説明

広帯域光吸収性光触媒及びその製造方法、並びに、広帯域光吸収性光触媒含有組成物及び成形体

【課題】 可視光のみならず特に紫外光に対して優れた吸収性を示し、広帯域の光に対して長期にわたって光触媒活性を有し、分解対象物に対する吸着性に優れ、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発現可能な広帯域光吸収性光触媒等の提供。
【解決手段】 本発明の広帯域光吸収性光触媒は、光触媒活性を有するアパタイトと、可視光吸収性金属原子と、紫外光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなり、前記紫外光吸収性金属原子が、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであることを特徴とする。該広帯域光吸収性光触媒においては、前記紫外光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%である態様、前記可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種である態様、前記光触媒活性を有するアパタイトが、光触媒活性を有する金属原子を有してなる態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光のみならず紫外光に対しても優れた吸収性を示し、広帯域の光に対して光触媒活性を有する広帯域光吸収性光触媒及びその効率的な製造方法、並びに、該広帯域光吸収性光触媒を含む広帯域光吸収性光触媒組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発揮する、酸化チタン(TiO)等の一部の半導体物質が有する光触媒活性が注目されている。このような光触媒活性を有する前記半導体物質においては、一般に、その価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を吸収すると、前記価電子帯に存在していた電子が前記伝導帯へと遷移する。前記伝導帯へと遷移した電子は、前記光触媒活性を有する半導体物質の表面に吸着している物質に移動する性質があり、該半導体物質の表面に物質が吸着されている場合には、該物質は前記電子により還元される。一方、前記価電子体に存在していた電子が前記伝導体に遷移すると、前記価電子帯には正孔が生ずる。そして、該価電子帯に生じた正孔は、前記光触媒活性を有する半導体物質の表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質があり、該半導体物質の表面に物質が吸着されている場合には、該物質は前記正孔に電子を奪い取られて酸化される。
【0003】
以上の現象を具体的に説明すると、例えば、特に優れた光触媒活性を有する酸化チタンについてみれば、その価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を酸化チタンが吸収すると、該酸化チタンにおける前記価電子帯に存在していた電子が前記伝導帯へと遷移し、遷移した該電子は、空気中の酸素を還元してスーパーオキシドアニオン(・O)を生成させる一方、前記電子の遷移の結果、前記価電子帯には正孔が生じ、生じた該正孔は、前記酸化チタン表面に吸着している水を酸化してヒドロキシラジカル(・OH)を生成させる。このとき、該ヒドロキシラジカルは、非常に強い酸化力を有しているため、前記酸化チタンの表面に有機物等が吸着している場合には、該有機物等は前記ヒドロキシラジカルの作用によって分解され、最終的には水と二酸化炭素とにまで分解される。以上のように、酸化チタン等の、前記光触媒活性を有する半導体物質に対し、該半導体物質の価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光が照射されると、該半導体物質が該光を吸収して、その表面に吸着されている有機物等を分解する結果、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等が発現される。
【0004】
このため、近時、特に酸化チタンを初めとする、前記光触媒活性を有する半導体物質は、抗菌剤、殺菌剤、防汚剤、脱臭剤、環境浄化剤等として広く利用されるに至っている。例えば、電子機器の押ボタンに、光触媒性の酸化チタンを付着させることにより、該押ボタンに対して抗菌性を付与する技術が提案されており(特許文献1参照)、また、電気陰性度が1.6より小さく、かつイオン半径が0.2nmより小さい元素であって、原子価が2以下の金属元素からなる光触媒作用を有する粒子を含有する光触媒薄膜、及び該光触媒薄膜を基材表面に備えた物品が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、これらの提案の場合、以下のような問題がある。即ち、優れた光触媒活性を示す酸化チタンを励起する際に必要な光エネルギーは3.2eVであり、この光エネルギーを光の波長に換算すると約380nmとなる。このことは、該酸化チタンは、近紫外光を照射した場合には励起され得るものの可視光を照射した場合には励起されないことを意味する。太陽光のうちで紫外光が占める割合は僅かに4〜5%と少ないため、太陽光を照射光として利用した場合には、前記酸化チタンは十分な光触媒活性を発現しないという問題である。また、紫外光がほとんど存在しない室内の蛍光灯の光を照射した場合には、前記酸化チタンは光触媒活性を殆ど発現しないという問題である。
【0006】
以上のような、太陽光乃至室内の蛍光灯の下で使用される物品に対しては十分な光触媒活性を付与することができないという問題を解消すると共に、太陽光の45%を占め、蛍光灯の大部分を占める可視光を照射した場合に十分な光触媒活性を示す酸化チタンの開発が強く望まれている。そこで、可視光に対する前記酸化チタンの応答に関する研究が広く行われてきている。
このような研究の一例としては、前記酸化チタンに可視光応答を付与する目的で、該酸化チタンに酸素欠陥を形成する手法、該酸化チタンに窒素をドープする手法、などが提案されている。しかし、これらの場合、実用的に満足できる成果は得られておらず、研究レベルの域を脱していないのが現状である。
【0007】
一方、前記酸化チタンは物質に対する吸着能に乏しいため、該酸化チタンの光触媒活性に基づき、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発現させるためには、該酸化チタンの分解対象物に対する吸着能を向上させる必要がある。
そこで、このような分解対象物に対する吸着能に優れる材料として、歯や骨などの生体硬組織の主成分であるカルシウムハイドロキシアパタイトCa10(PO(OH)等のアパタイトが、各種のカチオンやアニオンとイオン交換し易く、高い生体親和性及び吸着特性を有し、蛋白質等の有機物に対する特異的な吸着能を有していることから、該カルシウムハイドロキシアパタイト等のアパタイトの特性を利用した技術の研究開発が行われてきている。
【0008】
このような研究開発の一例として、酸化チタン等の半導体物質とカルシウムハイドロキシアパタイト等の燐酸カルシウム系化合物とを組み合わせて、両者の特性を効果的に引き出すことができる製品が提案されている(特許文献3〜4参照)。また、前記アパタイト中のカルシウムイオンの一部をチタンイオンと交換してなる光触媒機能を有するカルシウム・チタンハイドロキシアパタイトCaTi(PO(OH)、いわゆる光触媒チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)が提案されている(特許文献5〜8参照)。
【0009】
しかしながら、これらの光触媒チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)の場合においても、上述したような、紫外光がほとんど存在しない室内の蛍光灯の光を照射した場合には、前記酸化チタンは光触媒活性を殆ど発現しないという問題がある。
したがって、可視光のみならず特に紫外光に対して優れた吸収性を示し、広帯域の光に対して長期にわたって光触媒活性を有し、分解対象物に対する吸着性に優れ、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発現可能であり、高性能な広帯域光吸収性光触媒及びその効率的な製造方法、並びに、該広帯域光吸収性光触媒を用いた各種技術は未だ提供されておらず、その開発が望まれているのが現状である。
【0010】
【特許文献1】特開平11−195345号公報
【特許文献2】特開2003−305371号公報
【特許文献3】特開2003−80078号公報
【特許文献4】特開2003−321313号公報
【特許文献5】特開2000−327315号公報
【特許文献6】特開2001−302220号公報
【特許文献7】特開2003−175338号公報
【特許文献8】特開2003−334883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光のみならず特に紫外光に対して優れた吸収性を示し、広帯域の光に対して長期にわたって光触媒活性を有し、分解対象物に対する吸着性に優れ、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発現可能であり、高性能な広帯域光吸収性光触媒及びその効率的な製造方法、並びに、該広帯域光吸収性光触媒を含む広帯域光吸収性光触媒組成物及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。
本発明の広帯域光吸収性光触媒は、光触媒活性を有するアパタイトと、可視光吸収性金属原子と、紫外光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなり、前記紫外光吸収性金属原子が、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであることを特徴とする。
該広帯域光吸収性光触媒は、該光触媒活性を有するアパタイトが分解対象物に対する吸着能に優れるため、該光触媒活性を有するアパタイトに該分解対象物が効率的に吸着される。すると、該光触媒活性を有するアパタイトは自身が光触媒活性を有するので、該光触媒活性を有するアパタイトに所定の光が照射されると、該光触媒活性を有するアパタイトに光触媒活性が発現し、該光触媒活性を有するアパタイトの表面に吸着している前記分解対象物から電子を奪い取り、該分解対象物は酸化され、分解される。このとき、本発明の広帯域光吸収性光触媒は、前記紫外光吸収性金属原子と前記可視光吸収性金属原子とを含んでいるので、該広帯域光吸収性光触媒に紫外光が照射されると、前記紫外光の光エネルギーを前記紫外光光吸収性金属原子が吸収し、該広帯域光吸収性光触媒に可視光が照射されると、該可視光の光エネルギーを前記可視光光吸収性金属原子が吸収する結果、該広帯域光吸収性光触媒は、前記紫外光及び可視光の光エネルギーを吸収して、これら広帯域の光エネルギーを利用可能であるため、広帯域光吸収性を示し、光触媒活性に優れ、前記分解対象物に対する分解作用、抗菌作用、防汚作用などが発現可能である。そして、紫外光及び可視光が照射された場合においても、該広帯域光吸収性光触媒は、その光触媒活性が飽和することがなく、蛍光灯下の室内においても、太陽光の照射環境においても、優れた光触媒活性が発現可能である。
該広帯域光吸収性光触媒においては、光触媒活性を有するアパタイトが金属原子を有してなり、該金属原子の少なくとも一部が、紫外光吸収性金属原子及び可視光吸収性金属原子により置換されてなる態様、前記紫外光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%である態様、前記可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種である態様、同条件下で紫外光(UV光)を連続2時間照射時の光触媒活性(A2)と連続5時間照射時の光触媒活性(A5)との比(A5/A2)が1.3以上である態様、などが好ましい。
【0013】
本発明の広帯域光吸収性光触媒の製造方法は、光触媒活性を有するアパタイト中に、紫外視光吸収性金属原子と、可視光吸収性金属原子とをドープさせるドープ工程を少なくとも含むことを特徴とする。
該広帯域光吸収性光触媒の製造方法では、前記ドープ工程において、前記光触媒活性を有するアパタイト中に、前記紫外光吸収性金属原子と、前記可視光吸収性金属原子とがドープされる。その結果、広帯域光吸収性光触媒が効率的に製造される。該広帯域光吸収性光触媒は、紫外視光光吸収性金属原子と前記可視光吸収性金属原子とを含み、また、前記光触媒活性を有するアパタイトを含むため、分解対象物を表面に吸着すると共に、光が照射されると広帯域の光を吸収し、表面に吸着した前記分解対象物を光触媒作用により分解等する。
該広帯域光吸収性光触媒の製造方法においては、前記光触媒活性を有するアパタイト中への前記紫外光吸収性金属原子と前記可視光吸収性金属原子とのドープが、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを溶解させた水溶液中に、前記アパタイトを浸漬させることにより行われる態様、などが好ましい。
