平角線の巻線構造
【課題】平角線の可撓性の低下を抑制しつつ、平角線の占積率を向上させる。
【解決手段】コア本体31と、コア本体31から径方向内側に延出して形成されたティース部33と、ティース部33の径方向内側の先端から周方向に延出して形成された鍔部34とを備え、ティース部33とコア本体31と鍔部34とに囲まれて形成されるスロット60に平角線12a,12b,12c,12dを多層に巻装されてコイル8が形成される平角線の巻線構造であって、平角線12a,12b,12c,12dの断面形状における厚さ寸法に対する幅寸法の比である扁平率をコイル8の内層から外層に進むにしたがって大きくするとともに、コイル8の各層毎のスロット60の幅寸法に応じて、スロット60と平角線12a,12b,12c,12dとの間に隙間が生じるのを抑制するように各層の平角線12a,12b,12c,12dの扁平率を設定する。
【解決手段】コア本体31と、コア本体31から径方向内側に延出して形成されたティース部33と、ティース部33の径方向内側の先端から周方向に延出して形成された鍔部34とを備え、ティース部33とコア本体31と鍔部34とに囲まれて形成されるスロット60に平角線12a,12b,12c,12dを多層に巻装されてコイル8が形成される平角線の巻線構造であって、平角線12a,12b,12c,12dの断面形状における厚さ寸法に対する幅寸法の比である扁平率をコイル8の内層から外層に進むにしたがって大きくするとともに、コイル8の各層毎のスロット60の幅寸法に応じて、スロット60と平角線12a,12b,12c,12dとの間に隙間が生じるのを抑制するように各層の平角線12a,12b,12c,12dの扁平率を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平角線の巻線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マグネットが設けられている回転子と巻線が巻装されている固定子鉄心とで構成されている電動機(ブラシレスモータ)は、その固定子鉄心のティース部に巻装されている巻線の密度(占積率)が高いほど性能を高めることができる。そこで、ティース部に巻線を巻回しやすくするためにティース部を含む積層鉄心片を電動機の軸線に沿って周方向に分割したものがある。このようにすることで、分割された積層鉄心片毎に巻線を巻回してから固定子鉄心を組立てることができるので占積率を高めることができる。
【0003】
ところで、巻線には断面円形のいわゆる丸線からなる巻線と、断面略長方形のいわゆる平角線からなる巻線とがある。平角線は、その形状の特徴から丸線と比較して固定子鉄心内での巻線間の隙間を小さくできるため、占積率をさらに向上させることができる。
【0004】
積層鉄心片のティースに平角線を巻回する際の占積率を向上させる技術として、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示された技術は、丸線を平角線に成形しつつ、平角線の断面形状を平角線の積層(巻線層)毎に変化させながら、平角線とティースとの間の隙間を最小限になるようにティースに巻回していき、占積率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−61442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、電動機の巻線に用いられる電線は、銅線材の周りをエナメル被覆して構成されている。このように表面にエナメル被膜を有する丸線の断面形状を変化させて平角線に成形すると、丸線を平角形状に成形時にエナメル被膜がストレスを受けるため、ティースに巻回する際の可撓性が低下するという課題がある。ここで、可撓性とは、平角線の曲げに対するエナメル被膜の追従性をいい、可撓性が低下すると、平角線の曲げに対してエナメル被膜が追従できず、エナメル被膜が損傷する場合もある。
したがって、占積率を向上させるために、丸線から平角線に成形する際にむやみに断面形状を変化させるわけにはいかず、検討の余地があった。
【0007】
そこで、この発明は、平角線の可撓性の低下を抑制しつつ、平角線の占積率を向上させることができる平角線の巻線構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る平角線の巻線構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、コア本体と、該コア本体から径方向内側に延出して形成されたティース部と、該ティース部の径方向内側の先端から周方向に延出して形成された鍔部とを備え、前記ティース部と前記コア本体と前記鍔部とに囲まれて形成されるスロットに平角線を多層に巻装されてコイルが形成される平角線の巻線構造であって、前記平角線の断面形状における厚さ寸法に対する幅寸法の比である扁平率を前記コイルの内層から外層に進むにしたがって大きくするとともに、前記コイルの各層毎の前記スロットの幅寸法に応じて、スロットと平角線との間に隙間が生じるのを抑制するように前記各層の前記平角線の扁平率が設定されていることを特徴とする平角線の巻線構造である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記コア本体は周方向に複数に分割されており、前記分割された各コア本体に前記ティース部がそれぞれ1つずつ設けられ、前記スロットは前記分割された各コア本体と該コア本体に設けられた前記ティース部と該ティース部に形成された前記鍔部とに囲まれて形成されており、前記分割されたコア本体の前記スロットに巻装された前記コイルの少なくとも一部の層では、径方向最内側に巻装された平角線の扁平率と、同一層にて前記平角線にその径方向外側にて隣接して巻装された平角線の扁平率とを異ならせ、前記コイルが前記スロットのコイル収容部内に収められていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記径方向最内側に巻装された平角線の扁平率は、前記隣接して巻装された平角線の扁平率よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記コイルの始端および終端は丸線とされていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記分割されたコア本体には、前記ティース部を挟んで一対の前記スロットが設けられ、前記ティース部には、前記コイルと前記コア本体との間を絶縁するための絶縁部材が取り付けられており、該絶縁部材における一対の前記スロット底部間の寸法は、前記ティース部の径方向外側よりも径方向内側が小さくなるように設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、ブラシレスモータの固定子鉄心におけるコイルの形成に適用されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、コイルの最内層の平角線の扁平率を一番小さくすることで、丸線から最内層の平角線に成形する際の変形量が小さくなり、最内層の平角線の可撓性の低下を抑制することができる。また、スロットに巻装する際に平角線を円弧状に略90度屈曲させる部分では、内側の層の平角線ほど曲率半径が小さくなるため大きなストレスを受けることとなるが、内側の層ほど平角線の扁平率が小さいので、内側の層ほどストレスを受けにくくすることができる。つまり、平角線の扁平率をコイルの内層から外層に進むにしたがって大きくすることにより、平角線の可撓性を低下させることがない絶縁性能を維持したコイルを形成することができる。
また、コイルの各層毎のスロットの幅寸法に応じて、スロットと平角線との間に隙間が生じるのを抑制するように前記各層の平角線の扁平率が設定されているので、占積率を向上させることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、分割されたコア本体において、少なくとも一部の層で、径方向最内側に巻装された平角線の扁平率と、同一層にて前記平角線にその径方向外側にて隣接して巻装された平角線の扁平率とを異ならせることにより、占積率をさらに向上させることができる。さらに、コイルをスロットのコイル収容部内に収めることができるので、分割されたコア本体を連結したときに、隣接するコイル同士が干渉しない範囲で占積率を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、径方向最内側に巻装された前記平角線の扁平率は、前記隣接して巻装された平角線の扁平率よりも大きく設定されているので、コイル収容部内のデッドスペースを詰めることができ、さらにコイルの占積率を高めることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、コイルの始端および終端は丸線とすることで、バスバーユニット等の接続部材との接続に、従来と同じ接続方法を採用することができ、製造設備等の変更を最小限なものとし、製造コストを抑えることもできる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、絶縁部材における一対のスロットの底部間の寸法を径方向内側ほど小さくすることにより、スロットに平角線を巻装する際に平角線が径方向外側に移動するのを抑制することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、ブラシレスモータの固定子において、平角線の可撓性を低下させることなく、コイルの占積率を向上させることができる。その結果、ブラシレスモータの出力密度を向上させることができ、小型、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態におけるブラシレスモータの構成を示す断面図である。
【図2】前記ブラシレスモータの固定子の構成を示す斜視図である。
【図3】前記固定子の積層鉄心片の構成を示す斜視図である。
【図4】前記積層鉄心片に平角線を巻回した状態を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図7】この発明の実施形態において用いられる平角線成形装置の構成図である。
【図8】この発明の実施形態における平角線の成形方法を説明する説明図である。
【図9】前記積層鉄心片に第1層目の平角線を巻回する手順を説明する図である。
【図10】前記積層鉄心片に第2層目の平角線を巻回する手順を説明する図である。
【図11】この発明の他の実施形態における積層鉄心片および絶縁部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施例を図1から図11の図面を参照して説明する。
図1に示すように、ブラシレスモータ1は、ハウジング2に圧入された固定子3と、固定子3に対して回転自在に設けられた回転子4とを有し、例えば、電動パワーステアリング(EPS;Electric Power Steering)の電動機として用いられるものである。
