説明

平版印刷版及びその作製方法

【課題】インクを打滴し、硬化して形成される画像の強度、及び、支持体との密着性に優れた光重合型インク組成物によりインクジェット記録方法を用いて耐刷性に優れた画像を有する平版印刷版を作製しうる平版印刷版の作製方法及びそれにより得られた平版印刷版を提供する。
【解決手段】表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にある支持体上にインク受容層を有する支持体に、(a)重合開始剤、及び、(b)3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有する光重合型インク組成物をインクジェット記録方式により打滴した後、露光により打滴されたインク組成物を重合硬化して画像を形成することを特徴とする平版印刷版の作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合型インク組成物を用いた、インクジェット記録方式による平版印刷版の作製方法及びそれによって作製された平版印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、記録媒体に画像を形成する記録方式として、電子写真方式、熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり高価な装置となる。熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、転写に使用されなかったインクリボンが廃材となり、ランニングコストも高い。一方、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し記録媒体上へ直接画像形成するため、廃材が無く、ランニングコストも安いので、記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット記録方式に用いられる記録媒体は、紙、プラスチック、金属など多岐に渡り、使用目的に応じて選択される。例えば、インクジェット法を用いて画像を描画し、直描型平版印刷版を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、画像強度が低く、耐刷性は不十分であった。画像強度を高めるためには、一般に露光による硬化を促進すれば良く、有効な手段として、重合性化合物の官能基数を多くする、言い換えれば、インク中の多官能重合性化合物の含有量を多くすることが挙げられる。しかし、多官能重合性化合物の含有量を多くすると、露光硬化する際、インクの体積収縮が大きくなり、例えば打滴する支持体の表面が平滑であると、硬化したインクと支持体表面との間に隙間ができてしまい、密着性が十分でなく、画像がはがれやすくなり、結果として耐刷性が劣るという問題があった。
【特許文献1】特開平5−204138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、インクを打滴し、硬化して形成される画像の強度、及び、支持体との密着性に優れた光重合型インク組成物によりインクジェット記録方法を用いて耐刷性に優れた画像を有する平版印刷版を作製しうる平版印刷版の作製方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、前記本発明の平版印刷版の作製方法により得られた、光重合型インク組成物により形成された高強度で支持体との密着性に優れた画像を有する平版印刷版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、検討の結果、インクの重合硬化を促進する化合物を添加するとともに、特定の表面形状を有する平版印刷版用支持体と組み合わせることで、画像の体積収縮による支持体との密着性が抑制され、画像のはがれを抑制しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の平版印刷版の製造方法に用いられる光重合型インク組成物は、(a)重合開始剤、及び、(b)3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有することを特徴とし、インクジェット記録用に好適に用いられるが、このような重合性化合物の官能基数を多くしたインク組成物を用いて、適切な表面粗さを有し、インク受容層を備えた支持体上に画像形成することにより耐刷性に優れた画像を形成させることができた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インクを打滴し、硬化して形成される画像の強度、及び、平版印刷版用支持体との密着性に優れた光重合型インク組成物を用いた平版印刷版の作製方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明の平版印刷版の作製方法により得られる、高強度で支持体との密着性に優れた画像を有し、耐刷性に優れた平版印刷版を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に記載する。
まず、本発明の平版印刷版の作製に用いられる光重合型インク組成物について説明する。
[光重合型インク組成物]
本発明の光重合型インク組成物には、(a)重合開始剤、及び、(b)3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有する。
[(a)重合開始剤]
本発明において、好適に用いられる重合開始剤としては、例えば、放射線硬化型のインク組成物に用いられる公知のラジカル重合、若しくは、カチオン重合の光重合開始剤が挙げられる。本発明に併用可能な他の光重合開始剤は、光の作用、又は、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
具体的な、光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用できる。好ましい光重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、ベンゾインやベンゾインエーテルなどのベンゾイン誘導体、アシルホスフィンオキシド化合物、スルホニウム塩やヨードニウム塩などのオニウム塩類、有機過酸化物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル類、ボレート塩類、アジニウム化合物、メタロセン化合物、炭素−ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
これらの化合物は、主に紫外線に対して重合開始能を有するが、適切な増感剤と併用することにより、可視光線や赤外線にも分光増感させることができる。
本発明のインク組成物における(A)重合開始剤の好ましい添加量としては、固形分換算で、0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0008】
[(b)3官能以上の重合性化合物]
本発明のインク組成物には、3官能以上の重合性化合物を含有することを要する。
本発明において、好適に用いられる重合性化合物としては、公知のラジカル重合性若しくはカチオン重合性のモノマーまたはオリゴマーであって、3官能以上の化合物が挙げられる。用いられるモノマーまたはオリゴマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びその誘導体、スチレン類、オレフィン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状エステル類などが挙げられ、これらの構造を有し、且つ、3官能以上の化合物を選択して用いることができる。
以下に、本発明に好適に用いられる3官能以上の重合性化合物の例を挙げる。重合性化合物の代表的なものとして(メタ)アクリレート系化合物が挙げられる。
なお、本明細書中では、メタクリレートおよびアクリレートのいずれか或いは双方の構造をとり得ることを示す場合、(メタ)アクリレートと表記することがある。
【0009】
3官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
【0010】
4官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0011】
5官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0012】
6官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0013】
本発明のインク組成物中には、3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有することを要する。好ましい態様としては、4官能以上の重合性化合物を30質量%以上含有する態様、或いは、3官能以上の重合性化合物を40質量%以上含有する態様が挙げられる。最も好ましくは、4官能以上の重合性化合物を40質量%以上含有する態様である。
【0014】
