説明

広帯域分配器

【課題】出力端子に高電圧が入力された場合でもその影響をより少なくするとともに、広帯域なアイソレーション特性を持つ広帯域分配器を提供する。
【解決手段】入力端子1に一端が接続された第1の容量5と、前記第1の容量の他端にゲート端子が接続された第1のFET6と、前記第1のFETのドレイン端子と第1の容量の一端の間に接続された第1のフィードバック回路4と、第1のFETのソース端子6Sとグランド間に接続された第1のソース回路7と、第1のFETのドレイン端子と第1の出力端子2間に接続された第2の容量8とからなる第1の増幅器と、前記入力端子と第2の出力端子3間に接続され、第3の容量10、第2のFET11、第2のフィードバック回路9、第2のソース回路12及び第4の容量13からなる第2の増幅器と、第1のFETのソース6Sと第2のFETのソース11S間に接続されたアイソレーション回路14により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力分配器に関し、特に、広帯域の電力分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのシステム信号で複数の受信機を動作させる場合、入力信号を複数の出力に分岐させることが必要になる。入力信号を複数に分岐させる回路(分配器)は、各受信機の受信感度を向上させるためにも、低ロス(損失)であり、かつ、小型であることが要求される。小型化のためには、分配器をチップ内に集積化することが重要である。また、分配器において分岐信号の周波数範囲は、例えばCATV(Community Antenna Television)の場合、55MHzから860MHzと十分に広くなければならない。さらに入出力のインピーダンス整合、出力同士のアイソレーションも重要である。
【0003】
このような特性を満足させるための分配器の関連技術として、例えば特許文献1(US 5,045,822)には、ゲート−ドレイン間にフィードバック経路を有し、ソースがGNDに接続されたFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)を2つ以上用い、入力端子を2つのFETのゲート端子に接続し、FETのドレインを出力端子に接続することで、1入力多分岐の回路を構成し、FETのドレイン同士を抵抗で接続した回路構成が開示されている。1つの出力端子から他方の出力端子を見た場合、フィードバック抵抗を通り、他方のFETのゲート−ドレインを通る信号と、FETのドレイン同士を接続した抵抗を通る信号の位相が180°ずれ、その信号の振幅は互いに等しいため、他方の出力端子に現れる信号は打ち消される。この結果、出力端子同士のアイソレーションは良好となり、またこの信号の打ち消しは広い周波数帯域で起こる。
【0004】
図9は、広帯域分配器において出力端子同士のアイソレーションを向上させる回路構成を示す図(特許文献1参照)である。スプリッター回路30は、パワー分配器のサブ回路32と出力、出力間のインピーダンス回路(output interport impedance:出力ポート間インピーダンス)24を持つ。入力端子36から入力された電力は、まずGNDと入力端子との間に設けられた容量Cによりリファレンス電圧に固定される。入力端子は同時にFET Q1とFET Q2のゲートにインダクタL1を通して接続されている。ソースをGNDに接地されたFETのドレイン端子は出力端子38と出力端子20にそれぞれ接続されている。FET Q1とFET Q2のドレインとゲートはそれぞれフィードバック回路21とフィードバック回路23とで接続される。抵抗R1とインダクタL2の直列接続、及び抵抗R2とインダクタL3の直列接続で構成されたこれらのインピーダンスは、FETの入出力インピーダンスマッチング及びゲイン補償を実現する。出力端子38及び出力端子20はこれらの間にあるインピーダンス回路24により直接接続されている。このインピーダンス回路24は、抵抗R3とインダクタL4の直接接続であることが望ましい。
【0005】
