説明

平版印刷版用内装材

【課題】強度、遮光、防湿性に優れた平版印刷版用内装材を提供する。
【解決手段】アルミ蒸着面が黒色に印刷されたアルミ蒸着フィルム60を紙基材50に貼り合わせて内装紙P1を形成する。アルミ蒸着フィルム60を利用することにより、折り曲げてもクラックが入ったり、アルミニウムの粉が発生したりすることがない。また、黒色印刷層54を有しているので、遮光性も十分に確保でき、強度、防湿性にも優れた内装紙P1を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版用内装材に係り、特に複数枚の平版印刷版を一括して包装する平版印刷版用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の製版法(電子写真製版法を含む)では、製版工程の自動化を容易にすべく、感光性印刷版や感熱性印刷版等の平版印刷版が広く用いられている。
【0003】
平版印刷版は、一般にシート状あるいはコイル状のアルミニウム板等の支持体に、たとえば砂目立て、陽極酸化、シリケート処理、その他化成処理等の表面処理を単独又は適宜組み合わせて行い、次いで感光層又は感熱層(これらをまとめて「塗布膜」という)の塗布(更に、必要に応じて水溶性遮断層やワックス層の各種の層を塗布することもある)、乾燥処理を行い、所望のサイズに切断することで製造される。そして、このように製造された平版印刷版は、露光、現像、ガム引き等の製版処理が行われた後、印刷機にセットされ、インクが塗布されることで、紙面に文字、画像等が印刷される。
【0004】
ところで、感光性印刷版は、感光性が高く、僅かな可視光波長帯域の光によって露光されても感光層に変化が生じるため、製造されてから自動製版機等に装填されるまでの間、遮光して荷扱い(運搬や保管等)する必要がある。感熱性印刷版も、当たる光の熱エネルギーによって感熱層が変質したり、反応進行によって感度変化が起こったりする場合があるため、遮光して荷扱いすることが好ましい。また、いずれの印刷版も急激な湿度変化や温度変化を受けると、感光層又は感熱層に結露が発生して変質する等の不都合があるため、防湿して荷扱いすることが好ましい。このため、平版印刷版は、製造されてから自動製版機等に装填されるまでの間、遮光性及び防湿性を有する内装材で包装されて荷扱いされている。
【0005】
従来、この平版印刷版を包装する内装材としては、たとえば、クラフト紙に13μm程度の低密度ポリエチレンを溶融塗布して、6μm程度のアルミニウム箔を貼り合わせたアルミクラフト紙や、このアルミクラフト紙のアルミニウム箔上に10μm〜70μm程度の低密度ポリエチレンを貼り合わせた構成のもの、さらに、この低密度ポリエチレンに70μm程度の黒ポリエチレンフィルムを貼り合わせた構成のものが知られている。また、アルミ蒸着フィルム(たとえば、厚さ4.00×10-8m程度のアルミ蒸着を施した厚さ12μm程度のPET(ポリエチレン−テレフタレート)フィルムや、同様のアルミ蒸着を施した厚さ15μm程度のポリアミド(ナイロン:登録商標)フィルム等)をクラフト紙に貼り合わせた構成のものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−234272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、クラフト紙にアルミニウム箔を貼り合わせた構成のものは、折り曲げると、クラックが入り、遮光機能が失われるという欠点があった。また、繰り返し折り曲げると、アルミニウム箔が剥がれて粉となり、平版印刷版に落ちて、露光不良を起こす原因になるという欠点もあった。
【0007】
一方、アルミ蒸着フィルムをクラフト紙に貼り合わせた構成のものは、このような欠点はないが、遮光機能が不足し、平版印刷版に被り故障を発生させてしまうという欠点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、強度、遮光、防湿性に優れた平版印刷版用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、アルミ蒸着フィルムと紙基材とを貼り合わせてなる平版印刷版用内装材であって、前記アルミ蒸着フィルム又は前記紙基材の少なくとも一方の貼着面が黒色に印刷されることを特徴とする平版印刷版用内装材を提供する。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、アルミ蒸着フィルム又は紙基材の少なくとも一方の貼着面が黒色に印刷される。