と空気極集電体を配置して、これらの集電体の外側にセパレータを配置してなる単セルを複数積層して燃料電池スタックを構成するとともに、当該燃料電池スタックに反応用ガスを供給して発電反応が生じる固体酸化物形燃料電池において、上記積層方向に対向する上記セパレータ間の上記発電セルから外れた位置に、上記単セルの温度が作動温度以上に昇温した際に、両セパレータを電気的に導通させて短絡させる短絡部材が設けたことを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項2に記載の本発明は、上記短絡部材は、一端部が一方の上記セパレータに固定されるとともに、他端部と他方の上記セパレータとの間に隙間が形成され、上記作動温度以上に昇温した際に、溶融することにより伸長して他端部が他方のセパレータに溶着する金属製のペレットであることを特徴とするものである。
【0019】
さらに、請求項3に記載の本発明は、上記短絡部材は、一端部が一方の上記セパレータに固定される金属製のペレットと、一端部が他方の上記セパレータに固定される金属製のペレットと、両ペレットの他端部同士を接合する金属粒を含有するガラスペーストとからなり、上記作動温度以上に昇温した際に、ガラスペーストと金属粒が溶融して溶融した金属粒が両ペレットの他端部同士を溶着するものであることを特徴とするものである。
【0020】
加えて、請求項4に記載の本発明は、上記作動温度は、650℃以上であり、800℃以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明によれば、上記積層方向に対向する上記セパレータ間の発電セルから外れた位置に、上記単セルの温度が作動温度以上に昇温した際に、両セパレータを電気的に導通して短絡させる短絡部材を設けているために、短絡部材がバイパス回路となり、作動温度以上に温度が上昇した単セルの発電セルをバイパスして、隣接する2つの単セルが導通する。これにより、他の単セルのセル電圧を維持して電力を供給し続けることが可能となるとともに隣接する単セルの発電セルの破損を防ぐことができる。
【0022】
特に、請求項2に記載の発明によれば、短絡部材は、一端部が一方の上記セパレータに固定されるとともに、他端部と他方の上記セパレータとの間に隙間が形成され、上記作動温度以上に昇温した際に、溶融することにより伸長して他端部が他方のセパレータに溶着する金属製のペレットで構成されているために、単セルが上記作動温度以上に昇温した際に、両セパレータを電気的に導通させて短絡させることが可能である。
【0023】
また、請求項3に記載の発明によれば、短絡部材は、一端部が一方の上記セパレータに固定される金属製のペレットと、一端部が他方の上記セパレータに固定される金属製のペレットと、両ペレットの他端部同士を接合する金属粒を含有するガラスペーストとからなり、上記作動温度以上に昇温した際に、ガラスペーストと金属粒が溶融して溶融した金属粒が両ペレットの他端部同士を溶着するために、単セルが上記作動温度以上に昇温した際に、両セパレータを電気的に導通させて短絡させることが可能である。
【0024】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、上記作動温度は、650℃以上であり、800℃以下であるために、800℃以上で溶融する金属等を短絡部材として用いることにより、短絡部材が両セパレータを短絡させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における固体酸化物形燃料電池の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明における固体酸化物形燃料電池の第1施形態の単セル及び短絡部材を示す拡大断面図である。
【図3】本発明における固体酸化物形燃料電池の第2実施形態の単セル及び短絡部材を示す拡大断面図である。
【図4】本発明における固体酸化物形燃料電池の第2実施形態の短絡部材を示す斜視図である。
【図5】本発明における固体酸化物形燃料電池の第3実施形態の単セル及び短絡部材を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
まず、本発明に係わる固体酸化物形燃料電池の第1実施形態について説明する。図1に示すように、この固体酸化物形燃料電池は、円形状の平板型のものであり、固体電解質層2の両面に燃料極層3と空気極層4を配した発電セル5と、燃料極層3の外側に配した燃料極集電体6と、空気極層4の外側に配した空気極集電体7と、各集電体6、7の外側に配したセパレータ8によって単セル9が構成されている。そして、単セル9が鉛直方向に複数積層することにより燃料電池スタック1が構成されている。