【0014】
本発明の広帯域光吸収性光触媒組成物は、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を少なくとも含むことを特徴とする。該広帯域光吸収性皮下入り触媒組成物は、樹脂を含むのが好ましい。該広帯域光吸収性光触媒組成物は、例えば、OA機器、電子機器、電気製品、携帯情報端末、フィルター、壁紙、食品容器、医療機器、入れ歯、内外装材、乗り物、吊り輪、ハンドル、サドル、靴、鞄などとして、幅広い分野に適用可能である。
【0015】
本発明の成形体は、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒、及び本発明の前記広帯域光吸収性光触媒組成物の少なくともいずれかを用いて形成されたことを特徴とする。該広帯域光吸収性光触媒含有固体は、例えば、OA機器、電子機器、電気製品、携帯情報端末、フィルター、壁紙、食品容器、医療機器、入れ歯、内外装材、乗り物、吊り輪、ハンドル、サドル、靴、鞄などとして、幅広い分野に適用可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、可視光のみならず特に紫外光に対して優れた吸収性を示し、広帯域の光に対して長期にわたって光触媒活性を有し、分解対象物に対する吸着性に優れ、酸化分解作用、抗菌作用、防汚作用等を発現可能であり、高性能な広帯域光吸収性光触媒及びその効率的な製造方法、並びに、該広帯域光吸収性光触媒を含む広帯域光吸収性光触媒組成物及び成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(広帯域光吸収性光触媒)
本発明の広帯域光吸収性光触媒は、光触媒活性を有するアパタイトと、可視光吸収性金属原子と、紫外光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含んでなる。
【0018】
−光触媒活性を有するアパタイト−
前記光触媒活性を有するアパタイトとしては、光触媒活性を有する限り特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アパタイトが、光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるものなどが好適に挙げられる。前記アパタイトが該光触媒活性を有する金属原子を有すると、該アパタイトに光が照射されると、該光触媒活性を有する金属原子の作用により該アパタイトに光触媒活性が発現し、該アパタイトの表面に吸着している分解対象物から電子を奪い取ることができ、該分解対象物を酸化し、分解させることができる。
【0019】
−アパタイト−
前記アパタイトとしては、特に制限は無く、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1)で表されるもの、などが好適に挙げられる。
【0020】
【化2】

【0021】
前記一般式(1)において、Aは、金属原子を表し、該金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、などが挙げられる。これらの中でも、吸着性の点で、カルシウム(Ca)が特に好ましい。
Bは、リン原子(P)及び硫黄原子(S)のいずれかを表し、これらの中でも、生体親和性の点でリン原子(P)が好ましい。
Oは、酸素原子を表す。
Xは、水酸基(OH)、CO、及びハロゲン原子のいずれかを表し、これらの中でも、前記Aの金属原子と共に金属酸化物型の光触媒性部分構造を形成可能な点で、水酸基(OH)が特に好ましい。なお、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、などが挙げられる。
m、n、z、及びsは、整数を表し、例えば、電荷バランスの点で、mは8〜10が好ましく、nは3〜4が好ましく、zは5〜7が好ましく、sは1〜4が好ましい。
【0022】
前記一般式(1)で表されるアパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト若しくはクロロアパタイト、又は、これらの金属塩、リン酸三カルシウム若しくはリン酸水素カルシウム、などが挙げられる。これらの中でも、上記一般式(1)における、Xが水酸基(OH)であるハイドロキシアパタイトが好ましく、上記一般式(1)における、Aがカルシウム(Ca)であり、Bがリン原子(P)であり、かつXが水酸基(OH)であるカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)、即ち、Ca10(PO)(OH)が特に好ましい。
【0023】
前記カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)は、カチオンに対してもアニオンに対してもイオン交換し易いため、各種の分解対象物に対する吸着特性に優れ、特にタンパク質等の有機物に対する吸着特性に優れており、加えて、ウイルス、カビ、細菌等の微生物等に対する吸着特性にも優れ、これらの増殖を阻止乃至抑制し得る点で好ましい。
【0024】
なお、前記分解対象物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、その成分としては、蛋白質、アミノ酸、脂質、糖質、などが挙げられる。該分解対象物は、これらを1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。該分解対象物の具体例としては、一般に、人間の皮膚に由来する汚れ成分、ゴミ、埃、汚泥、不要成分、廃液成分、土壌中乃至空気中の有害成分、汚泥、微生物、ウイルス、などが挙げられる。なお、前記有害物質としては、例えば、アセトアルデヒドガスなどが挙げられる。前記微生物としては、特に制限はなく、原核生物、真核生物のいずれであってもよいし、原生動物も含まれ、前記原核生物としては、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌等の細菌などが挙げられ、前記真核生物としては、例えば、酵母菌類、カビ、放線菌等の糸状菌類などが挙げられる。前記ウイルスとしては、例えば、DNAウイルス、RNAウイルスなど挙げられ、具体的にはインフルエンザウイルスなどが挙げられる。
これらの分解対象物は、固体状、液体状、気体状のいずれの態様で存在していてもよい。前記液体状の場合には、前記分解対象物としては、例えば、廃液、栄養液、循環液、などが挙げられる。また、前記気体状の場合には、前記分解対象物としては、例えば、空気、排ガス、循環ガス、などが挙げられる。
【0025】
前記アパタイトの前記広帯域光吸収性光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、85〜97mol%であるのが好ましく、85〜90mol%であるのがより好ましい。
前記アパタイトの含有量が、85mol%未満であると、前記広帯域光吸収性光触媒の光触媒活性が十分でないことがあり、97mol%を超えても、それに見合う効果が得られず、また、該広帯域光吸収性光触媒の分解対象物に対する吸着特性や光吸収特性等が低下することがある。
なお、前記アパタイトの前記広帯域光吸収性光触媒における含有量は、例えば、ICP-AESによる定量分析をすることにより測定することができる。
【0026】
−−光触媒活性を有する金属原子−−
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子としては、光触媒中心として機能し得る限り特に制限はなく、光触媒活性を有するものとして公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、光触媒活性に優れる点で、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、鉄(Fe)、などから好適に選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。これらの中でも、特に前記光触媒活性(光触媒活性)に優れる点で、チタン(Ti)が好ましい。
【0027】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子の前記広帯域光吸収性光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記広帯域光吸収性光触媒における全金属原子に対し、5〜15mol%であるのが好ましく、8〜12mol%であるのがより好ましい。
前記光触媒活性を有する金属原子の含有量が、5mol%未満であると、前記広帯域光吸収性光触媒の光触媒活性が十分でないことがあり、15mol%を超えても、それに見合う効果が得られず、また、該広帯域光吸収性光触媒の分解対象物に対する吸着特性や光吸収特性等が劣化することがある。
なお、前記光触媒活性を有する金属原子の前記広帯域光吸収性光触媒における含有量は、例えば、ICP-AESによる定量分析をすることにより測定することができる。
【0028】
前記光触媒活性を有する金属原子が、前記アパタイトの結晶構造を構成する金属原子の一部として該アパタイトの結晶構造中に取り込まれる(置換等される)ことによって、該アパタイトの結晶構造内に、光触媒機能を発揮し得る「光触媒性部分構造」が形成される。
このような光触媒性部分構造(金属酸化物構造)を有する前記アパタイトは、光触媒活性を有し、また、アパタイト構造部分が吸着特性に優れ、光触媒活性を有する公知の金属酸化物よりも、分解対象物に対する吸着特性に優れるため、分解作用、抗菌作用、防汚作用、カビや細菌等の増殖阻止乃至抑制作用に優れる。
【0029】
前記光触媒活性を有するアパタイトとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記光触媒活性を有するアパタイトの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の共沈法が好適に挙げられるが、具体的には、例えば、前記カルシウムハイドロキシアパタイトの場合、以下のようにして合成することができる。即ち、まず、前記アパタイトの原料であるカルシウム原子(Ca)を含む硝酸カルシウムを、脱炭酸ガス処理した純水中に溶解し、マグネティックスターラー等を用いて攪拌しながら、アパタイトの原料となる燐原子(P)を含む燐酸水溶液を滴下する。次に、アンモニア水等を加えてpHを9に調整した後、100℃にて5時間熟成を行い、濾過し、純水で洗浄し、乾燥させること、等により合成することができる。
前記光触媒活性を有するアパタイトの市販品としては、例えば、前記カルシウム・チタンハイドロキシアパタイトでは、太平化学産業株式会社製の商品名「PCAP−100」、などが好適に挙げられる。
【0030】
−紫外光吸収性金属原子−
前記紫外光吸収性金属原子は、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであり、これらは、前記広帯域光吸収性光触媒中に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
前記紫外光吸収性金属原子の含有量としては、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%であるのが好ましい。
前記紫外光吸収性金属原子の含有量が、0.001mol%未満であると、前記広帯域光吸収性光触媒の紫外光の吸収能が十分でないことがあり、0.1mol%を超えてもそれに見合う効果が得られず、前記広帯域光吸収性光触媒の前記前記分解対象物に対する吸着性能が低下したり、可視光の吸収能が低下してしまうことがある。
なお、前記紫外光吸収性金属原子の前記広帯域光吸収性光触媒における含有量は、例えば、ICP-AESによる定量分析をすることにより測定することができる。
【0031】
−可視光吸収性金属原子−
前記可視光吸収性金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、波長400nm超の光に対し吸収を有するもの、などが好適に挙げられ、具体的にはクロム(Cr)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種などがより好ましく、可視光吸収特性に優れる点でクロム(Cr)であるのが特に好ましい。
前記可視光吸収性金属原子の前記広帯域光吸収性光触媒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、全金属原子に対し、0.001〜1mol%であるのが好ましく、0.01〜1mol%がより好ましい。
前記可視光吸収性金属原子の含有量が、0.001mol%未満であると、前記広帯域光吸収性光触媒の可視光の吸収能が十分でないことがあり、1mol%を超えてもそれに見合う効果が得られず、前記広帯域光吸収性光触媒の前記分解対象物に対する吸着性能が低下してしまったり、紫外光の吸収能が低下してしまうことがある。