ハウジング2は、有底筒形状を有し、筒状部分の内周に固定子3が圧入されている。ハウジング2のエンド部(底部)2Aは、中央部に軸受け5を圧入してある。この軸受け5には、回転子4の回転軸6が回転自在に支持されている。ハウジング2の開口部は、ブラケット7で閉鎖されている。
【0022】
固定子3は、略円筒状の固定子鉄心10を有し、固定子鉄心10から径方向内側に延出して形成されたティース部とティース部に形成されたスロット内に挿入される後述する絶縁部材11を装着してから巻線である断面略矩形の平角線12を巻装してあり、平角線12の巻装によりコイル8が形成されている。
回転子4は、回転軸6に磁石13と、位置検出用のレゾルバ14のレゾルバ回転子14Aとを順番に配置してある。磁石13は、周方向に磁極が順番に変わるように着磁されている。
【0023】
ブラケット7は、円盤形状を有し、中央部に孔20が形成されている。孔20内には、軸受け21が圧入固定されており、軸受け21で回転軸6を回転自在に支持している。さらに、レゾルバ14を構成するレゾルバ固定子14Bがレゾルバ回転子14Aの位置に合わせて固定されており、回転軸6と一体に回転するレゾルバ回転子14Aの回転位置を検出可能になっている。また、ブラケット7のハウジング2側には、ターミナル22が複数配設されている。ターミナル22は、固定子3側の平角線12の固定子巻線と、ブラケット7の外周から引き込まれたリード線23とを電気的に繋ぐ役割を有し、リード線23を介して接続される外部の電源から平角線12に電流供給が可能になっている。この他にブラケット7の外周部には、ブラシレスモータ1を固定するときに使用されるボルト孔24が穿設されている。
【0024】
ここで、固定子鉄心10は、周方向に分割可能な分割コア方式が用いられている。すなわち、固定子鉄心10は、周方向に複数に分割された積層鉄心片30を環状に連結されて構成されている。図2〜図5に示すように、積層鉄心片30は、周方向に延びるコア本体31を有する。、コア本体31は、積層鉄心片30を環状に連結したときに固定子鉄心10の環状の磁路を形成する部分であり、且つハウジング2の内周面に圧入される部分であって、平面視略円弧状に形成されている。また、コア本体31は、固定子鉄心10の長さ方向(ブラシレスモータの軸線方向)に対して捩れつつ傾斜するように所定のスキュー角を有している。
【0025】
コア本体31の周方向の両端部は、他の積層鉄心片30に圧入によって連結される連結部32A,32Bになっている。一方の連結部32Aは凸形状を有し、他方の連結部32Bは連結部32Aを受け入れ可能な凹形状を有している。コア本体31の径方向内側の周方向の略中央部からは突極であるティース部33が固定子鉄心10の径方向内側(回転中心側)に向かって一体に延設されている。このティース部33もコア本体31と同様にスキューしている。
【0026】
また、ティース部33の径方向内側の端部には、周方向に延びる鍔部34が形成されている。これらティース部33とコア本体31と鍔部34とに囲まれて、平角線12を巻装するためのスロット60が形成されている。なお、各積層鉄心片30にはティース部33を挟んで一対のスロット60が設けられている。ここで、コア本体31の周方向端部と鍔部34の周方向端部とを結んだ仮想線(図5における二点鎖線)より内側がスロット60におけるコイル収容部61となる。
ティース部33の径方向内側の端部の外面には、2条の凹部35がティース部33と同じスキュー角度で形成されており、2条の凹部35によって一つの積層鉄心片30に対して三つのティースが形成されている。一方、鍔部34においてスロット60に面する部分は、スロット60の開口部に向かって徐々に広がるように斜壁部(スロット内側壁部)34Aが形成されている。これにより、スロット60は、スロット底部33Aからスロット60開口側に向けて徐々にその開口幅が広がるように構成されている。
【0027】
このように形成されたティース部33を囲むように絶縁部材11が装着されている。絶縁部材11は、ティース部33を積層鉄心片30の長さ方向(軸方向)の両端部30A,30Aから挟み込むように一つずつ装着される一対の樹脂製のインシュレータ40と、ティース部33とコア本体31と鍔部34とに囲まれたスロット60に挿入され、可撓性を有する一対の紙状の絶縁紙41とからなり、全体として略四角形状になっている。これらインシュレータ40と絶縁紙41からなる絶縁部材11によりコイル8と積層鉄心片30(コア本体31)との間が絶縁され、平角線12がティース部33に巻装されている。
【0028】
図4、図5に示すように、平角線12は、スロット60の径方向外側からティース部33の側面に設けられた絶縁紙41に沿って配索され、その後積層鉄心片30の両端部30A,30Aに装着されたインシュレータ40を経て再びスロット60へ、この順で複数回(この実施形態では21回)ティース部33に巻回され、複数の巻線層(この実施形態では5層)を形成している。具体的には、平角線12は、巻線層が1〜3層目においては5回巻回され、4層目においては4回巻回され、5層目においては2回巻回されている。
【0029】
ここで、平角線12の断面形状における厚さ寸法(積層方向に沿って測った寸法)に対する幅寸法(同一層において平角線12が隣接する方向に沿って測った寸法)の比を、平角線12の扁平率と定義すると、1層目の平角線12aの扁平率が2層目から5層目の各層の平角線12b,12c,12dの扁平率よりも小さく設定されている。
なお、「平角線12」と記載する場合には、平角線12a,12b,12c,12dを総称するものとする。
【0030】
また、1層目の平角線12aの扁平率は、1層目におけるスロット60の幅寸法(ティース部33の側面に沿って測った径方向の長さ)に応じて、1層目の平角線12aを互いに接触させて巻回したときにスロット60と平角線12aとの間に生じる隙間が最小となるように(換言すると、隙間が生じるのを抑制するように)設定されている。これは占積率を向上させるためである。
なお、この実施形態では1層目の平角線12aの断面形状は略正方形となっている。
【0031】
そして、2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの扁平率は、1層目の平角線12aの扁平率よりも大きく設定されている。2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの断面形状は略長方形になっている。また、4層目において径方向最内側の平角線12cと、5層目において径方向最内側の平角線12dを除いて、2層目から5層目の平角線12bの扁平率は、全て同一となっている。なお、2層目から3層目にかけての平角線12bの扁平率は、コイルの内層から外層に進むにしたがって僅かに大きくなるように設定されており、これにより、スロット底部33Aからスロット60開口側に向けて徐々にその開口幅が広がるように構成されているスロット60に対して、5回巻回された各層(1層目〜3層目)において、各層のスロット開口幅寸法に応じて扁平率が調整され、スロット60と平角線12bとの間の隙間をなくすようになっている。
【0032】
また、2層目と3層目の平角線12bの扁平率は、2層目および3層目におけるスロット60の幅寸法に応じて、2層目と3層目の各層において平角線12bを互いに接触させて巻回したときにスロット60と平角線12bとの間に生じる隙間が最小となるように(換言すると、隙間が生じるのを抑制するように)設定されている。これは、1層目におけるスロット60の幅と、2層目、3層目におけるスロット60の幅では寸法が異なるからであり、このように層によって平角線12の扁平率を変えることによって、占積率を向上させることができる。
【0033】
4層目に関しては、径方向最内側に巻装された平角線12cの扁平率が、4層目において前記平角線12cよりも径方向外側に巻回された平角線12bの扁平率よりも大きく設定されている。
この理由は次の通りである。4層目の平角線12の扁平率を全て平角線12bの扁平率と同じにして巻回すると、径方向最内側に巻装される平角線12bの一部が、スロット60のコイル収容部61内に収まらなくなり、コイル収容部61から突出してしまうことがある。このようにコイル収容部61からコイル8の一部が突出していると、積層鉄心片30を環状に連結して固定子鉄心10とするときに、隣接するスロット60に巻装されたコイル8同士が干渉してしまい、固定子鉄心10を組み立てられなくなる。
そこで、4層目においては径方向最内側に巻回される平角線12cの扁平率を調整し、平角線12bの扁平率よりも大きくすることで、4層目の径方向最内側に巻装された平角線12cがコイル収容部61内に収容されるようにするとともに、コイル収容部61内のデッドスペースを詰めるよう極力隙間が生じないようにした。
【0034】
5層目に関しては、径方向最内側に巻装された平角線12dの扁平率が、5層目においてこの平角線12dよりも径方向外側に巻回された平角線12bの扁平率よりも大きく設定されている。この理由は、前記4層目の径方向最内側に巻装された平角線12cの場合と同様である。
4層目と5層目において径方向最内側に巻装される平角線12c,12dの扁平率を上述のように設定することにより、隣接するスロット60に巻装されたコイル8同士が干渉しない範囲で占積率を向上させることができる。
【0035】
また、1層目の平角線12aの扁平率を、2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの扁平率よりも小さくした理由は次の通りである。
後述するように、平角線12は、丸線からなる丸素線71をローラ73で押し潰しながら形成していく。この丸素線71は、銅線材の周りをエナメル被覆して構成されているため、丸素線11を押し潰して変形させていくときにエナメル被膜がストレスを受け、平角線12の可撓性が低下する場合がある。ここで、丸素線11から平角線12に成形する場合に、成形後の平角線12の扁平率が大きいほどエナメル被膜自体の変形量が大きくなって受けるストレスも大きくなり、成形後の平角線12の扁平率が小さいほどエナメル被膜自体の変形量も少なく受けるストレスも小さくなる。
【0036】
一方、平角線12をティース部33に巻回する際には、図6に示すように、ティース部33の端部30Aに装着されたインシュレータ40の外側を巻回する部分があり、スロット60からインシュレータ40の外側に巻回される部分と、インシュレータ40の外側から再びスロット60に巻回される部分(以下、いずれも屈曲部15という)において、平角線12はそれぞれ円弧状に約90度屈曲されることとなる。そして、平角線12を巻回する際に、これら屈曲部15において平角線12のエナメル被膜はストレスを受けることとなる。この場合、内側の層ほど、平角線12は曲率半径の小さい円弧状に屈曲されるので、エナメル被膜が受けるストレスは大きくなる。したがって、1層目の平角線12aは一番可撓性が低下し易い状況となる。
【0037】
