床、天井または壁を形成する面構造および面形成方法
【課題】高さが高精度に調整され、かつ、強度の高い床等の面構造を容易に得る。
【解決手段】床構造1では、スラブコンクリート90に打設されたアンカー21に、六角ボルト31の六角部に板部材32が溶接されたネジ部材30が螺合され、板部材32にフラットバーである根太材12が溶接される。根太材12とスラブコンクリート90との間には無収縮モルタル8が充填され、根太材12にはステンレス鋼の床材11が溶接される。床材11の間はプラズマ溶接により塞がれる。これにより、ネジ部材30の螺合時にネジ部材30の回転により板部材32にスケールを載せて容易に高さを高精度に調整することができ、板部材32に根太材12を縦横に溶接することで強度の高い床構造1を容易に得ることができる。
【解決手段】床構造1では、スラブコンクリート90に打設されたアンカー21に、六角ボルト31の六角部に板部材32が溶接されたネジ部材30が螺合され、板部材32にフラットバーである根太材12が溶接される。根太材12とスラブコンクリート90との間には無収縮モルタル8が充填され、根太材12にはステンレス鋼の床材11が溶接される。床材11の間はプラズマ溶接により塞がれる。これにより、ネジ部材30の螺合時にネジ部材30の回転により板部材32にスケールを載せて容易に高さを高精度に調整することができ、板部材32に根太材12を縦横に溶接することで強度の高い床構造1を容易に得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床、天井または壁を形成する面構造および面形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床を形成する際に、多くの場合、根太を張り渡しておいて根太の上に床材を固定する手法が採用される。特許文献1では、スラブコンクリートにアンカーおよび高さ調整ボルトを打設しておき、高さ調整ボルトに根太支持板を螺合し、この根太支持板の上に根太をネジ留めする手法が開示されている。
【0003】
一方、食品や医薬品等の分野において、高い清浄度が求められる空間の床としてステンレスの板材を床に敷き詰め、さらに開先された床材の間を溶接材を用いてTIG(Tungsten Inert Gas)溶接にて塞いだものが利用されている。例えば、特許文献2では、山形鋼を根太として配設し、その上にコンクリートを充填し、さらにその上にステンレス板を載置して根太と栓溶接するとともにステンレス板同士も突き合わせ溶接する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−107540号公報
【特許文献2】特開2003−253798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1および2に記載の床構造では、ネジを利用して床の高さ調節が行われるが、ネジを利用する場合、ネジの回転が強固に固定されなかったり、特許文献1のようにナットを用いて煩雑な作業を経てネジを固定する必要が生じる。さらに、特許文献1の場合、多くの箇所でネジを利用した締結が行われるため、床構造の強度も向上することが困難となる。
【0005】
また、特許文献2では山形鋼が根太に利用されるが、山形鋼を組み合わせて根太を形成するには煩雑なカット作業が必要となり、さらに、ステンレス板の間を溶接棒を用いて溶接を行うと溶接部の盛り上がりを削る作業も必要となってしまう。特許文献2に記載の床構造の場合、ステンレス板の下側のコンクリートや溶接の影響による床の歪みも問題となる。また、ステンレス板の間を溶接する際に下地がコンクリートであると、コンクリートが溶接時の熱で破損してしまう(高温割れする)おそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、床のみならず天井または壁において基準面からの高さ(レベル)が高精度に調整され、かつ強度の高い面構造を容易に形成することを主たる目的とし、さらに、面部材が溶接により密閉される場合の面の歪みを抑えることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、床、天井または壁を形成する面構造であって、第1ネジ部を有し、基礎面に形成された複数の穴にそれぞれ埋め込まれた複数のアンカーと、一端部に形成された第2ネジ部が前記第1ネジ部にそれぞれ螺合された複数のネジ部材と、前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部に溶接されて前記基礎面に沿って設けられたフレーム部材と、前記フレーム部材上に固定された複数の面部材とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の面構造であって、前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接され、前記複数の面部材の間も溶接により塞がれる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の面構造であって、前記複数の面部材に形成された長穴を介して前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の面構造であって、前記複数の面部材の間が全て前記フレーム部材上に位置する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材が互いに垂直な2方向を向く辺を有する長方形であり、前記2方向うちの一方向において、前記複数の面部材の辺が不連続に並ぶ。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2ないし5のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材の間が母材共付け溶接により塞がれる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材がステンレス鋼により形成される。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の面構造であって、前記複数のネジ部材のそれぞれの前記他端部が、前記第2ネジ部に対して中心軸から垂直な方法に突出する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の面構造であって、前記他端部が、六角ボルトの六角部に板部材を溶接した構造を有する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の面構造であって、互いに異なる方向に伸びる複数のフレーム部材が、前記他端部に溶接される。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材と前記基礎面との間が無収縮性のモルタルにて満たされている。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の面構造であって、前記フレーム部材が帯状の部材である。