【0027】
ここで、固体電解質層2は、イットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンガレート系などで構成されている。
【0028】
また、燃料極層3は、Ni、Co等の金属、あるいはNi−YSZ、Co−YSZ等のサーメットで構成され、空気極層4はLaMnO3、LaCoO3、または、これらのLaの一部をSr、Ca等に置換した固溶体(LSM、LSC、SSC等)で構成されている。
【0029】
そして、燃料極集電体6はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体7はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成されている。これら集電体を構成する多孔質金属板は、集電機能、ガス透過機能、ガス拡散機能、クッション機能、熱膨脹差吸収機能等を兼ね備えている。
【0030】
一方、セパレータ8は、ステンレスで構成されている。なお、このセパレータ8の表面には、650℃程度の低温、中温作動において、殆ど電気抵抗が増加せず、良好な導電性を維持する銀めっきが成膜されている。
【0031】
上記セパレータ8は、発電セル5間を電気的に接続すると共に、発電セル5に対してガスを供給する機能を有するもので、燃料ガスをセパレータ8の外周面から導入してセパレータ8の燃料極集電体6に対向する面から吐出させる燃料ガス通路10と、酸化剤ガスをセパレータ8の外周面から導入してセパレータ8の空気極集電体 7に対向する面から吐出させる酸化剤ガス通路11とを有している。
【0032】
そして、燃料電池スタック1の側方には、各セパレータ8の燃料通路10に接続管12を通して燃料ガスを供給する燃料用マニホールド13と、各セパレータ8の酸化剤ガス通路11に接続管14を通して酸化剤ガスを供給する酸化剤用マニホールド15とが、発電セル5の積層方向に延在して設けられている。
【0033】
さらに、このセパレータ8は、発電セル5の径に比べて大径に形成されており、これにより、各セパレータ8の外周部に発電セル5より外方に突出する突出部16が形成されている。
【0034】
そして、図2に示すように、セパレータ8Aの突出部16には、円柱状に形成された金属ペレット21(短絡部材)の一端部が接合されており、金属ペレット21の他端部とセパレータ8Bとの間に0.3〜1mm程度の隙間が設けられている。
【0035】
この金属ペレット21は、銀を50〜90%の割合で含有し、不純物として銅を含有した銀ロウにより構成されている。なお、この金属ペレット21は、銀を90%の割合にして含有することが好ましい。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明に係わる固体酸化物形燃料電池の第2実施形態について説明する。本実施形態は、短絡部材である金属ペレット21と構成の異なる短絡部材を設けている点が第1実施形態と異なっている。燃料電池スタック1の構成等の第1実施形態と同一の構成については、同一符号を用いることにより説明を省略する。
【0037】
本実施形態では、図3、図4に示すように、セパレータ8Aの突出部16に円柱状に形成された金属ペレット17Aの一端部が固定され、セパレータ8Bの突出部16に円柱状に形成された金属ペレット17Bの一端部が固定されており、両金属ペレット17A,17Bの他端部同士が金属粒18を含有する円柱状であるとともに厚さ100μmに形成されたガラスペースト19によって接合されている。
【0038】
この金属ペレット17A,17Bは、ステンレスで構成されている。また、金属粒18は、銀で構成されており、ガラスペースト19がSiO2・B23・A123の混合物で構成されている。そして、ガラスペースト19は、金属粒18を20〜50%の割合で含有している。なお、ガラスペースト19は、金属粒を30%の割合にして含有することが好ましい。
【0039】
(第3実施形態)
次に、本発明に係わる固体酸化物形燃料電池の第3実施形態について説明する。本実施形態は、単セル9が水平方向に積層されている点が第1実施形態と異なっている。なお、燃料電池スタック1の構成等の第1実施形態と同一の構成については、同一符号を用いることにより説明を省略する。