そこで、1層目の平角線12aの扁平率を、2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの扁平率よりも小さくすることで、丸素線11から最内層である1層目の平角線12aに成形する際の変形度合いを小さくしてエナメル被膜へのストレスを極力小さくするとともに、1層目の平角線12aをティース部33に巻回するときの屈曲部15におけるエナメル被膜へのストレスを極力小さくする。これにより、1層目の平角線12aの可撓性の低下を抑制することができる。
つまり、平角線12の扁平率をコイル8の内層から外層に進むにしたがって大きくすることにより、平角線12の可撓性を低下させることがないコイル8を形成することができる。
【0038】
このような巻線構造とすることで、積層鉄心片30のスロット60のコイル収容部61内の隙間を最小限にすることが可能となり、固定子鉄心10の巻線の占積率を向上させることが可能となる。
なお、平角線12の扁平率を変化させる部位(つまり、断面形状を変化させる部位)は、特に限定されるものではないが、扁平率を変化させる部位をスロット60内ではなく、積層鉄心片30の両端部30A,30Aに装着されたインシュレータ40上とするのが好ましい。このようにすると、より正確に平角線12をスロット60内で隙間なく整列させることができ、より占積率を高めることができる。
【0039】
次に、平角線12の成形方法について図7、図8に基づいて説明する。
図7、図8に示すように、平角線成形装置70は、断面円形の丸素線71を巻装した巻線リール72と、平角線を形成するための平角線成形ローラ73を備えている。巻線リール72は、回転自在に支持されている。平角線成形ローラ73は、第一ローラ74、第二ローラ75及び第三ローラ76の三つのローラ74,74,76で構成されている。
【0040】
第一ローラ74は、丸素線71を上下方向から押し潰すためのもので、上下一対のローラ74A,74Bが回転自在に設けられている。第二ローラ75は、丸素線71を横方向から押し潰すためのもので、左右一対のローラ75A,75Bが回転自在に設けられている。第三ローラ76は、丸素線71を再び上下方向から押し潰すためのもので上下一対のローラ76A,76Bが回転自在に設けられている。これらローラ76A,76Bは、それぞれ上下方向にスライド可能に設けられている。また、第三ローラ76は不図示の制御部に電気的に接続されており、制御部の信号に基づいてローラ76A,76B間の距離を適宜設定できるようになっている。また、平角線成形ローラ73の下流側(図7における右側)には、固定子鉄心10を構成する積層鉄心片30が平角線12の巻回方向に向かって回転可能にセットされている。
【0041】
そして、巻線リール72から引出された丸素線71は、まず、第一ローラ74を通過することによって上下方向に押し潰される。次に、第二ローラ75を通過することによって横方向が押し潰され、扁平率の一番小さい断面略正方形の仮平角線12Aが形成される。この仮平角線12aの扁平率は、積層鉄心片30のティース部33に1層目として巻回される平角線12aの扁平率と同一に設定されている。
【0042】
その後、第三ローラ76によって仮平角線12Aが所定の厚さに押し潰され、仮平角線12Aから所定の扁平率の平角線12b,12c,12dに形成される。つまり、第三ローラ76によって、平角線12の扁平率を決定するようになっている。そして、所定の扁平率に形成された平角線12は、積層鉄心片30のスロット60へと巻装されていく。尚、第三ローラ76に電気的に接続されている制御部には、予め仮平角線12Aが第三ローラ76を所定長さ通過するとローラ76A,76B間の距離が変化するようにプログラムされており、1層目の平角線12aを形成するときには、第三ローラ76は最大幅となって仮平角線12Aから離間し、成形に関与しないように設定されている。
【0043】
つまり、第三ローラ76は、仮平角線12Aがスロット60に対して1ターン分(巻線層1層分)の長さだけ通過すると、ローラ76A,76Bが互いに接近する方向にスライドするようにプラグラムされている。これによって、スロット60において2層目以降の平角線12の厚さが1層目と比較して薄くなり、すなわち2層目以降の平角線12の扁平率が1層目の平角線12aの扁平率よりも大きくなる。
このように、2層目以降の平角線12は、丸素線71を横方向に1回、上下方向に2回押し潰すことによって、扁平率が決定されるようになっている。
ここで、各ローラ74、75、76による丸素線71の押し潰し量(変形量)により、丸素線71のエナメル皮膜の受けるストレスも変化し、特に扁平率の大きな成形を行う場合、エナメル被覆の受けるストレスも大きなものとなる。
【0044】
なお、スロット60に平角線12を巻回する場合、図5において矢印で示すように、1層目、3層目、5層目の奇数層では径方向外側から径方向内側へ向かって巻回していき、2層目、4層目の偶数層では径方向内側から径方向外側へ向かって巻回していく。
このように平角線12を巻回していく場合には、1層目の径方向最内側に巻回される平角線12aの成形から2層目の径方向最内側に巻回される平角線12bの成形に移行するときに、平角線12bの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を狭める。
【0045】
また、3層目の径方向最内側に巻回される平角線12bの成形から4層目の径方向最内側に巻回される平角線12cの成形に移行するときに、平角線12cの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を狭め、この状態で仮平角線12Aをスロット60の1回転分の長さだけ通過させた後、再び平角線12bの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を広げる。
さらに、5層目の径方向最外側に巻回される平角線12bの成形から5層目の径方向最内側に巻回される平角線12dの成形に移行するときに、平角線12dの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を狭める。
【0046】
このように第三ローラ76のローラ76A,76B間の寸法を制御することによって、固定子鉄心10における積層鉄心片30に、扁平率の異なる平角線12a,12b,12c,12dを、それぞれ所望する巻線層の所望する径方向位置に巻回することができる。その結果、積層鉄心片30のスロット60のコイル収容部61内の隙間を最小限にして、固定子鉄心10の巻線である平角線12の占積率を向上させることができる。
【0047】
なお、図6に示すように、積層鉄心片30に巻装された平角線12の始端16と終端(図示略)を、平角線12に成形しないで丸素線71のままにしておくと、これら始端16及び終端をバスバーユニット等の接続部材に接続する際に、従来と同じ接続方法を採用することができ、製造設備等の変更を最小限なものとし、製造コストを抑えられるというメリットがある。
【0048】
ところで、図5に示すように、積層鉄心片30のコア本体31は、スロット60に面する外周側のスロット対向面(スロット外側壁部)36が、固定子鉄心10(積層鉄心片30)の径方向に対して直交しておらず、周方向内側に進むにしたがって径方向外側に傾斜する、所謂オーバハング形状をなしている。
そのため、積層鉄心片30のティース部33に平角線12を巻回するときに、平角線12を、固定子鉄心10(積層鉄心片30)の径方向に対して直交する方向からスロット60に挿入することができないので、図9、図10に示すようにガイド50を用いて、平角線12をスロット60内に案内しながら巻回する。
【0049】
ガイド50は、積層鉄心片30のティース部33を挟んで両側のスロット60に対して配置されており、コア本体31のスロット対向面(スロット外側壁部)36と略平行に延びるアーム51を有している。このアーム51においてスロット対向面(スロット外側壁部)36と対向する側の面が、平角線12を摺接して案内するガイド面52となっている。ガイド50は、積層鉄心片30に対して、積層鉄心片30の径方向(図9、図10においてX方向)及び該径方向と直交する方向(図9、図10においてY方向)に移動可能に設けられていて、ガイド50を移動させることにより、アーム51をスロット60内に進入させたり、スロット60の外に退避させることができるようになっている。また、ガイド50をX方向に移動させることにより層毎に巻回される平角線12を案内し、ガイド50をY方向に移動させることにより平角線12の層の切り替わりに対応できるようになっている。
【0050】
以下、図9及び図10を参照して、ガイド50の作用を説明する。
まず、図9を参照して、1層目の平角線12aを巻回する場合について説明する。
1層目の平角線12aをティース部33に巻回するときには、初めに、図9(A)に示すように、アーム51のガイド面52とコア本体31のスロット対向面(スロット外側壁部)36との隙間が、平角線12aがガイド面52に沿ってほぼ隙間なく摺動可能な大きさとなるようにするとともに、1層目の径方向最外側の平角線12aを絶縁部材11に接触させて巻回したときに、アーム51の先端部53がこの平角線12aの側面の一部を径方向内側から受けるように、ガイド50を位置させる。
【0051】
このようにガイド50位置させた状態から、1層目における1周目の平角線12aの巻回を開始し、ガイド50を積層鉄心片30と共に回転させながらティース部33に巻回していき、積層鉄心片30が1回転する間に、ガイド50を径方向内側に平角線12aの幅寸法分だけ移動させる。平角線12aは絶縁部材11(インシュレータ40、絶縁紙41)とガイド面52によりガイドされて巻装される。図9(A)は、1層目における1周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0052】
同様にして、積層鉄心片30を1回転する毎に、ガイド50を径方向内側に平角線12aの幅寸法分だけ移動させながら、1層目の平角線12aを順次巻回していく。このように、平角線12aはガイド面52と1層目で既に巻装された平角線12aの径方向内側の壁面によりガイドされて5回巻回される。このとき、1層目の平角線12aの断面形状は略正方形となっているが、実際の扁平率は、スロット60と平角線12aとの間の隙間をなくすように調整されている。
図9(B)は、1層目における2周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図であり、図9(C)は、1層目における3周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
なお、ガイド50の動きは、平角線12を径方向外側から径方向内側に向かって移動しながら巻回していく奇数層(1層目と3層目と5層目)では、上述した1層目におけるガイド50の動きと同様となる。
【0053】
次に、図10を参照して、1層目の平角線12aの上に、2層目の平角線12bを巻回する場合について説明する。
