説明

床暖房システム用の曲管敷設用補助部材

【課題】 床暖房用マットの周囲に無駄なスペースなく連絡配管を敷設するための曲管敷設用補助部材を提供する。
【解決手段】 熱源機と床暖房用マットとの間に連絡配管を敷設するための曲管敷設用補助部材であって、前記曲管敷設用補助部材は、長方形を、前記長方形の一つの頂点と、前記頂点と隣接する二つの辺の各一部分とを含んだ矩形状に切り欠いた形状であるL字型の板状体であり、この切り欠きにより短くされた前記二辺の辺上に両端を有する弧状の配管埋設用溝が少なくとも二本刻設されていることを特徴とする曲管敷設用補助部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房システムにおいて、熱源機と床暖房用マットとの間に連絡配管を敷設するための曲管敷設用補助部材に関する。更に詳しくは、例えば床暖房用マットの角部周辺に敷設した際に、連絡配管を引き回すために必要なスペースを減らすことのできる、曲管敷設用補助部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅、集合住宅、ホテル、病院、高齢者養護施設などの建造物において、居住性を高める目的で床面から暖房する床暖房設備が一般的になりつつある。かかる床暖房の構造としては、下地材の上に、熱媒を通す熱媒導管を埋設した床暖房用マットを設け、その上側に金属箔等の伝熱層を配置してなる床暖房放熱器の上面に表装材を配置したものが最も基本的である。
【0003】
床暖房用マットを構成する板状体(基体)に埋設された熱媒導管の端部は、この板状体の周縁部に配置したヘッダー部に集められ、連絡配管を介して熱媒を供給する熱源機に繋がれる。熱源機で加熱された熱媒が流れる連絡配管は、床暖房用マット近傍まで来て、通常は床暖房マットの周囲を通って床暖房マット入り口のヘッダー部に連結される。連絡配管によって運ばれ、ヘッダー部から入った熱媒は、床暖房マット内を循環した後、再度ヘッダー部から連絡配管に入り、床暖房マットの周囲を通って熱源機に戻る。
【0004】
連絡配管を、熱源機と床暖房用マットのとの間に配置して固定する方法は種々提案されているが、作業性よく、床暖房設備が設置される床の広さや形状に応じて固定できる方法として、特許文献1には、連絡配管を埋設するための溝が形成された、曲管用の連絡配管敷設用補助部材を使用することが提案されている。
【0005】
特許文献1における曲管用の連絡配管敷設用補助部材は、連絡配管を埋設する溝が円弧状に形成され、必要に応じて角部を切り取ることができる形状であり、この補助部材を使用することで、例えば床暖房用マットの縁に沿って連絡配管を引き回して固定する際、床暖房用マットの角部等の連絡配管を曲げるべき場所において、連絡配管を固定するために必要なスペースを省スペース化できる。
【特許文献1】特開2004−198019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の配管敷設用補助部材では、図1に示すように隣接する配管敷設用補助部材1同士の間Hでは無駄なスペースを解消できるが、図1及び図2に示すようにコーナー部の床暖房用マット2と連絡配管3の間Jや、床暖房用マット2縁部と配管敷設用補助部材1縁部の間Kにおいては、依然として無駄なスペースができてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、床暖房用マットの周囲に無駄なスペースなく連絡配管を敷設するための曲管敷設用補助部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明の態様は、熱源機と床暖房用マットとの間に連絡配管を敷設するための曲管敷設用補助部材(10)であって、前記曲管敷設用補助部材(10)は、長方形(M)を、前記長方形(M)の一つの頂点(p)と、前記頂点(p)と隣接する二つの辺(B1、B2)の各一部分(a1、a2)とを含んだ矩形状(N)に切り欠いた形状であるL字型の板状体であり、この切り欠きにより短くされた前記二辺の辺(A1、A2)上に両端を有する弧状の配管埋設用溝(11、12)が少なくとも二本刻設されていることを特徴とする、曲管敷設用補助部材(10)を提供して前記課題を解決する。
【0010】
この発明によれば、床暖房用マットの縁部と配管敷設用補助部材の縁部が互いに接するように敷設することが可能なので、床暖房用マットの周囲に無駄なスペースなく連絡配管を敷設することができる。
【0011】