(その他の重合性化合物)
[2官能以下の重合性化合物]
本発明においては、前記3官能以上の重合性化合物に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、2官能或いは単官能の重合性化合物を併用することができる。
本発明において好適に用いられる単官能或いは2官能の重合性化合物としては、公知のラジカル重合性若しくはカチオン重合性のモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。用いられるモノマーまたはオリゴマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びその誘導体、スチレン類、オレフィン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状エステル類などが挙げられる。
【0015】
(単官能、2官能のラジカル重合性モノマー)
本発明に用いられる(メタ)アクリレートとしては、例えば以下にものが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル基(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
【0016】
4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0017】
2官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリレート以外のモノマーとしては以下のものが挙げられる。
(メタ)アクリルアミドの例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。ここで(メタ)アクリルアミドはメタクロルアミド類又はアクリルアミド類の両方の構造をとり得る事を示す。
【0019】
オレフィン類としては、具体的には、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。
スチレン類としては具体的には、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0020】
ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
その他モノマーとして、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、ビニルフォルムアミド、ビニリデンクロリド、メチレンマロノニトリル、ビニリデン、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0022】
単官能或いは2官能のラジカル重合性化合物は、インク組成物中に固形分換算で、10〜70質量%の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%の範囲である。
【0023】
(カチオン重合性化合物)
また、重合性化合物としては、カチオン重合性のモノマーも併用することができる。カチオン重合性モノマーは、硬化時の体積収縮が少ないという特徴を有しているため、併用することが好ましい。
カチオン重合性モノマーとしては、オキセタン類、エポキシ類が挙げられる。
オキセタン類としては、具体的には、例えば、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)メチルエーテル]、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)メチル]キシリレンエーテルなどが挙げられる。
【0024】
また、エポキシ類としては、具体的には、例えば、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
これらのカチオン重合性モノマーを併用する場合、インク組成物中に1〜60質量%の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%の範囲である。
【0025】
(ラジカル重合性かつカチオン重合性モノマー)
また、本発明における併用可能な重合性化合物として、ラジカル重合性、カチオン重合性双方の特性を備えもつ重合性モノマーを用いることもできる。
本発明に用いうるラジカル重合性かつカチオン重合性モノマーとしては、例えば、4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシド、3−エチル−3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタンなどを挙げることができる。
【0026】
本発明のインク組成物に用いられる3官能以上の重合性化合物及び所望により併用される他の重合性化合物の総添加量としては、固形分換算で10〜99質量%の範囲であることが好ましく、30〜95質量%の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のインク組成物における重合性化合物のより好ましい態様としては、3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含み、2官能のラジカル重合性化合物の含有量が10〜70質量%、単官能のラジカル重合性化合物の含有量が0〜30質量%であって、単官能及び2官能の重合性化合物の総量が70重量%以下である態様、或いは、3官能以上の重合性化合物を40〜90質量%、単官能のラジカル重合性化合物を0〜30質量%とカチオン重合性モノマーを10〜50質量%含み、単官能及び2官能の重合性化合物の総量が70重量%以下である態様、などが挙げられる。
【0027】
本発明のインク組成物には、前記必須成分である(a)重合開始剤、(b)3官能以上の重合性化合物、及び、所望により併用される他の重合性化合物に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じてインク組成物に用いられる各種化合物を併用することができる。以下、任意成分について説明する。
本発明のインク組成物には、画像の視認性向上のため、着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては、公知の染料や顔料を適宜選択して用いることができる。
また、打滴性の改善のための界面活性剤や、インク保存時の安定性のための重合禁止剤などを添加することができる。
さらに、形成された画像の力学特性改善のために、各種のポリマーを添加することができる。具体的には、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、シェラック樹脂、ビニル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。
【0028】
本発明のインク組成物は、低分子量の重合性化合物を主成分として含むため、溶剤を含まずに構成することも可能であるが、水または有機溶剤を混合したものであっても良い。本発明のインク組成物に使用可能な有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、アイソパーG(エクソン社製)などの炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0029】
上記構成を有する本発明のインク組成物は、インクジェット記録方法により被記録媒体上に打滴された後、紫外線など重合開始剤に適合する波長の露光により重合、硬化し、画像を形成するが、多官能の重合性化合物を所定量含有するため、露光により速やかに硬化し、十分な架橋密度を有する高強度の画像を形成しうる。
【0030】
〔インク組成物の物性〕
本発明に係る前記光重合型インク組成物は、後述するインクジェット記録方法に使用されるため、取り扱い上、25℃における粘度が20〜100mPa・sであることが好ましい。本発明のインク組成物は公知のインクジェット記録装置のいずれにおいても使用することができ、このような記録装置により吐出する際には、通常、インク温度が25〜100℃の範囲でほぼ一定温度に保持されるため、そのときの粘度が2〜50mPa・sとなるようにすることがより好ましい。
【0031】
[平版印刷版の作製方法]
本発明の平版印刷版の作製方法は、表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にある支持体上にインク受容層を有する支持体に、(a)重合開始剤、及び、(b)3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有する光重合型インク組成物をインクジェット記録方式により打滴した後、露光により打滴されたインク組成物を重合硬化して画像を形成することを特徴とする。
以下、本発明の平版印刷版の作製方法について、プロセスに従って、順次説明する。
【0032】
〔インクジェット記録方法〕
本発明に係る前記光重合性インク組成物は、公知のインクジェット記録装置を使用して後述する支持体上に吐出され、画像形成される。まず、このようなインクジェット記録装置におけるインク保持手段について説明する。