2層目の平角線12bは、前述したように、径方向最内側から径方向外側に向かって巻回していくので、2層目における1周目の平角線12bを巻回するときには、図10(A)に示すように、アーム51の先端部53が積層鉄心片30の鍔部34にほぼ当接するように配置するとともに、先端部53におけるガイド面52が鍔部34の斜壁部34Aとほぼ面一となるように、ガイド50を位置させる。
このようにガイド50位置させた状態で、2層目における1周目の平角線12bの巻回を開始し、積層鉄心片30を回転させながら1層目の平角線12aの上に巻回していく。平角線12aはガイド面52と絶縁部材11によりガイドされて巻装される。図10(A)は、2層目における1周目の平角線12bの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0054】
2層目における1周目の平角線12bの巻回が終了した後、ガイド50を、2層目における2周目の平角線12bの巻回を案内する位置に移動させる。すなわち、図10(B)に示すように、ガイド50のアーム51の先端53をスロット60のコイル収容部61内に進入させ、アーム51の先端53を、2層目における1周目の平角線12bに当接させるとともに、アーム51の先端53のガイド面52が、2層目における1周目の平角線12bの径方向外側の側面とほぼ面一となるように、ガイド50を位置させる。
このようにガイド50位置させた状態から、2層目における2周目の平角線12bの巻回を開始し、ガイド50を積層鉄心片30と共に回転させながら1層目の平角線12aの上に巻回していき、積層鉄心片30が1回転する間に、ガイド50を径方向外側に平角線12bの幅寸法分だけ移動させる。図10(B)は、2層目における2周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0055】
同様にして、積層鉄心片30を1回転する毎に、ガイド50を径方向外側に平角線12bの幅寸法分だけ移動させながら、2層目の平角線12bをガイド面52と2層目の平角線12bの径方向外側の壁面によりガイドして5回順次巻回していく。このとき、2層目の平角線12bの扁平率は、スロット60と平角線12bとの間の隙間をなくすように調整される。図10(C)は、2層目における3周目の平角線12bの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0056】
3層目の平角線12bについては、奇数層である1層目の平角線12aと同様に巻回されるが、このとき、3層目のスロットのスロット開口幅は2層目のスロット開口幅と異なるため、3層目の平角線12bの扁平率も、スロット60と平角線12bとの間の隙間をなくすように調整される。
なお、ガイド50の動きは、平角線12を径方向内側から径方向外側に向かって移動しながら巻回していく偶数層(2層目と4層目)では、上述した2層目におけるガイド50の動きと同様となる。
このように、ガイド50を用いることにより、スロット60内に平角線12を案内して、巻回していくことができる。
【0057】
ところで、奇数層において平角線12を巻回する場合には、図9に示すように、巻回中の平角線12は、既に同一層に巻回されている平角線12の径方向内側の壁部とガイド50のアーム51の先端53とによって径方向内側と外側とをガイドする状態となるため、巻回中の平角線12が径方向へ移動することはない。
しかしながら、偶数層において平角線12を巻回する場合には、図10に示すように、巻回中の平角線12は、既に同一層に巻回されている平角線12の径方向内側の壁部によって径方向内側への移動は規制されるが、巻回中の平角線12の径方向外側は空間が広がっており、移動を規制するガイド部材が存在しないため、巻回中の平角線12が滑って径方向外側へ移動する虞がある。
もし仮に、巻回中の平角線12が径方向に移動してしまうと、それ以降の平角線12の巻回に悪影響を及ぼし、平角線12を隙間なく整列させることが困難になり、占積率が低下する虞もある。
【0058】
そこで、これを防止するために、図11に示すように、スロット底部33Aに位置する絶縁部材11の径方向外側の厚さを径方向内側の厚さよりも厚くすることによって、絶縁部材11の外面に若干のテーパを付け、スロット60の底部間の寸法を、径方向外側の寸法aよりも径方向内側の寸法bが小さくなるよう(a>b)にすることも可能である。このようにしておくと、絶縁部材11の表面の傾斜によって、偶数層において平角線12を巻回しているときに、巻回中の平角線12が滑って径方向外側へ移動するのを抑制することができる。
なお、絶縁部材11の厚さは変化させずに均一とし、磁気特性に影響しない範囲で積層鉄心片30のティース部33の幅を径方向外側よりも径方向内側を小さくすることで、スロット60の底部間の寸法を、径方向外側よりも径方向内側が小さくなるようにすることも可能である。
【0059】
以上説明するように、この実施形態によれば、コイル8の最内層の平角線12aの扁平率を一番小さくすることで、丸素線71から最内層の平角線12aに成形する際の変形量が小さくなり、エナメル被膜のストレスを小さくして最内層の平角線12aの可撓性の低下を抑制することができる。
【0060】
また、平角線12をスロット60に巻装する際に屈曲部15において平角線12を円弧状に略90度屈曲させるため、内側の層の平角線12ほど曲率半径が小さくなるため大きなストレスを受けることとなるが、内側の層ほど平角線12の扁平率が小さいので、内側の層の平角線12ほどストレスを受けにくくすることができる。
つまり、平角線12の扁平率をコイル8の内層から外層に進むにしたがって大きくすることにより、平角線12の可撓性を低下させることがない絶縁性能を維持したコイル8を形成することができる。
【0061】
また、コイル8の各層毎のスロット60の幅寸法に応じて、スロット60と平角線12との間に隙間が生じるのを抑制するように各層の平角線12の扁平率が設定されているので、占積率を向上させることができる。
そして、この平角線の巻線構造を採用したブラシレスモータ1の固定子鉄心10において、平角線12の可撓性を低下させることなく、コイル8の占積率を向上させることができるので、ブラシレスモータ1の出力密度を向上させることができ、小型、低コスト化を図ることができる。
【0062】
尚、この発明は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、平角線12の巻線層の数を5層としたが、これに限るものではなく、4層以下であってもよいし、6層以上であってもよい。また、各層における平角線12の巻回数も前述した実施形態のものに限るものではない。要するに、スロット60の形状、大きさに応じて層数も巻回数も適宜設定されるものである。
【0063】
また、前述した実施形態では、2層目と3層目の平角線12bの扁平率も各層のスロット開口幅寸法に応じて調整するようにしたが、同様に、4層目、5層目の平角線12の扁平率についても、2層目と3層目の平角線12bの扁平率と異ならせてもよい。さらに、各層の平角線12bの扁平率は同一であってもよい。つまり、これらの扁平率については、スロット60と平角線12との間に隙間が生じるのを抑制するように考慮した上で、スロット60の形状、大きさに応じて適宜設定されるものである。
【0064】
そして、上述の実施形態では、平角線12の扁平率を、丸素線71を横方向に1回、上下方向に2回押し潰すことによって設定する場合について説明したが、横方向に2回、上下方向に1回押し潰すことによって平角線12の扁平率を設定してもよい。また、1方向を2回押し潰すことによって平角線12の扁平率を設定する場合に限らず、1方向を押し潰す回数は3回以上であってもよい。この場合、平角線成形装置70の第三ローラ76の下流側(図7における右側)に、さらに第四ローラ、第五ローラ、…、を設ければよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、固定子鉄心10が周方向に分割された積層鉄心片30より構成されている、いわゆる分割コア方式の場合について説明したが、固定子鉄心10が分割コアでない一体成形されたものであっても、この実施形態における平角線12の巻線構造を適用することができる。
さらに、上述の実施形態では、コア本体31(ティース部33)が固定子鉄心10の長さ方向(ブラシレスモータの軸線)に対して捩れつつ傾斜するように所定のスキュー角を有している場合について説明したが、コア本体31(ティース部33)がスキュー角を有さないものであっても、この実施形態における平角線12の巻線構造を適用することができる。
【0066】
さらに、上述の実施形態では、コア本体31のスロット60に紙状の絶縁紙41を挿入したものを説明したが、これに限らず、スロット60に挿入される部分を樹脂にてインシュレータ40と一体形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ブラシレスモータ
3 固定子
4 回転子
8 コイル
10 固定子鉄心
11 絶縁部材
12,12a,12b,12c,12d 平角線
30 積層鉄心片
31 コア本体
33 ティース部
34 鍔部
60 スロット
71 丸素線
【技術分野】
【0001】
この発明は、平角線の巻線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マグネットが設けられている回転子と巻線が巻装されている固定子鉄心とで構成されている電動機(ブラシレスモータ)は、その固定子鉄心のティース部に巻装されている巻線の密度(占積率)が高いほど性能を高めることができる。そこで、ティース部に巻線を巻回しやすくするためにティース部を含む積層鉄心片を電動機の軸線に沿って周方向に分割したものがある。このようにすることで、分割された積層鉄心片毎に巻線を巻回してから固定子鉄心を組立てることができるので占積率を高めることができる。
【0003】
ところで、巻線には断面円形のいわゆる丸線からなる巻線と、断面略長方形のいわゆる平角線からなる巻線とがある。平角線は、その形状の特徴から丸線と比較して固定子鉄心内での巻線間の隙間を小さくできるため、占積率をさらに向上させることができる。
【0004】
積層鉄心片のティースに平角線を巻回する際の占積率を向上させる技術として、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示された技術は、丸線を平角線に成形しつつ、平角線の断面形状を平角線の積層(巻線層)毎に変化させながら、平角線とティースとの間の隙間を最小限になるようにティースに巻回していき、占積率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−61442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、電動機の巻線に用いられる電線は、銅線材の周りをエナメル被覆して構成されている。このように表面にエナメル被膜を有する丸線の断面形状を変化させて平角線に成形すると、丸線を平角形状に成形時にエナメル被膜がストレスを受けるため、ティースに巻回する際の可撓性が低下するという課題がある。ここで、可撓性とは、平角線の曲げに対するエナメル被膜の追従性をいい、可撓性が低下すると、平角線の曲げに対してエナメル被膜が追従できず、エナメル被膜が損傷する場合もある。