出力端子38と20のアイソレーションは、パワー分配器、パワースプリッタには重要である。FET Q1とQ2のようなアクティブデバイスを用いることで、出力端子38の反射波はドレイン−ゲート間の容量、及びゲート−GND間の容量によりFET Q1を通る。この位相の変わらない信号は直接FET Q2に入り、おおよそ180°の位相シフトを作る。この信号は出力端子20において見られる。図9の回路では、これにより出力端子同士のアイソレーションの劣化が見られる。
【0006】
インピーダンス回路(出力ポート間インピーダンス)24によりスプリッター回路30では、前記信号劣化のほかの劣化が生じる。最も簡単な構成では、この回路(出力ポート間インピーダンス)24は抵抗R3のみで実現される。出力端子38の信号は、この抵抗R3で位相回りなしで出力端子20に供給される。2つの経路を通った、位相が互いに180°異なる、同一の信号強度の信号が、出力端子20で結合されるため、結果として、キャンセリングが起き、出力端子20で見られる信号は減少される。
【0007】
FETを通る信号は実際にはおおよそ180°よりもその位相が進んだとする。位相180°からのオフセットは、インピーダンス回路(出力ポート間インピーダンス)24を構成するインダクタL4により2つの経路の位相差が180°となるように補償される。
【0008】
また特許文献2には、CATV等のように多チャンネル広帯域に亘る信号を安定に、高い利得で増幅できる広帯域増幅器が開示されている。入力端子に接続された電力分配器及び出力端子に接続された電力結合器の間にプッシュプル形式に接続された第1及び第2の増幅回路を含み、各増幅回路は、入力側を構成する第1段の増幅部と第2段の増幅部とが縦続接続される一方、第2段の増幅部と出力側を構成する第3段の増幅部とがカスコード接続され、更に、第2段の増幅部の入力側と第1段の増幅部の入力側の間に、第1の負帰還回路を接続し、第3段の増幅部の出力側と第2段の増幅部の入力部との間に第2の負帰還回路が接続された構成を有する。特許文献2において、電力分配器は入力側トランスで構成されている。電力結合器は出力側トランスによって構成されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5045822号明細書
【特許文献2】特開平10−22746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下に本発明による関連技術の分析を与える。
【0011】
図9を参照して説明した関連技術は、以下のような問題点を有している。
【0012】
出力端にESD(Electrro Static Discharge)や大信号が入力された場合、あるいは大信号を扱う場合、出力端子同士を接続している抵抗(図9のインピーダンス回路24の抵抗R3)が弱く見えてしまう。
【0013】
また、この回路を用いても、十分に出力端子のアイソレーションを下げることは出来ない。
【0014】
さらに、アイソレーションを向上させるように回路定数を調整すると、入出力端子間のゲインが減少し、その帯域が狭くなる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願で開示される発明は前記課題を解決するため、概略以下の構成とされる。
【0016】
本発明の1つの側面によれば、ゲートが共通の入力端子にAC結合され、ドレインが複数の出力端子にそれぞれAC結合され、ドレイン・ゲート間にフィードバック回路が接続された複数のFETを有し、一のFETのソースが、抵抗、又は抵抗とインダクタの直列回路、を介して、他のFETのソースと接続されている分配回路が提供される。
【0017】
本発明においては、前記一のFETのドレインと前記他のFETのソースとの間に直列に接続された、容量と抵抗を備えている。本発明においては、前記一のFETのソースと前記他のFETのドレインとの間に直列に接続された、容量と抵抗を備えている。
【0018】
本発明の別の側面によれば、ゲートが共通の入力端子に容量を介して接続され、ドレインが複数の出力端子にそれぞれ容量を介して接続され、ドレイン・ゲート間にフィードバック回路が接続され、ソースとグランド間に、インダクタと抵抗の直列回路と、抵抗との並列回路が接続された、複数のFETを有し、一のFETのドレインは、抵抗、又は抵抗とインダクタの直列回路、を介して、他のFETのドレインと接続されている分配回路が提供される。
【0019】
