幹細胞の特異的誘導およびそれにより得られた細胞
【課題】
本発明は、幹細胞から種々の分化細胞、分化組織などの分化体を思い通りに作製することを課題とする。本発明はまた、未分化な細胞から血島(造血幹細胞)をつくるための技術を開発することをも課題とする。
【解決手段】
本発明は、造血幹細胞を調製するための方法であって:A)未分化細胞を提供する工程と、B)該未分化細胞を解離させる工程と、C)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、を包含する、方法を提供する。
本発明は、幹細胞から種々の分化細胞、分化組織などの分化体を思い通りに作製することを課題とする。本発明はまた、未分化な細胞から血島(造血幹細胞)をつくるための技術を開発することをも課題とする。
【解決手段】
本発明は、造血幹細胞を調製するための方法であって:A)未分化細胞を提供する工程と、B)該未分化細胞を解離させる工程と、C)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、を包含する、方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞の分化誘導に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医学(再生医療)による疾患治療が最近注目を浴びている。しかし、これを臓器ないし組織機能不全を呈する多くの患者に対して日常的に適応するまでには至っていない。現在まで、そのような患者の治療として、臓器移植のほか、医療機器での補助システムの利用がごく限られた患者に適応されているにすぎない。しかし、これらの治療法には、ドナー不足、拒絶、感染、耐用年数などの問題がある。特に、ドナー不足は深刻な問題であり、骨髄移植の場合、国内外で骨髄ないし臍帯血バンクが次第に充実してきたといっても、限られたサンプルを多くの患者に提供することが困難である。従って、これらの問題を克服するために幹細胞治療とその応用を中心とした再生医学に対する期待がますます高まっている。
【0003】
造血幹細胞の増幅および分化は、再生医療において重要課題のひとつであり、幹細胞を理解すること、およびその機構を理解した上での疾患の処置において非常に重要な役割を果たすと考えられており、近年その研究が進んでいる。
【0004】
したがって、幹細胞(特に、造血幹細胞)の分化を調節する因子の同定は、いまだに研究が進んでおらず、当業者が待ち焦がれている解決されていない課題のひとつである。
【0005】
再生医学においては、器官・臓器の再構築が最重要となる。この場合、大きく分けて生体外で器官を構築し人工器官として用いる方法と、生体内で器官を再構築させる方法とがある。いったん幹細胞が得られたとしても、制御された再生方法が利用可能でない限り、その応用方法は制限される。
【0006】
一方、幹細胞に遺伝子を導入し、その幹細胞を移植することによって遺伝子治療を行う試みが始まっている。例えば、X連鎖性重症複合免疫不全症の患者にIL−2受容体γ鎖を導入した幹細胞(CD34陽性骨髄細胞)を移植することによって臨床症状が改善することが報告されている(非特許文献1=Cavazzana−Calvo,M.et al.Science,288:669−672,2000)。しかし、幹細胞に遺伝子を導入すると、種々の有害作用が出ることが考えられることから、利用可能な造血幹細胞などを作製することができない。
【0007】
幹細胞の分化を調節する機構として種々のタンパク質が重要な役割を果たす。例えば、幹細胞因子(stem cell factorまたはsteel factor;SCFともいう)、トロンボポイエチン(TPO)、インターロイキン(IL)−3、IL−6、IL−11、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの他のサイトカインが、造血幹細胞分化では注目されている因子である。
【0008】
アフリカツメガエルは、発生が早く結果の判定が容易であること、採卵が容易であること、発生の過程が体の外で観察できること、遺伝子の機能解析が容易であることなどの利点から、初期発生の研究において重要な役割を担ってきた。これまでに、アフリカツメガエルの未分化な細胞から、心臓や膵臓、眼や腎臓などの種々の器官を作るための方法が開発されている。
【0009】
しかしながら、これまで未分化な細胞から血島(造血幹細胞)を誘導する技術がなかった。このような技術が存在しないことは、脊椎動物の初期発生における血液形成の研究が未だ初歩的段階にある原因となっているだけでなく、ヒトの貧血や血球の異常亢進、白血病などの血液疾患の詳細な研究や、その治療法や治療薬を開発するうえでの重大な障害となっていた。
【0010】
アクチビンについては、報告がいくつかあるが(特許文献1=特開2005-095138)、しかし、血島への分化は知られていない。
【非特許文献1】Cavazzana−Calvo,M.et al.Science,288:669−672,2000
【特許文献1】特開2005-095138
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、幹細胞から種々の分化細胞、分化組織などの分化体を思い通りに作製することを課題とする。本発明はまた、未分化な細胞から血島(造血幹細胞)をつくるための技術を開発することをも課題とする。未分化な細胞から血島(造血幹細胞)をつくることができれば、そのような血島(造血幹細胞)は、これらの造血幹細胞形成に関与するタンパク質などが特異的に欠如、あるいは異常発現しているヒトなどの疾病の診断や、白血病などの造血幹細胞の欠陥や欠損などに起因するヒトなどの異常や疾病を治療する目的などに有用な材料を提供する可能性がある。また、そのような異常や疾病に関する研究のためのよい材料を提供することや、それらの異常や疾病を治療するための薬剤の開発における有用なアッセイ系の材料を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、アクチビンまたはその等価物の濃度を微妙に変動させることによって、種々の分化細胞または分化組織を作出し分けることが可能であることを見出したことによって上記課題を解決した。
【0013】
初期発生を研究するためのよいモデルであるツメガエルの未分化細胞を出発材料として、解離再集合体を形成し、そうして得られた解離再集合体を2枚のシート状の未分化な細胞で挟み込んで培養することにより、血島(造血幹細胞)を誘導することができる(図1)。このようにして誘導された血島(造血幹細胞)は、血島(造血幹細胞)特有の外見をもち、血島(造血幹細胞)に特有なタンパク質(マーカータンパク質)の遺伝子SCL(Stem cell leukemia protein)が発現するなどから、血島(造血幹細胞)であることが判明した。本技術において肝要な点は、アクチビン処理する際、直接未分化細胞へアクチビン処理するのではなく、解離した未分化細胞を再集合させる時にアクチビンを処理することにある。
【0014】
図1に本発明の代表的な方法のスキームを示す。図1では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図が示されている。アフリカツメガエル後期胞胚からアニマルキャップを切り出し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを除いたスタインバーグ氏液中で細胞を解離し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含むスタインバーグ氏液で調製したアクチビンで3時間および5時間処理した。このアクチビン処理した解離再集合体を単独で培養した場合と、無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したときの組織分化を調べた。その結果、アクチビン処理を3時間行ってから単独培養した解離再集合体はアクチビン濃度0ng/mlでは不整形表皮に、1ng/mlでは血球や間充織に、10 ng/mlでは筋肉に、100 ng/mlでは内胚葉性細胞にそれぞれ分化していた。
【0015】
一方、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養したとき、アクチビン処理濃度 0 ng/mlでは不整形表皮に、1 ng/mlでは血島に、10 ng/mlでは前腎管に、100 ng/mlではセメント腺に分化しているのが観察された。この実験により、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体はアクチビンの濃度および処理時間依存的分化を示すこと、またアクチビン 1 ng/ml処理を3時間行った解離再集合体をサンドイッチ培養することにより高率に血島が誘導されることが分かった。
【0016】
現在までに報告されているアニマルキャップを用いた器官形成の多くは、シート状のアニマルキャップにアクチビン処理を行い、単独培養もしくはサンドイッチ培養を行っていた。この方法ではアクチビンシグナルを受け取る細胞と受け取らない細胞が混在し不均一であった。
【0017】
本研究では解離してアクチビン処理を行うことにより、一つ一つの細胞が均一にアクチビンシグナルを受け取る状態にし、単独培養およびサンドイッチ培養を行った。
【0018】
従って、本発明は以下を提供する。
(1) 造血幹細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)上記未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の上記未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
(2) 上記未分化細胞は後期胞胚に由来する細胞を含む、項1に記載の方法。
(3) さらに
D)C)工程により得られた細胞を未分化細胞と接触させる工程を包含する、項1に記載の方法。
(4)上記接触は、未分化細胞のシートで上記C)工程で得られた細胞を挟み込むことによって達成される、項3に記載の方法。
(5)上記未分化細胞は、後期胞胚の動物極の細胞を含む、項3に記載の方法。
(6)上記未分化細胞との接触は、最初の接触から最終分化まで未分化細胞と接触させるに十分である時間である、項3に記載の方法。
(7)上記未分化細胞との接触は、少なくとも1日間行われる、項3に記載の方法。
(8)上記未分化細胞との接触は、1日間以上3日間以内で行われる、項3に記載の方法。
(9)上記アクチビンは、アクチビン−A、アクチビン−B、インヒビンおよびアクチビン−Cからなる群より選択されるアクチビンである、項1に記載の方法。
(10)上記アクチビンは、配列番号2、4、6、8、10または12のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む、項1に記載の方法。
(11)上記アクチビンは、アニマルキャップあたり0.5〜1ng/mlの濃度で付与される、項1に記載の方法。
(12)上記造血幹細胞は、幹細胞白血病タンパク質(SCL)マーカーを発現することを特徴とする、項1に記載の方法。
(13)上記解離は、Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、項1に記載の方法。
(14)上記解離は、少なくとも10分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、項1に記載の方法。
(15)上記解離は、10分間から20分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、項1に記載の方法。
(16)上記C)工程において上記細胞の解離再集合体が形成される、項1に記載の方法。
(17)上記C)工程における解離再集合体の形成は、少なくとも30分上記培地中で培養することによって達成される、項16に記載の方法。
(18)上記C)工程におけるアクチビンの処理は、少なくとも3時間行われる、項1に記載の方法。
(19)上記未分化細胞はアニマルキャップにより提供される、項1に記載の方法。
(20)上記アニマルキャップは、5〜10枚使用される、項19に記載の方法。
(21)上記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、上記解離再集合体を上記未分化細胞とともに培養する工程をさらに包含する、項1に記載の方法。
(22)上記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、上記解離再集合体を上記未分化細胞でサンドイッチ培養する工程をさらに包含する、項1に記載の方法。
(23)上記細胞は、脊椎動物細胞である、項1に記載の方法。
(24)上記細胞は、両生綱動物細胞である、項1に記載の方法。
(25)上記細胞は、カエルの細胞である、項1に記載の方法。
(26)上記細胞は、アフリカツメガエルの細胞である、項1に記載の方法。
(27)項1〜26のいずれか1項に記載の方法によって調製された細胞。
(28)項1〜28のいずれか1項に記載の方法によって調製された血島。
(29)造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用される培地であって、
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地。
(30)上記培地は、58mM NaCl,0.67mM KCl、3.0mM ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸および100mg/L 硫酸カナマイシン、pH7.4の組成を含む、項29に記載の培地。
(31)造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を造血幹細胞に分化させる工程において使用される培地であって、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地。
(32)上記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、項31に記載の培地。
(33)上記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、項31に記載の培地。
(34)造血幹細胞を誘導するための方法において使用する培地の組み合わせであって、上記組み合わせは
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地と、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地と
を含む、培地の組み合わせ。
(35) 造血幹細胞を調製するためのキットであって:
a)上記未分化細胞を解離させる解離手段と、
b)上記未分化細胞を造血幹細胞に分化させる分化手段と、
c)解離後の上記未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間分化手段により上記未分化細胞を分化させることを指示する指示書と、
を備える、キット。
(36)上記分化手段は、アクチビンを含む培地であることを特徴とする、項35に記載のキット。
(37)造血幹細胞を調製するための、アクチビンの使用。
(38)造血幹細胞を調製するための組成物であって、上記組成物は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含有する、組成物。
(39)上記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、項38に記載の組成物。
(40)上記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、項38に記載の組成物。
(41) 所望の分化細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)上記未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の上記未分化細胞を、所望の分化細胞に分化するに十分な条件でアクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、造血幹細胞を簡易な方法で生産する方法を提供する。これはアクチビンの特定の濃度で達成された。アクチビンの濃度を変更すると別の組織形態に分化することも見出された。従って、本発明は、アクチビンによる微妙な分化調節を可能にしたという効果を奏する。アニマルキャップ5枚、10枚、どちらの実験系でも、アクチビン処理時間を5時間にするとアクチビン1ng/ml処理・サンドイッチ培養を行っても血島は誘導されない。ただし、血球はできるので、SCL(遺伝子マーカー)の発現は見られる。アクチビン処理に対する細胞数は、必ずしも普遍的とは言えない。アニマルキャップ5枚、10枚、どちらの実験系でも、アクチビン1ng/ml、3時間処理、サンドイッチ培養を行うと血島が誘導される。血島形成ということだけに焦点をしぼると、細胞数は普遍的であると言えるかもしれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0022】
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、本明細書において記載される融合細胞、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書において使用される場合は、幹細胞は好ましくは胚性幹細胞であり得るが、状況に応じて組織幹細胞も使用され得る。
【0023】
本明細書において、「分化」または「細胞分化」とは、1個の細胞の分裂によって由来した娘細胞集団の中で形態的および/または機能的に質的な差をもった二つ以上のタイプの細胞が生じてくる現象をいう。従って、元来特別な特徴を検出できない細胞に由来する細胞集団(細胞系譜)が、特定のタンパク質の産生などはっきりした特徴を示すに至る過程も分化に包含される。現在では細胞分化を,ゲノム中の特定の遺伝子群が発現した状態と考えることが一般的であり、このような遺伝子発現状態をもたらす細胞内あるいは細胞外の因子または条件を探索することにより細胞分化を同定することができる。細胞分化の結果は原則として安定であって、特に動物細胞では,別のタイプの細胞に分化することは例外的にしか起こらない。造血幹細胞について言う場合、「分化」とは、CDによって表される表面抗原分子が変化して、次の段階の細胞になることをいう。具体的には多能性幹細胞(CD34+CD38−)からリンパ系幹細胞(CD34+CD38+)または骨髄系幹細胞(CD34+CD38+CD33+) のように分化抗原の表原型が変化することをいい、リンパ系幹細胞からT前駆細胞またはB前駆細胞、骨髄系幹細胞からBFU−C、CFC−MEG、EO− CFCまたはCFU−GM、BFU−EからCFU−E、T前駆細胞からT細胞、B前駆細胞からB細胞、CFU−Eから赤血球、CFC−MEGから血小板、 EO−CFCから好酸化球、CFU−GMから単球、好中球または好塩基球になることをいう。
【0024】
本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は「全能性」といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ただし、明確に区別する場合は、全能性と多能性とは区別され得、前者はどのような細胞へも分化し得る能力をいい、後者は、複数の方向を有するが、生物が可能なすべての方向には分化できない能力を有することをいう。また、1つの方向にのみ分化する能力は、単能性ともいう。
【0025】
本明細書において全能性と多能性とは、例えば、受精後の日数により判定することができ、例えば、マウスであれば、受精後約8日を基準として区別され得る。理論に束縛されないが、マウスでは、受精後、以下のような経過をたどることが通常である。受精後6.5日(E6.5とも表記する)では、原始線条(原条ともいう)がエピブラストの片側に出現し、胚の将来の前後軸が明らかになる。原条は、胚の将来の後方端を示し、外胚葉を横切って円筒の遠位端まで達する。原条は、細胞運動が行われる領域であり、その結果、将来の内胚葉と中胚葉とが形成されることになる。E7.5までに結節の前方に頭部突起が出現し、この部分には脊索と、それを取り囲んで下層には将来の内胚葉、上層には神経板が形成されることになる。結節は、E6.5日ごろから現れ、後方へと移動し、軸構造が前から後ろへと形成される。E8.5日までに胚は幾分丈が長くなり、その前端には大部分前方神経板からなる大きな頭部ヒダが形成される。体節はE8日から1.5時間に1個の割合で前方から後方へと形成され始める。この時期を越えた細胞は、仮に胎盤に戻したとしても、脱分化をしない限りもはや全能性を示さず、個体を形成しない。これより前では特別の処理をしなくても全能性を示し得ることから、この点が全能性の分岐点であるといえる。このことは、ES細胞がこれ以降の胚から樹立することが困難であり、これ以降の胚からは通常EG(生殖細胞由来)細胞と呼ばれる細胞が樹立されることから、そのような意味でも分岐点であるといえる。
【0026】
本明細書において「多能性」または「多分化能」とは、互換可能に用いられ、細胞の性質をいい、1以上、好ましくは2以上の種々の組織または臓器に分化し得る能力をいう。従って、「多能性」および「多分化能」は、本明細書においては特に言及しない限り「未分化」と互換可能に用いられる。通常、細胞の多能性は発生が進むにつれて制限され、成体では一つの組織または器官の構成細胞が別のものの細胞に変化することは少ない。従って多能性は通常失われている。とくに上皮性の細胞は他の上皮性細胞に変化しにくい。これが起きる場合通常病的な状態であり、化生(metaplasia)と呼ばれる。しかし間葉系細胞では比較的単純な刺激で他の間葉性細胞にかわり化生を起こしやすいので多能性の程度は高い。胚性幹細胞は、多能性を有する。組織幹細胞は、多能性を有する。本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は全能性といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ある細胞が多能性を有するかどうかは、たとえば、体外培養系における、胚様体(Embryoid Body)の形成、分化誘導条件下での培養等が挙げられるがそれらに限定されない。また、生体を用いた多能性の有無についてのアッセイ法としては、免疫不全マウスへの移植による奇形腫(テラトーマ)の形成、胚盤胞への注入によるキメラ胚の形成、生体組織への移植、腹水への注入による増殖等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0027】
本明細書において「未分化細胞」とは、上記のような多分化能を有する細胞をいう。好ましくは、後期胞胚に由来する細胞が用いられる。
【0028】
本明細書において「造血幹細胞」とは、赤血球・白血球・血小板などの血球(血液細胞)等の細胞へと分化する能力を有する幹細胞をいう。好ましくは、血液細胞系に分化がある程度進んでいるが多分化能を保持する。あらゆる種類の血球に分化する能力を有するとともに造血再構築能を有する細胞であり、主に骨髄、臍帯血、脾臓あるいは肝臓中に存在し、微量ながら末梢血に も存在する。これら造血幹細胞は、CD34強陽性細胞であり、本発明においては高増殖能コロニー形成細胞(High−Proliferative Potential Colony−Forming Cells (HPP−CFC))もこれに包含される。「幹細胞」とは、多能性造血幹細胞およびこれから分化したリンパ球系幹細胞、骨髄系幹細胞(CFU−GEMM)を 意味する。これら細胞はCD34陽性細胞である。
「前駆細胞」とは、多能性造血幹細胞から各系統の血液細胞が分化形態学的には同定できないがすでに赤血球系など一方向の血液細胞にしか分化し得ない細胞を 意味する。具体的には血小板コロニー形成細胞(CFC−MEG)、好酸球コロニー形成細胞(EO−CFC)、顆粒球単球コロニー形成細胞(CFU− GM)、赤血球形成細胞(BFU−E、CFU−E)、T前駆細胞、B前駆細胞などである。これらはいずれもCD34陽性細胞である。
【0029】
造血細胞は骨髄の中でつくられ、分化して、赤血球、血小板、白血球などになり末梢血液の中を流れる。骨髄系細胞の分化を見ると、一番大元には多能性幹細胞があり、次に造血系細胞に特化した造血幹細胞があり、多能性前駆細胞へと分化し、さらに骨髄球系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞へと分化する
骨髄系では多能性幹細胞からCFU−GEMMという細胞へ分化する。そのCFU−GEMという細胞からCFU−GMという細胞へ、次いで骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球という形で分化する。これらは骨髄中に存在する細胞であり、これが分化すると好中球となって末梢血中を流れる。次のラインへいくと、CFU−GMという細胞から単球の方へ行き、単芽球、前単球、単球と分化する。この単球が末梢血へあらわれる。3番目のラインでは、CFU−GEMMという細胞からBFU−E細胞へと分化し、それから前赤芽球、赤芽球、赤血球へと分化する。また、巨核球系というものもあり、CFU−Meg(メガカリオサイトの略)、巨核芽球、巨核球、血小板へと分化する。
【0030】
このような分化の過程で白血病は、多能性幹細胞の異常に起因する。したがって、本発明は、このような異常を改善するという意味で白血病の治療にも応用され得る。
【0031】
リンパ球系では、CMLでは、多能性幹細胞からリンパ系の幹細胞へと分化し、B細胞系とT細胞系とに分かれる。それと別個にNK細胞の方へ分かれていくというラインが存在する。B細胞系のラインといたしましては前駆B細胞、前駆前駆B細胞(pre−pre−B−cell)、初期B細胞(early−B−cell)などへと分化し、中間B細胞(intermediate− B−cell) 、成熟B細胞(matureB−cell )、形質球様細胞(plasmacytoid− B−cell) 、形質細胞(plasma−cell)へと分化する。T細胞系としては、胸腺前駆細胞、未成熟胸腺細胞、共通胸腺細胞(common thymocyte)、成熟胸腺細胞へと分化する。別のルートとしてヘルパー/インデューサーT細胞へいく系統と、成熟胸腺細胞から抑制/細胞傷害性T細胞へと分化する系統が存在する。このような分化に関するより詳細な説明については、赤司浩一、最新医学 56(2)、15−23,2001を参照のこと。この文献は、本明細書において参考として援用される。
【0032】
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、両生類(例えば、アフリカツメガエル)の細胞が用いられる。
【0033】
本発明が対象とする臓器はどのような臓器でもよく、また本発明が対象とする組織または細胞は、生物のどの臓器または器官に由来するものでもよい。本明細書において「臓器」または「器官」とは、互換可能に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明の多能性細胞から分化した細胞としては、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0034】
本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/-または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。植物では、構成細胞の発達段階によって分裂組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われている。
【0035】
本明細書において「アクチビン」とは、卵巣の顆粒膜細胞などから分泌され,下垂体前葉の濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進する蛋白質ホルモンをいう。代表的なアクチビンとしては、例えば、アクチビン−A、アクチビン−B、アクチビン−C、インヒビンなどがあり、これらは、動物間でよく保存されており、ヒトのものがアフリカツメガエルに作用したり、逆も真であることが予期されている。配列番号1および配列番号9(アクセッション番号:NM002192(ヒトインヒビンβAの配列番号)およびアクセション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)=核酸配列)および配列番号2および配列番号10(それぞれヒトインヒビンβAの配列番号およびアクセッション番号X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)=アミノ酸配列)に示されるような配列を有する因子および他の種の動物において対応する因子(オルソログ)が挙げられるがそれに限定されない。また、アフリカツメガエルにはインヒビンβB(アクセッション番号:S61773)の登録がある(配列番号11および12)。分子量25000.インヒビンβ鎖のサブユニットがS−S結合した二量体であり,アクチビンA(βAβA),アクチビンAB(βAβB),アクチビンB(βBβB)の3種類が知られている.アクチビンAは赤芽球分化誘導因子(erythroblast differentiation factor,EDF)ともいう.インヒビンβ鎖が形質転換成長因子TGF−βと約40%の相同性をもっており,また一次構造中のシステイン残基の位置がよく保存されているので,アクチビンをTGF−βファミリーに入れることもある。アクチビンは、卵巣の顆粒膜細胞などから分泌され,下垂体前葉の濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進する蛋白質ホルモンである。インヒビンを精製する過程で卵胞液中から単離された(1986).分子量25000.インヒビンβ鎖のサブユニットがS−S結合した二量体であり,アクチビンA(βAβA),アクチビンAB(βAβB),アクチビンB(βBβB)の3種類が知られている.アクチビンAは赤芽球分化誘導因子(erythroblast differentiation factor,EDF)ともいう.インヒビンβ鎖が形質転換成長因子TGF−βと約40%の相同性をもっており,また一次構造中のシステイン残基の位置がよく保存されているので,アクチビンをTGF−βファミリーに入れることもある.脊椎動物のいろいろな臓器でアクチビン遺伝子の発現が報告されており,卵巣の顆粒膜細胞におけるFSH受容体の合成の促進,フレンド細胞や骨髄の赤芽球前駆細胞の増殖抑制とヘモグロビン合成の誘導,膵臓からのインシュリン分泌の促進,両生類胚における中胚葉誘導など,多くの生理活性をもつ。アクチビンについては、以下を参照することができる:Nakamura et al.,Isolation and characterization of native activin B.J Biol.Chem.1992,267,16385−9;Uchiyama and Asashima,Specific erythroid differentiation of mouse erythroleukemia cells by activins and its enhancement by retinoic acids.Biochem Biophys.Res.Commun.1992,187,347−52;Fukui et al.,Isolation and characterization of Xenopus follistatin and activins.Dev.Biol.1993,159,131−9;Fukui et al.,Identification of activins A,AB,and B and follistatin proteins in Xenopus embryos.Dev.Biol.1994,163,279−81;Nakano et al.,Comparison of mesoderm−inducing activity with monomeric and dimeric inhibin alpha and beta−A subunits on Xenopus ectoderm.Horm.Res.1995,44,Suppl.2,15−22。
【0036】
アクチビンは、ヒト、ラット、マウス、アフリカツメガエルなどを含む哺乳動物のほか、ショウジョウバエなどでもそのホモログが知られている。従って、本明細書においてアクチビンは、通常、哺乳動物のほか、生物一般において存在するアクチビンを指す。アクチビン−AはインヒビンβAの二量体である(ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192;配列番号1および2(核酸およびアミノ酸))。アクチビン−ABはインヒビンβAとインヒビンβBの二量体である(ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193;配列番号3および4(核酸およびアミノ酸))。アクチビン−BはインヒビンβBの二量体である。アクチビン−CはインヒビンβCの二量体である(ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538;配列番号5および6(核酸およびアミノ酸))。インヒビンはインヒビンαの二量体である(ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191;配列番号7および8(核酸およびアミノ酸))。
そのようなアクチビン遺伝子としては、例えば、
(A)(a)配列番号1、3、5、7、9または11に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1、3、5、7、9または11に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、
核酸分子;あるいは
(B)(a)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1、3、5、7、9または11に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、
ポリペプチドをコードする核酸分子、あるいはそれがコードするポリペプチドが挙げられるがそれらに限定されない。
【0037】
本明細書において、「リガンド」とは、あるタンパク質に特異的に結合する物質をいう。例えば,細胞膜上に存在する種々のレセプタータンパク質分子と特異的に結合するレクチン、抗原、抗体、ホルモン、神経伝達物質などがリガンドとして挙げられる。アクチビンがリガンドとすれば、同様の(等価の)作用を有するリガンドは、本発明の範囲内であることが意図される。
【0038】
本発明において用いられるアクチビンについて、糖鎖が付加され得る部分としては、N−アセチル−D−グルコサミンなどが結合するN−グルコシド結合可能な部分、およびN−アセチル−D−ガラクトサミンのO−グリコシド結合をする部分(セリンまたはスレオニン残基が頻出する部分)が挙げられる。本明細書において使用されるアクチビンは、糖鎖の有無は特に活性に影響を与えるというわけではないが、これらの糖鎖が付加されたタンパク質は、通常生体内での分解に対して安定であり、強い生理活性を有し得る。従って、これら糖鎖が付加されたポリペプチドもまた、本発明の範囲内にある。
【0039】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または複数のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。このようなポリペプチド形態の本発明の遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。
【0040】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。
【0041】
本明細書において「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1または複数の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。本発明の遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。
【0042】
本明細書では「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、本発明で使用され得る遺伝子(アクチビン遺伝子)には、そのスプライス変異体もまた包含され得る。
【0043】
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、アクチビンなどの遺伝子というときは、通常、本発明の遺伝子の構造遺伝子ならびにそのプロモーターなどの転写および/または翻訳の調節配列の両方を包含する。本発明では、構造遺伝子のほか、転写および/または翻訳などの調節配列もまた、神経再生、神経疾患の診断、治療、予防、予後などに有用であることが理解される。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
【0044】
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
【0045】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9 (2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
【0046】
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのようなアミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
【0047】
用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
【0048】
本明細書において用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
【0049】
本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。本明細書におけるアクチビンとしては、天然型のアミノ酸を含むもののほか、このようなアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体を含むものが使用され得る。
【0050】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
【0052】
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。従って、本明細書においてマウスアクチビンにおける特定のアミノ酸配列は、アラインメントなどの解析によって、ヒトアクチビンにおける特定のアミノ酸に対して対応付けることができる。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。
【0053】
