説明

平版インキ印刷方法

【課題】
本発明は、黄、紅、藍、墨のプロセス4色から成る平版インキ印刷方法であって
、4色で高彩度、且つ、高範囲の色再現領域が可能な平版印刷方法の提供。
【解決手段】
黄、紅、藍及び墨インキから選択されるインキを用いる平版印刷方法におい
て、特定の用紙に印刷した場合の黄、紅、藍及び墨インキの各色のL*a*b*値、並びに、黄
、紅及び藍インキから選択される2色をベタ刷り重ねした場合の各色のL*a*b*値、更には
、黄、紅及び藍の3色をベタ刷り重ねした場合のL*a*b*値、また更には、黄、紅、藍及び
墨の4色を刷り重ねした場合のL*a*b*値が特定の範囲内にある黄、紅、藍及び墨インキを
用いることを特徴とする平版印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄、紅、藍、墨のプロセス4色から成る平版インキ印刷方法であって、4色
で高彩度、且つ、高範囲の色再現領域が可能な平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
90年代より始まったIT革命は、印刷現場を取り巻く環境を急速にデジタル化の方向
へと導いてきている。従来の印刷方式のワークフローは、撮影・ポジ・スキャン・データ
・デザイン・EPS(EncapsuLated PostScript)・面付け・フィル
ム・刷版・印刷などの非常に多くの過程からなる。他方、デジタル化された印刷方式のワ
ークフローは、デジタルカメラによる撮影・DTP(Desk Top PubLishi
ng)・CTP(Computer To PLate)・印刷などの過程からなる。デジタ
ル化によって、従来の印刷方式に対し、印刷のワークフローを飛躍的に短縮することに成
功した。また、デジタル化によって、入稿データの「RGB」化が標準となりつつあり、
また、取り扱われるデータがより色再現領域の広いものへと変化しつつあるのが現状であ
る。この様な環境の中で、印刷現場を取り巻く環境の「標準化」ということが重要なポイ
ントとなっており、「ジャパンカラー」も標準化の1つの手段として注目されている。
【0003】
しかし、現在、印刷の主流であるジャパンカラー標準インキを用いた平版オフセット印
刷では、黄インキ、紅インキ、藍インキ、墨インキのプロセス4色(CMYK)インキを
用いる。したがって、平版オフセット印刷を行うには、「RGB」として入稿されたデー
タを、「CMYK」に色変換(色分解)せざるを得ない。プロセス4色インキを用いた平
版オフセット印刷物は、減色混合によって色相が表現されているため、色を重ねるごとに
色相に濁りが生じ、必然的に色再現領域が「RGB」のそれよりも狭くなる。また、撮影
段階の「RGB」色空間の規格の選定によっては、あるいは、「RGB」から「CMYK」
への色変換の方法によっては、色再現がうまくいかない。このように、「RGB」デジタ
ルデータと、プロセス4色(CMYK)インキを用いた印刷物との間の色再現性の差異が
問題となっている。
【0004】
一般的に、色再現領域を広げるためには、各色の理想的な分光反射率曲線に近づける必
要がある。
【0005】
すなわち、人が色を認識する波長領域は400nm〜700nmの光(この波長を可視光線
という)において、黄インキでは、500nm〜700nmの波長領域での反射率が100%
、400nm〜500nmの波長領域での反射率が0%であり、紅インキでは、400nm〜5
00nm、600nm〜700nmの波長領域での反射率が100%、500nm〜600nmの波
長領域での反射率が0%であり、藍インキでは、400nm〜600nmの波長領域での反射
率が100%、600nm〜700nmの波長領域での反射率が0%であることが理想である
と言われている(理想のプロセスインキの分光反射率曲線を表8に示す)。
【0006】
しかし、現状使用されているプロセス4色からなる、黄、紅、藍、墨のオフセット印刷
用インキ組成物の反射スペクトルは理想の反射スペクトルとはかけ離れている。完全反射
しなければならない部分での不必要吸収があるためにインキの濁り成分が存在し、色再現
性を狭めている。
【0007】
特に、紅インキ、藍インキの2色のインキで表現される紫(ブルーバイオレット、RG
Bの「B」にあたる)の領域に関しては、紅インキ、藍インキともに不必要吸収成分が多い
ために、2色を掛け合わせた色相が紫顔料単独のインキで表現される場合よりも、彩度、
明度ともに劣っている。そのため、プロセス4色(YMCK)インキを用いて「RGB」入
稿データの「B」の領域を再現することが困難であった。
【0008】
また、特に、一般的に最終色として印刷される黄インキが不透明であると黄かぶり現象
を起こし、下刷りのインキ各色へ与える影響が大きく、このことも、「RGB」入稿デー
タの再現を難しくしている。したがって、黄インキはできる限り透明であり、他の色と刷
り重ねた時に、濁りのない二次色、三次色が得られるインキであることが望ましい。
【0009】
これらを解決する手段として、特許文献1では高彩度の印刷物が得られる印刷方法とし
て、5〜7色のインキセットを使用する印刷方法が開示されている。この印刷方法におい
ては、インキセットとして、プロセス4色に橙、緑を加えた6色(ヘキサクロム印刷)か
らなるインキセットや、プロセス4色に橙、緑、紫を加えた7色(ハイファイ印刷)から
なるインキセット等が用いられている。
【0010】
ヘキサクロム印刷においては、一次色のみならず、二次色、三次色の濁りを抑え、色再
現領域を広げるための手段として、一部の色のインキに蛍光顔料を含有させる等の方法が
取られている。しかしながら、この方法を用いた場合、印刷適性の劣化(転移不良、光沢
低下等)や耐光性不足による印刷物の褪色等が生じてしまう。
【0011】
また、ハイファイ印刷においては、従来のプロセス4色では再現しきれない橙、緑、紫
の3色相を補うために、これら3色のインキを追加した計7色の印刷方式を用いている。
しかしながら、これらの方法においては、使用するインキの色数が6色、7色となり、印
刷機の胴数が6胴以上である高価な多色印刷機を必要とし、また、6版以上の多色に色分
解した版を必要とする。したがって、これらの方法を新たに始めるためには、巨額な設備
投資と、高度の色分解技術、複雑な色調管理(印刷濃度、見当精度の管理)などが要求さ
れるため、限られた範囲での使用に止まっている。
【0012】
更に、黄インキ、紅インキ、藍インキの3色が理想的な反射スペクトルを有していれば
、この3色の重ね合わせにより墨色の発色が可能であるが、現実のインキでは完全な黒色
とは成らない為に、墨インキを使用したプロセス4色での印刷がなされている。
【0013】
墨インキとしては、顔料成分としてカーボンブラックと藍色〜紫色系補色の組み合わせ
が使用されるのが一般的であるが、これは、カーボンブラック顔料の黒の色調は茶色味の
黒色であり、より黒色感を出したい場合に墨インキの補色として藍系ではフタロシアニン
系顔料やアルカリブルートナー、または紺青などが使用され、紫系ではメチルバイオレッ
ト系化合物が使用されている。また、特許文献2では、墨顔料単独で青味黒色感を有する
ような顔料を使用した印刷方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−260516号公報
【特許文献2】特開2002−265837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような従来の技術における問題点のいずれかを解決するためになされた
