説明

広範囲の抗菌活性を有するコーティング剤としてのキトサンヒドロゲル誘導体

本発明は、医療器具の保護およびコーティング用の幅広い抗菌性を有するヒドロゲルマトリックスを形成する、水溶性四級化キトサン誘導体に関する。ヒドロゲル形成を達成するために、四級化キトサンに重合性基、特に光架橋性基、例えばメタクリレート、PEG誘導体をグラフトさせ、これを熱重合法または紫外線重合法によりヒドロゲル化することができる。ヒドロゲルは、平衡状態において水を含有しクッション状の親水膜を形成する、水和された架橋ポリマーである。本発明は、多くの医療器具、例えば、コンタクトレンズ、生体インプラントなどの生物医学的器具において、幅広く用いられる。本発明は、光架橋性基をグラフトさせた四級化アンモニウムキトサン誘導体に基づく新規ヒドロゲルの形成について記載するものであり、したがって、抗菌性親水コーティング剤としてのヒドロゲルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]キトサンは、グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコース)のβ−1,4−連結ポリマーおよびより少量のN−アセチルグルコサミンである。それは、カニおよびエビ加工業の豊富な副産物であるキチン(ポリ−N−アセチルグルコサミン)の脱アセチル化により形成する。
【背景技術】
【0002】
[0002]天然キトサンの水溶性および抗菌性は、キトサンの四級化により達成または高めることができる。四級化キトサンは、C−2位のアミノ基を四級化することによって、多糖主鎖上に永久正荷電がもたらされている。四級化キトサンは、化粧品、食品の保存および包装、コーティング材料、殺菌剤、ならびに生物医学的用途において有用性が見いだされている(特開2005−290297号、特開平08−144121号、特表2004−515813号)。
【0003】
[0003]したがって、四級化キトサンは、ヒドロゲル形成に利用して抗菌性コンタクトレンズ用コーティングとして配合することができる。ヒドロゲル形成を達成するために、四級化キトサンに(メタ)アクリレートのような光架橋性基をグラフトさせ、これを紫外線重合法によりヒドロゲル化することができる。ヒドロゲルは、平衡状態において水を含有する水和された架橋ポリマーであり、生体適合性の程度が高いため、コンタクトレンズ、生体インプラント、例えば、導尿カテーテル、ペースメーカー、心臓弁、人工心臓、人工乳房、眼内レンズ、創傷被覆材、人工臓器、および生物活性試薬のためのデリバリー担体など、多くの生物医学的用途において、幅広く用いられてきた。しかしながら、医療器具の抗菌性コーティングとしての四級化キトサンヒドロゲルの使用に関しては、研究が行われていない。本発明は、重合性基、特に光架橋性基をグラフトさせた四級化キトサンに基づく新規ヒドロゲルの形成について記載するものであり、結果として得られる抗菌活性を有する医療器具に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−290297号
【特許文献2】特開平08−144121号
【特許文献3】特表2004−515813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0004]本発明の目的は、新規の有用な四級化キトサン誘導体、該四級化キトサン誘導体の生産方法、キトサンヒドロゲル、該ヒドロゲルの生産方法、および該ヒドロゲルを用いた物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0005]本発明は以下の態様を提供する:
[1]重合性有機部分を有する四級化キトサン誘導体。
[2]以下の式(1)により表されるアンモニウム基を有する、[1]の四級化キトサン誘導体:
−N(R (1)
[式中、各Rは、独立して、水素および置換または非置換アルキル基からなる群より選
択され、(R)のうち2または3つが組み合わさって、置換または非置換脂肪族環状基を形成していてもよい]。
[3](R)の少なくとも1つが、1〜18の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基である、[2]の四級化キトサン誘導体。
[4]重合性有機部分が以下の式により表される、[1]〜[3]のいずれか一つの四級化キトサン誘導体:
−Y−P
(式中、Pは重合性基であり;Yはスペーサー基である)。
[5]前記−N(R基が−NR’R’’[式中、R’およびR’’は、R’がR’’より多くの炭素原子を有するという条件で、独立して、水素および置換または非置換アルキル基からなる群より選択される]である、[2]の四級化キトサン誘導体。
[6]重合性有機部分を有する四級化キトサン誘導体の生産方法であって、四級化キトサン誘導体と、重合性有機部分を有するハロゲン化物とを反応させる段階を含む方法。
[7]前記ハロゲン化物が以下の式(2)により表される、[6]の方法:
X−P (2)
[式中、Pは重合性有機部分であり;Xはハロゲン原子である]。Xの好ましい例としては、Cl、BrおよびIが挙げられる。ハロゲン化物X−Pの 好ましい例としては、X−Z−COOCR=CH[式中、Rは、−Hまたは−CHであり;Zは、化学結合またはポリエチレングリコール鎖含有基、例えば−CHCOO−(CHCHO)−(nは1以上であり、好ましくは3以上である)である]が挙げられる。
[8][1]〜[5]のいずれか一つの前記四級化キトサン誘導体、開始剤および水を含む重合性組成物を重合する段階を含む、キトサンヒドロゲルの生産方法。
[9]前記重合段階が、[1]〜[5]のいずれか一つの前記四級化キトサン誘導体、光開始剤および水を含む光重合性組成物に紫外線(UV)を照射する段階を含む、[8]のキトサンヒドロゲルの生産方法。
