説明

床下暖房パネル

【課題】パネルの構成要素同士の結合、及びパネルの根太への固定の信頼性を高め、構成を簡略化した床下暖房パネルを提供する。
【解決手段】建物の床下から根太11の間に挿入されて床板15に面する放熱板3と、放熱板3の両側を略直角に曲げてそれぞれを根太11に対向させた側板4と、からなるパネル本体2と、放熱板3の内側に配線される線状の発熱体5と、パネル本体2の内側に吹き付けられる断熱材6と、から構成され、発熱体5は、放熱板3の一部がコの字状に切断されて折り返された舌状の発熱体保持板7によりパネル本体2に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下暖房パネルに係り、特に、発熱体及び断熱材を有し、建物の床下から根太の間に挿入されて取付けられる床下暖房パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
床下暖房パネルは、放熱板に発熱体及び断熱材を組み込みパネル化したものが知られている。例えば、特許文献1には、パネル本体が放熱板と断熱材の接着剤等による圧接着で形成され、中心部には温水循環パイプが通る溝が設けられ、放熱板の両端は下側に曲げられて根太に食いつき、パネル本体の落下を防止する床下施工温水暖房パネルが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、放熱板と、放熱板の一面に密着配置された直線状のヒータとを有するパネルヒータ及び埋設暖房装置が開示されている。
【0004】
床下への断熱材の吹き付けは、例えば、グラスウールなどの繊維系断熱材を充填する方法、及び発泡硬質ウレタンフォームを吹き付ける方法が一般的である。また、発泡硬質ウレタンフォームの吹き付けの場合、1液性発泡硬質ウレタンフォーム及び2液性発泡硬質ウレタンフォームがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−257363号公報
【特許文献2】特開2002−005460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の床下暖房パネルは、構成要素である放熱板、発熱体、断熱材などを相互に結合する手段が接着などにより行われ、相互の固定の信頼性が低いという問題があった。すなわち、床下暖房パネルは、発熱体の取付けに固定用の部品を必要としていた。しかし、発熱体は断熱材により覆われてしまうため、発熱体が放熱板から外れても外部からは検知できないという問題があった。
【0007】
また、床下暖房パネルは、施工誤差があるため根太等への信頼性の高い接続方法が難しく、地震などの振動や経年変化により落下する虞があった。さらに、一般的な床下への断熱材の吹き付けは上向きの姿勢で行われる。このため、施工不良が発生して断熱材が地震などの振動や経年変化による割れなどにより断熱材が落下するなど、床下暖房パネルに対する断熱材の定着方法に問題があった。
【0008】
本願の目的は、かかる課題を解決し、パネルの構成要素同士の結合、及びパネルの根太への固定の信頼性を高め、構成を簡略化した床下暖房パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る床下暖房パネルは、建物の床下から根太の間に挿入されて床板に面する放熱板と、放熱板の両側を略直角に曲げてそれぞれを根太に対向させた側板と、からなるパネル本体と、放熱板の内側に配線される線状の発熱体と、パネル本体の内側に吹き付けられる断熱材と、から構成され、線状の発熱体は、放熱板の一部がコの字状に切断されて折り返された複数の舌状の発熱体保持板によりパネル本体に保持されることを特徴とする。
【0010】
上記構成により、床下暖房パネルは、放熱板に予め加工された複数の舌状の保持板を設けることで、別途部品を追加することなく簡略化した構成で発熱体を保持できる。また、舌状の保持板は、放熱板の一部をコの字状に切断して折り返したものであるため、接着などの接合方法とは異なり、放熱板と発熱体との結合の信頼性を高めることができる。
【0011】
また、床下暖房パネルは、側板の一部が、L字状に切断されて略直角に折り返された複数の舌状の固定板を介して根太に固定されることが好ましい。これにより、床下暖房パネルは、側板を加工した複数の固定板を設けることで、別途部品を追加することなく簡易にパネル本体を根太に固定することができる。また、この固定板は、放熱板の一部がL字状に切断されて略直角に折り返されたものであるため、パネル本体の根太への固定の信頼性を高めることができる。
【0012】
