説明

平版印刷版原版およびその製版方法

【課題】レーザーによる画像記録が可能で、経時の機上現像性低下を抑制でき、UVインキ耐刷性が良好な機上現像型平版印刷版原版、およびこれを用いる製版方法を提供する
【解決手段】支持体上に、(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物、(B)赤外線吸収剤、(C)ラジカル発生剤および(D)ラジカル重合性化合物を含有し、印刷インキと湿し水とを供給して非画像部分を除去できる画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版およびそれを用いる製版方法に関する。詳しくは、レーザーによる画像露光により直接製版可能な平版印刷版原版、および、前記平版印刷版原版を機上現像する製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来は、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)を用い、PS版にリスフィルムなどのマスクを通した露光を行った後、アルカリ性現像液などによる現像処理を行い、画像部に対応する画像記録層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像記録層を溶解除去して、平版印刷版を得ていた。
【0003】
この分野の最近の進歩によって、現在、平版印刷版は、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術によって得られるようになっている。すなわち、レーザーやレーザーダイオードを用いて、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版原版を走査露光し、現像して平版印刷版が得られる。
【0004】
上記進歩に伴って、平版印刷版原版に関わる課題は、CTP技術に対応した画像形成特性、印刷特性、物理特性などの改良へと変化してきている。また、地球環境への関心の高まりから、平版印刷版原版に関わるもう一つの課題として、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
【0005】
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化や無処理化が指向されている。簡易な製版方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
また、簡易現像の方法としては、画像記録層の不要部分の除去を、従来の高アルカリ性現像液ではなく、pHが中性に近いフィニッシャーまたはガム液によって行う「ガム現像」と呼ばれる方法も行われている。
【0006】
上述のような製版作業の簡易化においては、作業のしやすさの点から明室または黄色灯下で取り扱い可能な平版印刷版原版および光源を用いるシステムが好ましいので、光源としては、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザーおよびYAGレーザー等の固体レーザーが用いられる。また、UVレーザーを用いることができる。
【0007】
機上現像可能な平版印刷版原版としては、例えば特許文献1および2には、親水性支持体上に、重合性化合物を内包するマイクロカプセルを含む画像記録層(感熱層)を有する平版印刷版原版が記載されている。また、特許文献3には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する画像記録層(感光層)を設けた平版印刷版原版が記載されている。さらに、特許文献4には、支持体上に、重合性化合物と、ポリエチレンオキシド鎖を側鎖に有するグラフトポリマーまたはポリエチレンオキシドブロックを有するブロックポリマーを含有する画像記録層を設けた機上現像可能な平版印刷版原版が記載されている。
【0008】
このように重合反応を用いる方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有するが、機上現像性および耐刷性はまだ不十分であった。
【0009】
この問題を解決するため、特許文献5には感光層中にスルホン酸塩やアルキル硫酸エステル塩を含有する平版印刷版原版が記載されており、特許文献6には保護層中にアミノ酸やベタインを含有する平版印刷版原版が記載されている。また、特許文献7には、画像記録層中に特定のイソシアヌル酸誘導体を含有させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−277740号公報
【特許文献2】特開2001−277742号公報
【特許文献3】特開2002−287334号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0064318号明細書
【特許文献5】特開2007−276454号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第1862301号明細書
【特許文献7】特開2008−284817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記いずれの技術も、機上現像型の平版印刷版原版における機上現像性と耐刷性を両立させるにはまだ不十分であった。特に、経時した場合の機上現像性およびUVインキを用いた場合の耐刷性をともに良好に維持することは困難であった。UVインキは通常インキと異なり、溶媒を含まず、高粘度でタック性が高く、また、通常インキよりも極性が高いため、画像部を侵しやすく、通常インキの場合より耐刷性が一般に低い。そのため、UVインキ使用時の耐刷性(UVインキ耐刷性)の向上は大きな課題である。
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、レーザーによる画像記録が可能で、経時の機上現像性低下を抑制でき、UVインキ耐刷性が良好な機上現像型平版印刷版原版、およびこれを用いる製版方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1.支持体上に、(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物、(B)赤外線吸収剤、(C)ラジカル発生剤および(D)ラジカル重合性化合物を含有し、印刷インキと湿し水とを供給して非画像部分を除去できる画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【0013】
2.前記(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物が、(A1)式(I)で示される化合物であることを特徴とする前記1記載の平版印刷版原版。
【0014】
【化1】