本発明のさらに他の側面によれば、ゲートが共通の入力端子に容量を介して接続され、ドレインが複数の出力端子にそれぞれ容量を介して接続され、ドレイン・ゲート間にフィードバック回路が接続された複数のFETを有し、一のFETのドレインと他のFETのソースとの間に、容量と抵抗の直列回路を備え、前記一のFETのソースと前記他のFETのドレインとの間に、容量と抵抗の直列回路を備え、前記一のFETのドレインは、抵抗、又は抵抗とインダクタの直列回路、を介して、他のFETのドレインと接続されている分配回路が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少ない回路素子で出力端子に高電圧が入力された場合でもその影響をより少なくするとともに広帯域なアイソレーション特性を持つ広帯域分配器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一の態様において、入力端子(1)に一端が接続された第1の容量(5)と、第1の容量(5)の他端にゲート端子が接続された第1のFET(6)と、第1のFET(6)のドレイン端子と第1の容量(5)の一端の間に接続された第1のフィードバック回路(4)と、第1のFET(6)のソース端子とグランド間に接続された第1のソース回路(7)と、第1のFET(6)のドレイン端子と第1の出力端子(2)間に接続された第2の容量(8)と、を有する第1の増幅器と、
入力端子(1)に一端が接続された第3の容量(10)と、第3の容量(10)の他端にゲート端子が接続された第2のFET(11)と、第2のFET(11)のドレイン端子と第3の容量(10)の一端の間に接続された第2のフィードバック回路(9)と、第2のFET(11)のソース端子とグランド間に接続された第2のソース回路(12)と、第2のFET(11)のドレイン端子と第2の出力端子(3)間に接続された第4の容量(13)を、を有する第2の増幅器と、
第1のFET(6)のソースと第2のFET(11)のソース間に接続されたアイソレーション回路(14)と、を含む。
【0022】
本発明の別の態様において、第1のFET(6)のソースと第2のFET(11)のドレイン間に直列に接続された、容量(18)と抵抗(17)と、第1のFET(6)のドレインと第2のFET(11)のソース間に直列に接続された、容量(15)と抵抗(16)と、を備えた構成としてもよい。
【0023】
本発明の別の態様において、入力端子(1)に一端が接続された第1の容量(5)と、第1の容量の他端にゲート端子が接続された第1のFET(6)と、第1のFET(6)のドレイン端子と第1の容量(5)の一端の間に接続された第1のフィードバック回路(4)と、第1のFET(6)のソース端子とグランド間に接続された第1の抵抗(7c)と、第1の抵抗(7c)に並列に接続された第2の抵抗(7b)と第1のインダクタ(7a)の直列回路と、第1のFET(6)のドレイン端子と第1の出力端子間に接続された第2の容量(8)と、を有する第1の増幅器と、
入力端子(1)に一端が接続された第3の容量(10)と、第3の容量(10)の他端にゲート端子が接続された第2のFET(11)と、第2のFET(11)のドレイン端子と第3の容量(10)の一端の間に接続された第2のフィードバック回路(9)と、第2のFET(11)のソース端子とグランド間に接続された第3の抵抗(12c)と、第3の抵抗(12c)に並列に接続された第4の抵抗(12b)と第2のインダクタ(12a)の直列回路と、第2のFET(11)のドレイン端子と第2の出力端子間に接続された第4の容量(13)と、を有する第2の増幅器と、
第1のFET(6)のドレインと第2のFET(11)のドレイン間に接続されたアイソレーション回路(14)と、を備えている。
【0024】
本発明の別の態様において、入力端子(1)に一端が接続された第1の容量(5)と、第1の容量(5)の他端にゲート端子が接続された第1のFET(6)と、第1のFETのドレイン端子と第1の容量(5)の一端の間に接続された第1のフィードバック回路(4)と、第1のFET(6)のソース端子とグランド間に接続された第1のソース回路(7)と、第1のFET(6)のドレイン端子と第1の出力端子(2)間に接続された第2の容量(8)と、を有する第1の増幅器と、