好ましい重合性(特に光重合性)組成物は、組成物の全量につき0.1〜20重量%の[1]〜[5]のいずれか一つの前記四級化キトサン誘導体、0.1〜1.0重量%の開始剤(特に光開始剤)、1〜99.9重量%の1以上のコモノマー、および0〜80重量%の水を含む。該組成物は、本発明の利点を損なわないという条件で、他の成分を含有していてもよい。
[10][8]または[9]の方法により生産されるヒドロゲル。
[11][10]のヒドロゲルを含むコーティングを有する医療器具。
[12][10]のヒドロゲルを含むコーティングを有するコンタクトレンズ。
[13][10]のヒドロゲルを含有する医療器具。
[14][10]のヒドロゲルを含有する化粧品。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】[0006]図1は、いくつかのキトサンに基づくヒドロゲル(実施例15)の走査型電子顕微鏡写真を示す。図1(a)は、四級化されていないキトサンヒドロゲルに該当し;図1(b)は、トリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMAヒドロゲルに該当し;図1(c)は、トリヘキシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAヒドロゲルに該当し;図1(d)は、トリデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAヒドロゲルに該当し;図1(e)は、ジメチルヘキシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAヒドロゲルに該当し;そして、図1(f)は、ジメチルデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAに該当する。
【図2−1】図2は、トリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMAヒドロゲルがケイ素含有硬質ガス透過性コンタクトレンズ(RGP CL)の表面上にコーティングされたことを明らかにする原子間力顕微鏡(AFM)観察の結果を示す。図2−1は対照(アルゴンプラズマ処理前)の表面の観察結果を示す。
【図2−2】図2−2はアルゴンプラズマ処理レンズの表面の観察結果を示す。
【図2−3】図2−3はトリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMAでコーティングされたRGP CL(Csコーティングされたレンズ)の表面の観察結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0007]本発明は、医療器具の保護およびコーティングのための幅広い抗菌性を有するヒドロゲルマトリックスを形成する、水溶性四級化キトサン誘導体に関する。ヒドロゲルは、その親水性が微生物の可逆的で非特異的な付着を本質的に妨げるため、抗菌性コーティングとして魅力的である。
【0009】
[0008]ヒドロゲル形成を達成するために、四級化キトサンに重合性基、特に光架橋性基、例えばメタクリレート、PEG誘導体をグラフトさせ、これを熱重合法または紫外線重合法によりヒドロゲル化することができる。ヒドロゲルは、平衡状態において水を含有しクッション状の親水膜を形成する、水和された架橋ポリマーである。ヒドロゲルは生体適合性の程度が高く、抗菌性を有し、濡れ性が良好であるため、本発明は、多くの医療器具、例えば、コンタクトレンズ、生体インプラント、例えば、導尿カテーテル、ペースメーカー、心臓弁、人工心臓、人工乳房、眼内レンズ、創傷被覆材、人工臓器、および生物活性試薬のためのデリバリー担体、関節全置換物(total joint replacement)などの生物医学的器具において、幅広く用いられる。本発明は、重合性基、特に光架橋性基をグラフトさせた四級化アンモニウムキトサン誘導体に基づく新規ヒドロゲルの形成について記載するものであり、したがって、抗菌性の親水性コーティング剤としてのヒドロゲルを提供する。
【0010】
[0009]ここで、本発明についてさらに記載する。以下の節において、本発明の異なる観点をより詳細に定義する。そのように定義した各観点は、組み合わせないように明示されていない限り、任意の一または複数の他の観点と組み合わせることができる。とりわけ、好ましいまたは有利であると示されている特徴を、好ましいまたは有利であると示されている任意の一または複数の他の特徴と組み合わせることができる。
【0011】
[0010]第一の非常に好ましい態様において、本発明の抗菌性ヒドロゲルは、重合性カチオン性四級化キトサンのラジカル重合により調製した架橋ヒドロゲルを含む。
[0011]重合性カチオン性四級化キトサンの構造の概要を以下の式(3)に示す:
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、Pは重合性基であり;Yはスペーサー基であり;R’およびR’’は、独立して、水素および置換または非置換アルキル基からなる群より選択される]。式(3)は、本発明を説明するためにのみ例示している。本発明の重合性四級化キトサンは式(3)の態様に限定されるわけではないことに留意すべきである。
【0014】
[0012]カチオン性四級化キトサンは四級化キトサン誘導体から調製することが好ましい
が、他のカチオン性四級化キトサンを用いてもよい。これらのカチオン性四級化キトサンは、四級化キトサン鎖に沿ってトリアルキルアンモニウム基を含有する。四級化キトサンは、第一級ヒドロキシル基を介して、好ましくはスペーサー基Yを介して、四級化キトサン鎖に結合している重合性基も含有する。
【0015】