ものである。すなわち、本発明の課題は、ISO規格のジャパンカラー標準インキを印刷
した場合よりも、演色領域(ガモット)を広げることができるプロセス4色のインキを使
用した印刷方法であって、ジャパンカラー標準インキを使用した印刷物よりも、より「R
GB」の色再現領域に限りなく近い色領域を再現することのできる印刷方法を提供するこ
とである。また、本発明のさらに他の課題は、これらの印刷方法に好ましく使用すること
ができるインキセット及びインキを提供すること、また、これらの印刷方法により印刷さ
れた印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明は、黄、紅、藍及び墨インキから選択されるインキを用いる平版印刷方
法において、L*が90〜96、a*が−1.5〜2.5、b*が−1.6〜2.4の範囲内に
ある用紙(ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート
両面四六判/110kg」)に印刷した場合の黄、紅、藍及び墨インキの各色のL*a*b*値
、並びに、黄、紅及び藍インキから選択される2色をベタ刷り重ねした場合の各色のL*a*
b*値、更には、黄、紅及び藍の3色をベタ刷り重ねした場合のL*a*b*値、また更には、黄
、紅、藍及び墨の4色を刷り重ねした場合のL*a*b*値が下記の範囲内にある黄、紅、藍及
び墨インキを用いることを特徴とする平版印刷方法に関するものである。
【0016】
L*a*b*値は、黄インキ L*:87〜95、a*:−4〜−12、b*:90〜110;紅イ
ンキ L*:47〜55、a*:75〜83、b*:−14〜−20;藍インキ L*:50〜5
8、a*:−40〜−46、b*:−45〜−53;墨インキ L*:7〜15、a*:−1.5
〜1.5、b*:−1.5〜1.5;紅及び黄インキの刷り重ね L*:49〜56、a*:6
3〜73、b*:52〜68;藍及び黄インキの刷り重ね L*:45〜53、a*:−74〜
−84、b*:23〜33;藍及び紅インキの刷り重ね L*:19〜31、a*:25〜40
、b*:−60〜−70;黄、紅及び藍インキの刷り重ね L*:17〜27、a*:−3〜−
14、b*:−5〜5;黄、紅、藍及び墨インキの刷り重ね L*:1〜10、a*:−4〜4
、b*:−3〜3である。
【0017】
さらに、本発明は、上記記載の平版印刷方法において、(a)黄、(b)紅、(c)藍の
反射率が、下記であることを特徴とする平版印刷方法に関するものである。
【0018】
(a)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき
に、400nm〜480nmの波長領域が1〜20%、540nm〜700nmの波長領
域での反射率が90〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする着色成分をイ
ンキの全重量に対して5〜15重量%含有する黄インキ。
【0019】
(b)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき
に、400nm〜500nmの波長領域での最大反射率が50%〜100%、500nm
〜560nmの波長領域での反射率が1〜20%、640nm〜700nmの反射率が9
0%〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする着色成分をインキの全重量に
対して15〜30重量%含有する紅インキ。
【0020】
(c)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき
に、420nm〜530nmの波長領域の反射率が50〜100%、600nm〜700
nmの反射率が1〜20%の反射スペクトルを有することを特徴とする着色成分をインキ
の全重量に対して10〜25重量%含有する藍インキ。
【0021】
さらに、本発明は、上記記載の平版印刷方法に用いられるインキセットに関するもので
ある。
【0022】
さらに、本発明は、上記記載の平版印刷方法を用いて印刷した印刷物に関するものであ
る。
【発明の効果】
【0023】
本発明が提供する平版インキ組成物を用いることにより、従来、ジャパンカラー標準イ
ンキの黄、紅、藍、墨プロセス4色に加えて、橙、緑、紫等を加えた6色、7色印刷で表
現していたRGBの色再現領域を、ジャパンカラー標準インキよりも演色領域の広い黄、
紅、藍、墨の4色で限りなく近づけることが可能となる。
【0024】
また、本発明では、印刷物の色再現領域を向上させる手段として蛍光顔料を使用してい
ないため、印刷適性、印刷物の経時での褪色等を劣化させることなく、高彩度の印刷物を
得ることができる。
【0025】
また、本発明では、高彩度の黄、紅、藍インキと黒色感の高い墨インキとの組み合わせ
により、印刷物の明度(L*値)の範囲が広い印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0027】
本発明は、顔料と、合成樹脂、植物油、石油系溶剤とを必要に応じてステアリン酸アル
ミニウム、アルミキレート等のゲル化剤と共に加熱溶解したビヒクル成分と、耐摩擦剤等
の補助剤とからなる黄、紅、藍、墨の4色からなる平版インキを使用し、本発明のインキ
は、従来公知の方法によって製造することができる。
【0028】
本発明に使用するインキは、ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(
株)製「特菱アート両面四六判/110kg」に印刷し、黄、紅、藍、墨の各色をグレタ
グマクベス社製SpectroEye(光源D50、2度視野、測定光学45°/0°、濃度基DIN16536、偏
光フィルター無し、絶対白紙基準)にて測定した際の濃度値が、黄が1.30〜2.00
、紅が1.40〜2.00、藍が1.40〜2.05、墨が1.60〜2.05の範囲内
で単独でベタ印刷した場合、各色のグレタグマクベス社製SpectroEye(光源D50、2度視野
、測定光学45°/0°、偏光フィルター無し、絶対白紙基準)にて測定したL*a*b*値が、黄
インキで、L*:87〜95、好ましくは88〜93、a*:−4〜−12、好ましくは−5
〜−10、b*:90〜110、紅インキで、L*:47〜55、好ましくは48〜54、a*
:75〜83、好ましくは76〜82、b*:−14〜−20、好ましくは−15〜−19
、藍インキで、L*:50〜58、好ましくは51〜57、a*:−40〜−46、好ましく
は−41〜−44、b*:−45〜−53、好ましくは−46〜−52、墨インキで、L*:
7〜15、好ましくは8〜15、a*:−1.5〜1.5、好ましくは−1〜1、b*:−1
.5〜1.5、好ましくは−1〜1の範囲内になることを特徴とする。
【0029】
並びに、黄、紅及び藍インキから選択される2種をベタ刷り重ねした場合の各色のL*a*
b*値、更には、黄、紅及び藍インキ3色をベタ刷り重ねした場合のL*a*b*値、及び黄、紅
、藍、墨の4色をでベタ刷り重ねした場合のL*a*b*値が、紅インキ×黄インキの刷り重ね
で、L*:49〜56、a*:63〜70、b*:52〜68、藍インキ×黄インキの刷り重ね
で、L*:45〜53、a*:−74〜−84、b*:23〜33、藍インキ×紅インキの刷り
重ねで、L*:19〜31、a*:25〜40、b*:−60〜−70、更には、藍インキ×紅
インキ×黄インキ3色のベタ重ね刷りで、L*:17〜27、好ましくは18〜26、a*:
−3〜−14、好ましくは−4〜−11、b*:−5〜5、好ましくは−3〜3、また更に