したがって、占積率を向上させるために、丸線から平角線に成形する際にむやみに断面形状を変化させるわけにはいかず、検討の余地があった。
【0007】
そこで、この発明は、平角線の可撓性の低下を抑制しつつ、平角線の占積率を向上させることができる平角線の巻線構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る平角線の巻線構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、コア本体と、該コア本体から径方向内側に延出して形成されたティース部と、該ティース部の径方向内側の先端から周方向に延出して形成された鍔部とを備え、前記ティース部と前記コア本体と前記鍔部とに囲まれて形成されるスロットに平角線を多層に巻装されてコイルが形成される平角線の巻線構造であって、前記平角線の断面形状における厚さ寸法に対する幅寸法の比である扁平率を前記コイルの内層から外層に進むにしたがって大きくするとともに、前記コイルの各層毎の前記スロットの幅寸法に応じて、スロットと平角線との間に隙間が生じるのを抑制するように前記各層の前記平角線の扁平率が設定されていることを特徴とする平角線の巻線構造である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記コア本体は周方向に複数に分割されており、前記分割された各コア本体に前記ティース部がそれぞれ1つずつ設けられ、前記スロットは前記分割された各コア本体と該コア本体に設けられた前記ティース部と該ティース部に形成された前記鍔部とに囲まれて形成されており、前記分割されたコア本体の前記スロットに巻装された前記コイルの少なくとも一部の層では、径方向最内側に巻装された平角線の扁平率と、同一層にて前記平角線にその径方向外側にて隣接して巻装された平角線の扁平率とを異ならせ、前記コイルが前記スロットのコイル収容部内に収められていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記径方向最内側に巻装された平角線の扁平率は、前記隣接して巻装された平角線の扁平率よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記コイルの始端および終端は丸線とされていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記分割されたコア本体には、前記ティース部を挟んで一対の前記スロットが設けられ、前記ティース部には、前記コイルと前記コア本体との間を絶縁するための絶縁部材が取り付けられており、該絶縁部材における一対の前記スロット底部間の寸法は、前記ティース部の径方向外側よりも径方向内側が小さくなるように設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、ブラシレスモータの固定子鉄心におけるコイルの形成に適用されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、コイルの最内層の平角線の扁平率を一番小さくすることで、丸線から最内層の平角線に成形する際の変形量が小さくなり、最内層の平角線の可撓性の低下を抑制することができる。また、スロットに巻装する際に平角線を円弧状に略90度屈曲させる部分では、内側の層の平角線ほど曲率半径が小さくなるため大きなストレスを受けることとなるが、内側の層ほど平角線の扁平率が小さいので、内側の層ほどストレスを受けにくくすることができる。つまり、平角線の扁平率をコイルの内層から外層に進むにしたがって大きくすることにより、平角線の可撓性を低下させることがない絶縁性能を維持したコイルを形成することができる。
また、コイルの各層毎のスロットの幅寸法に応じて、スロットと平角線との間に隙間が生じるのを抑制するように前記各層の平角線の扁平率が設定されているので、占積率を向上させることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、分割されたコア本体において、少なくとも一部の層で、径方向最内側に巻装された平角線の扁平率と、同一層にて前記平角線にその径方向外側にて隣接して巻装された平角線の扁平率とを異ならせることにより、占積率をさらに向上させることができる。さらに、コイルをスロットのコイル収容部内に収めることができるので、分割されたコア本体を連結したときに、隣接するコイル同士が干渉しない範囲で占積率を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、径方向最内側に巻装された前記平角線の扁平率は、前記隣接して巻装された平角線の扁平率よりも大きく設定されているので、コイル収容部内のデッドスペースを詰めることができ、さらにコイルの占積率を高めることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、コイルの始端および終端は丸線とすることで、バスバーユニット等の接続部材との接続に、従来と同じ接続方法を採用することができ、製造設備等の変更を最小限なものとし、製造コストを抑えることもできる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、絶縁部材における一対のスロットの底部間の寸法を径方向内側ほど小さくすることにより、スロットに平角線を巻装する際に平角線が径方向外側に移動するのを抑制することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、ブラシレスモータの固定子において、平角線の可撓性を低下させることなく、コイルの占積率を向上させることができる。その結果、ブラシレスモータの出力密度を向上させることができ、小型、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態におけるブラシレスモータの構成を示す断面図である。
【図2】前記ブラシレスモータの固定子の構成を示す斜視図である。
【図3】前記固定子の積層鉄心片の構成を示す斜視図である。
【図4】前記積層鉄心片に平角線を巻回した状態を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図7】この発明の実施形態において用いられる平角線成形装置の構成図である。
【図8】この発明の実施形態における平角線の成形方法を説明する説明図である。
【図9】前記積層鉄心片に第1層目の平角線を巻回する手順を説明する図である。
【図10】前記積層鉄心片に第2層目の平角線を巻回する手順を説明する図である。
【図11】この発明の他の実施形態における積層鉄心片および絶縁部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施例を図1から図11の図面を参照して説明する。
図1に示すように、ブラシレスモータ1は、ハウジング2に圧入された固定子3と、固定子3に対して回転自在に設けられた回転子4とを有し、例えば、電動パワーステアリング(EPS;Electric Power Steering)の電動機として用いられるものである。
ハウジング2は、有底筒形状を有し、筒状部分の内周に固定子3が圧入されている。ハウジング2のエンド部(底部)2Aは、中央部に軸受け5を圧入してある。この軸受け5には、回転子4の回転軸6が回転自在に支持されている。ハウジング2の開口部は、ブラケット7で閉鎖されている。
【0022】
固定子3は、略円筒状の固定子鉄心10を有し、固定子鉄心10から径方向内側に延出して形成されたティース部とティース部に形成されたスロット内に挿入される後述する絶縁部材11を装着してから巻線である断面略矩形の平角線12を巻装してあり、平角線12の巻装によりコイル8が形成されている。
回転子4は、回転軸6に磁石13と、位置検出用のレゾルバ14のレゾルバ回転子14Aとを順番に配置してある。磁石13は、周方向に磁極が順番に変わるように着磁されている。
【0023】
ブラケット7は、円盤形状を有し、中央部に孔20が形成されている。孔20内には、軸受け21が圧入固定されており、軸受け21で回転軸6を回転自在に支持している。さらに、レゾルバ14を構成するレゾルバ固定子14Bがレゾルバ回転子14Aの位置に合わせて固定されており、回転軸6と一体に回転するレゾルバ回転子14Aの回転位置を検出可能になっている。また、ブラケット7のハウジング2側には、ターミナル22が複数配設されている。ターミナル22は、固定子3側の平角線12の固定子巻線と、ブラケット7の外周から引き込まれたリード線23とを電気的に繋ぐ役割を有し、リード線23を介して接続される外部の電源から平角線12に電流供給が可能になっている。この他にブラケット7の外周部には、ブラシレスモータ1を固定するときに使用されるボルト孔24が穿設されている。
【0024】
ここで、固定子鉄心10は、周方向に分割可能な分割コア方式が用いられている。すなわち、固定子鉄心10は、周方向に複数に分割された積層鉄心片30を環状に連結されて構成されている。図2〜図5に示すように、積層鉄心片30は、周方向に延びるコア本体31を有する。、コア本体31は、積層鉄心片30を環状に連結したときに固定子鉄心10の環状の磁路を形成する部分であり、且つハウジング2の内周面に圧入される部分であって、平面視略円弧状に形成されている。また、コア本体31は、固定子鉄心10の長さ方向(ブラシレスモータの軸線方向)に対して捩れつつ傾斜するように所定のスキュー角を有している。
【0025】
コア本体31の周方向の両端部は、他の積層鉄心片30に圧入によって連結される連結部32A,32Bになっている。一方の連結部32Aは凸形状を有し、他方の連結部32Bは連結部32Aを受け入れ可能な凹形状を有している。コア本体31の径方向内側の周方向の略中央部からは突極であるティース部33が固定子鉄心10の径方向内側(回転中心側)に向かって一体に延設されている。このティース部33もコア本体31と同様にスキューしている。
【0026】
また、ティース部33の径方向内側の端部には、周方向に延びる鍔部34が形成されている。これらティース部33とコア本体31と鍔部34とに囲まれて、平角線12を巻装するためのスロット60が形成されている。なお、各積層鉄心片30にはティース部33を挟んで一対のスロット60が設けられている。ここで、コア本体31の周方向端部と鍔部34の周方向端部とを結んだ仮想線(図5における二点鎖線)より内側がスロット60におけるコイル収容部61となる。
ティース部33の径方向内側の端部の外面には、2条の凹部35がティース部33と同じスキュー角度で形成されており、2条の凹部35によって一つの積層鉄心片30に対して三つのティースが形成されている。一方、鍔部34においてスロット60に面する部分は、スロット60の開口部に向かって徐々に広がるように斜壁部(スロット内側壁部)34Aが形成されている。これにより、スロット60は、スロット底部33Aからスロット60開口側に向けて徐々にその開口幅が広がるように構成されている。
