説明

平面状金属被覆織物構造物の製造方法、平面状金属被覆織物構造物、及びこの生産された平面織物構造の用途

本発明は、
(A)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr、Bi、及びその混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の成分を含む印刷用配合物を織布に印刷し
(B)その織布を一段以上の工程で熱処理し
(C)その織布に他の金属を被覆させることを特徴とする
金属被覆織布の製造方法。
に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr、Bi、及びその混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の成分を含む印刷用配合物を織布に印刷し、
(B)その織布を一段以上の工程で熱処理し、
(C)その織布に他の金属を被覆させることを特徴とする
金属被覆織布の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明の方法により製造された金属被覆織布、およびこのように製造された金属被覆織布の用途に関する。
【背景技術】
【0003】
金属被覆織布の製造は成長の可能性の大きな分野である。金属被覆織布は、例えば、加熱マントルや、発光織物などのファッション性織物に、また予防や治療に役立つ織物、例えば臓器や機能の追跡用の織物の製造に利用できる。金属被覆織布はまた、電磁波の遮蔽に使用できる。
【0004】
しかしながら既存の製造方法は、依然としてコストが高く、不便で、柔軟性に欠ける。特別な設備が必要で、従来の設備、例えば従来の織機は使用できない。例えば、金属糸を織物に織り込むことが知られている。しかしながら多くの場合、例えば銅糸とポリエステル糸とから、満足できる織布を製造するのは、特別な織機が必要となるため、不可能である。
【0005】
完全に出来上がった織物に金属糸を入れて、上記の欠点を回避使用とするとしても、このような方法は、一般に手間がかかり、コスト高となる。
【0006】
電導性ポリマーの繊維の使用も、非酸化状態のポリピロールなど、多くの電気伝導性ポリマーは、空気及び/又は水分で反応しやすいため、あまり好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を克服する金属被覆織布の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、金属被覆織布を提供することである。本発明のさらに他の目的は、新規の金属被覆織布の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、冒頭に述べた方法により、この目的を達成することが可能であることを見出した。
【0009】
冒頭に述べた方法は、織布、例えば編物または好ましくは織布または不織布から始まる。本発明の目的の織布は、柔軟であっても硬くてもよい。一回あるいは数回、手で折り曲げでも、曲げる前と曲げから回復した後で見た目に差が出ないような織布であることが好ましい。
【0010】
本発明の目的の織布は、天然繊維製であっても合成繊維製であってもよく、また天然繊維と合成繊維の混紡であってもよい。好適な天然繊維としては、例えば、羊毛や亜麻、好ましくは綿があげられる。好適な合成繊維としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステルブレンド織布、ポリアミドブレンド織布、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマクロファイバーなどがあげられ、好ましくは、ポリエステル、綿と合成繊維のブレンド、特に綿とポリエステルのブレンドがあげられる。
【0011】
本発明の方法では、工程(A)において、織布上に、元素の電気化学列において、水素より負に大きく標準電位を持つ金属の金属粉(a)を少なくとも一種含む印刷用配合物を、好ましくは水性印刷用配合物を印刷する。
【0012】
印刷用配合物の例としては、例えばグラビア印刷インクやオフセット印刷インクなどの非ジェット性印刷インクや、バルボリン法インクなどのジェット性の印刷インクがあげられ、好ましくは印刷ペースト、好ましくは水性印刷ペーストがあげられる。
元素の電気化学列において水素より大きくマイナスの標準電位を持つ金属の金属粉(a)を、以下単純に、金属粉(a)と呼ぶこととする。
【0013】
金属粉(a)は、例えば、粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr及びBiから選択され、例えば純粋であっても、混合物であっても、または上記の特定金属間の合金または他の金属との合金であってもよい。好適な合金の例としては、CuZnや、CuSn、CuNi、SnPb、SnBi、SnCu、NiP、ZnFe、ZnNi、ZnCo、ZnMnがあげられる。好ましい金属粉(a)としては、単一金属であり、特に好ましくは鉄粉や銅粉、極めて好ましくは鉄粉である。
【0014】
本発明のある実施様態において、金属粉(a)の平均粒子径は、0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜10μmの範囲である(レーザ回折法で測定、例えばマイクロトラックX100を使用)。
【0015】
ある実施様態において、金属粉(a)は、その粒子径分布に特徴がある。例えば、そのd10値は、0.01〜5μmの範囲にあり、d50値は、1〜10μmの範囲にあり、d90値は3〜100pmの範囲にあり、次の条件:d10<d50<d90を満たす。100μmを超える径を持つ粒子が存在しないことが好ましい。
【0016】
金属粉(a)は、不動態化した状態で使用可能で、例えば少なくとも部分的に被覆して使用することもできる。
【0017】
好ましい皮膜の例としては、当該金属の酸化物、SiO2またはSiO2・水和物、例えば当該金属のリン酸塩などの無機皮膜があげられる。
【0018】
金属粉(a)の粒子は、原理的にはいかなる形状であってもよく、例えば針状、板状または球状の粒子が使用可能である。なお、球状粒子や板状粒子が好ましい。
