説明

床暖房用蓄熱シート及び床暖房パネル

【課題】蓄熱材として蓄熱性能の高い潜熱蓄熱材を用いることができ、しかも釘打ちによって固定することができる床暖房パネルと、そのための床暖房用蓄熱シートを提供する。
【解決手段】床暖房パネル1は、基板10と、該基板10の上面側に設けられた床暖房用蓄熱シート20とを有する。基板10は、方形板状の合成樹脂発泡材等よりなる基体11と、該基体11の1対の辺部に沿って配置され、該基体11に対し接着剤等によって固着された合板等よりなる小根太12,12とで構成されている。蓄熱シート20は、方形のシェル21と、このシェル21の上面に貼り付けられたアルミニウム等の金属箔30とを有する。この金属箔30の1対の側辺部がシェル21の側縁から張り出した片体30aを構成している。シェル21内に融解温度が40〜50℃程度の潜熱蓄熱材27が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水等の熱媒を配管に通して床暖房を行う床暖房パネルと、それに用いられる蓄熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅、集合住宅、ホテル、病院、高齢者養護施設などの建造物の床には、居住性を高める目的で、床面から暖房する床暖房構造が開発、実用化され、各種態様の床暖房構造が提案されている。特に、温水等の熱媒を通す放熱管を設けた床暖房構造は、ヒーター加熱によるものとは異なり、局部的に過熱状態が生じにくく、放熱性も良好であるという利点を有し、広く採用されるようになってきている。
【0003】
この床暖房パネルを設けた床構造として、特開2000−291965号公報には、上面に配管収容用の溝が設けられ、該溝内に熱媒流通用の配管が配設された床暖房パネルと、該床暖房パネル上に積層された板状の蓄熱部と、該蓄熱部の上側の捨貼合板と、該捨貼合板の上側の床仕上げ材とを有した構造が記載されている。
【0004】
この特開2000−291965号公報では、複数枚の床暖房パネルが下地合板上に敷設され、床暖房パネル同士の間に小根太が配置されている。そして、前記捨貼合板から蓄熱部を通して該小根太にスクリュー釘を打つことにより床暖房パネルが固定されている。
【0005】
蓄熱部としては、岩石、コンクリート等の蓄熱材をそのまま板状としたものか、又はこのような蓄熱材を塊状にし、合成樹脂板内に分散含有させたものが用いられている(同号公報0016段落)。
【0006】
特開平9−303803号公報には、平板形状の蓄熱体と、この蓄熱体内に埋設された温水配管とを有した床暖房パネルが記載されている。同号公報の0011段落には、蓄熱体として蓄熱性能を有するゲル状流体又は水溶液等の流動化材料が好ましいと記載されている。
【特許文献1】特開2000−291965号公報
【特許文献2】特開平9−303803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2000−291965号のように床暖房パネルの上に蓄熱体を重ね、その上に捨貼合板を重ね、この捨貼合板から蓄熱体及び小根太を通して下地合板に釘打ちして床暖房パネルを固定する場合、蓄熱体としては、コンクリート、岩石などの常に固形物である、蓄熱性能の低いものしか用いることができない。
【0008】
蓄熱体として、特開平9−303803号のように流動化材料を用いたのでは、釘が蓄熱体を貫通することにより液漏れが発生してしまう。
【0009】
本発明は、かかる問題点を解消し、蓄熱材として蓄熱性能の高い潜熱蓄熱材を用いることができ、しかも釘打ちによって固定することができる床暖房パネルと、そのための床暖房用蓄熱シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の床暖房用蓄熱シートは、内部に空室を有した中空板状のシェルと、該シェルの少なくとも一辺から張り出すシート状の片体と、該シェルの前記空室内に充填された潜熱蓄熱材とを備えてなるものである。
【0011】
このシェルは、上面部と、該上面部に所定間隔を置いて対置された下面部と、該上面部及び下面部の周縁部に連なる周壁部と、該上面部と下面部との間のスペースを複数の空室に区画する隔壁とを備えてなることが好ましい。この隔壁は、一方向に平行に延在するように複数個設けられてもよい。