は、墨インキ×藍インキ×紅インキ×黄インキ4色ベタ重ね刷りで、L*:1〜10、好ま
しくは6〜10、a*:−4〜4、好ましくは−3〜2、b*:−3〜3、好ましくは−2〜
2の範囲内になることを特徴とする。
【0030】
次に、ジャパンカラーとは、ISO/TC130国内委員会が策定した印刷に関する標
準色のことである。ジャパンカラー色再現印刷2001では、ISO12642パターン
(928色、IT8ともいう。)の測色値(L*a*b*値)をデータで示している。このジャ
パンカラー色再現印刷2001を再現するための印刷条件として、商業オフセット印刷に
関する国際規格ISO12647−2の標準条件を使用する。インキ及び印刷用紙は、日
本国内で普通に使われているインキ、印刷用紙(ジャパンカラー2001では4種類の用
紙について決められている)を使用する。
【0031】
ジャパンカラーで制定されているベタ標準測色値とは、正確には「JAPAN COLOR
SOLID VALUE」であり、ベタ色の標準を示している。これは社団法人日本印刷産業
連合会の協力のもと、代表的な印刷会社21社の社内標準濃度を計測する為のベタパッチ
の測色値を求めたものであり、用紙は各印刷会社が使用しているアート紙を使用している
。この平均測定値(CIELAB値)を求め、その値を日本の印刷物の平均的ベタ色と考え、
ジャパンカラー標準インキ及びジャパンカラー標準用紙を使用して印刷したサンプルがこ
の平均値に対して色差(ΔE)が最小になるような測色値を求めて、JAPAN COLOR
SOLID VALUEとしたもので黄、紅、藍、墨、ブルー、グリーン、レッド、ホワイト
(白紙)の8色に対して測色値が決められている。現在は、2000年に改定された第3
版の「ジャパンカラー2000ベタ色標準測色値」が標準となっており、その値は、黄が
L*:87.9、a*:−7.5、b*:91.5、紅が、L*:46,6、a*:75.1、b*:
−4.4、藍が、L*:53.9、a*:−37.0、b*:−50.1、墨が、L*:13.2
、a*:1.3、b*:1.9、ブルーが、L*:21.0、a*:20.0、b*:−51.0、
グリーンが、L*:49.0、a*:−73.5、b*:25.0、レッドが、L*:46.5、
a*:68.5、b*:48.0、ホワイトが、L*:93.0、a*:0.5、b*:0.4と定
められている。測定条件は、光源D50、2度視野、測定光学45°/0°、ブラックバキング(
ISO13655)に準拠し、許容色差範囲として、ΔE値が6以下と定められている。
【0032】
本発明において、使用するアート紙は、ISO規格のジャパンカラー標準用紙である三
菱製紙(株)製「特菱アート両面四六判/110kg」を使用し、測色等を行うこととす
る。
【0033】
一般的なジャパンカラー標準インキ(例えば、東洋インキ製造(株)「TKハイユニテ
ィ各色」)を、ジャパンカラー標準用紙(例えば、三菱製紙(株)製「特菱アート両面四
六判/110kg」)に印刷した場合の黄、紅、藍、及び墨の単色ベタ部のL*a*b*値、及
びそれより計算したC値は、黄インキについて、L*:86、a*:−7、b*:92、C:92
程度であり、紅インキについて、L*:45、a*:72、b*:−5、C:72程度であり、
藍インキについて、L*:54、a*:−36、b*:−49、C:61程度であり、墨インキ
については、L*:15.0、a*:1.5、b*:2.0、C:2.5程度である。
【0034】
なお、ジャパンカラー標準インキとは、次のようにして定められた日本の標準インキで
ある。まず、TC130国内委員会の委託により、印刷インキ工業会が、それに加盟する
インキメーカー8社の代表的なプロセスインキの色特性を測定、集約した。その結果を受
けて、TC130国内委員会が、プロセスインキの標準分光反射曲線を決定した。この標
準分光反射曲線を体現するインキを、ジャパンカラー標準インキとすることとした。例え
ば、オフセット枚葉インキとしては、東洋インキ製造(株)製「TKハイユニティ各色」
がある。
【0035】
また、ジャパンカラー標準用紙とは、次のようにして定められた日本の標準用紙である
。まず、国内製紙メーカー6社のアート紙表面の光学特性平均値を、「ジャパン ペーパ
ーの標準特性値」と規定した。その標準特性値に近い特性を有する2社のアート紙を、ジ
ャパンカラー標準用紙と定めた。現在、ジャパンカラー標準用紙の光学特性は、白色度:
80±5(%)、光沢度:75±2(%)、L*:93.0±3、a*:0.5±2、b*:0
.4±2である。ジャパンカラー標準用紙は、オフセット印刷の工程管理を規定したIS
O規格の用紙タイプ1に相当する。
【0036】
「ジャパンカラー色再現印刷2001」では、国内のISO規格相当品であるアート紙
、コート紙、マットコート紙、上質紙の4種類の用紙を用いている。アート紙としては、
例えば、王子製紙(株)製「OK金藤N」、日本製紙(株)製「NPI特アート」、三菱
製紙(株)製「特菱アート両面N」が挙げられる。コート紙としては、例えば、王子製紙
(株)「OKトップコートN」、日本製紙(株)製「NPIコート」、三菱製紙(株)製
「パールコート」が挙げられる。マットコート紙としては、王子製紙(株)製「OKトッ
プコートマット」、日本製紙(株)製「ユーライト」、三菱製紙(株)製「ニューVマッ
ト」が挙げられる。上質紙としては、王子製紙(株)製「OKプリンス上質」、日本製紙
(株)「ニューNPO上質」、三菱製紙(株)製「金菱」が挙げられる。
【0037】
本発明においては、濃度やL*a*b*値などのインキの特性を評価する際に、インキを印刷
する用紙として、ISO規格のジャパンカラー標準用紙(例えば、三菱製紙(株)製「特
菱アート両面四六版/110kg」)を用いることができる。なお、本発明の方法、又は
、本発明のインキセット等を用いて、実際に平版印刷を行う際に用いる用紙は、ジャパン
カラー標準用紙に限定されない。上述のアート紙、コート紙、マットコート紙、上質紙等
のあらゆる用紙を用いることができる。好ましくは、アート紙である。
【0038】
本発明において、「濃度値」とは、ISO規格のジャパンカラー標準用紙(例えば、三
菱製紙(株)製「特菱アート両面四六版/110kg」)に、黄、紅、藍及び墨のインキ
をベタ印刷し、黄、紅、藍及び墨の各色をグレタグマクベスSpectroEye(Gretag
Macbeth社製)にて測定した際の濃度値をいう。
【0039】
色再現領域の表現方法としては、XYZ表色系(CIE1931表色系)、X10Y10Z10
表色系(CIE1964表色系)、L*a*b*表色系(CIE1976)、ハンターLab表色系
、マンセル表色系、L*u*v*表色系(CIE1976)等挙げられる。
【0040】
L*a*b*表色系では、色相に関係なく比較できる明るさの度合いとして「明度」をL*で表
現し、L*が大きくなるほど色が明るく、小さくなるほど暗くなることを示している。また
、各色によって異なる「色相」をa*、b*の値で示し、a*は赤(+)から緑(−)方向、そ
してb*は黄(+)から青(−)方向を示し、各方向とも絶対値が大きくなるに従って色鮮
やかになり、0に近づくに従ってくすんだ色になることを示している。これによって一つ
の色を、L*、a*、b*を用いて数値化することが可能となる。L*、a*、b*が限りなく0に近
づくと、無彩色且つ暗い色相、つまり理想的な黒になる。また「明度」「色相」とは別に
、鮮やかさの度合いを数値化する方法として「彩度(C)」があり、以下の計算式にて求
めることができる。
【0041】
【数1】