なお、前記可視光吸収性金属原子の前記広帯域光吸収性光触媒における含有量は、例えば、ICP-AESによる定量分析をすることにより測定することができる。
【0032】
本発明の前記広帯域光吸収性光触媒においては、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子と、前記紫外光吸収性金属原子と、前記可視光吸収性金属原子との含有量の合計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、15mol%以下が好ましく、3〜15mol%がより好ましい。
前記含有量の合計が、15mol%を超えてもそれに見合う光触媒活性の向上効果が得られず、却って光触媒活性の低下となることがある。
【0033】
本発明の前記広帯域光吸収性光触媒の好ましい具体例としては、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子がチタン(Ti)であり、前記アパタイトがカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP):Ca10(PO)(OH)であり、前記紫外光吸収性金属原子がタングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであり、前記可視光吸収性金属原子がクロム(Cr)であるものが挙げられる。
このような広帯域光吸収性光触媒は、可視光のみならず紫外光をも吸収可能であり広帯域な光吸収性を示し、光の利用効率に優れ、各種光の照射条件下における用途に好適に使用可能である。そして、該広帯域光吸収性光触媒は、可視光及び紫外光のいずれを照射した場合においても光触媒活性が飽和することがなく、長期間にわたって優れた光触媒活性を示し、特に紫外光を長期間にわたって照射した場合においても光触媒活性が飽和することがなく優れた光触媒活性を維持可能な点で有利である。
【0034】
−形状等−
前記広帯域光吸収性光触媒の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記形状としては、例えば、粉状、粒状、タブレット状、ロッド状、プレート状、ブロック状、シート状、フィルム状、などが挙げられ、これらの中でも、取扱性等の点で粉体が好ましい。また、前記構造としては、例えば、単層構造、積層構造、多孔質構造、コア・シェル構造、などが挙げられる。
なお、前記広帯域光吸収性光触媒の同定・形態等の観察は、例えば、TEM、XRD、XPS、FT−IR等に行うことができる。
【0035】
−特性−
本発明の広帯域光吸収性光触媒の特性(光触媒活性)としては、同条件下で紫外光(UV光)を連続2時間照射時の光触媒活性(A2)と連続5時間照射時の光触媒活性(A5)との比(A5/A2)が、1.3以上であるのが好ましく、2.2以上であるのがより好ましい。
前記比(A5/A2)が、1.3未満であると、紫外光を長時間照射すると光触媒活性が飽和してしまい、紫外光照射条件下での前記分解対象物に対する光触媒活性が十分でなく、分解能向上効果が十分ではないことがある。
【0036】
前記光触媒活性は、分解対象物の濃度、分解生成物の濃度等を測定することにより評価することができる。前記分解対象物が例えばアルデヒドガスである場合には、評価対象となる前記広帯域光吸収性光触媒に対し、可視光及び紫外光の少なくともいずれかを特定条件下で照射して、該アセトアルデヒドガスの濃度(ppm)及びその分解生成物である炭酸ガス濃度(ppm)を分析し、モニターすることにより、該広帯域光吸収性光触媒の光触媒活性を評価することができる。
なお、前記分解対象物又は前記分解性生物がガスである場合には、例えば、アセトアルデヒドガス等である場合には、その濃度は、ガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
【0037】
前記広帯域光吸収性光触媒の好ましい光触媒活性としては、該広帯域光吸収性光触媒を表面積が85.5mとなる量だけ、容量500mlの密閉容器に入れ、酸素30容量%及び窒素70容量%を含むガスで該容器内部を置換した後、アセトアルデヒドを14000ppm含む前記ガス12mlをシリンジで前記容器内部に注入し、該アセトアルデヒドガスが前記広帯域光吸収性光触媒と吸着平衡に達するまで暗所で放置した後、更に暗所で1時間放置後、波長380nm以下の紫外光を前記広帯域光吸収性光触媒に連続照射した際における、連続2時間照射後に減少したアセトアルデヒド濃度C2(ppm)と連続5時間照射後に減少したアセトアルデヒド濃度C5(ppm)との比(C5/C2)が、1.3以上であることであり、2.2以上であることがより好ましい。
前記比(C5/C2)が、1.3未満であると、紫外光を長時間照射すると光触媒活性が飽和してしまい、紫外光照射条件下での前記分解対象物に対する光触媒活性が十分でなく、分解能向上効果が十分ではないことがある。
なお、前記アセトアルデヒドガス濃度又は炭酸ガス濃度は、上述したガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
【0038】
−使用態様−
本発明の広帯域光吸収性光触媒は、それ自体単独で使用してもよいし、他の物質等と併用してもよく、液に分散等させてスラリー状等として使用してもよい。前記スラリー状として使用する場合、その液としては、水乃至アルコール系溶媒が好ましく、このスラリーを光触媒含有スラリーとして好適に使用することができる。
本発明の広帯域光吸収性光触媒は、それ自体単独で使用してもよいし、粉砕してから、他の組成物等に混合等して混合組成物として使用してもよいし、あるいは基材等に付着、塗布、蒸着等して膜化(表面被膜)して使用してもよい。なお、基材等に付着、塗布、蒸着等する場合には、コーティング液を好適に使用することができる。
【0039】
前記粉砕の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボールミルなどを用いて粉砕する方法、などが好適に挙げられる。
前記他の組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷用インク、などが挙げられる。
前記混合の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、混練装置、攪拌装置などを用いた方法、などが挙げられる。
前記基材としては、特に制限はなく、その材質、形状、構造、厚みなどについては公知のものの中から適宜選択することができ、該材質としては、例えば、紙、合成紙、織布、不織布、皮革、木材、ガラス、金属、セラミックス、合成樹脂などが挙げられ、該形状としては、例えば、箔、フィルム、シート、板などが挙げられる。
前記付着の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、噴霧法、などが挙げられる。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スプレーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、グラビヤコート法、インクジェット法、ディップ法などが挙げられる。
前記蒸着の方法としては、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、などが挙げられる。
【0040】
前記コーティング液としては、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を含有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒をイソプロピルアルコール(IPA)等に添加して得たアルコール溶液を、無機コーティング液材としての常温硬化型無機コーティング剤(日本山村硝子株式会社製、商品名S00の液材と商品名UTE01の液材を、10:1で混合したもの)などに添加し混合して得られたもの、などが好適に挙げられる。
【0041】
−用途等−
本発明の広帯域光吸収性光触媒は、広帯域光吸収特性に優れるため、広帯域の光を吸収し利用可能であり、また、該分解対象物に対する吸着特性に優れるため、各種の分解対象物に対する光触媒活性乃至分解対象物の分解能に優れ、該分解対象物を効率的に分解可能であり、長期間光触媒活性の低下がなく(飽和せず)、更に、樹脂等と混合しても該樹脂等を変質、変色、劣化等させることがなく、該樹脂から前記広帯域光吸収性光触媒が剥離乃至脱離等することがない。このため、該広帯域光吸収性光触媒は、各種分野において好適に使用することができ、例えば、太陽光の照射条件下で使用される各種製品、紫外光の照射条件下で使用される各種製品などに好適に使用可能であり、具体的には、OA機器(パソコンの筐体、マウス、キーボード)、電子機器(電話機、コピー機、ファクシミリ、各種プリンター、デジタルカメラ、ビデオ、CD装置、DVD装置、エアコン、リモコン装置など)、電気製品(食器洗浄機、食器乾燥機、衣類乾燥機、洗濯機、空気清浄機、加湿器、扇風機、換気扇、掃除機、厨芥処理機など)、携帯情報端末(PDA、携帯電話など)、フィルター(気体用:空気清浄機、エアコン等に使用されるものなど、液体用:水耕栽培の液処理用など、固体用:土壌改良用など、カメラ用フィルターなど)、壁紙、食品容器(繰返し使用タイプ、使い捨てタイプなど)、医療機器・衛星用品(酸素吸入器のマスク部、包帯、マスク、防菌手袋など)、衣料等の繊維製品、入れ歯、内外装材(樹脂製、紙製、布製、セラッミク製、金属製など、風呂、プール、建材など、人間が使用する時には蛍光灯の光が照射され、人間が使用しない時には紫外光が照射されるような医療施設用、バイオ実験室用、クリーンベンチ用など)、乗り物(内装材、車両用後方確認ミラ−など)、吊り輪(電車、バスなど)、ハンドル(自転車、三輪車、自動二輪車、乗用車など)、サドル(自転車、三輪車、自動二輪車など)、靴(布製、樹脂製、人工皮革製、合成樹脂製など)、鞄(布製、樹脂製、人工皮革製、合成樹脂製など)、塗料(塗膜など)、汚水・排水処理材(例えば、多孔質シリカ中に該広帯域光吸収性光触媒を混入させたもの)、シート(土壌処理シートなど)、バイオチップの電極(有機色素との組合せによる)、鏡(浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡など)、レンズ(眼鏡レンズ、光学レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズ、車両用後方確認カメラレンズ)、プリズム、ガラス(建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、オートバイ、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;冷凍食品陳列ケースのガラス、中華饅頭等の保温食品の陳列ケースのガラスなど)、ゴーグル(防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグルなど)、シールド(防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールドなど)、カバー(計測機器のカバー、車両用後方確認カメラレンズのカバー)、レンズ(レーザー歯科治療器等の集束レンズなど)、カバー(車間距離センサー等のレーザー光検知用センサーのカバー、赤外線センサーのカバー、フィルム、シート、シール、ワッペンなど)、などに好適に使用可能である。
【0042】
また、本発明の広帯域光吸収性光触媒は、昼間は蛍光灯が照射され、夜間は殺菌及び消毒のために紫外光が照射される、医薬品、飲食品、バイオ等の実験室における、壁材、装置(クリーンベンチなど)、実験道具(スパーテルなど)、器具(ビーカーなど)、備品(マイクロピペット用チップ、エッペンドルフチューブなど)など好適であり、本発明の広帯域光吸収性光触媒をこれらの用途に使用すると、24時間連続して高い触媒活性が得られ、常時、分解対象物の分解等を行うことができる点で極めて有用である。更に、本発明の広帯域光吸収性光触媒は、クリーンルーム室内、あるいはクリーンルーム内の局所空間の空気浄化のため、即ち、シリコンウエハ表面に付着すると、シリコンウエハ表面が疎水性になり、後に成膜される膜の付着力が弱くなる原因となる、有機性ガスの分解・除去に好適に使用することができ、具体的には、該クリーンルームの壁材、ダクトのフィルター、器具、備品などに好適であり、本発明の広帯域光吸収性光触媒をこれらの用途に使用すると、効率的に分解対象物の分解等を行うことができる点で極めて有効である。
また、本発明の広帯域光吸収性光触媒は、以下に説明する本発明の広帯域光吸収性光触媒組成物、成形体などに好適に使用することができる。
【0043】
本発明の広帯域光吸収性光触媒は、適宜選択した方法に従って製造することができるが、以下に説明する本発明の広帯域光吸収性光触媒の製造方法により特に好適に製造することができる。
【0044】
(広帯域光吸収性光触媒の製造方法)