【0012】
シェルは、合成樹脂であることが好ましい。
【0013】
片体は、シェルに貼り付けられた金属箔が好ましい。
【0014】
この床暖房用蓄熱シートでは、シェルは方形であり、片体はシェルの少なくとも一対の辺部に設けられることが好ましい。
【0015】
片体は、シェルの上面側の辺縁部から張り出すことが好ましい。
【0016】
本発明の床暖房パネルは、放熱管を有した基板と、該基板の上側に設けられた本発明の床暖房用蓄熱シートとを備えてなり、該床暖房用蓄熱シートの前記片体が該基板上に配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
この床暖房パネルにあっては、床暖房用蓄熱シートのシェルは方形であり、片体はシェルの少なくとも一対の辺部に設けられており、基板の上面には、該シェルを収容した凹所が設けられており、前記片体は、該凹所周囲の基板上面に重なっていることが好ましい。
【0018】
この床暖房パネルでは、基板の上面のうち前記凹所の部分に溝が設けられ、該溝内に前記放熱管が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の床暖房用蓄熱シートは、蓄熱材として潜熱蓄熱材を用いているので、放熱管に高温度の熱媒を流通させても床暖房用蓄熱シートの上面温度は通常の場合、潜熱蓄熱材の融解温度に保たれる。従って、例えば融解温度が40〜50℃程度の潜熱蓄熱材を用い、80℃程度の高温の温水を放熱管に流通させるようにすることにより、温水ボイラの熱効率を向上させることができる。また、放熱管に流通させる熱媒の温度が変動しても、床面の温度はほぼ一定に保たれる。
【0020】
また、潜熱蓄熱材の材料を選定することにより、居住者の希望に応じた床温度を設定することができる。
【0021】
本発明の床暖房用蓄熱シートにあっては、シェルの少なくとも一辺から片体が張り出している。このため、この床暖房用蓄熱シート及び該床暖房用蓄熱シートを用いた床暖房パネルにあっては、この片体に釘、ビス、タッカー等の留め具を打って床暖房用蓄熱シートを固定することができる。この留め具は、シェルを貫通しないから、液状の潜熱蓄熱材がシェルから漏れるおそれは全くない。
【0022】
このシェル内が隔壁によって上面部と下面部との間に複数のスペースを区画形成したものである場合、シェルの面圧剛性が高くなり、床暖房用蓄熱シートに上方から押圧力が加えられたときの変形が防止ないし抑制される。また、仮に何らかの原因によってシェルの1箇所に亀裂や孔が生じても、潜熱蓄熱材の漏れは1つの小空室分だけとなる。
【0023】
複数の隔壁が一方向に平行に延在して設けられている場合には、シェルを合成樹脂の押出成形により容易に製造することができる。
【0024】
片体をシェルに貼り付けられた金属箔にて構成した場合には、この金属箔を均熱材(伝熱シート)として機能させることができる。
【0025】
シェルを方形とし、片体をシェルの少なくとも1対の辺部に設けることにより、床暖房用蓄熱シートを少なくともこの1対の辺部において固定することができる。
【0026】
片体は、シェルの上面側の辺縁部から張り出すように設けられることが好ましい。これにより、床暖房パネルを構成する基板の上面に凹所を設け、この凹所にシェルを納め込み、片体を凹所周囲の基板上面に重ね合わせ、片体を基板に留め付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の床暖房パネルの実施の形態を詳細に説明するが、以下に説明するものは本発明の実施形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り、以下の説明に何ら限定されるものではない。
【0028】
第1図(a)は本発明の実施の形態に係る床暖房パネルの断面図、第1図(b)は第1図(a)のB部の拡大図、第1図(c)は第1図(b)のC部の拡大図である。第2図は基板と蓄熱シートとの係合関係を示す分解斜視図、第3図はシェルの分解斜視図である。
【0029】
この床暖房パネル1は、基板10と、該基板10の上面側に設けられた床暖房用蓄熱シート20とを有する。基板10は、方形板状の合成樹脂発泡材等よりなる基体11と、該基体11の1対の辺部に沿って配置され、該基体11に対し接着剤等によって固着された合板等よりなる小根太12,12とで構成されている。