【0015】
式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、RおよびRの少なくとも一方はヒドロキシ基が置換されたアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。Xは、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる原子の組合せからなるn価の基を表す。nは2〜10の整数を表す。
【0016】
3.前記(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物が、(A2)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を含む繰返し単位を有するポリマーであることを特徴とする前記1記載の平版印刷版原版。
4.前記(A2)のポリマーが、(A2a)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を側鎖に含む繰返し単位を有するビニル系ポリマーであることを特徴とする前記3記載の平版印刷版原版。
5.前記(A2)のポリマーが、(A2b)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を主鎖に含む繰返し単位を有し、多官能カルボン酸と多官能エポキシ化合物の付加反応で得られるポリマーであることを特徴とする前記3記載の平版印刷版原版。
6.前記画像記録層がさらに、(E)疎水化前駆体を含有することを特徴とする前記1〜5いずれか一項に記載の平版印刷版原版。
7.疎水化前駆体がマイクロカプセルおよび/またはミクロゲルであることを特徴とする前記6に記載の平版印刷版原版。
8.(C)ラジカル重合性化合物が、(C1)イソシアヌル酸骨格を有する化合物であることを特徴とする前記1〜7いずれか一項に記載の平版印刷版原版。
9.前記画像記録層上に、保護層を有することを特徴とする前記1〜8いずれか一項に記載の平版印刷版原版。
10.保護層が、無機質層状化合物を含有することを特徴とする前記9に記載の平版印刷版原版。
11.前記1〜10いずれか一項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給することにより、画像記録層の未露光部分を除去する工程とを有することを特徴とする製版方法。
【0017】
発明者らは、特定のイソシアヌル酸誘導体(1分子中に少なくとも2つのイソシアヌル酸骨格を有し、さらに、該イソシアヌル酸骨格1つに対しヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有する化合物 以下、(A)成分と呼ぶ)を画像記録層に添加することで、機上現像性に優れた平版印刷版原版が得られることを見出した。さらに驚くべきことに、本発明の(A)成分を用いると、経時での機上現像性低下を抑制し、さらにUVインキ耐刷性を向上できることを見出し、本発明に至った。
本発明の(A)成分の機能発現の要因は以下のように考えられる。すなわち、本発明の(A)成分のイソシアヌル酸骨格およびヒドロキシ基が親水性パートとなり現像性向上に寄与する。さらに、本発明の(A)成分はイソシアヌル酸骨格が連結されており、塗布膜中の拡散性が低下し、イソシアヌル酸骨格が1つしかない化合物に比べ経時で現像性が大きく変動しない。また、イソシアヌル酸誘導体は平面性が高く、自己集合しやすいため、本発明の(A)成分は擬似的に架橋した状態になり、UVインキに対する耐性が高く、耐刷性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、経時の機上現像性低下を抑制でき、UVインキ耐刷性が良好な機上現像型の平版印刷版原版、およびこの平版印刷版原版を用いる製版方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔平版印刷版原版〕
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に画像記録層を有す。また、場合により、画像記録層上に保護層、支持体と画像記録層の間に下塗り層を有してもよい。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成要素および成分などについて説明する。
【0020】
(画像記録層)
本発明に用いられる画像記録層は、(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物、(B)赤外線吸収剤、(C)ラジカル発生剤および(D)ラジカル重合性化合物を画像記録層に含有することを特徴とする。
また、本発明に用いられる画像記録層は、印刷インキと湿し水とを供給して非画像部分を除去できる画像記録層、すなわち、機上現像可能な画像記録層である。またさらに(E)疎水化前駆体を含有させてもよい。
以下、画像記録層に含有できる各成分について、順次説明する。
【0021】
<(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物〔以下では(A)成分と呼ぶ。〕>
本発明の(A)成分は、1分子中に少なくとも2つのイソシアヌル酸骨格を有し、さらに、該イソシアヌル酸骨格1つに対しヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有する化合物であれば何でもよいが、特にヒドロキシ基を有する基を置換基として2つ以上有するイソシアヌル酸骨格を含有する化合物が好ましい。
なかでも、(A)成分としては、(A1)下記式(I)で示される化合物、および(A2)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を含む繰返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0022】
【化2】