また、床下暖房パネルは、固定板が、根太に略平行に折り返された取付け部を有し、取付け部には、根太に略平行な方向に長円となるビス用の孔が明けられ、パネル本体と根太との間隔に合わせて長円の孔内におけるビスの位置を調節し、パネル本体を根太に固定することが好ましい。これにより、根太間に挿入された床下暖房パネルは、この取付け部を根太に略平行な方向に保たせながら、根太と床下暖房パネルとの間隔を調整して根太に固定することができる。つまり、取付け部は、L字型の断面を有して根太に取り付くが、このL字の交差角度を変えることで根太と床下暖房パネルとの間隔を変化させ、その間隔の施工誤差を吸収することができる。従って、パネル本体の根太への固定の信頼性を高められる。
【0013】
また、床下暖房パネルは、放熱板の一部にはコの字状に切断されて折り返された舌状の断熱材保持板が設けられ、断熱材保持板が、吹き付けられた断熱材を係止して定着することが好ましい。これにより、吹き付けられた断熱材の一部が断熱材保持板に係止され、地震などの振動や経年変化による割れなどにより断熱材が落下することが防止できる。従って、放熱板と断熱材との結合の信頼性を高めることができる。
【0014】
また、床下暖房パネルは、断熱材保持板が、L字状の断面の先端に放熱板に略水平な係止部を有し、係止部により吹き付けられた断熱材を係止して定着させることが好ましい。これにより、放熱板と、断熱材保持板のL字状をした断面の先端の放熱板に略水平な係止部との隙間に断熱材が充填され、断熱材はフックを掛けられた状態で係止され、落下が防止できる。従って、放熱板と断熱材との結合の信頼性を高めることができる。
【0015】
また、床下暖房パネルは、断熱材が、発泡硬質ウレタンフォームからなることが好ましい。これにより、発泡硬質ウレタンフォームは、グラスウールなどの繊維系断熱材と比較して圧縮強度が高いため厚みが薄くなり、経年変化に対する寸法の安定性が高いため、品質に対して信頼性の高い床下暖房パネルにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る床下暖房パネルによれば、パネルの構成要素同士の結合、及びパネルの根太への固定の信頼性を高め、構成を簡略化した床下暖房パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る床下暖房パネルの第1実施形態の概略構成、及び放熱板と発熱体との結合方法を示す平面図、断面図、及び拡大された斜視図である。
【図2】本発明に係る床下暖房パネルの第2実施形態の概略構成、及び床下暖房パネルの根太への固定方法を示す平面図、断面図、及び拡大された説明図である。
【図3】本発明に係る床下暖房パネルの第3実施形態の概略構成、及び断熱材の床下暖房パネルへの定着方法を示す平面図、断面図、及び拡大された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を用いて本発明に係る床下暖房パネルの各実施形態につき、詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1に、床下暖房パネルの第1実施形態の概略構成を示す。図1(a)は、建物の床下から根太11の間に挿入された床下暖房パネル1を下方からみた平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A断面図であり、隣接する根太11の間に床下暖房パネル1が取付けられた状態を真横から見た図を示す。図1(c)は、発熱体5を保持する発熱体保持部7を拡大して示す斜視図である。本実施形態の床下暖房パネル1は、放熱板3及び側板4からなるパネル本体2と、発熱体5と、断熱材6とから構成される。この根太11の芯同士の間隔は、例えば、300mm、450mmなどの間隔であるが、それ以外の間隔であっても良い。
【0020】
パネル本体2の放熱板3は、建物の床下から根太11の間に挿入されて床板15に面する。また、パネル本体2の側板4は、放熱板3の両側を略直角に曲げられた部分である。それぞれの側板4は隣接する根太11にそれぞれ対向する。従って、図1(b)に示すように、パネル本体2はコの字をした断面を有する。パネル本体2は、側板4に打たれるビス12により根太11に固定される。
【0021】
発熱体5は、放熱板3の内側にU字状に配線され、一端はコネクタ13aに接続され,他端はコネクタ13bに接続され、さらに床下暖房パネル1の外部へと接続される。この発熱体5は、例えば、ニクロム線などの抵抗発熱体が被覆材で被覆された一般的なものである。また、床下暖房パネル1の発熱体5には,温度センサ10が取付けられ、発熱体5の温度管理がなされる。
【0022】