本明細書において、「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、アフリカツメガエルのアクチビンなどの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(ヒト、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、アフリカツメガエルのアクチビンなどの遺伝子)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
【0054】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能(例えば、分化調節作用、他の分子との特異的相互作用)が保持されているかどうかによって決定され得る。
【0055】
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含むサンプル中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。物質または因子について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。
【0056】
したがって、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
【0057】
本明細書において「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、アクチビンが幹細胞の分化に使用され得るが、アクチビンと同一の生物学的活性を有する因子であれば、本発明においてアクチビンと交換可能に用いられ得ることが理解される。このような因子は、本明細書における開示に基づいて、当該分野における技術常識を用いてスクリーニングすることによって同定することができ、これらは、周知・慣用技術の範囲内であることが理解される。
【0058】
本明細書中で使用される「化合物」は、任意の識別可能な化学物質または分子を意味し、これらには、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこのような化合物は、天然物または合成物であり得る。
【0059】
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0060】
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のアクチビンなど(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)に対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。代表的には、接触させたい因子(例えば、アクチビン)を含む溶液(例えば、培地)に接触対象(例えば、細胞)を入れることなどによって接触が達成され得る。
【0061】
本明細書において「複合分子」とは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。そのような複合分子としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書においてアクチビンとしては、このような複合分子の形態でも用いられ得る。
【0062】
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
【0063】
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
【0064】
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
【0065】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、2つの因子が相互作用する(例えば、アクチビンとその特異的因子とが結合する)場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。したがって、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。
【0066】
したがって、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が、挙げられる。このような活性は、アクチビンに対する特異的因子の結合の競合阻害のようなアッセイによって測定され得る。
【0067】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
【0068】
本明細書中で使用される用語「結合」は、2つのタンパク質もしくは化合物または関連するタンパク質もしくは化合物の間、あるいはそれらの組み合わせの間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。
【0069】
本明細書中で使用される用語「調節する(modulate)」または「改変する(modify)」は、特定の活性またはタンパク質の量、質または効果における増加または減少あるいは維持を意味する。
【0070】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件で入手されるポリヌクレオチドをいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(例えば、アクチビン)をコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0071】
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO4またはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
【0072】
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
【0073】
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
【0074】
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
【0075】
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
【0076】
アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1などの核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましいアクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1または3に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
【0077】
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用されるアクチビンなどには、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
【0078】
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
【0079】
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
【0080】
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington:National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。
【0081】
(遺伝子、タンパク質分子、核酸分子などの改変)
あるタンパク質分子(例えば、アクチビンなど)において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0082】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0083】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
【0084】
親水性指数もまた、本発明のアミノ酸配列を改変するのに有用である。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0085】
本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0087】
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
【0088】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、短縮化、脂質化(lipidation)、ホスホリル化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0089】
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
【0090】
本発明のポリペプチドがポリマーに結合している、化学修飾されたポリペプチド組成物は、本発明の範囲に包含される。このポリマーは、水溶性であり得、水溶性環境(例えば、生理学的環境)でこのタンパク質の沈澱を防止し得る。適切な水性ポリマーは、例えば、以下からなる群より選択され得る:ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物に基づくポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール。この選択されたポリマーは、通常は改変され、単一の反応性基(例えば、アシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒド)を有し、その結果、重合度は制御され得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、そして、このポリマーは分枝状でも分枝状でなくてもよく、そしてこのようなポリマーの混合物はまた、使用され得る。この化学修飾された本発明のポリマーは、治療用途に決定付けられる場合、薬学的に受容可能なポリマーが使用するために選択される。
【0091】
このポリマーがアシル化反応によって改変される場合、このポリマーは、単一の反応性エステル基を有するべきである。あるいは、このポリマーが還元アルキル化によって改変される場合、このポリマーは単一の反応性アルデヒド基を有するべきである。好ましい反応性アルデヒドは、ポリエチレングリコール、プロピオンアルデヒド(このプロピオンアルデヒドは、水溶性である)または、そのモノC1〜C10の、アルコキシ誘導体もしくはアリールオキシ誘導体である(例えば、米国特許第5,252,714号(これは、本明細書中で全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0092】
本発明のポリペプチドのペグ化(Pegylation)は、例えば、以下の参考文献に記載されるような、当該分野で公知の、任意のペグ化反応によって実施され得る:Focus on Growth Factors 3,4−10(1992);EP 0 154 316 ;およびEP 0 401 384(これらの各々は、本明細書中で、全体が参考として援用される)。好ましくは、このペグ化は、反応性ポリエチレングリコール分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施される。本発明のポリペプチド(例えば、アクチビン、Mel−18、M33、Mph−1/Rae28など)のペグ化のための好ましい水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書中で使用される場合、「ポリエチレングリコール」は、PEGの任意の形態の包含することを意味し、ここで、このPEGは、他のタンパク質(例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシポリエチレングリコールまたはモノ(C1〜C10)アリールオキシポリエチレングリコール)を誘導体するために使用される。
【0093】
本発明のポリペプチドの化学誘導体化を、生物学的に活性な物質を活性化したポリマー分子と反応させるのに使用される適切な条件下で、実施され得る。ペグ化した本発明のポリペプチドを調製するための方法は、一般に以下の工程を包含する:(a)アクチビンが1以上のPEG基に結合するような条件下で、ポリエチレングリコール(例えば、PEGの、反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)とこのポリペプチドを反応させる工程および(b)この反応生成物を得る工程。公知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、最適な反応条件またはアシル化反応を選択することは当業者に容易である。
【0094】
ペグ化された本発明のポリペプチドは、一般に、本明細書中に記載のポリペプチドを投与することによって、緩和または調節され得る状態を処置するために使用され得るが、しかし、本明細書中で開示された、化学誘導体化された本発明のポリペプチド分子は、それらの非誘導体分子と比較して、さらなる活性、増大された生物活性もしくは減少した生物活性、または他の特徴(例えば、増大された半減期または減少した半減期)を有し得る。本発明のポリペプチド、それらのフラグメント、改変体および誘導体は、単独で、併用して、または他の薬学的組成物を組み合わせて使用され得る。これらのサイトカイン、増殖因子、抗原、抗炎症剤および/または化学療法剤は、徴候を処置するのに適切である。
【0095】
同様に、「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
【0096】
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
【0097】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0098】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0099】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0100】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0101】
(遺伝子工学)
本発明において用いられるアクチビンなどならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
【0102】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。好ましいベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、ウイルス粒子またはウイルスおよび組み込み可能なDNAフラグメント(すなわち、相同組換えによって宿主ゲノム中に組み込み可能なフラグメント)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいウイルス粒子としては、アデノウイルス、バキュロウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ワクシニアウイルスおよびレトロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
ベクターの1つの型は、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状二重鎖DNAループをいう。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノム中に連結され得る。特定のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)は、これらが導入される宿主細胞中で自律的に複製し得る。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、これらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書中で、「発現ベクター」といわれる。
【0104】
従って、本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0105】
本発明において用いられ得る原核細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
【0106】
本発明において用いられ得る動物細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
【0107】
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
【0108】
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
【0109】
本明細書において「複製起点」とは、DNA複製が開始する染色体上の特定領域をいう。複製起点は、内因性起点を含むようにそのベクターを構築することによって提供され得るか、または宿主細胞の染色体複製機構により提供され得るかのいずれかであり得る。そのベクターが、宿主細胞染色体中に組み込まれる場合、後者が十分であり得る。あるいは、ウイルス複製起点を含むベクターを使用するよりも、当業者は、選択マーカーと本発明のDNAとを同時形質転換する方法によって、哺乳動物細胞を形質転換し得る。適切な選択マーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはチミジンキナーゼである(米国特許第4,399,216号を参照)。
【0110】
例えば、組織特異的調節エレメントを使用して核酸を発現することによって、組換え哺乳動物発現ベクターでは、特定の細胞型において核酸の発現を優先的に指向し得る。組織特異的調節エレメントは、当該分野で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、発生的に調節されたプロモーター(例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss(1990)Science 249,374−379)およびα−フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman(1989)Genes Dev.3,537−546))、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら(1987)Genes Dev.1,268−277)、リンパ特異的プロモーター(CalameおよびEaton(1988)Adv.Immunol.43,235−275)、特にT細胞レセプター(WinotoおよびBaltimore(1989)EMBO J.8,729−733)および免疫グロブリン(Banerjiら(1983)Cell 33,729−740;QueenおよびBaltimore(1983)Cell 33,741−748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経線維プロモーター;ByrneおよびRuddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら(1985)Science 230,912−916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開番号264,166)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0111】
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0112】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0113】
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
【0114】
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
【0115】
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
【0116】
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。
【0117】
本明細書において使用される場合、動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。
【0118】
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法などが例示される。
【0119】
(ポリペプチドの製造方法)
本発明のポリペプチド(例えば、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなど)をコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のポリペプチドを採取することにより、本発明に係るポリペプチドを製造することができる。
【0120】
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0121】
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
【0122】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
【0123】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
【0124】
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0125】
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。遺伝子を導入した細胞または器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培養することができる。
【0126】
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地(The Journal of the American Medical Association,199,519(1967))、EagleのMEM培地(Science,122,501(1952))、DMEM培地(Virology,8,396(1959))、199培地(Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950))またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
【0127】
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0128】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
【0129】
本発明のポリペプチド(例えば、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなど)が本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
【0130】
本発明のポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
【0131】
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明のポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0132】
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。このような融合タンパク質では、発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位は、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にするために、融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入される。このような酵素およびこれらの同族の認識配列は、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。代表的な融合発現ベクターとしては、それぞれ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する、pGEX(Pharmacia Biotech;SmithおよびJohnson(1988)Gene 67,31〜40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が挙げられる。
【0133】
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
【0134】
本発明のポリペプチドは、そのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
【0135】
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明のポリペプチドの生理活性は、公知の測定法に準じて測定することができる。
【0136】
本発明において有用な可溶性ポリペプチドの産生もまた、当該分野で公知の種々の方法によって達成され得る。例えば、ポリペプチドは、エキソペプチダーゼ、エドマン分解またはその両方と組み合わせて特定のエンドペプチダーゼを使用することによるタンパク質分解によって、インタクトな膜貫通アクチビンポリペプチド分子から誘導され得る。このインタクトなアクチビンポリペプチド分子は、従来の方法を使用して、その天然の供給源から精製され得る。あるいは、インタクトなアクチビンポリペプチドは、cDNA、発現ベクターおよび組換え遺伝子発現のための周知技術を利用する組換えDNA技術によって生成され得る。
【0137】
好ましくは、本発明において有用な可溶性ポリペプチドは、直接的に産生され、従って、出発材料としてのアクチビンポリペプチド全体の必要性を排除する。これは、従来の化学合成技術によって達成され得るか、または周知の組換えDNA技術(ここで、所望のペプチドをコードするDNA配列のみが形質転換された宿主で発現される)によって達成され得る。例えば、所望の可溶性アクチビンポリペプチドをコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチド合成機を使用する化学的手段によって合成され得る。このようなオリゴヌクレオチドは、所望の可溶性アクチビンポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計される。所望のペプチドをコードする特定のDNA配列はまた、特定の制限エンドヌクレアーゼフラグメントの単離によってか、またはcDNAからの特定の領域のPCR合成によって、全長DNA配列から誘導され得る。
【0138】
本発明のポリペプチド(例えば、アクチビンなど)のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加(融合を含む)は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
【0139】
(細胞培養)
当該分野において公知の広範な培地処方物の、幹細胞分化に関する細胞培養特性は、本明細書中において開示されるアクチビンまたはその等価物の添加量の調節によって劇的に変化することが見出された。
【0140】
多くの培地処方物が、幾年もの間開発され、所定の培養された細胞または細胞株についての細胞増殖、細胞生存能、および/または生物製剤産生を最大限にしてきた。これらの培地組成物は、例えば、培地に添加される成長因子、抗生物質、およびアミノ酸補充物の数、タイプ、および濃度が相互に異なり、そしてプロテアーゼインヒビターのような成分、および特に細胞が懸濁内で増殖される場合には、1つまたはそれ以上の消泡剤(anti−foarmingagent)を含む。他の個性化された成分は、組換えタンパク質産生を増強する添加物を包含する。例えば、宿主細胞が、組換えタンパク質の遺伝子増幅のために開発された場合、選択マーカーDHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)は、代表的には、選択マーカーとしてトランスフェクトされた宿主の一部を構成し、そしてメトトレキセートは培養培地に含まれる。インスリンまたは他の成長因子、例えば、IGFのようにエネルギー源カスケードの役割を果たす因子はまた、しばしば含有されて細胞増殖を増強する。
【0141】
本明細書中において開示されるアクチビンまたはその等価物は、種々の培地処方物に対して、ならびに標準的な処方物中において、効果を有することが期待される。
【0142】
例えば、すべての無血清培地処方物は、細胞増殖を可能にする必須成分を含み、(1)エネルギー源、代表的にはグルコースまたはグルタミン、あるいは他の糖、例えば、フククトース、ガラクトース、マンノースなど;(2)窒素源(典型的には1つまたはそれ以上のアミノ酸の包含により得られる);および(3)ビタミン(酵素反応における補因子)を含む。また、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl−、HPO32−などを含む広範な無機塩、ならびに脂肪酸(好ましくは結合物)、コレステロール、リン脂質、およびそれらの前駆体を含む広範な脂肪および脂溶性成分も必須である。標準的な無血清培地処方物の成分は表1に挙げられる。これには、GrandIslandBiologicalCo.(GIBCO),GrandIsland,N.Y.のような培地製造者から得られる「DMEM/F−12」に見出される成分が含まれる。動物細胞培養培地の検討については、MizrahiおよびLazar、Cytotechnology,1:199−214(1988)を参照のこと。昆虫細胞培養についての培地の考察は、Goodwin,R.H.(1990)Nature347:209−210に開示されている。ハイブリドーマの培養について個性化された、規定された無血清培地の例が、Kovar,J.(1987)FoliaBiologia33:377−384により記載されている。Imagawaら(1989)PNAS86:4122−4126は、マウス乳房上皮細胞における細胞増殖を最大にするように開発された培地について記載し、そしてMiyazakiら(1991)Res.Exp.Med.191:77−83は、ラット肝細胞の生存能をインビトロで増強するように培地について記載している。アフリカツメガエルについては、Sive,Granger,and Harland.Early Development of Xenopus laevis ColdSpring Harbor Laboratory Press (2000)に記載されている。
【0143】
本明細書において「栄養培地」とは、天然培地、半合成培地、合成培地、固形培地、半固形培地、液体培地などが挙げられるが、未分化細胞を、自己を含めた増殖、分化、成熟または保存させるために用いられるものであり、通常、細胞培養に用いられるようなものであれば如何なる培地であってもよい。例を挙げると、たとえばSteinberg培地、α−MEM培地、RPMI−1640培地またはMEM基本培地などが挙げることができる。基本成分としてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、抗生物質、脂肪酸、糖または目的に応じてその他の化学成分もしくは血清のような生体成分を含有することもできる。
【0144】
培地成分は代表的には任意の順序で添加され得、そして最終的な組合せは、標準的な方法、例えば、濾過滅菌により滅菌され得る。
【0145】
本発明の培地を利用して、広範な細胞(脊椎動物および無脊椎動物の両方)の幹細胞を所望の方向に分化させ得る。本発明の培地を用いて、多くの異なる細胞培養系における細胞培養特性を改善し得る。
【0146】
動物の場合は、通常動物細胞の培養で用いられるイスコフ培地、RPMI培地、ダルベッコMEM培地、MEM培地、F12培地等の血清を含まない培地を用いることができる。また、公知文献等により、細胞の増殖や維持に有効であることが知られている血清以外の因子、たとえば脂質および脂肪酸源、コレステロール、ピルビン酸塩、グルココルチコイド、DNAおよびRNA合成ヌクレオシド等を添加してもよい。
【0147】
本明細書において「培養容器」とは、所望の細胞、例えば、未分化細胞を増殖させるときに用いる容器のことであり、必要に応じてストローマ細胞などのフィーダー細胞が維持・生存でき、未分化細胞が維持・生存・分化・成熟・自己複製するのに何ら阻害するものでなければ如何なる素材、形状のものを用いてもよい。具体的には培養容器の素材としてはガラス、合成樹脂、天然樹脂、金属、プラスチックなどが挙げられ、形状としては具体的には三角柱、立方体、直方体などの多角柱、三角錐、四角錐などの多角錘、ひょうたんのような任意の形状、球形、半球形、円柱(底面が円形、楕円形または半円形等を含む)などを挙げることができ、また例えば半球形から球形のように培養中に必要に応じて形状を変化させてもよい。培養は開放条件下であってもよいし、閉鎖(密閉)条件下であってもよい。
【0148】
本発明における細胞培養法は、マトリクスコーティングが異なる培養皿、またはマトリクスコーティングの有無が異なる培養皿を用いた二次元培養法、マトリジェル等のソフトゲルやコラーゲンスポンジ等を用いた三次元培養法、またはそれらを併用する方法が挙げられるが、好ましくは、マトリクスコーティングが異なる培養皿、またはマトリクスコーティングの有無が異なる培養皿を用いた二次元培養法であり、例えば、ゼラチンコーティング培養皿、I型コラーゲンコーティング培養皿またはラミニンコーティング培養皿のうち2つを用いる二次元培養法である。また、多分化能を有する細胞として、ヒト由来の細胞を用いる場合は、I型コラーゲンコーティング培養皿を用いるのが好ましい。
【0149】
本発明の方法の培養条件は、実施例などの特定の条件に限定されるものではなく、一般的に許容される条件を取りうる。例えば、分化誘導開始時の細胞数としては、5.0x103〜5.0x106細胞/培養皿の範囲を例示できる。また、分化誘導期間としては、例えば、2〜10日間(好ましくは5日間)、あるいは1〜4日間(好ましくは2日間)、前培養工程では2〜5日間(好ましくは3日間)である。また、ヒト間葉系細胞の場合、分化誘導期間としては、12〜21日間(好ましくは14日間)である。
【0150】
培養するにあたり、温度、浸透圧、光などの物理的環境条件、酸素、炭酸ガス、pH、酸化還元電位などの化学的環境条件としては死滅処理前の未分化細胞および分化後の細胞が維持・生存でき、未分化細胞が維持・生存・分化・成熟・自己複製するのに何ら阻害するものでなければ如何なる環境条件であってもよい。好ましい条件を以下に示す。
【0151】
温度については具体的には、30℃〜40℃であり、好ましくは37℃である。浸透圧については具体的には生理条件における浸透圧であり、好ましくは生理食塩水と等しい浸透圧である。
【0152】
光は暗室ほどの暗い条件であってもよいし、晴天時の外の明るさほどに明るくてもよい。
酸素濃度としては具体的には培養系が気相中の酸素濃度が10%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度〜気相中の酸素濃度が30%の気相と接触している状態での酸素濃度であってもよく、好ましくは気相中の酸素濃度が20%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度の気相と接触している状態での酸素濃度である。
【0153】
培養系において一般的にpHをコントロ−ルするためのpHとして具体的にはpH6.0〜pH8.0であり、好ましくは生理条件と同等のpHである。pHをコントロ−ルする為には二酸化炭素を用いてもよいし、他のいかなる緩衝液を用いてもよい。炭酸ガスの濃度としては具体的には培養系が5%の気相と接触している状態での溶存炭酸ガス濃度である。
【0154】
本明細書において「コロニー」とは、固型培地で1個の細胞から出発してできた可視的な集塊をいう。
【0155】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、粒子など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、粒子など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。このような説明書は、どのような媒体であってもよく、例えば、そのような媒体としては、紙媒体、伝送媒体、記録媒体などが挙げられるがそれらに限定されない。伝送媒体としては、例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、LANなどが挙げられるがそれらに限定されない。記録媒体としては、CD−ROM、CD−R、フレキシブルディスク、DVD−ROM、MD、ミニディスク、MO、メモリースティックなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0156】
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
【0157】
1実施形態において、本発明は、本発明のタンパク質(アクチビン)、あるいはその生物学的に活性な部分に結合するか、またはこれらの活性を調節する、候補化合物もしくは試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチの任意のものを使用して得られ得、これには、以下が挙げられる:生物学的ライブラリー;空間的にアクセス可能な平行固相もしくは溶液相ライブラリー;逆重畳を要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーもしくは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0158】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該分野において、例えば以下に見出され得る:DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994)J.Med.Chem 37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem 37:1233。
【0159】