【0040】
本実施形態は、図5に示すように、セパレータ8Aの突出部16の発電セル5側に円柱状に形成された金属ペレット21(短絡部材)の一端部が接合されている。そして、セパレータ8Bの突出部16の外周縁側であって、かつ金属ペレット21の鉛直下方となる位置に、平板状の短絡部材受け部20が形成されている。
【0041】
この短絡部材受け部20は、金属ペレット21が接合した際にセパレータ8A、8Bを導通させるためのもので、導電性を有する金属で構成されている。なお、短絡部材受け部20は、セパレータと同様にステンレスで構成することが好ましい。
【0042】
また、金属ペレット21は、第1実施形態と同様に銀を50〜90%の割合で含有し、不純物として銅を含有した銀ロウにより構成されている。なお、金属ペレット21は、銀を90%の割合にして含有することが好ましい。
【0043】
以上の構成からなる固体酸化物形燃料電池においては、作動時、各マニホールド13、15に、外部から供給される反応用ガスとしての燃料ガスと酸化剤ガスを供給する。すると、この各反応用ガスは、各セパレータ8のガス孔より各ガス通路10、11を介して燃料極集電体6側と空気極集電体7側に吐出して、これら集電体6、7の内部を拡散・移動する。さらに、この各反応ガスが各発電セル5の各電極3、4面に誘導されることにより、発電反応が生じる。そして、この発電反応において、発電セル5内の内部抵抗等により生じるジュール熱がセパレータ8の側面から外部に放出されている。
【0044】
この結果、上記の構成の固体酸化物形燃料電池は、作動温度が650〜800℃程度となる。
【0045】
ここで、仮に、発電セル5の破損、あるいは燃料極層3の剥離が生じて単セル9の抵抗が極端に増加すると、正常な発電セル5より流れてくる電流によりジュール熱が発生する。そして、このジュール熱により、この部分の単セル9の温度が800℃〜950℃程度に昇温する。
【0046】
そして、第1実施形態の固体酸化物形燃料電池においては、セパレータ8A、8Bの突出部16間に、銀ロウにより構成された金属ペレット21から成る短絡部材を設けているために、一端部がセパレータ8Aに固定された金属ペレット21が、単セル9の温度が900℃以上に昇温すると溶融し、伸長して他端部がセパレータ8Bと接合することにより、両セパレータ8A、8Bが電気的に導通して短絡する。これにより、この金属ペレット21がバイパス回路となり、作動温度以上に温度が上昇した単セル9の発電セル5をバイパスし、隣接する2つの単セル9同士が導通することにより、他の単セル9のセル電圧を維持して電力を供給し続けることが可能になる。
【0047】
また、第2実施形態の固体酸化物形燃料電池においても、セパレータ8A、8Bの突出部16間に金属ペレット17A,17B及び銀から成る金属粒18を含有するガラスペースト19からなる短絡部材を設けているために、一端部がセパレータ8A,8Bに固定された金属ペレット17A、17Bの他端部同士を接合している金属粒18を含有するガラスペースト19が、単セル9の温度が800℃以上に昇温することにより溶融して、溶融した銀から成る金属粒18が金属ペレット17A、17Bの他端部同士に溶着する結果、両セパレータ8A、8Bが電気的に導通して短絡する。これにより、金属粒18により接合された両ペレット17A、17Bがバイパス回路となり、作動温度以上に温度が上昇した単セル9の発電セル5をバイパスし、隣接する2つの単セル9同士が導通することにより、他の単セル9のセル電圧を維持して電力を供給し続けることが可能になる。
【0048】
さらに、第3実施形態の固体酸化物形燃料電池においても、セパレータ8A、8Bの突出部16間に銀ロウにより構成された金属ペレット21からなる短絡部材を設けているために、一端部がセパレータ8Aの突出部16の発電セル5寄りに固定された金属ペレット21が、単セル9の温度が900℃以上に昇温することにより溶融し、自重によりセパレータ8Bの突出部16の外方寄りに形成された短絡部材受け部20と接合する結果、両セパレータ8A、8Bが電気的に導通して短絡する。これにより、金属ペレット21と短絡部材受け部20とがバイパス回路となり、作動温度以上に温度が上昇した単セル9の発電セル5をバイパスして、隣接する2つの単セル9同士が導通することにより、他の単セル9のセル電圧を維持して電力を供給し続けることが可能になる。
【0049】
