説明

床暖房装置

【課題】床暖房装置において、望ましい太さの可撓管を望ましいピッチで敷設可能とする。
【解決手段】床暖房装置の暖房床を構成する給熱管42を2重の渦巻き状に配設する。給熱管42の一部を規定部材110に巻き掛けてワイヤ162により固定することによってU字状の湾曲部を形成する。さらに、給熱管42をワイヤ130によって格子状部材112に固定し、コンクリート層内に埋設する。規定部材110の有効直径は、格子状部材112の格子間隔以上となるようにし、規定部材110を格子状部材112の格子の1間に対応付けて固定する。給熱管42の規定部材110から互いに平行に延びる2つの平行部170を、第一線材120あるいは第二線材122により構成される線状部126の互いに平行で互いに隣接する2本に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床暖房装置に関するものであり、特に、給熱管内を流れる熱媒液から供給される熱を蓄熱・放熱体が蓄え、徐々に放熱して床から室内を暖房する形式の床暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の床暖房装置は下記特許文献1等により既に知られている。この床暖房装置は、コンクリート層内に給熱管を埋設し、その給熱管に、昼間、太陽熱により加熱された熱媒液を流すことによりコンクリート層に熱を蓄えさせ、夜間等にコンクリート層から除除に放熱させることにより、床から室内を暖房するものである。
【特許文献1】実用新案登録公報第2583677号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の床暖房装置においては、給熱管をコンクリート層内にできる限りむらなく敷設することが、床の温度むらを低減させる上で望ましい。本発明の発明者は、上記給熱管としてポリブテン製の可撓管を使用することを試みた。この可撓管は、耐熱性,コスト等の面で床暖房装置の給熱管として理想的なものであるが、U字状に湾曲させる場合の曲率半径を十分に小さくすることができない不都合があることが判明した。例えば、内径13mmのポリブテン管であれば200mmピッチで敷設することが望ましいのであるが、この管をU字状に湾曲させ得る最小曲率半径は140mmであり、280mmピッチでしか敷設できないことになるという事態が生じることが判明したのである。また、可撓管を湾曲させる場合、湾曲部全体の曲率半径を均一にすることは不可能で、局部的に曲率半径の小さい部分が生じ、そこにおいて可撓管が折れてしまうという事態も生じる。勿論、可撓管の直径を小さくすれば、曲率半径を小さくできるが、内部を流し得る熱媒液の流量が不十分となり、冬場に十分な太陽熱が得られる限られた時間内に、コンクリート層に十分な量の熱を蓄えさせることができない。可撓管を太くする代わりに、単位床面積当たりの可撓管の敷設本数を増せば、給熱可能量が増大するが、床暖房装置のコストが上昇し、かつ、熱媒液の流通抵抗が大きくなってしまう。
本発明は、以上の事情を背景として、望ましい太さの可撓管を望ましいピッチで敷設することを可能にすることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、半円以上の円弧に沿って延びる形状を有し、外周面に受容溝を有する主体部を備えた規定部材に、可撓管を巻き掛け、その可撓管の外周面の一部である被受容部が受容溝に受容された状態で、可撓管を規定部材に固定することによりU字状の湾曲部とすることにより解決される。
【発明の効果】
【0005】
規定部材は半円以上の円弧に沿って延びる主体部を有するものであり、可撓管を、その外周面の一部を主体部の受容溝に受容させつつ主体部に巻き付ける作業は容易であり、その作業により可撓管をそれの最小曲率半径に近い状態で湾曲させることができる。特に、規定部材が円形の平面形状を有するものである場合には、半円より大きい部分に可撓管を巻き付けて固定することにより、規定部材から延び出る可撓管の2部分の間隔が、規定部材から遠ざかるに従って除除に小さくなるようにすることができ、これら2部分を互いに離間する向きに僅かに湾曲させれば、可撓管の規定部材からやや離れた後の2部分が互いに平行に延びる状態とすることができ、この互いに平行に延びる2部分の間隔を可撓管の設置ピッチとすることができる。