本発明の広帯域光吸収性光触媒の製造方法は、ドープ工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、焼成工程、その他の工程を含む。
【0045】
−ドープ工程−
前記ドープ工程は、上述した光触媒活性を有するアパタイト中に、上述した可視光吸収性金属原子と、上述した紫外光吸収性金属原子とをドープさせる工程である。
【0046】
前記ドープ工程におけるドープの態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、置換、化学結合、吸着などが挙げられるが、これらの中でも、反応の制御が容易であり、ドープされた後で前記紫外光吸収性金属原子又は前記可視光吸収性金属原子が脱離等することがなく、これらを前記広帯域光吸収性光触媒中を安定に保持させることができる点で、置換が好ましい。
前記置換の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光触媒活性を有するアパタイトとして、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイトを用いた場合、該金属原子の少なくとも一部を、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子により置換させる態様、などが好適に挙げられる。この態様の場合には、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子が、前記アパタイトに脱落不能に保持される点で有利である。
【0047】
前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子による置換の種類としては、、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換、などが好適に挙げられる。該置換がイオン交換の場合には、置換効率に優れる点で有利である。
【0048】
前記ドープの具体的な方法、即ち前記光触媒活性を有するアパタイト中への前記紫外光吸収性金属原子と前記可視光吸収性金属原子とのドープの具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを溶解させた(共存させた)水溶液中に、前記光触媒活性を有する金属原子を有してなるアパタイトを浸漬させることにより行う浸漬法、前記光触媒活性を有する金属原子を有してなるアパタイトの原料と、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを溶解させた(共存させた)水溶液中で、該原料と該紫外光吸収性金属原子と該可視光吸収性金属原子とを共沈させる共沈法、などが好適に挙げられる。
なお、前記水溶液は、静置しておいてもよいが、攪拌した方が前記置換が効率的に行われる点で好ましい。なお、該攪拌は、公知の装置、手段を用いて行うことができ、例えば、マグネチックスターラーを用いてもよいし、攪拌装置を用いてもよい。
これらの方法の中でも、簡便に操作可能な点で、浸漬法がより好ましい。
【0049】
なお、前記浸漬法においては、上述のように、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを溶解させた(共存させた)水溶液中に、前記光触媒活性を有する金属原子を有してなるアパタイトを浸漬させてもよいし、逆に、前記光触媒活性を有する金属原子を有してなるアパタイトを分散させた水溶液中に、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを前記水溶液中に溶解させてもよい。
【0050】
また、本発明の広帯域光吸収性光触媒の製造方法においては、前記光触媒活性を有するアパタイトを出発物質として用いているが、これに代えて、上述したアパタイトと、上述した光触媒活性を有する金属原子とを出発物質として用いて、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子のドープに先立って、前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を、前記アパタイトにドープさせてもよい。この場合には、前記光触媒活性を有するアパタイトを形成してから、次に、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子のドープを行うことになる。
なお、前記光触媒活性を有するアパタイトを出発物質として用いる態様の場合には、予めTiがドープされているカルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)を、前記光触媒活性を有するアパタイトとして好適に使用することができる。
【0051】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記光触媒活性を有する金属原子を有してなるアパタイトの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1×10−4〜1×10−3が好ましい。
前記可視光光吸収性金属原子の濃度が、1×10−4M未満であると、光触媒活性が低下することがあり、1×10−3Mを超えても、光触媒活性が低下することがある。
【0052】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記紫外光吸収性金属原子の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1×10−3M〜1×10−2Mが好ましく、9×10−3M〜1×10−2Mがより好ましい。
前記紫外光吸収性金属原子の濃度が、1×10−3M未満であると、紫外光に対する活性が低下することがあり、1×10−2Mを超えても、紫外光に対する活性が低下することがある。
【0053】
前記ドープの際の前記水溶液中での前記可視光吸収性金属原子の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1×10−4M〜1×10−3Mが好ましく、1×10−4M〜5×10−4Mがより好ましい。
前記可視光光吸収性金属原子の濃度が、1×10−4M未満であると、可視光応答性が低下することがあり、1×10−3Mを超えても、可視光応答性が低下することがある。
【0054】
前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイト中への前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子のドープの順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記紫外光吸収性金属原子よりも先に前記可視光吸収性金属原子をドープさせてもよいし、逆に、前記可視光吸収性金属原子よりも先に前記紫外光吸収性金属原子をドープさせてもよく、あるいは、両者を同時にドープさせてもよいが、前記広帯域光吸収性光触媒の紫外光に対する吸収特性を向上させる観点からは、前記紫外光吸収性金属よりも先に前記可視光吸収性金属原子をドープさせるのが好ましい。
【0055】
前記ドープの際における、前記水溶液中に浸漬させる前記紫外光吸収性金属原子の形態としては、該水溶液中への溶解容易性、該水溶液中での該紫外光吸収性金属原子の濃度調整の容易性等の点で、該紫外光吸収性金属原子の塩又は水和物の形態であるのが好ましい。
該塩又は水和物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記紫外光吸収性金属原子については、タングステン、バナジウムを含む塩又は水和物として、タングストリン酸n水和物及びバナジン酸塩の少なくともいずれかが好適に挙げられる。また、前記バナジン酸塩としては、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0056】
前記ドープの際における、前記水溶液中に浸漬させる前記可視光吸収性金属原子の形態としては、該水溶液中への溶解容易性、該水溶液中での該紫外光吸収性金属原子の濃度調整の容易性等の点で、該可視光吸収性金属原子の塩又は水和物の形態であるのが好ましい。
該塩又は水和物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)である場合には、これらから選択される少なくとも1種を含む塩であるのが好ましく、塩化物や硫酸塩では光触媒活性を低下させる点で硝酸塩やアンモニウム塩であるのが好ましい。
【0057】
前記ドープを行う反応系としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、液中、空気中、などで行うことができるが、液中で行うのが好ましい。
この場合、該液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水乃至水を主体にした液が好ましい。
なお、該液を収容する容器としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ラージスケールであれば混合器、攪拌器などが挙げられ、スモールスケールであればビーカーなどが好適に挙げられる。
【0058】
前記ドープの際の条件としては、特に制限はなく、温度、時間、圧力等については目的に応じて適宜選択することができる。
前記温度としては、特に制限はなく、材料の種類や量比等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、通常、0℃〜100℃程度であり、室温(20℃〜30℃)が好ましい。前記時間としては、特に制限はなく、材料の種類や量比に応じて異なり、一概に規定することはできないが、通常、10秒〜30分間程度であり、1〜10分間がより好ましい。前記圧力としては、特に制限はなく、材料の種類や量比等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、通常、大気圧であるが好ましい。
なお、前記広帯域光吸収性光触媒における、前記光触媒活性を有する金属、前記紫外光吸収性金属原子、前記可視光吸収性金属原子の量は、これらの添加量(M)、あるいは前記条件を適宜調整することにより、所望に制御することができる。
【0059】
−焼成工程−
前記焼成工程は、前記光触媒活性を有するアパタイト中に、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子をドープさせた後(前記ドープ工程の後)、ドープが完了した該アパタイトを600〜800℃で焼成する工程である。
前記焼成の温度が、600℃未満であると、光触媒活性が最大とならないことがあり、800℃を超えると、分解が生じることがある。
前記焼成工程の条件、例えば、時間、雰囲気、圧力、装置等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記時間としては、前記ドープが完了したアパタイトの量等に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、1時間以上が好ましく、1〜2時間がより好ましい。前記雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、大気雰囲気などが挙げられるが、大気雰囲気が好ましい。前記圧力としては、例えば、大気圧などが挙げられる。前記装置としては、公知の焼成装置を使用することができる。
前記焼成工程において前記焼成を行うことにより、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子をドープした、前記光吸収活性を有するアパタイトの結晶性を高めることができ、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒における光触媒機能をより高めることができる。
【0060】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熟成工程、洗浄工程、乾燥工程、などが挙げられる。
前記熟成工程は、前記光触媒活性を有するアパタイトの結晶を成長(熟成)させる工程である。前記熟成工程は、前記焼成工程、以下の洗浄工程、乾燥工程の前に行われるのが好ましい。
前記洗浄工程は、前記光触媒活性を有する金属原子を有するアパタイト中に、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子をドープさせた後、ドープが完了した該アパタイトを洗浄する工程である。該洗浄工程を行う場合、前記焼成工程は、該洗浄工程の後で行うことが好ましい。
前記乾燥工程は、前記洗浄工程の後で、洗浄したアパタイト(前記光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなり、前記紫外光吸収性金属原子及び前記可視光吸収性金属原子がドープされたもの)を乾燥する工程である。
前記乾燥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90〜120℃程度が好ましい。