化合物のライブラリーは、溶液中で(例えば、Houghten(1992)BioTechniques 13:412〜421)、あるいはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82〜84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555〜556)、細菌(Ladner 米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner、上記)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865〜1869)またはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386〜390;Devlin(1990)Science 249:404〜406;Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6378〜6382;Felici(1991)J Mol Biol 222:301〜310;Ladner上記)において示され得る。
【0160】
(疾患)
1つの局面において、本発明は、幹細胞の増幅を適用し得る任意の疾患、障害または異常状態、例えば、造血関連疾患、障害または異常状態を処置するための方法を提供する。
【0161】
造血関連の疾患としては、循環器系の疾患が挙げられ、例えば、循環器系(血液細胞など)であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、貧血(例えば、再生不良性貧血(特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、癌性貧血、二次性貧血、不応性貧血など)、癌または腫瘍(例えば、白血病)およびその化学療法処置後の造血不全、血小板減少症、急性骨髄性白血病(特に、第1寛解期(High−risk群)、第2寛解期以降の寛解期)、急性リンパ性白血病(特に、第1寛解期、第2寛解期以降の寛解期)、慢性骨髄性白血病(特に、慢性期、移行期)、悪性リンパ腫(特に、第1寛解期(High−risk群)、第2寛解期以降の寛解期)、多発性骨髄腫(特に、発症後早期)、先天性免疫不全症候群などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0162】
本明細書において「予防(する)」は、生物が病気にかかる(contract)かまたは異常な状態を発生する可能性を減少させることをいう。
【0163】
本明細書において「処置(する)」は、治療効果を有すること、および生物における異常な状態を少なくとも部分的に軽減するかまたは抑止することをいう。
【0164】
本明細書において「治療効果」は、異常な状態を引き起こすかまたはこれに寄与する阻害因子または活性化因子をいう。治療効果は、異常な状態の症状の1つ以上をある程度緩和する。異常な状態の処置に関して、治療効果とは、以下の1つ以上をいい得る:(a)細胞の増殖(proliferation)、増殖(growth)、および/または分化における増加;(b)細胞死の阻害(すなわち、遅らせることまたは停止させること);(c)変性の阻害;(d)異常な状態に関連する症状の1つ以上をある程度緩和する;および(e)罹患した細胞集団の機能を強化すること。異常な状態に対する効力を示す化合物は、本明細書中に記載されるように同定され得る。
【0165】
本明細書において「異常な状態」は、生物におけるその正常な機能から逸脱する、生物の細胞または組織における機能をいう。異常な状態は、細胞増殖、細胞分化、細胞シグナル伝達、または細胞生存に関連し得る。異常な状態としてはまた、造血障害、肥満、網膜変性のような糖尿病合併症、ならびにグルコースの取り込みおよび代謝における不規則性、ならびに脂肪酸の取り込みおよび代謝における不規則性が挙げられ得る。
【0166】
異常な細胞増殖状態としては、例えば、がん、新生物、腫瘍および炎症などが挙げられる。
【0167】
異常な分化状態としては、例えば、奇形、がんなどが挙げられる。
【0168】
異常な細胞シグナル伝達状態としては、例えば、異常な細胞分化が挙げられる。
【0169】
異常な細胞生存状態はまた、アポトーシス(プログラム細胞死)経路が活性化されるかまたは抑止される状態に関連する。多数のタンパク質キナーゼが、アポトーシス経路に関連している。タンパク質キナーゼのいずれか1つの機能における異常は、細胞不死または未熟な細胞死を生じ得る。
【0170】
別の局面において、本発明は、造血関連疾患、障害または異常状態のある(罹患しているおそれのある)被験体または上記障害を有する被験体を処置する、予防的方法および治療的方法の両方を提供する。
【0171】
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明の正常な遺伝子の核酸配列、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
【0172】
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
【0173】
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
【0174】
したがって、本発明では、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子を用いた遺伝子治療が有用であり得る。
【0175】
本明細書中で使用され、かつ、当該分野で理解されるように、用語「合成(synthesis)」または「合成する(synthesize)」とは、酵素的方法とは対照的に、純粋に化学的に生成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)をいう。従って、「全体が」(globally)合成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)は、その全体が化学的手段によって生成され、そして「部分的に」合成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)は、その得られた化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)の一部分のみが化学的手段によって生成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)を包含する。
【0176】
本明細書において使用される用語「領域」によって、生体分子の一次構造の物理的に連続した部分を意味する。タンパク質の場合、領域は、そのタンパク質のアミノ酸配列の連続した部分によって定義される。用語「ドメイン」は、本明細書中で、生体分子の既知の機能または推測されている機能に寄与する、その生体分子の構造部分をいうものとして定義される。ドメインは、領域またはその部分と同じ広がりを有し得;ドメインはまた、その領域の全てまたは一部に加えて、特定の領域と区別される生体分子の一部を組み込み得る。本発明のアクチビンのドメインの例としては、シグナルペプチド、細胞外(すなわち、N末端)ドメイン、ロイシンリッチ反復ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
(再生/治療/予防のための投与および組成物)
本発明は、被験体への有効量の本発明の化合物または薬学的組成物の投与による、神経疾患、障害または異常状態、あるいは造血関連疾患、障害または異常状態の処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、化合物は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
【0178】
本明細書において「診断、予防、処置または予後上有効な量」とは、それぞれ、診断、予防、処置(または治療)または予後において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。
【0179】
本発明が対象とする動物は、神経系または類似の系を有するものであれば、どの生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
【0180】
本発明の核酸分子またはポリペプチドが医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
【0181】
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどのポリペプチドまたはポリヌクレオチド、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
【0182】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0183】
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
【0184】
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。
【0185】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどは、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、座剤等の固形製剤、またはシロップ剤、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として経口または非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、上述のように、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、溶解補助剤、安定化剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドなど以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、経鼻、直腸、膣および経皮等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0186】
固形製剤における賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
【0187】
固形製剤における滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸末、コロイド状ケイ酸、タルクおよびポリエチレングリコール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0188】
固形製剤における結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、白糖、D−マンニトール、結晶セルロース、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、およびシェラック等が挙げられる。
【0189】
固形製剤における崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末、ラミナラン末、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトースおよび繊維素グリコール酸カルシウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0190】
固形製剤における崩壊阻害剤の好適な例としては、水素添加油、白糖、ステアリン、カカオ脂および硬化油等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0191】
固形製剤における吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0192】
固形製剤における吸着剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイド状ケイ酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0193】
固形製剤における保湿剤としては、例えば、グリセリン、デンプン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0194】
固形製剤における溶解補助剤としては、例えば、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0195】
固形製剤における安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0196】
固形製剤として錠剤、丸剤等を調製する際には、必要により胃溶性または腸溶性物質(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)のフィルムで被覆していてもよい。錠剤には、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠が含まれる。カプセル剤にはハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。座剤の形態に成形する際には、上記に列挙した添加物以外に、例えば、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセライド等を添加することができるがそれらに限定されない。
【0197】
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
【0198】
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0199】
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0200】
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0201】
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0202】
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0203】
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0204】
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0205】
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
【0206】
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
【0207】
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
【0208】
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版、その補遺またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
【0209】
様々な送達系が公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなど)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。
【0210】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物を、処置の必要な領域(例えば、中枢神経、脳など)に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、抗体を含む本発明のタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するために注意が払われなければならない。
【0211】
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。
【0212】
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、高分子材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。
【0213】
さらに別の実施形態において、制御された徐放系は、治療標的、即ち、脳の近くに置かれ得、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,(前出),第2巻,115〜138頁(1984)を参照のこと)。
【0214】
他の制御された徐放系は、Langerによる総説において議論される(Science 249:1527−1533(1990))。
【0215】
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0216】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどの投与量は、被験体の年齢、体重、症状または投与方法などにより異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり、経口投与の場合、0.01mg〜10gであり、好ましくは、0.1mg〜1g、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。非経口投与の場合、0.01mg〜1gであり、好ましくは、0.01mg〜100mg、0.1mg〜100mg、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。
【0217】
本明細書中、「投与する」とは、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、因子などまたはそれを含む医薬組成物を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、生物の細胞または組織に取り込むことを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例えば、同じ個体へ別々の静脈ラインを通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。
【0218】
異常な状態はまた、生物へのシグナル伝達経路に異常を有する細胞の群に化合物(本発明によって同定される薬剤など)を投与することによって予防または処置され得る。次いで、化合物を投与することの生物機能に対する効果が、モニターされ得る。この生物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギまたはサル(monkeyまたはape)などの実験動物、および最も好ましくは、ヒトである。
【0219】
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0220】
本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査室の結果またはアクチビンなどに関連する疾患(例えば、血液系疾患)に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、アクチビンなどに関連する疾患(例えば、血液系疾患)の再発により再開することができる。
【0221】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える医薬品パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
【0222】
血漿、腫瘍および主要器官中での薬物および代謝産物の血漿半減期および体内分布はまた、障害を阻害するのに最も適切な薬物の選択を容易にするように決定され得る。このような測定が行われ得る。例えば、HPLC分析は、薬物で処置された動物の血漿において行われ得、放射線標識された化合物の位置が、X線、CATスキャンおよびMRIのような検出方法を用いて決定され得る。スクリーニングアッセイにおいて強力な阻害活性を示すが、薬物動態学的特徴が不十分な化合物は、化学構造の変更や再試験によって最適化され得る。この点について、良好な薬物動態学的特徴を示す化合物が、モデルとして使用され得る。
【0223】
毒性研究はまた、本発明の組成物を試験することによって行われ得る。例えば、毒性研究は、以下のような適切な動物モデルにおいて行われ得る:(1)化合物がマウスに投与される(未処置のコントロールマウスもまた、使用されるべきである);(2)各々の処置群中の1匹のマウスから尾静脈を介して血液サンプルを周期的に得る;そして(3)上記サンプルを、赤血球および白血球の数、組成物ならびにリンパ球と多形核細胞との割合について分析する。各々の投薬レジメンについての結果とコントロールとの比較は、毒性が存在するか否かを示す。
【0224】
各々の毒性研究の終了の際に、動物を屠殺することによって、さらなる研究を行い得る(好ましくは、American Veterinary Medical Association guidelines Report of the American Veterinary Medical Assoc.Panel on Euthanasia,(1993)J.Am.Vet.Med.Assoc.202:229−249に従う)。次いで、各処置群からの代表的な動物が、転移、異常な病気または毒性の直接的な証拠のために全体的な検屍によって試験され得る。組織における全体の異常が記載され、組織が組織学的に試験される。体重の減少または血液成分の減少を引き起こす化合物は、主要な器官に対する有害作用を有する化合物と同様に好ましくない。一般的に、有害作用が大きいほど、その化合物は好ましくない。
【0225】
(造血系細胞の分化)
造血細胞は骨髄の中でつくられ、分化して、赤血球、血小板、白血球などになり末梢血液の中を流れる。骨髄系細胞の分化を見ると、一番大元には多能性幹細胞があり、次に造血系細胞に特化した造血幹細胞があり、多能性前駆細胞へと分化し、さらに骨髄球系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞へと分化する
骨髄系では多能性幹細胞からCFU−GEMMという細胞へ分化する。そのCFU−GEMという細胞からCFU−GMという細胞へ、次いで骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球という形で分化する。これらは骨髄中に存在する細胞であり、これが分化すると好中球となって末梢血中を流れる。次のラインへいくと、CFU−GMという細胞から単球の方へ行き、単芽球、前単球、単球と分化する。この単球が末梢血へあらわれる。3番目のラインでは、CFU−GEMMという細胞からBFU−E細胞へと分化し、それから前赤芽球、赤芽球、赤血球へと分化する。また、巨核球系というものもあり、CFU−Meg(メガカリオサイトの略)、巨核芽球、巨核球、血小板へと分化する。
【0226】
このような分化の過程で白血病は、多能性幹細胞の異常に起因する。したがって、本発明は、このような異常を改善するという意味で白血病の治療にも応用され得る。
【0227】
リンパ球系では、CMLでは、多能性幹細胞からリンパ系の幹細胞へと分化し、B細胞系とT細胞系とに分かれる。それと別個にNK細胞の方へ分かれていくというラインが存在する。B細胞系のラインといたしましては前駆B細胞、前駆前駆B細胞(pre−pre−B−cell)、初期B細胞(early−B−cell)などへと分化し、中間B細胞(intermediate− B−cell) 、成熟B細胞(matureB−cell )、形質球様細胞(plasmacytoid− B−cell) 、形質細胞(plasma−cell)へと分化する。T細胞系としては、胸腺前駆細胞、未成熟胸腺細胞、共通胸腺細胞(common thymocyte)、成熟胸腺細胞へと分化する。別のルートとしてヘルパー/インデューサーT細胞へいく系統と、成熟胸腺細胞から抑制/細胞傷害性T細胞へと分化する系統が存在する。
【0228】
(造血幹細胞の同定法)
以下に代表的な造血幹細胞の同定法を説明する。
【0229】
(a.脾コロニー形成法)
致死量放射線照射したマウスに同系マウスの造血細胞を静注すると、8〜14日目に脾臓表面に隆起(コロニー)が認められる。各々のコロニーが種々の血液細胞から成っているが、1個のコロニーは1個の幹細胞に由来しており、この脾コロニーを形成する母細胞はCFU−S(colony forming unit in spleen)と呼ばれる。8日目に形成される脾コロニー(Day 8 CFU−S)を形成する細胞は赤芽球が主体であるのに対し、12日目形成される脾コロニー(Day 12 CFU−S)は、赤芽球のほかに顆粒球や巨核球、更にはBリンパ球まで含み増殖能も高く、多能性幹細胞に由来している。Day 12 CFU−Sは多能性幹細胞の指標として用いられている。また、抗癌剤である5−fluoro−uracil(5−FU)投与後に残存する造血幹細胞は非常に高い増殖能を示すことより、CFU−Sの母細胞にあたるpre−CFU−Sと呼ばれる。
【0230】
(b.長期骨髄再構築能)
移植した細胞により致死量放射線照射されたマウスの造血系を再構築し、長期間維持する事ができるか否かを観察する方法である。現在、造血幹細胞の多分化能と自己複製能をみる上で最も信頼性が高い。マーカーとしては、ネオマイシン耐性遺伝子の発現や、雄雌の性染色体、コンジェニックマウス等が用いられている。この方法では定量化が困難であったが、最近ではドナーの造血細胞とともにレシピエントの造血細胞を移植し、その再構築の割合を調べる競合再集団アッセイが用いられるようになった。また、ヒトにおいてはマウスのようにin vivoの移植実験系を組むことは困難であるので、リンパ球が欠如するために拒絶反応を起こさない免疫不全マウス(scid mouse)にヒトの造血幹細胞を移植する Scid−huマウスが用いられる。この系では、マウスの中で長期間ヒトの造血機構を維持することができる。
【0231】
(c.インビトロコロニー法)
造血細胞(骨髄細胞・脾細胞等)を各種サイトカイン存在下にメチルセルロース、軟寒天等の半固形培地中で培養し、形成された細胞集団(コロニー)から造血幹細胞の数や性質を推定する方法である。このコロニーを分析することにより、in vitroにおいて種々の造血前駆細胞や造血幹細胞の分化・増殖過程の観察や測定が可能になっている。混合コロニー(CFU−Mix,CFU−GEMM)や分化能の高いコロニー(HPP−CFC;high proliferative potential colony forming cells)は、単系統のコロニーを形成する細胞(CFU−GM,BFU−E)等より未分化であり、芽球コロニー形成細胞(CFU−blast)は最も未分化であるとされている。この方法によりin vitroにおいて造血幹細胞や前駆細胞の増殖・分化過程をとらえることができる。さらに、近年では無血清培地を用いたり造血幹細胞の単細胞培養を行うことにより、造血に関与する種々のサイトカインの作用を推定することができる。
【0232】
(d.ストロマ細胞との共培養系)
造血幹細胞の分化・増殖には造血微小環境が密接に関与している。1977年Dexterらは、骨髄間質(ストロマ)細胞上で造血幹細胞が数ヵ月以上の長期間にわたって培養可能であることを示した(Dexter培養法)が、その後造血を維持するストロマ細胞株が次々に樹立され、in vitro において造血微小環境の再現が可能になった。この培養系では、造血前駆細胞は早期にコロニー形成能を失うのに対して、未分化な造血幹細胞は長期間コロニー形成能や骨髄再構築能を維持できる。このため、未分化な造血幹細胞活性の測定にも用いられる。特にヒトにおいてはin vivoの系が用いにくいため、ストロマ細胞上で長期間コロニー形成能を維持できる細胞をLTC−IC(Long term culture−initiating cells)として未分化な造血幹細胞の指標として用いられている。
【0233】
(発明を実施するための最良の形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0234】
1つの局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するための方法を提供する。この方法は、A)未分化細胞を提供する工程と、B)該未分化細胞を解離させる工程と、C)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、を包含する。この方法の代表例を図1に示す。アクチビンの濃度を調節することによって本発明は、種々の分化を誘導することに成功した。このようなことは従来知られておらず、本発明は、従来技術に対して顕著な効果を示す。例えば、単独培養でのアニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件であれば、アクチビンを添加しないときは、不整形表皮が形成され、1ng/ml程度であれば、血球が形成され、10ng/ml程度であれば、筋肉および脊索が形成され、100ng/ml程度であれば、内胚葉性細胞が形成される。図2には、単独培養でのアニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件での培養例を示す。本発明において特に意図される血島については、血島に分化する条件として、解離した10枚のアニマルキャップをアクチビン(Human recombinant Activin A)1 ng/mlで3時間処理して再集合させ、サンドイッチ培養すると血島に分化するという条件が確定された。
【0235】
ここで、1つの実施形態において、上記未分化細胞は後期胞胚に由来する細胞をもちいることができる。このような後期胞胚は、比較的数が多く取れることおよび未分化能を十分有していることから好ましいが、それに限定されない。
【0236】
1つの実施形態において、本発明は、さらにD)C)工程により得られた細胞を未分化細胞と接触させる工程を包含する。このような場合、さらに分化効率が良くなることが予想外に観察された。図3には、接触(ここでは、サンドイッチ)の場合のアニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件での培養例を示す。
【0237】
別の好ましい実施形態を図4に示す。ここでは、時間条件を5時間にしている。5時間での例は、図5に単独培養および図6にサンドイッチ培養の例を示す。
【0238】
他の好ましい実施形態を示す。ここでは、時間条件を10時間にしている。10時間での例は、図11〜16に示す。
【0239】
別の実施形態において、本発明におけるアクチビンと細胞との接触は、未分化細胞のシートで前記C)工程で得られた細胞を挟み込むことによって達成される。理論に束縛されることを望まないが、サンドイッチ状態での培養が分化を達成するのに適切な形態であったことが一つの理由であると考えられるがそれに限定されない。
【0240】
1つの実施形態において、本発明において使用される未分化細胞は、後期胞胚の動物極の細胞を含む。理論に束縛されることを望まないが、動物極を有すること(いわゆる「アニマルキャップ」)を有することによって、アクチビンへの反応性が良くなるものと考えられるがそれに限定されない。
【0241】
別の実施形態において、本発明では、アクチビンと未分化細胞との接触は、最初の接触から最終分化まで未分化細胞と接触させるに十分である時間行われる。このような時間は、通常少なくとも1日間であり、より好ましくは、1日間以上3日間以内である。
【0242】
本発明において使用されるアクチビンは、アクチビンとしての作用を有する限り、どのような形態・サブタイプであってもよく、例えば、アクチビン−A、アクチビン−B、インヒビンおよびアクチビン−Cなどを挙げることができるがそれらに限定されない。アクチビンは、動物において非常に保存されており、両生類のアクチビンが哺乳類生物に対しても効果を有することから、本明細書においては、任意のアクチビンが任意の生物において使用され得ることが理解される。
【0243】
1つの実施形態において、本発明において使用されるアクチビンは、配列番号2、4、6、8、10または12のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む。
【0244】
1つの実施形態において、本発明において使用されるアクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で付与される。この濃度で与えられたアクチビンは、血島を誘導する。5ng〜10ngであれば、筋肉細胞または脊索細胞が誘導される。50ng〜100ngでは、心臓細胞が誘導される。研究ではアクチビンA、アクチビンAB、アクチビンBは同じ誘導能を持つことが報告されている(Nakamura et al.,Isolation and characterization of native activin B.J Biol.Chem.1992,267,16385−9)。アクチビン−AはインヒビンβAの二量体である(ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192;配列番号1および2)。アクチビン−ABはインヒビンβAとインヒビンβBの二量体である(ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193;配列番号3および4)。アクチビン−BはインヒビンβBの二量体である。アクチビン−CはインヒビンβCの二量体である(ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538;配列番号5および6)。インヒビンはインヒビンαの二量体である(ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191;配列番号7および8)。
【0245】
別の実施形態において、本発明において使用される造血幹細胞は、幹細胞白血病タンパク質(SCL)マーカーを発現することを特徴とする。
【0246】
1つの実施形態において、本発明において実施される解離は、Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される。
【0247】
別の実施形態において、本発明において実施される解離は、少なくとも10分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される。
【0248】
別の実施形態において、本発明において実施される解離は、10分間から20分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される。
【0249】
これらの解離は、本発明において分化を誘導するのに望ましい。このような処理が好ましいことは、従来技術では明らかではなかった。
【0250】
好ましい実施形態において、本発明の方法では、解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程(C工程)において前記細胞の解離再集合体が形成される。解離再集合体の形成は、通常、少なくとも30分前記培地中で培養することによって達成され、より長く培養してもよい。
【0251】
別の実施形態において、本発明におけるアクチビンの処理は、少なくとも3時間行われるが、これに限定されず、効果が見られる場合は、これより短くてもよく、効果が不十分な場合は3時間以上行っても良い。
【0252】
好ましい実施形態では、使用される未分化細胞はアニマルキャップにより提供される。アニマルキャップを使用するという発想は、従来の造血幹細胞調製では存在しなかった。本発明は、このような新規概念を利用して、効率よく造血幹細胞を調製する方法を提供する。本発明において、アニマルキャップは、好ましくは、5〜10枚使用されるがそれに限定されない。
【0253】
1つの実施形態では、本発明は、解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程において、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞とともに培養する工程をさらに包含する。
【0254】
さらに好ましくは、本発明の方法では、解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程において、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞でサンドイッチ培養する工程をさらに包含する。
【0255】
1つの実施形態では、使用される細胞は、脊椎動物細胞であり、好ましくは、両生綱動物細胞(例えば、アフリカツメガエルのようなカエル)が標的とされるが、それに限定されない。
【0256】
別の局面において、本発明は、本発明の造血幹細胞を調製するための方法によって調製された細胞を提供する。このような細胞は、造血幹細胞として非常に有用である。
【0257】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の造血幹細胞を調製するための方法によって調製された血島を提供する。このような血島は、従来技術では誘導することができなかったことから、人工物としては、新規のものである。
【0258】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用される培地を提供する。この培地は、Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする。このような培地が、造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用されることは従来知られていなかったので、本発明は、Ca2+もMg2+も含まない培地の新規用途を提供する。ここで使用される培地の基本成分は、使用される細胞が生存する限り、どのようなものでも良いことが理解される。
【0259】
特定の実施形態では、本発明の培地(Ca2+もMg2+も含まない培地)は、58mM NaCl,0.67mM KCl、3.0mM ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸および100mg/L 硫酸カナマイシン、pH7.4の組成を含む。
【0260】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を造血幹細胞に分化させる工程において使用される培地を提供する。この培地は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量(例えば、0.5〜1ng/mlの濃度、好ましくは約1ng/ml)含むことを特徴とする。0.5〜1ng/mlの濃度のような特定の量により、造血幹細胞を誘導することができることは従来示唆すらされておらず、本発明は、顕著な効果を提供する。
【0261】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を誘導するための方法において使用する培地の組み合わせを提供する。このような組み合わせの培地(セットまたはキット)は、Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地と、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地とを含む。このような培地の組み合わせが使用されることが知られていなかった。