【0023】
式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、RおよびRの少なくとも一方はヒドロキシ基が置換されたアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。アルキル基およびアラルキル基中のアルキレン基の炭素−炭素結合の間に、―O―、―S―、―N(Rx)―、―CO―、―SO―、またはこれらの組み合わせからなる基が挿入されていてもよい。Rxは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
【0024】
またはRで表されるアルキル基としては、直鎖状、分岐状、単環状、多環状いずれでもよく、総炭素数40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が最も好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基およびn−ドデシル基が挙げられる。また、これらアルキル基は後述する置換基を有してもよい。
またはRで表されるアリール基としては、総炭素数30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下が最も好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基が挙げられる。また、これらアリール基は後述する置換基を有してもよい。
またはRで表されるアラルキル基としては、総炭素数30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下が最も好ましい。具体的には、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、3−ナフチルプロピル基が挙げられる。また、これらアラルキル基は後述する置換基を有してもよい。
【0025】
上記アルキル基、アリール基およびアラルキル基が有することができる置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基などが挙げられる。
【0026】
およびRの少なくとも一方は、ヒドロキシ基が置換されたアルキル基、アリール基またはアラルキル基である。これらのアルキル基、アリール基およびアラルキル基の具体例としては前記と同じものが挙げられる。好ましくは、ヒドロキシ基が置換されたアルキル基である。さらに、RおよびRのどちらもヒドロキシ基が置換されたアルキル基であることが好ましい。この場合のアルキル基としては炭素数20以下が好ましく、炭素数15以下が好ましく、炭素数10以下が最も好ましい。また、アルキル基の炭素−炭素結合の間に、―O―、―S―、―N(Rx)―、―CO―、―SO―、またはこれらの組み合わせからなる基が挿入されていてもよい。この場合、−O−、−S−、―O−CO―、―N(Rx)―CO―、―O―CO―N(Rx)―などが好ましい。Rxは前記のRxと同義である。
【0027】
Xは、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる原子の組合せからなるn価の基を表す。具体的には、炭化水素基、―O―、―S―、―N(Ry)―、―CO―および―SO―の組み合わせからなる基が挙げられる。ここで、Ryは単結合または上記Rxと同じものが挙げられる。炭化水素基は脂肪族、芳香環いずれでもよく、鎖状、単環状、多環状いずれでもよい。また、上記炭化水素基の炭素−炭素結合の間に、―O―、―S―、―N(Rx)―、―CO―、―SO―、またはこれらの組み合わせからなる基が挿入されていてもよい。Rxは前記のRxと同義である。
nは2〜10の整数を表し、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が最も好ましい。
【0028】
Xで表されるn価の基としては、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、―O―、―S―、―N(Ry)―、―CO―および―SO―の組み合わせからなる基が好ましく、炭素数10以下の直鎖状炭化水素基、6員環以下の環状炭化水素基、10員環以下の芳香族炭化水素基、―O―、―S―、―CO―O−、―N(Ry)−CO―、―N(Ry)−CO−O―および―SO―の組み合わせからなる基がより好ましく、炭素数10以下の直鎖状炭化水素基、シクロペンタンあるいはシクロヘキサン残基、ベンゼン環残基、―O―、―CO―O−、―N(Ry)−CO―および―N(Ry)−CO−O―の組み合わせからなる基が最も好ましい。
【0029】
式(I)で示される化合物の例を以下に示す。
【0030】
【化3】

【0031】
【表1】

【0032】
【化4】

【0033】
【表2】

【0034】
<(A2)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を含む繰返し単位を有するポリマー〔(A2)成分〕>
ここでいうポリマーとは、1種以上のモノマーの重合反応で得られる化合物であり、かつ質量平均モル質量(Mw)1000以上のものを指す。Mwの上限としては10万以下が好ましく、6万以下がより好ましく、4万以下が最も好ましい。
【0035】
(A2)成分としては、イソシアヌル酸骨格が側鎖に導入されたポリマー、あるいはイソシアヌル酸骨格が主鎖に導入されたポリマー、のいずれも挙げられるが、(A2a)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を側鎖に含む繰返し単位を有するビニル系ポリマー、または(A2b)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を主鎖に含む繰返し単位を有し、多官能カルボン酸と多官能エポキシ化合物の付加反応で得られるポリマーが好ましい。
【0036】
<(A2a)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を側鎖に含む繰返し単位を有するビニル系ポリマー〔以下では(A2a)成分と呼ぶ。〕>
(A2a)成分としては、式(II)で示される繰り返し単位を少なくとも2つ含有するポリマーが好ましい。
【0037】
【化5】