【0019】
球状粒子の金属粉(a)の使用が特に好ましく、大部分が球状粒子である金属粉がさらに好ましく、球状粒子である、いわゆるカーボニル鉄の粉末の使用が最も好ましい。
【0020】
工程(A)のある実施様態においては、金属粉(a)は、電気が伝導する程度にまで金属粉粒子を密着させて印刷する。工程(A)のもう一つの実施様態においては、金属粉(a)は、電気が伝導しない程度に金属粉(a)粒子をばらばらにして印刷する。
【0021】
金属粉(a)の製造は、それ自体公知である。例えば、一般の市販製品を使用してもよいし、または金属粉(a)を、公知の方法、例えば電解析出、当該金属の塩溶液の化学的還元、酸化粉末の例えば水素還元、溶融金属の噴霧または噴出、特に冷媒中、例えばガスまたは水中への噴出により生産してもよい。
【0022】
鉄五カルボニルの熱分解より生産した金属粉(a)(以降、カーボニル鉄粉末と称す)の使用が特に好ましい。
【0023】
特に、鉄五カルボニルFe(CO)5の熱分解によるカーボニル鉄粉末の製造は、例えば、ウルマン工業化学辞典、第5版、Vol.A14、p.599、に記載されている。鉄五カルボニルの分解は、例えば大気圧で、例えば高温で、例えば20〜300℃の範囲で、例えば石英ガラスまたはV2Aスチールなどの耐熱材料製のチューブを有する過熱式分解装置内で、好ましくは垂直な姿勢で、チューブを加熱手段、例えば加熱テープ、加熱ワイヤまたは加熱マントルで加熱しながらチューブ内に熱媒を通して行うことができる。
【0024】
カーボニル鉄粉末の平均粒子径は、プロセスパラメーターや分解ステージに関係する反応制御により巾広い範囲で調整されうるが、個数平均粒子径でいうと、一般的には、0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜8μmの範囲で制御される。
【0025】
本発明のある実施様態において、工程(A)において、以下の成分を含む印刷用配合物が用いられる。
(a)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr、およびBi、これらの混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の金属粉、好ましくはカーボニル鉄粉、
(b)少なくとも一種のバインダー、
(c)少なくとも一種のアニオン性又はカチオン性又は好ましくはノニオン性の乳化剤、及び
(d)必要に応じて、少なくとも一種の流動性改善剤。
【0026】
本発明の印刷用配合物は、少なくとも一種のバインダー(b)を含んでいてもよく、好ましくは、少なくとも一種の造膜性ポリマー、例えばポリアクリレート、ポリブタジエン、少なくとも一種のビニル芳香族モノマーと少なくとも一種の共役ジエンとのコポリマー、および、必要に応じて他のコモノマー、例えばスチレン−ブタジエンバインダーを含む少なくとも一種の水分散液を含んでいてもよい。
【0027】
他の好適なバインダー(b)は、ポリウレタン、好ましくはアニオン性のポリウレタン、及びエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーから選ばれる。本発明の目的で有用なバインダー(b)のポリアクリレートは、例えば、少なくとも一種のC1−C10−アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートと、少なくとも一種の他のコモノマー、例えば他のC1−C10−アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートまたはビニル芳香族化合物、例えばスチレンとの共重合により得られる。
【0028】
本発明の目的で有用なバインダー(b)のポリウレタン、好ましくはアニオン性ポリウレタンは、例えば、一種以上の芳香族のまたは好ましくは脂肪族または環式脂肪族ジイソシアネートと、一種以上のポリエステルジオール、好ましくは一種以上のヒドロキシカルボン酸、例えばヒドロキシ酢酸、または好ましくはジヒドロキシカルボン酸s、例えば1,1−ジメチロールプロピオン酸、1,1−ジメチロール酪酸または1,1−ジメチロールエタン酸との反応により得られる。
【0029】
特に有用なバインダー(b)であるエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えば、エチレンと、(メタ)アクリル酸と、及び必要に応じて、少なくとも一種の他のコモノマー、例えばC1−C10−アルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、イソブテンまたは酢酸ビニルとの共重合で、好ましくは190〜350℃の範囲の温度で、1500〜3500barの範囲の、好ましくは2000〜2500barの範囲の圧力での共重合により得られる。
【0030】
特に有用なバインダー(b)であるエチレン−(メタ)アクリル系コポリマーは、例えば、最大90重量%の共重合エチレンを含み、その120℃での溶融粘度Vは、60mm2/s〜10000mm2/sの範囲、好ましくは100mm2/s〜5000mm2/sの範囲にある。
【0031】
特に有用なバインダー(b)であるエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えば最大90重量%の共重合エチレンを含み、そのEN−ISO1133法による160℃で325gの荷重したでのメルトフローレート(MFR)は、1〜50g/10分の範囲、好ましくは5〜20g/10分、より好ましくは7〜15g/10分の範囲にある。
【0032】
特に有用なバインダー(b)である少なくとも一種のビニル芳香族モノマーと少なくとも一種の共役ジエンと、必要に応じて他のコモノマーからなるコポリマー、例えば、スチレンブタジエンバインダーは、少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸、またはその適当な誘導体、例えば当該無水物を、共重合状態で含んでいる。特に適当なビニル芳香族モノマーは、パラ−メチルスチレン、α−メチルスチレン、及び特にスチレンである。特に好適な共役ジエンは、イソプレン、クロロプレン、及び特に1,3−ブタジエンである。特に好適なエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸またはその適当な誘導体類は、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸またはイタコン酸無水物である。