【0042】
Cに関しても同様に、絶対値が大きくなるに従って色鮮やかになり、値が小さくなるに
つれてくすんだ色になることを示している。
【0043】
更に、L*a*b*表色系で表された個々の色が持つ数値を利用して、微妙な色の違い(色差
)も数値で表すことが可能になる。2つの色の色差(「ΔE」と表現)は、以下の計算式
にて求めることができる。
【0044】
【数2】

【0045】
ΔEの絶対値が小さいほど2つの色が近似しており、ΔEの絶対値が大きいほど2つ
の色が異なっている。
【0046】
L*a*b*表色系を利用した演色領域(ガモット)を求めるためには、まず、黄、紅、藍、
墨及びその他のインキを用いて、ISO12642チャート(IT8チャート)などのカ
ラーチャートを印刷し、チャートの各色(ISO12642チャートの場合928色)の
L*a*b*値を分光測定器(Gretag Macbeth社製 Spectro Lino)を用
いて測定し(測定条件:光源D50、2度視野、測定光学45°/0°、絶対白紙条件)、測定結
果からGretagMacbeth社のProfiLeMakerを使用してICCプロファイル
を作成する。インキを印刷する用紙としては、ISO規格のジャパンカラー標準用紙(例
えば、三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六版/110kg」)を用いることができる