【0038】
式(II)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表す。
およびRは、式(I)のRおよびRと同義であり、RおよびRの少なくとも一方は、ヒドロキシ基が置換されたアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
は、―CO―O―、―CO―N(Rx)―またはフェニレン基を表し、Lは、アルキレン基、―O―、―S―、―N(Rx)―、―CO―、―SO―、またはこれらの組み合わせからなる連結基を表す。Rxは、前記式(I)の説明におけるRxと同義である。
【0039】
(A2a)成分は、式(II)で示される繰り返し単位に相当するモノマーと、必要に応じ他の共重合可能な公知のモノマーとを共重合することで得られる。共重合する場合、式(II)で示される繰り返し単位は通常50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上である。共重合可能な公知のモノマーとしては、各種(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー、スチレン系モノマーが挙げられる。
【0040】
上記他の共重合可能なモノマーは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸などの酸性基を有さないか、あるいは有していても中和された塩の状態になっていることが好ましい。また、上記他の共重合可能なモノマーは親水的なものが好ましい。具体的には、ヒドロキシ基や(ポリ)エチレンオキシ基、(ポリ)プロピレンオキシ基、アミド基、上述した酸基の塩を有するものが好ましい。
【0041】
式(II)で示される繰り返し単位の例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
【0042】
【化6】

【0043】
<(A2b)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を主鎖に含む繰返し単位を有し、多官能カルボン酸と多官能エポキシ化合物の付加反応で得られるポリマー〔以下では(A2b)成分と呼ぶ。〕>
(A2b)成分の具体例としては、イソシアヌル酸骨格含有の多官能カルボン酸と多官能エポキシ化合物の付加反応で得られるポリマー、あるいはイソシアヌル酸骨格の多官能エポキシ化合物と多官能カルボン酸の付加反応で得られるポリマーが挙げられる。多官能カルボン酸、多官能エポキシ化合物の官能数としては、2または3が好ましく、2が最も好ましい。付加反応には種々の触媒を用いた公知の合成法を利用可能である。例えば触媒として、無機酸、有機酸などの酸触媒を用いる方法、テトラアルキルアンモニウム塩を用いる方法、ベタインを用いる方法、有機リン(トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィンなど)を用いる方法などが挙げられる。
【0044】
多官能カルボン酸、多官能エポキシ化合物の官能数がそれぞれ2の場合、付加反応で得られるポリマーは線状になる。この場合、付加反応を行う際のカルボン酸とエポキシ基のモル比としては、通常45/55〜55/45であり、好ましくは47/53〜53/47であり、さらに好ましくは48/52〜52/48である。
【0045】
多官能カルボン酸の官能数および/または多官能エポキシ化合物の官能数が3以上の場合、付加反応で得られるポリマーは架橋体になる。この場合、架橋点が多すぎると溶剤に不溶になるため、注意が必要となる。
多官能カルボン酸の官能数が2、多官能エポキシ化合物の官能数が3の場合、付加反応を行う際のカルボン酸とエポキシ基のモル比としては、通常2.5/1〜1.5/1であり、好ましくは2.0/1〜1.5/1であり、さらに好ましくは1.8/1〜1.5/1である。
多官能カルボン酸の官能数が3、多官能エポキシ化合物の官能数が2の場合、付加反応を行う際のカルボン酸とエポキシ基のモル比としては、通常1/2.5〜1/1.5であり、好ましくは1/2.0〜1/1.5であり、さらに好ましくは1/1.8〜1/1.5である。
付加反応を行った後、残存カルボン酸を無くすために単官能のエポキシ化合物を添加してもよい。
【0046】
(A2b)成分の好ましい質量平均モル質量(Mw)は、(A2)成分の説明で記載したものと同じである。
【0047】
(A2b)成分の具体例としては、下記反応の生成物が挙げられる。
【0048】
【化7】

【0049】
【表3】

【0050】
(A2b)成分の具体例としては、下記反応の生成物も挙げられる。
【0051】
【化8】

【0052】
【表4】

【0053】
(A2b)成分の具体例としては、下記反応の生成物も挙げられる。
【0054】
【化9】

【0055】
【表5】

【0056】
本発明における画像記録層中の(A)成分の含有量は、画像記録層の全固形分の0.5〜60質量%が好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
【0057】
<(B)赤外線吸収剤>
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述のラジカル発生剤に電子移動および/またはエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
【0058】
赤外線吸収剤としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0058]〜[0087]に記載されている化合物を用いることができる。
これらのうち好ましい赤外線吸収染料としては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0059】
【化11】