この態様において、前記曲管敷設用補助部材(10)は、正方形(M)を、前記正方形(M)の一つの頂点(p)と、前記頂点(p)と隣接する二つの辺(B1、B2)の各一部分(a1、a2)とを含んだ正方形状(N)に切り欠いた形状であるL字型の板状体であることが好ましい。
【0012】
前記好ましい態様において、前記弧状の配管埋設用溝(11、12)が、切り欠かれた前記一つの頂点(p)を中心角とした円弧状であることが更に好ましい。
【0013】
また、前記更に好ましい態様において、連絡配管の最小曲げ半径をX、連絡配管の外表面基準の半径をY、前記正方形の一辺の長さ(B1、B2)をB、前記Bから前記正方形状の切り欠き部(N)の一辺の長さ(a1、a2)を差し引いた長さ(A1、A2)をAとした時に、式(1)及び(2)の関係を満たすことが特に好ましい。
A≧2×(1−1/√2)×X+2×(1+1/√2)×Y (1)
B≧A+(X−Y)/√2 (2)
【発明の効果】
【0014】
本発明の曲管敷設用補助部材を使用することによって、床暖房用マットの縁部と配管敷設用補助部材の縁部が接するように敷設することが可能なので、床暖房用マットの周囲に無駄なスペースなく連絡配管を敷設することができる。したがって、従来スペースが足りず、所望の場所に連絡配管を敷設できなかったような床においても、連絡配管の敷設が可能になる。本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかる曲管敷設用補助部材は、連絡配管敷設用補助部材の一種であり、例えば床暖房用マットの角部周囲や、ヘッダーへの接続口付近のような、配管を曲げて設置する必要がある場所に使用されるものである。ここで、連絡配管敷設用補助部材とは、床暖房用マットが敷設されていない床の上に敷設されてダミーマットの役割を有すると共に、熱源機と床暖房用マットのヘッダーを繋ぐ連絡配管を配置、固定する役割をも有するものであり、本発明のように配管を曲げて固定する部材のみならず、配管を直線状に固定する部材も含む概念である。
【0016】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。図3は、本発明の曲管敷設用補助部材10の一形態を表す上面から見た平面図である。本発明の曲管敷設用補助部材10は、長方形Mを、長方形Mの一つの頂点pと、前記頂点pと隣接する二つの辺B1、B2の各一部分の辺であるa1、a2とを含んだ矩形Nに切り欠いた、L字型の板状体の形状をしている。そして、その面上には、二つの辺B1、B2からそれぞれa1、a2を切り取った後の残りの辺であるA1、A2上まで両端が延びた、弧状の配管埋設用溝11、12が刻設されている。
【0017】
弧状の配管埋設用溝11、12は、配管を曲げて埋設するための溝であり、本発明の曲管敷設用補助部材10に隣接して敷設される配管敷設用補助部材等に刻設された同形状の溝と繋がって連絡配管が埋設されるものである。通常、溝11、12は、連絡配管の外形とほぼ同一あるいは若干小さい幅で、連絡配管以上の深さに刻設され、辺A1、A2の厚さ方向で見た断面がU字である形状をしている。ここで、溝11、12の平面形状である弧状とは、配管を曲げて形成されうる曲線を意味する。したがって弧は、放物線状の弧、楕円の円弧、真円の円弧等、配管を曲げて埋設できる形状ならばよいが、中でも、頂点pを中心とした、真円の円弧状であることが好ましい。
【0018】
曲管敷設用補助部材10の形状は、好ましくは、長方形Mが、辺B1と辺B2の長さが等しい正方形であり、切り欠かれる矩形Nも、辺a1と辺a2の長さが等しい正方形状である、L字型である。この場合、L字型の曲管敷設用補助部材10の辺A1において、最も内部に刻設された溝の幅方向の中心rから曲管敷設用補助部材10の頂点であるqまでの距離C1と、最も外側の溝の中心sから曲管敷設用補助部材10の頂点であるtまでの距離C2の長さが等しいことが特に好ましい。このようにすることによって、直線状の連絡配管を敷設するための配管敷設用補助部材と接続しやすくすることができ、低コストで連絡配管を敷設することができる。
【0019】
曲管敷設用補助部材10の形状が、上述の好ましい態様である正方形を正方形状に切り欠いたL字型である場合において、溝11、12に埋設すべき連絡配管の最小曲げ半径をX、連絡配管の外表面基準の半径をYとし、正方形Uの一辺の長さをB(図3のB1)、Bから切り欠き部Vの一辺の長さa(図3のa1)を差し引いた長さをA(図3のA1)とした場合、X、Y、A、Bは、以下の式(1)及び(2)の関係を満たすことが好ましい。
A≧2×(1−1/√2)×X+2×(1+1/√2)×Y (1)
B≧A+(X−Y)/√2 (2)
【0020】