【0030】
基体11の厚さは小根太12よりも若干小さい。基体11と小根太12とは、底面を面一にして固着されており、基体11の上面は小根太12の上面よりも若干低くなっている。これにより、基板10は基体11の上面側に凹所が形成された形状となっている。凹所の深さは、小根太12と基体11との厚みの差に等しい。
【0031】
この基体11の上面に溝13が延設され、この溝13内に熱媒流通用の配管(放熱管)14が配設されている。なお、図示は省略するが、この溝13内に、略U字形断面形状のU字部と、このU字部の双方の上端から互いに離反方向に張り出す張出部とを有した逆Ω字形状の伝熱材を配置し、このU字部内に放熱管14を配置してもよい。張出部は、溝13に沿う基体11の上面に重ね合わされる。この伝熱材は、アルミ等よりなり、また、必要に応じ基体11に対し接着剤又は粘着材によって付着される。
【0032】
小根太12は、合板よりなる細長い板形状の部材である。
【0033】
床暖房用蓄熱シート20は、基体11と小根太12との同一の平面視の大きさを有し、厚さが上記凹所の深さと等しいものとなっている方形のシェル21と、このシェル21の上面に貼り付けられたアルミニウム等の金属箔30とを有する。この金属箔30の1対の側辺部がシェル21の側縁から張り出した片体30aを構成している。
【0034】
第3図に明示される通り、シェル21は、上面部22と、該上面部22と所定間隔をおいて配置された下面部23と、上面部22と下面部23との1対の側辺部同士を繋いでいる1対の側壁部24と、該側壁部24と平行に延在し、上面部22と下面部23とを繋いでいるリブ状の隔壁25と、シェル21の端面を閉鎖している1対のエンドプレート26,26とを有している。
【0035】
この上面部22、下面部23、側壁部24及び隔壁25は、合成樹脂の押出成形により一体に成形されている。なお、押出成形の押出方向は側壁部24及び隔壁25の延在方向である。上面部22、下面部23、側壁部24及び隔壁25よりなるシェル半完成品の一端面に対し一方のエンドプレート26を接着、超音波溶着などによって固着した後、シェル21内に潜熱蓄熱材27を充填し、他方の端面に他方のエンドプレート26を接着、超音波溶着などによって固着することにより、潜熱蓄熱材27が封入されたシェル21が得られる。この潜熱蓄熱材27としては、融解温度が30〜60℃程度のものが用いられる。なお、潜熱蓄熱材27の好ましい組成については後述する。
【0036】
このシェル21に対し金属箔30を接着剤又は粘着剤によって貼り付けることにより、床暖房用蓄熱シート20が得られる。金属箔30がシェル21から張り出す幅員、即ち片体30aの幅員は、小根太12の幅員と等しい。
【0037】
この床暖房用蓄熱シート20を、放熱管14付きの基板10に装着する。この際、シェル21は基体11の上面に重ね、片体30aは小根太12の上面に重ね、それぞれ接着剤又は粘着剤によって基体11、小根太12に付着させる。これにより、床暖房パネル1が構成される。
【0038】
このように構成された床暖房パネル1は、例えば合板等よりなる床下地板上に敷設され、その上に必要に応じ下地合板を介して床仕上げ材が配材される。この床暖房パネル1は、片体30a及び小根太12を通して釘又はビス打ちすることにより床下地板に固定される。この実施の形態では、片体30aがシェル21の両側辺から延出しているので、床暖房用蓄熱シート20の左右両側縁部をしっかりと固定することができる。
【0039】
この釘又はビスは、シェル21を全く貫通しないので、液状となった潜熱蓄熱材27が液漏れすることは全くない。
【0040】
この床暖房パネル1の放熱管14に温水等の熱媒を流通させることにより、床暖房が行われる。放熱管14の上側に蓄熱シート20が敷設されており、この蓄熱シート20の蓄熱材が潜熱蓄熱材であるため、放熱管14の温度が高くても床面温度は、通常、潜熱蓄熱材の融解温度又はそれ以下となり、快適な床暖房を行うことができる。また、放熱管14に通す温水等の温度を高くすることにより、ボイラの熱効率を高めることができる。また、放熱管14に流通させる温水等の温度が変動しても、床面の温度をほぼ一定に保つことができる。