なお、規定部材がちょうど半円弧の平面形状を有するものである場合には、その規定部材から延び出る可撓管の2部分は、それらの間隔が規定部材から離れるに従って大きくなる状態となるが、これら2部分を互いに接近する向きに僅かに湾曲させれば、規定部材からやや離れた後の2部分が互いに平行に延びる状態とすることができ、この互いに平行に延びる2部分の間隔を可撓管の設置ピッチとすることができる。このように、規定部材から離れた2部分を僅かに湾曲させて互いに平行に延びる状態とするためには、後述の格子状部材を併用することが望ましい。
【0006】
上記のようにしてU字状に湾曲させられた可撓管は、規定部材に巻き掛けられた部分およびその近傍部においては、他の部分に比較して幅がやや広く、敷設密度が不均一となるが、この部分に対応する床面積は小さく、それ以外の部分では十分に小さい間隔で可撓管を設置することができ、適切な太さの可撓管を適切なピッチで容易に敷設することができることになる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項ないし(4)項を合わせたものが請求項2に、(5)項が請求項3に、(7)項が請求項4にそれぞれ相当する。
【0009】
(1)可撓管を少なくとも1個所においてU字状に湾曲させて配設した給熱管と、その給熱管内を流れる熱媒液から供給される熱を蓄えて放熱する蓄熱・放熱体とを含む床暖房装置であって、
半円以上の円弧に沿って延びる形状を有し、外周面に受容溝を有する主体部を備えた規定部材に、前記可撓管が巻き掛けられ、その可撓管の外周面の一部である被受容部が前記受容溝に受容された状態で、可撓管が規定部材に固定されることにより前記U字状の湾曲部とされたことを特徴とする床暖房装置。
(2)縦横に延びる複数の線状部が格子点において互いに固定された形状を有する格子状部材を含み、その格子状部材に前記可撓管が固定された(1)項に記載の床暖房装置。
格子間隔が可撓管の設置ピッチとして好適な格子状部材を準備し、その格子状部材に、規定部材を利用してU字状に湾曲させた可撓管を固定すれば、可撓管を望ましいピッチで設置することが一層容易となる。特に、可撓管,規定部材および格子状部材をコンクリート層内に埋設し、コンクリート層を蓄熱・放熱体とする場合に、コンクリートの流し込みに際して可撓管の位置がずれることを防止することができ、一層効果的である。蓄熱・放熱体としては、コンクリート層の他に、例えば、特開2003−314836号公報に記載されているように、水を封入した多数の蓄熱・放熱容器を平面的に配列したものを採用することも可能であり、この場合にも上記(1)項の発明を適用することが可能であるが、コンクリート層を蓄熱・放熱体とする場合に特に有効なのである。
(3)前記規定部材が前記格子状部材の格子の1間に対応付けて固定されるとともに、前記可撓管の規定部材から互いに平行に延びる2平行部が、前記複数の線状部の互いに平行で互いに隣接する2本に固定された(2)項に記載の床暖房装置。
(4)前記規定部材の前記円弧の有効直径が前記格子状部材の格子間隔以上である(2)項または(3)項に記載の床暖房装置。
上記有効直径は、受容溝の底面に、設計上、その規定部材と組み合わせて使用することが予定されている給熱管が巻き掛けられた場合に、その給熱管の中心線が描く円弧の直径である。なお、受容溝が半円形あるいは弓形の横断面形状を有するものである場合には、その半円形等を画定する円の直径が給熱管の外径より僅かに大きくされることが望ましいため、受容溝の横断面形状を画定する円の中心の集合により形成される円の直径は、上記有効直径より僅かに大きくなるが、その差は小さいため上記円の直径を有効直径と考えることもできる。また、格子間隔は、格子状部材を構成する線材の互いに隣接するものの軸線間の距離である。
(5)前記可撓管,前記規定部材および前記格子状部材がコンクリート層内に埋設され、そのコンクリート層が前記蓄熱・放熱体とされた(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の床暖房装置。