これにより、アルミ蒸着フィルムのみでは不足する遮光性を十分に確保でき、全体として強度、遮光、防湿性に優れた平版印刷版用内装材を構成することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記アルミ蒸着フィルムは、アルミニウムの蒸着厚さが、40nm〜100nmであり、前記貼着面は、カーボンブラックの含有量が、0.5g/m〜8.0g/mのインクを用い、インク量を1.2〜4.5g/m(乾量)として黒色に印刷されることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版用内装材を提供する。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、アルミ蒸着フィルムには、アルミニウムの蒸着厚さが、40nm〜100nmのアルミ蒸着フィルムが用いられる。また、貼着面は、カーボンブラックの含有量が、0.5g/m〜8.0g/mのインクを用い、インク量を1.2〜4.5g/m(乾量)として黒色に印刷される。これにより、十分な遮光性を確保することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、アルミ蒸着フィルムと紙基材とを貼り合わせてなる平版印刷版用内装材であって、黒色の接着剤を用いて前記アルミ蒸着フィルムと前記紙基材とが貼り合わされることを特徴とする平版印刷版用内装材を提供する。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、黒色の接着剤を用いてアルミ蒸着フィルムと紙基材とが貼り合わされる。これにより、アルミ蒸着フィルムのみでは不足する遮光性を十分に確保でき、全体として強度、遮光、防湿性に優れた平版印刷版用内装材を構成することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記アルミ蒸着フィルムは、アルミニウムの蒸着厚さが、40nm〜100nmであり、カーボンブラックの含有量が、0.5g/m〜8.0g/mの接着剤を用いて前記紙基材に貼り合わされることを特徴とする請求項3に記載の平版印刷版用内装材を提供する。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、アルミ蒸着フィルムには、アルミニウムの蒸着厚さが、40nm〜100nmのアルミ蒸着フィルムが用いられ、カーボンブラックの含有量が、0.5g/m〜8.0g/mの接着剤を用いて紙基材に貼り合わされる。これにより、十分な遮光性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る平版印刷版用内装材によれば、強度、遮光、防湿性に優れた平版印刷版用内装材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係る平版印刷版用内装材の好ましい実施態様について説明する。
【0019】
まず、本発明に係る平版印刷版内装材が用いられる平版印刷版について概説する。
【0020】
平版印刷版は、長方形の板状に形成された薄いアルミニウム製の支持体上に塗布膜(感光性印刷版の場合には感光層、感熱性印刷版の場合には感熱層)を塗布して形成される。この塗布膜に露光、現像、ガム引き等の製版処理を行い、印刷機にセットし、インクを塗布することにより、紙面に文字、画像等が印刷される。
【0021】
このような平版印刷版は、感光層又は感熱層中の成分を種々選択することによって、種々の製版方法に対応させることができる。たとえば、(1) 感光層が、赤外線吸収剤、熱によって酸を発生する化合物、および酸によって架橋する化合物を含有する態様、(2) 感光層が、赤外線吸収剤及び熱によってアルカリ溶解性となる化合物を含有する態様、(3) 感光層が、レーザ光照射によってラジカルを発生する化合物、アルカリに可溶のバインダ、および多官能性のモノマーあるいはプレポリマを含有する層と、酸素遮断層との2層を含む態様、(4) 感光層が、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との2層からなる態様、(5) 感光層が、多官能性モノマーおよび多官能性バインダを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤を含有する層と、酸素遮断層との3層を含む態様、(6) 感光層が、ノボラック樹脂およびナフトキノンジアジドを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含む態様、(7) 感光層が、有機光導電体を含む態様、(8) 