【0061】
−製造例−
ここで、本発明の広帯域光吸収性光触媒の製造方法の一例について説明する。前記置換をイオン交換により浸漬法で行う場合、まず、前記可視光吸収性金属原子としてクロムを含む硝酸クロム(III)九水和物を純水に溶解し、硝酸クロム水溶液を調製する。ビーカーに前記光触媒活性を有する金属原子(チタン)を有してなるアパタイトとしてのカルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP)を秤量し、そこに前記硝酸クロム水溶液を添加する。この混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した後、濾紙でアスピレータを使用して吸引濾過を行い、純水で洗浄し、100℃のオーブンで2時間乾燥することにより、前記可視光クロムをドープさせたTiHAP粉体を得た。次に、前記紫外光吸収性金属原子としてのバナジウムを含むバナジン酸アンモニウムを純水に溶解し、バナジウム酸アンモニウム水溶液を調製した。ビーカーに上記クロムドープTiHAPを秤量し、前記バナジウム酸アンモニウム水溶液を添加する(以上が前記「ドープ工程」)。この混合溶液をマグネティックスターラーで攪拌した後(以上が前記「熟成工程」)、濾紙でアスピレータを使用して吸引濾過を行い、純水で洗浄し(以上が前記「洗浄工程」)、100℃のオーブンで2時間乾燥した(以上が前記「乾燥工程」)。その後、マッフル炉で650℃にて1時間の焼成(大気雰囲気)を行った(以上が前記「焼成工程」)。以上により、前記可視光吸収性金属原子であるクロム及び前記紫外光吸収性金属原子であるバナジウムをドープさせたTiHAP粉体(光触媒活性を有するのに必要な金属原子を有してなるアパタイト)からなる広帯域光吸収性光触媒が製造される。
【0062】
(広帯域光吸収性光触媒組成物)
本発明の広帯域光吸収性光触媒組成物としては、上述した本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を少なくとも含んでなり、更に必要に応じて、樹脂、適宜選択したその他の成分を含んでなる。
なお、前記広帯域光吸収性光触媒組成物が、前記樹脂を含む樹脂組成物である場合には、該樹脂との混合性等を考慮すると前記広帯域光吸収性光触媒が粉体状であるのが好ましい。
【0063】
−樹脂−
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生分解性樹脂、熱可塑性樹脂、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0064】
前記生分解性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、天然物由来生分解性樹脂、化学合成生分解性樹脂、その他のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記天然物由来生分解性樹脂としては、例えば、キチン、キトサン、アルギン酸、グルテン、コラーゲン、ポリアミノ酸、バクテリアセルロース、プルラン、カードラン、多糖類系副産物、デンプン、変性デンプン、微生物産生ポリエステル(バイオポリエステル)、などが挙げられる。
前記化学合成生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、などが挙げられる。前記脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ3−ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ3−ヒドロキシバレエート等のポリヒドロキアルカノエート系、ポリカプロラクトン(PCL)系、ポリブチレンサクシネート(PBS)系、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)系、ポリエチレンサクシネート(PES)系、ポリグリコール酸(PGA)系、ポリ乳酸(PLA)系、などが挙げられる。
前記その他のものとしては、例えば、脂肪族ポリエステルのカーボネート共重合体、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体、などが挙げられる。
【0065】
前記生分解性樹脂の中でも、成形性・耐熱性・耐衝撃性等に優れる点で脂肪族系ポリエステル樹脂が好ましく、その中でもポリ乳酸(PLA)系脂肪族系ポリエステル樹脂がより好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。
前記ポリ乳酸(PLA)系脂肪族系ポリエステル樹脂としては、例えば、乳酸、りんご酸、グルコース酸等のオキシ酸の重合体、これらの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族系ポリエステル樹脂が特に好適に挙げられる。
【0066】
前記ヒドロキシカルボン酸系脂肪族系ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、環状ジエステルであるラクチド及び対応するラクトン類の開環重合によるラクチド法、乳酸直接脱水縮合法、などが挙げられる。また、製造時に使用する触媒としては、錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、錫、アルミニウム化合物などが好ましく、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトネートがより好ましい。
【0067】
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン樹脂、変性メチルメタクリレート−ブタジエン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成形性等の点でポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0068】
前記樹脂の前記広帯域光吸収性光触媒組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、80〜99質量%が好ましく、90〜95質量%がより好ましい。
前記樹脂の含有量が、80質量%未満であると、組成物の強度が低下することがあり、99質量%を超えると、光触媒活性が発現しないことがある。
【0069】
前記広帯域光吸収性光触媒の前記広帯域光吸収性光触媒組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
前記広帯域光吸収性光触媒の含有量が、0.1質量%未満であると、光触媒活性が発現しないことがあり、20質量%を超えると、機械強度が低下することがある。
【0070】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材、難燃剤、可塑剤、などが挙げられる。
これらは、本発明の効果を害しない範囲内で適宜選択した量を使用することができ、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水酸化アルミニウム、アルミニウム、炭酸石灰、珪酸石灰、炭素、カオリン、マイカ、二硫化モリブデン、タルク、モンモリロナイト、グラファイト、カーボンブラック等のカーボン材、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化珪素、二酸化珪素等の金属酸化物、などが好適に挙げられる。
【0072】
前記難燃剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリコーン系化合物、金属塩、金属水酸化物、りん系化合物などが挙げられる。これらの中でも、無機系難燃剤が好ましく、金属水酸化物がより好ましく、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムの少なくともいずれかであるが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明の広帯域光吸収性光触媒組成物においては、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を直接、前記樹脂に添加しても該樹脂の劣化、変色などが生じることない。また、本発明の広帯域光吸収性光触媒組成物は、広帯域光吸収性であり、可視光及び紫外光の両方に対して優れた光触媒活性を示す。また、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒組成物の中でも特に樹脂組成物は、各種成形方法により各種の成形体の量産に好適である。
【0074】
(成形体)
本発明の成形体は、上述した本発明の前記広帯域光吸収性光触媒、及び上述した本発明の前記広帯域光吸収性光触媒組成物の少なくともいずれかを成形してなること以外には、特に制限はなく、その形状、構造、大きさ等については目的に応じて適宜選択することができる。
【0075】
前記成形の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、カレンダー成形、熱成形、流動成形、積層成形、あるいは、型を用いた圧縮成型、などが挙げられる。
これらの中でも、該成形体をパソコンの筐体、キーボード、マウス、携帯情報端末、等の電子部品などとして得る場合には、フィルム成形、押出成形及び射出成形から選択されるいずれかであるのが好ましい。
前記成形体においては、前記広帯域光吸収性光触媒を表面及び内部の少なくともいずれかに有してなる。
なお、前記成形体の具体例としては、上述した本発明の広帯域光吸収性光触媒の用途として例示した各種製品等と同様のものが挙げられる。
【0076】
−具体例−
以下に、本発明の成形体の一具体例について、図面を参照しながら説明する。
図9は、本発明の成形体を、デスクトップ型パーソナルコンピュータ(デスクトップ型パソコン)とした場合の一例を示す概略説明図である。
デスクトップ型パソコン10は、ハードディスク装置5、及びCPU、メモリ等を搭載したプリント基板を内部に有するパソコン本体1と、ディスプレイ部2と、入力手段としてのキーボード3と、マウス4とを備えてなる。なお、ディスプレイ部2は、CRTディスプレイでも、液晶ディスプレイのいずれでもよく、ディスプレイ部2とパソコン本体1とは別体でもあってもよいし、一体であってもよい。
デスクトップ型パソコン10、即ちディスプレイ部2、パソコン本体1、キーボード3、及びマウス4の表面には、本発明の広帯域光吸収性光触媒を含むコーティング液がスプレー塗布されており、該広帯域光吸収性光触媒が表面に露出している。このため、デスクトップ型パソコン10は、可視光及び紫外光のいずれをも吸収し、強い光触媒活性を発現可能であり、しかも可視光及び紫外光のいずれにおいても光触媒活性が飽和することがなく、手脂、タバコタールなどに対して十分な防汚性を示し、また、カビや細菌などの微生物などに対して抗菌性を示す。
なお、ディスプレイ部2の画面には、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を表面にコートさせたフィルタを設けることもできる。また、ディスプレイ部2、パソコン本体1、キーボード3及びマウス4の筐体部分を本発明の前記広帯域光吸収性光触媒組成物(樹脂組成物)を用いて成形することができる。
【0077】
図10は、本発明の成形体を、ノート型パーソナルコンピュータ(ノート型パソコン)とした場合の一例を示す概略説明図である。
ノート型パソコン20は、ノートパソコン本体21と、回動して開かれる液晶表示パネル部22とを備えてなる。ノートパソコン本体21は、扁平形状のハウジング25の上面に入力手段としてのキーボード部23及びポインティングディバイス24を有し、ハウジング25の内部にはハードディスク装置、及びCPU、メモリ等を搭載したプリント基板、バッテリが収納されている。
ノート型パソコン20には、本発明の広帯域光吸収性光触媒を含むコーティング液がスプレー塗布されており、該広帯域光吸収性光触媒が表面に露出している。このため、ノート型パソコン20は、可視光及び紫外光のいずれをも吸収し、強い光触媒活性を発現可能であり、しかも可視光及び紫外光のいずれにおいても光触媒活性が飽和することがなく、手脂、タバコタールなどに対して十分な防汚性を示し、また、カビや細菌などの微生物などに対して抗菌性を示す。
なお、液晶表示パネル部22の画面には、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を表面にコートさせたフィルタを設けることもできる。また、液晶表示パネル部22、ノートパソコン本体21の筐体部分を本発明の前記広帯域光吸収性光触媒組成物(樹脂組成物)を用いて成形することができる。
【0078】
図11は、本発明の成形体を、携帯電話とした場合の一例を示す概略説明図である。
本発明のの一例を示す概略説明図であり、図11(A)は正面図、図11(B)は側面図、及び図11(C)は背面図をそれぞれ表す。