【0019】
請求項13に記載の発明は、床、天井または壁を形成する面形成方法であって、基礎面に形成された複数の穴に、第1ネジ部を有する複数のアンカーをそれぞれ埋め込むアンカー打設工程と、複数のネジ部材の一端部に形成された第2ネジ部を前記第1ネジ部にそれぞれ螺合する螺合工程と、前記複数のネジ部材を回転して前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部の高さを、所定の高さを基準に調整するレベル調整工程と、前記複数のネジ部材の前記他端部にフレーム部材を溶接するフレーム部材溶接工程と、前記フレーム部材上に複数の面部材を固定する面部材固定工程とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ネジ部材により高さが容易に高精度に調整され、かつ、溶接により容易に強度の高い面構造を形成することができる。
【0021】
また、請求項2の発明では、面部材の溶接により面構造の強度をさらに高め、かつ、面を密閉することができ、請求項3の発明では、長穴を介して面部材をフレーム部材に強固に固定することができ、請求項4の発明では、フレーム部材上で面部材の間を強固に固定することができ、請求項5の発明では、接合不良や面部材の歪みを抑えるとともに応力分散により面構造の強度が高められ、請求項6の発明では、母材共付け溶接により面部材の間に盛り上がりが生じることが防止される。請求項7の発明では、ステンレス鋼により衛生に優れた強度の高い面とすることができる。
【0022】
請求項8の発明では、ネジ部材の他端部を突出させることによりレベル測定を容易とし、かつ、フレーム部材を容易に溶接することができ、請求項9の発明では、他端部の幅を容易に大きくすることができ、請求項10の発明では複数のフレーム部材をネジ部材の他端部に溶接して面構造の強度を容易に高めることができる。
【0023】
請求項11の発明では、無収縮性のモルタルにより面の歪みを防止することができ、請求項12の発明では、フレーム部材を帯状の部材とすることによりフレーム部材の重量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の一の実施の形態に係る根太を利用して床を形成する床構造1を示す平面図であり、図2は最上部の床材11を省略して根太材12を示す平面図である。また、図3、図4および図5は、図2中のA−A、B−BおよびC−Cの位置における床構造1の縦断面図である。
【0025】
図3ないし図5に示すように、床構造1は基礎となる面であるスラブコンクリート90の上に形成され、スラブコンクリート90と面部材である床材11およびその下のフレーム部材である根太材12との間は無収縮モルタル8にて満たされている。図3および図5に示す位置では、スラブコンクリート90に予め複数の穴91が形成されており、複数の穴91に複数のアンカー21(例えば、ホークカットアンカー)がそれぞれ打設されて埋め込まれている。図3に示すように、アンカー21には内部に雌ネジ部211が形成されており、雌ネジ部211には六角ボルト31の雄ネジ部311が螺合される。六角ボルト31の六角部には水平姿勢の円板状の板部材32が溶接されており、床構造1が形成される際には、予め六角ボルト31の六角部に板部材32が溶接された複数のネジ部材30が準備されてこの状態で取り扱われる。すなわち、複数のネジ部材30において下端部に形成された雄ネジ部311と上端部である板部材32(および六角部)とは一体的に結合され、雄ネジ部311が複数のアンカー21の雌ネジ部211にそれぞれ螺合されることにより複数のネジ部材30が設置される。
【0026】
図3および図5に示すように、ネジ部材30の板部材32上にはステンレス鋼により形成される帯状の(いわゆる、フラットバーの)根太材12が基礎面であるスラブコンクリート90に沿って溶接により固定されており(図2、図3および図5において、溶接箇所に符号121を付している。)、これにより、板部材32に一体的に固定されている雄ネジ部311は全く回転しないため、根太材12(および床材11)の高さは変動することなく、床構造1の強度を高めることができる。根太材12上にはステンレス鋼にて形成される床材11が栓溶接により固定され(図1、図3および図5において、溶接箇所に符号111を付している。)、さらに、図1、図3および図5に符号112にて示すように複数の床材11の間も溶接により塞がれる。
【0027】
床材11の間は、溶接棒を用いず、かつ、開先を行わない母材共付け溶接により塞がれ、これにより、床材11の間に盛り上がりが生じることが防止され、溶接箇所を切削する等の作業が不要とされる。溶接方法としてはTIG溶接が採用されてもよいが、ビードの仕上がりが良い、溶接速度が速い、熱歪みが少ない等の点からプラズマ溶接が採用されることが好ましい。なお、溶接箇所の盛り上がりが許容される場合は、溶接ワイヤを利用して半自動化されるMIG(Metal Inert Gas)溶接が採用されてもよい。床構造1では床材11が根太材12と溶接され、かつ、床材11の間も溶接により塞がれることから、床構造1の強度が高められるとともに床を密閉することが実現される。さらに、床材11をステンレス鋼にて形成することにより、衛生に優れた強度の高い床面とすることができる。
【0028】
また、図1中の符号111にて示すように、根太材12には床材11に形成された長穴を介して栓溶接が行われる。これにより、溶接時のスラグの巻き込みや溶接不足を確実に防止しつつ床材11を根太材12に強固に固定することができる。作業者が接合状態を確認しながら溶接を進めることも可能となる。
【0029】