【0033】
本発明のある実施様態において、特に好適なバインダー(b)である少なくとも一種のビニル芳香族モノマーと少なくとも一種の共役ジエンと、必要に応じて他のコモノマーからなるコポリマーは、共重合体の形で以下の成分を含んでいる。
19.9%〜80重量%のビニル芳香族モノマー、
19.9%〜80重量%の共役ジエン、
0.1%〜10重量%のエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸または適当な誘導体、例えば当該無水物。
【0034】
本発明のある実施様態において、例えばHaake粘度計を用いた回転式の粘度測定により求めたバインダー(b)の23℃での動的粘度は、10〜100dPa・sの範囲、好ましくは20〜30dPa・sの範囲である。
【0035】
乳化剤(c)は、アニオン性でもカチオン性でもまたは好ましくはノニオン性の表面活性物質であってもよい。
【0036】
好適な適当なカチオン性乳化剤(c)の例としては、C6−C18−アルキル−、−アラルキル−または複素環基含有第一級、第二級、第三級、または第四級アンモニウム塩類、アルカノールアンモニウム塩類、ピリジニウム塩類、イミダゾリウム塩類、オキサゾリニウム塩類、モルホリニウム塩類、チアゾリニウム塩類、アミンオキシドの塩類、キノリニウム塩類、イソキノリニウム塩類、トロピリウム塩類、スルホニウム塩類、及びホスホニウム塩類があげられる。言及すべき例としては、デシルアンモニウムアセテートまたはその塩酸塩、各種2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)−エチル脂肪酸エステルの塩化物または酢酸塩類、N−セチルピリジニウム塩化物、N−ラウリルピリジニウムスルフェート、N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩化物、及びジェミニ型界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロマイドなどがあげられる。
【0037】
好適なアニオン性乳化剤(c)の例としては、アルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシ化アルカノールの硫酸エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩エトキシ化度:4〜30、アルキル基:C12−C18)、エトキシ化アルキルフェノール類のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩(エトキシ化度:3〜50、アルキル基:C4−C12)、アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩(アルキル基:C12−C18)、アルキルアリールスルホン酸の金属塩及びアンモニウム塩(アルキル基:C9−C18)、スルホサクシネート類、例えばスルホコハク酸モノ−またはジエステルの金属塩及びアンモニウム塩があげられる。アリール置換またはアルキル置換のポリグリコールエーテル類、US4,218,218に記載の物質、及び10〜37の範囲のyの同族体(US4,218,218の式の)が好ましい。
【0038】
特に好ましいのは、一重または好ましくは多重にアルコキシ化されたC10−C30−アルカノール類、好ましくは3〜100モルのC2−C4−アルキレンオキシドでアルコキシ化されたもの、特にエトキシ化オキソ法アルコールまたは脂肪族アルコールなどのノニオン性乳化剤(c)である。
【0039】
特に好適な多重にアルコキシ化された脂肪族アルコール及びオキソ法アルコール類の例としては、次のものが挙げられる:
【0040】
n−C1837O−(CH2CH2O)80−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)70−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)60−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)12−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)80−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)70−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)60−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)12−H
n−C1225O−(CH2CH2O)11−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)18−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)80−H、
n−C3061O−(CH2CH2O)8−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)9−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)7−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)5−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)3−H、

及び上記の乳化剤の混合物、例えばn−C1837O−(CH2CH2O)50−Hとn−C1633O−(CH2CH2O)50−Hの混合物である。なお、数字は、それぞれ個数平均である。
【0041】