[0013]式(3)を参照して、カチオン性四級化キトサンの好ましい態様は、3つのアルキル基がすべて同一であるトリアルキルアンモニウム基をポリマー鎖に沿って含有する四級化キトサンを含む。四級化アンモニウム部分の非限定的例としては、トリメチルアンモニウム−、トリエチルアンモニウム−、トリプロピルアンモニウム−、トリブチルアンモニウム−、トリペンチルアンモニウム−、トリヘキシルアンモニウム−、トリオクチルアンモニウム−、トリデシルアンモニウム−、トリドデシルアンモニウム−、トリオクタデシルアンモニウム−が挙げられる。
【0016】
[0014]アルキル基の1つが他の2つと異なるトリアルキルアンモニウム部分が、より好ましい。より好ましいこの態様の非限定的例としては、ジメチルエチルアンモニウム−、ジメチルプロピルアンモニウム−、ジメチルブチルアンモニウム−、ジメチルペンチルアンモニウム−、ジメチルヘキシルアンモニウム−、ジメチルオクチルアンモニウム−、ジメチルデシルアンモニウム−、ジメチルドデシルアンモニウム−、ジメチルオクタデシルアンモニウム−、ジヘキサデシルメチルアンモニウム−、ジヘキサデシルエチルアンモニウム−、ジヘキサデシルプロピルアンモニウム−、およびジヘキサデシルブチルアンモニウム−が挙げられる。
【0017】
[0015]式(3)を再度参照し、重合性基Pは、ビニル、アクリレート、メタクリレート、ビニルフェニレン、シンナモイル、アリルを含む群から選択される重合性基の1つを含むことができる。重合性基Pは、スペーサー基Yを介してカチオン性四級化キトサンに結合していることが好ましい。スペーサー基は、−(C2n)−、またはより好ましくは−(C2nO)−[式中、n=0〜20、またはより好ましくは2〜10である]を含む基から選択することができる。
【0018】
[0016]好ましい態様では、ヒドロゲルを重合性カチオン性四級化キトサンのラジカル重合により生産する。他の好ましい態様では、重合性カチオン性四級化キトサンを、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリセロールモノアクリレート、アクリロイルホスホリルコリン、ポリエチレングリコールジアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、グリセロールモノメタクリレート、メタクリロイルホスホリルコリン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、スチレンおよびN−ビニルピロリドン、またはそれらの混合物を含む非限定的群から選択されるコモノマーと、共重合することができる。コモノマーの例としては、エチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびそれらの混合物のような、二官能または三官能モノマーも挙げられる。
【0019】
[0017]従来、トリアルキルアンモニウムキトサンは、求核置換反応においてヨウ化メチル、臭化ヘキシルまたは臭化デシルのようなハロゲン化アルキルと反応させて四級化構造の形成をもたらすことにより、合成することができる。以下の反応スキームI参照。本発明において、好ましい出発材料としては、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは
少なくとも75%の脱アセチル化度と、好ましくは10000〜200000g/mol(GPCにより決定)の数平均分子量を有する、キトサン粉末が挙げられる。出発キトサン材料の分子量が過度に大きい場合、本発明のキトサン誘導体を重合することは難しい。この場合、基材表面へのヒドロゲルの固定も難しくなる。
スキームI:トリアルキルアンモニウムマクロモノマーおよび該モノマーからのヒドロゲルの調製に用いられる反応スキーム
【0020】
【化2】

【0021】
N−アルキル−N,N−ジアルキルアンモニウムキトサンは、最初にアルデヒド(例えばヘキサナールおよびデカナール)でキトサンを還元的にアルキル化してイミンを形成した後、還元してN−アルキル誘導体を得ることにより、形成することもできる。その後、該アルキル誘導体をヨウ化メチルなどのハロゲン化アルキルで四級化した。以下の反応スキームII参照。
スキームII:ジメチルアルキルアンモニウムマクロモノマーおよび該モノマーからのヒドロゲルの調製に用いられる反応スキーム
【0022】
【化3】

【0023】
[0018]つぎに、ヒドロゲルとして施用するために、四級化キトサン誘導体に重合性基、特に光架橋性基をグラフトさせ、熱重合法または紫外線重合法によりヒドロゲル化した。ここで用いる光架橋性基はポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGMA)である。キトサンおよび四級化キトサンにPEGMA(分子量が375と小さいもの)をそれぞれグラフトさせて、キトサン−g−PEGMAおよび四級化キトサン−g−PEGMAを形成した。キトサン−g−PEGMAおよび四級化キトサン−g−PEGMAは、水酸化ナトリウムを塩基として用いてクロロ官能基化PEGMAを天然キトサンまたは四級化キトサンと反応させることにより、それぞれ合成した。グラフト反応の後、四級化キトサンの水溶性は変化しなかったが、キトサンは、親水性PEGMAのグラフト後、不溶性から可溶性に変化した。グラフトさせたPEGの存在は、PEGアッセイを採用して紫外分光法により検出することができる。
【0024】
[0019]ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリエチレングリコー
ルジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを、紫外線照射中に光架橋性四級化キトサン誘導体とブレンドすることができる。PEGDAは、ヒドロゲル骨格、膜材料および薬物送達の使用のための光化学的修飾において、幅広く用いられてきた。光架橋性PEGDAとのブレンディングは、その親水性、生体適合性および生分解性に起因して、いくつかの利点を有する。これに加えて、非荷電ポリマーであるPEGは、それ自体および他の分子との相互作用が最小限である。もっとも重要な理由は、PEGDAとブレンドすることにより、本発明のキトサン誘導体の引っ張り強さが改善されて、容易に取り扱うことができるヒドロゲルを得ることができる点である。
【0025】
[0020]本発明では、光重合が多くの利点を有するので、これを用いてヒドロゲルを作製した。光重合は、液体から水に不溶なヒドロゲルを作製するための技術として、用途が広く容易である。それはまた、ヒドロゲルの成分に有害な影響を及ぼすことなく周囲温度において短時間でヒドロゲルを形成することができる、非侵襲的(non-invasive)技術である。低い有機溶媒レベルも本方法に包含され、エピクロロヒドリン、グルタルアルデヒド、カルボジイミドなどのような(従来の化学架橋における)有毒な化学架橋剤の使用が回避される。紫外線を用いて光開始剤とよばれる感光性化合物と相互作用させ、重合を開始させることができるフリーラジカルを作り出して、架橋ヒドロゲルを形成した。したがって、ヒドロゲルを、2:1の比率のキトサン−g−PEGアクリレートまたは四級化キトサン−g−PEGアクリレートおよびPEGジアクリレートからなる溶液(20重量%の全ポリマー混合物と80重量%の水)と、少量の水溶性光開始剤(Irgacure 2959)(ポリマー混合物に対し0.1重量%)から作製することができる。これにより、キトサン誘導体をPEGDAと共重合させる場合、完全な相互貫入網目構造が形成する。溶解後、約0.25mLの各溶液をポリプロピレンチューブに加え、アルゴンパージしたガラスチャンバーに入れた。ヒドロゲルを形成するために、ガラスチャンバー内の試料溶液を紫外線に15分間暴露した。あるいは、厚さ250μmのスペーサーフレームを用いてガラススライド上で光重合を行うこともできる。前駆体溶液をガラススライド上に滴下し、他のガラススライドで覆った後、紫外線に15分間暴露し、これによりヒドロゲルを作製した。
【0026】
[0021]より孔径が大きな凍結乾燥ポリマーは、キトサンのN−アルキル化により達成することができる。キトサンおよびいくつかの四級化キトサンの凍結乾燥ポリマーのSEM横断面像を図1に示す。図1は、四級化していないキトサンヒドロゲルは多くの小さな細孔(数マイクロメートルのもの)を有し、四級化キトサンヒドロゲルは一般に100μmを超えるより大きな細孔を有することを、同じ倍率(×220)で示している。ジメチルデシルアンモニウムキトサンヒドロゲル(合成例14参照)は、ジメチルヘキシルアンモニウムキトサンヒドロゲル(合成例13参照)に比べ、比較的より大きな細孔を有することが観察された。
他の用途:
[0022]本明細書中に記載する抗菌性ヒドロゲルは、細菌および菌類に対し強い抗菌活性を示し、したがって、コンタクトレンズ用コーティングとして用いるだけでなく、細菌の攻撃を最小限にすることが望ましい配合物に包含させることもできる。例えば、それらは、化粧品配合物、例えば髪および皮膚用配合物、またはコンタクトレンズ用溶液に、低濃度で組み込むことができる。
【0027】
[0023]これらのキトサン誘導体ヒドロゲルは、ヒトまたは他の動物の体表面での微生物の増殖を防止または抑制するためにそれらの体表面上に施用または接触させることができる生物医学的または薬学的材料として、施用することもできる。
【0028】
[0024]PEGおよびキトサンのような生体適合性材料から調製した抗菌性ヒドロゲルは
、2次元または3次元の細胞培養に関与する組織工学の分野で用いることもできる。
抗菌性ヒドロゲルは、正電荷の存在に起因して、成長因子または細胞接着性タンパク質のような負に帯電している生物活性材料の送達および放出制御に、用いることもできる。
【実施例】
【0029】
合成例
[0025]キトサン粉末は、81.79%の脱アセチル化度および1.05×10g/mol(GPCにより決定)の数平均分子量を有するもので、中国のDalian Xindie Chitin Co.により供給された。N−メチル−2−ピロリジノン、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化メチル、臭化ヘキシル、臭化デシル、ヘキサナール、デカナール、塩化クロロアセチル、PEGモノアクリレート(Mn375)、PEGジアクリレート(Mn700)、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、イソプロパノールおよび水素化ホウ素ナトリウムは、Sigma−Aldrich(米国ミズーリ州Saint Louis)から購入した。分析用ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、エタノール、アセトンおよび塩化メチレンは、VWR Pte Ltd(シンガポール)から購入し、入手した状態で使用した。トルエンはモレキュラーシーブ上で乾燥した。光開始剤の4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(Irgacure 2959)は、Ciba(シンガポール)から購入した。
【0030】
[0026]H−NMRおよび13C−NMRスペクトルは、Bruker Avance
300MHz機器で記録した。フーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルは、KBrディスクを用い、4000〜400cm−1の波数範囲にわたりDigilab FTS 3100機器を用いて室温で記録した。走査型電子顕微鏡(SEM)では、ヒドロゲルを脱イオン水に2日間以上浸漬してから観察した。その後、これらのヒドロゲルを凍結乾燥機において−50℃で3時間凍結させた後減圧乾燥した。48時間の凍結乾燥後、ヒドロゲルを鋭利な刃物で切断して、横断面を得た。その後、それらをアルミニウム製スタッド(aluminium stud)の上に載せ、Jeol JFC−1600 Auto Fineコーターを用いて白金で60秒間スパッタコーティングした。その後、試料を走査型電子顕微鏡(Jeol JSM−5600LV)により画像化した。