一方、各床材11の中央寄りである図4に示す位置においても、スラブコンクリート90に予め複数の穴91が形成され、複数の穴91に複数のアンカー21がそれぞれ打設されて埋め込まれている。また、図3および図5の場合と同様に、アンカー21には内部に雌ネジ部211が形成されており、雌ネジ部211には六角ボルト31の雄ネジ部311が螺合される。六角ボルト31の六角部には水平姿勢の角板状の板部材32aが溶接されており(図2参照)、床構造1が形成される際には、予め六角ボルト31の六角部に板部材32aが溶接された複数のネジ部材30aが準備されてこの状態で取り扱われる。そして、図1中に符号111aにて示すように、床材11に形成されている長穴を介して床材11が板部材32aに栓溶接により固定される。
【0030】
図1に示すように、各床材11は、互いに垂直な2方向を向く辺を有する長方形となっており、図1中の上下方向において複数の床材11の辺が不連続に並ぶように配置される。仮に床材11を図1中の上下左右方向に整列した場合、床材11の1つの角から4つのビートが伸びることとなり、角における接合不良や床材11の歪みが生じるおそれがある。これに対し、図1に示すように床材11を千鳥状に配置することにより、接合不良や床材11の歪みを抑えるとともに応力分散により床構造1の強度が高められる。
【0031】
床材11の辺の方向に合わせて、根太材12は図2に示すように2方向を向くように配置される。ここで、ネジ部材30では六角ボルトの六角部に板部材32を溶接することにより、上端部の幅(板部材32の幅)を根太材12の幅よりも大きくすることが容易に実現され、図5に示すように、互いに異なる方向に伸びる複数の根太材12が、同一の板部材32に溶接される。これにより、床構造1の強度を容易に高めることができる。また、床材11の間が全て根太材12上に位置することから、床材11の間を溶接する際に、モルタルを加熱して発生する汚染物が溶接箇所に混入することが防止され、床材の間を強固に固定することができる。
【0032】
次に、床構造1が形成される際の作業工程について図6に示す流れ図に沿って説明する。
【0033】
まず、図7に示すように、予め基礎となる床として形成されているスラブコンクリート90に形成された複数の穴91に複数のアンカー21がそれぞれ打設されて埋め込まれる(ステップS1)。一方、既述のように、六角ボルト31の六角部に板部材32,32aが溶接された複数のネジ部材30,30aが別途準備され、図8に示すように(ネジ部材30のみを図示)、複数のネジ部材30,30aの下端部に形成された雄ネジ部311が複数のアンカー21の雌ネジ部211にそれぞれ螺合される(ステップS2)。
【0034】
ここで、各板部材32の上にスケール(物差し)の一端が載せられ、トランシットを用いて板部材32の高さ(レベル)が測定される。そして、ネジ部材30を回転して板部材32の高さが所定の高さを基準に調整される(ステップS3)。ネジ部材30aについても同様の作業が行われ、設置箇所に応じた高さへと板部材32aの高さが調整される。なお、ネジ部材30,30aでは、下端部である雄ネジ部311と上端部である板部材32,32a(および溶接された六角部)とが一体的に結合されているため、板部材32,32aの回転により板部材32,32aの高さを高い精度にて容易に調整することができる。また、板部材32,32aはスケールを載せるには十分な大きさを有するため、ネジ部材30,30aを用いることによりレベル測定を容易に行うことも実現される。また、床に水勾配を設ける必要がある場合は、水勾配に合わせて板部材32,32aの高さが所定の高さを基準に高精度にて調整される。
【0035】
ネジ部材のレベル調整が完了すると、板部材32に根太材12が溶接され(ステップS4)、図9に示すように根太材12および板部材32,32aの上面の高さまで無収縮モルタル8が充填される(ステップS5)。根太材12は帯状の部材とされることにより、山形鋼を用いる場合よりも根太材の重量を削減することができる。また、充填材として無収縮モルタルを使用することにより、充填材の硬化時およびその後の収縮により根太材12や床材11の支持が不安定になったり、床が歪んでしまうことが防止される。さらに、無収縮モルタルは通常のコンクリートに比べて硬化が速いため、工期を短縮することも実現される。
【0036】
無収縮モルタル8が硬化すると、複数の床材11が根太材12に栓溶接されて固定され、床材11の間が自動式のプラズマ溶接にて塞がれ、図3ないし図5に示す床構造が完成する(ステップS6)。以上の作業工程により、高さが容易に高精度に調整され、かつ、根太材がネジ部材に溶接により固定された強度の高い床構造を容易に形成することができる。また、床材11の下が充填材で充填されたり、床材11の間が溶接により密閉される場合の床の歪みも抑えることが実現される。
【0037】
図10および図11は、床構造1の他の例を示す図であり、それぞれ図3および図4に対応する。図10および図11ではネジ部材30bが六角ボルトそのものとされ、六角ボルトの上端部である六角部32bが根太材12や床材11と溶接される。ただし、六角部32bの幅は根太材12の幅より小さいため、図10に示すように根太材12のエッジを六角部32bの中央に配置して溶接が行われる。図10および図11に示す床構造1では、アンカー21の打設位置の精度を高くする必要があるが、予め六角ボルトに板部材32,32aを溶接したものを準備する必要がなくなる。
【0038】
このように、ネジ部材の上端部は、必ずしも六角ボルトの六角部に板部材を溶接した構造とされる必要はなく、上端部が雄ネジ部に対して水平方向に(すなわち、ネジ部材の中心軸から垂直な方向に)突出する形状とされることにより(雄ネジ部から直接突出しなくてもよい。)、レベル測定を容易とし、かつ、根太材12を容易に溶接することが実現される。
【0039】
以上、本発明の実施の形態に係る床構造1について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0040】
例えば、アンカー21はメカニカルアンカーでなくケミカルアンカーとされてもよい。また、アンカー21に雄ネジ部が設けられ、ネジ部材30の下端部に雌ネジ部が設けられてもよい。ネジ部材における上端部と下端部とはカシメやネジ締結等により一体的とされてもよいが、上端部のレベル調整を容易とし、かつ、強度を高めるためには溶接などにより1つの金属体として分離不能とされることが好ましい。なお、ネジ部材30の上端部において根太材12が溶接される位置は完全に上端面である必要はなく、上端近傍の他の部位(好ましくは上側を向く面)であってもよく、さらに、ネジ部材30の上端部は水平な一方向にのみ突出してもよい。
【0041】