感光層が、レーザ光照射によって除去されるレーザ光吸収層と、親油性層及び/又は親水性層とからなる2〜3層を含む態様、(9) 感光層が、エネルギーを吸収して酸を発生する化合物、酸によってスルホン酸またはカルボン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物及び可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物を含有する態様、(10) 感光層が、キノンジアジド化合物と、ノボラック樹脂とを含有する態様、(11) 感光層が、光又は紫外線により分解して自己若しくは層内の他の分子との架橋構造を形成する化合物とアルカリに可溶のバインダとを含有する態様が挙げられる。
【0022】
次に、平版印刷版の包装方法について概説する。なお、ここでは、スキッドに平積みされた平版印刷版を内装紙で包装する場合について説明する。
【0023】
図1は、スキッドに平積みされた平版印刷版の外観図である。同図に示すように、平版印刷版32は、スキッド10に載置された台20の上に厚み方向に積層され、積層束30となった状態で包装される。
【0024】
なお、同図に示す積層束30は、表面に合紙34が貼り合わされた平版印刷版32を積層して生成した場合を示している。この場合、上下の平版印刷版32の間には、合紙34が配置される。合紙34は、必ずしも必要なものではなく、平版印刷版32だけで積層束30が構成される場合もある。
【0025】
また、同図に示す積層束30は、上面及び下面に保護用厚紙36を配置した場合を示しており、必要に応じて、このような保護用厚紙36が上面及び下面に配置される。
【0026】
一つの積層束30を構成する平版印刷版32の数は、特に限定されないが、たとえば、運搬や保管の効率化、自動製版機へ装填可能枚数等の観点から10枚〜500枚とすることができる。なお、このように10枚〜500枚の平版印刷版によって積層束を構成した場合には、平版印刷版と保護用厚紙とがずれないようにするため、積層束を粘着テープ等の固定手段で固定することが好ましい。また、更に多くの平版印刷版によって積層束を構成することもできる。たとえば、平版印刷版の枚数を最大で6500枚程度とし、平版印刷版を20〜500枚積み重ねるたびに保護用厚紙を入れるようにしてもよい。また、平版印刷版の枚数を最大で6500枚程度とし、その上下にのみ保護用厚紙を配置するようにしてもよい。
【0027】
平版印刷版32が積載される台20は、たとえば、所定厚さを有する塩化ビニル製の板で構成されており、平版印刷版32の大きさと略同じか、それよりも若干大きめに形成されている。
【0028】
また、スキッド10は、たとえば鉄製のフレームの上にベニヤ板を載置して構成されている。
【0029】
このように、スキッド10に平積みされた平版印刷版32は、積層束30の状態で台20を底板とし、その周囲及び上部を内装紙に覆われて包装される。
【0030】
図2は、スキッドに平積みされた平版印刷版を内装紙で包装する場合の手順を示す図である。
【0031】
まず、図2(a)に示すように、スキッド10に載置された台20の周囲に内装紙Pを巻き付ける。
【0032】
ここで、この内装紙Pは、ロール状に形成されており、その下縁部内側に台20の板厚と略同じ幅の両面テープ42が貼付されている。内装紙Pは、この下縁部内側に貼付された両面テープ42を台20の周面に貼り付けることにより、台20の周囲に巻き付けられる。
【0033】
なお、この内装紙Pの幅は、後述するように、内装紙Pを天面折りした際、互いの長辺折り込み部46、46の先端が所定量重なり合うような幅をもって形成される。
【0034】
また、内装紙Pの下縁部外側には、必要に応じて補強テープが貼付され、台20との貼着部の強度が確保される。
【0035】
内装紙Pは、図2(b)に示すように、巻き始めと巻き終わりを所定量オーバーラップさせて台20に巻き付けられる。そのオーバーラップ部分44を接着して、四角い筒状の姿に形成される。
【0036】
この後、内装紙Pは、いわゆる天面折りにより、短辺部と長辺部が折り畳まれ、台20に載置された積層束30を密封する。すなわち、まず、図2(c)に示すように、短辺部が互いに内側に折り込まれる。これにより、図2(d)に示すように、長辺部に沿って台形状の長辺折り込み部46、46が形成される。この長辺部に沿って形成された長辺折り込み部46を互いに内側に折り畳み、図2(e)に示すように、重なり合った部分を粘着テープ48でテープ止めすることにより、外部から光が入らないように密封される。
【0037】
以上のように、スキッド10に平積みされた平版印刷版32は、積層束30として台20と共に内装紙Pで包装される。
【0038】