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
【0033】
インク組成物を、これらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて液滴を偏向してメディアに着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349に開示されるように、ピエゾ(圧電)素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466に開示されるように、電界によりメディアへの吐出を制御する方式であってもよい。
【0034】
インク組成物を打滴するためのインクジェットプリントヘッドのノズルは、たとえば特開平5−31908に記載されるような形態が適用可能である。また、複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより高速化が可能である。
さらにノズルを特開昭63−160849に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時にメディアを移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
またノズルの表面は、特開平5−116327に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。また、ノズルからインクが均等に吐出されるとは限らない。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。ノズルの一部が吐出しない状態で画像形成すると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
【0035】
インクを吐出するにあたっては、粘度を一定に維持するためにインク温度を所定精度で一定に保持することが好ましい。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
さらにあるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
ヘッドユニットを特開平6−115099に記載されるように機械的に移動させ、これと同期してメディアを直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、メディア(記録媒体)の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、メディアの移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。また、逆にヘッドを固定し、メディアを機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0036】
画像を形成するうえで、画像受容層上でのインク着弾径は、5〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜200μmであることが好ましく、このときのノズル径は5〜200μmであることが好ましい。特に印刷版を作成する場合は、吐出液滴量が20pL以下であることが好ましく、10pL以下であることが特に好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜4000dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜4000dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、メディアの搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくはメディアの往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとにメディアを所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
ヘッドとメディアの間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくはメディアの移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、メディアの凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドとメディアが接触する危険性があり、0.5〜2mm程度に維持されることが好ましい。
【0037】
[露光によるインクの重合、硬化]
本発明の方法において、インク組成物の重合、硬化に用いられる露光に使用する好ましい光源としては、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード、半導体レーザ、蛍光灯等の光源を用いてもよい。また熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることが出来る。
水銀灯やメタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cmのものを使用し、記録媒体面で1mW/cm〜100W/cmの照度であることが好ましい。また露光エネルギーは、0.1mJ/cm〜100J/cmであることが好ましい。
高圧放電を用いる水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
【0038】
インク組成物がラジカル重合性化合物を主成分とする、ラジカル重合により硬化させる態様である場合には、酸素により重合が阻害されるため、酸素濃度の低い状態、すなわち窒素等のガス雰囲気下で露光させることにより低エネルギーで硬化させることができる。
これら、硬化させるための光等のエネルギーがインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべくメディアへの入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
【0039】
〔被記録媒体〕
本発明に係るインク組成物は、前記の如き露光により速やかに重合、硬化し、高強度の画像形成を形成するものであるが、インク画像との密着性の観点からは、表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にある支持体上に、さらに後述するインク受容層を有するものを用いることが好ましい。
本発明においては、インク組成物は平版印刷版の画像部領域(印刷インクを受容する疎水性領域)の形成に用いられ、被記録媒体としては平版印刷版用支持体に好適なものが選択される。この場合、アルミニウム、樹脂シートなどいずれの支持体を用いる場合でも、その表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にあるものが選択される。
本発明における被記録媒体(支持体)の表面粗さRaは、JIS B0601−1994に準拠した、算術平均粗さ(Ra)の値を採用している。
【0040】
〔平版印刷版用支持体〕
本発明の画像形成方法に用いられる支持体は、表面粗さRaが、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜5μmの範囲である。この表面粗さの範囲において、前記3官能以上の重合性化合物を所定量含有するインク組成物の物性との相関において、重合硬化した画像との高い密着性が達成され、硬化したインク自体の強度と相俟って、平版印刷版の画像部を形成した際の高い耐刷性が実現され、また、表面粗さに起因する画像の膜厚の不均一や膜厚が薄い部分の画像部の強度が低下するといった問題の発生が抑制される。
【0041】
本発明に使用される支持体としては、上記表面粗さを有するものであれば、その基材としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等の基材を選択して用いることができる。
【0042】
中でも、本発明においては、支持体の基材としてポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明においては表面処理されたアルミニウム支持体が好ましい。以下、好ましいアルミ支持体について記載する。
【0043】
〔アルミ支持体〕
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
【0044】
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。以下、このような表面処理について簡単に説明する。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0045】
<アルミ砂目形状を作製するための表面処理の詳細>