入力端子(1)に一端が接続された第3の容量(10)と、第3の容量(10)の他端にゲート端子が接続された第2のFET(11)と、第2のFET(11)のドレイン端子と第3の容量(10)の一端の間に接続された第2のフィードバック回路(9)と、第2のFET(11)のソース端子とグランド間に接続された第2のソース回路(12)と、第2のFET(11)のドレイン端子と第2の出力端子(3)間に接続された第4の容量(13)と、を有する第2の増幅器と、
第1のFET(6)のドレインと第2のFET(11)のドレイン間に接続されたアイソレーション回路(14)と、
第1のFET(6)のソースと第2のFET(11)のドレイン間に直列に接続された、容量(18)と抵抗(17)と、
第1のFET(6)のドレインと第2のFET(11)のソース間に直列に接続された、容量(15)と抵抗(16)と、を備えた構成としてもよい。以下実施例に即して説明する。
【実施例】
【0025】
図1は、本発明の第1の実施例の構成を示す図であり、1入力2出力型の電力分配器の回路構成が示されている。図1を参照すると、本実施例の電力分配器は、入力端子1にそれぞれ一端が接続された容量5、10と、容量5、10の他端にそれぞれゲート端子が接続されたFET6、11と、FET6、11のドレイン端子と容量5、10の一端間にそれぞれ接続されたフィードバック回路4、9と、FET6、11のソース端子とGND間にそれぞれ接続されたソース回路7、12と、FET6、11のドレイン端子と出力端子2、3間にそれぞれ接続された容量8、13と、FET6、11のソース端子間に接続されたアイソレーション回路14と、を備えている。フィードバック回路4、9は、抵抗、又は、抵抗とインダクタの直列回路を含む。ソース回路7、12は抵抗を含む。アイソレーション回路14は、抵抗、又は、抵抗とインダクタの直接回路を含む。
【0026】
本実施例において、出力端子2から出力端子3への経路としては、
経路A:[出力端子2]→[容量8]→[フィードバック回路4]→[容量10]→[FET11のゲート−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3]、
経路B:[出力端子2]→[容量8]→[FET6のドレイン−ソース]→[アイソレーション回路14]→[FET11のソース−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3]
の2つがあり、2つの経路A、Bは位相が互いに180°ずれることで、2つの経路A、Bが交わる出力端子3では信号が打ち消される。これにより、良好なアイソレーション特性が得られる。
【0027】
また、本実施例において、出力端子2にESDパルスが入ってきた場合、アイソレーション回路14はFET6、11のソース端子に接続されているため、図9の構成のように、FETのドレイン間に接続されている場合に比べてより良く保護される。
【0028】
大信号を扱う場合、例えば出力端子2及び出力端子3における電圧振幅の位相が回路のライン引き回し、対地容量などでずれた場合、図9の回路では、回路(出力ポート間インピーダンス)24に大電流が流れてしまう。
【0029】
これに対して、本実施例においては、出力端子2及び出力端子3における電圧振幅の位相がずれた場合でも、アイソレーション回路14はFET6、11のソース端子に接続されているため、出力端子2、3に現れる電圧振幅より十分小さい電圧振幅がソース端子に現れることになり、出力端子2及び出力端子3における電圧振幅の位相がずれた場合でも、アイソレーション回路14には大電流が流れにくい構成とされている。
【0030】
図2は、本発明の第2の実施例の構成を示す図である。本実施例は、出力端子のアイソレーションを更に向上させ、かつゲイン特性の広帯域化を図るものである。図2を参照すると、本実施例の電力分配器は、図1の構成に対して、さらに、FET6のドレイン端子とFET11のソース端子11S間に、容量15と回路16(抵抗)からなる直列回路を接続し、FET11のドレイン端子とFET6のソース端子6S間に、容量18と回路17(抵抗)からなる直接回路が接続されている。
【0031】
出力端子2から見た出力端子3への経路において、