【0047】
次いで、作成したICCプロファイルを用いて、Adobe社のPhotoshopにより
、RGB画像の色再現可能領域を画面上で表現したり、または、CHROMIX社のCoLo
rThinkを使用して3Dガモット図(L*a*b*表色系)を作成することができる。
【0048】
一つの印刷物(印刷物以外のカラースペースも含む)で表現できる全ての色再現領域を
演色領域(ガモット)と呼ぶが、ガモットを表す最も簡便な方法として、a*を横軸、b*縦
軸とした2次元空間に、単色ベタ部(黄、紅、藍)、及び、単色ベタ刷り重ね部(黄×紅
、紅×藍、藍×黄)計6色のa*対b*の値を、プロットした六角形の面積で表現することが
可能である。ガモットの面積が広い程、色再現領域が広いことを示している。
【0049】
本発明で使用される印刷方法としては、従来公知の平版印刷方法が用いられる。例えば
、オフセット枚葉印刷、オフセット輪転印刷、水無しオフセット印刷、ドライオフセット
印刷などが挙げられる。
【0050】
本発明で使用されるインキセットとしては、従来公知の平版印刷インキが用いられる。
例えば、酸化重合型インキ、ヒートセット型インキ、浸透乾燥型インキ、紫外線硬化型イ
ンキなどが挙げられる。
【0051】
また、印刷に使用する版についても従来公知の製版技術が用いられる。例えば、振幅変
調スクリーニング(AMスクリーニング)法により形成した版、周波数変調スクリーニン
グ(FMスクリーニング)法により形成した版などが挙げられる。
【0052】
本発明で使用される黄インキに関し、濃度値1.85〜1.90の範囲内で印刷した墨
インキ上に、濃度1.40〜2.10の範囲で刷り重ねした場合のL*値が17を超えない
透明性を有していれば、二次色、三次色の重ね刷りをした際の下刷りインキへの影響が
少なく、良好な色再現領域を得ることができる。更には、補色としてC.I.ピグメントイエ
ロー83を上記黄顔料の全重量に対して0.5〜10重量%、好ましくは2〜5重量%加
えて使用することも可能である。
【0053】
本発明で使用される黄顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12またはC.Iピグメン
トイエロー13をインキの全重量に対して5〜15重量%使用することが好ましい。
【0054】
本発明で使用される紅顔料としては、ローダミンB、ローダミン3G、ローダミン6G
などのローダミン系染料のモリブデン、タングステン金属レーキ化合物、銅鉄コンプレク
スレーキ化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。C.I.ピグメントレッ
ド81、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド81:2、C.I.ピグメン
トレッド81:3、C.I.ピグメントレッド81:4、C.Iピグメントバイオレット1、ま
たは、C.I.ピグメントレッド169をインキの全重量に対して15〜30重量%含有する
ことが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いることも
できる。
【0055】
本発明で使用する藍顔料である銅フタロシアニン系化合物は、結晶多型(同質異晶)を
示す物質であり、その結晶構造の違いによってα、β、γ、ε、π、τ、ρ、χ、R型な
どに分類されるが、結晶安定性、分散性が優れているβ型を使用することが好ましく、更
には比表面積が74m2/g〜100m2/gの微細なβ型銅フタロシアニンであることが
好ましい。74m2/gよりも小さいと良好な色再現ができなくなる。また100m2/g
を超えてしまうと顔料が凝集しやすくなり、分散性が困難となってしまう。
【0056】
本発明においては、上記銅フタロシアニン化合物の全重量に対し、補色としてフタロシ
アニン分子のベンゼン環上の水素原子をハロゲン化合物で置換したハロゲン化銅フタロシ
アニン化合物を5〜15重量%より好ましくは8〜11重量%加えて使用することも可能
であり、これにより、藍インキ単色の色再現領域を損なうことなく、黄及び紅インキと刷
り重ねた際の緑及び紫の色再現領域を広げることが可能になる。
【0057】
具体的には、C.I.ピグメントブルー15:3またはC.I.ピグメントブルー15:4をイ
ンキの全重量に対して10〜25重量%含有することが好ましく、更には、補色としてC.
I.ピグメントグリーン7またはC.I,ピグメントグリーン36をインキの全重量に対して0
.5〜2.0重量%加えて使用することも可能である。
【0058】
本発明で使用する緑顔料としては、ハロゲン化されたフタロシアニン系化合物があげら
れる。最も多く使われているものは塩素化銅フタロシアニンであり、他に塩素の変わりに
臭素の入ったものや、塩素と臭素を含むもの、また更には、銅を含まない無金属フタロシ
アニンブルーなどがある。
【0059】
墨顔料としては、カーボンブラック、例えばC.I.ピグメントブラック7等が挙げら
れる。カーボンブラックの特性として、粒子径、窒素吸着比表面積、着色力、DBP吸油
量、揮発分、pH値、PVC黒度などの物理化学的性質が挙げられるが、一般的なカーボ
ンブラックの特徴として、窒素吸着比表面積が大きく、つまり粒子径が小さく、また、D
BP吸油量が小さいカーボンブラックほど、高濃度且つ高光沢のインキが得られるとされ
ている。逆に、粒子径が大きく、DBP吸油量が大きいカーボンは、表面平滑性の低い低
級紙や新聞用紙において高い印刷濃度を再現できるが、アート紙、コート紙などの塗工紙
などでは、光沢の劣化が著しい。
【0060】
通常の平版印刷インキ(低級紙用インキを除く)に使用するカーボンブラックとしては
、窒素吸着比表面積が80m2/g以上、粒子径が約30nm以下、DBP吸油量が100
cm3/100g以下のカーボンを使用している。
【0061】
本発明で使用するカーボンブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7をインキ
の全重量に対して10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、より好ましくは16
〜20重量%含有することが好ましい。含有量が30重量%以上を超えると、分散性、流
動性が著しく劣化し、10重量%以下であると印刷に十分な濃度が得なれない。
【0062】
また、本発明で使用するカーボンブラックの特徴として、窒素吸着比表面積が120m
2/g〜250m2/gのカーボンブラックをインキの全重量に対して5〜20重量%含有
することを特徴とする。120m2/gよりも小さいと十分な黒色感が得られず、また2
50m2/gを超えてしまうと顔料が凝集しやすくなり、分散性が困難となってしまう。
【0063】
更に、本発明では、DBP吸油量が20cm3/100g〜80cm3/100gであるカ
ーボンブラックを使用することが好ましい。20cm3/100gよりも小さいと、インキ
成分との相溶性が悪く分散性が困難となり、80cm3/100gを超えてしまうと印刷物
の光沢の劣化が著しい。また、顔料は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
本発明では、墨インキの黒色感を出す方法として、上記カーボンブラックの組み合わせ
に補色としてアルカリブルーレーキ化合物をインキの全重量に対して4〜10重量%含有
することを特徴とする。アルカリブルーレーキ化合物としては、C.I.ピグメントブル
ー18、C.I.ピグメントブルー19、C.I.ピグメントブルー56、C.I.ピグメ
ントブルー57、C.I.ピグメントブルー61などが挙げられ、これらを単独で用いて
もよいし、2種類以上組み合わせて用いることもできる。4重量%以下であると十分な黒
色感が得られず、10重量%以上を超えると、色相がブルーとなり墨色として十分な色調
とならない。
【0065】
また、本発明において例示した着色成分(染料、顔料)は、1種で各インキに用いても
良いが、2種類以上混合して使用しても良い。
【0066】
本発明に用いられる合成樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキ
ッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性アルキッド樹脂、ロジンエステル
等が挙げられる。好ましくは、ロジン変性フェノール樹脂を使用する。ロジン変性フェノ
ール樹脂は、特に限定されないが、重量平均分子量1万〜30万のものを使用するのが好
ましい。分子量1万以下ではインキの粘弾性が低下し、40万以上ではインキとしての流
動性が不十分となる。
【0067】
植物油としては、たとえばヤシ油、綿実油、落花生油、パーム油、コーン油、オリーブ
油、亜麻仁油、大豆油、サフラワー油、桐油等の植物油由来のものが例示できるとともに
、それらの熱重合油および酸素吹き込み重合油なども使用できる。また、本発明ではこれ
ら植物油を単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0068】
また、インキに用いられる石油系溶剤は、芳香族炭化水素の含有率が1%以下でアニリ
ン点が75〜95℃好ましくは80〜95℃及び、沸点が260℃〜350℃好ましくは
280〜350℃の範囲にある石油系溶剤である。アニリン点が75℃未満の場合には、
樹脂を溶解させる能力が高すぎる為、インキのセット性が遅くなり好ましくなく、また9
5℃を超える場合には樹脂の溶解性が乏しい為、光沢、着肉等が悪くなり好ましくない。
沸点が260℃未満に場合には、印刷機上でのインキ溶剤の蒸発が多くなり、インキの流
動性の劣化により、インキがローラー、ブランケット、版等への転移性が悪くなり好まし
くない。また、350℃を超える場合には、ヒートセット型のインキの乾燥が劣る為、好
ましくない。
【0069】
更に、本発明の平版インキ組成物には、必要に応じてゲル化剤、顔料分散剤、金属ドラ
イヤー、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦向上剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤
、多価アルコールなどの添加剤を適宜使用することができる。
【実施例】
【0070】
次に具体例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら記載実施例に