合成例1:クロロ官能基化PEGアクリレートの調製
[0027]数平均分子量375のPEGモノアクリレート(2.36mL、7.06mmol)を100mLのトルエンに溶解し、塩化クロロアセチル(2.25mL、28.24mmol)で処理した。その後、混合物を還流下で24時間加熱した。この時間の後、溶媒および揮発物を留去し、残渣を塩化メチレン(150mL)に溶解した。該溶液を炭酸カリウム上で攪拌し、濾過した。溶媒を留去し、ヘキサンで洗浄した後、生成物が得られ、これを乾燥し、さらに精製することなく使用した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3), δ: 3.5-3.7 (-O-CH2-CH2-O-), 4.1 (Cl-CH2-COO-), 5.7 (-CH=CH2), 6.0, 6.2 (-CH=CH2)
13C-NMR (300MHz, CDCl3), δ: 63.6-69.0 (-O-CH2-CH2-O-), 128, 131 (-CH=CH2), 166 (-OCO-CH=CH2), 167 (Cl-CH2-COO-)
合成例2:トリメチルアンモニウムキトサンの調製
[0028]キトサン(1g)をN−メチル−2−ピロリジノン(50mL)に加え、1.5N NaOH溶液(15mL)で処理した。該混合物を50℃で30分間撹拌した。その後、ヨウ化ナトリウム(1.08g)およびヨウ化メチル(11.2g)を該溶液に加え、次にこれを50℃で24時間攪拌した。その後、反応混合物を濾過して不溶物を除去した後、濾液を大過剰のアセトン中に沈殿させ、濾過した。得られた生成物を濾過により収集し、減圧乾燥した。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 1.95 (-NHCOCH3) 3.33 (-N+CH3), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6)
合成例3:トリヘキシルアンモニウムキトサンの調製
[0029]トリヘキシルアンモニウムキトサンは、ヨウ化メチル(11.2g)を臭化ヘキシル(13.0g)に変更した点を除き、合成例2と同様に調製した。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 0.74 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.19 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.25 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.95 (-NHCOCH3) 3.07 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6)
合成例4:トリデシルアンモニウムキトサンの調製
[0030]トリデシルアンモニウムキトサンは、ヨウ化メチル(11.2g)を臭化デシル(17.4g)に変更した点を除き、合成例2と同様に調製した。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 0.74 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.16 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.58 (-N+CH2 CH2 (CH2)7CH3), 1.94 (-NHCOCH3), 3.02 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 3.4-4.1
(キトサン-H-2-6)
合成例5:キトサン−g−PEGMAの調製
[0031]キトサン(0.2g)を50重量%NaOH溶液の溶液(2.5mL)に加え、24時間攪拌した。その後、アルカリ性になったキトサンを濾過し、濾液をフラスコに移した。クロロ官能基化PEGアクリレート(0.5g、合成例1参照)をイソプロパノール(2.5mL)に溶解し、攪拌しつつキトサンに滴下して加えた。該混合物を室温で24時間反応させた。この時間の後、粗生成物を濾過により回収し、水(10mL)に溶解した。該溶液を2.5M HClで中和した。該溶液を遠心分離して沈殿物を除去し、上澄みにエタノール(40mL)を加えた後、生成物が溶液から沈殿した。固体を濾過し、エタノールで3回すすいだ。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 1.94 (-NHCOCH3), 3.5-3.7 (-O-CH2-CH2-O-), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6), 5.5 (-CH=CH2), 6.02 (-CH=CH2)
合成例6:トリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMAの調製