これらの式を満たすことにより、使用する連絡配管の種類や大きさに関わらず、使用する連絡配管に適した大きさの曲管敷設用補助部材10とすることができる。通常、Xの値となる連絡配管の曲げ半径は、配管材質、配管径により異なるが、30〜200mm、好ましくは50〜100mm程度であり、Yと関連する連絡配管の大きさは、外径が10mm、内径が7mm程度が一般的である。
【0021】
曲管敷設用補助部材10において、A1、A2の長さは通常25〜150mm、好ましくは40〜100mmであり、B1、B2の長さは通常通常45〜350mm、好ましくは90〜150mmである。
【0022】
曲管敷設用補助部材10は、図1のように上面に溝11、12が刻設された状態で床面に敷設されても、逆に、裏返した状態、すなわち下面に溝11、12が刻設された状態で床面に敷設されてもよい。また、曲管敷設用補助部材10は、上側設置部材と下側設置部材の二層からなり、これらの接合面に配管が埋設されるように溝11、12が配置された構成としてよい。
【0023】
曲管敷設用補助部材10の基材の材質は、曲管敷設用補助部材10が敷設される場所に応じて適宜選択することができる。例えば、曲管敷設用補助部材10を家具等の什器類を載置する室内の側壁近傍に敷設する場合には、什器類の重量に耐え得るように、素材を比較的剛性の高い木、合成樹脂、硬質ゴムとすることが好ましい。
【0024】
合成樹脂は剛性に優れたものが好ましく、具体的には一般用ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド類、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。中でも、成形性、加工性、コストなどの観点から、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、又はそれらの発泡体が好適である。
【0025】
図4は、本発明の曲管敷設用補助部材10を用いた床暖房システム100の施工例である。熱源機20と床暖房用マット30のヘッダー31とは、2本の連絡配管41、42によって繋がれている。2本の連絡配管41、42は、熱源からの往きの熱媒を運ぶ往き用連絡配管41と、床暖房用マット30中を巡回したあとの熱媒を熱源機20に戻すための戻り用連絡配管42である。
【0026】
図4において、連絡配管41、42は、直線状に配管を固定する、複数の配管敷設用補助部材50と、L字型の形状である複数の曲管敷設用補助部材10とによって、床暖房用マット30の周囲に固定されている。連絡配管41、42が曲げて敷設されるべき床暖房用マット30の角部や、連絡配管41、42がヘッダー31に接続するコーナー部分等では曲管敷設用補助部材10が使用される。曲管敷設用補助部材10がL字型の形状をしていることにより、図1や図2において連絡配管41、42を床暖房用マット30角部に敷設するために要していた連絡配管42と床暖房用マット30角部との間の隙間Jがほとんどなくなっていることが分かる。これによって、床暖房用マット30の縁部と、床暖房用マット30周囲に敷設された配管敷設用補助部材50の縁部とが、図1や図2にあるような隙間Kなく接することができるため、連絡配管41、42を敷設するのに必要な床面積が小さくなる。したがって、従来、スペースが足りず床暖房用マット30の周囲に連絡配管41、42を敷設できなかったような狭い部屋に場合においても、連絡配管41、42を敷設することが可能になる。
【0027】
床暖房システム100において、熱源機20は、床暖房システム100中を循環する熱媒を加熱する装置であり、床暖房用マットを設置する居室内又は居室外に設置される。熱源としては、電気、ガスを用いるのが一般的であり、熱媒としては温水又は蒸気が用いられる。
【0028】
床暖房用マット30は、発泡樹脂でできた板状体であり、この上に、伝熱層や表装材(図示せず)が積層されて、床暖房マット30が設置された床部分が暖房される。床暖房用マット30の材質としては、断熱性に優れた合成発泡樹脂が好ましく、具体的には、硬質ポリウレタン発泡体、硬質ポリエチレン発泡体、硬質ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、硬質ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが用いられる。中でも、硬質ポリウレタン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。床暖房用マット30としては、発泡倍率が50倍以下で厚さが10〜50mmの範囲の板状体が使用される。床暖房用マット30は、長尺で広幅のもの一枚であってもよく、長尺で狭幅のものを複数枚組み合わせて所定の広さにしてもよい。