図3は、平版印刷版のその他の包装形態の包装手順を示す図であり、いわゆるキャラメル包装する場合の包装手順が示されている。
【0039】
この包装形態では、図3(a)に示すように、まず、平版印刷版の積層束30の上下を板紙からなる当てボール80で挟み、当てボール80の四カ所を粘着テープ82で固定して一体化する。次に、その平版印刷版の積層束30と当てボール80の一体物30aを、図3(b)に示すように、内装紙Pの中央に載せる。次に、図3(c)に示すように、内装紙Pの一方側の辺を折り込んだ後、他方側の辺を折り込んで、互いの辺を折り重ねる。そして、図3(d)に示すように、上下の辺を折り返して、三カ所を粘着テープ84で固定する。これにより、平版印刷版の積層束30が内装紙Pに包装される。この内装紙Pに包装された平版印刷版の積層束30の包装体Xを、図3(e)に示すように、段ボールからなる外箱90に収納する。
【0040】
このように、平版印刷版の包装形態には種々の態様があり、目的、用途等に応じて適宜最適な包装形態が採用される。
【0041】
次に、本発明に係る平版印刷版用内装材について説明する。
【0042】
図4は、本発明が適用された内装紙の第1の実施の形態の構成を示す断面図である。
【0043】
同図に示すように、本実施の形態の内装紙P1は、紙基材層50、接着剤層52、黒色印刷層54、アルミ蒸着層56、フィルム層58の順で積層された多層構造で構成されており、アルミ蒸着フィルムのアルミ蒸着面を黒色に印刷し、これに紙基材を貼り合わせることにより形成される。
【0044】
図5は、本実施の形態の内装紙P1の製造方法の一例を示す図である。
【0045】
まず、図5(a)に示すように、アルミ蒸着フィルム60のアルミ蒸着面を黒色に印刷する。アルミ蒸着フィルム60は、フィルム層58とアルミ蒸着層56とからなり、高分子フィルムの表面にアルミニウムを蒸着して形成されている。
【0046】
フィルム層58を構成する高分子フィルムは、たとえば厚さ9μm〜25μm、好ましくは12μm〜18μm程度のPETが用いられる。なお、この他にも同程度の厚さを有するポリアミド(ナイロン:登録商標)フィルムやOPPフィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)等を用いることもできるが、防湿性等を考慮すると、PETフィルムを用いることが好ましい。
【0047】
アルミ蒸着層56は、上記PETフィルムの表面に40nm〜100nm(400Å〜1000Å)、好ましくは40nm〜80nm(400Å〜800Å)、更に好ましくは40nm〜60nm(400Å〜600Å)程度の蒸着厚さをもって形成される。
【0048】
印刷は、たとえばグラビア印刷で行われ、カーボンブラックが含有された黒色インクを用いて行われる。
【0049】
なお、黒色インクにおけるカーボンブラックの含有量は、遮光性を確保するのに必要十分な量に設定され、たとえば0.5g/m〜8.0g/m、好ましくは0.5g/m〜4.0g/m、より好ましくは0.5g/m〜2.0g/mに設定される。
【0050】
また、インク量も遮光性を確保するのに必要十分な量に設定され、たとえば1.2〜4.5g/m(乾量)に設定される。
【0051】
したがって、印刷は、カーボンブラックの含有量が、0.5g/m〜2.0g/mのインクを使用し、インク量を1.2〜4.5g/m(乾量)として行うことが好ましく、これにより、内装紙に必要十分な遮光性を与えることができる。
【0052】
図5(b)は、アルミ蒸着フィルム60のアルミ蒸着面を黒色に印刷した状態を示している。同図に示すように、アルミ蒸着フィルム60のアルミ蒸着面を黒色に印刷することにより、アルミ蒸着フィルム60のアルミ蒸着面上には黒色印刷層54が形成される。
【0053】
このようにアルミ蒸着面上に黒色印刷層54が形成されたアルミ蒸着フィルム60に対して、図5(c)に示すように、紙基材層50を構成する紙基材をアルミ蒸着面側に貼り合わせることにより、内装紙P1を形成する。
【0054】
紙基材層50を構成する紙基材には、たとえば坪量60〜84g/m程度の未晒しクラフト紙(クルパック紙(伸張紙))が用いられる。この他にも紙基材としては、半晒しクラフト紙(たとえば、OKゴールド(商品名))、晒しクラフト紙(たとえば、ひねり原紙)等を用いることができる。
【0055】