(6)前記可撓管が、ポリブテン,架橋ポリエチレン,ゴム,それらとアルミニウムとの複合材から選ばれた材料から成るものである(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の床暖房装置。
可撓管の材質は特に限定されるものではないが、上記材料から成る可撓管、特に、ポリブテンあるいは架橋ポリエチレン製の可撓管が、耐熱性およびコストの点から特に優れている。
(7)前記規定部材の前記主体部が、横断面形状が半円弧状であり、その半円弧状部の内側が前記受容溝を形成している(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の床暖房装置。
主体部の受容溝は、可撓管を受容して、ずれないように保持し得るものであればよい。例えば、横断面形状が、円の半分より少ない部分である弓形や、V字形であるV溝であってもよいのである。しかし、横断面形状が半円弧状をなし、受容溝の横断面形状がほぼ半円であるものが、可撓管を規定部材に巻き掛けて固定する作業の容易さや製造の容易さの点から特に望ましい。
(8)前記規定部材が、横断面形状が1/4円弧状部の一端から半径方向外向きに直線部が延び出させられた形状を有する2部材が、前記直線部により形成されるフランジ部において互いに固定され、2つの前記1/4円弧状部により前記半円弧状部が構成されたものである (7)項に記載の床暖房装置。
上記2部材は、板材のプレス加工により容易に製造することができ、規定部材の製造が容易となる。本項の発明は、規定部材が平面視で円形をなすものである場合に特に有効である。ただし、上記(1)項ないし (7)項に記載の発明において、規定部材が金属製に限定されるわけではなく、例えば、合成樹脂の成型品とすることも可能である。
(9)前記規定部材が、平面視で円形をなす(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の床暖房装置。
(10)前記格子状部材が、互いに等間隔かつ平行に配列された複数本の第一線材と、それら第一線材に直角でかつ互いに等間隔に配列された複数本の第二線材とが、互いの交差部において互いに固定されて成るものである(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の床暖房装置。
本項の特徴によれば、格子状部材を容易に製造することができる。
(11)前記第一線材と前記第二線材とが互いの交差部において溶接された(10)項に記載の床暖房装置。
(12)前記第一線材と前記第二線材とが互いの交差部においてワイヤにより互いに締結された(10)項に記載の床暖房装置。
(13)前記可撓管がワイヤにより前記格子状部材に締結された(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の床暖房装置。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は下記実施例および上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0011】
図1に示す太陽熱利用システムは、太陽熱集熱装置10および給湯装置12と共に、本発明の一実施例としての床暖房装置14を含む。本太陽熱利用システムにおいては、熱媒液タンク20が設けられ、熱媒液タンク20内の熱媒液が、太陽熱集熱装置10の集熱器24内を流れさせられて太陽熱によって温められるとともに、給湯装置12の貯湯タンク26内を流れさせられて貯湯タンク26内の湯を温め、また、床暖房装置14の暖房床28内を流れさせられて暖房床28を温めるようにされている。そのため、集熱器24,貯湯タンク26および暖房床28のそれぞれについて循環ポンプが設けられている。
【0012】