限定されるものではない。なお、以下の記述の部は重量部、%は重量%を表す。
(ロジン変性フェノール樹脂の製造例)
撹拌機、冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコにP−オクチルフェノール1000部
、35%ホルマリン850部、93%水酸化ナトリウム60部、トルエン1000部を加
えて、90℃で6時間反応させた。その後6N塩酸125部、水道水1000部の塩酸
溶液を添加し、撹拌、静置し、上層部を取り出し、不揮発分50%のレゾールタイプフェ
ノール樹脂のトルエン溶液2000部を得て、これをレゾール液とした。撹拌機、水分分
離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン1000部を仕込み、窒
素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、上記で製造したレゾール液1800部を添加
し、トルエンを除去しながら220℃で4時間反応させた後、グリセリン110部を仕込
み、250℃で10時間反応させ、酸価20以下として、重量平均分子量50000、新
日本石油化学(株)AFソルベント6号での白濁温度88℃のロジン変性フェノール樹脂
を得た。
(ワニス製造例)
ロジン変性フェノール樹脂40部、大豆油35部、AFソルベント6号(新日本石油化
学(株)製溶剤)24部、ALCH(川研ファインケミカル(株)製ゲル化剤)1.0部を
190℃で1時間加熱撹拌して、ワニスを得た。
(インキ実施例)(黄インキ)
表1のような配合にてC.I.ピグメントイエロー12(東洋インキ製造(株)製LI
ONOL YELLOW 1235−P)をニーダー中で温度75℃の条件下、ワニス60
部を徐々に添加して混練して一次脱水を行った。次にニーダー温度100℃〜120℃、
減圧度76mmHgの条件下で1時間バキュームし、ベースインキ中の水分を0.5%以
下になるように二次脱水を行った。脱水後、残りのワニス、石油系溶剤を添加して混練し
て希釈し、ニーダーより未分散ベースインキを取り出した。取り出したベースインキをロ
ール温度60℃の3本ロールを用いて、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料
の粒径が7.5ミクロン以下になるまで練肉し、黄のベースインキ1を得た。次いで、ベ
ースインキ1に対して、表2の配合でワニス、桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ド
ライヤー、乾燥抑制剤を添加し黄インキ1を得た。
(インキ実施例)(紅インキ)
表1の配合にてC.I.ピグメントレッド81(猪名川顔料(株)製109N Fast Pink)をワニス、石油系溶剤と混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料の粒径が7.5ミクロン以下になるまで練肉、紅のベースインキ2を得た。次いで、このベースインキ2に対して、表2の配合で桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し紅インキ2を得た。
(インキ実施例)(紅インキ)
表1の配合にてC.I.ピグメントレッド169(BASF製FanaLPink D 4810)をワニ
ス、石油系溶剤と混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料の粒径が7.
5ミクロン以下になるまで練肉、紅のベースインキ3を得た。次いで、このベースインキ
3に対して、表2の配合で桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制
剤を添加し紅インキ3を得た。
(インキ実施例)(紅インキ)
表2の配合にて紅のベースインキ2と紅のベースインキ3を混合し、次いで、桐油、石
油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し紅インキ4を得た。
(インキ実施例)(藍インキ)
表1の配合にて、C.I.ピグメントブルー15:3(東洋インキ製造(株)製LIO
NOL BLUE GLA−SD:比表面積74.625m2/g)をワニス、石油系溶剤と
混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料の粒径が7.5ミクロン以下に
なるまで練肉、藍のベースインキ4を得た。次いで、このベースインキ4に対して、表2
の配合で桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し藍イン
キ5を得た。
(インキ実施例)(藍インキ)
表1の配合にてC.I.ピグメントグリーン7(東洋インキ製造(株)製LIONOL
GREEN YS2A)をワニス、石油系溶剤と混合し、分散粒子系測定機(グラインド
メーター)で顔料の粒径が7.5ミクロン以下になるまで練肉したベースインキ5を用い
、表2の配合にて藍ベースインキ4とベースインキ5とを混合後、更に桐油、石油系溶剤
、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し、藍インキ6を得た。
(インキ実施例)(墨インキ)
表1の配合にてC.I.ピグメントブラック7(三菱化学(株)製ミツビシカーボンMA
77:窒素吸着比表面積130m2/g、DBP吸油量68cm3/100g、三菱化学(株
)製ミツビシカーボンMA11:窒素吸着比表面積92m2/g、DBP吸油量64cm3/
100g)をワニス、石油系溶剤と混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で
顔料の粒径が7.5ミクロン以下になるまで練肉、墨のベースインキ6を得た。
【0071】
次いで、このベースインキ6に対して、表2の配合でアルカリブルーレーキ化合物(森
村ケミカル(株)製MT−15Nコンパウンド:C.I.ピグメントブルー61の38.
5重量%品)、桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し
墨インキ7を得た。
(インキ実施例)(墨インキ)
表1の配合にてC.I.ピグメントブルー61とC.I.ピグメントブルー56とをワニ
ス、石油系溶剤と混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料の粒径が7.
5ミクロン以下になるまで練肉、ベースインキ7を得た。次いで、表2の配合でベースイ
ンキ6及びベースインキ7を混合し、桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー
、乾燥抑制剤を添加し墨インキ8を得た。
(インキ比較例)(黄インキ)
表1のような配合にてC.I.ピグメントイエロー12(東洋インキ製造(株)製LI
ONOL YELLOW 1229−P)をニーダー中で温度75℃の条件下、ワニス660
部を徐々に添加して混練して一次脱水を行った。次にニーダー温度100℃〜120℃、
減圧度76mmHgの条件下で1時間バキュームし、ベースインキ中の水分を0.5%以
下になるように二次脱水を行った。脱水後、残りのワニス、石油系溶剤を添加して混練し
て希釈し、ニーダーより未分散ベースインキを取り出した。取り出したベースインキをロ
ール温度60℃の3本ロールを用いて、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料
の粒径が7.5ミクロン以下になるまで練肉し、黄のベースインキ8を得た。次いで、ベ
ースインキ8に対して、表2の配合でワニス、桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ド
ライヤー、乾燥抑制剤を添加し黄インキ9を得た。
(インキ比較例)(紅インキ)
黄インキと同様に、表1の配合にてC.I.ピグメントレッド57:1(東洋インキ製
造(株)製LIONOL RED 6B 4240−P)を用い、紅のベースインキ9を得
た。次いで、ベースインキ9に対して、表2の配合で桐油、石油系溶剤、コンパウンド
、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し紅インキ10を得た。
(インキ比較例)(藍インキ)
表1の配合にてC.Iピグメントブルー15:3(東洋インキ製造(株)製LIONOL
BLUE FG7330:比表面積71.750m2/g)を用い、ワニス、石油系溶剤
と混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料の粒径が7.5ミクロン以下
になるまで練肉、藍のベースインキ10を得た。次いで、ベースインキ10に対して、表
2の配合で桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加し藍イ
ンキ11を得た。
(インキ比較例)(墨インキ)
表1の配合にてC.I.ピグメントブラック7(三菱化学(株)製ミツビシカーボンMA
11:窒素吸着比表面積92m2/g、DBP吸油量64cm3/100g)をワニス、石油
系溶剤と混合し、分散粒子系測定機(グラインドメーター)で顔料の粒径が7.5ミクロ
ン以下になるまで練肉、墨のベースインキ11を得た。
【0072】
次いで、このベースインキ11に対して、表2の配合でアルカリブルーレーキ化合物(
森村ケミカル(株)製MT−15Nコンパウンド:C.I.ピグメントブルー61の38
.5重量%品)、桐油、石油系溶剤、コンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加
し墨インキ12を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
黄インキの透明性の評価については、以下の試験法で評価した。
【0076】
濃度値1.85〜1.90の範囲内で印刷した墨インキ(東洋インキ製造(株)製TK
ハイユニティ墨)上に、濃度1.40〜2.10の範囲で黄インキを刷り重ねし、L*を測
定した。結果を表3に示す。実施例の黄インキは、濃度値を2.20まで上げてもL*が1
7を越えず、下刷りの墨インキに影響を与え難く、透明性に優れているといえる(L*は値
が小さいほど黒く、大きくなるほど白くなることを示している)。一方、比較例はL*が高
く、上刷りの黄インキが不透明であるために下刷りの墨インキの黒さを阻害してしまって
いることがわかる。
【0077】
【表3】