紙基材とアルミ蒸着フィルムとの貼り合わせは、たとえば、エクストゥルージョンラミネート(押し出しラミネート)、ドライラミネート等により行われる。すなわち、たとえばエクストゥルージョンラミネートの場合は、溶融したPE(ポリエチレン)を紙基材とアルミ蒸着フィルムとの間にスリット状に流し込み、圧着、冷却することにより貼り合わせ、ドライラミネートの場合は、PEを接着剤として紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせる。エクストゥルージョンラミネートの場合は、製造される内装紙に強度を与えることができ、ドライラミネートの場合は、製造設備を簡略化することができる。
【0056】
このようにエクストゥルージョンラミネート又はドライラミネートにより紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせることにより、図5(d)に示すように、紙基材層50と黒色印刷層54との間に接着剤層52が形成され、紙基材とアルミ蒸着フィルムとが一体的に貼り合わされて、本実施の形態の内装紙P1が形成される。
【0057】
なお、このようにエクストゥルージョンラミネート又はドライラミネートにより形成される接着剤層52は、たとえば9μm〜60μm、好ましくは13μm〜30μm、より好ましくは13μm〜25μmの厚さをもって形成される。
【0058】
以上のように構成された本実施の形態の内装紙P1によれば、アルミ蒸着フィルム60を利用することにより、従来のアルミニウム箔をクラフト紙に貼り合わせた構成の内装紙のように、折り曲げてもクラックが入ったり、アルミニウムの粉が発生したりすることがない。また、黒色印刷層54を有しているので、遮光性も十分に確保でき、強度、防湿性にも優れた内装紙を提供することができる。また、アルミニウム箔をクラフト紙に貼り合わせた構成の内装紙に比べてアルミニウムの使用量を低減でき、環境負荷を低減させることもできる。
【0059】
なお、本実施の形態では、アルミ蒸着フィルム60のアルミ蒸着面(貼着面)に黒色印刷を施して紙基材に貼り合わせるようにしているが、紙基材の貼着面に黒色印刷を施してアルミ蒸着フィルムに貼り合わせるようにしてもよいし、また、紙基材とアルミ蒸着フィルムの双方の貼着面に黒色印刷を施して紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせるようにしてもよい。ただし、平滑性等を考慮すると、上記実施の形態のように、アルミ蒸着フィルム60のアルミ蒸着面に黒色印刷を施して、アルミ蒸着フィルムと紙基材とを貼り合わせることが好ましい。
【0060】
次に、本発明に係る平版印刷版用内装材の第2の実施の形態について説明する。
【0061】
図6は、本発明が適用された内装紙の第2の実施の形態の構成を示す断面図である。
【0062】
同図に示すように、本実施の形態の内装紙P2は、紙基材層50、黒色接着剤層70、アルミ蒸着層56、フィルム層58の順で積層された多層構造で構成されており、アルミ蒸着フィルム60と紙基材層50を構成する紙基材とを黒色の接着剤で貼り合わせることにより形成される。
【0063】
図7は、本実施の形態の内装紙P2の製造方法の一例を示す図である。
【0064】
図7(a)に示すように、紙基材層50を構成する紙基材とアルミ蒸着フィルム60とを黒色の接着剤で貼り合わせる。黒色の接着剤には、カーボンブラックを含有したPEを使用し、エクストゥルージョンラミネート又はドライラミネートにより、紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせる。
【0065】
ここで、PEに含有させるカーボンブラックの含有量は、生成される内装紙P2の遮光性を確保するのに必要十分な量に設定され、たとえば0.5g/m〜8.0g/m、好ましくは0.5g/m〜4.0g/mに設定される。
【0066】
このように、紙基材とアルミ蒸着フィルム60とを黒色接着剤で貼り合わせることにより、図7(b)に示すように、紙基材層50とアルミ蒸着層56との間に黒色接着剤層70を有する内装紙P2が形成される。
【0067】
この紙基材層50とアルミ蒸着層56との間の黒色接着剤層70は、たとえば9μm〜60μm、好ましくは13μm〜30μm、より好ましくは13μm〜25μmの接着厚さをもって形成する。
【0068】
なお、紙基材層50を構成する紙基材及びアルミ蒸着フィルム60は、上記第1の実施の形態の紙基材及びアルミ蒸着フィルムと同じなので、ここでは、その構成についての説明は省略する。
【0069】
以上のように構成された本実施の形態の内装紙P2によれば、上記第1の実施の形態の内装紙P1と同様、アルミニウム箔を用いていないので、折り曲げてもクラックが入ったり、アルミニウムの粉が発生したりすることがない。また、黒色接着剤層70を有しているので、遮光性も十分に確保でき、強度、防湿性にも優れた内装紙を提供することができる。