携帯電話30は、表示部31と、入力手段としてのキー操作部32と、内部にバッテリを収納する裏蓋33とを備えてなる。図11に示す携帯電話は、2つ折り式ではないが、ヒンジにより2つ折り可能な折り畳み式携帯電話であってもよい。
携帯電話30には、本発明の広帯域光吸収性光触媒を含むコーティング液がスプレー塗布されており、該広帯域光吸収性光触媒が表面に露出している。このため、携帯電話30は、可視光及び紫外光のいずれをも吸収し、強い光触媒活性を発現可能であり、しかも可視光及び紫外光のいずれにおいても光触媒活性が飽和することがなく、手脂、タバコタールなどに対して十分な防汚性を示し、また、カビや細菌などの微生物などに対して抗菌性を示す。
なお、表示部31の画面には、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を表面にコートさせたフィルタを設けることもできる。また、携帯電話30、表示部31、キー操作部32、裏蓋33を本発明の前記広帯域光吸収性光触媒組成物(樹脂組成物)を用いて成形することができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
−広帯域光吸収性光触媒の製造−
前記可視光吸収性金属原子であるクロムを含む硝酸クロム(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)を純水に溶解し、該クロムの濃度が1×10−4Mである硝酸クロム水溶液を調製した。次に、300mlビーカーに、前記光触媒活性を有する金属としてチタンを有してなるアパタイトとして、カルシウム・チタンハイドロキシアパタイト(TiHAP;太平化学産業株式会社製、PCAP−100)1.5gを秤量し、前記硝酸クロム水溶液を添加し、混合液を調製した。該混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した後、ワットマンNo.5の濾紙でアスピレータを使用して、該混合液の吸引濾過を行った。次いで、4〜5リットルの純水で洗浄した後、100℃のオーブンで2時間乾燥して、クロムをドープしたTiHAP粉体を得た。次に、前記紫外光吸収性金属原子であるタングステン(W)を含む12タングストリン酸n水和物(関東化学株式会社製)を純水に溶解し、該タングステンの濃度が1×10−2Mであるタングステン塩水溶液を調製した。次に、300mlビーカーに、先に得たクロムをドープしたTiHAPの1.5gを秤量し、前記タングステン塩水溶液を添加した。該混合液をマグネティックスターラーで5分間攪拌した。以上が、前記ドープ工程である。
その後、ワットマンNo.5の濾紙でアスピレータを使用して、前記混合液の吸引濾過を行い、ろ過物を4〜5リットルの純水で洗浄した。以上が、前記洗浄工程である。次に、該ろ過物を100℃のオーブンで2時間乾燥した。以上が、前記乾燥工程である。その後、マッフル炉((株)ケイデン製)で650℃にて1時間の焼成(大気雰囲気)を行った。以上が、前記焼成工程である。以上により、前記可視光吸収性金属錯体であるクロム及び前記紫外光吸収性金属錯体であるタングステンをドープしたTiHAP粉体(光触媒活性を有する金属(チタン)を含有してなるアパタイト)からなる実施例1の広帯域光吸収性光触媒(粉状)を製造した。
【0081】
(実施例2)
実施例1において、前記紫外光吸収性金属原子である、タングステン(W)を含む12タングストリン酸n水和物(関東化学株式会社製)を、バナジウムを含むバナジウム酸アンモニウム(関東化学株式会社製)に変えた以外は、実施例1と同様にして、前記可視光吸収性金属錯体であるクロム及び前記紫外光吸収性金属錯体であるバナジウムをドープしたTiHAP粉体(光触媒活性を有する金属(チタン)を含有してなるアパタイト)からなる実施例2の広帯域光吸収性光触媒(粉状)を製造した。
【0082】
(比較例1)
−広帯域光吸収性光触媒の製造−
実施例1において、前記紫外光吸収性金属原子であるタングステン(W)をドープさせないこと以外は、実施例1と同様にして、前記可視光吸収性金属原子であるクロムのみをドープさせたTiHAP粉体からなる比較例2の光触媒を製造した。
【0083】
<光触媒活性の評価1>
実施例1で得られた広帯域光吸収性光触媒及び比較例1で得られた光触媒のそれぞれの粉体をシャーレに表面積が85.5mとなるように秤量し、容量500mlの密閉容器に入れ、合成空気(酸素30容量%−窒素70容量%)で容器内部を置換した。次に、アセトアルデヒドガス濃度が約14000ppm(残りは合成空気)のガス12mlをシリンジで容器内部に注入し、アセトアルデヒドガスが光触媒粉体と吸着平衡に達するまで暗所で放置した(約2時間)。その後、暗所で1時間放置後、可視光を照射し、その1時間後、2時間後及び3時間後、並びに、紫外光を照射し、その1時間後及び2時間後において、前記容器内部のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した。結果を図1に示す。
なお、可視光の照射には林時計工業株式会社製のキセノン光源「LA−251Xe」とL−42フィルタを組み合わせて紫外光をカットした光(39500ルクス)を用いた。また紫外光の照射にはブラックライト(1mW/cm)を用いた。
【0084】
<光触媒活性の評価2>
前記<光触媒活性の評価1>において、暗所で1時間放置後、可視光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記容器内部のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した以外は、<光触媒活性の評価1>と同様にして、<光触媒活性の評価2>を行った。結果を図2に示す。
【0085】
<光触媒活性の評価3>
前記<光触媒活性の評価1>において、暗所で1時間放置後、紫外光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記容器内部のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度をと計測した以外は、<光触媒活性の評価1>と同様にして、<光触媒活性の評価3>を行った。結果を図3に示す。
【0086】
<光触媒活性の評価4>
前記<光触媒活性の評価1>において、暗所で1時間放置後、太陽光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記容器内部のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した以外は、<光触媒活性の評価1>と同様にして、<光触媒活性の評価4>を行った。
なお、太陽光の照射条件は、天気:晴れ、気温:25℃、湿度:50%RH、照度:2mW/cm、とした。
【0087】
<光触媒活性の評価5>
実施例2及び比較例1でそれぞれ得られた光触媒粉体をシャーレに表面積が85.5mとなるように秤量し、容量500mlの密閉容器に入れ、合成空気(酸素30%−窒素70%)で容器内部を置換した。次に、アセトアルデヒド濃度が約14000ppm(残りは合成空気)のガス12mlをシリンジで容器内部に注入し、アセトアルデヒドガスが粉体と吸着平衡に達するまで暗所で放置した(約2時間)。
その後、暗所で1時間放置後、可視光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記容器内部のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した。結果を図4に示す。また、実施例2の結果を図6に示す。
【0088】
<光触媒活性の評価6>
前記<光触媒活性の評価5>において、暗所で1時間放置後、紫外光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記容器内部のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した以外は、<光触媒活性の評価5>と同様にして、<光触媒活性の評価6>を行った。結果を図5に示す。また、実施例2の結果を図6に示す。
【0089】
<光触媒活性の評価7>
前記<光触媒活性の評価5>において、暗所で1時間放置後、太陽光を照射し、その1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び5時間後に前記容器内部のガスをシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー(GC−390B、GLサイエンス社製)を用いて、アセトアルデヒドガス濃度と、アセトアルデヒドガスの分解により発生する炭酸ガス濃度とを計測した以外は、<光触媒活性の評価5>と同様にして、<光触媒活性の評価7>を行った。
なお、太陽光の照射条件は、天気:晴れ、気温:25℃、湿度:50%RH、照度:2mW/cmとした。
【0090】
なお、図1〜図6において、「暗所1h」とは、暗所に1時間静置したことを意味し、「Vis」とは、可視光を照射したことを意味し、「Vis−1h」とは、可視光を1時間照射したことを意味し、「UV」とは、紫外光を照射したことを意味し、「UV−1h」とは、紫外光を1時間照射したことを意味する。各図において、右側の縦軸は、前記分解対象物としての「アセトアルデヒドガス」の濃度(ppm)を表し、左側の縦軸は、該アセトアルデヒドガスの分解産物である「炭酸ガス」(二酸化炭素)の濃度(ppm)を表す。
【0091】
図1〜図3の結果から、実施例1で製造した広帯域光吸収性光触媒、即ちカルシウム・チタンハイドロキシアパタイトにクロム及びタングステンをドープしてなる光触媒は、カルシウム・チタンハイドロキシアパタイトにクロムのみをドープした比較例1の光触媒に比べて、可視光応答は実害のないレベルでやや減少するものの、紫外光に対する光触媒活性が向上し、紫外光を照射した場合に光触媒活性が飽和せず、長時間にわたって光触媒活性が維持されることが判った。
また、図4〜図6の結果から、実施例2の広帯域光吸収性光触媒、即ちカルシウム・チタンハイドロキシアパタイトにクロム及びバナジウムをドープした光触媒は、カルシウム・チタンハイドロキシアパタイトにクロムのみをドープした比較例1の光触媒に比べて、可視光応答は実害のないレベルでやや減少するものの、紫外光に対する光触媒活性が約2倍も顕著に向上し、紫外光を照射した場合に光触媒活性の飽和せず、長時間にわたって高い光触媒活性が維持されることが判った。
【0092】
(実施例3)
−広帯域光吸収性光触媒組成物の調製−
ポリプロピレン樹脂95質量部、及び実施例1の広帯域光吸収性光触媒5質量部(全体に対して5質量%)を常法により配合して実施例3の広帯域光吸収性光触媒組成物を調製した。
【0093】
(実施例4)
−広帯域光吸収性光触媒組成物の調製−
ポリプロピレン樹脂90質量部、及び実施例2の広帯域光吸収性光触媒10質量部(全体に対して10質量%)を常法により配合して実施例4の広帯域光吸収性光触媒組成物を調製した。
【0094】
(実施例5)
−広帯域光吸収性光触媒組成物の調製−
ポリ乳酸95質量部、及び実施例1の広帯域光吸収性光触媒5質量部(全体に対して5質量%)を常法により配合して実施例5の広帯域光吸収性光触媒組成物を調製した。
【0095】
(実施例6)
−広帯域光吸収性光触媒組成物の調製−
ポリ乳酸90質量部、及び実施例2の広帯域光吸収性光触媒10質量部(全体に対して10質量%)を常法により配合して実施例6の広帯域光吸収性光触媒組成物を調製した。
【0096】
(比較例2)
−光触媒組成物の調製−
ポリプロピレン樹脂95質量部、及び光触媒としての酸化チタン5質量部(全体に対して5質量%)を常法により配合して比較例2の光触媒組成物を調製した。
【0097】
(比較例3)
−光触媒組成物の調製−
ポリ乳酸90質量部、及び光触媒としての酸化チタン10質量部(全体に対して10質量%)を常法により配合して比較例3の光触媒組成物を調製した。
【0098】
(比較例4)
−光触媒組成物の調製−
実施例3において、光触媒を添加しなかった以外は、実施例3と同様にして、比較例3の光触媒組成物を調製した。
【0099】
次に、得られた実施例3〜6及び比較例2〜4の光触媒組成物を、射出成形機内で165℃に保持して溶融混練した後、平板金型に射出し、3mm×100mm×100mmの大きさに成形して試験片(成形体)を作製した。
【0100】
<成形体における光触媒活性の評価>
実施例3〜6及び比較例2〜4の試験片の光触媒活性を、メチレンブルー分解試験により調べた。具体的には、まず、実施例3〜6及び比較例2〜4の試験片を、10μMのメチレンブルー水溶液に浸漬して染色した。次に、このようにして染色されたガラスプレートに対して、可視光を5時間照射し、また、紫外光を5時間照射した。すると、実施例3〜6及び比較例2〜3は、光触媒を添加しなかった比較例4に比べて、表面の着色した色素が分解して退色しており、光触媒機能に基づく分解作用を有していることが認められた。
また、比較例2〜3は、紫外光を照射した後に酸化チタン粒子が表面に露出して白く変色するチョーキング現象が認められた。これに対し、実施例3〜6は、成型体の表面の変質、変色、劣化等が認められなかった。