【0262】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するためのキットを提供する。このようなキットは、a)該未分化細胞を解離させる解離手段と、b)該未分化細胞を造血幹細胞に分化させる分化手段と、c)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間分化手段により該未分化細胞を分化させることを指示する指示書と、を備える。ここで、好ましくは、分化手段は、アクチビンを含む培地であることを特徴とする。分化手段は、本明細書において上述した説明により当業者が適宜設計することができる。
【0263】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するための、アクチビンの使用を提供する。ここで使用されるアクチビンは、本明細書において上記した任意の実施形態を使用することができる。
【0264】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するための組成物であって、該組成物は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含有する、組成物を提供する。ここで使用される構成要件は、本明細書において上記した任意の実施形態を使用することができる。好ましくは、アクチビンは、0.5〜1ng/ml(好ましくは、約1ng/ml)の濃度で存在する。
【0265】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0266】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。動物の取り扱いは、東京大学動物実験施設において規定される基準を遵守し、動物愛護精神に則って行った。
【0267】
(実施例1)
現在までに報告されているアニマルキャップを用いた器官形成の多くは、シート状のアニマルキャップにアクチビン処理を行い、単独培養もしくはサンドイッチ培養を行っていた。この方法ではアクチビンシグナルを受け取る細胞と受け取らない細胞が混在し不均一であった。
【0268】
本実施例では解離してアクチビン処理を行うことにより、一つ一つの細胞が均一にアクチビンシグナルを受け取る状態にし、単独培養およびサンドイッチ培養を行った(図7)。
【0269】
(未分化細胞の取り出し)
アフリカツメガエルの未分化細胞を、次に述べるような方法で取り出した。後期胞胚に達したアフリカツメガエル胚の動物極にある未分化で多分化能を持つシート状の細胞を、培養液(Steinberg’s Solution (SS);58mM NaCl,0.67mM KCl,0.34mM Ca (NO3)2,0.83 mM MgSO4,3.0 mM hydroxyethylpiperazinyl ethanesulfonic acid,and 100 mg/L kanamycin sulfate,pH 7.4)を満たした3%アガロースを敷いたシャーレに移し、実体顕微鏡下で0.5ミリ角に取り出した。
【0270】
(細胞の解離)
はじめに、アクチビン処理を行うための前処理として、アフリカツメガエル後期胞胚から取り出したシート状の未分化な細胞を次に述べるような方法で解離した。カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含まないSS(無Ca2+、Mg2+スタインバーグ溶液(Ca2+,Mg2+ Free Steinberg’s Solution);58mM NaCl,0.67mM KCl,3.0mMヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸,および100mg/L硫酸カナマイシン,pH7.4)を100μL満たした培養用の容器(例えば96穴の培養用ディッシュ)へ、取り出した。およそ10枚のシート状の未分化な細胞(ステージ8.5のアニマルキャップを0.5ミリ角に切り出した場合、450個)を移し、20分間静置させた。この処理により、シート状の未分化な細胞の細胞間相互作用が緩くなり、シート状ではなく、ひとつひとつの細胞が解離した。アフリカツメガエルは受精すると卵割する。この卵割は第12分裂までほぼ同調して起こるとされている。卵割初期の受精卵(胚)を桑実胚と呼ぶ。卵割が進み、細胞の大きさが小さくなり、胚の内部に胞胚腔と呼ばれる腔が見られるようになる時期の胚を胞胚と呼ぶ。胞胚は初期胞胚(ステージ7)、中期胞胚(ステージ8)、後期胞胚(ステージ9)に大別される。アフリカツメガエルでは、中期胞胚でmRNAの転写が開始するとされている。後期胞胚以降では、細胞分裂の同調性が失われる。後期胞胚に続いて、原腸陥入運動を伴う形態形成運動が開始する。原腸陥入運動に伴って、外胚葉、中胚葉、内胚葉が形成される。この発生段階にいる胚を、原腸胚と呼ぶ。ステージ8.5とは、中期胞胚と後期胞胚の中間に相当する(概念的な定義)。アフリカツメガエルの卵には栄養(卵黄)が詰まっている。これは重たいので、通常重力方向に偏って存在している。この卵黄が多い側は植物極、反対側を動物極と呼ばれている。ツメガエルの卵の動物極側の表層は黒い色素があり、通常この黒い色素の面(動物極側)を上に向けている。色の付いていない卵黄が多い植物極側は、常に重力方向に従って下を向いている。胞胚腔は、動物極側に形成され、胞胚腔の上端から上を動物極、胞胚腔の下端から下を植物極、その中間を帯域と呼んでいる。この胞胚腔の上の動物極側の細胞をアニマルキャップと呼ぶ。アニマルキャップの細胞は、未分化で多分化能を持つことが知られている。これまでに、中胚葉誘導因子の探索における反応系として、また試験管内での組織形成の出発材料として、また過剰発現系による遺伝子の機能解析などに利用されている。初期胞胚、中期胞胚、後期胞胚のアニマルキャップは、経験的にアクチビンに対する感受性が異なることが知られている。初期胞胚では余り感受性は無い。中期胞胚で最もアクチビンに対する感受性は高いとされている。後期胞胚は、中期胞胚と比べてアクチビンに対する感受性は低いとされる。原腸胚では、さらに感受性は落ちるとされる(Abe et al., 2004)。
【0271】
(血島(造血幹細胞)の誘導)
細胞を解離したあと、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含まないSSを除き、1ng/mLのアクチビン(0.1% BSAを含むSSで調製したもの)を添加し、ピペット(例えばパスツールピペットなど)で撹拌し、3時間静置した。この処理により、細胞は再集合しながらアクチビン処理を受けた。こうしてアクチビン処理を受けた解離再集合体を0.1% BSAを含むSSを満たした培養用の容器(例えば12穴の培養用ディッシュ)へ移した。次いで、解離再集合体をSSで満たした3%アガロースを敷いたシャーレに移し、5等分した。この5等分した解離再集合体を、それぞれ2枚のシート状の未分化な細胞(アフリカツメガエル後期胞胚の動物極の細胞を0.7ミリ角で取り出したもの)で挟み、完全に接着するまで10分静置した。この外植体を0.1% BSAを含むSSで満たした培養用の容器(例えば96穴の培養用ディッシュ)に移し、3日間培養を継続すると、不整形表皮に囲まれた血島(造血幹細胞)が高率に誘導された(図8a)。また、血島(造血幹細胞)は透明に膨らんだ外植体の内部に形成されるので、血島(造血幹細胞)を特定して観測することが容易であった(図8b)。なお、この培養過程において、解離再集合体をシート状の未分化な細胞で挟まずに培養した場合や、アクチビン処理濃度や処理時間を変えた場合は、血島(造血幹細胞)は誘導されなかった。
【0272】
(血島(造血幹細胞)の同定)
上述のごとく、誘導された血島(造血幹細胞)は、血島特有の組織構造を持ち(図8a)、また、RT−PCR法にて血島(造血幹細胞)に特有なタンパク質(マーカータンパク質)であるSCL(stem cell leukemia protein)が発現していることが確認された(図9)。
【0273】
(実施例2:解離再集合方法(1):アクチビン処理(3時間))
後期胞胚(st.8.5)のアニマルキャップを0.5ミリ角に切り出し、10枚集めた。これをCa2+,Mg2+を含まないスタインバーグ氏液で20分処理した後、このスタインバーグ氏液を除き、Ca2+,Mg2+を含むアクチビン溶液を加え、ピペッティングをして細胞を解離させた。
アクチビンを3時間処理している間に細胞を再集合させた。この解離再集合体を0.1%BSAを含むスタインバーグ氏液で洗った後、単独で培養または後期胞胚から切り出した2枚のアニマルキャップでサンドイッチ培養した。外植体の外形と分化した組織を観察し、遺伝子の発現を調べた(図10)。
【0274】
(結果)
無処理の解離再集合体を単独で培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。アクチビン処理1ng/ml処理では透明に膨らみ、アクチビン10ng/ml処理では外植体は伸張した。アクチビン100 ng/ml処理では、白い塊様になった(図11)。
【0275】
解離再集合体の単独培養の組織切片を図12に示す。
【0276】
各種マーカーの発現を観察したところ、アクチビン1n/gmlで血球、10 ng/mlで筋肉、100 ng/mlで内胚葉性細胞が見られた(図13)。
【0277】
解離再集合体のサンドイッチ培養の外形を観察した(図14)。
【0278】
無処理の解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。
アクチビン処理1ng/ml処理でも外植体は不整形表皮様の外形になった。アクチビン10ng/ml処理では鰭様の構造がみられた。アクチビン100 ng/ml処理では、セメント腺を伴う透明に膨らんだ外形になった。
【0279】
解離再集合体のサンドイッチ培養の組織切片を観察した(図15)。
【0280】
アクチビン1 ng/mlで血島が分化しているのが見られた(図16)。
【0281】
(実施例3:解離再集合方法(2):アクチビン処理(5時間))
後期胞胚(st.8.5)のアニマルキャップを0.5ミリ角に切り出し、10枚を集めた。これをCa2+,Mg2+を含まないスタインバーグ氏液で20分処理した後、このスタインバーグ氏液を除き、Ca2+,Mg2+を含むアクチビン溶液を加え、ピペッティングをして細胞を解離した。
【0282】
アクチビンを5時間処理している間に細胞を再集合させた。この解離再集合体を0.1%BSAを含むスタインバーグ氏液で洗った後、単独で培養または後期胞胚から切り出した2枚のアニマルキャップでサンドイッチ培養した。外植体の外形と分化した組織を観察し、遺伝子の発現を調べた(図17)。
【0283】
(結果)
無処理の解離再集合体を単独で培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。アクチビン処理1ng/ml処理では透明に膨らみ、アクチビン10ng/ml処理では外植体は伸張した。アクチビン100 ng/ml処理では、白い塊様になった(図18)。
【0284】
アクチビン100ng/mlで内胚葉性細胞が見られた(図19、図20)。
【0285】
無処理の解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。
アクチビン処理1ng/ml処理では透明に膨らみ、アクチビン10ng/ml処理では鰭様の構造がみられた。アクチビン100ng/ml処理では、拍動するものとセメント腺を伴うものの両方が見られた(図21)。
【0286】
アクチビン10ng/mlで胴尾部構造が見られた。100ng/mlでは、セメント腺や神経の塊を含む前方構造と心臓に分化したものが、それぞれ50%見られた(図22、図23)。
【0287】
(考察)
解離したアニマルキャップへアクチビンを処理して再集合体を形成して単独培養したところ、処理時間の長さによらず、中濃度のアクチビン処理で筋肉、高濃度のアクチビン処理で内胚葉性細胞が分化した。
【0288】
3時間アクチビン処理した解離再集合体を無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したところ、低濃度のアクチビン処理(1ng/ml)で血島が分化した。
【0289】
5時間アクチビン処理した解離再集合体を無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したところ、高濃度のアクチビン処理で前方神経と心臓が分化した。
【0290】
(実施例4:解離再集合方法(3):アクチビン処理(シート5枚、3時間))
実施例2において、シート10枚使用する代わりにシート5枚で、アクチビン暴露3時間の処理を行う実験を本実施例で行った。他の手順は実施例2と同様であった。
【0291】
その結果、図2および3に示すように、10枚使用したときと同様の結果を得ることができた。
【0292】
従って、使用する細胞シートの数は、ある程度の密度幅があることが分かる。
【0293】
(実施例5:解離再集合方法(4):アクチビン処理(シート5枚、5時間))
実施例3において、シート10枚使用する代わりにシート5枚で、アクチビン暴露5時間の処理を行う実験を本実施例で行った。他の手順は実施例3と同様であった。
【0294】
その結果、図5および6に示すように、10枚使用したときと同様の結果を得ることができた。
【0295】
従って、使用する細胞シートの数は、ある程度の密度幅があることが分かる。
【0296】
(実施例6:他の溶液での実施)
実施例1および2に示した手順において使用したスタインバーグ氏液の代わりに他の溶液を用いて、同様の効果が得られるかを確かめる。
【0297】
他の溶液としてMMR(pH7.5、0.1M NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、2mM CaCl2、および5mM HEPES)を使用する。
【0298】
実験すると、スタインバーグ氏液と同様の分化効果を観察することができる。
【0299】
(実施例7:他のアクチビンでの実証)
実施例1において用いたアクチビン−Aの代わりに、アクチビン−B、アクチビン−Cおよびインヒビンでも同様の効果を得ることができるかを確認する。薬剤として、以下を用いる。これらは、遺伝子情報から組み換えタンパク質を産生して実施することができるか、または、アクチビンA(Human Activin A, R&D, カタログ番号#338-AC-005)、アクチビンAB(Human ActivinAB, R&D, カタログ番号#1066-AB-005)、アクチビンB(Human Activin B, R&D, カタログ番号#659-AB-005)を購入して使用することができる。
【0300】
アクチビン−A:インヒビンβAの二量体(ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192;配列番号1および2(核酸およびアミノ酸))
アクチビン−AB:インヒビンβAとインヒビンβBの二量体(ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193;配列番号3および4(核酸およびアミノ酸))
アクチビン−B:インヒビンβBの二量体。
【0301】
アクチビン−C:インヒビンβCの二量体(ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538;配列番号5および6(核酸およびアミノ酸))
インヒビン:インヒビンαの二量体(ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191;配列番号7および8(核酸およびアミノ酸))
アフリカツメガエルアクチビンA(X68250;配列番号9および10)
アフリカツメガエルインヒビンβB:(S61773;配列番号11および12)。
【0302】
以上の実験では、以下の文献を参酌することができる。
Nakamura etal., Isolation and characterization of native activin B. J Biol. Chem. 1992,267, 16385-9
Uchiyama and Asashima, Specific erythroid differentiation of mouse erythroleukemia cells by activins and its enhancement by retinoic acids. Biochem Biophys. Res. Commun.1992, 187, 347-52
Fukui et al.,Isolation and characterization of Xenopus follistatin and activins. Dev. Biol.1993, 159, 131-9
Fukui et al.,Identification of activins A, AB, and B and follistatin proteins in Xenopusembryos. Dev. Biol. 1994, 163, 279-81
Nakano et al.,Comparison of mesoderm-inducing activity with monomeric and dimeric inhibin alpha and beta-A subunits on Xenopus ectoderm. Horm. Res. 1995, 44, Suppl. 2,15-22。
【0303】
(実施例8:アニマルキャップを取り出すタイミングについての最適例の検証)
次に、アニマルキャップを取り出すタイミングについて最適例を検証する。実施例1において、取り出すアニマルキャップについて以下を検証する。
ステージ7
ステージ8
ステージ8.5
ステージ9
ステージ10
アニマルキャップを取り出すタイミングに関しては、上記に示した各発生段階でアニマルキャップを取り出して細胞を解離し、アクチビン1 ng/mlで処理して細胞を再集合させてサンドイッチ培養を行うことで検証した。血島が最も高率に形成された発生段階ステージ8.5を採用することにした。
【0304】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0305】
本手法により、これまで実現されていなかった未分化な細胞からの血島(造血幹細胞)形成を誘導することがはじめて実現された。これらの血島(造血幹細胞)は、これらの造血幹細胞形成に関与するタンパク質などが特異的に欠如、あるいは異常発現しているヒトなどの疾病の診断や、白血病などの造血幹細胞の欠陥や欠損などに起因するヒトなどの異常や疾病を治療する目的などに有用な材料を提供する可能性がある。また、そのような異常や疾病に関する研究のためのよい材料を提供することや、それらの異常や疾病を治療するための薬剤の開発における有用なアッセイ系の材料を提供することも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0306】
【図1】図1に本発明の代表的な方法のスキームを示す。図1では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図が示されている。アフリカツメガエル後期胞胚からアニマルキャップを切り出し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを除いたスタインバーグ氏液中で細胞を解離し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含むスタインバーグ氏液で調製したアクチビンで3時間および5時間処理した。このアクチビン処理した解離再集合体を単独で培養した場合と、無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したときの組織分化を調べた。その結果、アクチビン処理を3時間行ってから単独培養した解離再集合体はアクチビン濃度0ng/mlでは不整形表皮に、1ng/mlでは血球や間充織に、10 ng/mlでは筋肉に、100 ng/mlでは内胚葉性細胞にそれぞれ分化していた。一方、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養したとき、アクチビン処理濃度 0 ng/mlでは不整形表皮に、1 ng/mlでは血島に、10 ng/mlでは前腎管に、100 ng/mlではセメント腺に分化しているのが観察された。この実験により、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体はアクチビンの濃度および処理時間依存的分化を示すこと、またアクチビン 1 ng/ml処理を3時間行った解離再集合体をサンドイッチ培養することにより高率に血島が誘導されることが分かった。
【図2】図2には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件での単独培養での培養例を示す。この図では、組織切片写真を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉脊索が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【図3】図3には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件でのサンドイッチ培養での培養例で見られた写真を示す。Aには、サンドイッチ培養の外形を示し、Bには、組織切片写真を示す。AおよびBとも、左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、前腎管が見られ、100ng/ml処理ではセメント腺が見られた。
【図4】図4に本発明の代表的な方法のスキームの別の例を示す。図4では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図においてアニマルキャップ5枚およびアクチビン処理5時間の例が示されている。他の説明は、図1と同様である。
【図5】図5には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間5時間の条件での単独培養での培養例で見られた写真を示す。Aには、組織外形を示し、Bには、組織切片写真を示す。AおよびBとも、左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では筋肉形成が観察され、10ng/ml処理では、脊索が見られ、100ng/ml処理では心臓が見られた。
【図6】図6には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間5時間の条件でのサンドイッチ培養での培養例で見られた写真を示す。Aには、組織外形を示し、Bには、組織切片写真を示す。AおよびBとも、左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、アニマルキャップ5枚、アクチビン1 ng/ml、5時間処理、サンドイッチ培養では血球はできても血島はできない。10ng/ml処理では、神経およびセメント腺が見られた。
【図7】図7は、本発明の方法における、解離のイメージ図である。
【図8】図8は、未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞)の組織切片の光学顕微鏡写真(a)と、血島を含む外植体の光学顕微鏡写真(b)を示す。
【図9】図9は、アクチビンによる遺伝子マーカー発現(上からSCL、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。1〜4レーン;各濃度でアクチビン処理後、未分化な細胞シートで挟んで1日培養したもの。レーン5のWE(whole embryo)は、発生段階が20に達した無処理の全胚であり、SCLはStem cell leukemia protein、またODC(ornithine decarboxylase)は、すべての発生時期で安定して発現するので基準資料して用いている。
【図10】図10に本発明の代表的な方法のスキームの別の例を示す。図10では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図においてアニマルキャップ5枚およびアクチビン処理3時間の例が示されている。他の説明は、図1と同様である。
【図11】図11は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体を単独で培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図12】図12は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体の単独培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成および体腔上皮形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られた。
【図13】図13は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間でのアクチビンによる遺伝子マーカー発現(上からedd(内胚葉性細胞マーカー)、Hex(肝臓マーカー)、ms−アクチン(筋肉マーカー)、表皮ケラチン(表皮マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では表皮が見られた。
【図14】図14は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図15】図15は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体のサンドイッチ培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、前腎管が見られ、100ng/ml処理ではセメント腺が見られた。
【図16】図16は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間でのアクチビンによる遺伝子マーカー発現(上からotx−2(前脳マーカー)、nrp−1(神経マーカー)、SCL(血島マーカー)、aml−1(血島マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では表皮が見られた。
【図17】図17に本発明の代表的な方法のスキームの別の例を示す。図10では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図においてアニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間の例が示されている。他の説明は、図1と同様である。
【図18】図18は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体を単独培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図19】図19は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体の単独培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、脊索が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【図20】図20は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間でのアクチビンによる単独培養での遺伝子マーカー発現(上からedd(内胚葉性細胞マーカー)、Hex(肝臓マーカー)、ms−アクチン(筋肉マーカー)、表皮ケラチン(表皮マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【図21】図21は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図22】図22は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体のサンドイッチ培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、アニマルキャップ10枚、アクチビン1 ng/ml、5時間処理、サンドイッチ培養では血島はできない。10ng/ml処理では、脊髄が見られ、100ng/ml処理ではセメント腺、体腔上皮および心臓が見られた。
【図23】図23は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間でのアクチビンによるサンドイッチ培養での遺伝子マーカー発現(上からotx−2(前脳マーカー)、nrp−1(神経マーカー)、SCL(血島マーカー)、aml−1(血島マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【配列表フリーテキスト】
【0307】
(配列表の説明)
配列番号1は、ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192の核酸配列である。
配列番号2は、ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192のアミノ酸配列である。
配列番号3は、ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193の核酸配列である。
配列番号4は、ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193のアミノ酸配列である。
配列番号5は、ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538の核酸配列である。
配列番号6は、ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538のアミノ酸配列である。
配列番号7は、ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191の核酸配列である。
配列番号8は、ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191のアミノ酸配列である。
配列番号9は、アクセション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)の核酸配列である。
配列番号10は、アクセション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)のアミノ酸配列である。
配列番号11は、アフリカツメガエルにはインヒビンβB(アクセッション番号:S61773)の核酸配列である。
配列番号12は、アフリカツメガエルにはインヒビンβB(アクセッション番号:S61773)のアミノ酸配列である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞の分化誘導に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医学(再生医療)による疾患治療が最近注目を浴びている。しかし、これを臓器ないし組織機能不全を呈する多くの患者に対して日常的に適応するまでには至っていない。現在まで、そのような患者の治療として、臓器移植のほか、医療機器での補助システムの利用がごく限られた患者に適応されているにすぎない。しかし、これらの治療法には、ドナー不足、拒絶、感染、耐用年数などの問題がある。特に、ドナー不足は深刻な問題であり、骨髄移植の場合、国内外で骨髄ないし臍帯血バンクが次第に充実してきたといっても、限られたサンプルを多くの患者に提供することが困難である。従って、これらの問題を克服するために幹細胞治療とその応用を中心とした再生医学に対する期待がますます高まっている。
【0003】
造血幹細胞の増幅および分化は、再生医療において重要課題のひとつであり、幹細胞を理解すること、およびその機構を理解した上での疾患の処置において非常に重要な役割を果たすと考えられており、近年その研究が進んでいる。
【0004】
したがって、幹細胞(特に、造血幹細胞)の分化を調節する因子の同定は、いまだに研究が進んでおらず、当業者が待ち焦がれている解決されていない課題のひとつである。
【0005】
再生医学においては、器官・臓器の再構築が最重要となる。この場合、大きく分けて生体外で器官を構築し人工器官として用いる方法と、生体内で器官を再構築させる方法とがある。いったん幹細胞が得られたとしても、制御された再生方法が利用可能でない限り、その応用方法は制限される。
【0006】
一方、幹細胞に遺伝子を導入し、その幹細胞を移植することによって遺伝子治療を行う試みが始まっている。例えば、X連鎖性重症複合免疫不全症の患者にIL−2受容体γ鎖を導入した幹細胞(CD34陽性骨髄細胞)を移植することによって臨床症状が改善することが報告されている(非特許文献1=Cavazzana−Calvo,M.et al.Science,288:669−672,2000)。しかし、幹細胞に遺伝子を導入すると、種々の有害作用が出ることが考えられることから、利用可能な造血幹細胞などを作製することができない。
【0007】
幹細胞の分化を調節する機構として種々のタンパク質が重要な役割を果たす。例えば、幹細胞因子(stem cell factorまたはsteel factor;SCFともいう)、トロンボポイエチン(TPO)、インターロイキン(IL)−3、IL−6、IL−11、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの他のサイトカインが、造血幹細胞分化では注目されている因子である。
【0008】
アフリカツメガエルは、発生が早く結果の判定が容易であること、採卵が容易であること、発生の過程が体の外で観察できること、遺伝子の機能解析が容易であることなどの利点から、初期発生の研究において重要な役割を担ってきた。これまでに、アフリカツメガエルの未分化な細胞から、心臓や膵臓、眼や腎臓などの種々の器官を作るための方法が開発されている。
【0009】
しかしながら、これまで未分化な細胞から血島(造血幹細胞)を誘導する技術がなかった。このような技術が存在しないことは、脊椎動物の初期発生における血液形成の研究が未だ初歩的段階にある原因となっているだけでなく、ヒトの貧血や血球の異常亢進、白血病などの血液疾患の詳細な研究や、その治療法や治療薬を開発するうえでの重大な障害となっていた。
【0010】
アクチビンについては、報告がいくつかあるが(特許文献1=特開2005-095138)、しかし、血島への分化は知られていない。
【非特許文献1】Cavazzana−Calvo,M.et al.Science,288:669−672,2000
【特許文献1】特開2005-095138
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、幹細胞から種々の分化細胞、分化組織などの分化体を思い通りに作製することを課題とする。本発明はまた、未分化な細胞から血島(造血幹細胞)をつくるための技術を開発することをも課題とする。未分化な細胞から血島(造血幹細胞)をつくることができれば、そのような血島(造血幹細胞)は、これらの造血幹細胞形成に関与するタンパク質などが特異的に欠如、あるいは異常発現しているヒトなどの疾病の診断や、白血病などの造血幹細胞の欠陥や欠損などに起因するヒトなどの異常や疾病を治療する目的などに有用な材料を提供する可能性がある。また、そのような異常や疾病に関する研究のためのよい材料を提供することや、それらの異常や疾病を治療するための薬剤の開発における有用なアッセイ系の材料を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、アクチビンまたはその等価物の濃度を微妙に変動させることによって、種々の分化細胞または分化組織を作出し分けることが可能であることを見出したことによって上記課題を解決した。
【0013】
初期発生を研究するためのよいモデルであるツメガエルの未分化細胞を出発材料として、解離再集合体を形成し、そうして得られた解離再集合体を2枚のシート状の未分化な細胞で挟み込んで培養することにより、血島(造血幹細胞)を誘導することができる(図1)。このようにして誘導された血島(造血幹細胞)は、血島(造血幹細胞)特有の外見をもち、血島(造血幹細胞)に特有なタンパク質(マーカータンパク質)の遺伝子SCL(Stem cell leukemia protein)が発現するなどから、血島(造血幹細胞)であることが判明した。本技術において肝要な点は、アクチビン処理する際、直接未分化細胞へアクチビン処理するのではなく、解離した未分化細胞を再集合させる時にアクチビンを処理することにある。
【0014】
図1に本発明の代表的な方法のスキームを示す。図1では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図が示されている。アフリカツメガエル後期胞胚からアニマルキャップを切り出し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを除いたスタインバーグ氏液中で細胞を解離し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含むスタインバーグ氏液で調製したアクチビンで3時間および5時間処理した。このアクチビン処理した解離再集合体を単独で培養した場合と、無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したときの組織分化を調べた。その結果、アクチビン処理を3時間行ってから単独培養した解離再集合体はアクチビン濃度0ng/mlでは不整形表皮に、1ng/mlでは血球や間充織に、10 ng/mlでは筋肉に、100 ng/mlでは内胚葉性細胞にそれぞれ分化していた。
【0015】
一方、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養したとき、アクチビン処理濃度 0 ng/mlでは不整形表皮に、1 ng/mlでは血島に、10 ng/mlでは前腎管に、100 ng/mlではセメント腺に分化しているのが観察された。この実験により、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体はアクチビンの濃度および処理時間依存的分化を示すこと、またアクチビン 1 ng/ml処理を3時間行った解離再集合体をサンドイッチ培養することにより高率に血島が誘導されることが分かった。
【0016】
現在までに報告されているアニマルキャップを用いた器官形成の多くは、シート状のアニマルキャップにアクチビン処理を行い、単独培養もしくはサンドイッチ培養を行っていた。この方法ではアクチビンシグナルを受け取る細胞と受け取らない細胞が混在し不均一であった。
【0017】
本研究では解離してアクチビン処理を行うことにより、一つ一つの細胞が均一にアクチビンシグナルを受け取る状態にし、単独培養およびサンドイッチ培養を行った。