【0060】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−N(R9)(R10)、−X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、R9およびR10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルキル基、水素原子を表し、またR9とR10とが互いに結合して環を形成してもよい。なかでもフェニル基が好ましい。X2は酸素原子または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。以下に示す基において、Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0061】
【化11】

【0062】
1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0063】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0064】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−023360号公報の段落番号[0012]〜[0021]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0037]に記載されたものを挙げることができる。
【0065】
また、これらの赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、併用する場合は顔料を用いてもよい。顔料としては、特開2008−195018号公報[0072]〜[0076]に記載の化合物が好ましい。
【0066】
本発明における画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分の0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0067】
<(C)ラジカル発生剤>
本発明に用いられる(C)ラジカル発生剤は、(D)ラジカル重合性化合物の重合を開始、促進する化合物である。本発明において使用しうるラジカル発生剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
本発明におけるラジカル発生剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0068】
上記(a)〜(k)のラジカル発生剤の具体例としては、特開2008−195018号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0069】
上記の中でもより好ましいものとして、オニウム塩、なかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩およびアジニウム塩が挙げられる。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
【0070】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基またはアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、さらに好ましくは非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=テトラフェニルボラートが挙げられる。
【0071】
スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナートが挙げられる。
【0072】
アジニウム塩の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
【0073】
ラジカル発生剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
【0074】
<(D)ラジカル重合性化合物>
本発明に用いることができる(D)ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれることが好ましい。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態をもつ。
【0075】
具体例としては、特開2008−105018号公報の段落番号[0089]〜[0098]に記載の化合物が挙げられる。なかでも好ましいものとして、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)とのエステルが挙げられる。別の好ましいラジカル重合性化合物としては特開2005−329708号公報に記載のイソシアヌル酸構造を有する重合性化合物が挙げられる。
【0076】
上記の中でも、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、イソシアヌル酸骨格を有する重合性化合物が好ましく、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
【0077】
本発明において、(D)ラジカル重合性化合物は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。
【0078】
<(E)疎水化前駆体>
本発明では、機上現像性を向上させるため、疎水化前駆体を用いることができる。本発明における疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、およびミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくともひとつの粒子が好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子およびミクロゲルが好ましい。
【0079】
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報および欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレートまたはメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0080】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
【0081】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、およびその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0082】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基およびこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基および反応相手であるヒドロキシ基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物および反応相手であるアミノ基またはヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0083】
本発明で用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0084】
本発明においては、架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様であってもよい。このミクロゲルは、その中および/または表面に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができ、特に、(D)ラジカル重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
【0085】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
【0086】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0087】
疎水化前駆体の含有量としては、画像記録層の固形分濃度で5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0088】
<(F)その他の成分>
本発明における画像記録層には、必要に応じて、さらに他の成分を含有することができる。
【0089】
(1)バインダーポリマー
本発明の画像記録層には、画像記録層の膜強度を向上させるため、バインダーポリマーを用いることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0090】
なかでも本発明に好適なバインダーポリマーとしては、特開2008−195018号公報に記載のような、画像部の皮膜強度を向上するための架橋性官能基を主鎖または側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。架橋性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
【0091】
架橋性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するアクリルポリマーやポリウレタンとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
【0092】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
【0093】
また、本発明のバインダーポリマーは、さらに親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性の両立が可能になる。
【0094】
親水性基としては、たとえば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2または3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーポリマーに親水性基を付与するには親水性基を有するモノマーを共重合すればよい。
【0095】
また、本発明のバインダーポリマーには、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入できる。具体的には、メタクリル酸アルキルエステルなどの親油性基含有モノマーを共重合すればよい。
【0096】
以下に本発明に用いられるバインダーポリマーの具体例(1)〜(11)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
【化12】