経路A([出力端子2]→[容量8]→[フィードバック回路4]→[容量10]→[FET11のゲート−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3])の位相は、FET11のゲート−ドレインの位相特性により周波数が上がるにつれ、180°よりも更に大きくなっていく。
【0032】
これに対し、経路B([出力端子2]→[容量8]→[FET6のドレイン−ソース]→[アイソレーション回路14]→[FET11のソース−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3])では、周波数が上がってもその位相の変化は、経路Aよりも少ない。このため、周波数が上がるにつれて、出力端子3での位相キャンセルがずれてしまう。
【0033】
図2において、容量15、回路16からなる直列回路は、
経路C:[出力端子2]→[容量8]→[容量15]→[回路16]→[FET11のソース−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3]
を追加することになり、この経路の周波数に対しての位相特性及びロス特性を、周波数が上がり、2つの経路A、Bの位相差が180°よりも大きくなり、位相キャンセルが起こりにくくなった場合でも、出力端子3で信号が打ち消しあうように、調整する。この結果、本実施例によれば、前記第1の実施例と比べて、より広帯域なアイソレーション特性を得ることが出来る。
【0034】
さらに、この容量15、回路16からなる直列回路は、ゲイン特性の広帯域化にもつながる。すなわち、十分低い周波数において、FET11のソース抵抗は、ソース回路12、及び、アイソレーション回路14とFET6のソース回路7からなる直列抵抗と、の並列回路で構成されるが、周波数が上がると、ソース回路12と、アイソレーション回路14及びFET6のソース回路7の直列抵抗との並列回路に、更に、回路16と容量15、容量8、出力端子2の出力インピーダンス(75Ω)の直列回路が並列に接続されることになり、FET11のソースのインピーダンスは、低周波よりも高周波の方が低くなる。ゲイン特性は高周波において下がってくるので、本実施例の回路構成により、ゲイン特性を広帯域化することができる。
【0035】
図3は、本発明の第3の実施例の構成を示す図である。本実施例は、出力端子のアイソレーションを更に向上させるための回路であり、1入力2出力型の回路である。図3を参照すると、本実施例においては、図1のソース回路7を、FET6のソース端子とGND間にそれぞれ接続された抵抗7cと、抵抗7cと並列に接続された、インダクタ7aと抵抗7bの直列回路とで構成し、図1のソース回路12を、FET11のソース端子とGND間にそれぞれ接続された抵抗12cと、抵抗12cと並列に接続された、インダクタ12aと抵抗12bの直列回路とで構成し、さらに、アイソレーション回路14をFET6、11のドレイン端子間に接続している。アイソレーション回路14は、抵抗、又は、抵抗とインダクタの直接回路を含む。
【0036】
出力端子2から見た出力端子3へ抜ける信号は、
径路D:[出力端子2]→[容量8]→[フィードバック回路4]→[容量10]→[FET11のゲート−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3]
径路E:[出力端子2]→[容量8]→[アイソレーション回路14]→[容量13]→[出力端子3]
の2つ経路の位相が互いに180°ずれることで位相キャンセルが起こり打ち消される。
【0037】
図1の前記第1の実施例において、[出力端子2]→[容量8]→[フィードバック回路4]→[容量10]→[FET11のゲート−ドレイン]を通る経路は、FET11のゲート−ドレインの周波数特性のため、高周波になると、位相が−180°よりも大きくなる。
【0038】
図3の本実施例においては、インダクタ12a及び抵抗12bからなる直列回路と抵抗12cからなる並列回路がFET11のソースに接続されているため、FET11のソースの位相は、高周波で徐々に進み、FET11のゲート−ドレイン特性の高周波でのずれを抑えることが出来る。この結果、高周波でも、位相キャンセルを実現することが出来る。
【0039】