なお、可視光の照射には林時計工業株式会社製のキセノン光源「LA−251Xe」とL−42フィルタを組み合わせて紫外光をカットした光(39500ルクス)を用いた。また、紫外光の照射にはブラックライト(1mW/cm)を用いた。
【0101】
(実施例7)
−コーティング液の調製−
実施例1の広帯域光吸収性光触媒をイソプロピルアルコール(IPA)に添加し、5質量%のアルコール溶液を調製した。得られたアルコール溶液0.2gを、無機コーティング液材としての常温硬化型無機コーティング剤(日本山村硝子株式会社製、商品名S00の液材と商品名UTE01の液材を、10:1で混合したもの)2gに添加し、混合した。以上により、調製例1のコーティング液を調製した。
【0102】
次に、図7に示すようなデスクトップ型パーソナルコンピュータ(商品名:FMVデスクパワー、富士通株式会社製)を2台用意した。その1台のデスクトップ型パソコンについて、調製例1のコーティング液をキーボード部、パソコン本体、及びディスプレイ部にスプレー塗布した(本発明品1)。一方、もう1台のデスクトップ型パソコンについては調製例1のコーティング液を塗布しなかった(比較品1)。
次に、2台のデスクトップ型パソコンを室内で1箇月間入力操作した後、室内で1週間放置した後のキーボード部、パソコン本体、及びディスプレイ部の汚れの程度を比較したところ、本発明品1は、比較品1に比べて明らかに汚れの付着が少ないことが判った。
【0103】
(実施例8)
図8に示すようなノート型パーソナルコンピュータ(商品名:FMV LOOX 、富士通株式会社製)を2台用意した。その1台のノート型パソコンについて、調製例1のコーティング液を液晶表示パネル部、ノートパソコン本体、及びキーボード部にスプレー塗布した(本発明品2)。一方、もう1台のノート型パソコンについては調製例1のコーティング液を塗布しなかった(比較品2)。
次に、2台のノート型パソコンを室内で1箇月間入力操作した後、室内で1週間放置した後のキーボード部、パソコン本体、及びディスプレイ部の汚れの程度を比較したところ、本発明品2は、比較品2に比べて明らかに汚れの付着が少ないことが判った。
【0104】
(実施例9)
図9に示すような携帯電話(商品名:F208、富士通株式会社製)を2台用意した。その1台の携帯電話について、調製例1のコーティング液をキー操作部、及び表示部にスプレー塗布した(本発明品3)。一方、もう1台の携帯電話については調製例1のコーティング液を塗布しなかった(比較品3)。
次に、2台の携帯電話を室内で1箇月間入力操作した後、室内で1週間放置した後のキー操作部、及び表示部の汚れの程度を比較したところ、本発明品3は、比較品3に比べて明らかに汚れの付着が少ないことが判った。
【0105】
(実施例10)
図7に示すようなデスクトップ型パーソナルコンピュータ(商品名:FMVデスクパワー、富士通株式会社製)を2台用意した。
実施例5の光触媒組成物をキーボード成形用金型を用いて射出成形し、常法により、キーボードを作製した。得られたキーボードを、1台のデスクトップ型のパソコンに接続した(本発明品4)。一方、もう1台のデスクトップ型パソコンについては市販のキーボートが取り付けられている(比較品4)。
次に、2台のデスクトップ型パソコンを室内で1箇月間入力操作した後、室内で1週間放置した後のキーボードの汚れの程度を比較したところ、本発明品4は、比較品4に比べて明らかに汚れの付着が少ないことが判った。
【0106】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 光触媒活性を有するアパタイトと、紫外光吸収性金属原子と、可視光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなり、前記紫外光吸収性金属原子が、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであることを特徴とする広帯域光吸収性光触媒。
(付記2) 光触媒活性を有するアパタイトが金属原子を有してなり、該金属原子の少なくとも一部が、紫外光吸収性金属原子及び可視光吸収性金属原子により置換されてなる付記1に記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記3) 紫外光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%である付記1から2のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記4) 可視光吸収性金属原子が、波長400nm以上の光に対し、吸収特性を有する付記1から3のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記5) 可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種である付記1から4のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記6) 可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)である付記1から4のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記7) 可視光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜1mol%である付記1から6のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記8) 光触媒活性を有するアパタイトが、光触媒活性を有する金属原子を有してなる付記1から7のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記9) 光触媒活性を有する金属原子が、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、及び鉄(Fe)から選択される少なくとも1種である付記8に記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記10) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子が、チタン(Ti)である付記8に記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記11) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子の含有量が、全金属原子に対し、5〜15mol%である付記8から10のずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記12) アパタイトが、下記一般式(1)で表される付記1から11のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
【化3】

ただし、前記一般式(1)中、Aは、金属原子を表す。Bは、リン原子(P)及び硫黄原子(S)のいずれかを表す。Oは、酸素原子を表す。Xは、水酸基、CO、及びハロゲン原子のいずれかを表す。m、n、z、及びsは、整数を表す。
(付記13) Aが、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)から選択される少なくとも1種である付記12に記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記14) Aがカルシウム(Ca)であり、Bがリン原子(P)であり、かつXが水酸基であり、光触媒性能を有するアパタイトがカルシウムハイドロキシアパタイトCa10(PO(OH)である付記13に記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記15) 光触媒活性を有する金属原子と紫外光吸収性金属原子と可視光吸収性金属原子との合計の含有量が、15モル%以下である付記8から14のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記16) 粉状物、粒状物、タブレット状物、ロッド状物、プレート状物、ブロック膜状物、シート状物、及びフィルム状物の少なくともいずれかの形態を有する付記1から15のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記17) 同条件下で紫外光(UV光)を連続2時間照射時の光触媒活性(A2)と連続5時間照射時の光触媒活性(A5)との比(A5/A2)が、1.3以上である付記1から16のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記18) 広帯域光吸収性光触媒を表面積が85.5mとなる量だけ、容量500mlの密閉容器に入れ、酸素30容量%及び窒素70容量%を含むガスで該容器内部を置換した後、アセトアルデヒドを14000ppm含む前記ガス12mlをシリンジで前記容器内部に注入し、該アセトアルデヒドガスが前記広帯域光吸収性光触媒と吸着平衡に達するまで暗所で放置した後、更に暗所で1時間放置後、波長400nm以下の紫外光を前記広帯域光吸収性光触媒に連続照射した際における、連続2時間照射後のアセトアルデヒド濃度C2(ppm)と連続5時間照射後のアセトアルデヒド濃度C5(ppm)との比(C5/C2)が、1.3以上である付記1から17のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
(付記19) 光触媒活性を有するアパタイト中に、紫外視光吸収性金属原子と、可視光吸収性金属原子とをドープさせるドープ工程を少なくとも含むことを特徴とする広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記20) 光触媒活性を有するアパタイトが金属原子を有してなり、ドープ工程におけるドープが、前記金属原子の少なくとも一部を、紫外光吸収性金属原子及び可視光吸収性金属原子により置換させることにより行われる付記19に記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記21) 紫外光吸収性金属原子及び可視光吸収性金属原子による置換が、イオン交換である付記19から20のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記22) 光触媒活性を有するアパタイト中への紫外光吸収性金属原子と可視光吸収性金属原子とのドープが、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを溶解させた水溶液中に、前記アパタイトを浸漬させることにより行われる付記19から21のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記23) 水溶液中の紫外光吸収性金属原子の濃度が、5×10−3M〜1×10−2Mであり、水溶液中の可視光吸収性金属原子の濃度が、1×10−4M〜1×10−3Mである付記22に記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記24) 光触媒活性を有する金属原子を有してなるアパタイト中への紫外光吸収性金属原子と可視光吸収性金属原子とのドープが、該光触媒活性を有する金属原子を有してなるアパタイトの原料と、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを溶解させた水溶液中で、該原料と該紫外光吸収性金属原子と該可視光吸収性金属原子とを共沈させることにより行われる付記19から21のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記25) 紫外光吸収性金属原子が、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかである付記19から24のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記26) 可視光吸収性金属原子が、波長400nm以下の光に対し、吸収特性を有する付記19から25のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記27) 可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種である付記19から26のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記28) 光触媒活性を有するアパタイトが、光触媒活性を有する金属原子を有してなり、該光触媒活性を有する金属原子が、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、及び鉄(Fe)から選択される少なくとも1種である付記19から27のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記29) 光触媒活性を有するのに必要な金属原子の含有量が、全金属原子に対し、5〜15mol%である付記28に記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記30) アパタイトが、下記一般式(1)で表される付記19から29のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