【0027】
このように形成されたティース部33を囲むように絶縁部材11が装着されている。絶縁部材11は、ティース部33を積層鉄心片30の長さ方向(軸方向)の両端部30A,30Aから挟み込むように一つずつ装着される一対の樹脂製のインシュレータ40と、ティース部33とコア本体31と鍔部34とに囲まれたスロット60に挿入され、可撓性を有する一対の紙状の絶縁紙41とからなり、全体として略四角形状になっている。これらインシュレータ40と絶縁紙41からなる絶縁部材11によりコイル8と積層鉄心片30(コア本体31)との間が絶縁され、平角線12がティース部33に巻装されている。
【0028】
図4、図5に示すように、平角線12は、スロット60の径方向外側からティース部33の側面に設けられた絶縁紙41に沿って配索され、その後積層鉄心片30の両端部30A,30Aに装着されたインシュレータ40を経て再びスロット60へ、この順で複数回(この実施形態では21回)ティース部33に巻回され、複数の巻線層(この実施形態では5層)を形成している。具体的には、平角線12は、巻線層が1〜3層目においては5回巻回され、4層目においては4回巻回され、5層目においては2回巻回されている。
【0029】
ここで、平角線12の断面形状における厚さ寸法(積層方向に沿って測った寸法)に対する幅寸法(同一層において平角線12が隣接する方向に沿って測った寸法)の比を、平角線12の扁平率と定義すると、1層目の平角線12aの扁平率が2層目から5層目の各層の平角線12b,12c,12dの扁平率よりも小さく設定されている。
なお、「平角線12」と記載する場合には、平角線12a,12b,12c,12dを総称するものとする。
【0030】
また、1層目の平角線12aの扁平率は、1層目におけるスロット60の幅寸法(ティース部33の側面に沿って測った径方向の長さ)に応じて、1層目の平角線12aを互いに接触させて巻回したときにスロット60と平角線12aとの間に生じる隙間が最小となるように(換言すると、隙間が生じるのを抑制するように)設定されている。これは占積率を向上させるためである。
なお、この実施形態では1層目の平角線12aの断面形状は略正方形となっている。
【0031】
そして、2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの扁平率は、1層目の平角線12aの扁平率よりも大きく設定されている。2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの断面形状は略長方形になっている。また、4層目において径方向最内側の平角線12cと、5層目において径方向最内側の平角線12dを除いて、2層目から5層目の平角線12bの扁平率は、全て同一となっている。なお、2層目から3層目にかけての平角線12bの扁平率は、コイルの内層から外層に進むにしたがって僅かに大きくなるように設定されており、これにより、スロット底部33Aからスロット60開口側に向けて徐々にその開口幅が広がるように構成されているスロット60に対して、5回巻回された各層(1層目〜3層目)において、各層のスロット開口幅寸法に応じて扁平率が調整され、スロット60と平角線12bとの間の隙間をなくすようになっている。
【0032】
また、2層目と3層目の平角線12bの扁平率は、2層目および3層目におけるスロット60の幅寸法に応じて、2層目と3層目の各層において平角線12bを互いに接触させて巻回したときにスロット60と平角線12bとの間に生じる隙間が最小となるように(換言すると、隙間が生じるのを抑制するように)設定されている。これは、1層目におけるスロット60の幅と、2層目、3層目におけるスロット60の幅では寸法が異なるからであり、このように層によって平角線12の扁平率を変えることによって、占積率を向上させることができる。
【0033】
4層目に関しては、径方向最内側に巻装された平角線12cの扁平率が、4層目において前記平角線12cよりも径方向外側に巻回された平角線12bの扁平率よりも大きく設定されている。
この理由は次の通りである。4層目の平角線12の扁平率を全て平角線12bの扁平率と同じにして巻回すると、径方向最内側に巻装される平角線12bの一部が、スロット60のコイル収容部61内に収まらなくなり、コイル収容部61から突出してしまうことがある。このようにコイル収容部61からコイル8の一部が突出していると、積層鉄心片30を環状に連結して固定子鉄心10とするときに、隣接するスロット60に巻装されたコイル8同士が干渉してしまい、固定子鉄心10を組み立てられなくなる。
そこで、4層目においては径方向最内側に巻回される平角線12cの扁平率を調整し、平角線12bの扁平率よりも大きくすることで、4層目の径方向最内側に巻装された平角線12cがコイル収容部61内に収容されるようにするとともに、コイル収容部61内のデッドスペースを詰めるよう極力隙間が生じないようにした。
【0034】
5層目に関しては、径方向最内側に巻装された平角線12dの扁平率が、5層目においてこの平角線12dよりも径方向外側に巻回された平角線12bの扁平率よりも大きく設定されている。この理由は、前記4層目の径方向最内側に巻装された平角線12cの場合と同様である。
4層目と5層目において径方向最内側に巻装される平角線12c,12dの扁平率を上述のように設定することにより、隣接するスロット60に巻装されたコイル8同士が干渉しない範囲で占積率を向上させることができる。
【0035】
また、1層目の平角線12aの扁平率を、2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの扁平率よりも小さくした理由は次の通りである。
後述するように、平角線12は、丸線からなる丸素線71をローラ73で押し潰しながら形成していく。この丸素線71は、銅線材の周りをエナメル被覆して構成されているため、丸素線11を押し潰して変形させていくときにエナメル被膜がストレスを受け、平角線12の可撓性が低下する場合がある。ここで、丸素線11から平角線12に成形する場合に、成形後の平角線12の扁平率が大きいほどエナメル被膜自体の変形量が大きくなって受けるストレスも大きくなり、成形後の平角線12の扁平率が小さいほどエナメル被膜自体の変形量も少なく受けるストレスも小さくなる。
【0036】
一方、平角線12をティース部33に巻回する際には、図6に示すように、ティース部33の端部30Aに装着されたインシュレータ40の外側を巻回する部分があり、スロット60からインシュレータ40の外側に巻回される部分と、インシュレータ40の外側から再びスロット60に巻回される部分(以下、いずれも屈曲部15という)において、平角線12はそれぞれ円弧状に約90度屈曲されることとなる。そして、平角線12を巻回する際に、これら屈曲部15において平角線12のエナメル被膜はストレスを受けることとなる。この場合、内側の層ほど、平角線12は曲率半径の小さい円弧状に屈曲されるので、エナメル被膜が受けるストレスは大きくなる。したがって、1層目の平角線12aは一番可撓性が低下し易い状況となる。
【0037】
そこで、1層目の平角線12aの扁平率を、2層目から5層目の平角線12b,12c,12dの扁平率よりも小さくすることで、丸素線11から最内層である1層目の平角線12aに成形する際の変形度合いを小さくしてエナメル被膜へのストレスを極力小さくするとともに、1層目の平角線12aをティース部33に巻回するときの屈曲部15におけるエナメル被膜へのストレスを極力小さくする。これにより、1層目の平角線12aの可撓性の低下を抑制することができる。
つまり、平角線12の扁平率をコイル8の内層から外層に進むにしたがって大きくすることにより、平角線12の可撓性を低下させることがないコイル8を形成することができる。
【0038】
このような巻線構造とすることで、積層鉄心片30のスロット60のコイル収容部61内の隙間を最小限にすることが可能となり、固定子鉄心10の巻線の占積率を向上させることが可能となる。
なお、平角線12の扁平率を変化させる部位(つまり、断面形状を変化させる部位)は、特に限定されるものではないが、扁平率を変化させる部位をスロット60内ではなく、積層鉄心片30の両端部30A,30Aに装着されたインシュレータ40上とするのが好ましい。このようにすると、より正確に平角線12をスロット60内で隙間なく整列させることができ、より占積率を高めることができる。
【0039】
次に、平角線12の成形方法について図7、図8に基づいて説明する。
図7、図8に示すように、平角線成形装置70は、断面円形の丸素線71を巻装した巻線リール72と、平角線を形成するための平角線成形ローラ73を備えている。巻線リール72は、回転自在に支持されている。平角線成形ローラ73は、第一ローラ74、第二ローラ75及び第三ローラ76の三つのローラ74,74,76で構成されている。
【0040】
第一ローラ74は、丸素線71を上下方向から押し潰すためのもので、上下一対のローラ74A,74Bが回転自在に設けられている。第二ローラ75は、丸素線71を横方向から押し潰すためのもので、左右一対のローラ75A,75Bが回転自在に設けられている。第三ローラ76は、丸素線71を再び上下方向から押し潰すためのもので上下一対のローラ76A,76Bが回転自在に設けられている。これらローラ76A,76Bは、それぞれ上下方向にスライド可能に設けられている。また、第三ローラ76は不図示の制御部に電気的に接続されており、制御部の信号に基づいてローラ76A,76B間の距離を適宜設定できるようになっている。また、平角線成形ローラ73の下流側(図7における右側)には、固定子鉄心10を構成する積層鉄心片30が平角線12の巻回方向に向かって回転可能にセットされている。
【0041】
そして、巻線リール72から引出された丸素線71は、まず、第一ローラ74を通過することによって上下方向に押し潰される。次に、第二ローラ75を通過することによって横方向が押し潰され、扁平率の一番小さい断面略正方形の仮平角線12Aが形成される。この仮平角線12aの扁平率は、積層鉄心片30のティース部33に1層目として巻回される平角線12aの扁平率と同一に設定されている。
【0042】
その後、第三ローラ76によって仮平角線12Aが所定の厚さに押し潰され、仮平角線12Aから所定の扁平率の平角線12b,12c,12dに形成される。つまり、第三ローラ76によって、平角線12の扁平率を決定するようになっている。そして、所定の扁平率に形成された平角線12は、積層鉄心片30のスロット60へと巻装されていく。尚、第三ローラ76に電気的に接続されている制御部には、予め仮平角線12Aが第三ローラ76を所定長さ通過するとローラ76A,76B間の距離が変化するようにプログラムされており、1層目の平角線12aを形成するときには、第三ローラ76は最大幅となって仮平角線12Aから離間し、成形に関与しないように設定されている。