本発明の平版印刷版用支持体は、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによって、上述した表面の砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させたものである。本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して得られるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理および陽極酸化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。上述した表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、前記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。これらの方法により得られた本発明の平版印刷版用支持体は、上述したように、2種以上の異なる周期の凹凸を重畳した構造が表面に形成されており、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性のいずれにも優れる。以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
【0046】
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−024168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
【0047】
また、放電加工、ショットブラスト、レーザー、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザー等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
【0048】
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いることで特徴的な凹凸構造を表面に形成させることができる。本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1および第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
【0049】
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
【0050】
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
【0051】
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dmであるのが好ましく、50〜300C/dmであるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dmであるのが好ましい。また、高濃度または高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
【0052】
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dmであるのが好ましく、20〜70C/dmであるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dmであるのが好ましい。
【0053】
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dmと大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。
【0054】
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
【0055】
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
【0056】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/mであるのが好ましく、1〜5g/mであるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/mであると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
【0057】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/mであるのが好ましく、5〜15g/mであるのがより好ましい。エッチング量が3g/m未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/mを超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
【0058】
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/mであるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
【0059】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0060】
<デスマット処理>
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
<陽極酸化処理>
以上のように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0061】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は2.0g/mより少ないと平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
<親水性表面および親水化処理>
親水性表面としては、陽極酸化皮膜でもよいが、さらにその上から親水化処理を施すことが好ましい。ここでいう親水性表面とは、水との接触角が10°より小さいのものを言い、5°より小さくなるものが特に好ましい。また親水化処理した際、親水化化合物は陽極酸化皮膜に吸着していることが好ましい。
親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、タモールなど多価スルホン酸化合物への浸漬処理が挙げられる。
【0062】
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
【0063】
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
【0064】
Si付着量としては1.0〜20.0mg/m付着させることが望ましい。2.0から17.0mg/mがより望ましい。1.0mg/m以上であると汚れにくさが良好になり、20.0mg/m以下であると耐刷性、バーニング耐刷性が良好となる。
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0065】
本発明に用いられる支持体においては、前記表面処理を適宜組み合わせて、表面粗さRaを、好ましい範囲である0.2〜10μmに調整する。なお、好ましくは、支持体の親水性表面上に後述するインク受容層が設けられるが、その場合には、インク受容層の表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にあることが好ましい。
【0066】
<インク受容層>
本発明に用いられる平版印刷版用支持体は、前記した表面親水性基板(支持体)上に、インク受容層を有するものである。インク受容層としては、インク滲みを抑制するために、ペルフルオロアルキル基を有する有機フッ素化合物およびジメチルシロキサン骨格を有する化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(以下、適宜、特定撥水性化合物と称する)を含有した層である。特定撥水性化合物を含有するインク受容層を設ける際に、親水性樹脂と併用することがインク受容層に湿し水などによる除去性を与え、結果として非画像部の汚れ発生を効果的に抑制できるため好ましい。
【0067】
以下、特定撥水性化合物について説明する。
<ペルフルオロアルキル基を有する有機フッ素化合物>
本発明に用いうる好ましいフッ素系化合物は、一般式 R−Rpol で表される化合物である。
前記一般式中、Rは炭素原子3個以上の直鎖または分枝鎖のペルフルオロアルキル基を表し、Rpolはカルボン酸あるいはその塩、スルホン酸あるいはその塩、燐酸あるいはその塩、ホスホン酸あるいはその塩、アミノ基あるいはその塩、4級アンモニウム塩、ポリエチレンオキシ骨格、ポリプロピレンオキシ骨格、スルホンアミド基、エーテル基、ベタイン構造などの極性基を表す。これらの中でスルホキシル基あるいはその塩の構造を有するものがシリケートと相互作用しにくく、除去性がよく、好ましい。