[0032]0.45mLの水中のトリメチルアンモニウムキトサン(0.2g、合成例2参照)に0.30mLの0.38M水酸化ナトリウム溶液を加えた。その後、1.5mLのイソプロパノールに溶解したクロロ官能基化PEGアクリレート(0.5g、合成例1参照)を攪拌しつつ加え、混合物を室温で3時間攪拌した。反応後、混合物を室温に冷却し、アセトンとエタノールの混合物中に沈殿させた。濾過後、生成物が得られた。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 1.95 (-NHCOCH3), 3.22 (-N+CH3), 3.5-3.7 (-O-CH2-CH2-O-), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6), 5.5 (-CH=CH2), 5.9-6.1 (-CH=CH2)
合成例7:トリヘキシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAの調製
[0033]トリヘキシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAは、トリメチルアンモニウムキトサン(0.2g)をトリヘキシルアンモニウムキトサン(0.2g、合成例3参照)に変更した点を除き、合成例6と同様に調製した。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 0.86 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.19 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.30 (-N+CH2 CH2(CH2)3CH3), 1.95 (-NHCOCH3), 3.07 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 3.5-3.7 (-O-CH2-CH2-O-), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6), 5.6 (-CH=CH2), 5.97-6.2 (-CH=CH2)
合成例8:トリデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAの調製
[0034]トリデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAは、トリメチルアンモニウムキトサン(0.2g)をトリデシルアンモニウムキトサン(0.2g、合成例4参照)に変更した点を除き、合成例6と同様に調製した。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 0.74 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.16 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.58 (-N+CH2 CH2(CH2)7CH3), 1.94 (-NHCOCH3), 3.02 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 3.5-3.7 (-O-CH2-CH2-O-), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6), 5.6 (-CH=CH2), 5.91-6.05 (-CH=CH2)
合成例9:N−ヘキシルキトサンの調製
[0035]キトサン(1.0g、6.21mmol)を1%酢酸水溶液(100mL)に溶解した。その後、ヘキサナール(0.62g、0.74mL、1当量)を加え、混合物を室温で攪拌した。1時間の撹拌後、溶液のpHを4.5に調整した。この溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(9.32mmol)の10%水溶液を加え、該溶液をさらに90分間撹拌した。この時間の後、溶液のpHを10に調整し、沈殿したN−ヘキシルキトサンを
濾過により収集し、濾液のpHが中性になるまで水洗した。これらの沈殿物を濾過し、残渣を中性になるまで蒸留水で洗浄した。未反応のアルデヒドおよび無機生成物を、エタノールおよびジエチルエーテルでソックスレー抽出した。得られたN−ヘキシルキトサンを濾過し、乾燥した。
合成例10:N−デシルキトサンの調製
[0036]N−デシルキトサンは、ヘキサナール(0.62g)をデカナール(0.97g、6.2mmol)に変更した点を除き、合成例9と同様に調製した。
合成例11:ジメチルヘキシルアンモニウムキトサンの調製
[0037]N−ヘキシルキトサン(1g、合成例9参照)をN−メチル−2−ピロリジノン(50mL)に加え、1.5N NaOH溶液(15mL)で処理した。該混合物を50℃で30分間撹拌した。その後、ヨウ化ナトリウム(1.08g)およびヨウ化メチル(11.2g)を該溶液に加え、次にこれを50℃で24時間攪拌した。その後、反応混合物を濾過して不溶物を除去した後、濾液を大過剰のアセトン中に沈殿させ、濾過した。得られた生成物を濾過により収集し、減圧乾燥した。
1H-NMR (300MHz, D2O),δ: 0.76 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3, 1.22 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.58 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.96 (-NHCOCH3), 3.24 (-N+CH3), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6)
合成例12:ジメチルデシルアンモニウムキトサンの調製
[0038]ジメチルデシルアンモニウムキトサンは、N−ヘキシルキトサン(1g)をN−デシルキトサン(1g、合成例10参照)に変更した点を除き、合成例11と同様に調製した。