【0041】
また、この床暖房用蓄熱シート20は、その上面に金属箔30を有しており、熱を床面全体に広く伝達させ、床面温度を均一化させることができる。
【0042】
この実施の形態では、床暖房用蓄熱シート20のシェル21は、複数の隔壁25によって上面部22を支承した構造となっているので、上方から大きな荷重が加えられても上面部22が凹むように変形することはない。なお、シェル21内が隔壁25によって多数の小室に分画されているので、仮にシェル21に局所的にクラックや貫通孔が生じても、液状の潜熱蓄熱材の漏出量は1個の小室分以下に止まる。
【0043】
なお、このシェル21は隔壁25と側壁部24,25とが平行方向に延在しているので、合成樹脂の押出成形により効率良く製造することができる。
なお、本発明における床暖房パネルは、予め工場で基板と床暖房用蓄熱シートとを一体化したものを施工現場に搬入してもよいし、あるいは、基板と床暖房用蓄熱シートを、それぞれ施工現場に搬入し、施工現場で一体化してもよい。更に、片体30aを施工現場で設けてもよい。
【0044】
以下に本発明の床暖房パネルを構成する各部材の構成材料等について詳細に説明する。
【0045】
〈基体〉
基体11の材質は特に限定されないが、通常、断熱性に富んだ発泡合成樹脂製のものが好ましく、発泡合成樹脂製の板状体、具体的には、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。基体11を構成するこれらの板状体の厚さは9〜50mmの範囲内で選ぶのが好ましい。基体11の発泡倍率は10〜50倍程度が好適である。
【0046】
〈溝〉
基体11の上面には、放熱管14を配設するための溝13が基体11の長手方向と平行に複数本刻設されている。
【0047】
溝13の幅員は、放熱管14の外径と同程度とするのが好ましい。溝13は、その延在方向に直交する断面形状がU字形状又はコ字形状となるように形成されるが、特に、放熱管14から床面への伝熱性、放熱管14を溝13に埋設する際の施工性の面から、断面U字形とすることが好ましい。
【0048】
溝13の深さは、放熱管14の外径と同程度とするのが好ましい。
【0049】
〈放熱管14〉
放熱管14には、通常可撓性チューブが使用され、具体的には架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などの樹脂管、銅管、鋼管などの金属管のいずれを用いても良い。このうち、金属管は樹脂管に比べて高熱伝導率であるものの重量が重く、加工性、発錆等の問題があり、また、コストも高くなるため、床暖房パネルの用途に用いる場合は、樹脂管が好ましい。
【0050】
放熱管14の断面(長さ方向に直交する方向の断面)形状には特に制限はなく、一般的には第1図に示すような円形とされるが、長円形状ないし楕円形状とすることにより、放熱管14と蓄熱シート20との接触面積を増すことができ、上面側への放熱効率をさらに高めることができる。ただし、この場合には基体11に設ける溝13の形状を放熱管14の形状に倣って適宜設計する。
【0051】
放熱管14の寸法は、床暖房パネルの施工対象や流通させる熱媒の種類や温度によって変更できるものであるが、一般的には外径が6mm以上13mm以下程度、内径が4mm以上10mm以下程度で、肉厚が0.8mm以上2.0mm以下程度である。
【0052】
〈熱媒〉
放熱管14に通す熱媒(加熱媒体)としては、温水、水蒸気、加熱オイル、あるいはエチレングリコール系水溶液、プロピレングリコール系水溶液などの不凍液などが挙げられるが、好ましくは温水である。
【0053】
〈伝熱材〉
放熱管14からの熱を蓄熱シート20に効率良く伝達させるために、前記の通り、伝熱材(図示略)を設けてもよい。
【0054】
この伝熱材は、アルミニウム、銅などの熱良導性の金属材、特にアルミニウムよりなることが好ましい。
【0055】
伝熱材は、U字形断面形状のU字部と、該U字部の上端から互いに反対方向に張り出す1対の張出部とを有することが好ましい。
【0056】
〈シェル21〉