【0043】
つまり、第三ローラ76は、仮平角線12Aがスロット60に対して1ターン分(巻線層1層分)の長さだけ通過すると、ローラ76A,76Bが互いに接近する方向にスライドするようにプラグラムされている。これによって、スロット60において2層目以降の平角線12の厚さが1層目と比較して薄くなり、すなわち2層目以降の平角線12の扁平率が1層目の平角線12aの扁平率よりも大きくなる。
このように、2層目以降の平角線12は、丸素線71を横方向に1回、上下方向に2回押し潰すことによって、扁平率が決定されるようになっている。
ここで、各ローラ74、75、76による丸素線71の押し潰し量(変形量)により、丸素線71のエナメル皮膜の受けるストレスも変化し、特に扁平率の大きな成形を行う場合、エナメル被覆の受けるストレスも大きなものとなる。
【0044】
なお、スロット60に平角線12を巻回する場合、図5において矢印で示すように、1層目、3層目、5層目の奇数層では径方向外側から径方向内側へ向かって巻回していき、2層目、4層目の偶数層では径方向内側から径方向外側へ向かって巻回していく。
このように平角線12を巻回していく場合には、1層目の径方向最内側に巻回される平角線12aの成形から2層目の径方向最内側に巻回される平角線12bの成形に移行するときに、平角線12bの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を狭める。
【0045】
また、3層目の径方向最内側に巻回される平角線12bの成形から4層目の径方向最内側に巻回される平角線12cの成形に移行するときに、平角線12cの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を狭め、この状態で仮平角線12Aをスロット60の1回転分の長さだけ通過させた後、再び平角線12bの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を広げる。
さらに、5層目の径方向最外側に巻回される平角線12bの成形から5層目の径方向最内側に巻回される平角線12dの成形に移行するときに、平角線12dの扁平率に対応するように第三ローラ76のローラ76A,76B間を狭める。
【0046】
このように第三ローラ76のローラ76A,76B間の寸法を制御することによって、固定子鉄心10における積層鉄心片30に、扁平率の異なる平角線12a,12b,12c,12dを、それぞれ所望する巻線層の所望する径方向位置に巻回することができる。その結果、積層鉄心片30のスロット60のコイル収容部61内の隙間を最小限にして、固定子鉄心10の巻線である平角線12の占積率を向上させることができる。
【0047】
なお、図6に示すように、積層鉄心片30に巻装された平角線12の始端16と終端(図示略)を、平角線12に成形しないで丸素線71のままにしておくと、これら始端16及び終端をバスバーユニット等の接続部材に接続する際に、従来と同じ接続方法を採用することができ、製造設備等の変更を最小限なものとし、製造コストを抑えられるというメリットがある。
【0048】
ところで、図5に示すように、積層鉄心片30のコア本体31は、スロット60に面する外周側のスロット対向面(スロット外側壁部)36が、固定子鉄心10(積層鉄心片30)の径方向に対して直交しておらず、周方向内側に進むにしたがって径方向外側に傾斜する、所謂オーバハング形状をなしている。
そのため、積層鉄心片30のティース部33に平角線12を巻回するときに、平角線12を、固定子鉄心10(積層鉄心片30)の径方向に対して直交する方向からスロット60に挿入することができないので、図9、図10に示すようにガイド50を用いて、平角線12をスロット60内に案内しながら巻回する。
【0049】
ガイド50は、積層鉄心片30のティース部33を挟んで両側のスロット60に対して配置されており、コア本体31のスロット対向面(スロット外側壁部)36と略平行に延びるアーム51を有している。このアーム51においてスロット対向面(スロット外側壁部)36と対向する側の面が、平角線12を摺接して案内するガイド面52となっている。ガイド50は、積層鉄心片30に対して、積層鉄心片30の径方向(図9、図10においてX方向)及び該径方向と直交する方向(図9、図10においてY方向)に移動可能に設けられていて、ガイド50を移動させることにより、アーム51をスロット60内に進入させたり、スロット60の外に退避させることができるようになっている。また、ガイド50をX方向に移動させることにより層毎に巻回される平角線12を案内し、ガイド50をY方向に移動させることにより平角線12の層の切り替わりに対応できるようになっている。
【0050】
以下、図9及び図10を参照して、ガイド50の作用を説明する。
まず、図9を参照して、1層目の平角線12aを巻回する場合について説明する。
1層目の平角線12aをティース部33に巻回するときには、初めに、図9(A)に示すように、アーム51のガイド面52とコア本体31のスロット対向面(スロット外側壁部)36との隙間が、平角線12aがガイド面52に沿ってほぼ隙間なく摺動可能な大きさとなるようにするとともに、1層目の径方向最外側の平角線12aを絶縁部材11に接触させて巻回したときに、アーム51の先端部53がこの平角線12aの側面の一部を径方向内側から受けるように、ガイド50を位置させる。
【0051】
このようにガイド50位置させた状態から、1層目における1周目の平角線12aの巻回を開始し、ガイド50を積層鉄心片30と共に回転させながらティース部33に巻回していき、積層鉄心片30が1回転する間に、ガイド50を径方向内側に平角線12aの幅寸法分だけ移動させる。平角線12aは絶縁部材11(インシュレータ40、絶縁紙41)とガイド面52によりガイドされて巻装される。図9(A)は、1層目における1周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0052】
同様にして、積層鉄心片30を1回転する毎に、ガイド50を径方向内側に平角線12aの幅寸法分だけ移動させながら、1層目の平角線12aを順次巻回していく。このように、平角線12aはガイド面52と1層目で既に巻装された平角線12aの径方向内側の壁面によりガイドされて5回巻回される。このとき、1層目の平角線12aの断面形状は略正方形となっているが、実際の扁平率は、スロット60と平角線12aとの間の隙間をなくすように調整されている。
図9(B)は、1層目における2周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図であり、図9(C)は、1層目における3周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
なお、ガイド50の動きは、平角線12を径方向外側から径方向内側に向かって移動しながら巻回していく奇数層(1層目と3層目と5層目)では、上述した1層目におけるガイド50の動きと同様となる。
【0053】
次に、図10を参照して、1層目の平角線12aの上に、2層目の平角線12bを巻回する場合について説明する。
2層目の平角線12bは、前述したように、径方向最内側から径方向外側に向かって巻回していくので、2層目における1周目の平角線12bを巻回するときには、図10(A)に示すように、アーム51の先端部53が積層鉄心片30の鍔部34にほぼ当接するように配置するとともに、先端部53におけるガイド面52が鍔部34の斜壁部34Aとほぼ面一となるように、ガイド50を位置させる。
このようにガイド50位置させた状態で、2層目における1周目の平角線12bの巻回を開始し、積層鉄心片30を回転させながら1層目の平角線12aの上に巻回していく。平角線12aはガイド面52と絶縁部材11によりガイドされて巻装される。図10(A)は、2層目における1周目の平角線12bの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0054】
2層目における1周目の平角線12bの巻回が終了した後、ガイド50を、2層目における2周目の平角線12bの巻回を案内する位置に移動させる。すなわち、図10(B)に示すように、ガイド50のアーム51の先端53をスロット60のコイル収容部61内に進入させ、アーム51の先端53を、2層目における1周目の平角線12bに当接させるとともに、アーム51の先端53のガイド面52が、2層目における1周目の平角線12bの径方向外側の側面とほぼ面一となるように、ガイド50を位置させる。
このようにガイド50位置させた状態から、2層目における2周目の平角線12bの巻回を開始し、ガイド50を積層鉄心片30と共に回転させながら1層目の平角線12aの上に巻回していき、積層鉄心片30が1回転する間に、ガイド50を径方向外側に平角線12bの幅寸法分だけ移動させる。図10(B)は、2層目における2周目の平角線12aの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0055】
同様にして、積層鉄心片30を1回転する毎に、ガイド50を径方向外側に平角線12bの幅寸法分だけ移動させながら、2層目の平角線12bをガイド面52と2層目の平角線12bの径方向外側の壁面によりガイドして5回順次巻回していく。このとき、2層目の平角線12bの扁平率は、スロット60と平角線12bとの間の隙間をなくすように調整される。図10(C)は、2層目における3周目の平角線12bの巻回途中の状態を模式的に示した図である。
【0056】
3層目の平角線12bについては、奇数層である1層目の平角線12aと同様に巻回されるが、このとき、3層目のスロットのスロット開口幅は2層目のスロット開口幅と異なるため、3層目の平角線12bの扁平率も、スロット60と平角線12bとの間の隙間をなくすように調整される。
なお、ガイド50の動きは、平角線12を径方向内側から径方向外側に向かって移動しながら巻回していく偶数層(2層目と4層目)では、上述した2層目におけるガイド50の動きと同様となる。
このように、ガイド50を用いることにより、スロット60内に平角線12を案内して、巻回していくことができる。
【0057】
ところで、奇数層において平角線12を巻回する場合には、図9に示すように、巻回中の平角線12は、既に同一層に巻回されている平角線12の径方向内側の壁部とガイド50のアーム51の先端53とによって径方向内側と外側とをガイドする状態となるため、巻回中の平角線12が径方向へ移動することはない。
しかしながら、偶数層において平角線12を巻回する場合には、図10に示すように、巻回中の平角線12は、既に同一層に巻回されている平角線12の径方向内側の壁部によって径方向内側への移動は規制されるが、巻回中の平角線12の径方向外側は空間が広がっており、移動を規制するガイド部材が存在しないため、巻回中の平角線12が滑って径方向外側へ移動する虞がある。