また、図12および図13に示すようにネジ部材の形状はさらに変更することも可能である。図12は上端部に水平方向に突出する部位を有さないネジ部材30cの例を示す図であり、図13は先端が溶接専用の部材となっているアンカー21aを示す図であり、それぞれ図3および図4に対応する。図12ではネジ部材30cは全体がネジ部となったボルトとされ、ボルトの上端部が根太材12の開口に挿入されつつ根太材12と溶接される。図13に示すアンカー21aは、先端が床材11の開口に挿入されつつ床材11と溶接される。
【0042】
上記実施の形態では、床材11はステンレス鋼とされるが、床材11は銅、アルミニウム、チタン、あるいは、ステンレス鋼以外の鋼材等の溶接可能な他の金属板が用いられてもよく、金属板により高い平面度を有する床面を形成することができる。また、床材11の間は根太材12と共付けされてもよいが、上記実施の形態のように浅い溶接で床材11間の隙間を塞ぐことにより、すなわち、根太材12との共付けを行わないことにより、残留応力を低減して溶接割れを防止することができる。
【0043】
上記実施の形態では床材11の間が溶接により塞がれる例を示したが、溶接により塞がれない床構造とされてもよい。基礎となる床はスラブコンクリート90以外でもよく、例えば、木材でもよい。
【0044】
床構造1にて用いられる無収縮モルタル8は、通常の無収縮モルタル以外の無収縮性のモルタル、例えば、樹脂モルタルが用いられてもよい。なお、無収縮モルタル8は省かれてもよく、この場合、根太材12自体の強度をさらに高めるために根太材12は山形鋼やU字鋼等とされることが好ましい。
【0045】
さらに、上記実施の形態にて説明した床構造1は天井や壁の面を形成する他の面構造(ただし、これらの場合は通常、無収縮モルタル8に相当する充填剤が省略される。)にもそのまま応用することができる。この場合、床材11は天井や壁の面を形成する他の面部材に置き換えられ、根太材12は天井の小屋梁や天井根太、壁の胴縁等のフレーム状の他の部材に置き換えられる。また、天井や壁に応用される場合は、上記実施の形態にて説明したネジ部材の下端部は基礎面側の一端部に対応し、上端部は基礎面から離れる方向の他端部に対応し、上端部の高さは基礎面から離れる方向の位置に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】床構造を示す平面図である。
【図2】根太材を示す平面図である。
【図3】床構造の縦断面図である。
【図4】床構造の縦断面図である。
【図5】床構造の縦断面図である。
【図6】床を形成する作業の流れを示す図である。
【図7】形成途上の床構造を示す図である。
【図8】形成途上の床構造を示す図である。
【図9】形成途上の床構造を示す図である。
【図10】床構造の他の例を示す縦断面図である。
【図11】床構造の他の例を示す縦断面図である。
【図12】床構造のさらに他の例を示す縦断面図である。
【図13】床構造のさらに他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 床構造
8 無収縮モルタル
11 床材
12 根太材
21 アンカー
30,30b ネジ部材
31 六角ボルト
32,32b 板部材
90 スラブコンクリート
211 雌ネジ部
311 雄ネジ部
S1〜S6 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、床、天井または壁を形成する面構造および面形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床を形成する際に、多くの場合、根太を張り渡しておいて根太の上に床材を固定する手法が採用される。特許文献1では、スラブコンクリートにアンカーおよび高さ調整ボルトを打設しておき、高さ調整ボルトに根太支持板を螺合し、この根太支持板の上に根太をネジ留めする手法が開示されている。
【0003】
一方、食品や医薬品等の分野において、高い清浄度が求められる空間の床としてステンレスの板材を床に敷き詰め、さらに開先された床材の間を溶接材を用いてTIG(Tungsten Inert Gas)溶接にて塞いだものが利用されている。例えば、特許文献2では、山形鋼を根太として配設し、その上にコンクリートを充填し、さらにその上にステンレス板を載置して根太と栓溶接するとともにステンレス板同士も突き合わせ溶接する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−107540号公報
【特許文献2】特開2003−253798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1および2に記載の床構造では、ネジを利用して床の高さ調節が行われるが、ネジを利用する場合、ネジの回転が強固に固定されなかったり、特許文献1のようにナットを用いて煩雑な作業を経てネジを固定する必要が生じる。さらに、特許文献1の場合、多くの箇所でネジを利用した締結が行われるため、床構造の強度も向上することが困難となる。
【0005】
また、特許文献2では山形鋼が根太に利用されるが、山形鋼を組み合わせて根太を形成するには煩雑なカット作業が必要となり、さらに、ステンレス板の間を溶接棒を用いて溶接を行うと溶接部の盛り上がりを削る作業も必要となってしまう。特許文献2に記載の床構造の場合、ステンレス板の下側のコンクリートや溶接の影響による床の歪みも問題となる。また、ステンレス板の間を溶接する際に下地がコンクリートであると、コンクリートが溶接時の熱で破損してしまう(高温割れする)おそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、床のみならず天井または壁において基準面からの高さ(レベル)が高精度に調整され、かつ強度の高い面構造を容易に形成することを主たる目的とし、さらに、面部材が溶接により密閉される場合の面の歪みを抑えることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、床、天井または壁を形成する面構造であって、第1ネジ部を有し、基礎面に形成された複数の穴にそれぞれ埋め込まれた複数のアンカーと、一端部に形成された第2ネジ部が前記第1ネジ部にそれぞれ螺合された複数のネジ部材と、前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部に溶接されて前記基礎面に沿って設けられたフレーム部材と、前記フレーム部材上に固定された複数の面部材とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の面構造であって、前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接され、前記複数の面部材の間も溶接により塞がれる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の面構造であって、前記複数の面部材に形成された長穴を介して前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の面構造であって、前記複数の面部材の間が全て前記フレーム部材上に位置する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材が互いに垂直な2方向を向く辺を有する長方形であり、前記2方向うちの一方向において、前記複数の面部材の辺が不連続に並ぶ。