1H-NMR (300MHz, D2O),δ: 0.71 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.17 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.58 (-N+CH2 CH2(CH2)7CH3), 1.94 (-NHCOCH3), 3.23 (-N+CH3), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6)
合成例13:ジメチルヘキシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAの調製
[0039]ジメチルヘキシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAは、トリメチルアンモニウムキトサン(0.2g)をジメチルヘキシルアンモニウムキトサン(0.2g、合成例11参照)に変更した点を除き、合成例6と同様に調製した。
1H-NMR (300MHz, D2O), δ: 0.75 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.22 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.58 (-N+CH2CH2(CH2)3CH3), 1.96 (-NHCOCH3), 3.22 (-N+CH3), 3.5-3.7 (-O-CH2-CH2-O-), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6), 5.51 (-CH=CH2), 5.86-5.99 (-CH=CH2)
合成例14:ジメチルデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAの調製
[0040]ジメチルデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAは、トリメチルアンモニウムキトサン(0.2g)をジメチルデシルアンモニウムキトサン(0.2g、合成例12参照)に変更した点を除き、合成例6と同様に調製した。
1H-NMR (300MHz, D2O),δ: 0.74 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.22 (-N+CH2CH2(CH2)7CH3), 1.58 (-N+CH2 CH2(CH2)7CH3), 1.94 (-NHCOCH3), 3.22 (-N+CH3), 3.5-3.7 (-O-CH2-CH2-O-), 3.4-4.1 (キトサン-H-2-6), 5.54 (-CH=CH2), 5.85-6.05 (-CH=CH2)
ヒドロゲルの調製
合成例15:キトサン−g−PEGMAおよび四級化キトサン−g−PEGMAの光重合
[0041]キトサン−g−PEGMA(0.06g、合成例5参照)およびPEGDA(0.06g)をブレンドし、水(0.48mL)に溶解した。光開始剤(Irgacure
2959)を0.1重量%(キトサン−g−PEGMA、PEGDAおよび水の全量に基づき)で加えた。得られた溶液を、2枚のガラス板およびその間の厚さ0.25mmのスペーサーフレームから作られた型に入れた。その後、該溶液を、紫外線水銀ランプを装備したHonle UV Technologyの試験機を用いて、紫外線に暴露した(365nm、15分暴露、10mW/cm)。硬化後、型を開き、ヒドロゲルを取り出し、脱イオン水で洗浄した。
【0031】
[0042]トリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMA、トリヘキシルアンモニウム
キトサン−g−PEGMA、トリデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMA、ジメチルヘキシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAおよびジメチルデシルアンモニウムキトサン−g−PEGMAから作製したヒドロゲルは、同様に調製した。
ヒドロゲルのSEM像
[0043]キトサンおよびいくつかの四級化キトサンの凍結乾燥ポリマーのSEM横断面像を図1に示す。図1は、四級化していないキトサンヒドロゲルは多くの小さな細孔(数マイクロメートルのもの)を有し、四級化キトサンヒドロゲルは一般に100μmを超えるより大きな細孔を有することを、同じ倍率(×220)で示している。ジメチルデシルアンモニウムキトサンヒドロゲル(合成例14)は、ジメチルヘキシルアンモニウムキトサンヒドロゲル(合成例13)に比べ、比較的より大きな細孔を有することが観察された。施用例
抗菌活性
一般的培養手順
光重合により調製したヒドロゲルをリン酸緩衝生理食塩水に一晩浸し、抗菌アッセイの前に数回すすいだ。細菌をトリプチケースソイ寒天培地上で24時間培養して採取した後、遠心分離により滅菌純水で2回洗浄した。純水中の細菌懸濁液(10μL)を組織培養ポリスチレンプレートのウェル中のヒドロゲルコーティングの中心に移した。ヒドロゲルを24℃で4時間(暴露時間)にわたり微生物と接触させた。その後、小容量の中和ブロスをウェルに加えて、あらゆる生存細菌を回収した。中和ブロス中の一連の10倍希釈物を調製し、トリプチケースソイ寒天培地上で平板培養した。プレートを35℃で48時間インキュベートし、コロニー形成単位を計数した。結果は以下のように表された:
[0044]対数減少値=Log(初期接種菌数)−Log(4時間の暴露時間での生存菌数)
結果
【0032】
【表1】

【0033】
キトサン誘導体でのコンタクトレンズの表面改質
モノマー溶液の調製