熱媒液タンク20内には熱媒液が収容されるとともに、その上部に空気が充満した空間が存在し、その空間が大気と連通させられている。集熱器24は、高所、ここでは家屋の屋根に配設されている。太陽熱集熱装置10は、1つまたは複数の集熱器を備えるものとすることができる。集熱器24の原理構造は既に知られているため、簡単に説明する。集熱器24は管状を成す部分を有し、その内部に熱媒液(本実施例においては水)が満たされており、その熱媒液は太陽光によって温められ、太陽熱が集熱される。集熱器24は、その一端部がパイプ30によって熱媒液タンク20の底部に接続され、他端部がパイプ32によって熱媒液タンク20の中間部に接続されている。パイプ30,32はいずれも、熱媒液タンク20の熱媒液内に開口させられている。パイプ30の途中に集熱器循環ポンプ34が設けられ、パイプ32の途中には、図示しない熱媒液温センサが設けられている。集熱器循環ポンプ34は、本実施例においては、停止状態において熱媒液の逆流を許容する形式のポンプの一種であるうず巻ポンプとされている。
【0013】
床暖房装置14は、受熱器の一例としての暖房床28と、図示を省略する断熱層とを備えて床板の下に配設されており、暖房床28は、蓄熱・放熱体としてのコンクリート層40とその内部に配設された給熱管42とを備えている。給熱管42の両端部はそれぞれ、パイプ44,46によって熱媒液タンク20に接続されている。パイプ44,46は、熱媒液タンク20の下部に接続されている。パイプ44の途中に暖房床循環ポンプ48が設けられている。また、床下温度は、コンクリート層40内に設けられた床下温センサ(図示省略)により検出される。
【0014】
熱媒液タンク20には、パイプ50,52によりボイラ54が接続されており、パイプ50の途中には、ボイラ循環ポンプ56が取り付けられている。ボイラ54によって熱媒液タンク20内の熱媒液が温められる。
【0015】
貯湯タンク26内の水は熱交換器60において熱媒液により温められて湯とされる。湯は浴室,洗面所,台所等に供給される。熱交換器60は、貯湯タンク26の下部に設けられており、熱交換路としての金属管62を備えている。金属管62の両端部はそれぞれパイプ64,66によって熱媒液タンク20の中間部に接続されている。パイプ64の途中には、貯湯タンク循環ポンプ68が取り付けられている。貯湯タンク26内の湯の温度は、湯温センサ(図示省略)により検出される。
【0016】
貯湯タンク26には、パイプ70,72が接続されている。パイプ70の一端部は貯湯タンク26に接続され、他端部は減圧弁74を経て水道管に接続されている。パイプ72は途中で分岐させられ、分岐させられた一方のパイプ76はボイラ78を経て蛇口80に接続され、他方のパイプ82の途中にはバルブ84が設けられている。貯湯タンク26の湯は、必要に応じてボイラ78により加熱された上で蛇口80に供給され、また、必要に応じてバルブ84が開かれることにより浴槽に供給される。
【0017】
本太陽熱利用システムにおいては、熱媒液の循環系が3つ形成されている。1つは、集熱器24,パイプ30,32,熱媒液タンク20を含む第1循環路90と、給熱管42,パイプ44,46を含む第2循環路92とにより構成される循環系であり、第1循環路90と第2循環路92とにそれぞれ集熱器循環ポンプ34と暖房床循環ポンプ48とを備えている。別の1つは、上記第1循環路90と、金属管62を含む熱交換器60,熱媒液タンク20,パイプ64,66を含む第3循環路94とにより構成される循環系であり、第1循環路90と第3循環路94とにそれぞれ集熱器循環ポンプ34と貯湯タンク循環ポンプ68とを備えている。さらに別の1つは、上記第2循環路92と、ボイラ54,熱媒液タンク20,パイプ50,52等によって形成される第4循環路96とにより構成される循環系であり、第2循環路92と第4循環路96とにそれぞれ暖房床循環ポンプ48とボイラ循環ポンプ56とを備えている。
【0018】
循環路90〜96を構成するパイプはいずれも、熱媒液タンク20の熱媒液が満たされた部分に接続されており、循環路90〜96自体は大気に開放されない閉回路であるが、熱媒液タンク20はその上部が大気に連通させられており、その点で循環路90〜96の一部が大気に開放されていると言うことができる。
【0019】