【0018】
従って、本発明は以下を提供する。
(1) 造血幹細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)上記未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の上記未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
(2) 上記未分化細胞は後期胞胚に由来する細胞を含む、項1に記載の方法。
(3) さらに
D)C)工程により得られた細胞を未分化細胞と接触させる工程を包含する、項1に記載の方法。
(4)上記接触は、未分化細胞のシートで上記C)工程で得られた細胞を挟み込むことによって達成される、項3に記載の方法。
(5)上記未分化細胞は、後期胞胚の動物極の細胞を含む、項3に記載の方法。
(6)上記未分化細胞との接触は、最初の接触から最終分化まで未分化細胞と接触させるに十分である時間である、項3に記載の方法。
(7)上記未分化細胞との接触は、少なくとも1日間行われる、項3に記載の方法。
(8)上記未分化細胞との接触は、1日間以上3日間以内で行われる、項3に記載の方法。
(9)上記アクチビンは、アクチビン−A、アクチビン−B、インヒビンおよびアクチビン−Cからなる群より選択されるアクチビンである、項1に記載の方法。
(10)上記アクチビンは、配列番号2、4、6、8、10または12のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む、項1に記載の方法。
(11)上記アクチビンは、アニマルキャップあたり0.5〜1ng/mlの濃度で付与される、項1に記載の方法。
(12)上記造血幹細胞は、幹細胞白血病タンパク質(SCL)マーカーを発現することを特徴とする、項1に記載の方法。
(13)上記解離は、Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、項1に記載の方法。
(14)上記解離は、少なくとも10分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、項1に記載の方法。
(15)上記解離は、10分間から20分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、項1に記載の方法。
(16)上記C)工程において上記細胞の解離再集合体が形成される、項1に記載の方法。
(17)上記C)工程における解離再集合体の形成は、少なくとも30分上記培地中で培養することによって達成される、項16に記載の方法。
(18)上記C)工程におけるアクチビンの処理は、少なくとも3時間行われる、項1に記載の方法。
(19)上記未分化細胞はアニマルキャップにより提供される、項1に記載の方法。
(20)上記アニマルキャップは、5〜10枚使用される、項19に記載の方法。
(21)上記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、上記解離再集合体を上記未分化細胞とともに培養する工程をさらに包含する、項1に記載の方法。
(22)上記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、上記解離再集合体を上記未分化細胞でサンドイッチ培養する工程をさらに包含する、項1に記載の方法。
(23)上記細胞は、脊椎動物細胞である、項1に記載の方法。
(24)上記細胞は、両生綱動物細胞である、項1に記載の方法。
(25)上記細胞は、カエルの細胞である、項1に記載の方法。
(26)上記細胞は、アフリカツメガエルの細胞である、項1に記載の方法。
(27)項1〜26のいずれか1項に記載の方法によって調製された細胞。
(28)項1〜28のいずれか1項に記載の方法によって調製された血島。
(29)造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用される培地であって、
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地。
(30)上記培地は、58mM NaCl,0.67mM KCl、3.0mM ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸および100mg/L 硫酸カナマイシン、pH7.4の組成を含む、項29に記載の培地。
(31)造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を造血幹細胞に分化させる工程において使用される培地であって、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地。
(32)上記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、項31に記載の培地。
(33)上記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、項31に記載の培地。
(34)造血幹細胞を誘導するための方法において使用する培地の組み合わせであって、上記組み合わせは
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地と、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地と
を含む、培地の組み合わせ。
(35) 造血幹細胞を調製するためのキットであって:
a)上記未分化細胞を解離させる解離手段と、
b)上記未分化細胞を造血幹細胞に分化させる分化手段と、
c)解離後の上記未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間分化手段により上記未分化細胞を分化させることを指示する指示書と、
を備える、キット。
(36)上記分化手段は、アクチビンを含む培地であることを特徴とする、項35に記載のキット。
(37)造血幹細胞を調製するための、アクチビンの使用。
(38)造血幹細胞を調製するための組成物であって、上記組成物は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含有する、組成物。
(39)上記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、項38に記載の組成物。
(40)上記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、項38に記載の組成物。
(41) 所望の分化細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)上記未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の上記未分化細胞を、所望の分化細胞に分化するに十分な条件でアクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、造血幹細胞を簡易な方法で生産する方法を提供する。これはアクチビンの特定の濃度で達成された。アクチビンの濃度を変更すると別の組織形態に分化することも見出された。従って、本発明は、アクチビンによる微妙な分化調節を可能にしたという効果を奏する。アニマルキャップ5枚、10枚、どちらの実験系でも、アクチビン処理時間を5時間にするとアクチビン1ng/ml処理・サンドイッチ培養を行っても血島は誘導されない。ただし、血球はできるので、SCL(遺伝子マーカー)の発現は見られる。アクチビン処理に対する細胞数は、必ずしも普遍的とは言えない。アニマルキャップ5枚、10枚、どちらの実験系でも、アクチビン1ng/ml、3時間処理、サンドイッチ培養を行うと血島が誘導される。血島形成ということだけに焦点をしぼると、細胞数は普遍的であると言えるかもしれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0022】
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、本明細書において記載される融合細胞、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書において使用される場合は、幹細胞は好ましくは胚性幹細胞であり得るが、状況に応じて組織幹細胞も使用され得る。
【0023】
本明細書において、「分化」または「細胞分化」とは、1個の細胞の分裂によって由来した娘細胞集団の中で形態的および/または機能的に質的な差をもった二つ以上のタイプの細胞が生じてくる現象をいう。従って、元来特別な特徴を検出できない細胞に由来する細胞集団(細胞系譜)が、特定のタンパク質の産生などはっきりした特徴を示すに至る過程も分化に包含される。現在では細胞分化を,ゲノム中の特定の遺伝子群が発現した状態と考えることが一般的であり、このような遺伝子発現状態をもたらす細胞内あるいは細胞外の因子または条件を探索することにより細胞分化を同定することができる。細胞分化の結果は原則として安定であって、特に動物細胞では,別のタイプの細胞に分化することは例外的にしか起こらない。造血幹細胞について言う場合、「分化」とは、CDによって表される表面抗原分子が変化して、次の段階の細胞になることをいう。具体的には多能性幹細胞(CD34+CD38−)からリンパ系幹細胞(CD34+CD38+)または骨髄系幹細胞(CD34+CD38+CD33+) のように分化抗原の表原型が変化することをいい、リンパ系幹細胞からT前駆細胞またはB前駆細胞、骨髄系幹細胞からBFU−C、CFC−MEG、EO− CFCまたはCFU−GM、BFU−EからCFU−E、T前駆細胞からT細胞、B前駆細胞からB細胞、CFU−Eから赤血球、CFC−MEGから血小板、 EO−CFCから好酸化球、CFU−GMから単球、好中球または好塩基球になることをいう。
【0024】
本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は「全能性」といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ただし、明確に区別する場合は、全能性と多能性とは区別され得、前者はどのような細胞へも分化し得る能力をいい、後者は、複数の方向を有するが、生物が可能なすべての方向には分化できない能力を有することをいう。また、1つの方向にのみ分化する能力は、単能性ともいう。
【0025】
本明細書において全能性と多能性とは、例えば、受精後の日数により判定することができ、例えば、マウスであれば、受精後約8日を基準として区別され得る。理論に束縛されないが、マウスでは、受精後、以下のような経過をたどることが通常である。受精後6.5日(E6.5とも表記する)では、原始線条(原条ともいう)がエピブラストの片側に出現し、胚の将来の前後軸が明らかになる。原条は、胚の将来の後方端を示し、外胚葉を横切って円筒の遠位端まで達する。原条は、細胞運動が行われる領域であり、その結果、将来の内胚葉と中胚葉とが形成されることになる。E7.5までに結節の前方に頭部突起が出現し、この部分には脊索と、それを取り囲んで下層には将来の内胚葉、上層には神経板が形成されることになる。結節は、E6.5日ごろから現れ、後方へと移動し、軸構造が前から後ろへと形成される。E8.5日までに胚は幾分丈が長くなり、その前端には大部分前方神経板からなる大きな頭部ヒダが形成される。体節はE8日から1.5時間に1個の割合で前方から後方へと形成され始める。この時期を越えた細胞は、仮に胎盤に戻したとしても、脱分化をしない限りもはや全能性を示さず、個体を形成しない。これより前では特別の処理をしなくても全能性を示し得ることから、この点が全能性の分岐点であるといえる。このことは、ES細胞がこれ以降の胚から樹立することが困難であり、これ以降の胚からは通常EG(生殖細胞由来)細胞と呼ばれる細胞が樹立されることから、そのような意味でも分岐点であるといえる。
【0026】
本明細書において「多能性」または「多分化能」とは、互換可能に用いられ、細胞の性質をいい、1以上、好ましくは2以上の種々の組織または臓器に分化し得る能力をいう。従って、「多能性」および「多分化能」は、本明細書においては特に言及しない限り「未分化」と互換可能に用いられる。通常、細胞の多能性は発生が進むにつれて制限され、成体では一つの組織または器官の構成細胞が別のものの細胞に変化することは少ない。従って多能性は通常失われている。とくに上皮性の細胞は他の上皮性細胞に変化しにくい。これが起きる場合通常病的な状態であり、化生(metaplasia)と呼ばれる。しかし間葉系細胞では比較的単純な刺激で他の間葉性細胞にかわり化生を起こしやすいので多能性の程度は高い。胚性幹細胞は、多能性を有する。組織幹細胞は、多能性を有する。本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は全能性といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ある細胞が多能性を有するかどうかは、たとえば、体外培養系における、胚様体(Embryoid Body)の形成、分化誘導条件下での培養等が挙げられるがそれらに限定されない。また、生体を用いた多能性の有無についてのアッセイ法としては、免疫不全マウスへの移植による奇形腫(テラトーマ)の形成、胚盤胞への注入によるキメラ胚の形成、生体組織への移植、腹水への注入による増殖等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0027】
本明細書において「未分化細胞」とは、上記のような多分化能を有する細胞をいう。好ましくは、後期胞胚に由来する細胞が用いられる。
【0028】
本明細書において「造血幹細胞」とは、赤血球・白血球・血小板などの血球(血液細胞)等の細胞へと分化する能力を有する幹細胞をいう。好ましくは、血液細胞系に分化がある程度進んでいるが多分化能を保持する。あらゆる種類の血球に分化する能力を有するとともに造血再構築能を有する細胞であり、主に骨髄、臍帯血、脾臓あるいは肝臓中に存在し、微量ながら末梢血に も存在する。これら造血幹細胞は、CD34強陽性細胞であり、本発明においては高増殖能コロニー形成細胞(High−Proliferative Potential Colony−Forming Cells (HPP−CFC))もこれに包含される。「幹細胞」とは、多能性造血幹細胞およびこれから分化したリンパ球系幹細胞、骨髄系幹細胞(CFU−GEMM)を 意味する。これら細胞はCD34陽性細胞である。
「前駆細胞」とは、多能性造血幹細胞から各系統の血液細胞が分化形態学的には同定できないがすでに赤血球系など一方向の血液細胞にしか分化し得ない細胞を 意味する。具体的には血小板コロニー形成細胞(CFC−MEG)、好酸球コロニー形成細胞(EO−CFC)、顆粒球単球コロニー形成細胞(CFU− GM)、赤血球形成細胞(BFU−E、CFU−E)、T前駆細胞、B前駆細胞などである。これらはいずれもCD34陽性細胞である。
【0029】
造血細胞は骨髄の中でつくられ、分化して、赤血球、血小板、白血球などになり末梢血液の中を流れる。骨髄系細胞の分化を見ると、一番大元には多能性幹細胞があり、次に造血系細胞に特化した造血幹細胞があり、多能性前駆細胞へと分化し、さらに骨髄球系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞へと分化する
骨髄系では多能性幹細胞からCFU−GEMMという細胞へ分化する。そのCFU−GEMという細胞からCFU−GMという細胞へ、次いで骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球という形で分化する。これらは骨髄中に存在する細胞であり、これが分化すると好中球となって末梢血中を流れる。次のラインへいくと、CFU−GMという細胞から単球の方へ行き、単芽球、前単球、単球と分化する。この単球が末梢血へあらわれる。3番目のラインでは、CFU−GEMMという細胞からBFU−E細胞へと分化し、それから前赤芽球、赤芽球、赤血球へと分化する。また、巨核球系というものもあり、CFU−Meg(メガカリオサイトの略)、巨核芽球、巨核球、血小板へと分化する。
【0030】
このような分化の過程で白血病は、多能性幹細胞の異常に起因する。したがって、本発明は、このような異常を改善するという意味で白血病の治療にも応用され得る。
【0031】
リンパ球系では、CMLでは、多能性幹細胞からリンパ系の幹細胞へと分化し、B細胞系とT細胞系とに分かれる。それと別個にNK細胞の方へ分かれていくというラインが存在する。B細胞系のラインといたしましては前駆B細胞、前駆前駆B細胞(pre−pre−B−cell)、初期B細胞(early−B−cell)などへと分化し、中間B細胞(intermediate− B−cell) 、成熟B細胞(matureB−cell )、形質球様細胞(plasmacytoid− B−cell) 、形質細胞(plasma−cell)へと分化する。T細胞系としては、胸腺前駆細胞、未成熟胸腺細胞、共通胸腺細胞(common thymocyte)、成熟胸腺細胞へと分化する。別のルートとしてヘルパー/インデューサーT細胞へいく系統と、成熟胸腺細胞から抑制/細胞傷害性T細胞へと分化する系統が存在する。このような分化に関するより詳細な説明については、赤司浩一、最新医学 56(2)、15−23,2001を参照のこと。この文献は、本明細書において参考として援用される。
【0032】
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、両生類(例えば、アフリカツメガエル)の細胞が用いられる。
【0033】
本発明が対象とする臓器はどのような臓器でもよく、また本発明が対象とする組織または細胞は、生物のどの臓器または器官に由来するものでもよい。本明細書において「臓器」または「器官」とは、互換可能に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明の多能性細胞から分化した細胞としては、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0034】
本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/-または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。植物では、構成細胞の発達段階によって分裂組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われている。
【0035】
本明細書において「アクチビン」とは、卵巣の顆粒膜細胞などから分泌され,下垂体前葉の濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進する蛋白質ホルモンをいう。代表的なアクチビンとしては、例えば、アクチビン−A、アクチビン−B、アクチビン−C、インヒビンなどがあり、これらは、動物間でよく保存されており、ヒトのものがアフリカツメガエルに作用したり、逆も真であることが予期されている。配列番号1および配列番号9(アクセッション番号:NM002192(ヒトインヒビンβAの配列番号)およびアクセション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)=核酸配列)および配列番号2および配列番号10(それぞれヒトインヒビンβAの配列番号およびアクセッション番号X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)=アミノ酸配列)に示されるような配列を有する因子および他の種の動物において対応する因子(オルソログ)が挙げられるがそれに限定されない。また、アフリカツメガエルにはインヒビンβB(アクセッション番号:S61773)の登録がある(配列番号11および12)。分子量25000.インヒビンβ鎖のサブユニットがS−S結合した二量体であり,アクチビンA(βAβA),アクチビンAB(βAβB),アクチビンB(βBβB)の3種類が知られている.アクチビンAは赤芽球分化誘導因子(erythroblast differentiation factor,EDF)ともいう.インヒビンβ鎖が形質転換成長因子TGF−βと約40%の相同性をもっており,また一次構造中のシステイン残基の位置がよく保存されているので,アクチビンをTGF−βファミリーに入れることもある。アクチビンは、卵巣の顆粒膜細胞などから分泌され,下垂体前葉の濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進する蛋白質ホルモンである。インヒビンを精製する過程で卵胞液中から単離された(1986).分子量25000.インヒビンβ鎖のサブユニットがS−S結合した二量体であり,アクチビンA(βAβA),アクチビンAB(βAβB),アクチビンB(βBβB)の3種類が知られている.アクチビンAは赤芽球分化誘導因子(erythroblast differentiation factor,EDF)ともいう.インヒビンβ鎖が形質転換成長因子TGF−βと約40%の相同性をもっており,また一次構造中のシステイン残基の位置がよく保存されているので,アクチビンをTGF−βファミリーに入れることもある.脊椎動物のいろいろな臓器でアクチビン遺伝子の発現が報告されており,卵巣の顆粒膜細胞におけるFSH受容体の合成の促進,フレンド細胞や骨髄の赤芽球前駆細胞の増殖抑制とヘモグロビン合成の誘導,膵臓からのインシュリン分泌の促進,両生類胚における中胚葉誘導など,多くの生理活性をもつ。アクチビンについては、以下を参照することができる:Nakamura et al.,Isolation and characterization of native activin B.J Biol.Chem.1992,267,16385−9;Uchiyama and Asashima,Specific erythroid differentiation of mouse erythroleukemia cells by activins and its enhancement by retinoic acids.Biochem Biophys.Res.Commun.1992,187,347−52;Fukui et al.,Isolation and characterization of Xenopus follistatin and activins.Dev.Biol.1993,159,131−9;Fukui et al.,Identification of activins A,AB,and B and follistatin proteins in Xenopus embryos.Dev.Biol.1994,163,279−81;Nakano et al.,Comparison of mesoderm−inducing activity with monomeric and dimeric inhibin alpha and beta−A subunits on Xenopus ectoderm.Horm.Res.1995,44,Suppl.2,15−22。
【0036】
アクチビンは、ヒト、ラット、マウス、アフリカツメガエルなどを含む哺乳動物のほか、ショウジョウバエなどでもそのホモログが知られている。従って、本明細書においてアクチビンは、通常、哺乳動物のほか、生物一般において存在するアクチビンを指す。アクチビン−AはインヒビンβAの二量体である(ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192;配列番号1および2(核酸およびアミノ酸))。アクチビン−ABはインヒビンβAとインヒビンβBの二量体である(ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193;配列番号3および4(核酸およびアミノ酸))。アクチビン−BはインヒビンβBの二量体である。アクチビン−CはインヒビンβCの二量体である(ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538;配列番号5および6(核酸およびアミノ酸))。インヒビンはインヒビンαの二量体である(ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191;配列番号7および8(核酸およびアミノ酸))。
そのようなアクチビン遺伝子としては、例えば、
(A)(a)配列番号1、3、5、7、9または11に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1、3、5、7、9または11に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、
核酸分子;あるいは
(B)(a)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1、3、5、7、9または11に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
を含む、
ポリペプチドをコードする核酸分子、あるいはそれがコードするポリペプチドが挙げられるがそれらに限定されない。
【0037】
本明細書において、「リガンド」とは、あるタンパク質に特異的に結合する物質をいう。例えば,細胞膜上に存在する種々のレセプタータンパク質分子と特異的に結合するレクチン、抗原、抗体、ホルモン、神経伝達物質などがリガンドとして挙げられる。アクチビンがリガンドとすれば、同様の(等価の)作用を有するリガンドは、本発明の範囲内であることが意図される。
【0038】
本発明において用いられるアクチビンについて、糖鎖が付加され得る部分としては、N−アセチル−D−グルコサミンなどが結合するN−グルコシド結合可能な部分、およびN−アセチル−D−ガラクトサミンのO−グリコシド結合をする部分(セリンまたはスレオニン残基が頻出する部分)が挙げられる。本明細書において使用されるアクチビンは、糖鎖の有無は特に活性に影響を与えるというわけではないが、これらの糖鎖が付加されたタンパク質は、通常生体内での分解に対して安定であり、強い生理活性を有し得る。従って、これら糖鎖が付加されたポリペプチドもまた、本発明の範囲内にある。
【0039】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または複数のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。このようなポリペプチド形態の本発明の遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。
【0040】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。
【0041】
本明細書において「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1または複数の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。本発明の遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。
【0042】
本明細書では「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、本発明で使用され得る遺伝子(アクチビン遺伝子)には、そのスプライス変異体もまた包含され得る。
【0043】
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、アクチビンなどの遺伝子というときは、通常、本発明の遺伝子の構造遺伝子ならびにそのプロモーターなどの転写および/または翻訳の調節配列の両方を包含する。本発明では、構造遺伝子のほか、転写および/または翻訳などの調節配列もまた、神経再生、神経疾患の診断、治療、予防、予後などに有用であることが理解される。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
【0044】
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
【0045】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9 (2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
【0046】
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのようなアミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
【0047】
用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
【0048】
本明細書において用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
【0049】
本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。本明細書におけるアクチビンとしては、天然型のアミノ酸を含むもののほか、このようなアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体を含むものが使用され得る。
【0050】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
【0052】
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。従って、本明細書においてマウスアクチビンにおける特定のアミノ酸配列は、アラインメントなどの解析によって、ヒトアクチビンにおける特定のアミノ酸に対して対応付けることができる。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。
【0053】
本明細書において、「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、アフリカツメガエルのアクチビンなどの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(ヒト、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、アフリカツメガエルのアクチビンなどの遺伝子)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
【0054】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能(例えば、分化調節作用、他の分子との特異的相互作用)が保持されているかどうかによって決定され得る。
【0055】
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含むサンプル中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。物質または因子について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。
【0056】
したがって、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
【0057】
本明細書において「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、アクチビンが幹細胞の分化に使用され得るが、アクチビンと同一の生物学的活性を有する因子であれば、本発明においてアクチビンと交換可能に用いられ得ることが理解される。このような因子は、本明細書における開示に基づいて、当該分野における技術常識を用いてスクリーニングすることによって同定することができ、これらは、周知・慣用技術の範囲内であることが理解される。
【0058】
本明細書中で使用される「化合物」は、任意の識別可能な化学物質または分子を意味し、これらには、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこのような化合物は、天然物または合成物であり得る。
【0059】
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0060】
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のアクチビンなど(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)に対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。代表的には、接触させたい因子(例えば、アクチビン)を含む溶液(例えば、培地)に接触対象(例えば、細胞)を入れることなどによって接触が達成され得る。
【0061】
本明細書において「複合分子」とは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。そのような複合分子としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書においてアクチビンとしては、このような複合分子の形態でも用いられ得る。
【0062】
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
【0063】
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
【0064】
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
【0065】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、2つの因子が相互作用する(例えば、アクチビンとその特異的因子とが結合する)場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。したがって、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。
【0066】
したがって、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が、挙げられる。このような活性は、アクチビンに対する特異的因子の結合の競合阻害のようなアッセイによって測定され得る。
【0067】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
【0068】
本明細書中で使用される用語「結合」は、2つのタンパク質もしくは化合物または関連するタンパク質もしくは化合物の間、あるいはそれらの組み合わせの間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。
【0069】
本明細書中で使用される用語「調節する(modulate)」または「改変する(modify)」は、特定の活性またはタンパク質の量、質または効果における増加または減少あるいは維持を意味する。
【0070】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件で入手されるポリヌクレオチドをいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(例えば、アクチビン)をコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0071】
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO4またはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
【0072】
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
【0073】
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
【0074】
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
【0075】
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
【0076】
アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1などの核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましいアクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1または3に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
【0077】
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用されるアクチビンなどには、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
【0078】
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
【0079】
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
【0080】
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington:National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。
【0081】
(遺伝子、タンパク質分子、核酸分子などの改変)
あるタンパク質分子(例えば、アクチビンなど)において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0082】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0083】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
【0084】
親水性指数もまた、本発明のアミノ酸配列を改変するのに有用である。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0085】
本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0087】
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
【0088】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、短縮化、脂質化(lipidation)、ホスホリル化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0089】
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
【0090】