【0098】
【化13】

【0099】
なお、本発明におけるバインダーポリマーは質量平均モル質量(Mw)が2000以上であることが好ましく、5000以上であるのがより好ましく、1万〜30万であるのがさらに好ましい。
【0100】
本発明では必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを用いることができる。また、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することもできる。
【0101】
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、5〜90質量%が好ましく、5〜80質量%であるのがより好ましく、10〜70質量%であるのがさらに好ましい。
【0102】
(2)低分子親水性化合物
本発明における画像記録層は、機上現像性を向上させるために、本発明の化合物とともに低分子親水性化合物を併用してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類およびその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
【0103】
本発明においてはこれらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類の群から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0104】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0105】
有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたは複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が好ましい。
【0106】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
【0107】
上記の低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0108】
これら低分子親水性化合物の画像記録層への添加量は、画像記録層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0109】
(3)感脂化剤
本発明の画像記録層には、着肉性を向上させるために、画像記録層にホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。特に、保護層に無機質の層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
【0110】
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報および特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物を挙げることができる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナートなどが挙げられる。
【0111】
上記含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。またイミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。なかでも、第4級アンモニウム塩類、およびピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
【0112】
上記アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5〜80モル%含有するポリマーが好ましい。
【0113】
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:cSt/g/ml)の値で、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。
【0114】
<還元比粘度の測定方法>
30%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液をウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れ、30℃にて流れ落ちる時間を測定し、計算式(「動粘度」=「粘度計定数」×「液体が細管を通る時間(秒)」)を用いて定法により算出した。
【0115】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5)
【0116】
上記感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15.0質量%、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0117】
(4)その他
さらにその他の成分として、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物、および共増感剤もしくは連鎖移動剤などを添加することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]、特開2006−091479号公報の段落番号[0023]〜[0027]、米国特許公開2008/0311520号明細書[0060]に記載の化合物および添加量が好ましい。
【0118】
<(G)画像記録層の形成>
本発明における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0142]〜[0143]に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、これを支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0119】
(下塗り層)
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を設けることが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ。
【0120】
下塗り層に用いる化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が挙げられる。より好ましいものとして、特開2005−125749号および特開2006−188038号公報に記載のごとき、支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、および架橋性基を有する高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、および架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。より具体的には、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−COCH2COCH3などの吸着性基を有するモノマーと、親水性のスルホ基を有するモノマーと、さらにメタクリル基、アリル基などの重合性の架橋性基を有するモノマーとの共重合体である高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、高分子樹脂の極性置換基と、対荷電を有する置換基およびエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーがさらに共重合されていてもよい。
【0121】
下塗り層用高分子樹脂中の不飽和二重結合の含有量は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。
【0122】
本発明の下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時における汚れ防止のため、キレート剤、第2級または第3級アミン、重合禁止剤、アミノ基または重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物等(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)を含有することができる。
【0123】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0124】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体としては、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
また、上記アルミニウム板は必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、および米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。
【0125】
本発明の支持体には必要に応じて、裏面に、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平5−45885号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層を設けることができる。
【0126】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層)を設けることが好ましい。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、および高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0127】
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0128】
また、保護層には酸素遮断性を高めるため、特開2005−119273号公報に記載のように天然雲母、合成雲母等の無機質の層状化合物を含有することが好ましい。
また、保護層には、可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御する無機微粒子など公知の添加物を含むことができる。また、画像記録層の説明に記載した感脂化剤を保護層に含有させることもできる。
【0129】
保護層は、公知の方法で塗布される。保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/mの範囲であることが好ましく、0.02〜3g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/mの範囲である。
【0130】
〔製版方法〕
本発明の平版印刷版原版の製版は機上現像方法で行うことが好ましい。機上現像方法は、平版印刷版原版を画像露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の未露光部分が除去されることを特徴とする。画像様の露光は平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で行ってもよいし、プレートセッターなどで別途行ってもよい。後者の場合は、露光済み平版印刷版原版は現像処理工程を経ないでそのまま印刷機に装着される。その後、該印刷機を用い、油性インキと水性成分とを供給してそのまま印刷することにより、印刷途上の初期の段階で機上現像処理、すなわち、未露光領域の画像記録層が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出され非画像部が形成される。油性インキおよび水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキと湿し水が用いられる。
以下、さらに詳細に説明する。
【0131】
本発明において画像露光に用いられる光源としては、レーザーが好ましい。本発明に用いられるレーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を照射する固体レーザーおよび半導体レーザーなどが好適に挙げられる。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cmであるのが好ましい。レーザーにおいては、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
【0132】
露光された平版印刷版原版は、印刷機の版胴に装着される。レーザー露光装置付きの印刷機の場合は、平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着したのち画像露光される。
【0133】
画像様に露光した平版印刷版原版に油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された油性インキおよび/または水性成分によって、未硬化の画像記録層が溶解または分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉して印刷が開始される。
【0134】
ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給するのが好ましい。
油性インキとしては、通常平版印刷に用いられる印刷インキ、UVインキなどが用いられる。水性成分としては、通常平版印刷に用いられる湿し水が用いられる。
このようにして、本発明の平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0136】
1.平版印刷版原版(1)〜(15)の作製(光重合型)
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0137】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0138】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で12秒間、シリケート処理を施し、水洗して、支持体(1)を得た。Siの付着量は10mg/m2であった。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0139】
(2)下塗り層(1)の形成
次に、上記支持体(1)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が28mg/m2になるよう塗布して、下塗り層(1)を設けた。
【0140】
<下塗り層用塗布液(1)>
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
【0141】
【化14】