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2ないし5のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材の間が母材共付け溶接により塞がれる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材がステンレス鋼により形成される。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の面構造であって、前記複数のネジ部材のそれぞれの前記他端部が、前記第2ネジ部に対して中心軸から垂直な方法に突出する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の面構造であって、前記他端部が、六角ボルトの六角部に板部材を溶接した構造を有する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の面構造であって、互いに異なる方向に伸びる複数のフレーム部材が、前記他端部に溶接される。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の面構造であって、前記複数の面部材と前記基礎面との間が無収縮性のモルタルにて満たされている。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の面構造であって、前記フレーム部材が帯状の部材である。
【0019】
請求項13に記載の発明は、床、天井または壁を形成する面形成方法であって、基礎面に形成された複数の穴に、第1ネジ部を有する複数のアンカーをそれぞれ埋め込むアンカー打設工程と、複数のネジ部材の一端部に形成された第2ネジ部を前記第1ネジ部にそれぞれ螺合する螺合工程と、前記複数のネジ部材を回転して前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部の高さを、所定の高さを基準に調整するレベル調整工程と、前記複数のネジ部材の前記他端部にフレーム部材を溶接するフレーム部材溶接工程と、前記フレーム部材上に複数の面部材を固定する面部材固定工程とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ネジ部材により高さが容易に高精度に調整され、かつ、溶接により容易に強度の高い面構造を形成することができる。
【0021】
また、請求項2の発明では、面部材の溶接により面構造の強度をさらに高め、かつ、面を密閉することができ、請求項3の発明では、長穴を介して面部材をフレーム部材に強固に固定することができ、請求項4の発明では、フレーム部材上で面部材の間を強固に固定することができ、請求項5の発明では、接合不良や面部材の歪みを抑えるとともに応力分散により面構造の強度が高められ、請求項6の発明では、母材共付け溶接により面部材の間に盛り上がりが生じることが防止される。請求項7の発明では、ステンレス鋼により衛生に優れた強度の高い面とすることができる。
【0022】
請求項8の発明では、ネジ部材の他端部を突出させることによりレベル測定を容易とし、かつ、フレーム部材を容易に溶接することができ、請求項9の発明では、他端部の幅を容易に大きくすることができ、請求項10の発明では複数のフレーム部材をネジ部材の他端部に溶接して面構造の強度を容易に高めることができる。
【0023】
請求項11の発明では、無収縮性のモルタルにより面の歪みを防止することができ、請求項12の発明では、フレーム部材を帯状の部材とすることによりフレーム部材の重量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の一の実施の形態に係る根太を利用して床を形成する床構造1を示す平面図であり、図2は最上部の床材11を省略して根太材12を示す平面図である。また、図3、図4および図5は、図2中のA−A、B−BおよびC−Cの位置における床構造1の縦断面図である。
【0025】
図3ないし図5に示すように、床構造1は基礎となる面であるスラブコンクリート90の上に形成され、スラブコンクリート90と面部材である床材11およびその下のフレーム部材である根太材12との間は無収縮モルタル8にて満たされている。図3および図5に示す位置では、スラブコンクリート90に予め複数の穴91が形成されており、複数の穴91に複数のアンカー21(例えば、ホークカットアンカー)がそれぞれ打設されて埋め込まれている。図3に示すように、アンカー21には内部に雌ネジ部211が形成されており、雌ネジ部211には六角ボルト31の雄ネジ部311が螺合される。六角ボルト31の六角部には水平姿勢の円板状の板部材32が溶接されており、床構造1が形成される際には、予め六角ボルト31の六角部に板部材32が溶接された複数のネジ部材30が準備されてこの状態で取り扱われる。すなわち、複数のネジ部材30において下端部に形成された雄ネジ部311と上端部である板部材32(および六角部)とは一体的に結合され、雄ネジ部311が複数のアンカー21の雌ネジ部211にそれぞれ螺合されることにより複数のネジ部材30が設置される。
【0026】
図3および図5に示すように、ネジ部材30の板部材32上にはステンレス鋼により形成される帯状の(いわゆる、フラットバーの)根太材12が基礎面であるスラブコンクリート90に沿って溶接により固定されており(図2、図3および図5において、溶接箇所に符号121を付している。)、これにより、板部材32に一体的に固定されている雄ネジ部311は全く回転しないため、根太材12(および床材11)の高さは変動することなく、床構造1の強度を高めることができる。根太材12上にはステンレス鋼にて形成される床材11が栓溶接により固定され(図1、図3および図5において、溶接箇所に符号111を付している。)、さらに、図1、図3および図5に符号112にて示すように複数の床材11の間も溶接により塞がれる。
