説明

床暖房用ハニカムコア床部材

【課題】 従来のハニカムコア、電熱材および表面材からなる床暖房用床材を、熱効率が良く、速熱性があり、安価に施工できる床暖房となるように改良する。
【解決手段】 ハニカムコア11を用いた床暖房用床部材において、ハニカムコア11のハニカム部に直径5mm以下の貫通穴4を開け、その穴4に絶縁材で被覆した電熱線5を通し、温度上昇を必要とする表層材12に電熱線5を近付ける事によって、従来の床暖房部材に比べて格段に熱効率を高めた暖房用ハニカムコア床部材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用のハニカム構造をもった床部材(ハニカムコア床部材という)の改良に関するが、詳しくはハニカムコアのハニカム壁に貫通する穴を開け、その中に絶縁材を被覆した電熱線を配線した構造であって、暖房の効率を上げ、省エネルギーが達成でき、さらに施工が容易な床暖房用ハニカムコア床部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からアルミニュウム製ハニカムコアは強度があり、かつ断熱性があるので、床暖房の床材として使用している。現在、最も多く使用されている構造を図8に図示する。下部床に電熱式暖房シート31をはり、その上にハニカムコア床材11を、接着剤32を用いて接着している。
【0003】
ハニカムコア材11は熱伝導性が悪いので、電熱式暖房シート31と表面材12までの熱伝導距離が長い従来式では、熱効率が悪く、暖まるまでの時間がかかっている。また、暖房シート31とハニカムコア床材11との間に隙間ができやすい為、熱効率が悪くなる。さらに電熱発熱線33は電熱式発熱シートのハニカムコア側に配線しているが絶縁体が熱伝導を阻害しているため、熱効率が悪く、暖まるまでの時間がかかっている。
【0004】
上記の事項をグラフで説明したのが図9である。図10の破線ロは従来の床暖房実施時の温度分布を示したものであるが、表面材12の表面の温度を上げるためには、表面材12、ハニカムコア11、電熱式発熱シート3とハニカムコアとの間、および電熱式発熱シート3のハニカムコア側はそれぞれ熱抵抗があるので、それを補うため、温度を上げる必要がある。最終的に発熱体7の温度を上げる必要がある。一方、裏側は電熱式発熱シートおよび断熱材を用いても温度は高くなり、放熱が大きい。以上から従来のハニカムコアを使用した床暖房方式は熱効率が悪く、暖まるまでの時間がかかることは明白である。
【0005】
さらに暖房床施工において、発熱暖房シートを施工したのちにハニカムコアの施工するので工数、手間がかかる。また、発熱暖房シートが故障した場合は床全面工事となるため経済的でない。
【0006】
この欠点を改良した、他のハニカムコアを使用した暖房床部材の構造例を図7に図示する。電熱式発熱シート3をハニカムコア11の表面に貼り、その上に表面材を貼りつける構造である。
【0007】
この構造では熱効率は良いが、例えば表面材に天然石薄片、タイルなど硬質で脆い材料の場合は電熱式発熱シートが軟らかく、弾力があるので、床に荷重がかかれば表面材が割れる可能性が高い。また、表面材がビニールシート、じゅうたんなどの軟質の場合は、先が尖ったもの、重量物を床の上に置くと電熱式シートを傷つける可能性があり、火災等の危険がある。
【0008】
さらに他のハニカムコアを使用した暖房床部材を図8に図示する。ハニカムのセルの中に分散して塊上の発熱体 を埋め込むものである。セルの大きさおよび厚さを考慮すると、発熱体の数が非常に多くなり、施工工数、費用がかさむ。
【0009】
床暖房には電熱の他に温水、熱媒体を用いた暖房がある。いずれも液体を循環して暖房するものであるが、温水設備又は熱交換設備、送液設備、配管が必要であり費用がかさむ。さらに、また配管が太いために、ハニカムコアを成型して埋め込むなど施工が困難である。このため、配管部のハニカムコアを切り取り加工する、又は配管部をプレス加工している。この加工部分は強度が低下しハニカムコアを使用する目的が無くなる。
【0010】
なお、本願発明に関連する公知技術として次の特許文献を挙げることができる。
【0011】
【特許文献1】 特開昭56−97799号公報
【特許文献2】 特開平07−32518号公報
【特許文献3】 特開平11−83049号公報