図4は、本発明の第4の実施例の構成を示す図である。本実施例は、出力端子のアイソレーション特性を更に向上させるものである。図2の第2の実施例では、アイソレーション回路14は、FET6のソース端子6SとFET11のソース端子11Sとの間に接続されているが、本実施例では、アイソレーション回路14を、FET6のドレイン端子とFET11のドレイン端子の間に接続している。
【0040】
FET6のドレイン端子とFET11のソース端子との間に設けた容量15と回路16からなる直接回路を、出力端子2から出力端子3を見たときの2つの経路の位相差が180°から更に大きくなり、位相キャンセルが起こりづらい周波数において、位相キャンセルするようにその値を調整することで、広帯域にアイソレーション特性を得ることができる。
【0041】
また、図2の前記第2の実施例と同様に、この容量15と回路16からなる直列回路、及び、容量18と回路17からなる直列回路は、入力端子1から出力端子2、又は出力端子3を見たときのゲイン特性の広帯域化も実現することが出来る。
【0042】
以下に、具体例を説明する。この具体例では、図1の第1の実施例において、フィードバック回路4を、抵抗、又は抵抗とインダクタの直列回路で構成し、ソース回路7を抵抗で構成し、アイソレーション回路14を抵抗、又は、抵抗とインダクタ、マイクロストリップラインの直列回路で構成している。図5に、回路とその定数示す。
【0043】
抵抗4、9:450 ohm
容量5、10:4.4 pF
抵抗7、12:19 ohm
抵抗14 7 ohm
容量8、13 330pF
FET6、11 Wg(ゲート幅)=1.6mm
【0044】
図5における回路定数はあくまで一例であり、その値は以下に示す位相キャンセルのメカニズムに基づいて適宜調整されるため、複数の組み合わせがあるのが一般的である。
【0045】
前述したように、図1において、出力端子2から出力端子3への経路は、
経路A:[出力端子2]→[容量8]→[フィードバック回路4]→[容量10]→[FET11のゲート−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3]を通る経路、
径路B:[出力端子2]→[容量8]→[FET6のドレイン−ソース]→[アイソレーション回路14]→[FET11のソース−ドレイン]→[容量13]→[出力端子3]を通る経路がある。
【0046】
経路BではFET6のドレイン−ソース、FET11のソース−ドレインを通る経路となるため、出力端子3に現れる信号の位相はほぼ0°とみなせる。
【0047】
経路Aでは、信号はFET11のゲート−ドレインを通るため、その位相は、ほぼ180°、元の信号から位相が遅れた信号となる。
【0048】
ゲートから信号が入力された際(signal input from gate)のゲート−ドレイン間位相シフト、ゲート−ソース間位相シフトの様子を図6(A)、(B)に示す。
【0049】
ソースから信号が入力された場合(signal input from source)の、ソース−ゲート間位相シフト、ソース−ドレイン間の位相シフトの様子を図6(C)、(D)に示す。
【0050】
ドレインから信号が入力された場合(signal input from drain)の、ドレイン−ゲート間位相シフト、ドレイン−ソース間位相シフトの様子を図6(E)、(F)に示す。
【0051】
出力端子3においてこの2つの信号は合成されることとなるので、結果として信号が打ち消される。これにより良好なアイソレーション特性が得られる。得られる効果は従来回路と同じであるが、アイソレーションを確保する為の回路がFETのドレイン同士に接続されているか、ソース同士に接続されているかという点で異なっている。また図6の回路を適用した際の効果を図7に示す。
【0052】
前述したように、図1の回路構成では、このソース端子同士に、アイソレーション特性を向上する回路(アイソレーション回路14)が接続されているため、例えば、出力端子2にESDパルスが入ってきた場合に、アイソレーション回路14は、FETのソース端子に接続されており、あるいは、大信号を扱う場合、例えば出力端子2及び出力端子3における電圧振幅の位相が回路のライン引き回し、対地容量などでずれた場合、アイソレーション回路14はFETのソース端子に接続されるため、出力端子2、3に現れる電圧振幅より十分小さい電圧振幅がFETのソース端子に現れることになり、出力端子2及び出力端子3における電圧振幅の位相がずれた場合でも、アイソレーション回路14に大電流が流れにくい構成となっている。