本発明のポリペプチドがポリマーに結合している、化学修飾されたポリペプチド組成物は、本発明の範囲に包含される。このポリマーは、水溶性であり得、水溶性環境(例えば、生理学的環境)でこのタンパク質の沈澱を防止し得る。適切な水性ポリマーは、例えば、以下からなる群より選択され得る:ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物に基づくポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール。この選択されたポリマーは、通常は改変され、単一の反応性基(例えば、アシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒド)を有し、その結果、重合度は制御され得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、そして、このポリマーは分枝状でも分枝状でなくてもよく、そしてこのようなポリマーの混合物はまた、使用され得る。この化学修飾された本発明のポリマーは、治療用途に決定付けられる場合、薬学的に受容可能なポリマーが使用するために選択される。
【0091】
このポリマーがアシル化反応によって改変される場合、このポリマーは、単一の反応性エステル基を有するべきである。あるいは、このポリマーが還元アルキル化によって改変される場合、このポリマーは単一の反応性アルデヒド基を有するべきである。好ましい反応性アルデヒドは、ポリエチレングリコール、プロピオンアルデヒド(このプロピオンアルデヒドは、水溶性である)または、そのモノC1〜C10の、アルコキシ誘導体もしくはアリールオキシ誘導体である(例えば、米国特許第5,252,714号(これは、本明細書中で全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0092】
本発明のポリペプチドのペグ化(Pegylation)は、例えば、以下の参考文献に記載されるような、当該分野で公知の、任意のペグ化反応によって実施され得る:Focus on Growth Factors 3,4−10(1992);EP 0 154 316 ;およびEP 0 401 384(これらの各々は、本明細書中で、全体が参考として援用される)。好ましくは、このペグ化は、反応性ポリエチレングリコール分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施される。本発明のポリペプチド(例えば、アクチビン、Mel−18、M33、Mph−1/Rae28など)のペグ化のための好ましい水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書中で使用される場合、「ポリエチレングリコール」は、PEGの任意の形態の包含することを意味し、ここで、このPEGは、他のタンパク質(例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシポリエチレングリコールまたはモノ(C1〜C10)アリールオキシポリエチレングリコール)を誘導体するために使用される。
【0093】
本発明のポリペプチドの化学誘導体化を、生物学的に活性な物質を活性化したポリマー分子と反応させるのに使用される適切な条件下で、実施され得る。ペグ化した本発明のポリペプチドを調製するための方法は、一般に以下の工程を包含する:(a)アクチビンが1以上のPEG基に結合するような条件下で、ポリエチレングリコール(例えば、PEGの、反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)とこのポリペプチドを反応させる工程および(b)この反応生成物を得る工程。公知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、最適な反応条件またはアシル化反応を選択することは当業者に容易である。
【0094】
ペグ化された本発明のポリペプチドは、一般に、本明細書中に記載のポリペプチドを投与することによって、緩和または調節され得る状態を処置するために使用され得るが、しかし、本明細書中で開示された、化学誘導体化された本発明のポリペプチド分子は、それらの非誘導体分子と比較して、さらなる活性、増大された生物活性もしくは減少した生物活性、または他の特徴(例えば、増大された半減期または減少した半減期)を有し得る。本発明のポリペプチド、それらのフラグメント、改変体および誘導体は、単独で、併用して、または他の薬学的組成物を組み合わせて使用され得る。これらのサイトカイン、増殖因子、抗原、抗炎症剤および/または化学療法剤は、徴候を処置するのに適切である。
【0095】
同様に、「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
【0096】
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
【0097】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0098】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0099】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0100】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0101】
(遺伝子工学)
本発明において用いられるアクチビンなどならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
【0102】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。好ましいベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、ウイルス粒子またはウイルスおよび組み込み可能なDNAフラグメント(すなわち、相同組換えによって宿主ゲノム中に組み込み可能なフラグメント)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいウイルス粒子としては、アデノウイルス、バキュロウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ワクシニアウイルスおよびレトロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
ベクターの1つの型は、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状二重鎖DNAループをいう。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノム中に連結され得る。特定のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)は、これらが導入される宿主細胞中で自律的に複製し得る。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、これらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書中で、「発現ベクター」といわれる。
【0104】
従って、本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0105】
本発明において用いられ得る原核細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
【0106】
本発明において用いられ得る動物細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
【0107】
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
【0108】
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
【0109】
本明細書において「複製起点」とは、DNA複製が開始する染色体上の特定領域をいう。複製起点は、内因性起点を含むようにそのベクターを構築することによって提供され得るか、または宿主細胞の染色体複製機構により提供され得るかのいずれかであり得る。そのベクターが、宿主細胞染色体中に組み込まれる場合、後者が十分であり得る。あるいは、ウイルス複製起点を含むベクターを使用するよりも、当業者は、選択マーカーと本発明のDNAとを同時形質転換する方法によって、哺乳動物細胞を形質転換し得る。適切な選択マーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはチミジンキナーゼである(米国特許第4,399,216号を参照)。
【0110】
例えば、組織特異的調節エレメントを使用して核酸を発現することによって、組換え哺乳動物発現ベクターでは、特定の細胞型において核酸の発現を優先的に指向し得る。組織特異的調節エレメントは、当該分野で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、発生的に調節されたプロモーター(例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss(1990)Science 249,374−379)およびα−フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman(1989)Genes Dev.3,537−546))、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら(1987)Genes Dev.1,268−277)、リンパ特異的プロモーター(CalameおよびEaton(1988)Adv.Immunol.43,235−275)、特にT細胞レセプター(WinotoおよびBaltimore(1989)EMBO J.8,729−733)および免疫グロブリン(Banerjiら(1983)Cell 33,729−740;QueenおよびBaltimore(1983)Cell 33,741−748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経線維プロモーター;ByrneおよびRuddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら(1985)Science 230,912−916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開番号264,166)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0111】
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0112】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0113】
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
【0114】
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
【0115】
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
【0116】
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。
【0117】
本明細書において使用される場合、動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。
【0118】
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法などが例示される。
【0119】
(ポリペプチドの製造方法)
本発明のポリペプチド(例えば、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなど)をコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のポリペプチドを採取することにより、本発明に係るポリペプチドを製造することができる。
【0120】
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0121】
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
【0122】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
【0123】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
【0124】
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0125】
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。遺伝子を導入した細胞または器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培養することができる。
【0126】
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地(The Journal of the American Medical Association,199,519(1967))、EagleのMEM培地(Science,122,501(1952))、DMEM培地(Virology,8,396(1959))、199培地(Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950))またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
【0127】
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0128】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
【0129】
本発明のポリペプチド(例えば、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなど)が本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
【0130】
本発明のポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
【0131】
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明のポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0132】
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。このような融合タンパク質では、発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位は、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にするために、融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入される。このような酵素およびこれらの同族の認識配列は、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。代表的な融合発現ベクターとしては、それぞれ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する、pGEX(Pharmacia Biotech;SmithおよびJohnson(1988)Gene 67,31〜40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が挙げられる。
【0133】
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
【0134】
本発明のポリペプチドは、そのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
【0135】
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明のポリペプチドの生理活性は、公知の測定法に準じて測定することができる。
【0136】
本発明において有用な可溶性ポリペプチドの産生もまた、当該分野で公知の種々の方法によって達成され得る。例えば、ポリペプチドは、エキソペプチダーゼ、エドマン分解またはその両方と組み合わせて特定のエンドペプチダーゼを使用することによるタンパク質分解によって、インタクトな膜貫通アクチビンポリペプチド分子から誘導され得る。このインタクトなアクチビンポリペプチド分子は、従来の方法を使用して、その天然の供給源から精製され得る。あるいは、インタクトなアクチビンポリペプチドは、cDNA、発現ベクターおよび組換え遺伝子発現のための周知技術を利用する組換えDNA技術によって生成され得る。
【0137】
好ましくは、本発明において有用な可溶性ポリペプチドは、直接的に産生され、従って、出発材料としてのアクチビンポリペプチド全体の必要性を排除する。これは、従来の化学合成技術によって達成され得るか、または周知の組換えDNA技術(ここで、所望のペプチドをコードするDNA配列のみが形質転換された宿主で発現される)によって達成され得る。例えば、所望の可溶性アクチビンポリペプチドをコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチド合成機を使用する化学的手段によって合成され得る。このようなオリゴヌクレオチドは、所望の可溶性アクチビンポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計される。所望のペプチドをコードする特定のDNA配列はまた、特定の制限エンドヌクレアーゼフラグメントの単離によってか、またはcDNAからの特定の領域のPCR合成によって、全長DNA配列から誘導され得る。
【0138】
本発明のポリペプチド(例えば、アクチビンなど)のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加(融合を含む)は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
【0139】
(細胞培養)
当該分野において公知の広範な培地処方物の、幹細胞分化に関する細胞培養特性は、本明細書中において開示されるアクチビンまたはその等価物の添加量の調節によって劇的に変化することが見出された。
【0140】
多くの培地処方物が、幾年もの間開発され、所定の培養された細胞または細胞株についての細胞増殖、細胞生存能、および/または生物製剤産生を最大限にしてきた。これらの培地組成物は、例えば、培地に添加される成長因子、抗生物質、およびアミノ酸補充物の数、タイプ、および濃度が相互に異なり、そしてプロテアーゼインヒビターのような成分、および特に細胞が懸濁内で増殖される場合には、1つまたはそれ以上の消泡剤(anti−foarmingagent)を含む。他の個性化された成分は、組換えタンパク質産生を増強する添加物を包含する。例えば、宿主細胞が、組換えタンパク質の遺伝子増幅のために開発された場合、選択マーカーDHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)は、代表的には、選択マーカーとしてトランスフェクトされた宿主の一部を構成し、そしてメトトレキセートは培養培地に含まれる。インスリンまたは他の成長因子、例えば、IGFのようにエネルギー源カスケードの役割を果たす因子はまた、しばしば含有されて細胞増殖を増強する。
【0141】
本明細書中において開示されるアクチビンまたはその等価物は、種々の培地処方物に対して、ならびに標準的な処方物中において、効果を有することが期待される。
【0142】
例えば、すべての無血清培地処方物は、細胞増殖を可能にする必須成分を含み、(1)エネルギー源、代表的にはグルコースまたはグルタミン、あるいは他の糖、例えば、フククトース、ガラクトース、マンノースなど;(2)窒素源(典型的には1つまたはそれ以上のアミノ酸の包含により得られる);および(3)ビタミン(酵素反応における補因子)を含む。また、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl−、HPO32−などを含む広範な無機塩、ならびに脂肪酸(好ましくは結合物)、コレステロール、リン脂質、およびそれらの前駆体を含む広範な脂肪および脂溶性成分も必須である。標準的な無血清培地処方物の成分は表1に挙げられる。これには、GrandIslandBiologicalCo.(GIBCO),GrandIsland,N.Y.のような培地製造者から得られる「DMEM/F−12」に見出される成分が含まれる。動物細胞培養培地の検討については、MizrahiおよびLazar、Cytotechnology,1:199−214(1988)を参照のこと。昆虫細胞培養についての培地の考察は、Goodwin,R.H.(1990)Nature347:209−210に開示されている。ハイブリドーマの培養について個性化された、規定された無血清培地の例が、Kovar,J.(1987)FoliaBiologia33:377−384により記載されている。Imagawaら(1989)PNAS86:4122−4126は、マウス乳房上皮細胞における細胞増殖を最大にするように開発された培地について記載し、そしてMiyazakiら(1991)Res.Exp.Med.191:77−83は、ラット肝細胞の生存能をインビトロで増強するように培地について記載している。アフリカツメガエルについては、Sive,Granger,and Harland.Early Development of Xenopus laevis ColdSpring Harbor Laboratory Press (2000)に記載されている。
【0143】
本明細書において「栄養培地」とは、天然培地、半合成培地、合成培地、固形培地、半固形培地、液体培地などが挙げられるが、未分化細胞を、自己を含めた増殖、分化、成熟または保存させるために用いられるものであり、通常、細胞培養に用いられるようなものであれば如何なる培地であってもよい。例を挙げると、たとえばSteinberg培地、α−MEM培地、RPMI−1640培地またはMEM基本培地などが挙げることができる。基本成分としてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、抗生物質、脂肪酸、糖または目的に応じてその他の化学成分もしくは血清のような生体成分を含有することもできる。
【0144】
培地成分は代表的には任意の順序で添加され得、そして最終的な組合せは、標準的な方法、例えば、濾過滅菌により滅菌され得る。
【0145】
本発明の培地を利用して、広範な細胞(脊椎動物および無脊椎動物の両方)の幹細胞を所望の方向に分化させ得る。本発明の培地を用いて、多くの異なる細胞培養系における細胞培養特性を改善し得る。
【0146】
動物の場合は、通常動物細胞の培養で用いられるイスコフ培地、RPMI培地、ダルベッコMEM培地、MEM培地、F12培地等の血清を含まない培地を用いることができる。また、公知文献等により、細胞の増殖や維持に有効であることが知られている血清以外の因子、たとえば脂質および脂肪酸源、コレステロール、ピルビン酸塩、グルココルチコイド、DNAおよびRNA合成ヌクレオシド等を添加してもよい。
【0147】
本明細書において「培養容器」とは、所望の細胞、例えば、未分化細胞を増殖させるときに用いる容器のことであり、必要に応じてストローマ細胞などのフィーダー細胞が維持・生存でき、未分化細胞が維持・生存・分化・成熟・自己複製するのに何ら阻害するものでなければ如何なる素材、形状のものを用いてもよい。具体的には培養容器の素材としてはガラス、合成樹脂、天然樹脂、金属、プラスチックなどが挙げられ、形状としては具体的には三角柱、立方体、直方体などの多角柱、三角錐、四角錐などの多角錘、ひょうたんのような任意の形状、球形、半球形、円柱(底面が円形、楕円形または半円形等を含む)などを挙げることができ、また例えば半球形から球形のように培養中に必要に応じて形状を変化させてもよい。培養は開放条件下であってもよいし、閉鎖(密閉)条件下であってもよい。
【0148】
本発明における細胞培養法は、マトリクスコーティングが異なる培養皿、またはマトリクスコーティングの有無が異なる培養皿を用いた二次元培養法、マトリジェル等のソフトゲルやコラーゲンスポンジ等を用いた三次元培養法、またはそれらを併用する方法が挙げられるが、好ましくは、マトリクスコーティングが異なる培養皿、またはマトリクスコーティングの有無が異なる培養皿を用いた二次元培養法であり、例えば、ゼラチンコーティング培養皿、I型コラーゲンコーティング培養皿またはラミニンコーティング培養皿のうち2つを用いる二次元培養法である。また、多分化能を有する細胞として、ヒト由来の細胞を用いる場合は、I型コラーゲンコーティング培養皿を用いるのが好ましい。
【0149】
本発明の方法の培養条件は、実施例などの特定の条件に限定されるものではなく、一般的に許容される条件を取りうる。例えば、分化誘導開始時の細胞数としては、5.0x103〜5.0x106細胞/培養皿の範囲を例示できる。また、分化誘導期間としては、例えば、2〜10日間(好ましくは5日間)、あるいは1〜4日間(好ましくは2日間)、前培養工程では2〜5日間(好ましくは3日間)である。また、ヒト間葉系細胞の場合、分化誘導期間としては、12〜21日間(好ましくは14日間)である。
【0150】
培養するにあたり、温度、浸透圧、光などの物理的環境条件、酸素、炭酸ガス、pH、酸化還元電位などの化学的環境条件としては死滅処理前の未分化細胞および分化後の細胞が維持・生存でき、未分化細胞が維持・生存・分化・成熟・自己複製するのに何ら阻害するものでなければ如何なる環境条件であってもよい。好ましい条件を以下に示す。
【0151】
温度については具体的には、30℃〜40℃であり、好ましくは37℃である。浸透圧については具体的には生理条件における浸透圧であり、好ましくは生理食塩水と等しい浸透圧である。
【0152】
光は暗室ほどの暗い条件であってもよいし、晴天時の外の明るさほどに明るくてもよい。
酸素濃度としては具体的には培養系が気相中の酸素濃度が10%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度〜気相中の酸素濃度が30%の気相と接触している状態での酸素濃度であってもよく、好ましくは気相中の酸素濃度が20%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度の気相と接触している状態での酸素濃度である。
【0153】
培養系において一般的にpHをコントロ−ルするためのpHとして具体的にはpH6.0〜pH8.0であり、好ましくは生理条件と同等のpHである。pHをコントロ−ルする為には二酸化炭素を用いてもよいし、他のいかなる緩衝液を用いてもよい。炭酸ガスの濃度としては具体的には培養系が5%の気相と接触している状態での溶存炭酸ガス濃度である。
【0154】
本明細書において「コロニー」とは、固型培地で1個の細胞から出発してできた可視的な集塊をいう。
【0155】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、粒子など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、粒子など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。このような説明書は、どのような媒体であってもよく、例えば、そのような媒体としては、紙媒体、伝送媒体、記録媒体などが挙げられるがそれらに限定されない。伝送媒体としては、例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、LANなどが挙げられるがそれらに限定されない。記録媒体としては、CD−ROM、CD−R、フレキシブルディスク、DVD−ROM、MD、ミニディスク、MO、メモリースティックなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0156】
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
【0157】
1実施形態において、本発明は、本発明のタンパク質(アクチビン)、あるいはその生物学的に活性な部分に結合するか、またはこれらの活性を調節する、候補化合物もしくは試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチの任意のものを使用して得られ得、これには、以下が挙げられる:生物学的ライブラリー;空間的にアクセス可能な平行固相もしくは溶液相ライブラリー;逆重畳を要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーもしくは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0158】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該分野において、例えば以下に見出され得る:DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994)J.Med.Chem 37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem 37:1233。
【0159】
化合物のライブラリーは、溶液中で(例えば、Houghten(1992)BioTechniques 13:412〜421)、あるいはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82〜84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555〜556)、細菌(Ladner 米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner、上記)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865〜1869)またはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386〜390;Devlin(1990)Science 249:404〜406;Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6378〜6382;Felici(1991)J Mol Biol 222:301〜310;Ladner上記)において示され得る。
【0160】
(疾患)
1つの局面において、本発明は、幹細胞の増幅を適用し得る任意の疾患、障害または異常状態、例えば、造血関連疾患、障害または異常状態を処置するための方法を提供する。
【0161】
造血関連の疾患としては、循環器系の疾患が挙げられ、例えば、循環器系(血液細胞など)であり得る。そのような疾患または障害としては、例えば、貧血(例えば、再生不良性貧血(特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、癌性貧血、二次性貧血、不応性貧血など)、癌または腫瘍(例えば、白血病)およびその化学療法処置後の造血不全、血小板減少症、急性骨髄性白血病(特に、第1寛解期(High−risk群)、第2寛解期以降の寛解期)、急性リンパ性白血病(特に、第1寛解期、第2寛解期以降の寛解期)、慢性骨髄性白血病(特に、慢性期、移行期)、悪性リンパ腫(特に、第1寛解期(High−risk群)、第2寛解期以降の寛解期)、多発性骨髄腫(特に、発症後早期)、先天性免疫不全症候群などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0162】
本明細書において「予防(する)」は、生物が病気にかかる(contract)かまたは異常な状態を発生する可能性を減少させることをいう。
【0163】
本明細書において「処置(する)」は、治療効果を有すること、および生物における異常な状態を少なくとも部分的に軽減するかまたは抑止することをいう。
【0164】
本明細書において「治療効果」は、異常な状態を引き起こすかまたはこれに寄与する阻害因子または活性化因子をいう。治療効果は、異常な状態の症状の1つ以上をある程度緩和する。異常な状態の処置に関して、治療効果とは、以下の1つ以上をいい得る:(a)細胞の増殖(proliferation)、増殖(growth)、および/または分化における増加;(b)細胞死の阻害(すなわち、遅らせることまたは停止させること);(c)変性の阻害;(d)異常な状態に関連する症状の1つ以上をある程度緩和する;および(e)罹患した細胞集団の機能を強化すること。異常な状態に対する効力を示す化合物は、本明細書中に記載されるように同定され得る。
【0165】
本明細書において「異常な状態」は、生物におけるその正常な機能から逸脱する、生物の細胞または組織における機能をいう。異常な状態は、細胞増殖、細胞分化、細胞シグナル伝達、または細胞生存に関連し得る。異常な状態としてはまた、造血障害、肥満、網膜変性のような糖尿病合併症、ならびにグルコースの取り込みおよび代謝における不規則性、ならびに脂肪酸の取り込みおよび代謝における不規則性が挙げられ得る。
【0166】
異常な細胞増殖状態としては、例えば、がん、新生物、腫瘍および炎症などが挙げられる。
【0167】
異常な分化状態としては、例えば、奇形、がんなどが挙げられる。
【0168】
異常な細胞シグナル伝達状態としては、例えば、異常な細胞分化が挙げられる。
【0169】
異常な細胞生存状態はまた、アポトーシス(プログラム細胞死)経路が活性化されるかまたは抑止される状態に関連する。多数のタンパク質キナーゼが、アポトーシス経路に関連している。タンパク質キナーゼのいずれか1つの機能における異常は、細胞不死または未熟な細胞死を生じ得る。
【0170】
別の局面において、本発明は、造血関連疾患、障害または異常状態のある(罹患しているおそれのある)被験体または上記障害を有する被験体を処置する、予防的方法および治療的方法の両方を提供する。
【0171】
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明の正常な遺伝子の核酸配列、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
【0172】
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
【0173】
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
【0174】
したがって、本発明では、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子を用いた遺伝子治療が有用であり得る。
【0175】
本明細書中で使用され、かつ、当該分野で理解されるように、用語「合成(synthesis)」または「合成する(synthesize)」とは、酵素的方法とは対照的に、純粋に化学的に生成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)をいう。従って、「全体が」(globally)合成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)は、その全体が化学的手段によって生成され、そして「部分的に」合成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)は、その得られた化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)の一部分のみが化学的手段によって生成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)を包含する。
【0176】
本明細書において使用される用語「領域」によって、生体分子の一次構造の物理的に連続した部分を意味する。タンパク質の場合、領域は、そのタンパク質のアミノ酸配列の連続した部分によって定義される。用語「ドメイン」は、本明細書中で、生体分子の既知の機能または推測されている機能に寄与する、その生体分子の構造部分をいうものとして定義される。ドメインは、領域またはその部分と同じ広がりを有し得;ドメインはまた、その領域の全てまたは一部に加えて、特定の領域と区別される生体分子の一部を組み込み得る。本発明のアクチビンのドメインの例としては、シグナルペプチド、細胞外(すなわち、N末端)ドメイン、ロイシンリッチ反復ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
(再生/治療/予防のための投与および組成物)
本発明は、被験体への有効量の本発明の化合物または薬学的組成物の投与による、神経疾患、障害または異常状態、あるいは造血関連疾患、障害または異常状態の処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、化合物は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
【0178】
本明細書において「診断、予防、処置または予後上有効な量」とは、それぞれ、診断、予防、処置(または治療)または予後において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。
【0179】
本発明が対象とする動物は、神経系または類似の系を有するものであれば、どの生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
【0180】
本発明の核酸分子またはポリペプチドが医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
【0181】
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどのポリペプチドまたはポリヌクレオチド、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
【0182】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0183】
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
【0184】
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。
