説明

平行度調整装置

【課題】従来の平行度調整装置で、中心に設けられた球を中心にフレキシブルに傾く二面の平行を3個の調整ボルトで平行調整することは、平行出しに熟練を要し、手間がかかった。
また、X方向、Y方向を二組のヒンジによりわずかに傾斜可能とし夫々を2個の調整ボルトで別個に調整する方式は三個の面板を要するため厚さを要しコストもかかった。
【解決手段】二個の面板の内側に、球をはさんだ2個の円錐穴球受け、V状長溝球受と先端に球を有する調整ボルト、および平面状アンビルと先端に球を有する調整ボルトの三個の支点により付勢力をもって接触し2個の調整ボルトが夫々独立してX方向、Y方向に調整可能にしたので、容易に平行度調整ができるようになり、かつスペース少なくローコストにできた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
具体的な用途例としてタッチセンサ(例マシニングセンタ用工具長プリセッタ)がある。図5は従来の平行度調整方法である。
22はタッチセンサ本体、16は測定軸、18は検知面、23は取付ブロックである。
タッチセンサ本体22と取付ブロック23の夫々に当接して設けられた円錐穴24に球25をはさみこみ三個の調整ボルト26で平行出しを行う。
検知面18の上面と取付ブロック23の底面との平行度は球25を中心として自在に傾き三個の調整ボルト26の出入りと傾きの調整方向とは一義的に定まらないので平行出しには熟練を要し手間がかかった。
【0003】
図6は別の従来例である。取付板27と中間板28は板バネ29をヒンジとして調整ボルト32の出し入れにより傾けられる。中間板28と上板30は板バネ29’をヒンジとして調整ボルト33の出し入れにより傾けられる。X方向の傾きは調整ボルト31、Y方向の傾きは調整ボルト32で調整ができる。板バネヒンジはピボットなど別の方法もある。
この方式はX、Y方向調整が各々単独の調整ボルトでできるので容易であるが、板が三枚でスペースをとり、コストがかかる。
【0004】
【非特許文献1】RENISHAW DATA SHEET MP4
【非特許文献2】(株)メトロール カタログC3P1−4
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は従来の方式の平行出し調整が熟練を要し、手間がかかりかつ高精度が得にくかったのに対して容易でかつ、より高精度に平行調整ができることを目的とするものである。また二個の面板でX方向、Y方向が調整できるので厚さがうすくローコストである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、二個の面板が内側面で球と円錐穴、球とV状長溝、および球と平面の中心部より離れた3支点で当接し、二個の調整ボルトは各々直交するX方向とY方向に対し別個に傾き調整が容易にできるようにした。
【発明の効果】
【0007】
上述したように本発明は一個の調整ボルトでX方向、もう一個の調整ボルトでY方向というように順序よく傾きを調整できるので容易にかつ高精度に二個の面板の平行度が調整可能である。また面板は二個なので厚さがうすくローコストである。さらに第一の面板をタッチセンサ本体の底面とし第二の面板をタッチセンサの取付面板とした場合、第一の面板に垂直な測定軸を有し上端に測定軸に直角で広い検知面を有するタッチセンサに応用し、検知面と取付面の平行度調整が容易かつ高精度にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0009】
図1は平行度調整装置の正面図および側面図
図2は3個の支点部の断面図を示す
【0010】
図1および2について説明する。
1は第一の面板、2は第二の面板である。
A位置にはA−A断面図に示すように、第一および第二の面板に当接する焼入した円錐穴球受3および3’が設けられ焼入球4が接触している。
B位置には、B−B断面図に示すように第二の面板にV状長溝球受5が設けられ、第一の面板には当接する位置にめねじ6があけられ、先端に焼入球7を有する調整ボルト8がねじこまれている。9は調整済後のロック用ナットである。C位置には、C−C断面図に示すように第二の面板に焼入れ平面状アンビル10が設けられ、第一の面板には当接する位置にめねじ6’があけられ先端に焼入球7’を有する調整ボルト8’がねじこまれている。
11は第一および第二の面板を密着させる方向に与える付勢力としての引っぱりばねが2個以上、(図では4個)面板に設けられたピン12にかけられている。第二の面板には複数の取付穴13があけられ第一面板には取付ボルトの逃げ14が設けられている。第二の面板を広くすれば逃げはなくてよい。
【0011】
図3はタッチセンサを本発明の平行出し装置に装着されている図を示す。
15はタッチセンサ本体である。16は測定軸で先端に接触子17を有し検知面18は平面で硬度の高い材料、通常超硬合金を用いる。センサ本体内には検出体(図示せず)が検知面18に当り測定軸16を押すと信号を発信するセンサ部(例えば電気接点、図は省略)が内蔵されている。
【0012】