【0142】
(3)画像記録層(1)〜(15)の形成
上記のようにして形成された下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)〜(15)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層(1)〜(15)を形成した。
画像記録層塗布液(1)〜(15)は下記感光液(1)〜(15)およびミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
【0143】
<感光液(1)〜(15)>
・バインダーポリマー(1)〔下記構造〕 0.24g
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造〕 0.030g
・ラジカル発生剤(1)〔下記構造〕 0.162g
・ラジカル重合性化合物
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・本発明の(A)成分(表6に記載) 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・アンモニウム基含有ポリマー
〔下記構造、還元比粘度44cSt/g/ml〕 0.055g
・ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・ベタイン 〔下記構造〕 0.005g
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0144】
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0145】
上記の、バインダーポリマー(1)、赤外線吸収剤(1)、ラジカル発生剤(1)、低分子親水性化合物(1)、フッ素系界面活性剤(1)、アンモニウム基含有ポリマーおよびベタインの構造は、以下に示す通りである。
【0146】
【化15】

【0147】
上記のミクロゲル(1)は、以下のようにして合成されたものである。
【0148】
<ミクロゲル(1)の合成>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井化学ポリウレタン(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート〔(C)成分〕(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0149】
(4)保護層(1)の形成
上記のようにして形成された画像記録層(1)〜(15)上に、さらに下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層(1)を形成し、平版印刷版原版(1)〜(15)を得た。
【0150】
<保護層用塗布液(1)>
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0151】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0152】
3.平版印刷版原版(21)〜(25)の作製
前記のように形成された下塗り層上に、下記の画像記録層塗布液(21)〜(25)をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/m2の画像記録層(21)〜(25)を形成し、平版印刷版原版(21)〜(25)を得た。
【0153】
<画像記録層塗布液(21)〜(25)>
・下記ポリマー微粒子水分散液(2) 20.0g
・赤外線吸収染料(3)〔下記構造〕 0.2g
・ラジカル発生剤 Irgacure250(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.5g
・本発明の(A)成分(表6に記載) 0.8g
・ラジカル重合性化合物 SR−399(サートマー社製) 1.50g
・メルカプト−3−トリアゾール 0.2g
・Byk336(Byk Chimie社製) 0.4g
・KlucelM(Hercules社製) 4.8g
・ELVACITE4026(Ineos Acrylica社製) 2.5g
・n−プロパノール 55.0g
・2−ブタノン 17.0g
【0154】
【化16】

【0155】
なお、上記組成中の商品名で記載の化合物は下記の通りである。
・IRGACURE 250:(4−メトキシフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート(75質量%プロピレンカーボナート溶液)
・SR-399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・BYK 336:変性ジメチルポリシロキサン共重合体(25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液)
・KLUCEL M:ヒドロキシプロピルセルロース(2質量%水溶液)
・ELVACITE 4026:高分岐ポリメチルメタクリレート(10質量%2−ブタノン溶液)
【0156】
(ポリマー微粒子水分散液(2)の製造)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA)20g、蒸留水200gおよびn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)80gおよび2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN=10/10/80のポリマー微粒子水分散液が得られた。このポリマー微粒子の粒径分布は粒子径150nmに極大値を有していた。
【0157】
ここで、粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0158】
4.比較例1〜2用平版印刷版原版(R−1)〜(R−2)の作製
上記画像記録層塗布液(1)中の感光液(1)の(A)成分を比較用化合物(C−1)に変更した以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、比較例1用の平版印刷版原版(R−1)を作製した。
上記画像記録層塗布液(21)の(A)成分を比較用化合物(C−1)に変更した以外は平版印刷版原版(21)の作製と同様にして、比較例2用の平版印刷版原版(R−2)を作製した。
【0159】
【化17】