【0185】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどは、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、座剤等の固形製剤、またはシロップ剤、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として経口または非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、上述のように、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、溶解補助剤、安定化剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドなど以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、経鼻、直腸、膣および経皮等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0186】
固形製剤における賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
【0187】
固形製剤における滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸末、コロイド状ケイ酸、タルクおよびポリエチレングリコール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0188】
固形製剤における結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、白糖、D−マンニトール、結晶セルロース、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、およびシェラック等が挙げられる。
【0189】
固形製剤における崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末、ラミナラン末、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトースおよび繊維素グリコール酸カルシウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0190】
固形製剤における崩壊阻害剤の好適な例としては、水素添加油、白糖、ステアリン、カカオ脂および硬化油等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0191】
固形製剤における吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0192】
固形製剤における吸着剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイド状ケイ酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0193】
固形製剤における保湿剤としては、例えば、グリセリン、デンプン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0194】
固形製剤における溶解補助剤としては、例えば、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0195】
固形製剤における安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0196】
固形製剤として錠剤、丸剤等を調製する際には、必要により胃溶性または腸溶性物質(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)のフィルムで被覆していてもよい。錠剤には、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠が含まれる。カプセル剤にはハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。座剤の形態に成形する際には、上記に列挙した添加物以外に、例えば、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセライド等を添加することができるがそれらに限定されない。
【0197】
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
【0198】
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0199】
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0200】
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0201】
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0202】
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0203】
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0204】
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0205】
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
【0206】
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
【0207】
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
【0208】
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版、その補遺またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
【0209】
様々な送達系が公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなど)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。
【0210】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物を、処置の必要な領域(例えば、中枢神経、脳など)に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、抗体を含む本発明のタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するために注意が払われなければならない。
【0211】
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。
【0212】
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、高分子材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。
【0213】
さらに別の実施形態において、制御された徐放系は、治療標的、即ち、脳の近くに置かれ得、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,(前出),第2巻,115〜138頁(1984)を参照のこと)。
【0214】
他の制御された徐放系は、Langerによる総説において議論される(Science 249:1527−1533(1990))。
【0215】
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0216】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどの投与量は、被験体の年齢、体重、症状または投与方法などにより異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり、経口投与の場合、0.01mg〜10gであり、好ましくは、0.1mg〜1g、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。非経口投与の場合、0.01mg〜1gであり、好ましくは、0.01mg〜100mg、0.1mg〜100mg、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。
【0217】
本明細書中、「投与する」とは、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、因子などまたはそれを含む医薬組成物を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、生物の細胞または組織に取り込むことを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例えば、同じ個体へ別々の静脈ラインを通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。
【0218】
異常な状態はまた、生物へのシグナル伝達経路に異常を有する細胞の群に化合物(本発明によって同定される薬剤など)を投与することによって予防または処置され得る。次いで、化合物を投与することの生物機能に対する効果が、モニターされ得る。この生物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギまたはサル(monkeyまたはape)などの実験動物、および最も好ましくは、ヒトである。
【0219】
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0220】
本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査室の結果またはアクチビンなどに関連する疾患(例えば、血液系疾患)に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、アクチビンなどに関連する疾患(例えば、血液系疾患)の再発により再開することができる。
【0221】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える医薬品パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
【0222】
血漿、腫瘍および主要器官中での薬物および代謝産物の血漿半減期および体内分布はまた、障害を阻害するのに最も適切な薬物の選択を容易にするように決定され得る。このような測定が行われ得る。例えば、HPLC分析は、薬物で処置された動物の血漿において行われ得、放射線標識された化合物の位置が、X線、CATスキャンおよびMRIのような検出方法を用いて決定され得る。スクリーニングアッセイにおいて強力な阻害活性を示すが、薬物動態学的特徴が不十分な化合物は、化学構造の変更や再試験によって最適化され得る。この点について、良好な薬物動態学的特徴を示す化合物が、モデルとして使用され得る。
【0223】
毒性研究はまた、本発明の組成物を試験することによって行われ得る。例えば、毒性研究は、以下のような適切な動物モデルにおいて行われ得る:(1)化合物がマウスに投与される(未処置のコントロールマウスもまた、使用されるべきである);(2)各々の処置群中の1匹のマウスから尾静脈を介して血液サンプルを周期的に得る;そして(3)上記サンプルを、赤血球および白血球の数、組成物ならびにリンパ球と多形核細胞との割合について分析する。各々の投薬レジメンについての結果とコントロールとの比較は、毒性が存在するか否かを示す。
【0224】
各々の毒性研究の終了の際に、動物を屠殺することによって、さらなる研究を行い得る(好ましくは、American Veterinary Medical Association guidelines Report of the American Veterinary Medical Assoc.Panel on Euthanasia,(1993)J.Am.Vet.Med.Assoc.202:229−249に従う)。次いで、各処置群からの代表的な動物が、転移、異常な病気または毒性の直接的な証拠のために全体的な検屍によって試験され得る。組織における全体の異常が記載され、組織が組織学的に試験される。体重の減少または血液成分の減少を引き起こす化合物は、主要な器官に対する有害作用を有する化合物と同様に好ましくない。一般的に、有害作用が大きいほど、その化合物は好ましくない。
【0225】
(造血系細胞の分化)
造血細胞は骨髄の中でつくられ、分化して、赤血球、血小板、白血球などになり末梢血液の中を流れる。骨髄系細胞の分化を見ると、一番大元には多能性幹細胞があり、次に造血系細胞に特化した造血幹細胞があり、多能性前駆細胞へと分化し、さらに骨髄球系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞へと分化する
骨髄系では多能性幹細胞からCFU−GEMMという細胞へ分化する。そのCFU−GEMという細胞からCFU−GMという細胞へ、次いで骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球という形で分化する。これらは骨髄中に存在する細胞であり、これが分化すると好中球となって末梢血中を流れる。次のラインへいくと、CFU−GMという細胞から単球の方へ行き、単芽球、前単球、単球と分化する。この単球が末梢血へあらわれる。3番目のラインでは、CFU−GEMMという細胞からBFU−E細胞へと分化し、それから前赤芽球、赤芽球、赤血球へと分化する。また、巨核球系というものもあり、CFU−Meg(メガカリオサイトの略)、巨核芽球、巨核球、血小板へと分化する。
【0226】
このような分化の過程で白血病は、多能性幹細胞の異常に起因する。したがって、本発明は、このような異常を改善するという意味で白血病の治療にも応用され得る。
【0227】
リンパ球系では、CMLでは、多能性幹細胞からリンパ系の幹細胞へと分化し、B細胞系とT細胞系とに分かれる。それと別個にNK細胞の方へ分かれていくというラインが存在する。B細胞系のラインといたしましては前駆B細胞、前駆前駆B細胞(pre−pre−B−cell)、初期B細胞(early−B−cell)などへと分化し、中間B細胞(intermediate− B−cell) 、成熟B細胞(matureB−cell )、形質球様細胞(plasmacytoid− B−cell) 、形質細胞(plasma−cell)へと分化する。T細胞系としては、胸腺前駆細胞、未成熟胸腺細胞、共通胸腺細胞(common thymocyte)、成熟胸腺細胞へと分化する。別のルートとしてヘルパー/インデューサーT細胞へいく系統と、成熟胸腺細胞から抑制/細胞傷害性T細胞へと分化する系統が存在する。
【0228】
(造血幹細胞の同定法)
以下に代表的な造血幹細胞の同定法を説明する。
【0229】
(a.脾コロニー形成法)
致死量放射線照射したマウスに同系マウスの造血細胞を静注すると、8〜14日目に脾臓表面に隆起(コロニー)が認められる。各々のコロニーが種々の血液細胞から成っているが、1個のコロニーは1個の幹細胞に由来しており、この脾コロニーを形成する母細胞はCFU−S(colony forming unit in spleen)と呼ばれる。8日目に形成される脾コロニー(Day 8 CFU−S)を形成する細胞は赤芽球が主体であるのに対し、12日目形成される脾コロニー(Day 12 CFU−S)は、赤芽球のほかに顆粒球や巨核球、更にはBリンパ球まで含み増殖能も高く、多能性幹細胞に由来している。Day 12 CFU−Sは多能性幹細胞の指標として用いられている。また、抗癌剤である5−fluoro−uracil(5−FU)投与後に残存する造血幹細胞は非常に高い増殖能を示すことより、CFU−Sの母細胞にあたるpre−CFU−Sと呼ばれる。
【0230】
(b.長期骨髄再構築能)
移植した細胞により致死量放射線照射されたマウスの造血系を再構築し、長期間維持する事ができるか否かを観察する方法である。現在、造血幹細胞の多分化能と自己複製能をみる上で最も信頼性が高い。マーカーとしては、ネオマイシン耐性遺伝子の発現や、雄雌の性染色体、コンジェニックマウス等が用いられている。この方法では定量化が困難であったが、最近ではドナーの造血細胞とともにレシピエントの造血細胞を移植し、その再構築の割合を調べる競合再集団アッセイが用いられるようになった。また、ヒトにおいてはマウスのようにin vivoの移植実験系を組むことは困難であるので、リンパ球が欠如するために拒絶反応を起こさない免疫不全マウス(scid mouse)にヒトの造血幹細胞を移植する Scid−huマウスが用いられる。この系では、マウスの中で長期間ヒトの造血機構を維持することができる。
【0231】
(c.インビトロコロニー法)
造血細胞(骨髄細胞・脾細胞等)を各種サイトカイン存在下にメチルセルロース、軟寒天等の半固形培地中で培養し、形成された細胞集団(コロニー)から造血幹細胞の数や性質を推定する方法である。このコロニーを分析することにより、in vitroにおいて種々の造血前駆細胞や造血幹細胞の分化・増殖過程の観察や測定が可能になっている。混合コロニー(CFU−Mix,CFU−GEMM)や分化能の高いコロニー(HPP−CFC;high proliferative potential colony forming cells)は、単系統のコロニーを形成する細胞(CFU−GM,BFU−E)等より未分化であり、芽球コロニー形成細胞(CFU−blast)は最も未分化であるとされている。この方法によりin vitroにおいて造血幹細胞や前駆細胞の増殖・分化過程をとらえることができる。さらに、近年では無血清培地を用いたり造血幹細胞の単細胞培養を行うことにより、造血に関与する種々のサイトカインの作用を推定することができる。
【0232】
(d.ストロマ細胞との共培養系)
造血幹細胞の分化・増殖には造血微小環境が密接に関与している。1977年Dexterらは、骨髄間質(ストロマ)細胞上で造血幹細胞が数ヵ月以上の長期間にわたって培養可能であることを示した(Dexter培養法)が、その後造血を維持するストロマ細胞株が次々に樹立され、in vitro において造血微小環境の再現が可能になった。この培養系では、造血前駆細胞は早期にコロニー形成能を失うのに対して、未分化な造血幹細胞は長期間コロニー形成能や骨髄再構築能を維持できる。このため、未分化な造血幹細胞活性の測定にも用いられる。特にヒトにおいてはin vivoの系が用いにくいため、ストロマ細胞上で長期間コロニー形成能を維持できる細胞をLTC−IC(Long term culture−initiating cells)として未分化な造血幹細胞の指標として用いられている。
【0233】
(発明を実施するための最良の形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0234】
1つの局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するための方法を提供する。この方法は、A)未分化細胞を提供する工程と、B)該未分化細胞を解離させる工程と、C)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、を包含する。この方法の代表例を図1に示す。アクチビンの濃度を調節することによって本発明は、種々の分化を誘導することに成功した。このようなことは従来知られておらず、本発明は、従来技術に対して顕著な効果を示す。例えば、単独培養でのアニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件であれば、アクチビンを添加しないときは、不整形表皮が形成され、1ng/ml程度であれば、血球が形成され、10ng/ml程度であれば、筋肉および脊索が形成され、100ng/ml程度であれば、内胚葉性細胞が形成される。図2には、単独培養でのアニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件での培養例を示す。本発明において特に意図される血島については、血島に分化する条件として、解離した10枚のアニマルキャップをアクチビン(Human recombinant Activin A)1 ng/mlで3時間処理して再集合させ、サンドイッチ培養すると血島に分化するという条件が確定された。
【0235】
ここで、1つの実施形態において、上記未分化細胞は後期胞胚に由来する細胞をもちいることができる。このような後期胞胚は、比較的数が多く取れることおよび未分化能を十分有していることから好ましいが、それに限定されない。
【0236】
1つの実施形態において、本発明は、さらにD)C)工程により得られた細胞を未分化細胞と接触させる工程を包含する。このような場合、さらに分化効率が良くなることが予想外に観察された。図3には、接触(ここでは、サンドイッチ)の場合のアニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件での培養例を示す。
【0237】
別の好ましい実施形態を図4に示す。ここでは、時間条件を5時間にしている。5時間での例は、図5に単独培養および図6にサンドイッチ培養の例を示す。
【0238】
他の好ましい実施形態を示す。ここでは、時間条件を10時間にしている。10時間での例は、図11〜16に示す。
【0239】
別の実施形態において、本発明におけるアクチビンと細胞との接触は、未分化細胞のシートで前記C)工程で得られた細胞を挟み込むことによって達成される。理論に束縛されることを望まないが、サンドイッチ状態での培養が分化を達成するのに適切な形態であったことが一つの理由であると考えられるがそれに限定されない。
【0240】
1つの実施形態において、本発明において使用される未分化細胞は、後期胞胚の動物極の細胞を含む。理論に束縛されることを望まないが、動物極を有すること(いわゆる「アニマルキャップ」)を有することによって、アクチビンへの反応性が良くなるものと考えられるがそれに限定されない。
【0241】
別の実施形態において、本発明では、アクチビンと未分化細胞との接触は、最初の接触から最終分化まで未分化細胞と接触させるに十分である時間行われる。このような時間は、通常少なくとも1日間であり、より好ましくは、1日間以上3日間以内である。
【0242】
本発明において使用されるアクチビンは、アクチビンとしての作用を有する限り、どのような形態・サブタイプであってもよく、例えば、アクチビン−A、アクチビン−B、インヒビンおよびアクチビン−Cなどを挙げることができるがそれらに限定されない。アクチビンは、動物において非常に保存されており、両生類のアクチビンが哺乳類生物に対しても効果を有することから、本明細書においては、任意のアクチビンが任意の生物において使用され得ることが理解される。
【0243】
1つの実施形態において、本発明において使用されるアクチビンは、配列番号2、4、6、8、10または12のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む。
【0244】
1つの実施形態において、本発明において使用されるアクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で付与される。この濃度で与えられたアクチビンは、血島を誘導する。5ng〜10ngであれば、筋肉細胞または脊索細胞が誘導される。50ng〜100ngでは、心臓細胞が誘導される。研究ではアクチビンA、アクチビンAB、アクチビンBは同じ誘導能を持つことが報告されている(Nakamura et al.,Isolation and characterization of native activin B.J Biol.Chem.1992,267,16385−9)。アクチビン−AはインヒビンβAの二量体である(ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192;配列番号1および2)。アクチビン−ABはインヒビンβAとインヒビンβBの二量体である(ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193;配列番号3および4)。アクチビン−BはインヒビンβBの二量体である。アクチビン−CはインヒビンβCの二量体である(ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538;配列番号5および6)。インヒビンはインヒビンαの二量体である(ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191;配列番号7および8)。
【0245】
別の実施形態において、本発明において使用される造血幹細胞は、幹細胞白血病タンパク質(SCL)マーカーを発現することを特徴とする。
【0246】
1つの実施形態において、本発明において実施される解離は、Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される。
【0247】
別の実施形態において、本発明において実施される解離は、少なくとも10分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される。
【0248】
別の実施形態において、本発明において実施される解離は、10分間から20分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される。
【0249】
これらの解離は、本発明において分化を誘導するのに望ましい。このような処理が好ましいことは、従来技術では明らかではなかった。
【0250】
好ましい実施形態において、本発明の方法では、解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程(C工程)において前記細胞の解離再集合体が形成される。解離再集合体の形成は、通常、少なくとも30分前記培地中で培養することによって達成され、より長く培養してもよい。
【0251】
別の実施形態において、本発明におけるアクチビンの処理は、少なくとも3時間行われるが、これに限定されず、効果が見られる場合は、これより短くてもよく、効果が不十分な場合は3時間以上行っても良い。
【0252】
好ましい実施形態では、使用される未分化細胞はアニマルキャップにより提供される。アニマルキャップを使用するという発想は、従来の造血幹細胞調製では存在しなかった。本発明は、このような新規概念を利用して、効率よく造血幹細胞を調製する方法を提供する。本発明において、アニマルキャップは、好ましくは、5〜10枚使用されるがそれに限定されない。
【0253】
1つの実施形態では、本発明は、解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程において、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞とともに培養する工程をさらに包含する。
【0254】
さらに好ましくは、本発明の方法では、解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程において、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞でサンドイッチ培養する工程をさらに包含する。
【0255】
1つの実施形態では、使用される細胞は、脊椎動物細胞であり、好ましくは、両生綱動物細胞(例えば、アフリカツメガエルのようなカエル)が標的とされるが、それに限定されない。
【0256】
別の局面において、本発明は、本発明の造血幹細胞を調製するための方法によって調製された細胞を提供する。このような細胞は、造血幹細胞として非常に有用である。
【0257】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の造血幹細胞を調製するための方法によって調製された血島を提供する。このような血島は、従来技術では誘導することができなかったことから、人工物としては、新規のものである。
【0258】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用される培地を提供する。この培地は、Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする。このような培地が、造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用されることは従来知られていなかったので、本発明は、Ca2+もMg2+も含まない培地の新規用途を提供する。ここで使用される培地の基本成分は、使用される細胞が生存する限り、どのようなものでも良いことが理解される。
【0259】
特定の実施形態では、本発明の培地(Ca2+もMg2+も含まない培地)は、58mM NaCl,0.67mM KCl、3.0mM ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸および100mg/L 硫酸カナマイシン、pH7.4の組成を含む。
【0260】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を造血幹細胞に分化させる工程において使用される培地を提供する。この培地は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量(例えば、0.5〜1ng/mlの濃度、好ましくは約1ng/ml)含むことを特徴とする。0.5〜1ng/mlの濃度のような特定の量により、造血幹細胞を誘導することができることは従来示唆すらされておらず、本発明は、顕著な効果を提供する。
【0261】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を誘導するための方法において使用する培地の組み合わせを提供する。このような組み合わせの培地(セットまたはキット)は、Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地と、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地とを含む。このような培地の組み合わせが使用されることが知られていなかった。
【0262】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するためのキットを提供する。このようなキットは、a)該未分化細胞を解離させる解離手段と、b)該未分化細胞を造血幹細胞に分化させる分化手段と、c)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間分化手段により該未分化細胞を分化させることを指示する指示書と、を備える。ここで、好ましくは、分化手段は、アクチビンを含む培地であることを特徴とする。分化手段は、本明細書において上述した説明により当業者が適宜設計することができる。
【0263】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するための、アクチビンの使用を提供する。ここで使用されるアクチビンは、本明細書において上記した任意の実施形態を使用することができる。
【0264】
別の局面において、本発明は、造血幹細胞を調製するための組成物であって、該組成物は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含有する、組成物を提供する。ここで使用される構成要件は、本明細書において上記した任意の実施形態を使用することができる。好ましくは、アクチビンは、0.5〜1ng/ml(好ましくは、約1ng/ml)の濃度で存在する。
【0265】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0266】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。動物の取り扱いは、東京大学動物実験施設において規定される基準を遵守し、動物愛護精神に則って行った。
【0267】
(実施例1)
現在までに報告されているアニマルキャップを用いた器官形成の多くは、シート状のアニマルキャップにアクチビン処理を行い、単独培養もしくはサンドイッチ培養を行っていた。この方法ではアクチビンシグナルを受け取る細胞と受け取らない細胞が混在し不均一であった。
【0268】
本実施例では解離してアクチビン処理を行うことにより、一つ一つの細胞が均一にアクチビンシグナルを受け取る状態にし、単独培養およびサンドイッチ培養を行った(図7)。
【0269】
(未分化細胞の取り出し)
アフリカツメガエルの未分化細胞を、次に述べるような方法で取り出した。後期胞胚に達したアフリカツメガエル胚の動物極にある未分化で多分化能を持つシート状の細胞を、培養液(Steinberg’s Solution (SS);58mM NaCl,0.67mM KCl,0.34mM Ca (NO3)2,0.83 mM MgSO4,3.0 mM hydroxyethylpiperazinyl ethanesulfonic acid,and 100 mg/L kanamycin sulfate,pH 7.4)を満たした3%アガロースを敷いたシャーレに移し、実体顕微鏡下で0.5ミリ角に取り出した。
【0270】
(細胞の解離)
はじめに、アクチビン処理を行うための前処理として、アフリカツメガエル後期胞胚から取り出したシート状の未分化な細胞を次に述べるような方法で解離した。カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含まないSS(無Ca2+、Mg2+スタインバーグ溶液(Ca2+,Mg2+ Free Steinberg’s Solution);58mM NaCl,0.67mM KCl,3.0mMヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸,および100mg/L硫酸カナマイシン,pH7.4)を100μL満たした培養用の容器(例えば96穴の培養用ディッシュ)へ、取り出した。およそ10枚のシート状の未分化な細胞(ステージ8.5のアニマルキャップを0.5ミリ角に切り出した場合、450個)を移し、20分間静置させた。この処理により、シート状の未分化な細胞の細胞間相互作用が緩くなり、シート状ではなく、ひとつひとつの細胞が解離した。アフリカツメガエルは受精すると卵割する。この卵割は第12分裂までほぼ同調して起こるとされている。卵割初期の受精卵(胚)を桑実胚と呼ぶ。卵割が進み、細胞の大きさが小さくなり、胚の内部に胞胚腔と呼ばれる腔が見られるようになる時期の胚を胞胚と呼ぶ。胞胚は初期胞胚(ステージ7)、中期胞胚(ステージ8)、後期胞胚(ステージ9)に大別される。アフリカツメガエルでは、中期胞胚でmRNAの転写が開始するとされている。後期胞胚以降では、細胞分裂の同調性が失われる。後期胞胚に続いて、原腸陥入運動を伴う形態形成運動が開始する。原腸陥入運動に伴って、外胚葉、中胚葉、内胚葉が形成される。この発生段階にいる胚を、原腸胚と呼ぶ。ステージ8.5とは、中期胞胚と後期胞胚の中間に相当する(概念的な定義)。アフリカツメガエルの卵には栄養(卵黄)が詰まっている。これは重たいので、通常重力方向に偏って存在している。この卵黄が多い側は植物極、反対側を動物極と呼ばれている。ツメガエルの卵の動物極側の表層は黒い色素があり、通常この黒い色素の面(動物極側)を上に向けている。色の付いていない卵黄が多い植物極側は、常に重力方向に従って下を向いている。胞胚腔は、動物極側に形成され、胞胚腔の上端から上を動物極、胞胚腔の下端から下を植物極、その中間を帯域と呼んでいる。この胞胚腔の上の動物極側の細胞をアニマルキャップと呼ぶ。アニマルキャップの細胞は、未分化で多分化能を持つことが知られている。これまでに、中胚葉誘導因子の探索における反応系として、また試験管内での組織形成の出発材料として、また過剰発現系による遺伝子の機能解析などに利用されている。初期胞胚、中期胞胚、後期胞胚のアニマルキャップは、経験的にアクチビンに対する感受性が異なることが知られている。初期胞胚では余り感受性は無い。中期胞胚で最もアクチビンに対する感受性は高いとされている。後期胞胚は、中期胞胚と比べてアクチビンに対する感受性は低いとされる。原腸胚では、さらに感受性は落ちるとされる(Abe et al., 2004)。
【0271】
(血島(造血幹細胞)の誘導)
細胞を解離したあと、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含まないSSを除き、1ng/mLのアクチビン(0.1% BSAを含むSSで調製したもの)を添加し、ピペット(例えばパスツールピペットなど)で撹拌し、3時間静置した。この処理により、細胞は再集合しながらアクチビン処理を受けた。こうしてアクチビン処理を受けた解離再集合体を0.1% BSAを含むSSを満たした培養用の容器(例えば12穴の培養用ディッシュ)へ移した。次いで、解離再集合体をSSで満たした3%アガロースを敷いたシャーレに移し、5等分した。この5等分した解離再集合体を、それぞれ2枚のシート状の未分化な細胞(アフリカツメガエル後期胞胚の動物極の細胞を0.7ミリ角で取り出したもの)で挟み、完全に接着するまで10分静置した。この外植体を0.1% BSAを含むSSで満たした培養用の容器(例えば96穴の培養用ディッシュ)に移し、3日間培養を継続すると、不整形表皮に囲まれた血島(造血幹細胞)が高率に誘導された(図8a)。また、血島(造血幹細胞)は透明に膨らんだ外植体の内部に形成されるので、血島(造血幹細胞)を特定して観測することが容易であった(図8b)。なお、この培養過程において、解離再集合体をシート状の未分化な細胞で挟まずに培養した場合や、アクチビン処理濃度や処理時間を変えた場合は、血島(造血幹細胞)は誘導されなかった。
【0272】
(血島(造血幹細胞)の同定)
上述のごとく、誘導された血島(造血幹細胞)は、血島特有の組織構造を持ち(図8a)、また、RT−PCR法にて血島(造血幹細胞)に特有なタンパク質(マーカータンパク質)であるSCL(stem cell leukemia protein)が発現していることが確認された(図9)。
【0273】
(実施例2:解離再集合方法(1):アクチビン処理(3時間))
後期胞胚(st.8.5)のアニマルキャップを0.5ミリ角に切り出し、10枚集めた。これをCa2+,Mg2+を含まないスタインバーグ氏液で20分処理した後、このスタインバーグ氏液を除き、Ca2+,Mg2+を含むアクチビン溶液を加え、ピペッティングをして細胞を解離させた。
アクチビンを3時間処理している間に細胞を再集合させた。この解離再集合体を0.1%BSAを含むスタインバーグ氏液で洗った後、単独で培養または後期胞胚から切り出した2枚のアニマルキャップでサンドイッチ培養した。外植体の外形と分化した組織を観察し、遺伝子の発現を調べた(図10)。
【0274】
(結果)
無処理の解離再集合体を単独で培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。アクチビン処理1ng/ml処理では透明に膨らみ、アクチビン10ng/ml処理では外植体は伸張した。アクチビン100 ng/ml処理では、白い塊様になった(図11)。
【0275】
解離再集合体の単独培養の組織切片を図12に示す。