【化3】

ただし、前記一般式(1)中、Aは、金属原子を表す。Bは、リン原子(P)及び硫黄原子(S)のいずれかを表す。Oは、酸素原子を表す。Xは、水酸基、CO、及びハロゲン原子のいずれかを表す。m、n、z、及びsは、整数を表す。
(付記31) Aが、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)から選択される少なくとも1種である付記30に記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記32) Aがカルシウム(Ca)であり、Bがリン原子(P)であり、かつXが水酸基であり、光触媒性能を有するアパタイトがカルシウムハイドロキシアパタイトCa10(PO(OH)である付記30に記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記33) 紫外光吸収性金属原子を含む化合物が、タングストリング酸水和物及びバナジウム酸塩の少なくともいずれかであり、可視光吸収性金属原子を含む化合物が、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種を含む塩である付記19から21のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記33) ドープ工程の後、アパタイトを600〜800℃で焼成する焼成工程を含む付記19から32のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
(付記34) 付記1から18のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒を少なくとも含む広帯域光吸収性光触媒組成物。
(付記35) 樹脂を含む付記34に記載の広帯域光吸収性光触媒含有組成物。
(付記36) 樹脂が、生分解性樹脂及び熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1種である付記35に記載の広帯域光吸収性光触媒含有樹脂組成物。
(付記37) 生分解性樹脂が、ポリ乳酸を少なくとも含む付記36に記載の広帯域光吸収性光触媒含有樹脂組成物。
(付記38) 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリスチレンから選択される少なくとも1種を含む付記36から37のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒含有樹脂組成物。
(付記39) 付記1から18のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒、及び付記35から38のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒含有組成物の少なくともいずれかを用いて形成されたことを特徴とする成形体。
(付記40) 広帯域光吸収性光触媒を表面及び内部の少なくともいずれかに有してなる付記39に記載の成形体。
(付記41) OA機器、電子機器、電気製品、携帯情報端末、フィルター、壁紙、食品容器、医療機器、入れ歯、内外装材、乗り物、吊り輪、ハンドル、サドル、靴、及び鞄から選択されるいずれかである付記39から40のいずれかに記載の成形体。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の広帯域光吸収性光触媒は、広帯域の光を吸収しそれを利用可能であるため、室内の蛍光灯下で使用される各種製品、太陽光の照射条件下で使用される各種製品、紫外光の照射条件下で使用される各種製品などに好適に使用可能である。このため、該広帯域光吸収性光触媒は、具体的には、OA機器(パソコンの筐体、マウス、キーボード)、電子機器(電話機、コピー機、ファクシミリ、各種プリンター、デジタルカメラ、ビデオ、CD装置、DVD装置、エアコン、リモコン装置など)、電気製品(食器洗浄機、食器乾燥機、衣類乾燥機、洗濯機、空気清浄機、加湿器、扇風機、換気扇、掃除機、厨芥処理機など)、携帯情報端末(PDA、携帯電話など)、フィルター(気体用:空気清浄機、エアコン等に使用されるものなど、液体用:水耕栽培の液処理用など、固体用:土壌改良用など、カメラ用フィルターなど)、壁紙、食品容器(繰返し使用タイプ、使い捨てタイプなど)、医療機器・衛星用品(酸素吸入器のマスク部、包帯、マスク、防菌手袋など)、衣料等の繊維製品、入れ歯、内外装材(樹脂製、紙製、布製、セラッミク製、金属製など、風呂、プール、建材など、人間が使用する時には蛍光灯の光が照射され、人間が使用しない時には紫外光が照射されるような医療施設用、バイオ実験室用、クリーンベンチ用など)、乗り物(内装材、車両用後方確認ミラ−など)、吊り輪(電車、バスなど)、ハンドル(自転車、三輪車、自動二輪車、乗用車など)、サドル(自転車、三輪車、自動二輪車など)、靴(布製、樹脂製、人工皮革製、合成樹脂製など)、鞄(布製、樹脂製、人工皮革製、合成樹脂製など)、塗料(塗膜など)、汚水・排水処理材(例えば、多孔質シリカ中に該広帯域光吸収性光触媒を混入させたもの)、シート(土壌処理シートなど)、バイオチップの電極(有機色素との組合せによる)、鏡(浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡など)、レンズ(眼鏡レンズ、光学レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズ、車両用後方確認カメラレンズ)、プリズム、ガラス(建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、オートバイ、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;冷凍食品陳列ケースのガラス、中華饅頭等の保温食品の陳列ケースのガラスなど)、ゴーグル(防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグルなど)、シールド(防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールドなど)、カバー(計測機器のカバー、車両用後方確認カメラレンズのカバー)、レンズ(レーザー歯科治療器等の集束レンズなど)、カバー(車間距離センサー等のレーザー光検知用センサーのカバー、赤外線センサーのカバー、フィルム、シート、シール、ワッペンなど)、などに好適に使用可能である。
本発明の広帯域光吸収性光触媒の製造方法は、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒の製造に好適に使用可能である。
本発明の広帯域光吸収性光触媒含有固体は、その表面に本発明の前記広帯域光吸収性光触媒が露出しているため、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒について上述した具体的な用途と同様の用途に好適に使用可能である。
本発明の広帯域光吸収性光触媒含有樹脂組成物は、樹脂中に本発明の前記広帯域光吸収性光触媒が分散しているため、成形が容易であり、量産に好適であり、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒について上述した具体的な用途と同様の用途に好適に使用可能である。
本発明の成形体は、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒を有しているため、本発明の前記広帯域光吸収性光触媒について上述した具体的な用途と同様の用途に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、実施例1及び比較例1の可視光照射後に紫外光照射した場合における光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1及び比較例1の可視光照射後における光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例1及び比較例1の紫外光照射後における光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2及び比較例1の可視光照射後における光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2及び比較例1の紫外光照射後における光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例2の太陽光(紫外光及び可視光を含む)照射後における光触媒活性の評価結果を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の成形体をデスクトップ型パソコンとした場合の一具体例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、本発明の成形体をノート型パソコンとした場合の一具体例を示す概略説明図である。
【図9】図9は、本発明の成型体を携帯電話とした場合の一具体例を示す概略説明図であり、図9(A)は正面図、図9(B)は側面図、及び図9(C)は背面図である。
【符号の説明】
【0109】
1 パソコン本体
2 ディスプレイ部
3 キーボード部
4 マウス
5 ハードディスク装置
10 デスクトップ型パソコン
20 ノート型パソコン
21 ノートパソコン本体
22 液晶表示パネル部
23 キーボード部
24 ポインティングディバイス
25 ハウジング
30 携帯電話
31 表示部
32 キー操作部
33 裏蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒活性を有するアパタイトと、紫外光吸収性金属原子と、可視光吸収性金属原子とを少なくとも含んでなり、前記紫外光吸収性金属原子が、タングステン(W)及びバナジウム(V)の少なくともいずれかであることを特徴とする広帯域光吸収性光触媒。
【請求項2】
光触媒活性を有するアパタイトが金属原子を有してなり、該金属原子の少なくとも一部が、紫外光吸収性金属原子及び可視光吸収性金属原子により置換されてなる請求項1に記載の広帯域光吸収性光触媒。
【請求項3】
紫外光吸収性金属原子の含有量が、全金属原子に対し、0.001〜0.1mol%である請求項1から2のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
【請求項4】
可視光吸収性金属原子が、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
【請求項5】
同条件下で紫外光(UV光)を連続2時間照射時の光触媒活性(A2)と連続5時間照射時の光触媒活性(A5)との比(A5/A2)が、1.3以上である請求項1から4のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒。
【請求項6】
光触媒活性を有するアパタイト中に、紫外光吸収性金属原子と、可視光吸収性金属原子とをドープさせるドープ工程を少なくとも含むことを特徴とする広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
【請求項7】
光触媒活性を有するアパタイト中への紫外光吸収性金属原子と可視光吸収性金属原子とのドープが、前記紫外光吸収性金属原子を含む化合物と、前記可視光吸収性金属原子を含む化合物とを溶解させた水溶液中に、前記アパタイトを浸漬させることにより行われる請求項6に記載の広帯域光吸収性光触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒を少なくとも含む広帯域光吸収性光触媒組成物。
【請求項9】
樹脂を含む請求項8に記載の広帯域光吸収性光触媒含有組成物。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒、及び付記8から9のいずれかに記載の広帯域光吸収性光触媒含有組成物の少なくともいずれかを用いて形成されたことを特徴とする成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−239514(P2006−239514A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56583(P2005−56583)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】