シェル21は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製であることが好ましく、特に押出成形、射出成形等の溶融成形が可能であるところから熱可塑性合成樹脂製であることが好ましい。シェル21の厚み方向の寸法は1〜6mm程度が好適である。また、各種フィラー等、一般に樹脂に添加することのできる各種添加剤が含有されていてもよい。
【0057】
〈潜熱蓄熱材27〉
潜熱蓄熱材としては、30〜60℃特に40〜50℃に融解温度を有するものが好適である。このような潜熱蓄熱材としては、酢酸ナトリウム3水塩(CHCOONa・3HO)(融点58℃)、チオ硫酸ナトリウム5水塩(Na・5HO)(融点48℃)、硫酸ナトリウム10水塩(NaSO・10HO)(融点32℃)、塩化カルシウム6水塩(CaCl・6HO)(融点30℃)の単体、もしくは、上記物質を2種類以上組み合わせた混合塩などが例示される。
【0058】
〈金属箔30〉
金属箔30は、シェル21から延出して片体30aを構成すると共に、蓄熱シート20の熱を床仕上げ材へ伝達する機能を有する。金属箔の種類としては、アルミニウム箔、錫箔、ステンレススチール箔、銅箔などが挙げられる。中でも、製造の難易、コストなどの観点からアルミニウム箔が好適である。アルミニウム箔の場合は30〜500μm、特に80〜200μm程度の厚みのものが好適である。
【0059】
〈表装材層〉
本発明では、金属箔30の上にさらに表装材層を設けてもよい。
【0060】
表装材層としては特に制限はないが、下面側のクッション材層と、この上に積層された床表面材層とを備えるものが好ましい。ただし、クッション材層は必ずしも必要とされず、床表面材層のみでもよい。
【0061】
クッション材層は、床表面材層上での優れた歩行感覚を得る等の面から、例えばポリウレタン発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の発泡樹脂、熱可塑性エラストマー又は不織布を含むものである。
【0062】
クッション材層の厚さは、その材質、床暖房パネルの施工対象によっても異なるが、床暖房パネルを過度に厚くすることなく、また、配管からの伝熱効率を損なうことなく、十分な歩行性等を得る上で、1mm以上6mm以下、特に2mm以上5mm以下の範囲とすることが好ましい。
【0063】
床表面材層は、配管を埋設した基体を保護すると共に、床面外観の意匠性と耐久性を高めるためのものであり、通常は合板等の木製、発泡ゴム製で、好ましくは木製のものであり、その表面に通常は、天然木材板又は木目模様などの印刷模様を施したプラスチックフィルム、不織布、強化紙など、好ましくは天然木材板又は強化紙が貼着される。
【0064】
床表面材層の厚さは、薄すぎると強度が不足して破損しやすくなり、厚すぎると配管からの伝熱効率が低下すると共に床暖房パネルの厚さが厚くなるため、3mm以上15mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0065】
なお、このような床表面材層の上に更に樹脂塗装等を施しても良い。
【0066】
[別の実施の形態]
本発明では、第4図に示すように、シェル21の下面にも金属箔32を貼ってもよい。これにより、放熱管14からの熱が蓄熱シート20に均一に伝わり易くなる。
【0067】
また、本発明では、第5図のように、小根太12を省略し、小根太12の部分についても基体11で構成してもよい。
【0068】
図示はしないが、第5図の構成においても、第4図のように、シェル21の下面にも金属箔を貼ってもよい。
【0069】
なお、第4図(a),(b)及び第5図(a),(b)はそれぞれ第1図(a),(b)に相当する断面図である。第4,5図の実施の形態のその他の構成は、上記実施の形態と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0070】
本発明では、第6図のように、シェルの隔壁を四角形、六角形等(第6図では四角形)のハニカムとしてもよい。
【0071】
第6図のシェル40は、井桁状のハニカム41に対し上下からプレート42を重ね合わせ、振動溶着、接着等により該プレート42とハニカム41とを接合することにより形成されたものである。なお、第6図では上側のプレート42のみが図示されている。
【0072】