【特許文献4】 特開2002−228174号公報
【特許文献5】 特開昭61−134030号公報
【特許文献6】 特開平02−18046号公報
【特許文献7】 特開平05−94617号公報
【特許文献8】 特開平07−38404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術に係るハニカムコア床暖房のかかる問題を解決しようとする課題を有する、すなわち、本発明は床暖房において施工の簡易、施工費用の安価、熱効率の向上及び迅速な温度上昇を得ようとするところに課題の解決がある。
【課題が解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記のごとき問題を解決するために開発したものであって、ハニカムコア本体にハニカムコアのハニカム壁に貫通する直径5mm以下の小さな穴を開け、その穴に絶縁材で被覆した電熱線(シーズヒーター、コード状ヒーターなど)を埋め込んだ構造とした、より速く暖房効果を発揮し、暖房エネルギーを少なく出来る床暖房用部材の提供にある。
【0014】
さらに、前記床暖房部材において、ハニカムコア本体の上表面にタイル、自然石、人工石レンガ、ガラス、木材(フローリング)、ビニールタイル、じゅうたん、カーペット畳表などの床表面材を薄く加工し、貼り付けたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ハニカムコアの内部に穴を開け、その穴に電熱線を通すものであるから、発熱線とハニカムコアとの隙間はできない、また、使用する上表面に近い為に、従来の床暖房より、効率的な暖房を提供することができる。
【0016】
本発明の熱的な効果を従来の構造と比べグラフで説明したのが図9である。本発明による床材内部の温度分布イ(実線)を見ると表面材12の温度を従来の床暖房と同じとした場合、ハニカムコアの中央部に発熱体7の温度aは、従来型の発熱体33の温度bに比べて低いことは明白である。また、暖房部材裏側の温度も低い。このことから、本発明による床暖房は従来の床暖房に比べ、速く暖まり、熱効率も良く省エネルギーが図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図2はハニカム構造図であるが、ハニカム1はアルミニュウムを蜂の巣状に加工したもので、少ない材料で強度のある構造材が製作できる。また、ハニカム構造は中空なので熱伝導は良くない。
【0019】
図3はハニカムコア11の構造図であるが、ハニカム1にアルミニュウム製の片面板2及び反対面板3を取りつけ、横方向の変形を防止する構造となっており、床材に広く使用されている。本発明は本ハニカムコアを改良し、熱効率の良い床暖房部材としたものである。
【0020】
図4、図5は本発明の実施の形態に係り、図4は本発明の床暖房用ハニカムコア床部材概要図であり、図5はハニカム部の斜頚図である。図4,図5に示すように、ハニカム構造1の壁面10に直角に穴4を貫通させる。床に重量物が載る場合を想定して穴4は直径5mm以下とする。穴の加工位置は壁面10の中なら何処でも良いが、平面の上下、左右の中心が強度的に好ましい。
【0021】
図5に細部の構造を示すが、加工した穴4に抵抗線7を絶縁材8で被覆した電熱線5を通す。電熱線5はハニカムによる損傷を防ぐため、ステンレス網パイプ、アルミニュウムパイプなどの保護皮膜9を被覆するのが望ましいが無くても使用上問題ない。
【0022】
ハニカムコアに穴を開けるとハニカムコアの強度が低下する。しかし、直径5mm以下の場合は強度低下が少なく、使用上問題がないので、貫通する穴4は直径5mm以下とした。
【0023】
図4は被覆電熱線を配線した状況を示す、すべての電熱線5をハニカムコア内に配線し、端子6がハニカムコアの外にでている。端子6を制御器25に接続し、電子式制御機器で入力電力を制御し、床暖房温度を制御する。過熱防止のため配線途中にサーモスタットを取りつける、火事防止のため温度ヒューズを取りつける、さらに感電防止のためハニカムコアから直接接地するなどの安全対策を取るのは当然である。また、温度制御を入力制御ではなく、温度計検出端をハニカムコア内に設置して行うことも可能である。
【0024】