本発明のある実施様態において、工程(A)で使用される印刷用配合物が、増粘剤(d1)及び粘度降下剤(d2)から選ばれる少なくとも一種の流動性改善剤(d)を含んでいてもよい。
【0042】
好適な増粘剤(d1)としては、例えば天然増粘剤または好ましくは合成増粘剤があげられる。天然増粘剤とは、天然の増粘剤、あるいは天然物から精製などの加工により、特に抽出により得られるものである。無機の天然増粘剤の例として、ベントナイトなどの薄板状ケイ酸塩があげられる。有機の天然増粘剤の例としては、カゼインなどのタンパク質または好ましくは多糖類があげられる。特に好ましい天然増粘剤は、寒天、カラギーナン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸塩、ペクチン類、ポリオース類、イナゴマメ粉(カルビン)及びデキストリン類から選ばれる。
【0043】
一般的には、合成ポリマーの液体溶液から、特にアクリレート類の例えばホワイトオイル溶液または水溶液、あるいは乾燥状の合成ポリマー、例えば噴霧乾燥した粉末から選ばれる合成増粘剤を使用することが好ましい。増粘剤(d1)として使用される合成ポリマーは、酸基を有し、その一部又は全部がアンモニアで中和されている。定着操作に間に、アンモニアが放出されてpHを低下させ、実際の定着処理を開始させる。また、定着に必要なpH低下を、不揮発性酸、例えばクエン酸、コハク酸、グルタル酸またはリンゴ酸を添加して行ってもよい。
【0044】
極めて好ましい合成増粘剤は、式Iで表される、85%〜95重量%のアクリル酸、4%〜14重量%のアクリルアミド、及び0.01〜1重量%の(メタ)アクリルアミド誘導体からなり、分子量Mwが100000〜2000000g/molの範囲にあるコポリマーから選ばれる。
【0045】
【化1】

【0046】
なお、式中、R1基は同一であっても異なっていてもよく、メチル基または水素であってもよい。
【0047】
他の好適な増粘剤(d1)は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは1,12−ドテカンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートと、好ましくは多重にアルコキシ化された脂肪族アルコールまたはオキソ法アルコールの等価物、例えば10〜150重にエトキシ化されたC10−C30脂肪族アルコールまたはC11−C31オキソ法アルコールとの反応生成物から選ばれる。
【0048】
適当な粘度降下剤(d2)としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルグリコール、ジブチルグリコール、残留アルコールを含まないアルコキシ化n−C4−C8−アルカノール、好ましくは1重〜10重、より好ましくは3重〜6重にエトキシ化された残留アルコールを含まないn−C4−C8−アルカノールなどの有機溶剤があげられる。残留アルコールは、それぞれ、アルコキシ化されていないn−C4−C8−アルカノールをいう。
【0049】
本発明のある実施様態において、工程(A)で使用される印刷用配合物は、
10%〜90重量%、好ましくは50%〜85重量%、より好ましくは60%〜80重量%の金属粉(a)と、
1%〜20重量%、好ましくは2%〜15重量%のバインダー(b)と、
0.1%〜4重量%、好ましくは最大2重量%の乳化剤(c)と、
0%〜5重量%、好ましくは0.2%〜1重量%の流動性改善剤(d)を含んでいる。
なお、これらの重量%は、それぞれ、工程(A)で使用する印刷用配合物全体に対するもので、バインダー(b)の場合は、各バインダー(b)の固形分含量に関するものである。
【0050】
本発明のある実施様態は、金属粉(a)と適当ならバインダー(b)と乳化剤(c)とまた適当なら流動性改善剤(d)に加えて、少なくとも一種の助剤(e)を含む印刷用配合物を用いて本発明の方法の工程(A)で実施する印刷をも含んでいる。好適な助剤(e)の例としては、手触り改善剤や、脱泡剤、湿潤剤、レベリング剤、尿素、殺生剤などの活性成分、難燃剤があげられる。
【0051】
好適な脱泡剤としては、シリコン系脱泡剤、具体的には、次式で表されるもので、HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH332、HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH33][OSi(CH32OSi(CH33]、最大20当量のアルキレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドでアルコキシ化されている、あるいはアルコキシ化されていないシリコン系脱泡剤があげられる。シリコーン非含有の脱泡剤もまた好ましくあり、その例としては、多重にアルコキシ化されたアルコール類、脂肪族アルコールのアルコキシ化物、好ましくは2〜50重にエトキシ化されたもの、好ましくは非分岐のC10−C20アルカノール類、非分岐のC10−C20アルカノール類、及び2−エチルヘキサン−1−オールがあげられる。他の好適な脱泡剤は、脂肪酸のC8−C20−アルキルエステル類、好ましくはC10−C20−アルキルステアレート類であり、そのC8−C20−アルキル及び好ましくはC10−C20−アルキル基は技分かれしていてもよい。
【0052】
好適な湿潤剤としては、例えばノニオン系、アニオン系、またはカチオン系界面活性剤があげられ、具体的には、脂肪族アルコールのエトキシ化生成物及び/又はプロポキシ化生成物、またはプロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマー、エトキシ化またはプロポキシ化された脂肪族またはオキソ法アルコール類、オレイン酸のエトキシ化物、アルキルフェノール類、アルキルフェノールエーテルスルフェート類、アルキルポリグリコシド類、アルキルホスホネート類、アルキルフェニルホスホネート類、アルキルホスフェート類またはアルキルフェニルホスフェート類があげられる。
【0053】