またRはC2n+12mCOO−骨格を有するものがインク滲みを抑制する観点より特に好ましく、1分子中に2つ以上のC2n+12mCOO−骨格を有するものがさらに好ましい。ここでnは2以上の整数、mは1以上の整数である。
以下に、本発明に好ましく用いられるフッ素系化合物の具体例〔(F−1)〜(F−19)〕を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化1】

【0069】
【化2】

【0070】
また、本発明に係るフッ素系化合物として、高分子フッ素系化合物を使用してもよい。特に界面活性剤作用を有するもので水溶性であるものが好ましい。
高分子フッ素系界面活性剤の具体例としては、フルオロ脂肪族基を有するアクリレートまたはフルオロ脂肪族基を有するメタクリレートと、ポリ(オキシアルキレン)アクリレートまたはポリ(オキシアルキレン)メタクリレートとの共重合体が挙げられる。該共重合体において、フルオロ脂肪族基を有するアクリレートまたはメタクリレートのモノマー単位が共重合体の質量に基づいて7〜60質量%であることが好ましく、また、該共重合体の分子量は3000〜100000が適当である。
【0071】
該フルオロ脂肪族基は、直鎖状でも分岐していてもよく、かつ40質量%以上のフッ素を含有することが好ましい。上記フルオロ脂肪族基を有するアクリレートまたはメタクリレートの具体例としては、N−ブチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート、N−プロピルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート、メチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレートなどがある。ポリ(オキシアルキレン)アクリレートまたはメタクリレートにおける該ポリオキシアルキレン基の分子量は200〜3000であることが好ましい。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン、オキシプロピレン基である。例えばオキシエチレン基が8〜15モル付加したアクリレートまたはメタクリレートが使用される。また、必要に応じて該ポリオキシアルキレン基の末端にジメチルシロキサン基などを付加することにより発泡性を抑制することができる。
【0072】
上述のようなフッ素系界面活性剤は、市場で一般に入手することができ、本発明では市販品も使用することができる。フッ素系界面活性剤を2種以上併用することもできる。
販売されている製品としては、旭硝子(株)製、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S―131、S−141、S−145、S−381、S−382、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−110、F120、F−142D、F−150、F−171、F177、F781、住友3M(株)製フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC135、FX−161、FC170C、FC−171、FC176、バイエルジャパン(株)製FT−248、FT−448、FT−548、FT−624、FT−718、FT−738等(以上、商品名)が挙げられる。
【0073】
本発明に用いることができる他の特定撥水性化合物としては、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には下記のような化合物を挙げることができる。
<ポリジメチルシロキサン化合物>
ポリジメチルシロキサン化合物としてシリコン系界面活性剤を挙げることができる。特に水溶性のものが除去性が好ましい。ジメチルシロキサンメチル(ポリオキシエチレン)共重合体、ジメチルシロキサンメチル(ポリオキシプロピレン)共重合体、ジメチルシロキサンメチル(オリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)共重合体などを挙げることができる。
【0074】
<親水性樹脂>
これらの有機フッ素化合物やジメチルシロキサン骨格を有する化合物から選択される1種以上の化合物と親水性樹脂とをブレンドし、インク受容層とすることができる。
インク受容層の形成において、これらの特定撥水性化合物と親水性樹脂とを併用することにより、汚れにくさとインク滲み抑制をさらに改良することができる。
インク受容層を構成する場合の特定撥水性化合物の塗布量としては50mg/m以下が好ましく、さらに好ましくは、1〜10mg/mの範囲である。ジメチルシロキサン骨格を有する化合物の塗布量としては50mg/m以下が好ましく、さらに好ましくは、1〜10mg/mの範囲である。
また、親水性樹脂の塗布量は100mg/m以下が好ましく、1〜50mg/mの範囲がより好ましい。インク受容層に撥水性化合物とともに親水性樹脂を併用することにより、画像部を形成するインク打滴領域以外の、非画像部における撥インク性が向上し、汚れ防止効果にさらに有効となる。
【0075】
本発明に用いうる親水性樹脂としては、水溶性樹脂であれば問題ないが、特にカルボン酸あるいはその塩を有する水溶性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、アクリルあるいはメタクリルポリマーあるいはその共重合体、スルホン酸基あるいはその塩を有するアクリル、メタクリル、ビニル、スチレン系親水性樹脂、ポリアクリルアミドあるいはポリビニルピロリドンなどアミド基含有する親水性樹脂、アミノ基を有する親水性樹脂、リン酸あるいはその塩を有する親水性樹脂、例えば、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプンも挙げられる。
【0076】
また、オニウム基を有する化合物を含有することも好ましい。オニウム基を有する化合物は、特開2000−10292公報、同2000−108538公報等に詳述されている。その他、ポリ(p−ビニル安息香酸)などで代表される構造単位を分子中に有する高分子化合物群の中から選ばれる化合物を用いることもできる。これらの高分子化合物として、より具体的には、p−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリエチルアンモニウム塩との共重合体、p−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドとの共重合体などが挙げられる。
また特開2005−125749公報記載のエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ含有する繰り返し単位と支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位とを有する共重合体も好ましい。
これらの中で、特にスルホン酸塩骨格を有するポリマーが特にインク滲みを抑制し、かつ汚れ難くする点で好ましい。
【0077】
<インク受容層の形成>
この有機インク受容層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。
前者の方法(塗布法)では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法(浸漬法)では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
インク受容層の形成方法としては、塗布法を用いることが、基板への吸着を抑制し、印刷時における汚れ防止効果が向上するという観点から好ましい。
【0078】
このようにして、親水性表面を有する支持体上にインク受容層を形成することで本発明の方法、即ち、直描型平版印刷版の作製方法に好適な支持体を得ることができる。先の述べたように、インク受容層表面の表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にあることが好ましい。
このインク受容層は、インクジェット記録方式により打滴されるインク組成物の受容に好適に用いられる。
【0079】
[ポリエステルフィルム支持体、紙支持体]
また、表面に適切なインク受容層を設けたポリエステルフィルム支持体や紙支持体も本発明において平版印刷版用支持体として好適に使用できる。例えば、特開200−118254に記載されている、多孔質フィラー粒子、並びに、金属原子及び/又は半金属原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有する樹脂と特定の高分子化合物との複合体を含んでなる結着樹脂を含有する層を設けた支持体や、特開2003−19873に記載されている、(1)多孔質フィラー粒子、(2)金属アルコレート、該金属アルコレートとβ−ジケトン類及び/又はβ−ケトエステル類との反応で得られるキレート化合物、及び該キレート化合物を水と反応させて得られる部分的加水分解物の中から選択される少なくとも1種の金属アルコレート系化合物、並びに、(3)金属原子及び/又は半金属原子が酸素原子を介して繋がった結合を含有する樹脂と、該樹脂と水素結合を形成し得る基を含有する有機ポリマーとの複合体からなる結着樹脂を少なくとも含有する層を設けた支持体などが本発明において好適に使用できる。