【0027】
床材11の間は、溶接棒を用いず、かつ、開先を行わない母材共付け溶接により塞がれ、これにより、床材11の間に盛り上がりが生じることが防止され、溶接箇所を切削する等の作業が不要とされる。溶接方法としてはTIG溶接が採用されてもよいが、ビードの仕上がりが良い、溶接速度が速い、熱歪みが少ない等の点からプラズマ溶接が採用されることが好ましい。なお、溶接箇所の盛り上がりが許容される場合は、溶接ワイヤを利用して半自動化されるMIG(Metal Inert Gas)溶接が採用されてもよい。床構造1では床材11が根太材12と溶接され、かつ、床材11の間も溶接により塞がれることから、床構造1の強度が高められるとともに床を密閉することが実現される。さらに、床材11をステンレス鋼にて形成することにより、衛生に優れた強度の高い床面とすることができる。
【0028】
また、図1中の符号111にて示すように、根太材12には床材11に形成された長穴を介して栓溶接が行われる。これにより、溶接時のスラグの巻き込みや溶接不足を確実に防止しつつ床材11を根太材12に強固に固定することができる。作業者が接合状態を確認しながら溶接を進めることも可能となる。
【0029】
一方、各床材11の中央寄りである図4に示す位置においても、スラブコンクリート90に予め複数の穴91が形成され、複数の穴91に複数のアンカー21がそれぞれ打設されて埋め込まれている。また、図3および図5の場合と同様に、アンカー21には内部に雌ネジ部211が形成されており、雌ネジ部211には六角ボルト31の雄ネジ部311が螺合される。六角ボルト31の六角部には水平姿勢の角板状の板部材32aが溶接されており(図2参照)、床構造1が形成される際には、予め六角ボルト31の六角部に板部材32aが溶接された複数のネジ部材30aが準備されてこの状態で取り扱われる。そして、図1中に符号111aにて示すように、床材11に形成されている長穴を介して床材11が板部材32aに栓溶接により固定される。
【0030】
図1に示すように、各床材11は、互いに垂直な2方向を向く辺を有する長方形となっており、図1中の上下方向において複数の床材11の辺が不連続に並ぶように配置される。仮に床材11を図1中の上下左右方向に整列した場合、床材11の1つの角から4つのビートが伸びることとなり、角における接合不良や床材11の歪みが生じるおそれがある。これに対し、図1に示すように床材11を千鳥状に配置することにより、接合不良や床材11の歪みを抑えるとともに応力分散により床構造1の強度が高められる。
【0031】
床材11の辺の方向に合わせて、根太材12は図2に示すように2方向を向くように配置される。ここで、ネジ部材30では六角ボルトの六角部に板部材32を溶接することにより、上端部の幅(板部材32の幅)を根太材12の幅よりも大きくすることが容易に実現され、図5に示すように、互いに異なる方向に伸びる複数の根太材12が、同一の板部材32に溶接される。これにより、床構造1の強度を容易に高めることができる。また、床材11の間が全て根太材12上に位置することから、床材11の間を溶接する際に、モルタルを加熱して発生する汚染物が溶接箇所に混入することが防止され、床材の間を強固に固定することができる。
【0032】
次に、床構造1が形成される際の作業工程について図6に示す流れ図に沿って説明する。
【0033】
まず、図7に示すように、予め基礎となる床として形成されているスラブコンクリート90に形成された複数の穴91に複数のアンカー21がそれぞれ打設されて埋め込まれる(ステップS1)。一方、既述のように、六角ボルト31の六角部に板部材32,32aが溶接された複数のネジ部材30,30aが別途準備され、図8に示すように(ネジ部材30のみを図示)、複数のネジ部材30,30aの下端部に形成された雄ネジ部311が複数のアンカー21の雌ネジ部211にそれぞれ螺合される(ステップS2)。
【0034】
ここで、各板部材32の上にスケール(物差し)の一端が載せられ、トランシットを用いて板部材32の高さ(レベル)が測定される。そして、ネジ部材30を回転して板部材32の高さが所定の高さを基準に調整される(ステップS3)。ネジ部材30aについても同様の作業が行われ、設置箇所に応じた高さへと板部材32aの高さが調整される。なお、ネジ部材30,30aでは、下端部である雄ネジ部311と上端部である板部材32,32a(および溶接された六角部)とが一体的に結合されているため、板部材32,32aの回転により板部材32,32aの高さを高い精度にて容易に調整することができる。また、板部材32,32aはスケールを載せるには十分な大きさを有するため、ネジ部材30,30aを用いることによりレベル測定を容易に行うことも実現される。また、床に水勾配を設ける必要がある場合は、水勾配に合わせて板部材32,32aの高さが所定の高さを基準に高精度にて調整される。
【0035】
ネジ部材のレベル調整が完了すると、板部材32に根太材12が溶接され(ステップS4)、図9に示すように根太材12および板部材32,32aの上面の高さまで無収縮モルタル8が充填される(ステップS5)。根太材12は帯状の部材とされることにより、山形鋼を用いる場合よりも根太材の重量を削減することができる。また、充填材として無収縮モルタルを使用することにより、充填材の硬化時およびその後の収縮により根太材12や床材11の支持が不安定になったり、床が歪んでしまうことが防止される。さらに、無収縮モルタルは通常のコンクリートに比べて硬化が速いため、工期を短縮することも実現される。
【0036】
無収縮モルタル8が硬化すると、複数の床材11が根太材12に栓溶接されて固定され、床材11の間が自動式のプラズマ溶接にて塞がれ、図3ないし図5に示す床構造が完成する(ステップS6)。以上の作業工程により、高さが容易に高精度に調整され、かつ、根太材がネジ部材に溶接により固定された強度の高い床構造を容易に形成することができる。また、床材11の下が充填材で充填されたり、床材11の間が溶接により密閉される場合の床の歪みも抑えることが実現される。
【0037】