好適なレベリング剤としては、例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーで分子量Mnが500〜5000g/molの範囲、好ましくは800〜2000g/molの範囲にあるものがあげられる。極めて好ましくは、プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマーで、例えば式EO8PO7EO8で表されるものである。式中、EOはエチレンオキシドを表し、POはプロピレンオキシドを表す。
【0054】
好適な殺生剤は、例えばプロキセルという商品名で入手可能である。具体的な例としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)(アベジア社よりプロキセル(R)の商品名で入手可能)およびそのアルカリ金属塩があげられ、他の好適な殺生剤としては、2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(MIT)や5−クロル−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(CIT)があげられる。
【0055】
本発明のある実施様態において、工程(A)で使用される印刷用配合物は、金属粉(a)とバインダー(b)と乳化剤(c)と好適なら流動性改善剤(d)との総量に対して最大30重量%の量の助剤(e)を含むことができる。
【0056】
本発明のある実施様態においては、少なくとも一種の金属粉(a)を含む印刷用配合物を用いて工程(A)で得られる印刷物は、均一である。他の実施様態においては、金属粉(a)を含む印刷用配合物を織物の一部に印刷し、他の部分には印刷せずに、あるパターンをもって金属粉(a)が織布上に印刷される。パターン入りの印刷が好ましく、真直ぐなまたは好ましくは曲がった帯状または線状パターンにより金属粉(a)が織物上に印刷される。なお、この線の幅と厚みは、例えばそれぞれ0.1μm〜5mmであり、帯状パターンの幅は、例えば5.1mm〜例えば10cmであり、適当ならこれより大きくてもよく、厚みは0.1μm〜5mmの範囲である。
【0057】
本発明のある具体的な実施様態においては、金属粉(a)の帯状パターンまたは線状パターンが、相互に接触や交差しないように印刷される。
【0058】
本発明の他の具体的な実施様態においては、例えばプリント回路の製造の場合には、金属粉(a)の帯状パターンまたは線状パターンが、相互に交差するように印刷される。
【0059】
本発明のある実施様態においては、インク印刷工程(A)が、公知のいろいろな方法により実施される。本発明のある実施様態では、ステンシルを使用し、これを用いて、金属粉(a)を含む印刷用配合物が、スキージーにより圧着させられる。この方法はスクリーン印刷法である。他の好適な印刷法は、グラビア印刷やフレキソ印刷である。さらに好適な印刷プロセスは、バルブジェット法から選ばれる。バルブジェット法では、好ましくは増粘剤(d1)を含まない印刷用配合物を使用する。
【0060】
本発明の方法では、工程(B)において一段又は多段の工程で、印刷された織布を熱処理する。熱処理を多段工程で行うことが望ましい場合は、複数の工程を、同温度で行っても良いし、または好ましくは異なる温度で行ってもよい。
【0061】
工程(B)または、工程(B)の個々の段階(以降、工程(B1)、(B2)、(B3)、と称す)の処理温度は、例えば50〜200℃の範囲である。
【0062】
工程(B)または工程(B)の各段階の処理時間は、例えば10秒〜15分間、好ましくは30秒〜10分間である。
【0063】
特に好ましくは、第一段階(B1)を、例えば50〜110℃の温度で、30秒〜3分間実施し、次いで第二段階(B2)を、130℃〜200℃の範囲の温度で30秒〜15分間実施する。
【0064】
工程(B)または工程(B)の各段階は、公知の設備により実施でき、例えば大気圧の乾燥キャビネットやテンター、または真空乾燥キャビネット中で実施できる。
【0065】
本発明の方法では、工程(C)において、織布上に他の金属が被覆させられる。この「織布」は、工程(A)で印刷され、工程(B)で熱処理された織布をさす。
【0066】
工程(C)において複数の他の金属を被覆させてもよいが、一種の金属のみを被覆させることが好ましい。
【0067】
本発明のある実施様態では、カーボニル鉄粉末を金属粉(a)として用い、銀、金、特に銅を他の金属として用いる。
【0068】
本発明のある実施様態において、以降工程(C1)と称す、工程(C1)では外部電源を使用せず、工程(C1)で用いる他の金属は、アルカリ溶液中または好ましくは酸性溶液中において、元素の電気化学列において、金属粉(a)の金属や水素より正に大きな標準電位を有している。
【0069】
処理法としては、工程(A)で印刷され、工程(B)で熱処理された織布を、
他の金属と適当なら一種以上の還元剤を含む、塩基性、中性または好ましくは酸性の好ましくは水溶液に浸漬して処理することができる。
【0070】
本発明のある実施様態では、工程(C1)の処理時間が、0.5分〜12時間、好ましくは最大30分間である。
【0071】
本発明のある実施様態では、工程(C1)において、他の金属の塩の塩基性、中性または好ましくは酸性溶液で処理するが、その際の溶液の温度は、0〜100℃の範囲、好ましくは10〜80℃の範囲である。
【0072】
工程(C1)において、一種以上の還元剤をさらに使用してもよい。他の金属として銅を用いる場合に添加する還元剤としては、例えばアルデヒド類、特に還元糖またはホルムアルデヒドがあげられる。他の金属としてニッケルを用いる場合に添加する還元剤としては、例えば次亜リン酸アルカリ金属、特にNaH2PO2−2H2O、またはホウ酸塩、特にNaBH4があげられる。
【0073】
本発明のもう一つの実施様態においては、以下工程(C2)と称す、工程(C2)で外部電源が使用され、工程(C2)で用いる他の金属は、酸性溶液またはアルカリ溶液において元素の電気化学列において、金属粉(a)の金属より、大きくあるいは少し正に大きな標準電位を有することができる。好ましくは、このために、カーボニル鉄粉末が金属粉(a)として、ニッケル、亜鉛または特に銅が他の金属として選ばれる。工程(C2)の他の金属が、元素の電気化学列において、水素及び金属粉(a)の金属より正に大きな標準電位を持つ場合、この他の金属が、工程(C1)と同様に被覆される。