【0053】
図8は、図2、図3の実施例の作用効果を説明するための図であり、ゲイン特性(図8(a))とアイソレーション特性(図8(b))が示されている。図8は、あくまで一例であり、上記で述べた容量15と回路16からなる回路、及び、容量18と回路17からなる回路の定数を任意に変えることでその形を自由に調整することができる。
【0054】
図2において、容量15、回路16からなる直列回路はゲイン特性の広帯域化にもつながる。FET11において、十分低い周波数でそのソース抵抗は、ソース回路12、及び、アイソレーション回路14とFET6のソース回路7からなる直列抵抗の並列回路で構成されるが、周波数が上がると、この並列回路に、更に、回路16と容量15、容量8、出力端子2の出力インピーダンス(75Ω)の直列回路が並列に接続されることになり、FET11のソースのインピーダンスは低周波よりも高周波の方が低くなる。ゲイン特性は高周波において下がってくるので、この回路によりゲイン特性を広帯域化することができる。
【0055】
なお、上記の特許文献1、2の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施例の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施例の構成を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施例の具体例を示す図である。
【図6】FETの各端子間の位相差を表す図である。
【図7】本発明の第1の実施例におけるアイソレーション特性を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施例におけるアイソレーション特性を示す図である。
【図9】関連技術(特許文献1)の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 入力端子
2、3 出力端子
4、9 フィードバック回路
5、10 容量(DCカット容量)
6、11 FET(増幅用FET)
6S、11S ソース端子
7 ソース回路
7a インダクタ
7b、7c 抵抗
8、13 容量(DCカット容量)
12 ソース回路
12a インダクタ
12b、12c 抵抗
14 アイソレーション回路
15、18 容量
16、17 回路(抵抗)
20、38 出力端子
21、23 フィードバック回路
24 インピーダンス回路
30 パワー分配器(スプリッタ回路)
32 サブ回路
36 入力端子
Q1、Q2 FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートが共通の入力端子に容量を介して接続され、ドレインが複数の出力端子にそれぞれ容量を介して接続され、ドレイン・ゲート間にフィードバック回路が接続された複数のFET(電界効果トランジスタ)を有し、一のFETのソースが、抵抗、又は抵抗とインダクタの直列回路、を介して、他のFETのソースと接続されている、ことを特徴とする分配回路。
【請求項2】
前記一のFETのドレインと前記他のFETのソースとの間に、容量と抵抗の直列回路を備えている、ことを特徴とする請求項1記載の分配回路。
【請求項3】
前記一のFETのソースと前記他のFETのドレインとの間に、容量と抵抗の直列回路を備えている、ことを特徴とする請求項1記載の分配回路。
【請求項4】
ゲートが共通の入力端子に容量を介して接続され、ドレインが複数の出力端子にそれぞれ容量を介して接続され、ドレイン・ゲート間にフィードバック回路が接続され、ソースとグランド間に、インダクタと抵抗の直列回路と、抵抗との並列回路が接続された、複数のFET(電界効果トランジスタ)を有し、
一のFETのドレインは、抵抗、または抵抗とインダクタの直列回路、を介して、他のFETのドレインと接続されている、ことを特徴とする分配回路。
【請求項5】
ゲートが共通の入力端子に容量を介して接続され、ドレインが複数の出力端子にそれぞれ容量を介して接続され、ドレイン・ゲート間にフィードバック回路が接続された複数のFET(電界効果トランジスタ)を有し、
一のFETのドレインと他のFETのソースとの間に、容量と抵抗の直列回路を備え、