パネル本体2を根太11間に取付けた後、断熱材6である発泡硬質ウレタンフォームは、図1(b)に示すようにパネル本体2の内側に吹き付けられる。このとき、断熱材6は、パネル本体2の内部だけでなく床下暖房パネル1間の空間にも連続して吹き付けられる。これにより、床下全体の断熱が連続して一体化できる。この断熱材6の床下空間全体への吹き付けにより、床下の湿気及び冷気を遮断することができ、部屋の冷房や暖房のエネルギ効率、遮音性、機密性を向上させ、床下の結露を防止する。
【0023】
本実施形態では、断熱材6は発泡硬質ウレタンフォームとするが、グラスウールなどの繊維系断熱材であっても良い。発泡硬質ウレタンフォームは、グラスウールなどの繊維系断熱材と比較して約2倍の断熱性能があるため、より薄い厚さとすることができる。また、発泡硬質ウレタンフォームは、グラスウールなどの繊維系断熱材と比較して圧縮強度が高いため、経年変化に対する寸法の安定性が高い。また、本実施形態では、発泡硬質ウレタンフォームは、2液性発泡硬質ウレタンフォームとするが、1液性発泡硬質ウレタンフォームであっても良い。2液性発泡硬質ウレタンフォームは、A液(イソシアネート)とB液(ポリオール)を1:1の割合で混合することで化学反応により硬化してフォームを形成する。
【0024】
線状の発熱体5は、放熱板3の一部がコの字状に切断されて折り返された舌状の発熱体保持板7によりパネル本体2に保持される。すなわち、図1(c)に示すように、放熱板3は、長方形の1辺が残されて他の3辺が切断されて開口14が設けられる。そして、残された1辺を軸として舌状の発熱体保持板7が折り返される。折り返された発熱体保持板7は、略円形の発熱体5に沿って円形に曲げられる。そして、その内側に線状の発熱体5を通すことで、発熱体5を包み込むように保持する。このように、線状の発熱体5は、放熱板3の一部により保持され、別途部品を追加することなく簡略化した構成となる。また、発熱保持板7は、放熱板3の一部をコの字状に切断して折り返したものであるため、放熱板3と発熱体5との結合の信頼性を高めることができる。
【0025】
(第2実施形態)
図2に、床下暖房パネルの第2実施形態の概略構成を示す。図2(a)は、建物の床下から根太11の間に挿入された床下暖房パネル10を下方からみた平面図である。図2(b)は、図2(a)のB−B断面図であり、根太11への床下暖房パネル10の取付け前の状態を示す。図2(c)は、図2(a)の一部を拡大して示す説明図である。本実施形態の床下暖房パネル10は、実施形態1の床下暖房パネル1に対し、床下暖房パネル10の根太11への固定方法に特徴がある。その他の構成は実施形態1の床下暖房パネル1と同様であり、説明を省略する。
【0026】
本実施形態では、床下暖房パネル10は、両側の側板4の一部をL字状に切断して略直角に折り返した複数の舌状の固定板8を介して根太11に固定される。そして、固定板8は、根太11に略平行に折り返された取付け部18を有する。この取付け部18には、図2(b)に示すように、根太11に略平行な方向に長円となる取付け孔19が明けられ、ビス12により根太11に固定される。すなわち、固定板8は、図2(a)に示すように平面ではZ型の形状となり、これを側面からみると、図2(b)に示すように取付け孔19を有する取付け部18がみえる。
【0027】
根太11の間に挿入された床下暖房パネル10は、この取付け部18を根太11に略平行な方向に保たせながら、根太11と床下暖房パネル10との間隔を調整して根太11に固定することができる。つまり、図2(c)に示すように、取付け部18は、L字型の断面を有して根太11に取り付くが、根太11と床下暖房パネル10との間隔(X)は施工誤差があるためばらつきが生じる場合がある。そこで、固定板8は、この間隔(X)に想定される最大値に合わせて製作しておき、間隔(X)が最大値の間隔より短い場合には、図2(b)に示すように、L字の交差角度を大きくして取付ける。この場合、ビス12を長円の取付け孔19に対して図中の矢印の方向に移動させる。このようにL字の交差角度と長円の取付け孔19に対するビス12の位置を変えることで根太11と床下暖房パネル10との間隔(X)に対応させて間隔(X)の施工誤差を吸収することができる。これにより、パネル本体2の根太11への固定の信頼性を高めることができる。
【0028】
(第3実施形態)
図3に、床下暖房パネルの第3実施形態の概略構成を示す。図3(a)は、建物の床下から根太11の間に挿入された床下暖房パネル20を下方からみた平面図である。図3(b)は、図3(a)のC−C断面図であり、根太11への床下暖房パネル20の取付け後の状態を示す。図3(c)は、図3(a)の一部を拡大して示す斜視図である。本実施形態の床下暖房パネル20は、実施形態1の床下暖房パネル1、及び実施形態2の床下暖房パネル10に対し、断熱材6の床下暖房パネル20への定着方法に特徴がある。その他の構成は実施形態1の床下暖房パネル1、又は実施形態2の床下暖房パネル10と同様であり、説明を省略する。