【0276】
各種マーカーの発現を観察したところ、アクチビン1n/gmlで血球、10 ng/mlで筋肉、100 ng/mlで内胚葉性細胞が見られた(図13)。
【0277】
解離再集合体のサンドイッチ培養の外形を観察した(図14)。
【0278】
無処理の解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。
アクチビン処理1ng/ml処理でも外植体は不整形表皮様の外形になった。アクチビン10ng/ml処理では鰭様の構造がみられた。アクチビン100 ng/ml処理では、セメント腺を伴う透明に膨らんだ外形になった。
【0279】
解離再集合体のサンドイッチ培養の組織切片を観察した(図15)。
【0280】
アクチビン1 ng/mlで血島が分化しているのが見られた(図16)。
【0281】
(実施例3:解離再集合方法(2):アクチビン処理(5時間))
後期胞胚(st.8.5)のアニマルキャップを0.5ミリ角に切り出し、10枚を集めた。これをCa2+,Mg2+を含まないスタインバーグ氏液で20分処理した後、このスタインバーグ氏液を除き、Ca2+,Mg2+を含むアクチビン溶液を加え、ピペッティングをして細胞を解離した。
【0282】
アクチビンを5時間処理している間に細胞を再集合させた。この解離再集合体を0.1%BSAを含むスタインバーグ氏液で洗った後、単独で培養または後期胞胚から切り出した2枚のアニマルキャップでサンドイッチ培養した。外植体の外形と分化した組織を観察し、遺伝子の発現を調べた(図17)。
【0283】
(結果)
無処理の解離再集合体を単独で培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。アクチビン処理1ng/ml処理では透明に膨らみ、アクチビン10ng/ml処理では外植体は伸張した。アクチビン100 ng/ml処理では、白い塊様になった(図18)。
【0284】
アクチビン100ng/mlで内胚葉性細胞が見られた(図19、図20)。
【0285】
無処理の解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体は不整形表皮様の外形になった。
アクチビン処理1ng/ml処理では透明に膨らみ、アクチビン10ng/ml処理では鰭様の構造がみられた。アクチビン100ng/ml処理では、拍動するものとセメント腺を伴うものの両方が見られた(図21)。
【0286】
アクチビン10ng/mlで胴尾部構造が見られた。100ng/mlでは、セメント腺や神経の塊を含む前方構造と心臓に分化したものが、それぞれ50%見られた(図22、図23)。
【0287】
(考察)
解離したアニマルキャップへアクチビンを処理して再集合体を形成して単独培養したところ、処理時間の長さによらず、中濃度のアクチビン処理で筋肉、高濃度のアクチビン処理で内胚葉性細胞が分化した。
【0288】
3時間アクチビン処理した解離再集合体を無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したところ、低濃度のアクチビン処理(1ng/ml)で血島が分化した。
【0289】
5時間アクチビン処理した解離再集合体を無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したところ、高濃度のアクチビン処理で前方神経と心臓が分化した。
【0290】
(実施例4:解離再集合方法(3):アクチビン処理(シート5枚、3時間))
実施例2において、シート10枚使用する代わりにシート5枚で、アクチビン暴露3時間の処理を行う実験を本実施例で行った。他の手順は実施例2と同様であった。
【0291】
その結果、図2および3に示すように、10枚使用したときと同様の結果を得ることができた。
【0292】
従って、使用する細胞シートの数は、ある程度の密度幅があることが分かる。
【0293】
(実施例5:解離再集合方法(4):アクチビン処理(シート5枚、5時間))
実施例3において、シート10枚使用する代わりにシート5枚で、アクチビン暴露5時間の処理を行う実験を本実施例で行った。他の手順は実施例3と同様であった。
【0294】
その結果、図5および6に示すように、10枚使用したときと同様の結果を得ることができた。
【0295】
従って、使用する細胞シートの数は、ある程度の密度幅があることが分かる。
【0296】
(実施例6:他の溶液での実施)
実施例1および2に示した手順において使用したスタインバーグ氏液の代わりに他の溶液を用いて、同様の効果が得られるかを確かめる。
【0297】
他の溶液としてMMR(pH7.5、0.1M NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、2mM CaCl2、および5mM HEPES)を使用する。
【0298】
実験すると、スタインバーグ氏液と同様の分化効果を観察することができる。
【0299】
(実施例7:他のアクチビンでの実証)
実施例1において用いたアクチビン−Aの代わりに、アクチビン−B、アクチビン−Cおよびインヒビンでも同様の効果を得ることができるかを確認する。薬剤として、以下を用いる。これらは、遺伝子情報から組み換えタンパク質を産生して実施することができるか、または、アクチビンA(Human Activin A, R&D, カタログ番号#338-AC-005)、アクチビンAB(Human ActivinAB, R&D, カタログ番号#1066-AB-005)、アクチビンB(Human Activin B, R&D, カタログ番号#659-AB-005)を購入して使用することができる。
【0300】
アクチビン−A:インヒビンβAの二量体(ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192;配列番号1および2(核酸およびアミノ酸))
アクチビン−AB:インヒビンβAとインヒビンβBの二量体(ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193;配列番号3および4(核酸およびアミノ酸))
アクチビン−B:インヒビンβBの二量体。
【0301】
アクチビン−C:インヒビンβCの二量体(ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538;配列番号5および6(核酸およびアミノ酸))
インヒビン:インヒビンαの二量体(ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191;配列番号7および8(核酸およびアミノ酸))
アフリカツメガエルアクチビンA(X68250;配列番号9および10)
アフリカツメガエルインヒビンβB:(S61773;配列番号11および12)。
【0302】
以上の実験では、以下の文献を参酌することができる。
Nakamura etal., Isolation and characterization of native activin B. J Biol. Chem. 1992,267, 16385-9
Uchiyama and Asashima, Specific erythroid differentiation of mouse erythroleukemia cells by activins and its enhancement by retinoic acids. Biochem Biophys. Res. Commun.1992, 187, 347-52
Fukui et al.,Isolation and characterization of Xenopus follistatin and activins. Dev. Biol.1993, 159, 131-9
Fukui et al.,Identification of activins A, AB, and B and follistatin proteins in Xenopusembryos. Dev. Biol. 1994, 163, 279-81
Nakano et al.,Comparison of mesoderm-inducing activity with monomeric and dimeric inhibin alpha and beta-A subunits on Xenopus ectoderm. Horm. Res. 1995, 44, Suppl. 2,15-22。
【0303】
(実施例8:アニマルキャップを取り出すタイミングについての最適例の検証)
次に、アニマルキャップを取り出すタイミングについて最適例を検証する。実施例1において、取り出すアニマルキャップについて以下を検証する。
ステージ7
ステージ8
ステージ8.5
ステージ9
ステージ10
アニマルキャップを取り出すタイミングに関しては、上記に示した各発生段階でアニマルキャップを取り出して細胞を解離し、アクチビン1 ng/mlで処理して細胞を再集合させてサンドイッチ培養を行うことで検証した。血島が最も高率に形成された発生段階ステージ8.5を採用することにした。
【0304】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0305】
本手法により、これまで実現されていなかった未分化な細胞からの血島(造血幹細胞)形成を誘導することがはじめて実現された。これらの血島(造血幹細胞)は、これらの造血幹細胞形成に関与するタンパク質などが特異的に欠如、あるいは異常発現しているヒトなどの疾病の診断や、白血病などの造血幹細胞の欠陥や欠損などに起因するヒトなどの異常や疾病を治療する目的などに有用な材料を提供する可能性がある。また、そのような異常や疾病に関する研究のためのよい材料を提供することや、それらの異常や疾病を治療するための薬剤の開発における有用なアッセイ系の材料を提供することも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0306】
【図1】図1に本発明の代表的な方法のスキームを示す。図1では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図が示されている。アフリカツメガエル後期胞胚からアニマルキャップを切り出し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを除いたスタインバーグ氏液中で細胞を解離し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含むスタインバーグ氏液で調製したアクチビンで3時間および5時間処理した。このアクチビン処理した解離再集合体を単独で培養した場合と、無処理のアニマルキャップでサンドイッチ培養したときの組織分化を調べた。その結果、アクチビン処理を3時間行ってから単独培養した解離再集合体はアクチビン濃度0ng/mlでは不整形表皮に、1ng/mlでは血球や間充織に、10 ng/mlでは筋肉に、100 ng/mlでは内胚葉性細胞にそれぞれ分化していた。一方、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養したとき、アクチビン処理濃度 0 ng/mlでは不整形表皮に、1 ng/mlでは血島に、10 ng/mlでは前腎管に、100 ng/mlではセメント腺に分化しているのが観察された。この実験により、アクチビン処理した解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体はアクチビンの濃度および処理時間依存的分化を示すこと、またアクチビン 1 ng/ml処理を3時間行った解離再集合体をサンドイッチ培養することにより高率に血島が誘導されることが分かった。
【図2】図2には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件での単独培養での培養例を示す。この図では、組織切片写真を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉脊索が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【図3】図3には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間 3時間の条件でのサンドイッチ培養での培養例で見られた写真を示す。Aには、サンドイッチ培養の外形を示し、Bには、組織切片写真を示す。AおよびBとも、左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、前腎管が見られ、100ng/ml処理ではセメント腺が見られた。
【図4】図4に本発明の代表的な方法のスキームの別の例を示す。図4では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図においてアニマルキャップ5枚およびアクチビン処理5時間の例が示されている。他の説明は、図1と同様である。
【図5】図5には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間5時間の条件での単独培養での培養例で見られた写真を示す。Aには、組織外形を示し、Bには、組織切片写真を示す。AおよびBとも、左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では筋肉形成が観察され、10ng/ml処理では、脊索が見られ、100ng/ml処理では心臓が見られた。
【図6】図6には、アニマルキャップ5枚、アクチビン処理時間5時間の条件でのサンドイッチ培養での培養例で見られた写真を示す。Aには、組織外形を示し、Bには、組織切片写真を示す。AおよびBとも、左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、アニマルキャップ5枚、アクチビン1 ng/ml、5時間処理、サンドイッチ培養では血球はできても血島はできない。10ng/ml処理では、神経およびセメント腺が見られた。
【図7】図7は、本発明の方法における、解離のイメージ図である。
【図8】図8は、未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞)の組織切片の光学顕微鏡写真(a)と、血島を含む外植体の光学顕微鏡写真(b)を示す。
【図9】図9は、アクチビンによる遺伝子マーカー発現(上からSCL、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。1〜4レーン;各濃度でアクチビン処理後、未分化な細胞シートで挟んで1日培養したもの。レーン5のWE(whole embryo)は、発生段階が20に達した無処理の全胚であり、SCLはStem cell leukemia protein、またODC(ornithine decarboxylase)は、すべての発生時期で安定して発現するので基準資料して用いている。
【図10】図10に本発明の代表的な方法のスキームの別の例を示す。図10では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図においてアニマルキャップ5枚およびアクチビン処理3時間の例が示されている。他の説明は、図1と同様である。
【図11】図11は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体を単独で培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図12】図12は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体の単独培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成および体腔上皮形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られた。
【図13】図13は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間でのアクチビンによる遺伝子マーカー発現(上からedd(内胚葉性細胞マーカー)、Hex(肝臓マーカー)、ms−アクチン(筋肉マーカー)、表皮ケラチン(表皮マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では表皮が見られた。
【図14】図14は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図15】図15は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間での解離再集合体のサンドイッチ培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、前腎管が見られ、100ng/ml処理ではセメント腺が見られた。
【図16】図16は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理3時間でのアクチビンによる遺伝子マーカー発現(上からotx−2(前脳マーカー)、nrp−1(神経マーカー)、SCL(血島マーカー)、aml−1(血島マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では表皮が見られた。
【図17】図17に本発明の代表的な方法のスキームの別の例を示す。図10では、未分化細胞からの血島(造血幹細胞)の誘導の概略図においてアニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間の例が示されている。他の説明は、図1と同様である。
【図18】図18は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体を単独培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図19】図19は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体の単独培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、1ng/ml処理では血島形成が観察され、10ng/ml処理では、脊索が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【図20】図20は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間でのアクチビンによる単独培養での遺伝子マーカー発現(上からedd(内胚葉性細胞マーカー)、Hex(肝臓マーカー)、ms−アクチン(筋肉マーカー)、表皮ケラチン(表皮マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【図21】図21は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体をサンドイッチ培養した外植体の外形を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。
【図22】図22は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間での解離再集合体のサンドイッチ培養の組織切片を示す。左上は0ng/ml処理、右上は1ng/ml処理、左下は10ng/ml処理、および右下は100ng/ml処理を示す。未処理では不整形表皮が観察され、アニマルキャップ10枚、アクチビン1 ng/ml、5時間処理、サンドイッチ培養では血島はできない。10ng/ml処理では、脊髄が見られ、100ng/ml処理ではセメント腺、体腔上皮および心臓が見られた。
【図23】図23は、アニマルキャップ10枚およびアクチビン処理5時間でのアクチビンによるサンドイッチ培養での遺伝子マーカー発現(上からotx−2(前脳マーカー)、nrp−1(神経マーカー)、SCL(血島マーカー)、aml−1(血島マーカー)、ODC R+およびODCR−)を検証するためのPCRの結果である。未分化細胞から誘導された血島(造血幹細胞、レーン2)で血島(造血幹細胞)マーカーのSCLの発現が見られた。アクチビン1ng/ml処理では血球形成が観察され、10ng/ml処理では、筋肉が見られ、100ng/ml処理では内胚葉性細胞が見られた。
【配列表フリーテキスト】
【0307】
(配列表の説明)
配列番号1は、ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192の核酸配列である。
配列番号2は、ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192のアミノ酸配列である。
配列番号3は、ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193の核酸配列である。
配列番号4は、ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193のアミノ酸配列である。
配列番号5は、ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538の核酸配列である。
配列番号6は、ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538のアミノ酸配列である。
配列番号7は、ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191の核酸配列である。
配列番号8は、ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191のアミノ酸配列である。
配列番号9は、アクセション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)の核酸配列である。
配列番号10は、アクセション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)のアミノ酸配列である。
配列番号11は、アフリカツメガエルにはインヒビンβB(アクセッション番号:S61773)の核酸配列である。
配列番号12は、アフリカツメガエルにはインヒビンβB(アクセッション番号:S61773)のアミノ酸配列である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)該未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記未分化細胞は後期胞胚に由来する細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに
D)C)工程により得られた細胞を未分化細胞と接触させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触は、未分化細胞のシートで前記C)工程で得られた細胞を挟み込むことによって達成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記未分化細胞は、後期胞胚の動物極の細胞を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記未分化細胞との接触は、最初の接触から最終分化まで未分化細胞と接触させるに十分である時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記未分化細胞との接触は、少なくとも1日間行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記未分化細胞との接触は、1日間以上3日間以内で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記アクチビンは、アクチビン−A、アクチビン−B、インヒビンおよびアクチビン−Cからなる群より選択されるアクチビンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アクチビンは、配列番号2、4、6、8、10または12のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アクチビンは、アニマルキャップあたり0.5〜1ng/mlの濃度で付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記造血幹細胞は、幹細胞白血病タンパク質(SCL)マーカーを発現することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記解離は、Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記解離は、少なくとも10分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記解離は、10分間から20分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記C)工程において前記細胞の解離再集合体が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記C)工程における解離再集合体の形成は、少なくとも30分前記培地中で培養することによって達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記C)工程におけるアクチビンの処理は、少なくとも3時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記未分化細胞はアニマルキャップにより提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記アニマルキャップは、5〜10枚使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞とともに培養する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞でサンドイッチ培養する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞は、脊椎動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞は、両生綱動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞は、カエルの細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は、アフリカツメガエルの細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法によって調製された細胞。
【請求項28】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法によって調製された血島。
【請求項29】
造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用される培地であって、
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地。
【請求項30】
前記培地は、58mM NaCl,0.67mM KCl、3.0mM ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸および100mg/L 硫酸カナマイシン、pH7.4の組成を含む、請求項29に記載の培地。
【請求項31】
造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を造血幹細胞に分化させる工程において使用される培地であって、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地。
【請求項32】
前記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、請求項31に記載の培地。
【請求項33】
前記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、請求項31に記載の培地。
【請求項34】
造血幹細胞を誘導するための方法において使用する培地の組み合わせであって、該組み合わせは
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地と、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地と
を含む、培地の組み合わせ。
【請求項35】
造血幹細胞を調製するためのキットであって:
a)該未分化細胞を解離させる解離手段と、
b)該未分化細胞を造血幹細胞に分化させる分化手段と、
c)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間分化手段により該未分化細胞を分化させることを指示する指示書と、
を備える、キット。
【請求項36】
前記分化手段は、アクチビンを含む培地であることを特徴とする、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
造血幹細胞を調製するための、アクチビンの使用。
【請求項38】
造血幹細胞を調製するための組成物であって、該組成物は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含有する、組成物。
【請求項39】
前記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
所望の分化細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)該未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の該未分化細胞を、所望の分化細胞に分化するに十分な条件でアクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
【請求項1】
造血幹細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)該未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間アクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記未分化細胞は後期胞胚に由来する細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに
D)C)工程により得られた細胞を未分化細胞と接触させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触は、未分化細胞のシートで前記C)工程で得られた細胞を挟み込むことによって達成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記未分化細胞は、後期胞胚の動物極の細胞を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記未分化細胞との接触は、最初の接触から最終分化まで未分化細胞と接触させるに十分である時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記未分化細胞との接触は、少なくとも1日間行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記未分化細胞との接触は、1日間以上3日間以内で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記アクチビンは、アクチビン−A、アクチビン−B、インヒビンおよびアクチビン−Cからなる群より選択されるアクチビンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アクチビンは、配列番号2、4、6、8、10または12のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アクチビンは、アニマルキャップあたり0.5〜1ng/mlの濃度で付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記造血幹細胞は、幹細胞白血病タンパク質(SCL)マーカーを発現することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記解離は、Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記解離は、少なくとも10分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記解離は、10分間から20分間Ca2+もMg2+も含まない培地中で培養することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記C)工程において前記細胞の解離再集合体が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記C)工程における解離再集合体の形成は、少なくとも30分前記培地中で培養することによって達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記C)工程におけるアクチビンの処理は、少なくとも3時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記未分化細胞はアニマルキャップにより提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記アニマルキャップは、5〜10枚使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞とともに培養する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記工程Cにおいて、解離再集合体が形成され、該解離再集合体を前記未分化細胞でサンドイッチ培養する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞は、脊椎動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞は、両生綱動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞は、カエルの細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は、アフリカツメガエルの細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法によって調製された細胞。
【請求項28】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法によって調製された血島。
【請求項29】
造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を解離させる工程において使用される培地であって、
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地。
【請求項30】
前記培地は、58mM NaCl,0.67mM KCl、3.0mM ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸および100mg/L 硫酸カナマイシン、pH7.4の組成を含む、請求項29に記載の培地。
【請求項31】
造血幹細胞を誘導するための方法の未分化細胞を造血幹細胞に分化させる工程において使用される培地であって、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地。
【請求項32】
前記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、請求項31に記載の培地。
【請求項33】
前記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、請求項31に記載の培地。
【請求項34】
造血幹細胞を誘導するための方法において使用する培地の組み合わせであって、該組み合わせは
Ca2+もMg2+も含まないことを特徴とする、培地と、
アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含むことを特徴とする、培地と
を含む、培地の組み合わせ。
【請求項35】
造血幹細胞を調製するためのキットであって:
a)該未分化細胞を解離させる解離手段と、
b)該未分化細胞を造血幹細胞に分化させる分化手段と、
c)解離後の該未分化細胞を、造血幹細胞に分化するに十分な時間分化手段により該未分化細胞を分化させることを指示する指示書と、
を備える、キット。
【請求項36】
前記分化手段は、アクチビンを含む培地であることを特徴とする、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
造血幹細胞を調製するための、アクチビンの使用。
【請求項38】
造血幹細胞を調製するための組成物であって、該組成物は、アクチビンを造血幹細胞に誘導するに有効な量含有する、組成物。
【請求項39】
前記アクチビンは、0.5〜1ng/mlの濃度で存在する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記アクチビンは、約1ng/mlの濃度で存在する、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
所望の分化細胞を調製するための方法であって:
A)未分化細胞を提供する工程と、
B)該未分化細胞を解離させる工程と、
C)解離後の該未分化細胞を、所望の分化細胞に分化するに十分な条件でアクチビンを含む培地中で培養する工程と、
を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【公開番号】特開2007−61026(P2007−61026A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252910(P2005−252910)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年4月15日 日本発生生物学会第38回大会インターネットアドレス(http://www.sasappa.co.jp/hassei38/kaisai/jsdb2005/programdisp.php?id=he380399)にて発表
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年4月15日 日本発生生物学会第38回大会インターネットアドレス(http://www.sasappa.co.jp/hassei38/kaisai/jsdb2005/programdisp.php?id=he380399)にて発表
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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