前記一のFETのソースと前記他のFETのドレインとの間に、容量と抵抗の直列回路を備え、
前記一のFETのドレインは、抵抗、または抵抗とインダクタの直列回路、を介して、前記他のFETのドレインと接続されている、ことを特徴とする分配回路。
【請求項6】
入力端子に一端が接続された第1の容量と、
前記第1の容量の他端にゲート端子が接続された第1のFETと、
前記第1のFETのドレイン端子と前記第1の容量の一端の間に接続された第1のフィードバック回路と、
前記第1のFETのソース端子とグランド間に接続された第1のソース回路と、
前記第1のFETのドレイン端子と第1の出力端子間に接続された第2の容量と、
前記入力端子に一端が接続された第3の容量と、
前記第3の容量の他端にゲート端子が接続された第2のFETと、
前記第2のFETのドレイン端子と前記第3の容量の一端の間に接続された第2のフィードバック回路と、
前記第2のFETのソース端子とグランド間に接続された第2のソース回路と、
前記第2のFETのドレイン端子と第2の出力端子間に接続された第4の容量と、
前記第1のFETのソースと前記第2のFETのソース間に接続されたアイソレーション回路と、
を含むことを特徴とする分配回路。
【請求項7】
前記第1のFETのソースと前記第2のFETのドレイン間に直列に接続された、容量と抵抗と、
前記第1のFETのドレインと前記第2のFETのソース間に直列に接続された、容量と抵抗と、
を備えている、ことを特徴とする請求項6記載の分配回路。
【請求項8】
入力端子に一端が接続された第1の容量と、
前記第1の容量の他端にゲート端子が接続された第1のFETと、
前記第1のFETのドレイン端子と前記第1の容量の一端の間に接続された第1のフィードバック回路と、
前記第1のFETのソース端子とグランド間に接続された第1の抵抗と、前記第1の抵抗に並列に接続された第2の抵抗と第1のインダクタの直列回路と、を含む第1のソース回路と、
前記第1のFETのドレイン端子と第1の出力端子間に接続された第2の容量と、
前記入力端子に一端が接続された第3の容量と、
前記第3の容量の他端にゲート端子が接続された第2のFETと、
前記第2のFETのドレイン端子と前記第3の容量の一端の間に接続された第2のフィードバック回路と、
前記第2のFETのソース端子とグランド間に接続された第3の抵抗と、前記第3の抵抗に並列に接続された第4の抵抗と第2のインダクタの直列回路と、を含む第2のソース回路と、
前記第2のFETのドレイン端子と第2の出力端子間に接続された第4の容量と、
前記第1のFETのドレインと前記第2のFETのドレイン間に接続されたアイソレーション回路と、
を含むことを特徴とする分配回路。
【請求項9】
入力端子に一端が接続された第1の容量と、
前記第1の容量の他端にゲート端子が接続された第1のFETと、
前記第1のFETのドレイン端子と前記第1の容量の一端の間に接続された第1のフィードバック回路と、
前記第1のFETのソース端子とグランド間に接続された第1のソース回路と、
前記第1のFETのドレイン端子と第1の出力端子間に接続された第2の容量と、
前記入力端子に一端が接続された第3の容量と、
前記第3の容量の他端にゲート端子が接続された第2のFETと、
前記第2のFETのドレイン端子と前記第3の容量の一端の間に接続された第2のフィードバック回路と、
前記第2のFETのソース端子とグランド間に接続された第2のソース回路と、
前記第2のFETのドレイン端子と第2の出力端子間に接続された第4の容量と、
前記第1のFETのソースと前記第2のFETのドレイン間に直列に接続された、容量と抵抗と、
前記第1のFETのドレインと前記第2のFETのソース間に直列に接続された、容量と抵抗と、
前記第1のFETのドレインと前記第2のFETのドレイン間に接続されたアイソレーション回路と、
を含むことを特徴とする分配回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−177400(P2009−177400A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12676(P2008−12676)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】