図1は実施した床暖房用ハニカムコア床部材であり、ハニカムコアの上表面にタイル、自然石、人工石、レンガ、ガラス、木材(フローリング)、ビニールタイル、じゅうたん、カーペット、畳表などの床表面材12を貼り付けた床暖房用部材である。住宅用として用途に応じた床表面材12を使用することによって、快適な住空間が形成する。なお、ハニカムコアを利用することによって、高価な表層材も薄くして使用できる。床暖房を考えると薄い方が熱伝導も良くなるので、速く暖まり、熱効率も良くなり、省エネルギーが図れる。
【実施例】
【0025】
図6は6畳洋室にフローリング床の施工した実施例である。表層材に厚さ5mmのフローリング材を、電熱線を組み込んだ1畳の大きさのハニカムコアに貼り付け施工したものである。電源24から配線し電子式温度制御器25によって、電力制御する。出力は配線23によって各ハニカムコア6枚に配電する。図6では1対の配線しか描いていないが、ハニカムコア各々別々に独立して配線しており、必要なハニカムコアのみ暖房できるようになっている。また、各々のハニカムコアを違う温度に設定できるようにした。これは、必要な部分を必要だけ暖房することとなり、省エネルギーに効果が大きい。
【0026】
図7は風呂洗い場床に施工した実施例である。浴室に入った時に足の裏の冷たさを防止すると同時に浴室の乾燥を目的としている。浴槽26は天然石でできており、洗い場表層材21は浴槽と同じ天然石を薄く切ったものであり、天然石のため、冷たいので床暖房を施工したもの。天然石の温度すなわちハニカムコアの温度は、電源24から配線し、電子式制御器25によって、電力制御することで制御する。湯水を使用する個所なので、配線および器具は全て防水型のものを用いると同時にハニカムコアからアースを取り、人が感電しないようにする。
【産業上の利用可能性】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の床暖房用ハニカムコア床部材概要図
【図2】 ハニカム構造図
【図3】 ハニカムコア構造図
【図4】 本発明の床暖房用ハニカムコア部概要図
【図5】 ハニカム斜頚図
【図6】 床表面材にフローリング材を使用した洋室の本発明による床暖房実施例
【図7】 床表面材に自然石薄片を使用した浴室の本発明による床暖房実施例
【図8】 従来のハニカムコアを用いた床暖房床材の概要図(例1)
【図9】 ハニカムコアを用いた従来の床暖房と本発明の床暖房の床断面の温度分布の比較
【図10】 従来のハニカムコアを用いた床暖房床材の概要図(例2)
【図11】 従来のハニカムコアを用いた床暖房床材の概要図(例3)
【符号の説明】
1 ハニカム
2 片面板
3 反対面板
4 穴
5 絶縁材で被覆した電熱線
6 端子
7 電気抵抗線(電熱線素線)
8 絶縁材
9 ステンレス網などの保護皮膜
11 ハニカムコア
12 床表面材
21 フローリング床表層材
22 断熱材、緩衝材
23 出力配線
24 電源配線
25 電子式温度制御器
26 浴槽
27 天然石薄片床表層材
31 電熱式発熱シート
32 接着剤
33 電熱発熱体
34 塊状電熱発熱体
イ 本発明による床暖房部の表面から内部への温度分布
ロ 従来の床暖房での表面から内部への温度分布
a 本発明での発熱体の温度
b 従来の床暖房での発熱体の温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムコア、発熱体および表面材で構成する暖房用の床部材であって、ハニカムコアのハニカム壁を貫通する直径5mm以下の穴を加工し、その穴に絶縁材で被覆した電熱線を配線する構造とした、より速く暖房効果を発揮し、暖房エネルギーを少なく出来、かつ施工が容易な暖房用床部材。
【請求項2】
前記床暖房床部材において、表面材としてタイル、自然石、人工石、レンガ、ガラス、木材(フローリング)、ビニールタイル、じゅうたん、カーペット、畳表の薄材を貼り付けた床暖房用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−46047(P2006−46047A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256297(P2004−256297)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(504334153)新東信日軽株式会社 (3)
【Fターム(参考)】