【0080】
次に、この被記録媒体を用いた本発明の平版印刷版について説明する。
〔平版印刷版〕
本発明の平版印刷版は、表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にある支持体上にインク受容層を有する支持体上に、(a)重合開始剤、及び、(b)3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有する光重合型インク組成物をインクジェット記録方式により打滴した後、露光により打滴されたインク組成物を重合硬化してなる画像を有することを特徴とする。
即ち、本発明の平版印刷版は、前記した本発明の平版印刷版の作製方法によって得られる。詳細には、特定の表面粗さを有する基材表面にインク受容層を形成してなる平版印刷版用支持体表面に、前記光重合型インク組成物をインクジェット記録方法により、画像様に打滴し、打滴したインクを露光により、重合、硬化させて画像を形成する。なお、このインク組成物による硬化画像が形成された後、平版印刷版用支持体表面の画像が形成されない部分におけるインク受容層を除去することが、非画像部の汚れ防止の観点から好ましい。即ち、インクが硬化することで画像部領域が形成され、不要なインク受容層の除去により支持体の親水性表面が露出して非画像部の親水性が確保されることで、非画像部の湿し水受容性が向上するものである。
【0081】
インクジェット記録方法により形成された画像部は、印刷の前に、一般的な平版印刷版と同様の前処理、即ち、アラビアガムや澱粉誘導体、界面活性剤等を主成分とするガム処理を必要に応じて行うことが可能である。
ガムとしては、特公昭62−16834号、同62−25118号、同63−52600号、特開昭62−7595号、同62−11693号、同62−83194号の各公報に記載されているものが好ましい。なお、ガム処理の際に、インク受容層がガム液により溶解除去されることが好ましい。このようにして得られた平版印刷版は平版印刷機にセットして、通常の印刷を行うことができる。なお、ガム処理を行うことなく印刷することもできる。
【0082】
上記、本発明の画像形成により得られた直描型平版印刷版は、印刷機にセットされ、常法によりインクと湿し水とを供給して印刷することができる。
[湿し水]
印刷する際の湿し水については、通常の平版印刷機に用いるものを使用することができる。湿し水としては、一般に、イソプロピルアルコールを約20〜25%加えた水溶液を湿し水として用いるダールグレン方式が提案され、広く普及しているもの、また、イソプロピルアルコールは特有の不快臭があることと共に、毒性の面でも問題があり、有機溶剤中毒予防規則(有機則)第2種有機溶剤であって規制を受けるため、イソプロピルアルコールを代替する技術を導入したもの、さらにイソプロピルアルコール代替化合物として不揮発性もしくは高沸点化合物を使用する技術も開発されている。例えば、特定のアルキレンオキサイド系非イオン系界面活性剤を湿し水組成物に含めたもの、及び、アルキレンジアミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物を湿し水組成物に含めたものを使用することができる。
【0083】
本発明の平版印刷版の作製方法により得られた平版印刷版において、前記したガム処理工程を行わなかった場合、或いは、インク受容層がガム処理工程により除去されなかった場合においても、インク受容層は印刷途上においてこれらの湿し水によって除去される。即ち、印刷の初期において、湿し水によりインク受容層が除去され、親水性の表面が露出することで、非画像部の汚れを効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
〔支持体の作製〕
<アルミニウム板>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
【0085】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0086】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0087】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0088】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0089】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.25g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0090】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0091】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0092】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0093】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0094】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた陽極酸化処理を行い、酸化皮膜量が2.7g/mである、平版印刷版用支持体基材Aを得た。
【0095】
<シリケートによる支持体表面の親水化>
このように処理された支持体基材Aを、3号珪酸ソーダ水溶液に、70℃で13秒間浸漬した後、水洗乾燥した。東京精密(株)製、サーフコム 形式575Aの表面粗さ計を用い、カットオフ0.8mm、測定長3mmで、繰り返し5回の平均値として、表面粗さRaを測定したところ、0.55μmであった。
【0096】
<インク受容層>
下記組成のインク受容層塗布液を、表面親水化した前記支持体基材A上にワイヤーバーにて塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させ、インク受容層を形成した平版印刷版支持体Aを得た。インク受容層の塗布量は、20mg/mであった。
・特定撥水性化合物[F−12] 0.12g
・ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸) 0.18g
・イオン交換水 100g
【0097】
〔光重合型インク組成物の作製〕
以下の組成物を攪拌、混合することで、光重合型インク組成物1を調整した。
<光重合型インク組成物1:3官能モノマーの含有量=31質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・トリメチロールプロパントリアクリレート(3官能モノマー) 65g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 60g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 35g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートとポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0098】
[インクジェット記録]
上記のインク受容層を形成した支持体Aに、光重合型インク組成物1を以下のようにしてインクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例1の平版印刷版を作製した。
描画に際しては、ヘッドとしてせん断モードピエゾヘッド(東芝テック社製CA3:最小液滴量6pL、ノズル数318個、ノズル密度150ノズル/25.4mm)を使用し、該ヘッド一つを移動式キャリッジ上に搭載したヘッドスキャニング方式の描画装置を利用した。減圧機能を有する2Lの容量を有するインクタンクにインクを導入し、−40kPaに減圧してインク中の溶存気体を脱気したインクを、静圧式圧力制御タンク(容量50mL)を介して内径2mmのテフロン(登録商標)性柔軟チューブにより上記ヘッドに導入した。
【0099】
静圧式圧力タンクの高さをヘッドに対して制御する事によりヘッドの内圧は−6.6kPaに調整され、ヘッドのノズル部でのメニスカス形状を制御している。またヘッドには水循環式温度制御装置(SCINICS CH−201)により水循環を行い、ヘッド内でのインク温度が45℃になるようにした。ヘッドの駆動電圧は24Vとし、8値のマルチドロップモードあるいはバイナリモードで吐出を行った。ドット形成の周波数はそれぞれ4.8kHz、及び12kHzである。描画ピッチは8値のマルチドロップモードでヘッド走査方向600dpi(ヘッドスキャン速度203mm/s)×記録媒体搬送方向600dpi、バイナリモードでヘッド走査方向1200dpi(ヘッドスキャン速度254mm/s)×記録媒体搬送方向とし、すなわち記録媒体の逐次移動を行いつつヘッドの双方向インタレース印字を行った。