【実施例】
【0070】
本発明に係る平版印刷版用内装材に対して防湿性、遮光性、強度に関して以下の試験を行い、本発明に係る平版印刷版用内装材の効果について説明する。
【0071】
<防湿性>
アルミ蒸着フィルムと紙基材とを黒色の接着剤で貼り合わせて試作品を製造し、mocon透湿度試験機にて透湿度の試験を行った。
【0072】
試作品は、次の条件で製造した。カーボンブラックを含有させたPEを接着剤として、エクストゥルージョンラミネートにて紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせた。ここで、紙基材には、坪量60g/mの未晒しクラフト紙、アルミ蒸着フィルムには、厚さ12μmのPETフィルムの表面に40nm(400Å)のアルミ蒸着を施したアルミ蒸着PETフィルムを使用した。また、黒色接着剤層の厚さは13μmとした。
【0073】
温度40℃、湿度90%の環境での測定結果は、次の表1のとおりである。
【0074】
【表1】

なお、比較とした従来製品Aは、未晒しクラフト紙にポリエチレンを溶融塗布してアルミニウム箔を貼り合わせたもの、従来製品Bは、未晒しクラフト紙にポリエチレンを溶融塗布してアルミニウム箔を貼り合わせ、そのアルミニウム箔の表面をポリエチレンでコーティングしたもの、従来製品Cは、未晒しクラフト紙にポリエチレンを溶融塗布して黒ポリエチレンフィルムを貼り合わせ、更にその黒ポリエチレンフィルムにポリエチレンを溶融塗布してアルミニウム箔を貼り合わせるとともに、そのアルミニウム箔の表面をポリエチレンでコーティングしたものである。
【0075】
表1に示すように、本発明に係る平版印刷版用内装材が防湿性の点で優れていることが確認できた。
【0076】
<遮光性>
接着剤中のカーボンブラックの含有量と、アルミニウムの蒸着厚さを変えて複数の試作品を製造し、製造した各試作品で平版印刷版を包装して、同一の条件下での被りの発生具合を検査した。
【0077】
なお、紙基材には、坪量60g/mの未晒しクラフト紙、アルミニウムを蒸着させる高分子フィルムには、厚さ12μmのPETフィルムを使用し、接着厚さが13μmとなるように、エクストゥルージョンラミネートにて紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせて試作品を製造した。
【0078】
検査の結果は、次の表2の通りである。
【0079】
【表2】

表2に示すように、アルミニウムの蒸着厚さが40nm(400Å)、60nm(600Å)の場合は、カーボンブラックの含有量が、少なくとも1.20g/mあれば、許容範囲内の遮光性が得られ、1.60g/m以上あれば、十分な遮光性が得られことが確認できた。また、アルミニウムの蒸着厚さが80nm(800Å)の場合は、カーボンブラックの含有量が、少なくとも1.20g/mあれば、許容範囲内の遮光性が得られ、1.60g/m以上あれば、十分な遮光性が得られることが確認できた。
【0080】
また、カーボンブラックの含有量が0.63g/mの場合は、アルミニウムの蒸着厚さが、少なくとも40nm(400Å)あれば、許容範囲内の遮光性が得られることが確認できた。また、カーボンブラックの含有量が1.20g/mの場合は、アルミニウムの蒸着厚さが、少なくとも40nm(400Å)以上あれば、許容範囲内の遮光性が得られ、80nm(800Å)以上あれば、十分な遮光性が得られることが確認できた。また、カーボンブラックの含有量が1.60g/mの場合は、アルミニウムの蒸着厚さが、40nm(400Å)以上あれば、十分な遮光性が得られることが確認できた。
【0081】
すなわち、使用するアルミ蒸着フィルムの蒸着厚さに応じて接着剤中のカーボンブラックの含有量を変えることにより、又は、使用する接着剤中のカーボンブラックの含有量に応じてアルミ蒸着フィルムの蒸着厚さを変えることにより、十分な遮光性を確保することができることが確認できた。
【0082】
<強度>
アルミ蒸着フィルムと紙基材とを黒色の接着剤で貼り合わせて試作品を製造し、落下強度の試験を行った。
【0083】
試作品は、次の条件で製造した。
【0084】
試作品A:カーボンブラックを含有させたPEを接着剤として、エクストゥルージョンラミネートにて紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせた。ここで、紙基材には、坪量60g/mの未晒しクラフト紙、アルミ蒸着フィルムには、厚さ12μmのPETフィルムの表面に40nm(400Å)のアルミ蒸着を施したアルミ蒸着PETフィルムを使用した。また、黒色接着剤層の厚さは13μmとした。
【0085】