1はセンサ本体15の底部に取付けられた第一の面板、2は第一の面板1と三個の支点球を介して隙間を保ち、当接する第2の面板である。
【0013】
第一の面板1にはセンサ本体15に取付けるための座ぐり穴19があり取付ボルト20でセンサ本体15のめねじ21にねじこまれ、通常は2個で固定されている。第二の面板2にはテーブルなどの機械取付部に取付けるための穴13があけられている。
【0014】
このタッチセンサにおいては検出体が検知面18のいずれの位置に当っても等しい寸法を示す位置信号を出力するためには検知面18と取付面の平行度精度が必要である。
【0015】
図4に工作機械に取りつけられた時センサ本体の重心位置を通る断面をX−Xとした時、A点B点はX−Xより若干(t)はなれたX’X’線上A、Bに位置しCは反対側の周辺に位置させる。そして重心DがA、B、Cを結ぶ三角形内にあるように配置する。それによってC点のY軸調整ボルトは常にコンタクト10に接触し浮くことはないので調整が容易である。
【0016】
以下に上記構成の動作を説明する。
最初、インジケータ(図示せず)を検知面18に当てX方向に走らせ、平行が出るよう調整ボルト8を回して調整する。
次に、インジケータを検知面18に当て、Y方向に走らせて平行が出るよう調整ハンドル8′を回して調整する。
調整し終ったら、調整ボルト8、8′のねじ部にねじこまれているロックナット9および9′を回してロックする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の請求項1の実施形態を示す平行度調整装置の正面図および側面図
【図2】上記図面の部分断面図
【図3】本発明の請求項2の実施形態を示すセンサ付平行度調整装置の正面図、側面図、背面図
【図4】三支点の関係位置
【図5】従来のセンサ付平行度調整装置
【図6】従来の平行度調整装置
【符号の説明】
【0018】
1. 第一の面板 22. タッチセンサ本体
2. 第二の面板 23. 取付ブロック
3. 円錐球受 24. 円錐穴
4,7,7’.焼入球 25. 球
5. V状長溝受 26・ 調整ボルト
6. めねじ 27. 取付板
8,8’. 調整ボルト 28. 中間板
10. 焼入アンビル 29,29’.板バネ
11. 引っぱりばね 30. 上板
12. ピン 31,32. 調整ボルト
13. 取付穴
14. 逃げ
15. センサ本体
16,23. 測定軸
17. 接触子
18. 検知面
19. 座ぐり穴
20. 取付ボルト
21. めねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の四角状面板(以下第一および第二の面板と記す)が内面側において後記三個の支点を介して僅かの隙間を形成し、相互に接近する方向に働く手段を有する。第一の支点は、二個の面板の当接する位置に球をはさんで両側に設けられた円錐穴球受けにより定位置を形成している。
第二の支点は、第二の面板に設けられたV状長溝球受けに対し、第一の面板の当接する位置にあけられためねじに螺合した第一の調整ボルトの先端に設けられた球が当接し、二個の面板の回転の制約と隙間量の調整ができる。第三の支点は、第一の支点と第二の支点を結ぶ線を底辺とした三角形の頂点に相当する位置にあり、第二の面板には平面状アンビルが設けられ、第一の面板には当接する位置にあけられためねじに螺合した第二の調整ボルトの先端に設けられた球が当接し、二個の面板の隙間量の調整ができる。第一の支点と第二の支点を結ぶ方向をX方向としたとき、第一の調整ボルトによりX方向の平行調整が単独ででき、第二の調整ボルトによりX方向と直角のY方向の平行調整ができることを特長とする平行度調整装置。
【請求項2】
前記、第一の面板上面は、その面板に垂直な測定軸を有し、上端には軸に直角で広い平面状接触子と検知面を有するタッチセンサ本体の底板であり、また当接する第二の面板には取付穴があり、上記タッチセンサの取付面板であって、上記平面状検知面と取付面板の平行度調整が二個の調整ボルトによりX方向、Y方向が単独に調整可能であることを特長とするタッチセンサに付属した第1項記載の平行度調整装置
【請求項3】
第二の面板および第二の面板上の積載物の重心を通る垂線は三ヶ所の支点を結ぶ三角形の内側にあることを特長とする第1項記載の平行度調整装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−312227(P2006−312227A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163240(P2005−163240)
【出願日】平成17年5月7日(2005.5.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成16年11月1日から11月8日 社団法人日本工作機械工業会、株式会社東京ビッグサイト共催の「JIMTOF2004(第22回 日本国際工作機械見本市)」に出品
【出願人】(000138071)株式会社メトロール (14)
【Fターム(参考)】