図10および図11は、床構造1の他の例を示す図であり、それぞれ図3および図4に対応する。図10および図11ではネジ部材30bが六角ボルトそのものとされ、六角ボルトの上端部である六角部32bが根太材12や床材11と溶接される。ただし、六角部32bの幅は根太材12の幅より小さいため、図10に示すように根太材12のエッジを六角部32bの中央に配置して溶接が行われる。図10および図11に示す床構造1では、アンカー21の打設位置の精度を高くする必要があるが、予め六角ボルトに板部材32,32aを溶接したものを準備する必要がなくなる。
【0038】
このように、ネジ部材の上端部は、必ずしも六角ボルトの六角部に板部材を溶接した構造とされる必要はなく、上端部が雄ネジ部に対して水平方向に(すなわち、ネジ部材の中心軸から垂直な方向に)突出する形状とされることにより(雄ネジ部から直接突出しなくてもよい。)、レベル測定を容易とし、かつ、根太材12を容易に溶接することが実現される。
【0039】
以上、本発明の実施の形態に係る床構造1について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0040】
例えば、アンカー21はメカニカルアンカーでなくケミカルアンカーとされてもよい。また、アンカー21に雄ネジ部が設けられ、ネジ部材30の下端部に雌ネジ部が設けられてもよい。ネジ部材における上端部と下端部とはカシメやネジ締結等により一体的とされてもよいが、上端部のレベル調整を容易とし、かつ、強度を高めるためには溶接などにより1つの金属体として分離不能とされることが好ましい。なお、ネジ部材30の上端部において根太材12が溶接される位置は完全に上端面である必要はなく、上端近傍の他の部位(好ましくは上側を向く面)であってもよく、さらに、ネジ部材30の上端部は水平な一方向にのみ突出してもよい。
【0041】
また、図12および図13に示すようにネジ部材の形状はさらに変更することも可能である。図12は上端部に水平方向に突出する部位を有さないネジ部材30cの例を示す図であり、図13は先端が溶接専用の部材となっているアンカー21aを示す図であり、それぞれ図3および図4に対応する。図12ではネジ部材30cは全体がネジ部となったボルトとされ、ボルトの上端部が根太材12の開口に挿入されつつ根太材12と溶接される。図13に示すアンカー21aは、先端が床材11の開口に挿入されつつ床材11と溶接される。
【0042】
上記実施の形態では、床材11はステンレス鋼とされるが、床材11は銅、アルミニウム、チタン、あるいは、ステンレス鋼以外の鋼材等の溶接可能な他の金属板が用いられてもよく、金属板により高い平面度を有する床面を形成することができる。また、床材11の間は根太材12と共付けされてもよいが、上記実施の形態のように浅い溶接で床材11間の隙間を塞ぐことにより、すなわち、根太材12との共付けを行わないことにより、残留応力を低減して溶接割れを防止することができる。
【0043】
上記実施の形態では床材11の間が溶接により塞がれる例を示したが、溶接により塞がれない床構造とされてもよい。基礎となる床はスラブコンクリート90以外でもよく、例えば、木材でもよい。
【0044】
床構造1にて用いられる無収縮モルタル8は、通常の無収縮モルタル以外の無収縮性のモルタル、例えば、樹脂モルタルが用いられてもよい。なお、無収縮モルタル8は省かれてもよく、この場合、根太材12自体の強度をさらに高めるために根太材12は山形鋼やU字鋼等とされることが好ましい。
【0045】
さらに、上記実施の形態にて説明した床構造1は天井や壁の面を形成する他の面構造(ただし、これらの場合は通常、無収縮モルタル8に相当する充填剤が省略される。)にもそのまま応用することができる。この場合、床材11は天井や壁の面を形成する他の面部材に置き換えられ、根太材12は天井の小屋梁や天井根太、壁の胴縁等のフレーム状の他の部材に置き換えられる。また、天井や壁に応用される場合は、上記実施の形態にて説明したネジ部材の下端部は基礎面側の一端部に対応し、上端部は基礎面から離れる方向の他端部に対応し、上端部の高さは基礎面から離れる方向の位置に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】床構造を示す平面図である。
【図2】根太材を示す平面図である。
【図3】床構造の縦断面図である。
【図4】床構造の縦断面図である。
【図5】床構造の縦断面図である。
【図6】床を形成する作業の流れを示す図である。
【図7】形成途上の床構造を示す図である。
【図8】形成途上の床構造を示す図である。
【図9】形成途上の床構造を示す図である。
【図10】床構造の他の例を示す縦断面図である。
【図11】床構造の他の例を示す縦断面図である。
【図12】床構造のさらに他の例を示す縦断面図である。
【図13】床構造のさらに他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 床構造
8 無収縮モルタル
11 床材
12 根太材
21 アンカー
30,30b ネジ部材
31 六角ボルト
32,32b 板部材
90 スラブコンクリート
211 雌ネジ部
311 雄ネジ部
S1〜S6 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床、天井または壁を形成する面構造であって、
第1ネジ部を有し、基礎面に形成された複数の穴にそれぞれ埋め込まれた複数のアンカーと、
一端部に形成された第2ネジ部が前記第1ネジ部にそれぞれ螺合された複数のネジ部材と、
前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部に溶接されて前記基礎面に沿って設けられたフレーム部材と、
前記フレーム部材上に固定された複数の面部材と、
を備えることを特徴とする面構造。
【請求項2】
請求項1に記載の面構造であって、
前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接され、
前記複数の面部材の間も溶接により塞がれることを特徴とする面構造。
【請求項3】
請求項2に記載の面構造であって、
前記複数の面部材に形成された長穴を介して前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接されることを特徴とする面構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の面構造であって、