【0029】
床暖房用マット30の表面には溝が刻設されており、この溝には熱媒導管32が埋設される。熱媒導管32としては、例えば、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、銅管などが使用される。その直径は、建造物が建造されている地域、床暖房システム100を設置する建造物の場所、熱媒の種類、温度などによって変わるが、通常は外径が7.2mm、内径が5mm程度のものが用いられる。
【0030】
連絡配管41、42としては、熱媒導管32と同様の材質のものが好ましく用いられ、その直径も、通常は外径が10mm、内径が7mm程度のものが用いられる。
【0031】
図5は、本発明の曲管敷設用補助部材10を用いた床暖房システムの他の施工例200である。図5においては、一つの床暖房用マット35中に、二つの熱媒導管循環系36、37が存在する。配管敷設用補助部材55によって、一つの熱源機20から床暖房用マット35に向けて平行に敷設された二組の連絡配管45、46、47、48は、床暖房用マット35近傍で、曲管敷設用補助部材10によって二方向に分かれ、各ヘッダー38、39と接続されている。この施工例においても、床暖房用マット35の縁部と、床暖房用マット30周囲に敷設された配管敷設用補助部材55の縁部とが隙間Kなく接した状態で、連絡配管45、46、47、48を敷設することができる。このため、例えば床暖房用マットから壁までの隙間が狭い床面においても、床暖房システム200のような形態で連絡配管を敷設することが可能になる。
【0032】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う曲管敷設用補助部材もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の床暖房放熱システムにおける連絡配管の敷設例をあらわす平面図である。
【図2】従来の別の形態の床暖房放熱システムにおける連絡配管の敷設例をあらわす平面図である。
【図3】本発明の曲管敷設用補助部材10の一形態を表す上面から見た平面図である。
【図4】本発明の曲管敷設用補助部材10を用いた床暖房システムの施工例を示す平面図である。
【図5】本発明の曲管敷設用補助部材10を用いた床暖房システムの他の施工例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 曲管敷設用補助部材
11、12 溝
20、25 熱源機
30、35 床暖房用マット
31、38、39 ヘッダー
36、37 熱媒導管循環系
41、42、45、46、47、48 連絡配管
50、55 配管敷設用補助部材
100、200 床暖房システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機と床暖房用マットとの間に連絡配管を敷設するための曲管敷設用補助部材であって、前記曲管敷設用補助部材は、長方形を、前記長方形の一つの頂点と、前記頂点と隣接する二つの辺の各一部分とを含んだ矩形状に切り欠いた形状であるL字型の板状体であり、この切り欠きにより短くされた前記二辺の辺上に両端を有する弧状の配管埋設用溝が少なくとも二本刻設されていることを特徴とする、曲管敷設用補助部材。
【請求項2】
前記曲管敷設用補助部材は、正方形を、前記正方形の一つの頂点と、前記頂点と隣接する二つの辺の各一部分とを含んだ正方形状に切り欠いた形状であるL字型の板状体であることを特徴とする請求項1に記載の曲管敷設用補助部材。
【請求項3】
前記弧状の配管埋設用溝が、切り欠かれた前記一つの頂点を中心角とした円弧状であることを特徴とする請求項2に記載の曲管敷設用補助部材。
【請求項4】
連絡配管の最小曲げ半径をX、連絡配管の外表面基準の半径をY、前記正方形の一辺の長さをB、前記Bから前記正方形状の切り欠き部の一辺の長さを差し引いた長さをAとした時に、式(1)及び(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の曲管敷設用補助部材。
A≧2×(1−1/√2)×X+2×(1+1/√2)×Y (1)
B≧A+(X−Y)/√2 (2)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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