試作品B:カーボンブラックを含有させたPEを接着剤として、エクストゥルージョンラミネートにて紙基材とアルミ蒸着フィルムとを貼り合わせた。ここで、紙基材には、坪量84g/mの未晒しクラフト紙、アルミ蒸着フィルムには、厚さ12μmのPETフィルムの表面に40nm(400Å)のアルミ蒸着を施したアルミ蒸着PETフィルムを使用した。また、黒色接着剤層の厚さは13μmとした。
【0086】
落下強度の試験は、次のように行った。すなわち、試作品A、Bで平版印刷版を包装し、高さを変えて落下させ、切れ等の発生の有無を検査した。なお、落下時は、製品を傾け、コーナー部を下に向けた姿勢で落下させた。
【0087】
検査結果は、次の表3のとおりである。
【0088】
【表3】

なお、比較とした従来製品Aは、未晒しクラフト紙にポリエチレンを溶融塗布してアルミニウム箔を貼り合わせたもの、従来製品Bは、未晒しクラフト紙にポリエチレンを溶融塗布してアルミニウム箔を貼り合わせ、そのアルミニウム箔の表面をポリエチレンでコーティングしたもの、従来製品Cは、未晒しクラフト紙にポリエチレンを溶融塗布して黒ポリエチレンフィルムを貼り合わせ、更にその黒ポリエチレンフィルムにポリエチレンを溶融塗布してアルミニウム箔を貼り合わせるとともに、そのアルミニウム箔の表面をポリエチレンでコーティングしたものである。
【0089】
表3に示すように、本発明に係る平版印刷版用内装材が従来製品とほぼ同様の強度を備えていることが確認できた。
【0090】
なお、上記の防湿性、遮光性、強度の試験は、アルミ蒸着フィルムと紙基材とを黒色の接着剤で貼り合わせた構成の内装紙についてのものであるが、少なくとも一方の貼着面を黒色に印刷して貼り合わせた構成の内装紙についても、ほぼ同様の結果が得られる。
【0091】
したがって、少なくとも一方の貼着面を黒色に印刷して貼り合わせた構成の内装紙についても、使用するアルミ蒸着フィルムの蒸着厚さに応じて印刷に使用するインク中のカーボンブラックの含有量を変えることにより、又は、印刷に使用するインク中のカーボンブラックの含有量に応じてアルミ蒸着フィルムの蒸着厚さを変えることにより、十分な遮光性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】スキッドに平積みされた平版印刷版の外観図
【図2】スキッドに平積みされた平版印刷版を内装紙で包装する場合の手順を示す図
【図3】平版印刷版の積層束をキャラメル包装する場合の包装手順を示す図
【図4】本発明が適用された内装紙の第1の実施の形態の構成を示す断面図
【図5】第1の実施の形態の内装紙の製造方法の一例を示す図
【図6】本発明が適用された内装紙の第2の実施の形態の構成を示す断面図
【図7】第1の実施の形態の内装紙P2の製造方法の一例を示す図
【符号の説明】
【0093】
P、P1、P2…内装紙、50…紙基材層、52…接着剤層、54…黒色印刷層、56…アルミ蒸着層、58…フィルム層、60…アルミ蒸着フィルム、70…黒色接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ蒸着フィルムと紙基材とを貼り合わせてなる平版印刷版用内装材であって、
前記アルミ蒸着フィルム又は前記紙基材の少なくとも一方の貼着面が黒色に印刷されることを特徴とする平版印刷版用内装材。
【請求項2】
前記アルミ蒸着フィルムは、アルミニウムの蒸着厚さが、40nm〜100nmであり、前記貼着面は、カーボンブラックの含有量が、0.5g/m〜8.0g/mのインクを用い、インク量を1.2〜4.5g/m(乾量)として黒色に印刷されることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版用内装材。
【請求項3】
アルミ蒸着フィルムと紙基材とを貼り合わせてなる平版印刷版用内装材であって、
黒色の接着剤を用いて前記アルミ蒸着フィルムと前記紙基材とが貼り合わされることを特徴とする平版印刷版用内装材。
【請求項4】
前記アルミ蒸着フィルムは、アルミニウムの蒸着厚さが、40nm〜100nmであり、カーボンブラックの含有量が、0.5g/m〜8.0g/mの接着剤を用いて前記紙基材に貼り合わされることを特徴とする請求項3に記載の平版印刷版用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−245513(P2007−245513A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71555(P2006−71555)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】