[0045]トリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMA(合成例6)およびPEGDAを脱イオン水に溶解した(モノマー溶液)。モノマーの比率は2:1で、モノマー濃度は5%であった。ケイ素含有硬質ガス透過性コンタクトレンズ(RGP CL)を、PTFEビーカー中で脱イオン水およびイソプロピルアルコールを用いて30分間洗浄した。
その後、それらを減圧乾燥した。洗浄したRGP CLを、50Wの電力下で60秒間にわたりアルゴンプラズマにより処理した。アルゴンガス流量は100sccmであった。その後、それらを続いて該雰囲気に15分間暴露した。プラズマ処理したRGP CLとモノマー溶液をグローブボックス(アルゴン雰囲気)に入れた。それらを完全に脱ガスした。RGP CLを少量のモノマー溶液に浸漬し、バイアルの口をしっかり締めた。その後、それらを90分間にわたり紫外線照射した(30〜35mW/cm)。トリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMAでコーティングされたRGP CL(Csコーティングされたレンズ)を、30分より長く超音波下で脱イオン水で完全に洗浄して、残留モノマーを除去した。AFM(原子間力顕微鏡)観察の結果を図2に示す。図2は、トリメチルアンモニウムキトサン−g−PEGMAがRGP CLの表面上にコーティングされたことを、明らかに示している。
抗菌活性
[0046]Csコーティングされたレンズの抗菌活性を、上記と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
接触角
[0047]接触角を、協和界面科学株式会社により製造された接触角計測器Drop Master 500を用いて、室温での液滴法により測定した。
【0036】
対照(処理していない):93.4°
Csコーティングされたレンズ:50.6°
結果は、本発明のヒドロゲルコーティングが優れた抗菌活性および濡れ性を示すことを明らかにしている。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】

【図1(d)】

【図1(e)】

【図1(f)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性有機部分を有する四級化キトサン誘導体。
【請求項2】
以下の式により表されるアンモニウム基を有する、請求項1に記載の四級化キトサン誘導体:
−N(R
[式中、各Rは、独立して、水素および置換または非置換アルキル基からなる群より選択され、(R)のうち2または3つが組み合わさって、置換または非置換脂肪族環状基を形成していてもよい]。
【請求項3】
(R)の少なくとも1つが、1〜18の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基である、請求項2に記載の四級化キトサン誘導体。
【請求項4】
重合性有機部分が以下の式により表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の四級化キトサン誘導体:
−Y−P
(式中、Pは重合性基であり;Yはスペーサー基である)。
【請求項5】
前記−N(R基が−NR’R’’[式中、R’およびR’’は、R’がR’’より多くの炭素原子を有するという条件で、独立して、水素および置換または非置換アルキル基からなる群より選択される]である、請求項2に記載の四級化キトサン誘導体。
【請求項6】
重合性有機部分を有する四級化キトサン誘導体の生産方法であって、四級化キトサン誘導体と、重合性有機部分を有するハロゲン化物とを反応させる段階を含む方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化物が以下の式により表される、請求項6に記載の方法:
X−P
[式中、Pは重合性有機部分であり;Xはハロゲン原子である]。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記四級化キトサン誘導体、開始剤および水を含む重合性組成物を重合する段階を含む、キトサンヒドロゲルの生産方法。
【請求項9】
前記重合段階が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記四級化キトサン誘導体、光開始剤および水を含む光重合性組成物に紫外線(UV)を照射する段階を含む、請求項8に記載のキトサンヒドロゲルの生産方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法により生産されるヒドロゲル。
【請求項11】
請求項10に記載のヒドロゲルを含むコーティングを有する医療器具。
【請求項12】
請求項10に記載のヒドロゲルを含むコーティングを有するコンタクトレンズ。
【請求項13】
請求項10に記載のヒドロゲルを含有する医療器具。
【請求項14】
請求項10に記載のヒドロゲルを含有する化粧品。

【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【公表番号】特表2012−532935(P2012−532935A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502034(P2012−502034)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/JP2009/063013
【国際公開番号】WO2011/007454
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【出願人】(506076891)ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー (14)
【Fターム(参考)】