【0029】
放熱板3の一部にはコの字状に切断されて折り返された舌状の断熱材保持板16a〜16dが設けられる。この断熱材保持板16a〜16dにより放熱板3には開口17が生じる。そして、断熱材保持板16a〜16dは、吹き付けられた断熱材6を係止して定着させる。すなわち、断熱材保持板16a〜16dは、図3(c)に示すように、L字状の断面を有し、その先端部である放熱板3に略水平な係止部21により吹き付けられた断熱材6を係止して定着させる。本実施形態では、断熱材保持板16は4個が2列に並べられて計8個の配置としているが、この個数及び配置に限らない。
【0030】
吹き付けられた断熱材6は、図3(b)に示すように、その一部がこの係止部21と放熱板3との隙間に充填され、その充填された断熱材の部分が硬化すると、フックを掛けられた状態で断熱材保持板16に係止される。この機構により、断熱材6の落下が防止でき、放熱板3と断熱材6との結合の信頼性を高めることができる。また、図3(b)に示すように、対向して設置された断熱材保持板16a及び16bにより、その間に吹き付けられて硬化した断熱材6の一部は、両側から抱え込まれるように支持される。この機構により、さらに断熱材6の落下が防止でき、放熱板3と断熱材6との結合の信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0031】
1,10,20 床下暖房パネル、2 パネル本体、3 放熱板、4 側板、5 発熱体、6、18 断熱材、7 発熱体保持板、8 固定板、10 温度センサ、11 根太、12 ビス、13a,13b コネクタ、14,17 開口、15 床板、16a,16b,16c,16d 断熱材保持板、18 取付け部、19 取付け孔、21 係止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下から根太の間に挿入されて床板に面する放熱板と、
放熱板の両側を略直角に曲げてそれぞれを根太に対向させた側板と、
からなるパネル本体と、
放熱板の内側に配線される線状の発熱体と、
パネル本体の内側に吹き付けられる断熱材と、から構成され、
線状の発熱体は、放熱板の一部がコの字状に切断されて折り返された複数の舌状の発熱体保持板によりパネル本体に保持されることを特徴とする床下暖房パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の床下暖房パネルであって、側板の一部は、L字状に切断されて略直角に折り返された複数の舌状の固定板を介して根太に固定されることを特徴とする床下暖房パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の床下暖房パネルであって、固定板は、根太に略平行に折り返された取付け部を有し、取付け部には、根太に略平行な方向に長円となるビス用の孔が明けられ、パネル本体と根太との間隔に合わせて長円の孔内におけるビスの位置を調節し、パネル本体を根太に固定することを特徴とする床下暖房パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の床下暖房パネルであって、放熱板の一部にはコの字状に切断されて折り返された舌状の断熱材保持板が設けられ、断熱材保持板は、吹き付けられた断熱材を係止して定着させることを特徴とする床下暖房パネル。
【請求項5】
請求項4に記載の床下暖房パネルであって、断熱材保持板は、L字状の断面の先端に放熱板に略水平な係止部を有し、係止部により吹き付けられた断熱材を係止して定着することを特徴とする床下暖房パネル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の床下暖房パネルであって、断熱材は、発泡硬質ウレタンフォームからなることを特徴とする床下暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261691(P2010−261691A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125797(P2009−125797)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(592139876)株式会社日本衛生センター (15)
【Fターム(参考)】