【0074】
工程(C2)を、10〜100Aの範囲、好ましく12〜50Aの範囲の強度の電流をかけて実施してもよい。
【0075】
工程(C2)を、例えば1〜60分間の範囲の期間、外部電源を使用して実施してもよい。
【0076】
本発明のある実施様態において、元素の電気化学列において、金属粉(a)の金属より正の大きい標準電位を有する工程(C)の他の金属を使用し、初期に外部電源使用し、その後使用を停止することで、工程(C1)と工程(C2)を合体させてもよい。
【0077】
本発明のある実施様態においては、この他の金属の溶液に一種以上の助剤を添加する。有用な助剤の例としては、緩衝剤、界面活性剤、ポリマー、特に粒状ポリマーで粒子径が10nm〜10μmであるもの、脱泡剤、一種以上の有機溶剤、一種以上の錯化剤があげられる。
【0078】
酢酸/酢酸塩緩衝剤が特に有用な緩衝剤である。
【0079】
特に好適な界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、特にノニオン性界面活性剤から選ばれる。
【0080】
カチオン系界面活性剤としては、次のものがあげられる。好適なカチオン性乳化剤(c)としては、例えばC6−C18−アルキル−、−アラルキル−または複素環含有第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウム塩類、アルカノールアンモニウム塩類、ピリジニウム塩類、イミダゾリウム塩類、オキサジアリニウム塩類、モルホリニウム塩類、チアゾリニウム塩類及びアミンオキシドの塩類、キノリニウム塩類、イソキノリニウム塩類、トロピリウム塩類、スルホニウム塩類、及びホスホニウム塩類があげられる。他の例としては、ドデシルアンモニウムアセテートまたはその塩酸塩、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)の塩化物または酢酸塩、エチル脂肪酸エステル類、N−セチルピリジニウム塩化物、N−ラウリルピリジニウムスルフェート、N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩化物、及びジェミニ型界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)−エチレンジアミンジブロミドがあげられる。
【0081】
好適なアニオン界面活性剤の例としては、アルキルスルフェート(アルキル基:C8−C12)、エトキシ化アルカノール類(エトキシ化度:4〜30、アルキル基:C12−C18)の硫酸エステル類、エトキシ化アルキルフェノール類(エトキシ化度:3〜50、アルキル基:C4−C12)、アルキルスルホン酸類(アルキル基:C12−C18)、アルキルアリールスルホン酸類(アルキル基:C9−C18)、及びスルホコハク酸モノ−またはジエステル等のスルホサクシネート類のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩があげられる。アリール置換またはアルキル置換のポリグリコールエーテル類、US4,218,218に記載の物質、10〜37の範囲のy(US4,218,218中の式)の同族体が好ましい。
【0082】
一重または好ましくは多重にアルコキシ化されたC10−C30アルカノール類、好ましくは3〜100モルのC2−C4−アルキレンオキシドでアルコキシ化したもの、特にエトキシ化オキソ法または脂肪族アルコールなどのノニオン性界面活性剤が、特に好ましい。
【0083】
好適な脱泡剤としては、例えばシリコン系脱泡剤、例えば次式で表されるもの
HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH332
HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH33][OSi(CH32OSi(CH33]、
で、アルコキシ化されてないもの、または20当量のアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドでアルコキシ化されたものがあげられる。シリコーン非含有の脱泡剤もまた好適であり、その例としては、多重にアルコキシ化されたアルコール類、例えば脂肪族アルコールアルコキシ化物、好ましくは2〜50重にエトキシ化された、好ましくは非分岐のC10−C20アルカノール類、非分岐のC10−C20アルカノール類、2−エチルヘキサン−1−オールがあげられる。他の好適な脱泡剤としては、脂肪酸C8−C20−アルキルエステル類、好ましくはC10−C20−アルキルステアレートがあげられる。なお、C8−C20−アルキル基及びC10−C20−アルキル基は分岐していてもよい。
【0084】
好適な錯化剤は、キレートを形成する化合物である。少なくとも一種のカルボン酸基を有するアミン類、ジアミン類、トリアミン類から選ばれる錯化剤が好ましい。好ましい例としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレンペンタミン五酢酸、およびそれらのアルカリ金属塩があげられる。
【0085】
本発明のある実施様態においては、100nm〜100μmの範囲、好ましくは1μm〜10μmの範囲の厚みの層を形成するのに十分な量の他の金属を被覆させる。
【0086】
工程(C)では、金属粉(a)が部分的にあるいは完全に他の金属で置き換えられるが、他の被覆金属の形態は、必ずしも金属粉(a)の形態と同じである必要はない。
【0087】
他の金属の被覆が終了すると、本発明の金属被覆織布が得られる。本発明の金属被覆織布は、一回以上、例えば水で洗濯可能である。
【0088】
電気加熱のカーシート用のこのような織布を製造するには、従来の方法により、例えば半田により、その末端にリード線が取り付けられる。
【0089】
本発明はまた、上述の方法により得られる金属被覆織布を提供する。本発明の金属被覆織布は、単に効率的かつ特異的に製造されただけのものではない。例えば、その柔軟性と電気伝導度は、例えば金属粉(a)の印刷パターンと他の金属の被覆量により特異的に影響を受ける。本発明の金属被覆織布は、いろいろな用途に、例えば電導性織物の用途に適用できる。