そして、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態の固体酸化物形燃料電池において、温度が上昇した単セル9の両セパレータ8A、8Bを短絡することにより、この単セル9の発熱反応がなくなる。これにより温度が上昇した単セル9の作動温度が650℃〜800℃となり、温度が上昇した単セル9と隣接する単セル9の発電セル5の破損を防ぐことができる。さらに、溶融した銀ロウから成る金属ペレット21および、溶融した金属粒18が凝固するために、両セパレータ8A、8bを短絡させた状態で維持することが可能となる。
【0050】
さらに、稼働状態において、発電セル5の破損や電極剥離などにより単セル9の温度が作動温度以上である800℃以上なっても、自動的に短絡部材がこの単セル9の両セパレータ8A,8Bを短絡させるために、従来のように補修作業に伴う発電の停止を回避することが可能となる。
【0051】
また、単セル9のセパレータ8の突出部16に短絡部材を設けているために、従来のように電圧測定機や棒状体等を取り付けるためにスペースを設ける等、装置的に複雑になるということが無くなる。
【0052】
なお、第1実施形態、第2実施形態及び、第3実施形態の短絡部材の金属の主成分として銀を用いて説明したが、例えば金、白金、ニッケル等の純金属、または、ランタンクロマイト等のセラミックのように導電性を有するものであれば代用可能である。
【0053】
また、第2実施形態の短絡部材を、両金属ペレット17A、17Bの一端部を両セパレータ8A、8Bに固定し、金属粒18を含有するガラスペースト19により他端部を接合する構成となっているが、金属ペレット17Aを長くして一端部をセパレータ8Aに固定し、金属ペレット17Aの他端部とセパレータ8Bの間に金属粒18を含有するガラスペースト19を配置して接合させたものであっても対応可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 燃料電池スタック
2 固体電解質
3 燃料極層
4 空気極層
5 発電セル
6 燃料極集電体
7 空気極集電体
8 セパレータ
9 単セル
16 突出部
17A 金属ペレット(一端部が一方のセパレータに固定される金属製のペレット)
17B 金属ペレット(一端部が他方のセパレータに固定される金属製のペレット)
18 金属粒
19 ガラスペースト
21 金属ペレット(短絡部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層の両面に燃料極層と空気極層を配置して発電セルを構成し、この発電セルの外側に燃料極集電体と空気極集電体を配置して、これらの集電体の外側にセパレータを配置してなる単セルを複数積層して燃料電池スタックを構成するとともに、当該燃料電池スタックに反応用ガスを供給して発電反応が生じる固体酸化物形燃料電池において、
上記積層方向に対向する上記セパレータ間の上記発電セルから外れた位置に、上記単セルの温度が作動温度以上に昇温した際に、両セパレータを電気的に導通させて短絡させる短絡部材を設けたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
上記短絡部材は、一端部が一方の上記セパレータに固定されるとともに、他端部と他方の上記セパレータとの間に隙間が形成され、上記作動温度以上に昇温した際に、溶融することにより伸長して他端部が他方の上記セパレータに溶着する金属製のペレットであることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
上記短絡部材は、一端部が一方の上記セパレータに固定される金属製のペレットと、一端部が他方の上記セパレータに固定される金属製のペレットと、上記両ペレットの他端部同士に接合された金属粒を含有するガラスペーストとからなり、上記作動温度以上に昇温した際に、上記ガラスペーストと上記金属粒が溶融して、溶融した上記金属粒が上記両ペレットの他端部同士を溶着するものであることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
上記作動温度は、650℃以上であり、800℃以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−186574(P2010−186574A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28361(P2009−28361)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】