前記複数の面部材の間が全て前記フレーム部材上に位置することを特徴とする面構造。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材が互いに垂直な2方向を向く辺を有する長方形であり、前記2方向うちの一方向において、前記複数の面部材の辺が不連続に並ぶことを特徴とする面構造。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材の間が母材共付け溶接により塞がれることを特徴とする面構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材がステンレス鋼により形成されることを特徴とする面構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数のネジ部材のそれぞれの前記他端部が、前記第2ネジ部に対して中心軸から垂直な方法に突出することを特徴とする面構造。
【請求項9】
請求項8に記載の面構造であって、
前記他端部が、六角ボルトの六角部に板部材を溶接した構造を有することを特徴とする面構造。
【請求項10】
請求項8または9に記載の面構造であって、
互いに異なる方向に伸びる複数のフレーム部材が、前記他端部に溶接されることを特徴とする面構造。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材と前記基礎面との間が無収縮性のモルタルにて満たされていることを特徴とする面構造。
【請求項12】
請求項11に記載の面構造であって、
前記フレーム部材が帯状の部材であることを特徴とする面構造。
【請求項13】
床、天井または壁を形成する面形成方法であって、
基礎面に形成された複数の穴に、第1ネジ部を有する複数のアンカーをそれぞれ埋め込むアンカー打設工程と、
複数のネジ部材の一端部に形成された第2ネジ部を前記第1ネジ部にそれぞれ螺合する螺合工程と、
前記複数のネジ部材を回転して前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部の高さを、所定の高さを基準に調整するレベル調整工程と、
前記複数のネジ部材の前記他端部にフレーム部材を溶接するフレーム部材溶接工程と、
前記フレーム部材上に複数の面部材を固定する面部材固定工程と、
を備えることを特徴とする面形成方法。
【請求項1】
床、天井または壁を形成する面構造であって、
第1ネジ部を有し、基礎面に形成された複数の穴にそれぞれ埋め込まれた複数のアンカーと、
一端部に形成された第2ネジ部が前記第1ネジ部にそれぞれ螺合された複数のネジ部材と、
前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部に溶接されて前記基礎面に沿って設けられたフレーム部材と、
前記フレーム部材上に固定された複数の面部材と、
を備えることを特徴とする面構造。
【請求項2】
請求項1に記載の面構造であって、
前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接され、
前記複数の面部材の間も溶接により塞がれることを特徴とする面構造。
【請求項3】
請求項2に記載の面構造であって、
前記複数の面部材に形成された長穴を介して前記複数の面部材が前記フレーム部材に溶接されることを特徴とする面構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の面構造であって、
前記複数の面部材の間が全て前記フレーム部材上に位置することを特徴とする面構造。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材が互いに垂直な2方向を向く辺を有する長方形であり、前記2方向うちの一方向において、前記複数の面部材の辺が不連続に並ぶことを特徴とする面構造。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材の間が母材共付け溶接により塞がれることを特徴とする面構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材がステンレス鋼により形成されることを特徴とする面構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数のネジ部材のそれぞれの前記他端部が、前記第2ネジ部に対して中心軸から垂直な方法に突出することを特徴とする面構造。
【請求項9】
請求項8に記載の面構造であって、
前記他端部が、六角ボルトの六角部に板部材を溶接した構造を有することを特徴とする面構造。
【請求項10】
請求項8または9に記載の面構造であって、
互いに異なる方向に伸びる複数のフレーム部材が、前記他端部に溶接されることを特徴とする面構造。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の面構造であって、
前記複数の面部材と前記基礎面との間が無収縮性のモルタルにて満たされていることを特徴とする面構造。
【請求項12】
請求項11に記載の面構造であって、
前記フレーム部材が帯状の部材であることを特徴とする面構造。
【請求項13】
床、天井または壁を形成する面形成方法であって、
基礎面に形成された複数の穴に、第1ネジ部を有する複数のアンカーをそれぞれ埋め込むアンカー打設工程と、
複数のネジ部材の一端部に形成された第2ネジ部を前記第1ネジ部にそれぞれ螺合する螺合工程と、
前記複数のネジ部材を回転して前記複数のネジ部材の前記一端部と一体的に結合された他端部の高さを、所定の高さを基準に調整するレベル調整工程と、
前記複数のネジ部材の前記他端部にフレーム部材を溶接するフレーム部材溶接工程と、
前記フレーム部材上に複数の面部材を固定する面部材固定工程と、
を備えることを特徴とする面形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−112194(P2006−112194A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303481(P2004−303481)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(597156133)株式会社西鋼 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(597156133)株式会社西鋼 (1)
【Fターム(参考)】
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