【0090】
本発明のある実施様態においては、線状のまたは帯状のパターンで印刷された本発明の金属被覆織布は、帯又は線の方向において、室温で1mΩ/cm2 〜1MΩ/cm2の範囲、または1μΩ/cm〜1MΩ/cmの範囲の抵抗率を持つ。
【0091】
本発明のある実施様態においては、線状または帯状のパターンで印刷された本発明の金属被覆織布には、従来法、例えば半田により、少なくとも2個のリード線が線または帯の末端に取り付けられる。
【0092】
本発明はまた、本発明の金属被覆織布の、例えば加熱型織物、特に加熱型カーシートや加熱型のカーペットや織物壁紙、衣服への利用を提供する。
【0093】
本発明はまた、本発明の金属被覆織布の、電熱変換型の織物、特に自然の電場または人工的な電場を遮蔽する織物や織物を含有する電子システム、RFID織物などの製造における利用を提供する。RFID織物とは、例えばトランスポンダまたはRFIDタグにより高周波を検知することが可能な織物のことである。このような装置は内部電源を必要としない。
【0094】
織物を含有する電子部品の例としては、織物含有センサ、トランジスタ、チッブ、発光ダイオード(LED)、太陽電池モジュール、太陽電池セル、ペルチエ素子などがあげられる。織物含有センサは、例えば乳児や老人の体機能の追跡に適当である。他の好適な用途として、高視認性衣服、例えば高視認性上着があげられる。
【0095】
したがって、本発明は本発明の金属被覆織布を使用する加熱型織物壁紙やカーペット、カーテン、加熱型カーシート、加熱型カーペットなどの加熱型織物の製造方法、また電気を熱に変換する織物や、電場を遮蔽することが可能な織物、織物含有電子部品、RFID織物の製造方法を提供する。本発明の金属被覆織布を使用する加熱型織物や、電熱変換型織物、電場遮蔽性織物、RFID織物の本発明の製造方法は、本発明により金属被覆織布を製造することで実施される。
【0096】
本発明は、具体的には、本発明の金属被覆織布を用いて製造された加熱型カーシートを提供する。本発明の加熱型カーシートは、快適なシート温度を得るのに少量の電流を必要とするのみであり、電池の負荷を軽減する。これは特に冬場に利点となる。また、本発明の方法では、加熱型カーシートのデザインにおける自由度が高くなるため、ホットスポットによる局部加熱を抑え、快適で均一な熱分布をもつカーシートを得ることが可能となる。
【0097】
本発明は、具体的には本発明の金属被覆織布を使用するか含んで製造される織物壁紙やカーペット、カーテンを提供する。
【0098】
本発明はまた、
(a)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、C、Bi、及びこれらの混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の金属粉、特にカーボニル鉄粉、
(b)少なくとも一種のバインダー、
(c)少なくとも一種の乳化剤、及び
(d)適当なら、少なくとも一種の流動性改善剤
を含む印刷用配合物、好ましくは印刷ペーストを提供する。
【0099】
金属粉(a)、バインダー(b)、乳化剤(c)、及び流動性改善剤(d)は、上述のとおりである。
【0100】
本発明の印刷用配合物は、さらに一種以上の上記助剤(e)を含んでいてもよい。
【0101】
本発明のある実施様態において、
本発明の印刷用配合物は、工程(A)で使用する印刷用配合物全体に対して、
10%〜90重量%、好ましくは50%〜80重量%の金属粉(a)、特にカーボニル鉄粉、
5%〜30重量%、好ましくは10%〜15重量%のバインダー(b)、
0.1%〜4重量%、好ましくは最大2重量%の乳化剤(c)、及び
0%〜5重量%、好ましくは0.2%〜1重量%の流動性改善剤(d)を含有している。
【0102】
本発明のある実施様態においては、本発明の印刷用配合物は、金属粉(a)とバインダー(b)と乳化剤(c)と流動性改善剤(d)の総量に対して最大30重量%の量の助剤(e)を含有している。
【0103】
また、本発明は、
(a)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、C、Bi、及びこれらの混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の金属粉、特にカーボニル鉄粉、
(b)少なくとも一種のバインダー、
(c)少なくとも一種の乳化剤、
(d)適当なら、少なくとも一種の流動性改善剤、及びまた、
適当なら一種以上の助剤(e)を混合することによる
本発明の印刷用配合物の製造方法を提供する。
【0104】
本発明の印刷用配合物を製造する方法の一例は、水及び適当なら一種以上の助剤、例えば脱泡剤、例えばシリコーン系脱泡剤とともに攪拌することである。その後に、一種以上の乳化剤を添加してもよい。
【0105】
次いで、一種以上の手触り改善剤、例えば一種以上のシリコーンエマルジョンを添加してもよい。
【0106】
その後、一種以上の乳化剤(c)及び/又は一種以上の金属粉粉末(a)を添加してもよい。
【0107】
その後、一種以上のバインダー(b)を、最終的に適当なら一種以上の流動性改善剤(d)を添加し、混合物を、例えば攪拌により、均一となるまで連続的に混合する。通常比較的短かい攪拌時間で十分であり、攪拌時間は、攪拌速度が1000〜3000rpmの範囲で、例えば5秒〜5分間、好ましくは20秒〜1分間の範囲である。
【0108】
本発明により調合された印刷用配合物は、印刷ペーストとして用いる場合、30%〜70重量%のホワイトオイルを含有している。水性の合成増粘剤(d1)は、好ましくは最大25重量%の、増粘剤(d1)として有用な合成ポリマーを含んでいる。水性の増粘剤配合物(d1)を使用する場合、通常アンモニア水を添加する。また、廃棄物なしに印刷を行うために、顆粒状または固体状の増粘剤(c)を用いてもよい。
【0109】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0110】
I.本発明の印刷ペーストの調整
以下のものを混合攪拌した:
【0111】
54gの水
750gのカルボニル鉄粉(非不動態化物)、d10:3μm、d50:4.5μm、d90:9μm.