【0078】
尚、藍顔料の比表面積については、島津製作所製流動式比表面積測定装置「フローソー
ブII」を用いて測定した表面積より以下の式により算出した値を比表面積と定義し記載し
た。
【0079】
比表面積(m2/g)=表面積(m2)/粉末質量(g)
実施例及び比較例のインキを印刷した際の濃度値及びL*a*b*値の測定結果を表4に記す
。尚、濃度値は黄が1.30〜2.00、紅が1.40〜2.00、藍が1.40〜2.
05、墨が1.60〜2.05の範囲内で任意に変化させ、その際のL*a*b*値の変化を調
査した。
【0080】
【表4】

【0081】
印刷条件を以下に記す。
【0082】
印刷機 :ハイデルベルグスピードマスター 菊全4色機(ハイデルベルグジャパン
(株))
用紙 :特菱アート両面 110Kg(三菱製紙(株))
湿し水 :アストロマーク3((株)日研化学研究所)2.0%水道水溶液
印刷速度:10000枚/時
濃度 :SpectroEye(Gretag Macbeth社製、光源D50、2度視
野、測定光学45°/0°、濃度基準DIN16536、偏光フィルター無し、絶対白
紙基準)にて印刷物の単色(黄、紅、藍、墨)ベタ部の濃度値を測定
測色 :SpectroEye(Gretag Macbeth社製、光源D50、2度視
野、測定光学45°/0°、偏光フィルター無し、絶対白紙基準)にて印刷物
の単色ベタ部(黄、紅、藍、墨)のL*、a*、b*値を測定。
【0083】
C値はa*及びb*から下記の計算式にて求めた。
【0084】
【数3】