また上記ヘッドのクリーニング手段として、ヘッドのノズルプレートに非接触でワイピングをおこなう不繊布からなるワイピング手段を有し、適宜、クリーニングを実施した。
[露光]
インクジェット記録方法によりインク組成物を打滴した後、1秒〜60秒の後に、高圧水銀灯3kWで、露光し、インク組成物を硬化させて画像部を形成し、実施例1の平版印刷版を作製した。
【0100】
[耐刷性試験]
得られた平版印刷版を、ガム処理することなく、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、IF102(富士写真フィルム(株)製)湿し水を用い、大日本インキ化学工業社(株)製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。良好な印刷物が、5万枚印刷できた。
【0101】
[比較例1]
実施例1において支持体に用いたアルミニウム板に表面処理を施すことなく、その表面にインク受容層を設けて平版印刷版用支持体Bを得た。表面粗さは、0.15μmであった。
この平版印刷版用支持体Bを用いて、実施例1と同様にして、インク組成物1を打滴し、露光、硬化して画像を形成し、比較例1の平版印刷版を得た。
この平版印刷版を実施例1と同様にして印刷したが、すぐに部分的な画像脱落が起こり、良好な印刷物は得られなかった。このことから、3官能以上の重合性化合物の含有量が適切なインク組成物を用いても、支持体の表面粗さが本発明の範囲外の場合、インクと支持体との密着性が実用上不十分な値であることがわかる。
【0102】
[実施例2]
<光重合型インク組成物2:3官能モノマーの含有量=42.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・トリメチロールプロパントリアクリレート(3官能モノマー) 85g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 40g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 35g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートとポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0103】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物2を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例2の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物を、7万枚印刷することができた。このことから、本発明の画像形成方法によれば、耐刷性に優れた平版印刷版を得られることがわかる。
【0104】
[比較例2]
<光重合型インク組成物3:3官能モノマーの含有量=22.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・トリメチロールプロパントリアクリレート(3官能モノマー) 45g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 80g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 35g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートとポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0105】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物3を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例2の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物が1.5万枚得られた。このことから、3官能以上の重合性化合物の含有量が本発明の範囲外であるインク組成物を用いて平版印刷版を作製した場合、得られた画像部の耐刷性が実施例に比べ大幅に劣ることがわかる。
【0106】
[実施例3]
<光重合型インク組成物4:4官能モノマーの含有量=32.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(4官能モノマー) 65g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 50g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 45g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートと
ポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0107】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物4を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例3の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物を、7万枚印刷することができた。このことから、本発明の画像形成方法によれば、耐刷性に優れた平版印刷版を得られることがわかる。また、実施例1と実施例3との対比において、3官能以上の重合性化合物として、4官能の重合性化合物を用いた場合、3官能の重合性化合物を用いた場合に比較して、一層の耐刷性向上が実現されていることがわかる。
【0108】
[実施例4]
<光重合型インク組成物5:4官能モノマーの含有量=42.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(4官能モノマー) 85g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 30g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 45g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートと
ポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0109】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物5を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例4の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物を、8万枚印刷できた。このことから、本発明の画像形成方法によれば、耐刷性に優れた平版印刷版を得られることがわかる。また、実施例3と実施例4との対比において、3官能以上の重合性化合物として、4官能の重合性化合物を用いた場合、その含有量が増えることで一層の耐刷性向上が実現されていることがわかる。
【0110】
[比較例3]
<光重合型インク組成物6:4官能モノマーの含有量=22.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(4官能モノマー) 45g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 70g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 45g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートと
ポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0111】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物6を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して比較例3の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物は2万枚しか印刷できなかった。このことから、4官能の重合性化合物を用いても、含有量が本発明の範囲外である場合、得られた画像部の耐刷性が実施例に比較して大幅に劣ることがわかる。
【0112】
[実施例5]
<光重合型インク組成物7:6官能モノマーの含有量=32.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・ジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のヘキサアクリレート