前記床暖房装置14について、図2および図3に基づいてさらに詳細に説明する。図2に床暖房装置14のコンクリート層40を除去した状態を示すように、本実施例における給熱管42は、コンクリート層40にできる限りむらなく給熱できるように、二重の渦巻き状に敷設されている。すなわち、給熱管42は、その往路部が暖房床28の縁部から中央部に向かって渦巻き状に配設された後、Uターンさせられ、その復路部が中央部から縁部に向かって渦巻き状に配設されており、給熱管42の一端部(始端部)がパイプ44に接続されるとともに、他端部(終端部)がパイプ46に接続されている。温められた熱媒液が給熱管42内を通過するにつれて熱が徐々に奪われるため、給熱管42の一端部内の熱媒液より他端部内の熱媒液の方が低温となるのであるが、比較的高温の往路部と比較的低温の復路部とが常に隣接する状態で配設されることにより、暖房床28が均一に温められる。給熱管42は、ポリブテンあるいは架橋ポリエチレンから成る可撓管とされている。
【0020】
このように給熱管42は、複数個所において湾曲させられて渦巻き状とされるとともに、互いに隣接する給熱管42がコンクリート層40内に所定のピッチ(例えば内径13mmのポリブテン管であれば200mmピッチ)となるように配設されている。このように配設することを容易にするために、給熱管42は、Uターン部分が規定部材110を利用してU字状に湾曲させられた状態で、格子状部材112に固定され、コンクリート層40内に埋設されている。格子状部材112は、図2に示すように、互いに等間隔かつ平行に(図示の例では、図面の左右方向に平行に)配列された複数本の第一線材120と、それら第一線材120に直角でかつ互いに等間隔で配列された複数本の第二線材122とが、互いの交差部124において溶接により互いに固定されて成るものである。格子状部材112の第一線材120と第二線材122とが縦横に延びる複数の線状部126をそれぞれ構成し、第一,第二線材120,122の交差する交差部124が格子点をそれぞれ構成している。格子状部材112をそれの格子間隔が所定のピッチとなるように製造し、給熱管42を各線状部126に固定すれば、給熱管42を所定のピッチで敷設することができる。本実施例では、給熱管42は複数個所において、格子状部材112にワイヤ130によって締結されている。
【0021】
規定部材110は、図3に示すように、平面視で円形をなし、その外周面に受容溝140を有するものであり、図4に詳細を示すように、主体部142とフランジ部144とから成っている。主体部142は、図4に示すように、横断面形状が半円弧状であり、その半円弧状部である主体部142の内側が受容溝140を形成している。本実施例における規定部材110は、金属製とされ、横断面形状が1/4円弧状部150の一端から半径方向外向きに直線部152が延び出させられた形状を有する2部材154が板材のプレス加工により製造され、それら2部材154が直線部152により形成されるフランジ部において互いに固定され、2つの1/4円弧状部150により上記半円弧状の主体部142が、2つの直線部152により上記フランジ部144が構成されたものである。2部材154の固定は、溶接,接着,リベット等適宜の手段で行うことができる。
【0022】
図3に示すように、給熱管42が規定部材110に巻き掛けられ、給熱管42の外周面の一部である被受容部160が受容溝140に受容された状態で、給熱管42が規定部材110に固定されている。本実施例では、給熱管42が規定部材110にワイヤ162によって複数個所(図示の例では3個所)締結されている。規定部材110の大きさは有効直径で表すこととする。有効直径は、受容溝140の底面に標準の給熱管(設計上、その規定部材110と組み合わせて使用することが予定されている給熱管)42が巻き掛けられた場合に、その給熱管42の中心線が描く円弧の直径で表されるものであり、本実施例においては、この有効直径が格子状部材112の格子間隔(格子状部材112を構成する第一線材120あるいは第二線材122の互いに隣接するものの軸線間の距離)よりやや大きくされている。したがって、図2に示すように、規定部材110が格子状部材112の格子の1間に対応付けて固定された状態で、給熱管42の規定部材110から互いに平行に延びる2つの平行部170を、線状部126の互いに平行で互いに隣接する2本に固定することができる。
【0023】