【0160】
[実施例1〜15および比較例1]
得られた平版印刷版原版(1)〜(15)および比較例用平版印刷版原版(R−1)の機上現像性および耐刷性を下記のようにして評価した。結果を表6に示す。
【0161】
(1)機上現像性
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像および20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とベストキュアーUV−BF−WRO標準墨インキ(T&K TOKA社製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
【0162】
画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数から、比較例用の平版印刷版原版(R−1)の機上現像枚数を基準(100)として下記式より機上現像性を求めた。この値が大きいほど、機上現像性が良好であることを示す。
機上現像性=(基準平版印刷版の機上現像枚数)/(各平版印刷版の機上現像枚数)×100
【0163】
(2)UVインキ耐刷性
上述した機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として、比較例用の平版印刷版原版(R−1)の刷了枚数を基準(100)として下記式より耐刷性を求めた。この値が大きいほど、耐刷性が良好であることを示す。
UVインキ耐刷性=(各平版印刷版の刷了枚数)/(基準平版印刷版の刷了枚数)×100
【0164】
(2)経時後の機上現像性
上記平版印刷版原版を60℃で3日間保管したものについて、上記と同様にして機上現像性評価を行った。ただし、経時していない比較例用の平版印刷版原版(R−1)の機上現像性を基準(100)とした。この値が大きいことは、経時後の機上現像性が良好であることを表す。
【0165】
[実施例21〜25および比較例2]
実施例1〜15および比較例1と同様にして、平版印刷版原版(21)〜(25)および比較例2用平版印刷版原版(R−2)の機上現像性および耐刷性を評価した。ただし、比較例用の平版印刷版原版(R−2)を基準(100)として評価した。結果を表6に示す。
【0166】
【表6】

【0167】
表6の(A)成分または比較用化合物欄の記号の説明:
(1)A−No.は、本明細書の表1〜2に記載の例示化合物の番号を示す。
(2)A2b−No.は、本明細書の表3〜5に記載の例示化合物(反応生成物)の番号を示す。これらの化合物の質量平均モル質量(Mw)は以下に示すとおりである。多官能カルボン酸と多官能エポキシ化合物との反応比率はいずれも50:50であり、反応終了後に、いずれも、グリシドールを添加して未反応のカルボキシ基を消失させた。
A2b−2(Mw25000) A2b−5(Mw16000)
A2b−6(Mw19000) A2b−8(Mw15000)
A2b−11(Mw5000)
(3)A2a−No.で示されるポリマーの構造は、下記のとおりである。
【0168】
【化18】

【0169】
表6から明らかなように、本発明は、経時した場合の機上現像性低下の抑制およびUVインキ耐刷性に関して顕著な効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物、(B)赤外線吸収剤、(C)ラジカル発生剤および(D)ラジカル重合性化合物を含有し、印刷インキと湿し水とを供給して非画像部分を除去できる画像記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
前記(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物が、(A1)式(I)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版原版。
【化1】

式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、RおよびRの少なくとも一方はヒドロキシ基が置換されたアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。Xは、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる原子の組合せからなるn価の基を表す。nは2〜10の整数を表す。
【請求項3】
前記(A)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を、2つ以上有する化合物が、(A2)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を含む繰返し単位を有するポリマーであることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
前記(A2)のポリマーが、(A2a)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を側鎖に含有する繰返し単位を有するビニル系ポリマーであることを特徴とする請求項3記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
前記(A2)のポリマーが、(A2b)ヒドロキシ基を有する基を置換基として少なくとも1つ有するイソシアヌル酸骨格を主鎖に含む繰返し単位を有し、多官能カルボン酸と多官能エポキシ化合物の付加反応で得られるポリマーであることを特徴とする請求項3記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
前記画像記録層がさらに、(E)疎水化前駆体を含有することを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
疎水化前駆体がマイクロカプセルおよび/またはミクロゲルであることを特徴とする請求項6に記載の平版印刷版原版。
【請求項8】
(C)ラジカル重合性化合物が、(C1)イソシアヌル酸骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜7いずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記画像記録層上に、保護層を有することを特徴とする請求項1〜8いずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
保護層が、無機質層状化合物を含有することを特徴とする請求項9に記載の平版印刷版原版。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給することにより、画像記録層の未露光部分を除去する工程とを有することを特徴とする製版方法。

【公開番号】特開2010−234588(P2010−234588A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83713(P2009−83713)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】