125gの、以下の組成のランダムエマルジョンコポリマーの水分散液、pH6.6、固形分含量39.3重量%、
全固形分の質量部に対して、
1.9部のN−メチロールアクリルアミド、
1.3質量部のアクリル酸、
9.8質量部のスチレン、
40質量部のn−ブチルアクリレート、及び
47質量部のエチルアクリレート、
平均粒子径(重量平均):172nm、
(コールターカウンター法)、Tg:−19℃(バインダーb.1)
動的粘度(23℃):70mPa・s、
20gの次式の化合物、
【0112】
【化2】

【0113】
20gの、イソプロパノール/水(体積比:2:3)中でのヘキサメチルジイソシアネートとn−C1837(OCH2CH215OHとの反応で得られる反応生成物の51重量%溶液
【0114】
これらを5000rpm(Ultra−Thurrax)で20分間攪拌し、Haake回転粘度計を用いて求めた動的粘度が30dPa・s(23℃)である印刷ペーストを得た。
【0115】
II.織物の印刷(工程(A))及び熱処理(工程(B))
ポリエステル不織布上に、目付90g/cm2で、120メッシュのふるいを使用し帯状のパターンで、Iの印刷ペーストを印刷した。
【0116】
その後、100℃の乾燥キャビネットで10分間乾燥した。その後、150℃の温度の乾燥キャビネット内で5分間定着させた。
【0117】
このようにして、印刷・熱処理されたポリエステル不織布を得た。
【0118】
III.他の金属の被覆、工程(C)
III.1外部電源を使用しない銅の被覆
IIの印刷熱処理後のポリエステル不織布を次の組成物を含む浴(室温)中で10分間処理した。
【0119】
1.47kgのCuSO4−5H2
382gのH2SO4
5.1lの蒸留水
1.1gのNaCl
5gのC13/C15−アルキル−O−(EO)10(PO)5−CH3
(EO:CH2−CH2−O、PO:CH2−CH(CH3)−O)
【0120】
ポリエステル不織布を分離し、2回流水で洗浄し、90℃で1時間乾燥させて、
本発明の金属被覆織物T−1を得た。
【0121】
III.2電解めっきによる他の金属の被覆
IIの印刷熱処理後のポリエステル不織布を、いずれの場合も、次の組成物を含む電解めっき浴で処理した。
【0122】
1.47kgのCuSO4−5H2
382gのH2SO4
5.1lの蒸留水
1.1gのNaCl
5gのC13/C15−アルキル−O−(EO)10(PO)5−CH3
ポリエステル不織布を分離し、流水で2回洗浄し、90℃で1時間乾燥させた。
【0123】
III.2.1電解めっき、10分間
電解めっきを、上記の電解めっき浴中で10分間おこなった。なお、電極をカソードとして使用し、アノードを印刷されたポリエステル不織布に接触させた。
この結果、本発明の金属被覆織物T−2を得た。
【0124】
III.2.1電解めっき、30分間
電解めっきを、上記の電解めっき浴中で30分間おこなった。なお、電極をカソードとして使用し、アノードを印刷されたポリエステル不織布に接触させた。
この結果、本発明の金属被覆織物T−3を得た。
【0125】
IV.加熱可能性の試験
IV.1 T−2の加熱可能性試験
まず、表1に示すように、ある電流(または電圧)をかけて、本発明の金属被覆織物T−2を試験した。電流、電圧、抵抗は、表1に示すように変化した。
【0126】
【表1】

【0127】
IV.2 T−3の加熱可能性試験
まず、表2に示すように、ある電流(または電圧)をかけて、本発明の金属被覆織物T−3を試験した。電流、電圧、抵抗は、表2に示すように変化した。
【0128】
【表2】

【0129】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr、Bi、及びその混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の成分を含む印刷用配合物を織布に印刷し
(B)その織布を一段以上の工程で熱処理し
(C)その織布に他の金属を被覆させることを特徴とする
金属被覆織布の製造方法。
【請求項2】
工程(A)で使用する印刷用配合物が、
(a)少なくとも一種の金属粉、
(b)少なくとも一種のバインダー、
(c)少なくとも一種の乳化剤、及び
(d)適当なら、少なくとも一種の流動性改善剤を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
織布が、綿、合成繊維及び綿と合成繊維のブレンドから選ばれる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
織布が織布及び不織布から選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
印刷、熱処理、他の金属の被覆後の金属被覆織布が電流を伝導するように工程(A)の織布上に、金属粉(a)のパターンを印刷する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
金属粉(a)が鉄五カルボニルの熱分解により得られるものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(C)において外部電源が使用されず、工程(C)の他の金属が元素の電気化学列において、金属粉(a)の金属より正に大きな標準電位を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(C)において外部電源が使用され、工程(C)の他の金属が元素の電気化学列において、金属粉(a)の金属より、正に大きく又は小さく大きな標準電位を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(A)において、あるパターンが織布上に印刷される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
乳化剤(c)がノニオン性乳化剤から選ばれる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法により得られたことを特徴とする金属被覆織布。
【請求項12】
加熱型織物、電熱変換型織物、電場を遮蔽可能な織物、織物含有電子システム、及びRFID織物の製造のための、請求項11に記載の金属被覆織布の利用。
【請求項13】
請求項11に記載の金属被覆織布を用いて得られることを特徴とする加熱型織物、電熱変換型織物、電場を遮蔽可能な織物、織物含有電子システム、及びRFID織物。
【請求項14】
加熱型カーシートを含む、請求項13に記載の加熱型織物。
【請求項15】
(a)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr、Bi、及びこれらの混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の金属粉、
(b)少なくとも一種のバインダー、
(c)少なくとも一種の乳化剤、及び
(d)適当なら、少なくとも一種の流動性改善剤
を含むことを特徴とする印刷用配合物。
【請求項16】
印刷ペーストである、請求項15に記載の印刷用配合物。
【請求項17】
(a)粉末状のZn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、Cr、Bi、およびこれらの混合物や合金から選ばれる少なくとも一種の金属粉、
(b)少なくとも一種のバインダー、
(c)少なくとも一種の乳化剤、及び
(d)適当なら、少なくとも一種の流動性改善剤を混合することを特徴とする
請求項15または16に記載の印刷用配合物の製造方法。

【公表番号】特表2009−520889(P2009−520889A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546406(P2008−546406)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069799
【国際公開番号】WO2007/074090
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】