(6官能モノマー) 65g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 40g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 55g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートと
ポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0113】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物7を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例5の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物を、9万枚印刷できた。このことから、本発明の画像形成方法によれば、耐刷性に優れた平版印刷版を得られることがわかる。また、実施例1と実施例5との対比において、3官能以上の重合性化合物として、6官能の重合性化合物を用いた場合、3官能の重合性化合物を用いた場合に比較して、一層の耐刷性向上が実現されていることがわかる。
【0114】
[実施例6]
<光重合型インク組成物8:6官能モノマーの含有量=42.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・ジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のヘキサアクリレート
(6官能モノマー) 85g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 20g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 55g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートと
ポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0115】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物8を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例6の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物を、9.5万枚印刷できた。このことから、本発明の画像形成方法によれば、耐刷性に優れた平版印刷版を得られることがわかる。また、実施例5と実施例6との対比において、3官能以上の重合性化合物として、6官能の重合性化合物を用いた場合、その含有量が増えることで一層の耐刷性向上が実現されていることがわかる。
【0116】
[比較例4]
<光重合型インク組成物9:4官能モノマーの含有量=22.5質量%>
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(重合開始剤) 5g
・ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤) 5g
・ジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のヘキサアクリレート
(6官能モノマー) 45g
・トリエチレングリコールジビニルエーテル(2官能モノマー) 20g
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能モノマー) 60g
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(2官能モノマー) 55g
・Cyan顔料(Pigment Blue 15:4)(着色剤) 4g
・Solsperse32000(Avecia製)(顔料分散剤) 1g
・2,4−ジエチルチオキサントン(増感剤) 5g
・トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミナト)アルミニウム
(重合禁止剤) 0.01g
・トリデカフルオロオクチルアクリレートとポリエチレングリコールモノメタリレートと
ポリプロピレングリコールモノアクリレートのコポリマー(界面活性剤) 0.2g
(合計 200.21g)
【0117】
実施例1で用いたのと同様の平版印刷版用支持体Aに、光重合型インク組成物1に代えて、光重合型インク組成物9を用いた他は同様にして、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して比較例4の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物は2万枚しか印刷できなかった。このことから、6官能の重合性化合物を用いても、含有量が本発明の範囲外である場合、得られた画像部の耐刷性が実施例に比較して大幅に劣ることがわかる。
【0118】
[実施例7]
<インク受容層を設けたPET支持体の作製>
下記組成物1を、ガラスビーズと共にペイントシェーカー(東洋精機(株))にて室温で20分間分散した後、更に、組成物2を33g添加し、ペイントシェーカー(東洋精機(株))にて室温で2分間分散した後、ガラスビーズを濾別して、多孔質フィラーを分散物してなるインク受容層形成用塗布液を得た。
【0119】
(組成物1)
・多孔質フィラー:アルミナRK30(岩谷化学工業(株)製、平均粒径0.6μm、
平均細孔径50Å、平均比表面積300m/g) 31g
・親水性ポリマー
(トリアルコキシシリル基変性ポリビニルアルコール
R−1130、(株)クラレ製;変性量=0.3mol%) 70g
・コロイダルシリカ20%水溶液;スノーテックスC(日産化学工業(株)) 60g
【0120】
(組成物2)
・テトラエトキシシラン 92g
・エタノール 163g
・水 163g
・硝酸 0.1g
【0121】
市販のコロナ処理済みポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東レ(株)製、商品名:ルミラー〕に、上記インク受容層形成用塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の塗布量が5g/mになるように塗布し、オーブンで100℃、10分間乾燥してインク受容層を有する平版印刷版用支持体Cを得た。この平版印刷版用支持体Cの表面粗さRaは5.0μmであった。
【0122】
前記のようにして得られた平版印刷版用支持体Cを用いた他は、実施例6と同様にして、光重合型インク組成物8を用いて、インクジェト記録方式により打滴し、硬化して実施例7の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、良好な印刷物を4万枚印刷できた。このことから、本発明の画像形成方法によれば、支持体基材にPETフィルムを用いた場合でも、本発明の好ましい表面粗さRaを満たすものであれば、耐刷性に優れた平版印刷版を得られることがわかる。
【0123】
[比較例5]
実施例7で支持体基材として用いたコロナ処理を行ったPETフィルムを、インク受容層を形成せずに平版印刷版用支持体Dとして使用した。支持体Dの表面粗さは0.1μm以下であり、本発明の範囲外である。
平版印刷版用支持体Cに代えて、この平版印刷版用支持体Dを用いた他は、実施例7と同様にして、インク組成物8を用いて比較例5の平版印刷版を作製した。
この平版印刷版を実施例1と同様にして評価したところ、すぐに部分的な画像脱落が起こり、良好な印刷物は得られなかった。このことから、3官能以上の重合性化合物の含有量が適切なインク組成物を用いても、支持体の表面粗さが本発明の範囲外の場合、インクと支持体との密着性が実用上不十分であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にある支持体上にインク受容層を有する平版印刷版用支持体に、(a)重合開始剤、及び、(b)3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有する光重合型インク組成物をインクジェット記録方式により打滴した後、露光により打滴されたインク組成物を重合硬化して画像を形成することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項2】
表面粗さRaが0.2〜10μmの範囲にある支持体上にインク受容層を有する平版印刷版用支持体上に、(a)重合開始剤、及び、(b)3官能以上の重合性化合物を30〜90質量%含有する光重合型インク組成物をインクジェット記録方式により打滴した後、露光により打滴されたインク組成物を重合硬化してなる画像を有することを特徴とする平版印刷版。

【公開番号】特開2007−237403(P2007−237403A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58672(P2006−58672)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】