このシェル40を用いて床暖房用蓄熱シートを製造するには、ハニカム41の下面にプレート42を固着させて上開容器状とする。そして、ハニカム41で区画された個々の小室内に潜熱蓄熱材を充填した後、上側のプレート42を被せて固着する。その後、シェル40の上面に金属箔30(第6図では図示略)を貼着することにより、床暖房パネルが得られる。
【0073】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。例えば、金属箔30の代わりに合成樹脂シートや合成樹脂繊維の不織布、織布を用いてもよい。これらの合成樹脂シート等の場合、シェルの上面全体に貼るのではなく、シェルの上面の辺縁部にのみ合成樹脂シートを貼り付けて片体をシェルから張り出させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の床暖房パネルの実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の床暖房パネルの分解斜視図である。
【図3】図1の床暖房パネルのシェルの分解斜視図である。
【図4】別の実施の形態に係る床暖房パネルを示す断面図である。
【図5】別の実施の形態に係る床暖房パネルを示す断面図である。
【図6】異なる実施の形態に用いられるシェルの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 床暖房パネル
10 基板
11 基体
12 小根太
13 溝
14 放熱管
20 床暖房用蓄熱シート
21 シェル
25 隔壁
30 金属箔
30a 片体
40 シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空室を有した中空板状のシェルと、
該シェルの少なくとも一辺から張り出すシート状の片体と、
該シェルの前記空室内に充填された潜熱蓄熱材と
を備えてなる床暖房用蓄熱シート。
【請求項2】
請求項1において、該シェルは、
上面部と、
該上面部に所定間隔を置いて対置された下面部と、
該上面部及び下面部の周縁部に連なる周壁部と、
該上面部と下面部との間のスペースを複数の空室に区画する隔壁と
を備えてなることを特徴とする床暖房用蓄熱シート。
【請求項3】
請求項2において、一方向に平行に延在して複数の前記隔壁が設けられていることを特徴とする床暖房用蓄熱シート。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記シェルは合成樹脂製であることを特徴とする床暖房用蓄熱シート。
【請求項5】
請求項4において、前記片体は、該シェルに貼り付けられた金属箔よりなることを特徴とする床暖房用蓄熱シート。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記シェルは方形であり、前記片体は、該シェルの少なくとも一対の辺部に設けられていることを特徴とする床暖房用蓄熱シート。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記片体は、前記シェルの上面側の辺縁部から張り出していることを特徴とする床暖房用蓄熱シート。
【請求項8】
放熱管を有した基板と、該基板の上側に設けられた請求項1ないし6のいずれか1項に記載の床暖房用蓄熱シートとを備えてなり、
該床暖房用蓄熱シートの前記片体が該基板上に配置されていることを特徴とする床暖房パネル。
【請求項9】
請求項8において、前記床暖房用蓄熱シートは請求項7に記載の床暖房用蓄熱シートであり、
前記基板の上面には、該シェルを収容した凹所が設けられており、
前記片体は、該凹所周囲の基板上面に重なっていることを特徴とする床暖房パネル。
【請求項10】
請求項9において、前記基板の上面のうち前記凹所の部分に溝が設けられ、
該溝内に前記放熱管が配置されていることを特徴とする床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−20136(P2008−20136A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192605(P2006−192605)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【Fターム(参考)】