【0085】
黄、紅、藍の3色については、比較例と比べて実施例のC値が大きく、印刷物の彩度が
高い。また、墨については、比較例と比べて実施例のL*値が低く、また、C値も0に近い
ことから墨インキとしての黒色感に優れているといえる。
【0086】
更には、実施例及び比較例のインキの中から表5の組み合わせにて4色印刷テストを実
施し、各インキの2次元ガモット図による色再現領域の評価行った。
【0087】
【表5】

【0088】
尚、濃度値は、黄:1.40〜1.44、紅:1.52〜1.56、藍:1.63〜1
.67、墨:1.85〜1.90の範囲内になるようベタ濃度を調整して印刷し、上記と
同じ条件でSpectroEyeを用いて印刷物の単色ベタ部(黄、紅、藍、墨)、及び
、単色ベタ刷り重ね部(2色重ね:黄×紅、紅×藍、藍×黄、3色:重ね藍×紅×黄、4
色重ね:墨×藍×紅×黄)のL*、a*、b*値を測定した。
【0089】
結果を表6に示す。3色重ねでは、比較例と比べて実施例のL*値が高く、墨が加わっ
た4色重ねでは実施例のL*値が低くなることからも墨インキの黒色感が比較例と比べ優れ
ていることが分かる。
【0090】
【表6】

【0091】
得られた結果から、a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、各a*、b*値をプロットし、
2次元のガモットで比較した。(表7)比較例1と比較して実施例1〜4の組み合わせは
全て色再現領域が広い。
【0092】
【表7】

【0093】
また、得られた分光反射率曲線を表9に示す。比較例の従来インキに比べ、実施例のイ
ンキの方が理想の分光反射率曲線に近くなっており、完全反射しなければならない部分の
不必要吸収が少なくなっている。そのため、インキの濁り成分が減少し、色再現領域が広
がっている。
【0094】
【表8】

【0095】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄、紅、藍及び墨インキから選択されるインキを用いる平版印刷方法において、L*が9
0〜96、a*が−1.5〜2.5、b*が−1.6〜2.4の範囲内にあるアート紙に印刷
した場合の黄、紅、藍及び墨インキの各色のL*a*b*値、並びに、黄、紅及び藍インキから
選択される2色をベタ刷り重ねした場合の各色のL*a*b*値、更には、黄、紅及び藍の3色
をベタ刷り重ねした場合のL*a*b*値、また更には、黄、紅、藍及び墨の4色を刷り重ねし
た場合のL*a*b*値が
黄インキは、L*:87〜95、a*:−4〜−12、b*:90〜110;
紅インキは、L*:47〜55、a*:75〜83、b*:−14〜−20;
藍インキは、L*:50〜58、a*:−40〜−46、b*:−45〜−53;
墨インキは、L*:7〜15、a*:−1.5〜1.5、b*:−1.5〜1.5;
であり、
紅及び黄インキの刷り重ねは、L*:49〜56、a*:63〜73、b*:52〜68;
藍及び黄インキの刷り重ねは、L*:45〜53、a*:−74〜−84、b*:23〜33

藍及び紅インキの刷り重ねは、L*:19〜31、a*:25〜40、b*:−60〜−70

黄、紅及び藍インキの刷り重ねは、L*:17〜27、a*:−3〜−14、b*:−5〜5

黄、紅、藍及び墨インキの刷り重ねは、L*:1〜10、a*:−4〜4、b*:−3〜3で
ある黄、紅、藍及び墨インキを用いることを特徴とする平版印刷方法。
【請求項2】
請求項1記載の平版印刷方法において、(a)黄、(b)紅、(c)藍の反射率が、下記
であることを特徴とする平版印刷方法。
(a)黄が、400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%とし
たときに、400nm〜480nmの波長領域が1〜20%、540nm〜700nmの
波長領域での反射率が90〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする着色成
分をインキの全重量に対して5〜15重量%含有する黄インキであり、
(b)紅が、400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%とし
たときに、400nm〜500nmの波長領域での最大反射率が50%〜100%、50
0nm〜560nmの波長領域での反射率が1〜20%、640nm〜700nmの反射
率が90%〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする着色成分をインキの全
重量に対して15〜30重量%含有する紅インキであり、
(c)藍が、400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%とし
たときに、420nm〜530nmの波長領域の反射率が50〜100%、600nm〜
700nmの反射率が1〜20%の反射スペクトルを有することを特徴とする着色成分を
インキの全重量に対して10〜25重量%含有する藍インキ
であることを特徴とする平版印刷方法。
【請求項3】
請求項1〜2いずれか記載の平版印刷方法に用いられるインキセット。
【請求項4】
請求項1〜2いずれか記載の平版印刷方法を用いて印刷した印刷物。

【公開番号】特開2008−254250(P2008−254250A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96943(P2007−96943)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】