本太陽熱利用システムは、コンピュータを主体とする制御装置により制御される。ポンプ34,48,56,68は、図示を省略する駆動回路を介してコンピュータにより制御される。このコンピュータにおいて使用者がモード選択を行うことにより、ソーラ暖房およびソーラ給湯が、床下の温度,貯湯タンク内の湯の温度,それら温度と熱媒液の温度との差等に基づいて制御される。例えば、ソーラ暖房とソーラ給湯との両方の実行時には、集熱器循環ポンプ34,暖房床循環ポンプ48および貯湯タンク循環ポンプ68が同時に作動させられる。暖房床循環ポンプ48と貯湯タンク循環ポンプ68とは設定時間ずつ交互に作動させられるようにしてもよい。あるいはポンプ48,68の回転速度を異ならせてもよい。
【0024】
これらポンプ34,48,68等の作動により、熱媒液が集熱器24と熱媒液タンク20との間、貯湯タンク26と熱媒液タンク20との間および暖房床28と熱媒液タンク20との間においてそれぞれ循環させられる。それによって、集熱器24において温められた熱媒液が熱媒液タンク20に供給され、そこからパイプ44によって暖房床28の給熱管42に供給されて暖房床28を温め、また、パイプ64によって熱交換器60の金属管62に供給されて貯湯タ
ンク26内の水ないし湯を温める。貯湯タンク26および暖房床28により受熱され、温度の低下した熱媒液は熱媒液タンク20に戻され、そこから集熱器24へ送られ、太陽熱により温められる。
【0025】
規定部材の形状は、上記実施例のものに限定されない。例えば、図5に示すように、規定部材180が、その外周面に受容溝182を有する半円弧状断面の主体部184のみから成るものとし、上記実施例のように2部材を固定することにより製造するものではなく、一体のものとして製造されるものとしてもよい。
さらに、給熱管の敷設形態も前記「二重の渦巻き状」に限定されるわけではない。1つまたは複数のU字状湾曲部を有するものであり、そのU字状湾曲部の1つ以上を規定部材を利用して形成すれば本発明の効果が得られるのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例である床暖房装置を備える太陽熱利用システムの系統図である。
【図2】上記床暖房装置における給熱管の敷設状態を示す平面図である。
【図3】上記給熱管が規定部材に固定された状態を示す斜視図である。
【図4】上記規定部材の一部を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の別の実施例である床暖房装置における規定部材の一部を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
14:床暖房装置 28:暖房床 40:コンクリート層 42:給熱管 110:規定部材 112:格子状部材 126:線状部 140:受容溝 142:主体部 144:フランジ部 150:半円弧状部 180:規定部材 182:受容溝 184:主体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓管を少なくとも1個所においてU字状に湾曲させて配設した給熱管と、その給熱管内を流れる熱媒液から供給される熱を蓄えて放熱する蓄熱・放熱体とを含む床暖房装置であって、
半円以上の円弧に沿って延びる形状を有し、外周面に受容溝を有する主体部を備えた規定部材に、前記可撓管が巻き掛けられ、その可撓管の外周面の一部である被受容部が前記受容溝に受容された状態で、可撓管が規定部材に固定されることにより前記U字状の湾曲部とされたことを特徴とする床暖房装置。
【請求項2】
縦横に延びる複数の線状部が格子点において互いに固定された形状を有する格子状部材を含み、その規定部材が前記格子状部材の格子の1間に対応付けて固定されるとともに、前記可撓管の規定部材から互いに平行に延びる2平行部が、前記複数の線状部の互いに平行で互いに隣接する2本に固定された請求項1に記載の床暖房装置。
【請求項3】
前記可撓管,前記規定部材および前記格子状部材がコンクリート層内に埋設され、そのコンクリート層が前記蓄熱・放熱体とされた請求項2に記載の床暖房装置。
【請求項4】
前記規定部材の前記主体部が、横断面形状が半円弧状であり、その半円弧状部の内側が前記受容溝を形成している請求項1ないし3のいずれかに記載の床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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