もし仮に、巻回中の平角線12が径方向に移動してしまうと、それ以降の平角線12の巻回に悪影響を及ぼし、平角線12を隙間なく整列させることが困難になり、占積率が低下する虞もある。
【0058】
そこで、これを防止するために、図11に示すように、スロット底部33Aに位置する絶縁部材11の径方向外側の厚さを径方向内側の厚さよりも厚くすることによって、絶縁部材11の外面に若干のテーパを付け、スロット60の底部間の寸法を、径方向外側の寸法aよりも径方向内側の寸法bが小さくなるよう(a>b)にすることも可能である。このようにしておくと、絶縁部材11の表面の傾斜によって、偶数層において平角線12を巻回しているときに、巻回中の平角線12が滑って径方向外側へ移動するのを抑制することができる。
なお、絶縁部材11の厚さは変化させずに均一とし、磁気特性に影響しない範囲で積層鉄心片30のティース部33の幅を径方向外側よりも径方向内側を小さくすることで、スロット60の底部間の寸法を、径方向外側よりも径方向内側が小さくなるようにすることも可能である。
【0059】
以上説明するように、この実施形態によれば、コイル8の最内層の平角線12aの扁平率を一番小さくすることで、丸素線71から最内層の平角線12aに成形する際の変形量が小さくなり、エナメル被膜のストレスを小さくして最内層の平角線12aの可撓性の低下を抑制することができる。
【0060】
また、平角線12をスロット60に巻装する際に屈曲部15において平角線12を円弧状に略90度屈曲させるため、内側の層の平角線12ほど曲率半径が小さくなるため大きなストレスを受けることとなるが、内側の層ほど平角線12の扁平率が小さいので、内側の層の平角線12ほどストレスを受けにくくすることができる。
つまり、平角線12の扁平率をコイル8の内層から外層に進むにしたがって大きくすることにより、平角線12の可撓性を低下させることがない絶縁性能を維持したコイル8を形成することができる。
【0061】
また、コイル8の各層毎のスロット60の幅寸法に応じて、スロット60と平角線12との間に隙間が生じるのを抑制するように各層の平角線12の扁平率が設定されているので、占積率を向上させることができる。
そして、この平角線の巻線構造を採用したブラシレスモータ1の固定子鉄心10において、平角線12の可撓性を低下させることなく、コイル8の占積率を向上させることができるので、ブラシレスモータ1の出力密度を向上させることができ、小型、低コスト化を図ることができる。
【0062】
尚、この発明は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、平角線12の巻線層の数を5層としたが、これに限るものではなく、4層以下であってもよいし、6層以上であってもよい。また、各層における平角線12の巻回数も前述した実施形態のものに限るものではない。要するに、スロット60の形状、大きさに応じて層数も巻回数も適宜設定されるものである。
【0063】
また、前述した実施形態では、2層目と3層目の平角線12bの扁平率も各層のスロット開口幅寸法に応じて調整するようにしたが、同様に、4層目、5層目の平角線12の扁平率についても、2層目と3層目の平角線12bの扁平率と異ならせてもよい。さらに、各層の平角線12bの扁平率は同一であってもよい。つまり、これらの扁平率については、スロット60と平角線12との間に隙間が生じるのを抑制するように考慮した上で、スロット60の形状、大きさに応じて適宜設定されるものである。
【0064】
そして、上述の実施形態では、平角線12の扁平率を、丸素線71を横方向に1回、上下方向に2回押し潰すことによって設定する場合について説明したが、横方向に2回、上下方向に1回押し潰すことによって平角線12の扁平率を設定してもよい。また、1方向を2回押し潰すことによって平角線12の扁平率を設定する場合に限らず、1方向を押し潰す回数は3回以上であってもよい。この場合、平角線成形装置70の第三ローラ76の下流側(図7における右側)に、さらに第四ローラ、第五ローラ、…、を設ければよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、固定子鉄心10が周方向に分割された積層鉄心片30より構成されている、いわゆる分割コア方式の場合について説明したが、固定子鉄心10が分割コアでない一体成形されたものであっても、この実施形態における平角線12の巻線構造を適用することができる。
さらに、上述の実施形態では、コア本体31(ティース部33)が固定子鉄心10の長さ方向(ブラシレスモータの軸線)に対して捩れつつ傾斜するように所定のスキュー角を有している場合について説明したが、コア本体31(ティース部33)がスキュー角を有さないものであっても、この実施形態における平角線12の巻線構造を適用することができる。
【0066】
さらに、上述の実施形態では、コア本体31のスロット60に紙状の絶縁紙41を挿入したものを説明したが、これに限らず、スロット60に挿入される部分を樹脂にてインシュレータ40と一体形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ブラシレスモータ
3 固定子
4 回転子
8 コイル
10 固定子鉄心
11 絶縁部材
12,12a,12b,12c,12d 平角線
30 積層鉄心片
31 コア本体
33 ティース部
34 鍔部
60 スロット
71 丸素線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア本体と、該コア本体から径方向内側に延出して形成されたティース部と、該ティース部の径方向内側の先端から周方向に延出して形成された鍔部とを備え、前記ティース部と前記コア本体と前記鍔部とに囲まれて形成されるスロットに平角線を多層に巻装されてコイルが形成される平角線の巻線構造であって、
前記平角線の断面形状における厚さ寸法に対する幅寸法の比である扁平率を前記コイルの内層から外層に進むにしたがって大きくするとともに、
前記コイルの各層毎の前記スロットの幅寸法に応じて、スロットと平角線との間に隙間が生じるのを抑制するように前記各層の前記平角線の扁平率が設定されていることを特徴とする平角線の巻線構造。
【請求項2】
前記コア本体は周方向に複数に分割されており、前記分割された各コア本体に前記ティース部がそれぞれ1つずつ設けられ、前記スロットは前記分割された各コア本体と該コア本体に設けられた前記ティース部と該ティース部に形成された前記鍔部とに囲まれて形成されており、
前記分割されたコア本体の前記スロットに巻装された前記コイルの少なくとも一部の層では、径方向最内側に巻装された平角線の扁平率と、同一層にて前記平角線にその径方向外側にて隣接して巻装された平角線の扁平率とを異ならせ、前記コイルが前記スロットのコイル収容部内に収められていることを特徴とする請求項1に記載の平角線の巻線構造。
【請求項3】
前記径方向最内側に巻装された平角線の扁平率は、前記隣接して巻装された平角線の扁平率よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の平角線の巻線構造。
【請求項4】
前記コイルの始端および終端は丸線とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の平角線の巻線構造。
【請求項5】
前記分割されたコア本体には、前記ティース部を挟んで一対の前記スロットが設けられ、前記ティース部には、前記コイルと前記コア本体との間を絶縁するための絶縁部材が取り付けられており、該絶縁部材における一対の前記スロット底部間の寸法は、前記ティース部の径方向外側よりも径方向内側が小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の平角線の巻線構造。
【請求項6】
ブラシレスモータの固定子鉄心におけるコイルの形成に適用されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の平角線の巻線構造。
【請求項1】
コア本体と、該コア本体から径方向内側に延出して形成されたティース部と、該ティース部の径方向内側の先端から周方向に延出して形成された鍔部とを備え、前記ティース部と前記コア本体と前記鍔部とに囲まれて形成されるスロットに平角線を多層に巻装されてコイルが形成される平角線の巻線構造であって、
前記平角線の断面形状における厚さ寸法に対する幅寸法の比である扁平率を前記コイルの内層から外層に進むにしたがって大きくするとともに、
前記コイルの各層毎の前記スロットの幅寸法に応じて、スロットと平角線との間に隙間が生じるのを抑制するように前記各層の前記平角線の扁平率が設定されていることを特徴とする平角線の巻線構造。
【請求項2】
前記コア本体は周方向に複数に分割されており、前記分割された各コア本体に前記ティース部がそれぞれ1つずつ設けられ、前記スロットは前記分割された各コア本体と該コア本体に設けられた前記ティース部と該ティース部に形成された前記鍔部とに囲まれて形成されており、
前記分割されたコア本体の前記スロットに巻装された前記コイルの少なくとも一部の層では、径方向最内側に巻装された平角線の扁平率と、同一層にて前記平角線にその径方向外側にて隣接して巻装された平角線の扁平率とを異ならせ、前記コイルが前記スロットのコイル収容部内に収められていることを特徴とする請求項1に記載の平角線の巻線構造。
【請求項3】
前記径方向最内側に巻装された平角線の扁平率は、前記隣接して巻装された平角線の扁平率よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の平角線の巻線構造。
【請求項4】
前記コイルの始端および終端は丸線とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の平角線の巻線構造。
【請求項5】
前記分割されたコア本体には、前記ティース部を挟んで一対の前記スロットが設けられ、前記ティース部には、前記コイルと前記コア本体との間を絶縁するための絶縁部材が取り付けられており、該絶縁部材における一対の前記スロット底部間の寸法は、前記ティース部の径方向外側よりも径方向内側が小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の平角線の巻線構造。
【請求項6】
ブラシレスモータの固定子鉄心におけるコイルの形成に適用されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の平角線の巻線構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−99084(P2013−99084A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239121(P2011−239121)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】
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